特許第6206178号(P6206178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6206178-単結晶の引上げ方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206178
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】単結晶の引上げ方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/22 20060101AFI20170925BHJP
   C30B 30/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C30B15/22
   C30B30/04
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-270641(P2013-270641)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124127(P2015-124127A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】四ッ井 拓也
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111907(WO,A1)
【文献】 特開2010−265151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 15/22
C30B 30/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ炉のチャンバに収容されたルツボに原料を入れる工程と、このルツボ内の原料をヒータで加熱して前記ルツボに融液を貯留する工程と、このルツボ内の融液に水平磁場を印加した状態であって前記融液表面より上方に位置する熱遮蔽体が前記融液から引上げられる単結晶外周面を包囲してヒータによる前記単結晶外周面への輻射熱の照射を遮った状態で単結晶を引上げる方法において、
前記ヒータにより前記ルツボ内の融液を加熱した状態であって前記CZ炉での最初の単結晶の引上げ前に、前記熱遮蔽体の前記チャンバに対する鉛直方向の位置である前記熱遮蔽体の初回位置を測定する工程と、
前記熱遮蔽体の初回位置を基準として前記水平磁場の中心位置をその設定位置に合せる工程と、
前記ヒータにより前記ルツボ内の融液を加熱した状態であって前記CZ炉での2本目以降の単結晶の引上げ前又は引上げ中に、前記熱遮蔽体の鉛直方向の位置を測定して前記熱遮蔽体が前記初回位置から鉛直方向にずれた量を算出する工程と、
前記熱遮蔽体の鉛直方向へのずれ量に応じて前記水平磁場の中心位置を鉛直方向に調整する工程と
を含むことを特徴とする単結晶の引上げ方法。
【請求項2】
前記熱遮蔽体の下端部下面と前記融液の表面との距離が70〜150mmの範囲内である請求項1記載の単結晶の引上げ方法。
【請求項3】
前記ルツボの上部の内径をd1mmとし、前記引上げ中の単結晶の直胴部の直径をd2mmとし、前記熱遮蔽体の下端の半径方向の厚さをtmmとするとき、前記熱遮蔽体の下端部内周面と前記引上げ中の単結晶の外周面との距離が、50mm以上かつ[(d1−d2−2t)/2]mm以下である請求項1又は2記載の単結晶の引上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CZ法(チョクラルスキー法)によりシリコン単結晶やGaAs単結晶等の単結晶を引上げる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体単結晶の育成炉内においてルツボに収容した原料融液に、磁場印加装置により磁場を印加しながら、単結晶の引上げを行うMCZ法(磁界下引上げ法)による半導体単結晶の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この半導体単結晶の製造方法では、半導体単結晶の引上げ量の増加に合せて、融液の表面位置がほぼ一定となるようにルツボを上昇させるとともに、磁場印加装置をルツボに追従させて上昇させるように構成される。また磁場印加装置は、ルツボ内に存在している融液に印加される磁場の中心位置が、融液内に定められる目標位置に対してほぼ一定の関係が保持されるように上昇される。更にルツボ内の初期融液深さに基づいて初期目標位置を定め、磁場中心位置が初期目標位置と一致するように、磁場印加装置をルツボに対して位置決めし、その後、半導体単結晶の引上げ工程を開始するとともに、半導体単結晶の引上げ進行によりルツボ底位置が上昇して融液の深さが小さくなるのに伴い、目標位置を初期目標位置から上方に移動させるとともに、その移動する目標位置に対して磁場印加装置を追従上昇させる。
【0003】
このように構成された半導体単結晶の製造方法では、単結晶引上げに伴いルツボ中の融液量、即ち融液深さは減少するけれども、対流抑制等のために融液に磁場印加する際に、その磁場中心の最適位置は融液内にて刻々変化するので、その最適位置を目標位置とし、融液の深さが小さくなるに従い刻々変化するその目標位置に対して、磁場印加装置を追従移動させることにより、磁場を常に対流抑制等に関する最適位置に保持することができる。この結果、酸素濃度が低く均質な半導体単結晶が得ることができる。
【0004】
また、製造する半導体単結晶の直径を一定に保ち易くするために、半導体単結晶の引上げ量の増加に伴い、融液の表面位置がほぼ一定となるようにルツボを上昇させる。この場合、磁場印加装置は、ルツボ内に存在している融液に印加される磁場の磁場中心位置が、融液内に定められる目標位置に対してほぼ一定の関係が保持されるように上昇させることが、融液中に発生する対流を抑制する上で望ましい。具体的には、ルツボ内に存在している融液の深さをHLとし、融液の表面から目標位置までの深さ方向の距離をHAとするとき、HA/HLがほぼ一定となるように目標位置を定めるのがよい。例えば、目標位置を、ルツボ内の融液における深さ方向の中心部、又はこれより下方に位置するように(即ちHA/HLが0.5若しくはこれよりも少し大きい値となるように)設定し、磁場中心を該目標位置に合せることにより、単結晶引上げの全工程において、ルツボ内の融液のほぼ全体に所望の強度範囲の磁場を印加することができる。換言すれば、従来のHMCZ法に比べて、単結晶引上げの全工程において、ルツボ内の融液に印加する磁場の強度分布の均一性を向上させることができる。この結果、ルツボ内の融液の対流抑制効果が著しく高まり、酸素濃度が低く均一で、しかも欠陥の少ない大直径の単結晶を安定して製造できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2002/010485号パンフレット(請求項1〜3、第9頁第27行〜第10頁第4行、第10頁第7行〜同頁第23行、図7図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1に示された半導体単結晶の製造方法では、表面の揺らぎによるバラツキが大きく、また表面がきらきら光ってしまい測定し難い融液の表面位置を基準として磁場中心位置を制御しているため、磁場中心位置を精度良く制御することが難しい不具合があった。
【0007】
一方、育成炉内に使用される部品としては、複数の円筒体を積重ねて形成された保温筒や、上端が保温筒の上端に取付けられ引上げ中の半導体単結晶を包囲する熱遮蔽体等が挙げられ、これらの部品は、ヒータにより融液を加熱する関係上、高温に曝されるため、断熱性及び耐熱性を有する黒鉛やカーボン等により形成される。また育成炉を用いて複数本の半導体単結晶を引上げるため、半導体単結晶を1本引上げる毎に育成炉内の加熱及び冷却が繰返され、育成炉内の各部品がSiC化したり或いは劣化する。更に融液に印加する水平磁場は、磁場中心に近付くほど磁場強度が大きくなって磁場の水平度が高くなり、磁場中心から離れるほど磁場強度が小さくなって磁場の水平度が低下する。このため、保温筒がSiC化したり或いは劣化することにより、保温筒の熱膨張量が次第に変化してその上端位置が次第に上昇したり或いは下降し、これに伴って熱遮蔽体の位置も鉛直方向に変化する。この結果、水平磁場の中心位置に対する熱遮蔽体の位置がずれてしまうため、引上げられる半導体単結晶の品質にバラツキが生じる問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、水平磁場の中心位置を熱遮蔽体の鉛直方向の位置のずれ量に応じて調整することにより、引上げられる単結晶の品質のバラツキを低減できる、単結晶の引上げ方法を提供することにある。本発明の別の目的は、鉛直方向の位置を測定し易い固体である熱遮蔽体のずれ量に応じて水平磁場の中心位置を精度良く調整することにより、単結晶の品質のバラツキを更に低減できる、単結晶の引上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、CZ炉のチャンバに収容されたルツボに原料を入れる工程と、このルツボ内の原料をヒータで加熱してルツボに融液を貯留する工程と、このルツボ内の融液に水平磁場を印加した状態であって融液表面より上方に位置する熱遮蔽体が融液から引上げられる単結晶外周面を包囲してヒータによる単結晶外周面への輻射熱の照射を遮った状態で単結晶を引上げる方法において、ヒータによりルツボ内の融液を加熱した状態であってCZ炉での最初の単結晶の引上げ前に、熱遮蔽体のチャンバに対する鉛直方向の位置である熱遮蔽体の初回位置を測定する工程と、熱遮蔽体の初回位置を基準として水平磁場の中心位置をその設定位置に合せる工程と、ヒータによりルツボ内の融液を加熱した状態であってCZ炉での2本目以降の単結晶の引上げ前又は引上げ中に、熱遮蔽体の鉛直方向の位置を測定して熱遮蔽体が上記初回位置から鉛直方向にずれた量を算出する工程と、この熱遮蔽体の鉛直方向へのずれ量に応じて水平磁場の中心位置を鉛直方向に調整する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に熱遮蔽体の下端部下面と融液の表面との距離が70〜150mmの範囲内であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更にルツボの上部の内径をd1mmとし、引上げ中の単結晶の直胴部の直径をd2mmとし、熱遮蔽体の下端の半径方向の厚さをtmmとするとき、熱遮蔽体の下端部内周面と引上げ中の単結晶の外周面との距離が、50mm以上かつ[(d1−d2−2t)/2]mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
CZ炉内の加熱及び冷却の繰返しにより、熱遮蔽体や保温筒等の各部品がSiC化したり或いは劣化し、保温筒の熱膨張量が次第に変化してその上端位置が次第に上昇したり或いは下降し、これに伴って熱遮蔽体の鉛直方向の位置も変化する。しかし、本発明の第1の観点の単結晶の引上げ方法では、ヒータによるルツボ内の融液の加熱状態でCZ炉での最初の単結晶の引上げ前に熱遮蔽体の初回位置を測定し、熱遮蔽体の初回位置を基準として水平磁場の中心位置をその設定位置に合せ、ヒータによるルツボ内の融液の加熱状態でCZ炉での2本目以降の単結晶の引上げ前又は引上げ中に熱遮蔽体が上記初回位置から鉛直方向にずれた量を測定し、更にこのずれ量に応じて水平磁場の中心位置を鉛直方向に調整するので、CZ炉内の各部品の劣化等により熱遮蔽体の鉛直方向の位置が変化しても、水平磁場の中心位置を熱遮蔽体の鉛直方向の位置のずれ量に応じて調整できる。この結果、引上げられる単結晶の品質のバラツキを低減できる。
【0013】
また、表面の揺らぎによるバラツキが大きく、また表面がきらきら光ってしまい測定し難い融液の表面位置を基準として磁場中心位置を制御しているため、磁場中心位置を精度良く制御することが難しい従来の半導体単結晶の製造方法と比較して、本発明では、鉛直方向の位置を測定し易い固体である熱遮蔽体の鉛直方向の位置を測定しているため、この熱遮蔽体の鉛直方向の位置のずれ量を精度良く測定できる。この結果、本発明では、熱遮蔽体の鉛直方向の位置のずれ量に応じて水平磁場の中心位置を精度良く調整できるので、単結晶の品質のバラツキを更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施形態、実施例及び比較例のシリコン単結晶引上げに用いたCZ炉の断面構成図である。
図2】そのCZ炉を用いて複数本のシリコン単結晶を順次引上げる手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。単結晶は、この実施の形態では、シリコン単結晶であり、このシリコン単結晶は図1に示すCZ炉を用いて引上げられる。CZ炉は、内部を真空可能に構成されたメインチャンバ12と、このチャンバ12内の中央に設けられたルツボ13とを備える。メインチャンバ12は基台14上に取付けられた円筒状の真空容器である。またルツボ13は、図示しないが、石英により形成されシリコン融液16が貯留される有底円筒状の内層容器と、黒鉛により形成され上記内層容器の外側に嵌合された有底円筒状の外層容器とからなる。外層容器の底部にはシャフト17の上端が接続され、このシャフト17の下端にはシャフト17を介してルツボ13を回転させかつ昇降させるルツボ駆動装置18が設けられる。更にルツボ13の外周面は円筒状のヒータ19によりルツボ13の外周面から所定の間隔をあけて包囲され、このヒータ19の外周面は円筒状の保温筒20によりヒータ19の外周面から所定の間隔をあけて包囲される。
【0016】
上記保温筒20は、グラファイト(黒鉛)や成型断熱材(カーボン繊維製)等により形成された高さの低い3種類の円筒体21〜23を積重ねることにより形成される。即ち、保温筒20は、基台14に載置され上部内周縁にリング状凹部21aが形成された下部円筒体21と、最上段に位置し下部内周縁にリング状突起22aが形成された上部円筒体22と、下部円筒体21と上部円筒体22との間に積重ねられ上部内周縁にリング状凹部23aが形成されかつ下部内周縁にリング状突起23bが形成された中間円筒体23とからなる。この実施の形態では、先ず下部円筒体21のリング状凹部21aに中間円筒体23のリング状突起23bを係合させて、下部円筒体21上に中間円筒体23を積重ねる。次にこの中間円筒体23のリング状凹部23aに別の中間円筒体23のリング状突起23bを係合させて、中間円筒体23上に別の中間円筒体23を積重ねる。更にこの別の中間円筒体23のリング状凹部23aに上部円筒体22のリング状突起22aを係合させて、中間円筒体23上に上部円筒体22を積重ねる。これにより積重ね後の各円筒体21〜23の横ずれを防止できるようになっている。なお、各円筒体21〜23のうち内側部分がグラファイト(黒鉛)により形成され、外側部分が成型断熱材(カーボン繊維製)が形成されることが好ましい。
【0017】
一方、メインチャンバ12の上端には、内部が連通するようにメインチャンバ12より小径の円筒状のプルチャンバ21が接続される。このプルチャンバ21の上端には引上げ回転装置22が設けられる。この引上げ回転装置22は、下端にシードチャック23が取付けられたワイヤからなる引上げ軸24を昇降させるとともに、この引上げ軸24をその軸線を中心に回転させるように構成される。また上記シードチャック23には種結晶25が着脱可能に装着される。この種結晶25の下端をシリコン融液15中に浸漬した後、種結晶25を引上げ回転装置22により回転させかつ引上げるとともに、ルツボ13をルツボ駆動装置16により回転させかつ上昇させることにより、種結晶25の下端からシリコン単結晶11を引上げて引上げるように構成される。
【0018】
一方、シリコン融液16には水平磁場を印加しながらシリコン単結晶11を引上げるように構成される。この水平磁場は、同一のコイル直径を有する第1及び第2コイル31,32を、ルツボ13の外周面から水平方向に所定の間隔をあけた外側方に、ルツボ13を中心として互いに対向するように配設し、これらのコイル31,32にそれぞれ同一向きの電流を流すことにより発生する。ここで、図1中の符号33は上記水平磁場の中心位置を示す。また、第1及び第2コイル31,32はコイル昇降装置34により昇降可能に構成される。このコイル昇降装置34は、第1及び第2コイル31,32を載置するリング部材36と、基台14の下面に減速機37を介して取付けられたロータリエンコーダ付きのコイル昇降モータ38と、減速機37から上方に突設されてリング部材36に螺合するボールねじ39とを有する。上記コイル昇降モータ38が回転すると、この回転速度が減速機37により減速されてボールねじ39に伝達され、ボールねじ39がリング部材36を昇降させることにより、第1及び第2コイル31,32が昇降するようになっている。
【0019】
一方、メインチャンバ12内にはアルゴンガス等の不活性ガスが流通される。プルチャンバ24の周壁にはガス供給パイプ41の一端が接続され、このガス供給パイプ41の他端は不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続される。また基台14にはガス排出パイプ42の一端が接続され、このガス排出パイプ42の他端は真空ポンプ(図示せず)の吸入口に接続される。タンク内の不活性ガスは、ガス供給パイプ41を通ってプルチャンバ24内に導入され、メインチャンバ12内を通った後、ガス排出パイプ42を通ってメインチャンバ12から排出されるように構成される。なお、ガス供給パイプ41及びガス排出パイプ42にはこれらのパイプを流れる不活性ガスの流量を調整する入口側流量調整弁43及び出口側流量調整弁44がそれぞれ設けられる。
【0020】
またメインチャンバ12内には、シリコン融液16から引上げられるシリコン単結晶11外周面へのヒータ19の輻射熱の照射を遮るとともに、上記不活性ガスを整流するための熱遮蔽体46が設けられる。この熱遮蔽体46はグラファイト(黒鉛)や成型断熱材(カーボン繊維製)等により形成される。また熱遮蔽体46は、下方に向うに従って直径が次第に小さくなりかつシリコン融液16から引上げられるシリコン単結晶11の外周面をこの外周面から所定の間隔をあけて包囲する円錐台状の筒体46aと、この筒体46aの上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すアッパフランジ部46bと、上記筒体46aの下縁に連設され内方に略水平方向に張り出すロアフランジ部46cとを有する。熱遮蔽体46の上端は保温筒20の上端に取付けられる。この実施の形態では、熱遮蔽体46のアッパフランジ部46bが保温筒20の上面に載置される。これによりロアフランジ部46c下面がシリコン融液16表面から所定のギャップをあけて上方に位置するように構成される。
【0021】
上記熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とシリコン融液16の表面との距離は、70〜150mmの範囲内であることが好ましく、70〜100mmの範囲内であることが更に好ましい。また、ルツボ13の上部の内径をd1mmとし、引上げ中のシリコン単結晶11の直胴部の直径をd2mmとし、熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの半径方向の厚さをtmmとするとき、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c内周面と引上げ中のシリコン単結晶11の外周面との距離が、50mm以上かつ[(d1−d2−2t)/2]mm以下であることが好ましく、50〜120mmの範囲内であることが更に好ましい。ここで、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とシリコン融液16の表面との距離を70〜150mmの範囲内に限定したのは、70mm未満では、ヒータ19からの輻射熱の減少により、シリコン融液16の温度勾配が上昇してしまい、磁場位置の変化によって生じるシリコン融液16の対流の変化が、熱対流や強制対流の変化よりも無視できるほど小さくなるため、磁場位置の調整によりシリコン単結晶11の品質のバラツキを低減するという効果が得られず、150mmを超えるとシリコン単結晶11を安定して引上げることができないからである。また、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c内周面と引上げ中のシリコン単結晶11の外周面との距離を50mm以上かつ[(d1−d2−2t)/2]mm以下の範囲内に限定したのは、50mm未満では、ヒータ19からの輻射熱の減少により、シリコン融液16の温度勾配が上昇してしまい、磁場位置の変化によって生じるシリコン融液16の対流の変化が、熱対流や強制対流の変化よりも無視できるほど小さくなるため、磁場位置の調整によりシリコン単結晶11の品質のバラツキを低減するという効果が得られず、[(d1−d2−2t)/2]mmを超えると熱遮蔽体46の下部がルツボ13より大きくなってしまうからである。
【0022】
更にルツボ13内のシリコン融液16がヒータ19により加熱された状態であって、シリコン単結晶11を引上げる直前における熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面のメインチャンバ12に対する鉛直方向の位置が位置測定具47により測定される。位置測定具47は、この実施の形態では、2次元CCDカメラである。この2次元CCDカメラ47の撮影した画像は画像処理装置(図示せず)により処理される。この画像処理装置の処理出力はコントローラ48の制御入力に接続される。またコントローラ48の制御出力は、ルツボ駆動装置18、ヒータ19、引上げ回転装置26、第1コイル31、第2コイル32、真空ポンプ、コイル昇降モータ38、入口側流量調整弁43及び出口側流量調整弁44に接続される。また、コントローラ48にはメモリ48aが設けられ、このメモリ48aには2次元CCDカメラ47が測定し画像処理装置により処理されたロアフランジ部46cの鉛直方向の初回位置P1等が記憶される。
【0023】
このように構成されたCZ炉10を用いてシリコン単結晶11を引上げる方法を図2のフローチャート図に基づいて説明する。先ず室温でCZ炉10を組立てる。このときCZ炉10内の各部品は、ヒータ19でルツボ13内のシリコン融液16を加熱することによる熱膨張を考慮して、設計・作製されて組立てられる。そしてCZ炉10のメインチャンバ12に収容されたルツボ13にシリコン原料を入れる。このシリコン原料はシリコン多結晶又はシリコン単結晶のいずれか一方又は双方からなる。次いで上記ルツボ13内のシリコン原料をヒータ19で加熱して融解することにより、ルツボ13にシリコン融液16を貯留する。このシリコン融液16から1本目のシリコン単結晶11を引上げる直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面の初回位置P1を2次元CCDカメラ47により測定する。具体的には、2次元CCDカメラ47によりロアフランジ部46cを撮影し、この2次元CCDカメラ47の撮影した画像を画像処理装置により処理することにより、ロアフランジ部46c上面の初回位置P1を測定する。コントローラ48は、このロアフランジ部46c上面の初回位置P1をメモリ48aに記憶する。
【0024】
また、コントローラ48は、上記ロアフランジ部46c上面の位置P1を基準として、水平磁場の中心位置33をその設定位置に合せる。具体的には、コントローラ48がコイル昇降モータ38を駆動することにより、コイル昇降モータ38の回転力が減速機37で減速されてボールねじ39に伝達される。このボールねじ39の回転によりリング部材36が昇降し、第1及び第2コイル31,32が昇降して、水平磁場の中心位置33がその設定位置に合せられる。このときコイル昇降モータ38はロータリエンコーダによりその回転角度が正確に検出されているため、水平磁場の中心位置33をその設定位置に正確に合せることができる。更に、コントローラ48は、ルツボ13内のシリコン融液16の表面位置と熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とのギャップが所定値になるように、ルツボ駆動装置18によりルツボ13を昇降させて調整する。そしてコントローラ48は第1及び第2コイル31,32に通電してルツボ13内のシリコン融液16に水平磁場を印加する。この状態で1本目のシリコン単結晶11を引上げる。そして所定長さのシリコン単結晶11が引上げられると、シリコン単結晶11の引上げは完了するので、シリコン単結晶11の引上げを停止してCZ炉10内を冷却した後に、シリコン単結晶11をCZ炉10から取出す。
【0025】
次に上記CZ炉10のルツボ13に新たにシリコン原料を入れた後、このルツボ13内のシリコン原料をヒータ19で加熱して融解することにより、ルツボ13にシリコン融液16を貯留する。このシリコン融液16から2本目のシリコン単結晶11を引上げる直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面の現在位置P2を2次元CCDカメラ47により測定する。そして、コントローラ48は、上記現在位置P2から初回位置P1を引いた値δを算出する。ここで、ロアフランジ部46c上面の現在位置P2が初回位置P1と異なるのは、次の理由に基づく。熱遮蔽体46の上端であるアッパフランジ部46bが、複数の円筒体21〜23を積重ねて形成された保温筒20の上端に取付けられるため、CZ炉10内の加熱及び冷却の繰返しにより、熱遮蔽体46や保温筒20がSiC化したり或いは劣化する。このため保温筒20の熱膨張量が次第に変化することにより、その上端位置が次第に上昇したり或いは下降し、これに伴って熱遮蔽体46の位置も鉛直方向に変化するためである。
【0026】
コントローラ48は、現在位置P2から初回位置P1を引いた値δ、即ち熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面の鉛直方向へのずれ量δに応じて水平磁場の中心位置33を鉛直方向に調整する。具体的には、コントローラ48がコイル昇降モータ38を駆動することにより、コイル昇降モータ38の回転力が減速機37を介してボールねじ39に伝達されて、第1及び第2コイル31,32がリング部材36とともに昇降する。これによりロアフランジ部46cがずれた方向に上記ずれ量δだけ第1及び第2コイル31,32が鉛直方向にずれるので、水平磁場の中心位置33のロアフランジ部46cに対する鉛直方向の相対位置が所定値に保たれる。また、コントローラ48は、ルツボ13内のシリコン融液16の表面位置と熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とのギャップが所定値になるように、ルツボ駆動装置18によりルツボ13を昇降させて調整する。そしてコントローラ48は第1及び第2コイル31,32に通電してルツボ13内のシリコン融液16に水平磁場を印加する。この状態で2本目のシリコン単結晶11を引上げる。そして所定長さのシリコン単結晶11が引上げられると、シリコン単結晶11の引上げは完了するので、シリコン単結晶11の引上げを停止してCZ炉10内を冷却した後に、シリコン単結晶11をCZ炉10から取出す。このように引上げられたシリコン単結晶11は、熱遮蔽体46の鉛直方向の位置が変化しても、水平磁場の中心位置33及びシリコン融液16の表面位置が、ロアフランジ部46cの鉛直方向の位置のずれ量に応じて調整されるため、品質のバラツキを低減できる。
【0027】
また、表面の揺らぎによるバラツキが大きく、また表面がきらきら光ってしまい測定し難いシリコン融液16の表面位置を基準として水平磁場の中心位置33を制御するのではなく、鉛直方向の位置を測定し易い固体である熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの鉛直方向の位置を測定しているため、このロアフランジ部46c上面の鉛直方向へのずれ量に応じて水平磁場の中心位置33を精度良く調整することができる。この結果、シリコン単結晶11の品質のバラツキを更に低減できる。
【0028】
一方、3本目以降のシリコン単結晶11を引上げるときも、上記2本目のシリコン単結晶11を引上げるときと同様に、ヒータ19によりルツボ13内のシリコン融液16を加熱した状態であってCZ炉10での3本目以降のシリコン単結晶11の引上げ直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの鉛直方向の位置を測定して、熱遮蔽体46が初回位置P1から鉛直方向にずれた量を算出し、ロアフランジ部46cの鉛直方向へのずれ量に応じて水平磁場の中心位置33とシリコン融液16の表面位置を鉛直方向にそれぞれ調整する。この結果、各バッチにおいて引上げられるシリコン単結晶11の品質のバラツキを低減できる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、単結晶としてシリコン単結晶を挙げたが、GaAs単結晶、InP単結晶、ZnS単結晶、ZnSe単結晶等でもよい。また、上記実施の形態では、位置測定具として2次元CCDカメラを挙げたが、位置測定具はレーザ光や計測治具(例えば変位センサ)等でもよい。また、上記実施の形態では、熱遮蔽体のロアフランジ部の鉛直方向の位置を測定したが、熱遮蔽体のアッパフランジ部又は円筒部の鉛直方向の位置を測定してもよい。但し、熱遮蔽体の測定位置は、熱膨張による誤差が小さくなるため、シリコン融液の表面に近い位置で測定した方が好ましい。また、上記実施の形態では、一つのルツボを用いて1本のシリコン単結晶を引上げた後、チャンバ内を冷却してシリコン単結晶を取出し、チャンバ内を冷却した状態で上記ルツボに再びシリコン原料を供給して別のシリコン単結晶を引上げるバッチ引上げ処理におけるバッチ間に本発明を適用したが、一つのルツボを用いて1本のシリコン単結晶を引上げた後に、チャンバ内を冷却せずにシリコン単結晶を取出し、チャンバ内を加熱した状態でルツボに再びシリコン原料を供給して別のシリコン単結晶を引上げるマルチ引上げ処理におけるシリコン単結晶の引上げ処理の間に本発明を適用してもよい。更に、上記実施の形態では、バッチ毎に水平磁場の中心位置を鉛直方向に調整したが、単結晶の引上げ中であっても所定時間毎に水平磁場の中心位置を鉛直方向に調整してもよい。
【実施例】
【0030】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0031】
<実施例1>
図1に示すCZ炉10を用い、図2に示すフローチャート図に基づいてシリコン単結晶11を引上げた。具体的には、先ずCZ炉10のメインチャンバ12に収容されたルツボ13に360kgのシリコン原料を入れた。次いで上記ルツボ13内のシリコン原料をヒータ19で加熱して融解しシリコン融液16にした。このシリコン融液16から1本目のシリコン単結晶11を引上げる直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面のメインチャンバ12に対する鉛直方向の位置である熱遮蔽体46の初回位置P1を2次元CCDカメラ47により測定し、このロアフランジ部46c上面の初回位置P1をメモリ48aに記憶した。また、コントローラ48は、上記ロアフランジ部46c上面の位置P1を基準として、水平磁場の中心位置33をその設定位置に合せた。更に、コントローラ48は、ルツボ13内のシリコン融液16の表面位置と熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とのギャップが40mmになるように、ルツボ駆動装置18によりルツボ13を昇降させて調整した。そしてコントローラ48は第1及び第2コイル31,32に通電してルツボ13内のシリコン融液16に水平磁場を印加し、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目のシリコン単結晶11を引上げた。ここで、熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの内周縁とシリコン単結晶11の外周面との距離は30mmであった。
【0032】
次に上記CZ炉10のルツボ13に新たに360kgのシリコン原料を入れた後、このルツボ13内のシリコン原料をヒータ19で加熱して融解しシリコン融液にした。このシリコン融液16から2本目のシリコン単結晶11を引上げる直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面の現在位置P2を2次元CCDカメラ47により測定した。そして、コントローラ48は、上記現在位置P2から初回位置P1を引いた値δ(上方に1mm)を算出し、ロアフランジ部46cがずれた方向に上記ずれ量δ(上方に1mm)だけ第1及び第2コイル31,32を鉛直方向にずらした。これにより水平磁場の中心位置33のロアフランジ部46cに対する鉛直方向の相対位置を所定値に保った。また、コントローラ48は、ルツボ13内のシリコン融液16の表面位置と熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とのギャップが40mmになるように、ルツボ駆動装置18によりルツボ13を昇降させて調整した。そしてコントローラ48は第1及び第2コイル31,32に通電してルツボ13内のシリコン融液16に水平磁場を印加し、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである2本目のシリコン単結晶11を引上げた。この2本目のシリコン単結晶11を実施例1とした。なお、熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの内周縁とシリコン単結晶11の外周面との距離は30mmであった。
【0033】
<実施例2>
熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液表面との距離を70mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を実施例2とした。
【0034】
<実施例3>
熱遮蔽体のロアフランジ部の内周縁と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離を50mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を実施例3とした。
【0035】
<実施例4>
先ず実施例1と同様にして、1本目のシリコン単結晶11を引上げた。次にCZ炉10のルツボ13に新たに360kgのシリコン原料を入れた後、このルツボ13内のシリコン原料をヒータ19で加熱して融解しシリコン融液にした。このシリコン融液16から2本目のシリコン単結晶11を引上げる直前に、熱遮蔽体46のロアフランジ部46c上面の現在位置P2を2次元CCDカメラ47により測定した。そして、コントローラ48は、上記現在位置P2から初回位置P1を引いた値δ(上方に2mm)を算出し、ロアフランジ部46cがずれた方向に上記ずれ量δ(上方に2mm)だけ第1及び第2コイル31,32を鉛直方向にずらした。これにより水平磁場の中心位置33のロアフランジ部46cに対する鉛直方向の相対位置を所定値に保った。また、コントローラ48は、ルツボ13内のシリコン融液16の表面位置と熱遮蔽体46のロアフランジ部46c下面とのギャップが40mmになるように、ルツボ駆動装置18によりルツボ13を昇降させて調整した。そしてコントローラ48は第1及び第2コイル31,32に通電してルツボ13内のシリコン融液16に水平磁場を印加し、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである2本目のシリコン単結晶11を引上げた。この2本目のシリコン単結晶11を実施例4とした。なお、熱遮蔽体46のロアフランジ部46cの内周縁とシリコン単結晶11の外周面との距離は30mmであった。
【0036】
<実施例5>
熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液表面との距離を70mmとしたこと以外は、実施例4と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を実施例5とした。
【0037】
<実施例6>
熱遮蔽体のロアフランジ部の内周縁と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離を50mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を実施例6とした。
【0038】
<比較例1>
2本目のシリコン単結晶を引上げる直前に、熱遮蔽体のロアフランジ部上面の現在位置P2が初回位置P1からずれていても、熱遮蔽体の鉛直方向の位置を調整しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を比較例1とした。
【0039】
<比較例2>
2本目のシリコン単結晶を引上げる直前に、熱遮蔽体のロアフランジ部上面の現在位置P2が初回位置P1からずれていても、熱遮蔽体の鉛直方向の位置を調整しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を比較例2とした。
【0040】
<比較例3>
熱遮蔽体のロアフランジ部の内周縁と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離を50mmとしたこと以外は、比較例1と同様にして、全長が1800mmであって直胴部の直径が300mmである1本目及び2本目のシリコン単結晶を順次引上げた。2本目のシリコン単結晶を比較例3とした。
【0041】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜6及び比較例1〜3のシリコン単結晶の製品ロスを測定した。具体的には、各シリコン単結晶の直胴部において、無欠陥とならなかった部分、即ちCOP若しくは転位クラスタが存在する部分の体積を測定し、シリコン単結晶の直胴部全体を100質量%とするときの上記無欠陥とならなかった部分の体積割合を算出した。その結果を表1に示す。なお、表1において、「調整量」とは、2本目のシリコン単結晶を引上げる直前に、熱遮蔽体のロアフランジ部上面の現在位置P2から初回位置P1を引いた値δだけ、ロアフランジ部46cがずれた方向に第1及び第2コイル31,32を鉛直方向にずらした量である。また、表1において、「熱遮蔽体−液面」とは、熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液の表面との距離であり、「熱遮蔽体−単結晶」とは、熱遮蔽体のロアフランジ部内周面と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離である。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、2本目のシリコン単結晶を引上げる直前における調整量が0mmである比較例1〜3では、即ち2本目のシリコン単結晶を引上げる直前に、熱遮蔽体のロアフランジ部上面の現在位置P2が初回位置P1からずれていても、熱遮蔽体の鉛直方向の位置を調整しなかった比較例1〜3では、製品ロスが3.0〜5.0質量%と多かった。これらに対し、2本目のシリコン単結晶を引上げる直前における調整量が1mm又は2mmである実施例1〜6では、即ち2本目のシリコン単結晶を引上げる直前に、熱遮蔽体のロアフランジ部上面の現在位置P2から初回位置P1を引いた値δ(1mm又は2mm)を算出し、ロアフランジ部がずれた方向に上記ずれ量δ(1mm又は2mm)だけ第1及び第2コイルを鉛直方向にずらした実施例1〜6では、製品ロスが1.5〜2.1質量%と少なくなった。
【0044】
一方、熱遮蔽体−液面、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液の表面との距離が40mmと小さく、かつ熱遮蔽体−単結晶、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部内周面と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離が30mmと小さい場合、比較例1の製品ロスに対する実施例1の製品ロスの減少割合は1.5/3.0=0.5と比較的少なく、比較例1の製品ロスに対する実施例2の製品ロスの減少割合は1.2/3.0=0.4と比較的少なかった。これらに対し、熱遮蔽体−単結晶、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部内周面と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離が30mmと上記の場合と同一であるけれども、熱遮蔽体−液面、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液の表面との距離が70mmと大きい場合、比較例2の製品ロスに対する実施例2の製品ロスの減少割合は1.8/4.5=0.4と上記比較例1の製品ロスに対する実施例1の製品ロスの減少割合より多くなり、比較例2の製品ロスに対する実施例5の製品ロスの減少割合は1.3/4.5≒0.22と上記比較例1の製品ロスに対する実施例4の製品ロスの減少割合より多くなった。また、熱遮蔽体−液面、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液の表面との距離が40mmと上記の場合と同一であるけれども、熱遮蔽体−単結晶、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部内周面と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離が50mmと大きい場合、比較例3の製品ロスに対する実施例4の製品ロスの減少割合は2.1/5.0=0.42と上記比較例1の製品ロスに対する実施例1の製品ロスの減少割合より多くなり、比較例3の製品ロスに対する実施例6の製品ロスの減少割合は1.5/5.0≒0.3と上記比較例1の製品ロスに対する実施例4の製品ロスの減少割合より多くなった。上述のことから、熱遮蔽体−液面、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部下面とシリコン融液の表面との距離を70mmと大きくしたり、或いは熱遮蔽体−単結晶、即ち熱遮蔽体のロアフランジ部内周面と引上げ中のシリコン単結晶の外周面との距離を50mmと大きくすると、製品ロスの減少割合が大きくなることが分かった。
【符号の説明】
【0045】
10 CZ炉
11 シリコン単結晶(単結晶)
12 メインチャンバ(チャンバ)
13 ルツボ
16 シリコン融液(融液)
19 ヒータ
20 保温筒
24 プルチャンバ(チャンバ)
図1
図2