(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択される1種以上の金属の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属表面処理剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属、特に金属被膜鋼材用として最適であり、クロムを含まず、塗料などのコーティングの前処理として、優れた加工性、密着性、耐食性を付与することができるノンクロメート金属表面処理剤として有用な有機ケイ素化合物及びその製造方法、該有機ケイ素化合物を用いた金属表面処理剤、該処理剤により表面処理された表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びにその上に上層被膜を有する塗装鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の有機ケイ素化合物及びその製造方法、金属表面処理剤、表面処理鋼材及びその表面処理方法、並びに塗装鋼材及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは加水分解性基であり、R'は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは炭素数1〜8のアルキレン基であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、R
1とR
2、R
2とR
3、又はR
3とR
4でそれぞれ結合して脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよく、環骨格を形成しない場合は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基である。mは1〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物を有効成分とすることを特徴とする金属表面処理剤。
〔2〕
前記有機ケイ素化合物が、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
5は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、mは上記と同様である。Meはメチル基である。)
で示される〔1〕に記載の金属表面処理剤。
〔3〕
更に、下記一般式(13)
R
6xSi(OR
7)
4-x (13)
(式中、R
6は炭素数1〜20の非置換又は置換の一価炭化水素基、R
7は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、xは0〜3の整数である。)
で示されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物を含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の金属表面処理剤。
〔4〕
更に有機チタン酸エステルを含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔5〕
更に、水分散性シリカ又は有機溶剤分散性シリカを含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔6〕
更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選択される1種以上の金属の化合物を含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔7〕
更に、チオカルボニル基含有化合物を含むことを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔8〕
更に、水溶性又は水分散性樹脂を含むことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔9〕
更に、リン酸イオンを含むことを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の金属表面処理剤。
〔10〕
鋼材の表面を〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の金属表面処理剤で表面処理することを特徴とする鋼材の表面処理方法。
〔11〕
〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の金属表面処理剤で鋼材を処理した後、更に上層被膜層を設けることを特徴とする塗装鋼材の製造方法。
〔12〕
下記一般式(3)
【化3】
(式中、Rは加水分解性基であり、R'は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは炭素数1〜8のアルキレン基であり、mは1〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物と下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、R
1とR
2、R
2とR
3、又はR
3とR
4でそれぞれ結合して脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよく、環骨格を形成しない場合は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
で示されるベンゾトリアゾール化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化16】
(式中、R、R'、R
1、R
2、R
3、R
4、A、mは上記と同様である。)
で示される有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機ケイ素化合物は、ベンゾトリアゾール基とウレア結合を有するシランカップリング剤であり、それを必須成分とする金属表面処理剤は、被処理金属材及び該シランカップリング剤のベンゾトリアゾール基、ウレア結合が配位結合することで難溶性の錯体を形成し、良好な防錆能を発現する上、加水分解性シリル基により、基材及び必要に応じて上層に設ける有機・無機樹脂被膜層との加工密着性に優れるため接着強度が高く、従って得られる塗装鋼材の防錆耐食性が高次元で発現する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
本発明の有機ケイ素化合物は、ベンゾトリアゾール基とウレア結合を有する有機ケイ素化合物であり、更に本発明の金属表面処理剤はそれを必須成分とし、これを水、有機溶剤又は水と有機溶剤の混合溶媒に溶解してなるものである。
【0014】
[有機ケイ素化合物]
本発明の有機ケイ素化合物は下記一般式(1)で示される。
【化5】
(式中、Rは加水分解性基であり、R'は炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは炭素数1〜8のアルキレン基であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、R
1とR
2、R
2とR
3、又はR
3とR
4でそれぞれ結合して脂肪族又は芳香族環骨格を形成してもよく、環骨格を形成しない場合は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基である。mは1〜3の整数である。)
【0015】
この場合、有機ケイ素化合物としては、下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【化6】
(式中、R
5は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、mは上記と同様である。Meはメチル基である。)
【0016】
ここで、上記式中のRとしては、塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。R'としてはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。Aはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられ、炭素数1〜3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、プロピレン基が特に好ましい。R
1、R
2、R
3、R
4としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等のアルキル基、R
1とR
2、R
2とR
3、又はR
3とR
4が結合したシクロヘキサン環、ベンゼン環等の環骨格が挙げられる。mは1〜3の整数であり、好ましくは2又は3であり、特に好ましくは3である。
【0017】
本発明の有機ケイ素化合物は、経済的な観点から上記有機ケイ素化合物(5)〜(12)が好ましい。
【0020】
[有機ケイ素化合物の合成方法]
本発明の有機ケイ素化合物は、下記一般式(3)
【化9】
(式中、R、R'、A、mは上記と同様である。)
で示される有機ケイ素化合物と下記一般式(4)
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は上記と同様である。)
で示されるベンゾトリアゾール化合物を反応させることにより得ることができる。
【0021】
一般式(3)で示される有機ケイ素化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
一般式(4)で示されるベンゾトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、3−メチルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、6−メチルベンゾトリアゾール、1H−ナフト[2,3]トリアゾール、1H−ナフト[1,2]トリアゾール等が挙げられる。
【0023】
この場合、上記式(3)の有機ケイ素化合物と式(4)のベンゾトリアゾール化合物の割合は、適宜選定されるが、式(3)の有機ケイ素化合物1モルに対して式(4)のベンゾトリアゾール化合物0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルとすることが好ましい。
【0024】
本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は原料であるイソシアネート基を含有する有機ケイ素化合物及びベンゾトリアゾール化合物と非反応性であれば特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0025】
本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて触媒を使用してもよい。触媒は一般に使用されるイソシアネートの反応触媒でよく、好ましくはスズ化合物である。その中でもスズ(II)のカルボン酸塩化合物が触媒活性の点より好ましい。触媒の使用量はイソシアネートモノマー又はイソチオシアネートモノマー1molに対して1〜0.00001molであり、より好ましくは0.01〜0.0001molである。1molを超えて使用する場合には効果が飽和し、非経済的である。0.00001molより少ない場合には触媒効果が不足し、反応速度が低く、生産性が低下する。
【0026】
本発明の有機ケイ素化合物製造時において、反応は発熱反応であり、不要に高温となると副反応が生じるおそれがある。そのため製造にあたり好ましい反応温度は20〜150℃であり、より好ましくは30〜130℃、更に好ましくは40〜110℃の範囲である。20℃より低い場合は、反応速度が低く、生産性が低下する。一方、150℃を超える場合には、イソシアネートモノマー又はイソチオシアネートモノマーの重合反応等の副反応が生じるおそれがある。
【0027】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる反応時間は、上記に述べたような発熱反応による温度管理が可能であり、且つ発熱反応が終了していれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1時間〜10時間程度である。
【0028】
[金属表面処理剤]
本発明の金属表面処理剤は、下記式(1)で示される有機ケイ素化合物を有効成分とする金属表面処理剤である。
【化11】
(式中、R、R'、A、R
1、R
2、R
3、R
4、mは上記の通りである。)
【0029】
更に好ましくは、下記式(2)で示される有機ケイ素化合物を有効成分とする金属表面処理剤である。
【化12】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、Me、mは上記の通りである。)
【0030】
本発明の金属表面処理剤に用いる有機ケイ素化合物は、経済的な観点から上記した有機ケイ素化合物(5)〜(12)が好ましい。
【0031】
本発明の金属表面処理剤の他の成分としては、水、上記有機ケイ素化合物を溶解する有機溶媒、又は水と該有機溶媒の混合溶媒を挙げることができ、該有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、その中でもメタノールやエタノールが特に好ましいが、ここに列挙したものに限られない。
【0032】
なお、上記式(1)〜(12)の有機ケイ素化合物は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜200g/L、特に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、含有量が少なすぎると本発明の効果が不十分となることがあり、多すぎると塗料の液安定性が低下することがある。
【0033】
本発明の金属表面処理剤は、更に、上記式(1)〜(12)で示される有機ケイ素化合物以外の有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。有機ケイ素化合物としては、上記式(1)〜(12)で示される有機ケイ素化合物以外の加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、下記一般式(13)で示される加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物又はその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
R
6xSi(OR
7)
4-x (13)
(式中、R
6は炭素数1〜20、特に炭素数1〜15の非置換又は置換の一価炭化水素基、R
7は炭素数1〜8、特に炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、好ましくはメチル基、エチル基である。xは0〜3の整数であり、特に0〜2の整数が好ましい。)
【0034】
ここで、上記非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。置換の一価炭化水素基としては、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキルアミノ基、アルキルアミノ基、イソシアナート基、ポリエーテル基、ハロゲン原子、パーフルオロポリエーテル基によりアルキル基等の非置換の一価炭化水素基の水素原子の1個又は複数個が置換されたものが挙げられる。
【0035】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
上記有機ケイ素化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、生産性が低下する場合がある。
【0037】
本発明の金属表面処理剤は、更に、有機チタン酸エステル類を含むことが好ましい。この有機チタン酸エステル類は、市販されているものを用いてもよく、構造等は特に限定されないが、有機チタン酸エステル類として具体的には、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、及びこれらの重合物が挙げられる。また、チタンアセチルチタネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチルグリシナート、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物を使用することもでき、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0038】
上記有機チタン酸エステル類を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.05〜100g/Lの濃度で含まれていることが好ましく、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
【0039】
本発明の金属表面処理剤は、更に、水又は有機溶媒分散性シリカを含むことが好ましい。この水又は有機溶媒分散性シリカとしては、特に限定されないが、ナトリウム等の不純物が少なく、弱アルカリ系である球状シリカ、鎖状シリカ、アルミニウム修飾シリカが好ましい。球状シリカとしては、「スノーテックスN」、「スノーテックスUP」(いずれも日産化学工業社製)等のコロイダルシリカや、「アエロジル」(日本アエロジル社製)等のヒュームドシリカを挙げることができ、鎖状シリカとしては「スノーテックスPS」(日産化学工業社製)等のシリカゲル、更にアルミニウム修飾シリカとしては、「アデライトAT−20A」(旭電化工業社製)等の市販のシリカゲルを用いることができる。
【0040】
なお、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が例示できる。
【0041】
上記水又は有機溶媒分散性シリカを配合する場合は、金属表面処理剤中に固形分で0.05〜100g/L、特に0.5〜60g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。水又は有機溶媒分散性のシリカの含有量が0.05g/L未満では耐食性が不足する場合があり、100g/Lを超えると耐食性向上効果が見られず、逆に金属表面処理剤の浴安定性が低下する場合がある。
【0042】
本発明の金属表面処理剤は、更に、Fe,Zr,Ti,V,W,Mo,Al,Sn,Nb,Hf,Y,Ho,Bi,La,Ce及びZnから選ばれるいずれか1種以上の金属の化合物を含むことが好ましい。具体的には上記金属の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、フルオロ酸もしくはその塩、オキソ酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0043】
より具体的に、ジルコニウム(Zr)化合物の例としては、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化カリウム、ジルコンフッ化ナトリウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド1−ブタノール溶液、ジルコニウムn−プロポキシド等が挙げられる。
【0044】
チタン(Ti)化合物の例としては、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、チタンイソプロポキシド、チタン酸イソプロピル、チタンエトキシド、チタン−2−エチル−1−ヘキサノラート、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラn−ブチル、チタンフッ化カリウム、チタンフッ化ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
バナジウム(V)化合物の例としては、五酸化バナジウム(V)、三酸化バナジウム(III)、二酸化バナジウム(IV)、水酸化バナジウム(II)、水酸化バナジウム(III)、硫酸バナジウム(II)、硫酸バナジウム(III)、オキシ硫酸バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(III)、フッ化バナジウム(IV)、フッ化バナジウム(V)、オキシ三塩化バナジウムVOCl
3、三塩化バナジウムVCl
3、ヘキサフルオロバナジウム酸(III)もしくはその塩(カリウム塩、アンモニウム塩等)、メタバナジン酸(V)もしくはその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、バナジルアセチルアセトネート(IV)VO(OC(=CH
2)CH
2COCH
3)
2、バナジウムアセチルアセトネート(III)V(OC(=CH
2)CH
2COCH
3)
3、リンバナドモリブデン酸H
15-X[PV
12-XMoO
40]・nH
2O(6<X<12,n<30)等が挙げられる。
【0046】
タングステン(W)化合物の例としては、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(V)、酸化タングステン(VI)、フッ化タングステン(IV)、フッ化タングステン(VI)、タングステン酸(VI)H
2WO
4もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、メタタングステン酸(VI)H
6[H
2W
12O
40]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)、パラタングステン酸(VI)H
10[H
10W
12O
46]もしくはその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0047】
モリブデン(Mo)化合物の例としては、リンバナドモリブデン酸H
15-X[PV
12-XMoO
40]・nH
2O(6<X<12,n<30)、酸化モリブデン、モリブデン酸H
2MoO
4、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブドリン酸化合物(例えば、モリブドリン酸アンモニウム(NH
4)
3[PO
4Mo
12O
36]・3H
2O、モリブドリン酸ナトリウムNa
3[PO
4Mo
12O
36]・nH
2O等)等が挙げられる。
【0048】
アルミニウム(Al)化合物の例としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0049】
スズ(Sn)化合物の例としては、酸化スズ(IV)、スズ酸ナトリウムNa
2SnO
3、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、硝酸スズ(II)、硝酸スズ(IV)、ヘキサフルオロスズ酸アンモニウム(NH
4)
2SnF
6等が挙げられる。
【0050】
ニオブ(Nb)化合物の例としては、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO
3)、フッ化ニオブ(NbF
5)、ヘキサフルオロニオブ酸アンモニウム(NH
4)NbF
6等が挙げられる。
【0051】
ハフニウム(Hf)化合物、イットリウム(Y)化合物、ホルミウム(Ho)化合物、ビスマス(Bi)化合物、ランタン(La)化合物の例としては、酸化ハフニウム、ヘキサフルオロハフニウム水素酸、酸化イットリウム、イットリウムアセチルアセトネート、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化ランタン等が挙げられる。
【0052】
セリウム(Ce)化合物の例としては、酸化セリウム、酢酸セリウムCe(CH
3CO
2)
3、硝酸セリウム(III)もしくは(IV)、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウム、塩化セリウム等が挙げられる。
【0053】
亜鉛(Zn)化合物の例としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
上記化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記化合物を配合する場合は、金属表面処理剤中に、金属イオンの量として、それぞれ0.01〜50g/L、特に0.05〜5g/Lの濃度で含まれていることが好ましい。上記化合物の含有量がそれぞれ0.01g/L未満であると耐食性が不十分となる場合があり、50g/Lを超えると加工密着性能の向上効果が見られず、逆に浴安定性が低下する場合がある。
【0056】
本発明の金属表面処理剤は、更に、チオカルボニル基含有化合物を含むことが好ましい。チオカルボニル基含有化合物としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、ジプロピルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、2,2−ジトリルチオ尿素、チオアセトアミド、ソディウムジメチルジチオカルバメート、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジンクジメチルジチオカルバメート、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチレンチオ尿素、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジチオオキサミド、ポリジチオカルバミン酸又はその塩等のチオカルボニル基を少なくとも1つ含有する化合物が例示できる。上記化合物は単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記チオカルボニル基含有化合物を配合する場合は、本発明の金属表面処理剤中に0.01〜100g/L、特に0.1〜10g/Lの濃度で含有されることが好ましい。上記化合物の含有量が0.01g/L未満になると耐食性が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると耐食性が飽和し、不経済となる場合がある。
【0058】
本発明の金属表面処理剤は、更に、水溶性もしくは水分散性樹脂を含むことが好ましい。水溶性もしくは水分散性樹脂としてはアクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレンアクリル共重合体、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいし、更に共重合して使用してもよい。具体的には、例えば水溶性アクリル樹脂としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主成分とした共重合体で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が例示でき、それらの誘導体や、その他のアクリル系モノマーとの共重合体も使用可能である。特に、共重合体におけるアクリル酸及び/又はメタクリル酸モノマー割合が、70質量%以上であることが好ましい。
【0059】
また、樹脂を用いる時にはその造膜性を向上させ、より均一で平滑な塗膜を形成するために有機溶剤を用いてもよい。更に、界面活性剤、レベリング剤、濡れ性向上剤、消泡剤を用いてもよい。
【0060】
水溶性もしくは水分散性樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で1万以上であることが好ましい。より好ましくは30万〜200万である。1万未満では本発明の効果、特に塗膜の深絞り性向上効果が十分に発揮されない場合がある。また、200万を超えると粘度が高くなり、取り扱い作業の効率が低下する場合がある。
【0061】
上記水溶性もしくは水分散性樹脂を配合する場合は、金属表面処理剤中に0.1〜100g/L、特に5〜80g/Lの濃度で含有されることが好ましい。樹脂の濃度が0.1g/L未満では折り曲げ密着性と深絞り性を向上させる効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると、折り曲げ密着性と深絞り性の向上効果が飽和し、不経済となる場合がある。
【0062】
本発明の金属表面処理剤は、更に、リン酸イオンを含むことが好ましい。リン酸イオンを添加することにより、更に耐食性を向上させることができる。このリン酸イオンの添加は、水中においてリン酸イオンを形成することができる化合物を添加することにより行うことができる。このような化合物としては、リン酸、Na
3PO
4、Na
2HPO
4、NaH
2PO
4等のリン酸塩類、縮合リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、二リン酸等の縮合したリン酸又はそれらの塩類が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記リン酸イオンを配合する場合の添加量は、金属表面処理剤中に0.01〜100g/Lの濃度であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10g/Lの濃度である。添加量が0.01g/L未満であると耐食性の改善効果が不十分となる場合があり、100g/Lを超えると亜鉛系めっき鋼材に過剰なエッチングを起こし性能低下を引き起こしたり、その他成分として水性樹脂を含む場合にはゲル化を引き起こしたりする場合がある。
【0064】
また、本発明の金属表面処理剤は、更に金属表面処理剤として公知の添加剤を配合してもよい。例えば、タンニン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩等が例示される。
【0065】
本発明の金属表面処理剤は、銅板、冷延鋼材、熱延鋼材、ステンレス鋼材、更に電気亜鉛めっき鋼材、溶融亜鉛めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼材、亜鉛−鉄合金系めっき鋼材、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼材、アルミニウム系めっき鋼材、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼材、錫系めっき鋼材、鉛−錫合金系めっき鋼材、クロム系めっき鋼材、ニッケル系めっき鋼材等の金属鋼材の表面処理剤として使用されるが、特に金属被覆鋼材(めっき鋼材)に効果が著しい。
【0066】
この表面処理剤の使用方法、すなわち表面処理方法としては、上記金属表面処理剤を被塗物に塗布し、塗布後に被塗物を乾燥させる方法であってもよく、あらかじめ被塗物を加熱し、その後上記本発明の金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させる方法であってもよい。
【0067】
上記乾燥条件はいずれの場合も、室温〜250℃で2秒〜1時間、好ましくは40〜180℃で5秒〜20分とすることができる。250℃を超えると密着性や耐食性等の性能劣化が生じる可能性がある。
【0068】
上記表面処理方法において、上記本発明の金属表面処理剤の塗布量は、乾燥後の被膜質量が0.1mg/m
2以上であることが好ましい。被膜質量が0.1mg/m
2未満では防錆性が不足する場合がある。一方、付着量が多すぎると塗装用前処理剤としては不経済であり、より好ましくは0.5〜500mg/m
2であり、更に好ましくは1〜250mg/m
2である。
【0069】
上記表面処理方法において、金属表面処理剤の塗布方法は特に限定されず、一般に使用されているロールコート、シャワーコート、スプレー、浸漬、刷毛塗り等によって塗布することができる。また、処理される対象となる鋼材は、上記の金属鋼材であり、特に各種めっき鋼材の処理に最適である。
【0070】
本発明の塗装鋼材の製造方法は、上記金属鋼材を上記金属表面処理剤で表面処理し、乾燥、次いで上層被膜層を塗布する方法である。上記被膜層としては、必要に応じてノンクロメートプライマー塗布乾燥後、更にトップコートを塗布する塗装システムや、耐指紋性や潤滑性等の機能を持った機能コーティング等を挙げることができる。上記製造方法は、プレコート鋼材に限らず、ポストコート鋼材にも適用することができ、本発明において塗装鋼材とはこれらを含むものである。また、本発明において鋼材とは鋼板を含む概念である。
【0071】
本発明で使用できる上記ノンクロメートプライマーとしては、プライマーの配合中にクロメート系防錆顔料を使用しないプライマー全てが使用できる。このようなプライマーとしては、バナジン酸系防錆顔料とリン酸系防錆顔料とを用いたプライマー(V/P顔料プライマー)又はカルシウムシリケート系防錆顔料を用いたプライマーが好ましい。
【0072】
上記プライマーの塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜20μmであることが好ましい。1μm未満では耐食性が不足する場合があり、20μmを超えると加工密着性が低下する場合がある。
【0073】
上記ノンクロメートプライマーの焼き付け乾燥条件は、例えば金属表面温度で150〜250℃、時間を10秒〜5分とすることができる。
【0074】
上記トップコートとしては特に限定されず、通常の塗装用トップコート全てを用いることができる。また、機能コーティングとしては特に限定されず、現在クロメート系前処理被膜の上に施されているコーティング等、全て使用可能である。上記ノンクロメートプライマー及びトップコートや機能コーティングの塗布方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、シャワーコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を利用することができる。また、トップコートの厚さは適宜選定でき、その種類に応じた通常の塗膜厚さとすることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において部は質量部を示し、Meはメチル基を示し、IRは赤外分光法の略である。
【0076】
[実施例1]
有機ケイ素化合物(5)の製造法
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコにベンゾトリアゾール118.1g(1mol)、トルエン200gを納め、40℃まで加温した。その中に3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン205.3g(1mol)を滴下し、100℃にて1時間撹拌した。その後、IR測定により原料のイソチオシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失したことを確認し反応終了とした。その後、溶媒を除去して得られた生成物は黄色液体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は下記式(5)で示される単一の生成物であった。
【化13】
【0077】
[実施例2]
有機ケイ素化合物(8)の製造法
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに5−メチルベンゾトリアゾール133.2g(1mol)、トルエン200gを納め、40℃まで加温した。その中に3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン205.3g(1mol)を滴下し、100℃にて1時間撹拌した。その後、IR測定により原料のイソチオシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失したことを確認し反応終了とした。その後、溶媒を除去して得られた生成物は黄色液体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は下記式(8)で示される単一の生成物であった。
【化14】
【0078】
[実施例3]
有機ケイ素化合物(9)の製造法
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに6−メチルベンゾトリアゾール133.2g(1mol)、トルエン200gを納め、40℃まで加温した。その中に3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン205.3g(1mol)を滴下し、100℃にて1時間撹拌した。その後、IR測定により原料のイソチオシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失したことを確認し反応終了とした。その後、溶媒を除去して得られた生成物は黄色液体であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より反応生成物は下記式(9)で示される単一の生成物であった。
【化15】
【0079】
[実施例4]
メタノール990g、水10gの混合溶媒に実施例1で得た有機ケイ素化合物(5)を不揮発分として10g添加し、室温で5分間撹拌することで金属表面処理剤を得た。得られた金属表面処理剤を脱脂乾燥した市販の溶融亜鉛めっき鋼板(日本テストパネル社製;70×150×0.4mm)にバーコーターNo.20で乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、金属表面温度105℃で10分間乾燥させた。その後V/P顔料含有のノンクロメートプライマーをバーコーターNo.16で乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、金属表面温度215℃で5分間乾燥した。更にトップコートとしてフレキコート1060(ポリエステル系上塗り塗料;日本ペイント社製)をバーコーターNo.36で乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、金属表面温度を230℃で乾燥させて試験板を得た。得られた試験板の折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性を下記の評価方法に従って評価し、その結果を表1に記載した。
【0080】
[実施例5,6]
実施例1で得られた化合物を実施例2〜4で得られた化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例4と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0081】
[実施例7〜13]
実施例1で得られた化合物、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオンの濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、実施例4と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例4と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0082】
[比較例1〜3]
実施例1〜3で得られた化合物を用いずに、シラン系化合物の種類と濃度、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオン、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂並びにリン酸イオンの濃度をそれぞれ表1に記載したように配合した以外は、実施例4と同様にして金属表面処理剤を調製した。これらの金属表面処理剤を用いて、実施例4と同様にして試験板を作製し、これらの評価を行った。得られた結果を表1に記載した。
【0083】
[比較例4]
金属表面処理剤に代えて、市販の塗布型クロメート処理剤(樹脂含有タイプ)をクロム付着量が20mg/m
2となるように塗布、乾燥したこと、及びクロム含有プライマー(ストロンチウムクロメート顔料含有プライマー)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして試験板を作製及び評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0084】
なお、下記表1において、シラン系化合物、有機チタン酸エステル、水分散性シリカ、ジルコニウムイオンを形成する化合物、チオカルボニル基含有化合物、水溶性樹脂、リン酸イオンを形成する化合物として、以下の市販品を使用した。
[シラン化合物]
A:KBM−903(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業(株)製)
B:KBM−403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業(株)製)
C:KBM−403とベンゾトリアゾールの反応生成物(特開平6−279463号公報を参考に合成)
[有機チタン酸エステル]
チタンテトライソプロポキシド
[水分散性シリカ]
メタノールシリカゾル(日産化学工業社製)
[ジルコニウムイオンを形成する化合物]
ジルコノゾールAC−7(炭酸ジルコニルアンモニウム;第一稀元素社製)
[チオカルボニル基含有化合物]
チオ尿素
[水溶性樹脂]
ポリアクリル酸(重量平均分子量100万)
[リン酸イオンを形成する化合物]
リン酸
【0085】
[評価方法]
上記実施例4〜13及び比較例1〜4における折り曲げ密着性、深絞り性、耐食性の評価は以下の方法、評価基準に基づいて行った。
折り曲げ密着性:
20℃の環境下、コニカルマンドレル試験機を用いて試験板を2mmφのスペーサーを挟んで180°折り曲げ加工し、折り曲げ加工部を3回テープ剥離して、剥離度合いを20倍ルーペで観察し、下記の基準で評価した。
A:クラックなし
B:加工部全面にクラック
C:剥離面積が加工部の20%未満
D:剥離面積が加工部の20%以上〜80%未満
E:剥離面積が加工部の80%以上
【0086】
深絞り性:
20℃の環境下で絞り比:2.3、シワ抑え圧:2t、ポンチR:5mm、ダイス肩R:5mm、無塗油の条件で円筒絞り試験を行った。その後、クロスカット部から塗膜の剥離幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が1mm未満
B:ふくれ幅が1mm以上〜2mm未満
C:ふくれ幅が2mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
【0087】
耐食性:
(カット部)
試験板にクロスカットを入れ、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、カット部片側のふくれ幅を測定し、下記の基準で評価した。
A:ふくれ幅が0mm
B:ふくれ幅が0mmを超え〜1mm未満
C:ふくれ幅が1mm以上〜3mm未満
D:ふくれ幅が3mm以上〜5mm未満
E:ふくれ幅が5mm以上
(端面)
試験板をJIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を500時間行った後、上バリ端面からのふくれ幅をカット部と同一基準で評価した。
【0088】
【表1】
【0089】
以上の実施例及び比較例の結果は、本発明の金属表面処理剤を用いて形成される被膜が良好な防錆能及び基材密着性を与えることを実証するものである。