(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板上の塗布液を乾燥させるために基板が回転するときに、前記基板の周縁部に溶剤の蒸気を供給するための溶剤蒸気供給部を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の塗布装置。
前記制御部は、基板上に塗布液が塗布されるときには基板を第1の回転数で回転させ、次に基板を第1の回転数よりも低い第2の回転数で回転させ、更に塗布液を乾燥させるために第2の回転数よりも高い回転数で回転させるように制御信号を出力し、また基板が第2の回転数で回転した後における設定された時点で、塗布液が塗布されるときの排気量よりも少ない排気量となるように制御信号を出力するものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る塗布装置(レジスト塗布装置)の一例について、
図1〜
図5を参照して説明する。このレジスト塗布装置には、
図1に示すように、基板(被処理体)であるウエハWに対してレジスト液(処理液)を塗布してレジスト膜(塗布膜)の形成処理を行う処理部11が横並びに複数箇所この例では2箇所に設けられている。各々の処理部11には、ウエハWが置かれる処理雰囲気の排気を行うための排気路31が設けられており、これら排気路31には、後で詳述するように、当該排気路31内における流路の開閉及び圧力(流速)の調整を行うための開閉部であるダンパー48が介設されている。そして、本発明では、ダンパー48における開度を調整することによって、ウエハWの表面に塗布されるレジスト膜の膜厚寸法について、面内に亘って均一化するようにしている。続いて、レジスト塗布装置の詳細及びレジスト液の塗布方法について以下に説明する。
図1中10は各処理部11が置かれる基部である。また、
図1中49は、工場全体に共通に設けられる排気ダクトであり、従って各々の処理部11にて共用されている。尚、
図1では各処理部11について模式的に簡略化して描画している。
【0012】
基部10上には、各処理部11の並びに沿って形成されたレール22が設けられており、このレール22上にはアーム21によって支持された集合ノズル1が当該アーム21を介して水平方向に移動自在に配置されている。集合ノズル1の下面側には、複数種類のレジスト液やシンナーなどの溶剤を夫々吐出する吐出部であるノズル24が設けられている。レジスト液を吐出するノズル24の上流側には、レジスト液が貯留された貯留部21aが設けられており、このレジスト液は、シンナーなどの溶剤により希釈された状態となっている。貯留部21aにおける希釈済みのレジスト液の粘度は、例えば25℃において、1cP〜300cPとなっている。
図1中21bは、溶剤の貯留部である。尚、
図1では、レジスト液の貯留部21aについては複数の貯留部21aのうち一つだけ代表して描画している。
【0013】
また、
図1に示すように、各々の処理部11を臨む位置における基部10上には、レール18が形成されており、このレール18には上端部に補助ノズル15が取り付けられたアーム17が水平方向に移動自在に配置されている。この補助ノズル15は、レジスト膜が形成されたウエハWの周縁部から当該レジスト膜を除去するために溶剤(シンナー)を吐出するためのものである。
図1中16aは、補助ノズル15を退避させるノズルバスであり、16bは集合ノズル1を退避させるノズルバスである。以上のノズル15、24、貯留部21aに組み合わされた送液ポンプや各バルブあるいは流量調整部は、後述の薬液供給機器110をなしている。また、
図1中72はウエハWを昇降させるための昇降ピンである。尚、
図2では集合ノズル1や補助ノズル15について簡略化して描画しており、昇降ピン72については図示を省略している。
【0014】
続いて、処理部11について説明する。処理部11には、
図2に示すように、ウエハWを裏面側から水平に吸引保持するためのスピンチャック14が基板保持部として設けられており、このスピンチャック14は、スピンチャックモータなどの回転機構14aによって鉛直軸周りに回転自在に構成されている。
図2中71はカップ体である。尚、各処理部11は、互いに同じ構成となっている。また、
図2では昇降ピン72の記載を省略している。
【0015】
図2に示すように、カップ体71は、この例では概略3つの部材により構成されている。具体的には、カップ体71は、ウエハWの裏面側周縁部を臨むように配置された内側カップ41と、この内側カップ41の外側に配置された中間カップ42と、中間カップ42の上側に積層された外側カップ43とにより構成されている。内側カップ41は、スピンチャック14上におけるウエハWの外周端よりも内側寄りの位置と前記外周端よりも外側に外れた位置との間を周方向に亘って結ぶように概略リング状に形成されたリング体(ガイド部)41aと、このリング体41aの外周端から下方側に向かって周方向に亘って伸び出す垂直壁41bとにより構成されている。リング体41aの上面は、中央側から周縁側に向かうにつれて下方側に向かって傾斜しており、ウエハWの外周部から振り切られたレジスト液を重力により落下させる(流れ落とす)ための傾斜面をなしている。リング体41aの上面には、ウエハWの裏面側周縁部に向けて溶剤を吐出するためのベベル洗浄ノズル41cが設けられており、このベベル洗浄ノズル41cは、ウエハWの半径方向に進退自在に配置されている。
【0016】
中間カップ42は、前記垂直壁41bから落下するレジスト液を受け止めるための凹部が周方向に亘って形成された概略環状の部材をなしている。中間カップ42の床面における垂直壁41bの概略下方側の位置には、当該垂直壁41bから落下したレジスト液を排出するための排液路45の一端側が接続されている。排液路45の他端側は、図示しない排液部に接続されている。
【0017】
そして、中間カップ42の底面において前記排液路45の開口端に対して側方側(平面で見たときにウエハWの半径方向外側)に寄った位置には、
図2に示すように、溶剤を貯留するために、上面側が開口する概略溝状の貯留部61が当該ウエハWを周方向に亘って囲むように配置されている。この貯留部61は、後述するように、レジスト膜を乾燥させる時、ウエハWの外周部に溶剤雰囲気を形成するためのものである。この貯留部61には、溶剤補給路(供給路)62の一端側が接続されており、この溶剤補給路62の他端側は、バルブ63及び流量調整部64を介して溶剤の貯留源65に接続されている。バルブ63及び流量調整部64により後述の溶剤補充部111が構成される。
【0018】
中間カップ42における排液路45の開口端に対してウエハWの中央側に寄った位置には、中間カップ42の内部を介してウエハWが置かれる処理雰囲気を排気するための排気口46が形成されている。前記排液路45の開口端と排気口46との間には、中間カップ42の床面から上方側に向かって周方向に亘って伸びる分離壁47が設けられており、この分離壁47によって処理雰囲気から気液の分離が行われる。言い換えると、後述の排気路31の基端側が下方側から中間カップ42の内部に気密に挿入されており、この排気路31の壁面の一部が前記分離壁47をなしている。排気口46は、平面で見て互いに離間するように例えば2箇所に形成されている。この排気口46から伸びる排気路31については、後で詳述する。
【0019】
中間カップ42における上端側外縁部は、上方側に向かって伸び出すと共に、内側に屈曲して屈曲部42aをなしており、当該屈曲部42aにおける先端部がスピンチャック14上におけるウエハWの外周端に近接するように水平に延伸されている。中間カップ42の屈曲部42aにおける上端側の水平面の高さ位置と、スピンチャック14におけるウエハWの表面の高さ位置とは、ほぼ同じ高さ位置となっている。屈曲部42aにおける下端側には、
図2に示すように、当該屈曲部42aの上方側の雰囲気と下方側の雰囲気とを連通させるための連通口42bが形成されている。
【0020】
この連通口42bは、
図3に示すように、平面で見た時に概略楕円形状となるように形成されており、周方向に沿って複数箇所この例では8箇所に互いに等間隔に配置されている。従って、スピンチャック14によりウエハWが鉛直軸周りに回転すると、ウエハWの周縁部から振り切られるレジスト液や溶剤と、このウエハWの遠心力により当該ウエハWの外周部側に向かう気流とが既述の屈曲部42aの下方側に排気流として入り込み、リング体41aの表面に沿って排液路45や排気口46に向かって流れていく。そして、後述するように、処理雰囲気の排気を停止する(ダンパー48を閉じる)と、いわば排気口46が閉じられるので、前記排気流のうち気体雰囲気は、レジスト液に含まれる溶剤が揮発して生成する揮発成分と共に、連通口42bを介してウエハWの外周部側に回り込む。
【0021】
既述の排気口46から各々伸びる2本の排気路31は、中間カップ42よりも下流側にて互いに合流して、既述の
図1にも示すように、当該排気路31内の流路の開閉及び流量調整を行うための概略板型のダンパー(開閉体)48を介して、工場の排気ダクト49に接続されている。即ち、排気ダクト49は、既に説明したように、工場全体に共通に設けられており、図示しない排気ポンプによって常時一定量の排気流を形成するように構成されている。言い換えると、排気路31は、工場全体の排気量のうち、一部の排気量を割り当てられている。ダンパー48及び当該ダンパー48が設けられた排気路31により開閉機構が構成される。尚、
図1では、排気ダクト49を一部切り欠いて描画している。
【0022】
従って、既述のダンパー48は、排気路31内の流路を閉止した場合であっても、
図2に示すように、他の処理部11あるいは別の半導体製造装置に悪影響を及ぼさないように(あるいは前記悪影響がなるべく小さくなるように)構成されている。即ち、ダンパー48が配置された排気路31は、
図1に示すように、概略箱型となっており、例えば上面側には開口部51が形成されている。そして、ダンパー48は、
図4(a)に示すように、この開口部51を気密に塞ぐと共に排気路31内の流路を開放する位置と、
図4(b)に示すように、前記開口部51から離間すると共に前記流路を閉止する位置と、の間で開閉できるように構成されている。
【0023】
そのため、ダンパー48が
図4(a)のように開口部51を塞ぐと、ウエハWが置かれる処理雰囲気が排気ダクト49に向かって例えば流量(第1の排気量)V0にて排気される。そして、ダンパー48が
図4(b)のように排気路31内の流路を塞ぐと、処理雰囲気の排気が停止される一方、塗布装置の外部の雰囲気(クリーンルーム内の雰囲気あるいは処理部11が置かれる塗布現像装置内の雰囲気)が排気ダクト49に向かって流量V0にて排気される。即ち、ダンパー48を閉止すると、処理雰囲気から排気される排気量(第2の排気量)は、既述の第1の排気量よりも少なくなるように調整され、具体的にはゼロとなる。
【0024】
更に、既述の
図2に示すように、ダンパー48が排気路31内を通流する気流に干渉する位置(前記開放する位置と閉止する位置との間の位置)では、排気ダクト49には、処理雰囲気と外部の雰囲気とが夫々流量Va及びVbにて流入する。そして、既述のように、排気ダクト49では各処理部11から排気する排気量が予め割り振られていることから、流量Vaと流量Vbとの合計値は、流量V0となる。言い換えると、排気路31内の気流に干渉するようにダンパー48を位置させると、処理雰囲気から排気ダクト49に排気される流量Vaが既述の流量V0よりも少なくなり、この減少分(V0−Va=Vb)だけ、外部の雰囲気が排気ダクト49に引き込まれる。
【0025】
そのため、排気ダクト49には、ダンパー48の位置に依らずに、ほぼ一定の流量V0の排気流が流れ込むので、他の処理部11や半導体製造装置に影響を及ぼさずに済む。即ち、この処理部11の排気路31に開口部51を設けていない場合には、当該排気路31内の流路をダンパー48により塞いで排気を停止すると、他の処理部11や半導体製造装置では、排気を停止した処理部11の分だけ排気量が増えようとする。一方、排気路31に開口部51を設けておくと、処理部11に割り当てられた流量V0の排気が排気ダクト49に向かって流れ込む。このダンパー48について、既述の
図1では奥側のダンパー48を開放した状態、手前側のダンパー48を半開にした状態を示している。以下の説明においては、ダンパー48を開放した状態を「高排気」、ダンパー48を半開にした状態を「低排気」と呼ぶものとする。
【0026】
既述の
図2に示すように、外側カップ43は、中間カップ42における連通口42bよりも外周側の位置から上方に向かって伸び出すと共に、ウエハWの外周端に対して上方側から対向するように屈曲している。外側カップ43の上方側には、処理雰囲気に清浄気体(クリーンエアー)のダウンフローの気流を形成するためのファンユニット55が配置されている。
【0027】
以上説明した塗布装置には、既述の
図1及び
図5に示すように、装置全体に対して制御信号を出力する制御部100が設けられている。この制御部100は、後述するレジスト膜の形成処理を行うように構成されたプログラムを格納した格納部101を備えており、既述の薬液供給機器110、溶剤補充部111及びダンパー48に制御信号を出力して、膜厚寸法の均一性に優れたレジスト膜をウエハWの表面に形成するように構成されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部100内にインストールされる。前記プログラムは、例えば手順を記載したプロセスレシピも含まれる。
【0028】
続いて、塗布装置の作用について、
図6〜
図10を参照して説明する。先ず、図示しない搬送アームと既述の昇降ピン72とによりウエハWをスピンチャック14上に載置すると共に真空吸着する(t0)。また、貯留部61には、溶剤を予め満たしておき、例えば任意の設定時間が経過する度に、溶剤が揮発によって残量がなくならないように、既述の溶剤補給路62を介して溶剤を補給しておく。中間カップ42の底面では、常温雰囲気によって溶剤が速やかに揮発して、溶剤雰囲気が形成される。ウエハWが置かれる処理雰囲気では、ファンユニット55によりダウンフローの気流が形成されており、この気流が排気路31に向かって排気されている。従って、溶剤の揮発により貯留部61から発生する溶剤雰囲気は、前記気流と共に排気される。ダンパー48は、
図6(b)に示すように、排気路31における流路に干渉するように位置して(半開きの状態となって)いる。従って、処理雰囲気と共に外部の雰囲気についても排気ダクト49に流れ込んでいるため、当該処理雰囲気における排気の状態は、
図6(c)に示すように、いわば低排気となっている。
【0029】
次いで、スピンチャック14の回転を開始して、
図6(a)に示すように、当該スピンチャック14の回転数を例えば1500rpmまで上昇させる(t1)と共に、
図6(b)、(c)に示すように、ダンパー48を全開にして、処理雰囲気を高排気の状態にする。そして、集合ノズル1のノズル24をウエハWの中央部に対向する位置まで移動させて、ノズル24から溶剤を吐出してプリウエット処理を行う。即ち、ノズル24から吐出された溶剤は、ウエハWの中央部に衝突した後、当該ウエハWの外周部側に向かって広がっていき、ウエハWの表面に亘って溶剤からなる液膜を形成すると共に、余分な溶剤がウエハWの外周縁から液切りされる。
【0030】
ウエハWの外周縁から液切りされた溶剤は、内側カップ41と中間カップ42との間の領域を介して中間カップ42の底面に落下して、その後液溜まりを形成すると排液路45に排出される。中間カップ42の底面における溶剤の液溜まりでは、処理部11が置かれる常温雰囲気により溶剤が揮発して、溶剤雰囲気が形成される。この溶剤雰囲気は、既述のようにダンパー48を全開に設定していることから、ウエハWの上方側の雰囲気及び貯留部61から発生する溶剤雰囲気と共に排気路31に排気される。
【0031】
続いて、
図6(a)〜(c)に示すように、ダンパー48については全開に設定したまま、スピンチャック14の回転数を第1の回転数(例えば2500rpm)まで増加させる(t2)と共に、レジスト液をウエハWの中央部に向かって吐出する。レジスト液は、ウエハWの遠心力により中央側から周縁側に向かって伸展されると共に、
図7に示すように、余分な液量が当該ウエハWの外周縁から液切りされる。ウエハWの外周縁から液切りされたレジスト液についても、内側カップ41と中間カップ42との間の領域を介して当該中間カップ42の底面に落下する。このレジスト液には既述のように溶剤が含まれていることから、中間カップ42内では、レジスト液から揮発した溶剤雰囲気が形成され、処理雰囲気から通流する排気流に乗って排気路31に排気される。
【0032】
次いで、
図6(a)〜(c)に示すように、ダンパー48を低排気(半開き)の状態に設定すると共に、スピンチャック14の回転数を第2の回転数(例えば100rpm)まで低下させる(t3)。こうしてウエハWの表面におけるレジスト膜の平坦化を行った後、スピンチャック14の回転数を例えば1500rpmに上昇させると共に、ダンパー48を閉止する(t4)。
【0033】
ウエハWの表面では、余分なレジスト液が当該ウエハWの外周縁から更に液切りされて、レジスト膜の平坦化がより一層進行する。また、ウエハWの表面では、レジスト膜から溶剤が揮発して、溶剤雰囲気が形成される。この溶剤雰囲気は、ウエハWの遠心力により外側に向かって広がり、中間カップ42と内側カップ41との間の領域に流れ込んでいく。しかしながら、ダンパー48を閉止しているので、前記溶剤雰囲気は、
図8に示すように、中間カップ42における連通口42bを介してウエハWの外周縁に向かって戻っていく。
【0034】
また、ウエハWの外周縁から液切りされたレジスト液は、中間カップ42の底面あるいは内側カップ41におけるリング体41aに付着する。そして、中間カップ42や内側カップ41に付着したレジスト液から、同様に溶剤が揮発して溶剤雰囲気が形成され、この溶剤雰囲気は処理雰囲気から流れ込む溶剤雰囲気と合流して、同様に連通口42bを経由した循環経路に乗る。また、貯留部61から発生する溶剤雰囲気についても、同様に連通口42bを介してウエハWの端部に向かって通流する。
【0035】
ここで、既に詳述したように、ウエハWの中央部に対向する領域では、
図9に示すように、レジスト膜から揮発した溶剤により溶剤雰囲気が形成されており、従って当該溶剤雰囲気に接するレジスト膜では、溶剤が揮発しにくくなる(乾燥しにくくなる)。一方、ウエハWの外周部側では、当該ウエハWの上方側からウエハWの遠心力により大気雰囲気(溶剤が含まれていない雰囲気)が流れ込もうとする。しかしながら、ダンパー48を閉止して、溶剤雰囲気が連通口42bを介してウエハWの外周縁に流れ込むようにしている。そのため、ウエハWの外周縁に対向する領域においても溶剤雰囲気が形成され、レジスト膜が乾燥しにくくなる。従って、遠心力によりウエハWの中央部側から周縁部側に向かって流れるレジスト液は、当該ウエハWの外周縁から速やかに液切りされる。
【0036】
こうしてウエハWの表面におけるレジスト膜は、後述の実施例からも分かるように、面内に亘って膜厚寸法が均一化する。この膜厚寸法の具体的数値を挙げると、30nm〜15000nmであり、この例では7000nmである。また、ウエハWに対して吐出したレジスト液の液量L1と、当該ウエハWの表面に残るレジスト液の液量L2との差分(L1−L2)は、レジスト液の使用量をなるべく少なくするために、ほぼゼロとなっており、詳しくは0.05ml〜7.5mlである。これら液量L1、L2の関係について数式で説明すると、L2=L1×120%〜1000%である。
【0037】
その後、ダンパー48を低排気の状態に切り替えると共に、ウエハWの回転数を増加させて、ベベル洗浄ノズル41cによるウエハWの裏面側周縁部におけるレジスト膜の除去や、集合ノズル1の溶剤吐出用のノズル24を用いたウエハWの表面側周縁部のレジスト膜の除去を行う。
【0038】
上述の実施の形態によれば、ウエハWの表面にレジスト液からなる塗布膜を形成した後、余分なレジスト液を振り切りながら乾燥させるにあたって、ダンパー48を閉止することにより、処理雰囲気の排気を停止している。また、中間カップ42の底面に貯留部61を設けておき、溶剤雰囲気を強制的に発生させて、ウエハWの周縁部に通流させている。そのため、ウエハWの外周部近傍に溶剤雰囲気を形成できるので、ウエハWの外周側におけるレジスト液がウエハWの中央側におけるレジスト液よりも乾燥しすぎることを抑制できる。従って、遠心力により前記中央側のレジスト液が外周側に寄って来た時、このレジスト液を良好にウエハWの外周端から排出できる。
【0039】
即ち、レジスト液を振り切りながら乾燥させる時、ダンパー48を開放したままだと(本発明の手法を採らないと)、
図10に示すように、内側カップ41と中間カップ42との間から処理雰囲気が排気されるので、ウエハWの外周部側には当該ウエハWの上方側から流れ込む清浄な(溶剤を含まない)雰囲気が接触する。また、内側カップ41の底面におけるレジスト液や溶剤の液溜まりから発生する溶剤雰囲気についても、同様にウエハWの外周部側を経由せずに排気される。従って、ウエハWの外周部側では、中央側よりもレジスト液が乾燥しやすく(溶剤が揮発しやすく)なる。そして、レジスト液の乾燥が進行すると、当該レジスト液の粘度が高くなるので、流動しにくくなる。そのため、ウエハWの中央側からレジスト液が遠心力により外周側に到達しても、ウエハWの外周縁から液切りされにくくなり、従ってレジスト液は当該外周側にいわば液盛りされてしまう。言い換えると、ダンパー48を開放したままレジスト液を乾燥させようとすると、レジスト膜はウエハWの中央側よりも周縁側にて膜厚寸法が厚くなる。従って、本発明は、ウエハWの遠心力により生じる余分なレジスト液を当該ウエハWの外縁から良好に排出する手法であると言える。
【0040】
そして、ダンパー48について、既述のように処理雰囲気の排気を閉止しても、外部の雰囲気が排気ダクト49に流入するように構成しているので、他の処理部11や半導体製造装置に悪影響を及ぼさずに済む。
【0041】
ここで、レジスト液を乾燥させる時にダンパー48を閉止するにあたって、当該ダンパー48を開閉自在に構成して、レジスト液の吐出中は処理雰囲気を排気している。そのため、レジスト液のミストによって例えば隣接する他の処理部11が汚染されることを抑制できる。
【0042】
そして、以上のようにレジスト膜の膜厚寸法が厚い程、またレジスト液の粘度が高い程、当該膜厚寸法の均一性が得られにくくなる。即ち、厚膜となるようにレジスト膜を形成しようとすると、当該レジスト膜の高さレベルは、面内に亘ってばらつきやすくなる。また、レジスト液の粘度が高い程、当該レジスト膜は流動しにくくなる。従って、本発明は、高粘度のレジスト液を用いて厚膜のレジスト膜を形成する手法に好適に用いられる。これら「高粘度」及び「厚膜」とは、具体的には既に説明した数値範囲内を意味している。
また排気量がゼロとは、流量Vaがほぼゼロとなる場合を含み、例えば排気流量が1.3m
3/分未満(排気口46の排気圧が25Pa未満)となる場合も含むものとする。
【0043】
既述の例において、貯留部61を設けずに、ウエハWの周縁部から振り切られる溶剤やレジスト液により溶剤雰囲気を形成しても良い。この場合には、ダンパー48を閉止すると、内側カップ41や中間カップ42の表面に付着した溶剤やレジスト液から溶剤が揮発して溶剤雰囲気が形成され、ウエハWの周縁部におけるレジスト膜の乾燥が抑制される。
このように貯留部61を設けない場合には、ウエハWに対してレジスト液の吐出を行う前に、例えばダミーウエハ(ダミー基板)に溶剤を吐出すると共に、内側カップ41や中間カップ42の表面に溶剤を予め付着させても良い。即ち、後述の実施例からも分かるように、レジスト液の乾燥を行う時、ダンパー48を閉止したとしても、内側カップ41や中間カップ42の表面にレジスト液や溶剤が付着していないと、当該ウエハWの外周部側に溶剤雰囲気を形成しにくい。従って、既述のダミーウエハへの溶剤の吐出処理は、製品ウエハWに対してレジスト膜を形成するにあたっての前処理となる。そのため、既述のプリウエット処理は、この前処理に相当すると言える。
【0044】
以下に、本発明の他の例について、
図11を参照して説明する。
図11は、既述の貯留部61について、中間カップ42の底面に設けることに代えて、外側カップ43におけるウエハWの外周端に対向する位置に配置した例を示している。この例では、外側カップ43は、中間カップ42の外周側の位置から周方向に亘って上方に向かって伸びるように形成された垂直面部131と、この垂直面部131の上端縁からウエハWの周縁部に向かって傾斜する傾斜面部132とにより構成されている。この例においても、貯留部61は、ウエハWの周囲を囲むように当該ウエハWの全周に亘って環状に設けられている。従って、ウエハWの遠心力により当該ウエハW側に引き込まれる雰囲気は、
図12に示すように、前記傾斜面部132に沿ってウエハWの周縁部に向かって通流すると共に、傾斜面部132に沿って通流する途中位置において、貯留部61から発生する溶剤雰囲気を巻き込んで当該周縁部に到達する。そのため、この例においても、既述の例と同様の効果が得られる。
以上のように貯留部61を設ける場合には、既述の
図2と
図11とを組み合わせても良く、具体的には外側カップ43の先端部と内側カップ41の底面との双方に貯留部61を配置しても良い。
従って、特許明細書における「溶剤蒸気が行き渡る位置」とは、内側カップ41と中間カップ42との間の環状の空間と、中間カップ42の底面から連通孔42bを介して外側カップ43の下方側の環状の空間(中間カップ42の外側の空間)と、の少なくとも一方を意味している。即ち、既述のように、ダンパー48を閉止すると、前記2つの環状の空間では、気流が行き来する(循環する)ので、これら2つの環状の空間の少なくとも一方に貯留部61を設けることにより、当該貯留部61は「溶剤蒸気が行き渡る位置に配置された」と言える。
【0045】
図13は、ウエハWの周縁部に溶剤雰囲気を強制的に形成するにあたって、貯留部61を設ける代わりに、当該周縁部に対して溶剤雰囲気を吐出する吐出部であるノズル141を設けた例を示している。このノズル141は、一端側の開口端がスピンチャック14上におけるウエハWの外周端を臨むように配置されており、他端側はバルブ142及び流量調整部143を介して、液体状の溶剤が貯留された溶剤発生部144に接続されている。この溶剤発生部144の上面には、窒素ガスなどの不活性ガスを供給するための供給管145が挿入されており、この供給管145の下端部は、溶剤の液面の高さレベルよりも下方側にて開口している。従って、例えば常温程度に加熱(加温)された不活性ガスを供給管145から溶剤発生部144に供給することにより、溶剤の内部にてフッ化性ガスがバブリングされて、溶剤を含む不活性雰囲気がウエハWの周縁部に形成される。
このように溶剤発生部144を設ける場合には、既述の供給管145における下面側開口端を溶剤の液面の高さレベルよりも上方側に位置させて、常温程度の雰囲気を当該液面に吹き付けても良いし、あるいは常温雰囲気により自然蒸発した溶剤雰囲気をノズル41を介してウエハWの周縁部に供給しても良い。
【0046】
本発明の手法によりウエハW上に形成する塗布膜としては、既述のレジスト膜に代えて、ポリイミド膜や接着剤からなる接着膜でも良い。このような塗布膜であっても、当該塗布膜を構成する有機材料をシンナーなどの溶剤により希釈した塗布液がウエハWに供給されて、同様にウエハWの周縁部にて乾燥が抑制されながら余分な塗布液が液切りされる。
【0047】
以上のようにダンパー48を閉止するタイミングとしては、早すぎるとレジスト液のミストが処理雰囲気に舞うおそれがあり、一方遅すぎるとウエハWの外周部側におけるレジスト膜が流動しにくくなる(乾燥が進行しすぎる)。従って、前記タイミングは、レジスト液をウエハWに吐出し終えた後、レジスト液の乾燥が完了するまでの間に設定することが好ましく、具体的には既述の
図6における時刻t3と時刻t4との間において予め設定された時点である。
【実施例】
【0048】
(実験例1)
続いて、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
図14は、本発明と従来の手法とにより夫々得られたレジスト膜について、膜厚寸法をウエハWの直径方向に測定した結果を示している。
図14から分かるように、従来ではウエハWの外縁部では中央部よりも膜厚寸法が50nm以上も厚くなっていた。一方、本発明ではウエハWの外縁部では中央部と同レベルの膜厚寸法となっていた。
【0049】
(実験例2)
この実験では、カップ41〜43に付着したレジスト液や溶剤を拭き取った後、5枚のウエハWに対して連続して本発明の手法によりレジスト膜の形成処理を行い、その後これら5枚のウエハWについてレジスト膜の膜厚寸法を測定した結果を示している。即ち、これら5枚のウエハWのうち、1枚目のウエハWに対してレジスト液を吐出する時、カップ41〜43にはレジスト液や溶剤は付着していない。一方、後続の2枚目以降のウエハWについては、レジスト液を吐出する時、内側カップ41や中間カップ42にはレジスト液が付着している。
【0050】
この結果、
図15に示すように、1枚目のウエハWでは、ウエハWの外周端におけるレジスト膜の膜厚寸法が中央側よりも厚くなっており、膜厚寸法の均一性が悪化していた。これに対して2枚目以降のウエハWでは、1枚目のウエハWよりも膜厚寸法の均一性が改善されていた。従って、レジスト液の乾燥を行う時、ダンパー48を閉止するだけでなく、カップ41、42に溶剤を予め付着させておくことが好ましいと言える。そのため、製品ウエハWに対してレジスト液の吐出処理を行う前に、既に説明したように、ダミーウエハを用いた前処理やプリウエット処理を行っておくことが好ましい。尚、
図15では1枚目のウエハWを実線にて示しており、後続の2枚目以降のウエハWについては破線にて示している。