(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳述する。
[光酸発生剤]
本発明では、下記一般式(1a)で示される光酸発生剤を提供する。
【化4】
(式中、A
1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基を示す。L
a、L
bはそれぞれ独立にエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合のうち、いずれか一つの連結基を示す。R
a、R
bはそれぞれ独立に水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。Z
a+、Z
b+はそれぞれ独立にスルホニウムカチオンあるいはヨードニウムカチオンのいずれかを示す。)
【0020】
上記一般式(1a)中、A
1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基を示す。
具体的にはメチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の2価の飽和環状炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の2価の不飽和環状炭化水素基が挙げられる。またこれらの基の水素原子の一部がメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基といったアルキル基に置換してもよい。あるいは酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成してもよい。原材料入手容易性の観点から、好ましくは非置換のアルキレン基である。
【0021】
上記一般式(1a)中、L
a、L
bはそれぞれ独立にエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合のうち、いずれか一つの連結基を示し、好ましくはエーテル結合(−O−)又はエステル結合(−COO−)である。
【0022】
R
a、R
bはそれぞれ独立に水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。特に好ましくは、R
a、R
bがいずれもトリフルオロメチル基の場合である。この場合、R
a及びR
bがそれぞれ異なる場合よりも合成が安価かつ容易であり、また水素原子である場合と比較して溶解性も優れる。これは、トリフルオロメチル基が結合している炭素原子が不斉炭素となっていることが起因していると考えられる。
【0023】
上記一般式(1a)中、Z
a+、Z
b+はそれぞれ独立にスルホニウムカチオンあるいはヨードニウムカチオンのいずれかを示す。
ヨードニウムカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−アクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メタクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム等が挙げられるが、中でもビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムが好ましく用いられる。
なお、スルホニウムカチオンについては後述する。
【0024】
上記一般式(1a)で示される光酸発生剤として、好ましくは下記一般式(1b)で示される構造が挙げられる。
【化5】
(式中、A
1、L
a、L
b、R
a、R
bは上記と同様である。R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16は、それぞれ独立にヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数6〜18のアリール基又はアラルキル基を示す。また、R
11、R
12及びR
13のうちのいずれか二つ、あるいはR
14、R
15及びR
16のうちのいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0025】
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15及びR
16として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられ、好ましくはアリール基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子といったヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子が介在していてもよく、その結果ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を形成又は介在してもよい。また、R
11、R
12及びR
13のうちのいずれか二つ、あるいはR
14、R
15及びR
16のうちのいずれか二つは相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成する場合には、下記式で示される基等が挙げられる。
【0026】
【化6】
(式中、R
5は、上記R
11として例示した基と同じものを示す。)
【0027】
上記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩のカチオン部の具体的な構造としては、下記に示すものが挙げられる。但し本発明はこれらに限定されるわけではない。
【化7】
【0028】
本発明の光酸発生剤について、特に好ましい構造としては下記のものが例示できる。但し本発明の光酸発生剤はこれらに限定されるものではない。
【化8】
【0030】
本発明の光酸発生剤は、アニオン部が特定のビススルホネート構造であることが大きな特徴である。本発明の光酸発生剤を含むレジスト材料は、酸拡散抑制能がかなり高く、結果としてレジスト諸性能、特にMEFを改善できる。これは、一分子内に二つの塩構造を有する高極性な構造を有していることが起因しているものと推測される。なお、特許第3773139号公報にはビススルホニウムカチオンを有するレジスト組成物に関する記載があるが、この場合アニオン部の極性は従来のモノスルホニウム塩と変わらないので、本発明の光酸発生剤ほどの酸拡散抑制能は見られないと考えられ、満足するリソグラフィー性能を得るまでには至っていない。
【0031】
特開2008−013551号公報や国際公開第2011/048919号にはビススルホネートアニオンを有する光酸発生剤を含むレジスト組成物が記載されているが、一般的にビスオニウム塩はその極性の高さゆえに有機溶剤溶解性が低い。この性質は、塗布欠陥や液浸露光時における水への溶出及びそれに伴う欠陥等を引き起こすことが懸念される。一方、本発明の光酸発生剤は溶剤溶解性に優れ、上記欠陥も少なく、レジスト材料として非常に有用である。
更に本発明の光酸発生剤は、通常のモノオニウム塩と比較して高感度である。これについて原因は定かではないが、結果として従来トレードオフの関係にあった感度とMEFをバランスよく改善することが可能となる。
【0032】
本発明の上記一般式(1a)又は(1b)で示される光酸発生剤について、これをレジスト材料に配合する場合、その配合量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0.1〜40質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。これよりも少ない場合は、十分に機能せず、多すぎる場合は感度が低下したり、溶解性不足で異物が発生するなどの性能劣化が懸念される。
【0033】
本発明のカルボン酸オニウム塩は、例えば下記Scheme1に従って合成される。
【化10】
(式中、A
1は上記と同様である。)
【0034】
トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートに対し、ジスルホニルハライドを塩基性条件下反応させることで、目的のビススルホニウム塩が合成される。
ここで、酸ハライドの代わりに末端ジハロゲン化アルキルを用いればエーテル結合を、ジイソシアネート化合物を用いればカーバメート結合を、ジスルホニルハライドを用いればスルホン酸エステル結合を、ジ−ハロギ酸エステルを用いればカーボネート結合を有するビスオニウム塩を同様に合成することができる。また、出発物質のカチオンを変更すれば、カチオン構造の異なったビスオニウム塩を合成できる。ヨードニウムカチオンも同様に合成可能である。
あるいは、出発物質のカチオン種をナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等にして上記Schemeに従って誘導体を調製し、その後イオン交換反応によって目的とするカチオン種へ変更する方法でも合成可能である。なお、イオン交換は公知の方法で容易に達成され、例えば特開2007−145797号公報を参考にすることができる。
【0035】
本発明のレジスト材料は、
(A)上記一般式(1a)又は(1b)で示される光酸発生剤を必須成分とし、その他の材料として、(B)ベース樹脂及び(E)有機溶剤を含有する。
更に必要により、
(C)上記一般式(1a)又は(1b)で示される光酸発生剤以外の光酸発生剤、
更に必要により、
(D)クエンチャー、
を配合でき、なお更に必要により、
(F)水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤、及び/又は、水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)、
更に必要により、
(G)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール等を含有することができる。
【0036】
(B)ベース樹脂
本発明のレジスト材料に使用されるベース樹脂としては、下記一般式(2)で示される繰り返し単位と下記一般式(3)で示される繰り返し単位とを含有する高分子化合物であることが好ましい。
【化11】
(式中、R
1は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。Zは単結合、フェニレン基、ナフチレン基及び(主鎖)−C(=O)−O−Z’−のいずれかを示す。Z’はヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環のいずれかを有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、又は炭素数3〜10の分岐状又は環状のアルキレン基を示すか、あるいはフェニレン基又はナフチレン基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLは水素原子を示すか、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環及びカルボン酸無水物から選択されるいずれか一つ以上の構造を有する極性基を示す。)
【0037】
上記一般式(2)中のZを変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。
【化12】
【0038】
上記一般式(2)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0040】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、R
L01、R
L02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。R
L03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものあるいは炭素原子間に酸素原子が介在されたものを挙げることができる。具体的な直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が例示できる。具体的な置換アルキル基としては、下記のものが例示できる。
【0042】
R
L01とR
L02、R
L01とR
L03、R
L02とR
L03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR
L01、R
L02、R
L03のうち環形成に関与する基はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0043】
式(L2)において、R
L04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示し、三級アルキル基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、2−シクロペンチルプロパン−2−イル基、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル基、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)プロパン−2−イル基、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基等が例示でき、トリアルキルシリル基としては、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が例示でき、オキソアルキル基としては、具体的には3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が例示できる。yは0〜6の整数である。
【0044】
式(L3)において、R
L05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。m’は0又は1、n’は0、1、2、3のいずれかであり、2m’+n’=2又は3を満足する数である。
【0045】
式(L4)において、R
L06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L05と同様のもの等が例示できる。R
L07〜R
L16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。R
L07〜R
L16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、R
L07とR
L08、R
L07とR
L09、R
L07とR
L10、R
L08とR
L10、R
L09とR
L10、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の二価炭化水素基を示し、具体的には上記一価炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、R
L07〜R
L16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、R
L07とR
L09、R
L09とR
L15、R
L13とR
L15、R
L14とR
L15等)。
【0046】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化15】
【0047】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0048】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0049】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−n−プロピルシクロペンチル基、1−イソプロピルシクロペンチル基、1−n−ブチルシクロペンチル基、1−sec−ブチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル基、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル基、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル基等が例示できる。
【0050】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記一般式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化16】
【0051】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。R
L41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0052】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化17】
【0053】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化18】
【0054】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50モル%以上であることが好ましく、exo比率が80モル%以上であることが更に好ましい。
【0056】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】
【0057】
また、炭素数4〜20の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、具体的にはR
L04で挙げたものと同様のもの等が例示できる。
【0058】
前記一般式(2)で示される繰り返し単位として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化21】
【0064】
上記具体例はZが単結合の場合であるが、Zが単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。Zが単結合以外の場合における具体例は既に述べた通りである。
【0065】
前記一般式(3)において、YLは水素原子、あるいはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物から選択されるいずれか一つあるいは複数の構造を有する極性基を示す。具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されない。
【化27】
【0074】
前記一般式(3)で示される繰り返し単位を使用する場合において、特にラクトン環を極性基として有するものが最も好ましく用いられる。
【0075】
本発明のレジスト材料に使用するベース樹脂は既に述べた通り、上記一般式(2)及び(3)で示される繰り返し単位を含むことを特徴とするが、更に他の繰り返し単位として下記一般式(d1)あるいは(d2)のいずれかで示される繰り返し単位を含んでもよい。
【化36】
(式中、R
1、R
11、R
12、R
13は上記と同様である。L’は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。R
Yはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。Aは水素原子かトリフルオロメチル基を示す。L’’は単結合か、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の二価炭化水素基を示す。nは0又は1を示すが、L’’が単結合のとき、nは必ず0である。)
【0076】
上記一般式(d1)中、R
1の詳細は既に述べた通りである。L’は炭素数2〜5のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。Aは水素原子かトリフルオロメチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。R
Yはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。
【0077】
上記一般式(d1)中、アニオン部位の具体的な構造としては、特開2010−113209号公報や特開2007−145797号公報に記載のものが例示できる。
【0078】
上記一般式(d2)中、R
1、R
11、R
12、R
13及びAについては既に述べた通りである。L’’は単結合か、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、又は炭素数3〜20の分岐状又は環状の二価炭化水素基を示す。nは0又は1を示すが、L’’が単結合のとき、nは必ず0である。
【0079】
上記一般式(d1)中、Aが水素原子の場合、アニオン部位の具体的な構造としては、特開2010−116550号公報に詳しい。また、Aがトリフルオロメチル基の場合、アニオン部位の具体的な構造としては、特開2010−77404号公報に記載のものが例示できる。
【0080】
本発明のレジスト材料に含まれるベース樹脂は、上記一般式(2)及び(3)、また必要に応じて上記一般式(d1)あるいは(d2)のいずれかを有することを特徴とするが、更に他の繰り返し単位として酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位を共重合させても構わない。酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位としては、水酸基が保護された構造を一つ、又は二つ以上有し、酸の作用により保護基が分解し、水酸基が生成するものであれば特に限定されるものではないが、下記一般式(10a)で表される構造の繰り返し単位が好ましい。
【0081】
【化37】
(一般式(10a)中、R
1は上記と同様である。R
aはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。但し、R
aは上記一価炭化水素基が下記一般式(10b)で示される置換基を1〜4のうちいずれかの数だけ有する。)
【化38】
(一般式(10b)中、R
bは酸不安定基である。破線は結合手を表す。)
【0082】
上記一般式(10a)で表される繰り返し単位として、以下の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化39】
【0085】
【化42】
(式中、R
1は上記と同様である。R
bの定義は前述した酸不安定基XAと同様である。)
【0086】
上記一般式(10b)中の酸不安定基R
bは、酸の作用により脱保護し、水酸基を発生させるものであればよく、構造は特に限定されないが、アセタール構造、ケタール構造、又はアルコキシカルボニル基等が挙げられ、具体例としては以下の構造を挙げることができる。
【化43】
(式中、破線は結合手を表す。)
【0087】
上記一般式(10b)中の酸不安定基R
bとして、特に好ましい酸不安定基は、下記一般式(10c)で表されるアルコキシメチル基である。
【化44】
(一般式(10c)中、破線は結合手を表す(以下、同様)。R
cは炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
【0088】
上記一般式(10c)で表される酸不安定基として、具体的には以下の例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化45】
【0091】
更に、本発明のレジスト材料に使用するベース樹脂として、更に他の繰り返し単位を共重合させても構わない。例えば、メタクリル酸メチル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン誘導体などの環状オレフィン類、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。また、開環メタセシス重合体の水素添加物は特開2003−66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0092】
本発明のレジスト材料に用いられる高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは3,000〜100,000である。この範囲を外れると、エッチング耐性が極端に低下したり、露光前後の溶解速度差が確保できなくなって解像性が低下したりすることがある。分子量の測定方法はポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。
【0093】
これら高分子化合物を合成するには、一つの方法としては不飽和結合を有するモノマーを1種あるいは数種を有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0094】
本発明のレジスト材料に用いられる(B)成分の高分子化合物(ベース樹脂)において、各単量体から得られる各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されるものではない。
(I)上記式(2)で示される構成単位の1種又は2種以上を1モル%以上60モル%以下、好ましくは5〜50モル%、より好ましくは10〜50モル%含有し、
(II)上記式(3)で示される構成単位の1種又は2種以上を40〜99モル%、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%含有し、必要に応じ、
(III)上記式(d1)あるいは(d2)のいずれか一つの構成単位の1種又は2種以上を0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%含有し、必要に応じ、
(IV)その他の単量体に基づく構成単位の1種又は2種以上を0〜80モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜50モル%含有することができる。
【0095】
(C)上記一般式(1a)又は(1b)で示される光酸発生剤以外の光酸発生剤
本発明のレジスト材料は上記一般式(1a)又は(1b)で示される光酸発生剤を必須とし、更に下記一般式(4)で示される光酸発生剤を含有することが好ましい。
【化48】
(式中、R
2、R
3及びR
4は前述のR
11、R
12及びR
13と同様である。X
-は下記一般式(5)〜(8)のいずれかを示す。)
【化49】
(式中、R
a1、R
b1、R
b2、R
c1、R
c2、R
c3は相互に独立にフッ素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。またR
b1とR
b2、及びR
c1とR
c2は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R
d1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。)
【0096】
上記一般式(5)中、R
a1はフッ素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。
【0097】
上記一般式(5)における好ましい構造としては、下記一般式(5’)で示される。
【化50】
(式中、R
77は水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R
88はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、又は炭素数3〜30の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。)
【0098】
上記式(5’)中、R
77は水素原子又はトリフルオロメチル基を表し、より好ましくはトリフルオロメチル基である。R
88はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜30の直鎖状、又は炭素数3〜30の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。R
88に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。R
88の一価炭化水素基としては、特に炭素数6〜30であることが、微細パターン形成において高解像性を得る上ではより好ましい。R
88として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、3−シクロヘキセニル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、テトラシクロドデカニルメチル基、ジシクロヘキシルメチル基、イコサニル基、アリル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メチルチオメチル基、アセトアミドメチル基、トリフルオロエチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、アセトキシメチル基、2−カルボキシ−1−シクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、3−オキソシクロヘキシル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0099】
一般式(5’)のスルホニウム塩の合成に関しては、特開2007−145797号公報、特開2008−106045号公報、特開2009−7327号公報、特開2009−258695号公報に詳しい。
また、特開2010−215608号公報、特開2012−41320号公報、特開2012−106986号公報、特開2012−153644号公報等に記載のスルホニウム塩も好適に用いられる。
より具体的に好ましい光酸発生剤を例示する。
【0100】
【化51】
(式中、Acはアセチル基、Phはフェニル基を示す。)
【0101】
【化52】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
【0102】
上記一般式(6)中、R
b1及びR
b2は相互に独立にフッ素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。具体的には上記R
a1で例示したものと同様のものが挙げられるが、好ましくはフッ素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、R
b1及びR
b2は互いに結合してこれらが結合する基(−CF
2−SO
2−N
-−SO
2−CF
2−)と共に環を形成してもよく、特にフッ素化エチレン基やフッ素化プロピレン基で環構造を形成するものが好ましい。
【0103】
上記式(7)中、R
c1、R
c2及びR
c3は相互に独立にフッ素原子を示すか、あるいはヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。具体的には上記R
a1で例示したものと同様のものが挙げられるが、好ましくはフッ素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖状フッ素化アルキル基である。また、R
c1及びR
c2は互いに結合してこれらが結合する基(−CF
2−SO
2−C
-−SO
2−CF
2−)と共に環を形成してもよく、特にフッ素化エチレン基やフッ素化プロピレン基で環構造を形成するものが好ましい。
【0104】
上記一般式(8)中、R
d1はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜40の直鎖状、又は炭素数3〜40の分岐状又は環状の一価炭化水素基を示す。R
d1に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。R
d1の一価炭化水素基としては、特に炭素数6〜30であることが、微細パターン形成において高解像性を得る上ではより好ましい。R
d1として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、3−シクロヘキセニル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、テトラシクロドデカニルメチル基、ジシクロヘキシルメチル基、イコサニル基、アリル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メチルチオメチル基、アセトアミドメチル基、トリフルオロエチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、アセトキシメチル基、2−カルボキシ−1−シクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、3−オキソシクロヘキシル基を例示できるが、これらに限定されない。
一般式(8)のアニオンを有するスルホニウム塩の合成に関しては、特開2010−215608号公報に詳しい。
より具体的に好ましい光酸発生剤を例示する。
【0105】
【化53】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
【0106】
なお、上記一般式(8)で示されるアニオンを有する光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素は有していないが、β位に二つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、レジストポリマー中の酸不安定基を切断するには十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
【0107】
上記光酸発生剤のうち、一般式(5’)のものあるいは一般式(8)で示される構造を有するものが、酸拡散が小さく、かつレジスト溶剤への溶解性にも優れており、特に好ましい。
【0108】
これら光酸発生剤(C)の添加量は、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し0〜40質量部であり、配合する場合は0.1〜40質量部であることが好ましく、更には0.1〜20質量部であることが好ましい。多すぎると解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがある。
【0109】
(D)クエンチャー
本発明は、クエンチャーを添加することもできる。本明細書においてクエンチャーとは、光酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を意味する。このようなクエンチャーとしては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物を挙げることができる。また、特許第3790649号公報に記載の化合物のように、1級又は2級アミンをカーバメート基として保護した化合物も挙げることができる。
【0110】
なお、これらクエンチャーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001〜12質量部、特に0.01〜8質量部が好ましい。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。また、これらクエンチャーを添加することで基板密着性を向上させることもできる。
【0111】
また、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及び特許第3991462号公報に記載のカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして併用することもできる。但しこれらはカウンターアニオンが弱酸の共役塩基であることを条件とする。ここでいう弱酸とは、ベース樹脂に使用する酸不安定基含有単位の酸不安定基を脱保護させることのできない酸性度を示す。上記オニウム塩は、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸の共役塩基をカウンターアニオンとして有するオニウム塩型光酸発生剤と併用させたときにクエンチャーとして機能する。
即ち、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると塩交換により弱酸を放出し強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため見掛け上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
ここで強酸を発生する光酸発生剤がオニウム塩である場合には、上記のように高エネルギー線照射により生じた強酸が弱酸に交換することはできるが、高エネルギー線照射により生じた弱酸は未反応の強酸を発生するオニウム塩と衝突して塩交換を行うことはできないと考えられる。これは、オニウムカチオンがより強酸のアニオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。
【0112】
また、含窒素置換基を有するオニウム塩を併用してもよい。このような化合物は、未露光部ではクエンチャーとして機能し、露光部は自身の発生酸との中和によってクエンチャー能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009−109595号公報、特開2012−46501号公報等を参考にすることができる。
【0113】
(E)有機溶剤
本発明で使用される(E)成分の有機溶剤としては、高分子化合物、光酸発生剤、クエンチャー、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を加えることもできる。
【0114】
本発明ではこれらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が特に優れている1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200〜7,000質量部、特に400〜5,000質量部が好適である。
【0115】
(F)水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤、及び/又は、水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)
本発明のレジスト材料中には界面活性剤(F)成分を添加することができ、特開2010−215608号公報や特開2011−16746号公報に記載の(S)定義成分を参照することができる。
水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、上記公報に記載の界面活性剤の中でもFC−4430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30、及び下記構造式(surf−1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【化54】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の記載に拘わらず、上記式(surf−1)のみに適用される。Rは二〜四価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には二価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、三価又は四価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化55】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0116】
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0〜3の整数、nは1〜4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
【0117】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有し、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また露光後、ポストベーク後のアルカリ現像時には可溶化し欠陥の原因となる異物にもなり難いため有用である。この界面活性剤は水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。このような高分子型の界面活性剤は下記に示すことができる。
【0118】
【化56】
(式中、R
114はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、R
115はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を示し、同一単量体内のR
115はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、合計して炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R
116はフッ素原子又は水素原子、又はR
117と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数の和が3〜10の非芳香環を形成してもよい。R
117は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基で、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。R
118は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、R
117とR
118が結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、その場合、R
117、R
118及びこれらが結合する炭素原子とで炭素数の総和が2〜12の三価の有機基を表す。R
119は単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基、R
120は同一でも異なってもよく、単結合、−O−、又は−CR
114R
114−である。R
121は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、同一単量体内のR
115と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜6の非芳香環を形成してもよい。R
122は1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基を示し、Rfは炭素数3〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基、3H−パーフルオロプロピル基、4H−パーフルオロブチル基、5H−パーフルオロペンチル基、又は6H−パーフルオロヘキシル基を示す。X
2はそれぞれ同一でも異なってもよく、−C(=O)−O−、−O−、又は−C(=O)−R
123−C(=O)−O−であり、R
123は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基である。また、0≦(a’−1)<1、0≦(a’−2)<1、0≦(a’−3)<1、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)<1、0≦b’<1、0≦c’<1であり、0<(a’−1)+(a’−2)+(a’−3)+b’+c’≦1である。)
より具体的に上記単位を示す。
【0120】
これら水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報、特開2010−250105号公報、特開2011−42789号公報も参照できる。
【0121】
上記高分子型の界面活性剤の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000である。この範囲から外れる場合は、表面改質効果が十分でなかったり、現像欠陥を生じたりすることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値を示す。添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部の範囲である。これらは特開2010−215608号公報に詳しい。
【0122】
(G)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール
本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については、特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報を参照できる。
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる。
更に、有機酸誘導体、酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)の添加は任意であるが、上記各成分と同様に特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載の化合物を参照できる。
【0123】
本発明では、更に上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供する。
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO
2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーあるいはEUVの如き高エネルギー線を露光量1〜200mJ/cm
2、好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0124】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型ともう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0125】
更に、ArFリソグラフィーの32nmまでの延命技術として、ダブルパターニング法が挙げられる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0126】
なお、本発明のパターン形成方法の現像液には上述のように0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用いることができるが、有機溶剤を用いて未露光部を現像/溶解させるネガティブトーン現像の手法を用いてもよい。
【0127】
この有機溶剤現像には現像液として2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上を用いることができる。
【実施例】
【0128】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0129】
[合成例1]光酸発生剤の合成
本発明の光酸発生剤を以下に示す処方で合成した。
[合成例1−1]PAG−1の合成
【化58】
特開2007−145804号公報に記載の方法に準じて合成した、トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート4.9g、トリエチルアミン1.0g、N,N’−ジメチル−4−アミノピリジン0.2g、塩化メチレン20gの混合溶液に、アジピン酸クロリド0.8gを氷冷下滴下した。室温にて1時間撹拌後、希塩酸を加えて反応を停止した。その後有機層を分取し、水洗を行った後に減圧濃縮を行い、塩化メチレンを留去した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮を行い、濃縮液にジエチルエーテルを加えて上澄みを除去することで、目的物を3.8g得た(収率77%)。
【0130】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図1及び
図2に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)及び原料トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートが観測されている。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+263((C
6H
5)
3S
+相当)
NEGATIVE M
-589(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
6H
4−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0131】
[合成例1−2]PAG−2の合成
【化59】
特開2007−145804号公報に記載の方法に準じて合成した、トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート4.9g、トリエチルアミン1.0g、N,N’−ジメチル−4−アミノピリジン0.2g、塩化メチレン20gの混合溶液に、テレフタル酸クロリド0.9gと塩化メチレン5gの混合溶液を氷冷下滴下した。室温にて1時間撹拌後、希塩酸を加えて反応を停止した。その後有機層を分取し、水洗を行った後に減圧濃縮を行い、塩化メチレンを留去した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮を行い、濃縮液にジエチルエーテルを加えて上澄みを除去することで、目的物を4.4g得た(収率87%)。
【0132】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図3及び
図4に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(塩化メチレン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(KBr;cm
-1)
3424、1751、1477、1448、1330、1253、1216、1186、1164、1103、1072、995、904、748、725、684、640、576、551、503cm
-1。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+263((C
6H
5)
3S
+相当)
NEGATIVE M
-569(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
4H
8−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0133】
[合成例1−3]PAG−3の合成
【化60】
特開2007−145804号公報に記載の方法に準じて合成した、トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート9.8g、トリエチルアミン2.0g、N,N’−ジメチル−4−アミノピリジン0.5g、塩化メチレン40gの混合溶液に、1,3−アダマンタンジカルボン酸クロリド2.4gと塩化メチレン5gの混合溶液を氷冷下滴下した。室温にて1時間撹拌後、希塩酸を加えて反応を停止した。その後有機層を分取し、水洗を行った後に減圧濃縮を行い、塩化メチレンを留去した。濃縮液にメチルイソブチルケトンを加えて再び減圧濃縮を行い、濃縮液にジエチルエーテルを加えて上澄みを除去することで、目的物を4.8g得た(収率41%)。
【0134】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図5及び
図6に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジエチルエーテル、水)及び、アダマンタンジカルボン酸、原料トリフェニルスルホニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートが観測されている。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+263((C
6H
5)
3S
+相当)
NEGATIVE M
-647(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
10H
14−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0135】
[合成例1−4]PAG中間体1の合成
【化61】
3Lの4つ口フラスコに、特開2012−107151号公報に記載の方法に準じて合成した、ベンジルトリメチルアンモニウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネート341g、スクシニルクロリド62g、アセトニトリル1,000gの混合溶液にピリジン95gを氷冷下で滴下し、滴下後昇温して室温にて18時間熟成した。反応終了後、希塩酸を加えて反応を停止し、その後エバポレーターで反応液を濃縮してアセトニトリルを留去した。得られた残渣に塩化メチレン1,000gを加え、2質量%のベンジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液500gで4回分液操作を行い、カチオンとアニオンの比を整え、その後水洗を行った。塩化メチレン溶液を濃縮し、メチルイソブチルケトン300gで共沸脱水を行い、ジイソプロピルエーテル1,000gで晶析を行った。析出した結晶を濾過、乾燥させることで目的物を258g灰色結晶として得た(収率77%)。
【0136】
[合成例1−5]PAG−4の合成
【化62】
合成例1−4で得られたPAG中間体1を84g、公知の処方で合成したトリフェニルスルホニウム=メチルサルフェート90g、塩化メチレン400g、水200gを混合し、室温で18時間撹拌した。撹拌後水洗分液を行い、塩化メチレンを濃縮した。その後メチルイソブチルケトン100gで共沸脱水を行い、次いでジイソプロピルエーテルを加えた後に上澄みを除いた。その後残渣を減圧濃縮することで目的物を117g得た(収率98%)
【0137】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図7及び
図8に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(D−ATR;cm
-1)
3494、3090、3064、2972、1770、1477、1448、1371、1251、1218、1186、1171、1126、1073、995、905、841、750、645、642、575cm
-1。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+263((C
6H
5)
3S
+相当)
NEGATIVE M
-541(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
2H
4−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0138】
[合成例1−6]PAG−5の合成
【化63】
合成例1−4で得られたPAG中間体1を6g、公知の処方で合成した4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム=メチルサルフェートの水溶液85g、塩化メチレン100gを混合し、室温で15時間撹拌した。撹拌後水洗分液を行い、塩化メチレンを濃縮した。その後メチルイソブチルケトン50gで共沸脱水を行い、次いでジイソプロピルエーテルを加えた後に上澄みを除いた。その後残渣を減圧濃縮することで目的物であるPAG−5を8.2g得た(収率96%)。
【0139】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図9及び
図10に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(D−ATR;cm
-1)
3501、3064、2966、2873、1770、1709、1478、1447、1403、1369、1251、1217、1185、1171、1073、995、839、752、685、643、554cm
-1。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+319((C
6H
5)
2(C
4H
9−C
6H
4)S
+相当)
NEGATIVE M
-541(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
2H
4−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0140】
[合成例1−7]PAG−6の合成
【化64】
合成例1−4で得られたPAG中間体1を8.4g、特開2012−41320号公報に記載の処方で調製した4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム=メタンスルホネートの水溶液110g、塩化メチレン100gを混合し、室温で15時間撹拌した。撹拌後水洗分液を行い、塩化メチレンを濃縮した。その後メチルイソブチルケトン50gで共沸脱水を行い、次いでジイソプロピルエーテルを加えた後に上澄みを除いた。その後残渣を減圧濃縮することで目的物であるPAG−6を9.6g得た(収率86%)。
【0141】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR,
19F−NMR/DMSO−d
6)の結果を
図11及び
図12に示す。なお、
1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(D−ATR;cm
-1)
2969、1770、1588、1571、1509、1463、1428、1372、1323、1248、1216、1186、1170、1127、1088、1033、992、764、643cm
-1。
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M
+289((C
17H
21O
2)S
+相当)
NEGATIVE M
-541(HO
3S−CF
2CH(CF
3)−(OCOC
2H
4−COO)−CH(CF
3)−CF
2−SO
3-相当)
【0142】
[合成例2]
本発明のレジスト材料に用いる高分子化合物を以下に示す方法で合成した。なお、下記例中における“GPC”はゲルパーミエーションクロマトグラフィーのことであり、得られた高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として測定した。
【0143】
[合成例2−1]高分子化合物(P−1)の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸=1−tert−ブチルシクロペンチル22gとメタクリル酸=2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル17g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.48g、2−メルカプトエタノール0.41g、メチルエチルケトン50gをとり、単量体−重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体−重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌したメタノール640g中に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をメタノール240gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して36gの白色粉末状の共重合体を得た(収率90%)。GPCにて分析したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は8,755、分散度は1.94であった。
【化65】
【0144】
[合成例2−2〜2−12]高分子化合物(P−2〜P−12)の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、上記合成例2−1と同様の手順により、下記高分子化合物を製造した。
製造した高分子化合物(P−2〜P−12)の組成を下記表1に示す。なお、表1において、導入比はモル比を示す。また表1中、各単位の構造を下記表2及び表3に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
[実施例1−1〜1−20、比較例1−1〜1−7]
レジスト溶液の調製
上記合成例で示したスルホニウム塩と高分子化合物、上記合成例で示したスルホニウム塩以外のスルホニウム塩(PAG−X,Y,Z)、クエンチャー(Q−1)及びアルカリ可溶型界面活性剤(F−1)を、界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解させてレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト溶液をそれぞれ調製した。調製された各レジスト溶液の組成を下記表4に示す。
【0149】
なお、上記合成例で示したスルホニウム塩と高分子化合物と共にレジスト材料として使用したクエンチャー(Q−1)、溶剤、アルカリ可溶型界面活性剤(F−1)、上記合成例で示したスルホニウム塩以外のスルホニウム塩(PAG−X,Y,Z)及び界面活性剤Aの詳細は下記の通りである。
Q−1:オクタデカン酸2−(4−モルホリニル)エチルエステル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
PAG−X:
トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(特開2007−145797号公報に記載の化合物)
PAG−Y:
トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロパン−1−スルホネート(特開2010−215608号公報に記載の化合物)
PAG−Z:
トリフェニルスルホニウム=2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)エタンスルホネート(特開2010−155824号公報に記載の化合物)
【0150】
アルカリ可溶型界面活性剤(F−1):下記式に記載の化合物
ポリ(メタクリル酸=2,2,3,3,4,4,4−へプタフルオロ−1−イソブチル−1−ブチル・メタクリル酸=9−(2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロエチルオキシカルボニル)−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−5−オン−2−イル)
分子量(Mw)=7,700
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化66】
【0151】
界面活性剤A:
3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化67】
【0152】
【表4】
【0153】
[実施例2−1〜2−20、比較例2−1〜2−8]
レジスト材料の評価:ArF露光(1)
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上に、上記表4で示されたレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、90nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、Crマスク)を用いて液浸露光し、任意の温度で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0154】
(評価方法)
レジストの評価は、40nmの1:1ラインアンドスペースパターンを対象とし、電子顕微鏡にて観察、ライン寸法幅が40nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm
2)とした。最適露光量におけるパターン形状を比較し、良否を判別した。
更に、上記評価においてマスクのピッチは固定したまま、マスクのライン幅を変えて、前記感度評価における最適露光量で照射してパターン形成した。マスクのライン幅とパターンのスペース幅の変化から、次式によりMEFの値を求めた。この値が1に近いほど性能が良好である。
MEF=(パターンのスペース幅/マスクのライン幅)−b
b:定数
【0155】
次いで、現像後に形成されたパターン中の欠陥数を欠陥検査装置KLA2800(KLA−Tencor(株)製)により検査し、次式に従って欠陥密度を求めた。
欠陥密度(個/cm
2)=検出された総欠陥数/検査面積
形成したパターン:40nmの1:1ラインアンドスペースの繰り返しパターン
欠陥検査条件:光源UV、検査ピクセルサイズ0.28μm、セルツーセルモード
本評価方法においては、良好:0.05個/cm
2未満、不良:0.05個/cm
2以上とした。
また、露光量を大きくすることでライン寸法を細らせた場合に、ラインが倒れずに解像する最小寸法を求め、倒れ限界(nm)とした。数値が小さいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0156】
各評価結果を表5に示す。
【表5】
【0157】
表5の結果より、本発明のレジスト材料は高解像性でパターン形状及びMEFに優れ、かつ欠陥数も少なく、ArF液浸リソグラフィーの材料として好適であることが示された。
また、比較例2−8においては、PEB温度を低めに設定することで酸の拡散を抑え、結果としてMEFが改善されているが、その代わり感度が低下していることがわかる。一方で本発明の光酸発生剤を使用した場合においては、良好なMEF値を示しつつ感度も低下していない。
【0158】
[実施例3−1〜3−20、比較例3−1〜3−8]
レジスト材料の評価:ArF露光(2)
上記表4に示されたレジスト材料を、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上へスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。これをArF液浸エキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、4/5輪帯照明)を用いて、以下に説明するマスクA又はBを介してパターン露光を行った。
【0159】
ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅50nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクAを用いて照射を行った。露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行った。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅50nm、ピッチ100nmのラインアンドスペースパターン(以下、LSパターン)が得られた。
【0160】
ウエハー上寸法がピッチ200nm、ライン幅45nmのラインが配列された6%ハーフトーン位相シフトマスクBを用いて照射を行った。露光後60秒間の熱処理(PEB)を施した後、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行った。その結果、マスクで遮光された未露光部分が現像液に溶解してイメージ反転されたスペース幅45nm、ピッチ200nmの孤立スペースパターン(以下、トレンチパターン)が得られた。
【0161】
[感度評価]
感度として、前記マスクAを用いた評価において、スペース幅50nm、ピッチ100nmのLSパターンが得られる最適な露光量Eop(mJ/cm
2)を求めた。
【0162】
[マスクエラーファクター(MEF)評価]
前記マスクAを用いた評価において、マスクのピッチは固定したまま、マスクのライン幅を変えて、前記感度評価における最適露光量で照射してパターン形成した。マスクのライン幅とパターンのスペース幅の変化から、次式によりMEFの値を求めた。この値が1に近いほど性能が良好である。
MEF=(パターンのスペース幅/マスクのライン幅)−b
b:定数
【0163】
[焦点深度(DOF)マージン評価]
焦点マージン評価として、前記マスクBを用いたトレンチパターンにおける35nmのスペース幅を形成する露光量及び焦点深度をそれぞれ最適露光量及び最適焦点深度としたまま、焦点深度を変化させたときに、35nmスペース幅の±10%(31.5〜38.5nm)の範囲内で形成される焦点深度マージン(単位:nm)を求めた。この値が大きいほど焦点深度の変化に対するパターン寸法変化が小さく、焦点深度(DOF)マージンが良好である。
【0164】
各評価結果を表6に示す。
【表6】
【0165】
表6の結果より、本発明のレジスト材料が、有機溶剤現像によるネガティブパターン形成において、感度の低下を伴うことなくMEFに優れることがわかった。また、トレンチパターンの焦点深度(DOF)マージンに優れることも確認された。以上のことから、本発明のレジスト材料は、有機溶剤現像プロセスにおいても有用であることが示唆された。
【0166】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。