【文献】
GEORGE W. MOREY,Chapter IV "The Chemical Durability of Glass",The Properties of GLASS,米国,REINHOLD PUBLISHING CORPORATION,1955年 6月 3日,SECOND EDITION,Pages 101-131,URL,http://id.ndl.go.jp/bib/000006278050
【文献】
E.BORSELLA, et al.,Silver cluster formation in ion-exchanged waveguides: processing technique and phenomenological model,Journal of Non-Crystalline Solids,NL,Elsevier Science B.V.,1999年 8月,Volume 253, Issues 1-3,Pages 261-267,ISSN:0022-3093
【文献】
山根正之,他編,4.2 フロート成形,ガラス工学ハンドブック,日本,株式会社朝倉書店,1999年 7月 5日,初版第1刷,Pages 358-362,ISBN:4-254-25238-2
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、可視光領域および近赤外線領域の光によって発電できることから、太陽電池用ガラス板(カバーガラス、薄膜太陽電池用ガラス基板等)には、可視光透過率(以下、Tvと記す。)および日射透過率(以下、Teと記す。)が充分に高いガラス板が求められている。
また、太陽光を集光して熱源として利用することで発電を行う太陽熱発電においては、集光ミラーによる太陽光(特に近赤外線領域の光)の損失をできるだけ抑えるために、集光ミラー用ガラス板としてTvおよびTeが充分に高いガラス板が求められている。
【0003】
そのため、太陽電池用ガラス板や集光ミラー用ガラス板としては、着色成分(特に鉄)の含有量を極めて少なくしてTvおよびTeを高くしたソーダライムシリカガラスからなる高透過ガラス板(いわゆる白板ガラス)が用いられる(特許文献1)。
また、高透過ガラス板であっても、製造上不可避的に混入した鉄が含まれる。よって、高透過ガラス板においてTeを充分に高くするには、高透過ガラス板に含まれる全鉄のうち、波長400nm付近に吸収のピークを有する3価の鉄の割合をできるだけ増やし、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する2価の鉄の割合をできるだけ減らすことが重要となる(特許文献2)。
【0004】
しかし、高透過ガラス板には、下記の問題がある。
(i)高透過ガラス板の鉄の含有量を極めて少なくするためには、ガラス原料の鉄の含有量を極めて少なくする必要があるが、鉄の含有量が極めて少ないガラス原料は高価であるため、高透過ガラス板の原料コストは高くなる。
(ii)高透過ガラス板において2価の鉄の割合をできるだけ減らすためには、フロート法またはダウンドロー法で高透過ガラス板を製造する際の溶融ガラスの温度を、通常のガラス板を製造する場合に比べ低くする必要があり、生産性が悪い。
【0005】
(ii)の問題を解決しつつ、高い透過率を実現する方法としては、ガラス板に含まれる全鉄のうちの3価の鉄の割合を、微量の酸化剤を添加することによって増やす方法、ソーダライムシリカガラスの母組成を変えて2価の鉄の吸収のピーク位置を移動する方法等が提案されている。
【0006】
たとえば、質量百分率表示で0.005〜0.019%のFe
2O
3に換算した全鉄を着色成分として含むソーダライムシリカガラスに、0.025〜0.20%のCeO
2を酸化剤として含ませることによって、ガラス板に含まれる全鉄のうち、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する2価の鉄の割合を減じている(特許文献3)。
【0007】
また、質量百分率表示で、
SiO
2 :69〜75%、
Al
2O
3 :0〜3%、
B
2O
3 :0〜5%、
CaO :2〜10%、
MgO :2%未満、
Na
2O :9〜17%、
K
2O :0〜8%、
Se :0〜0.002%、
CoO :0〜0.001%、
Cr
2O
3 :0〜0.001%、
Fe
2O
3に換算した全鉄:0.02〜0.2%、
を含み、アルカリ土類金属の酸化物の合計が10%以下であるソーダライムシリカガラス組成物によれば、2価の鉄による吸収ピークを長波長側に移動させ、通常のソーダライムシリカガラスより着色が少ない、赤外吸収が良好な窓ガラスの製造が可能になるとされている(特許文献4)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガラス板は、SiO
2を主成分とし、さらにNa
2O、CaO等を含む、いわゆるソーダライムシリカガラスからなるものである。
本発明のガラス板は、下記の組成(I)を有する。本発明のガラス板は、下記の組成(II)を有することが好ましく、下記の組成(III)を有することがより好ましい。
【0017】
(I)酸化物基準のmol百分率表示で、
SiO
2 :57〜71%、
Al
2O
3 :0〜6%、
B
2O
3 :0〜5%、
Na
2O :10〜16%、
MgO :7.5〜19.8%、
CaO :1.6〜11%、
MgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2Oで表されるS−value :−10〜10.5%、であり、
[MgO]/[CaO]が、0.8〜10である。
【0018】
(II)酸化物基準のmol百分率表示で、
SiO
2 :57〜71%、
Al
2O
3 :0〜6%、
B
2O
3 :0〜5%、
Na
2O :10〜16%、
MgO :7.5〜19.8%、
CaO :1.6〜11%、
MgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2Oで表されるS−value :−2〜10.5%、であり、
[MgO]/[CaO]が、0.8〜10である。
【0019】
(III)酸化物基準のmol百分率表示で、
SiO
2 :57〜71%、
Al
2O
3 :0〜6%、
B
2O
3 :0〜5%、
Na
2O :10〜16%、
MgO :7.5〜19.8%、
CaO :1.6〜11%、
MgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2Oで表されるS−value :0〜10.5%、であり、
[MgO]/[CaO]が、0.8〜10である。
【0020】
本発明のガラス板は、酸化物基準のmol百分率表示で、MgOを7.5〜19.8%、およびCaOを1.6〜11%含むと同時に、酸化物基準のmol百分率表示のMgOの含有量と、酸化物基準のmol百分率表示のCaOの含有量との比([MgO]/[CaO])が、0.8〜10とされている。すなわち、MgOの含有量が、絶対値およびCaOの含有量に対する相対値ともに通常のソーダライムシリカガラス(通常の高透過ガラス板を含む。)よりも多い組成とされている。
【0021】
MgOの含有量を多くすることによって、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する6配位の2価の鉄の割合を減らし、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有さない2価の鉄の割合を増やすことができるため、Fe
2O
3に換算した全鉄中のFe
2O
3に換算した2価の鉄の質量割合(以下、Redoxと記す。)を減らした場合と同じような効果を発揮できる。よって、2価の鉄がある程度存在しても、Teの低下を抑えることができる。
【0022】
MgOの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、7.5〜19.8%である。MgOの含有量が19.8%を超えると、失透温度が上昇する。MgOの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、8〜19%が好ましく、9〜18%がより好ましい。
【0023】
[MgO]/[CaO]は、0.8〜10である。[MgO]/[CaO]が10を超えると、溶融ガラスが充分な低粘度(たとえば一般的なフロート法やダウンドロー法で製造する場合は100ポアズ)になる温度よりも低い温度で泡層が生成するようになるため、ガラス溶融炉内にて該溶融ガラス上に泡層が多く生成し、その結果、燃焼バーナ等の熱源からの輻射熱が溶融ガラスに伝わりにくくなる等、ガラス板の製造に悪影響を及ぼす。また、得られるガラス板に泡が残りやすくなり、ガラス板の品質を低下させる。[MgO]/[CaO]は、1.0〜10が好ましく、1.2〜4がより好ましい。
また、[MgO]/[CaO]は、酸化物基準のmol百分率表示で、従来のソーダライムガラスでは、0.7程度である。酸化物基準のmol百分率表示で[MgO]/[CaO]が、0.8〜1.5であると、ソーダライムガラスに近い組成でありながら、鉄の2価の吸収が低くできるためにより好ましい。
【0024】
Fe
2O
3は、製造上不可避的に混入した着色成分である。
Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0〜0.06%である。Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量が0.06%以下であれば、Tvの低下が抑えられる。Fe
2O
3は、原料中の不純物として混入することが多く、また、原料はFe
2O
3分の多い原料や、少ない原料があり、Fe
2O
3分が少なく入手しやすい原料を用いた場合、Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0.005〜0.06%が好ましく、太陽電池用ガラス板や集光ミラー用ガラス板としては、0.005〜0.02%がより好ましい。ここにおいて、Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量は、全鉄量を除くガラス板の各成分の割合の合計を100質量%としたときに含有される全鉄の含有割合を外掛け表示の質量百分率で表わしたものである。
【0025】
本明細書においては、全鉄の含有量を標準分析法にしたがってFe
2O
3の量として表しているが、ガラス中に存在する鉄がすべて3価の鉄として存在しているわけではない。通常、ガラス中には2価の鉄が存在している。2価の鉄は、主として波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有し、波長800nmよりも短い波長にも吸収を有し、3価の鉄は、主として波長400nm付近に吸収のピークを有する。2価の鉄の増加は、上述の1000nm前後の近赤外線領域の吸収の増加になり、これをTeで表現すると、Teが低下することを意味する。そのため、Tv、Teについて着目した場合、Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量を抑えることで、Tvの低下を抑え、2価の鉄よりも3価の鉄を多くすることで、Teの低下を抑える。したがって、Tv、Teの低下を抑える点では、全鉄量を減らし、Redoxを低く抑えることが好ましい。
【0026】
本発明のガラス板におけるRedoxは、35%以下が好ましい。Redoxが35%以下であれば、Teの低下が抑えられる。Redoxは、30%以下がより好ましい。
【0027】
本発明では、ガラス組成中の酸化物基準のmol百分率表示で、(MgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2O)で表されるS−valueの値が、−10〜10.5の範囲、好ましくは−2〜10.5の範囲、より好ましくは0〜10.5の範囲、さらに好ましくは2〜10.5の範囲にされる。すなわち、S−valueの値とは、酸化物基準のmol百分率表示で、MgOの含有量とAl
2O
3の含有量とB
2O
3の含有量の合計からNa
2Oの含有量を差し引いた値である。
このS−valueの値が、−10〜10.5の範囲で大きいほど、2価の鉄による約1000〜1100nmの吸収の影響を減らせることが分かった。2価の鉄は、その存在量により波長約1000〜1100nmでの吸収が大きくなると考えていたが、MgO、Al
2O
3、B
2O
3、Na
2Oの組成の存在が2価の鉄の吸収の大きさに関与することが分かった。これは、2価の鉄の存在量が変化しなくても、2価の鉄により波長約1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する6配位の2価の鉄の割合を減らし、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有さない2価の鉄の割合を増やすと考えている。酸化物基準のmol百分率表示でMgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2Oで表されるS−valueの値が、−10〜10.5の範囲で大きくなるほど、2価の鉄の含有量が同じであっても、2価の鉄の吸収量が減ることが分かった。
【0028】
SiO
2は、ガラスの主成分である。
SiO
2の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、57〜71%である。SiO
2の含有量が57%未満では、ガラスの安定性が低下する。SiO
2の含有量が71%を超えると、ガラスの溶解温度が上昇し、溶解できなくなるおそれがある。SiO
2の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、60〜69%が好ましく、60〜68%がより好ましい。
【0029】
Al
2O
3は、耐候性を向上させる成分である。
Al
2O
3の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、0〜6%である。Al
2O
3を含有することにより耐候性が良好となる。Al
2O
3の含有量を増やすことで高温粘性を調整し泡品質を改善することができるが、Al
2O
3の含有量が6%を超えると、溶解性が著しく悪化する。Al
2O
3の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、0.1〜5%が好ましく、0.4〜5%がより好ましい。
【0030】
Na
2Oは、ガラス原料の溶融を促進する必須成分である。
Na
2Oの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、10〜16%である。Na
2Oの含有量が10%未満では、ガラス原料の溶解が困難になる。Na
2Oの含有量が16%を超えると、ガラス板の耐候性および安定性が悪化する。Na
2Oの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、11〜15%が好ましく、11〜14%がより好ましい。
【0031】
K
2Oは、必須ではないが、ガラス原料の溶融を促進し、熱膨張、粘性等を調整する成分である。
K
2Oの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、0〜0.7%であるのが好ましい。K
2Oの含有量が0.7%を超えると、原料コストが著しく上昇してしまう。K
2Oの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、0〜0.6%がより好ましい。
【0032】
CaOは、ガラス原料の溶融を促進し、また粘性、熱膨張係数等を調整する成分であり、Redoxを低く抑える成分である。
CaOの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、1.6〜11%である。11%を超えると失透温度が上昇する。CaOの含有量は、2〜10.5%が好ましい。
また、MgOとCaOとの合計の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、10.5%以上であるのが好ましい。MgO+CaOが10.5%未満では、ガラスの粘性が高くなりすぎるおそれがある。また、ガラス原料の溶解が困難になる。
また、MgOとCaOとの合計の含有量の上限は、20%とするのが好ましい。20%を超えるとガラスとして不安定となり、溶融後のガラス化過程で結晶などが析出しやすくなるため好ましくない。
【0033】
Li
2Oは、必須ではないが、ガラス原料の溶融を促進させ、溶解温度を低下させる成分である。
Li
2Oの含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、0〜3%であるのが好ましい。Li
2Oの含有量が3%を超えると、ガラスの安定性が悪化する。また、原料コストが著しく上昇してしまう。
【0034】
B
2O
3は、ガラス原料の溶融を促進する成分である。B
2O
3は必須な成分ではない。ガラス板よりもTeを高くするためには、B
2O
3の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で、3〜5%が好ましい。
【0035】
ZrO
2は、必須ではないが、ガラスの化学的な耐久性を向上させ、また、弾性率、硬度等の物理的な強度を向上させる成分である。
ZrO
2の含有量は、酸化物基準のmol百分率表示で0〜3%が好ましい。ZrO
2の含有量が3%を超えると、溶融特性が悪化し、また、失透温度が上昇する。
【0036】
本発明のガラス板は、清澄剤として用いたSO
3を含んでいてもよい。SO
3に換算した全硫黄の含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0.01〜0.5%が好ましい。SO
3に換算した全硫黄の含有量が0.5%を超えると、溶融ガラスが冷却される過程でリボイルが発生し、泡品質が悪化するおそれがある。SO
3に換算した全硫黄の含有量が0.01%未満では、充分な清澄効果が得られない。SO
3に換算した全硫黄の含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0.05〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.4%がさらに好ましい。
【0037】
本発明のガラス板は、清澄剤として用いたSnO
2を含んでいてもよい。また、透明電極材料として使用されたガラス基板の表層にSnO
2が積層された透明導電性ガラス板をガラスカレットの原料として用いてもよい。SnO
2に換算した全スズの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0〜1%が好ましい。
【0038】
本発明のガラス板は、清澄剤として用いたSb
2O
3を含んでいてもよい。Sb
2O
3に換算した全アンチモンの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0〜0.5%が好ましい。Sb
2O
3に換算した全アンチモンの含有量が0.5%を超えると、フロート成形の場合、成形後のガラス板が白濁してしまう。Sb
2O
3に換算した全アンチモンの含有量は、酸化物基準の質量百分率表示で、0〜0.1%がより好ましい。
【0039】
本発明のガラス板は、着色成分である、S、NiO、MoO
3、CoO、Cr
2O
3、V
2O
5、MnOを実質的に含まないことが好ましい。S、NiO、MoO
3、CoO、Cr
2O
3、V
2O
5、MnOを実質的に含まないとは、S、NiO、MoO
3、CoO、Cr
2O
3、V
2O
5、MnOをまったく含まない、または、S、NiO、MoO
3、CoO、Cr
2O
3、V
2O
5、MnOを製造上不可避的に混入した不純物として含んでいてもよいことを意味する。S、NiO、MoO
3、CoO、Cr
2O
3、V
2O
5、MnOを実質的に含まなければ、Tv、Teの低下が抑えられる。
【0040】
本発明のガラス板のTe(4mm厚さ換算)は、80%以上が好ましく、82.7%以上がより好ましい。Teは、JIS R 3106(1998)(以下、単にJIS R 3106と記す。)の規格にしたがい、分光光度計により透過率を測定し算出された日射透過率である。
また、組成中の着色成分であるFe
2O
3含有量が0.01質量%以下の場合は、Te(4mm厚さ換算)は90%以上が好ましく、91%以上、より好ましくは91.5%以上がより好ましい。
【0041】
本発明のガラス板のTv(4mm厚さ換算)は、80%以上が好ましく、82%以上が好ましい。Tvは、JIS R 3106の規格にしたがい、分光光度計により透過率を測定し算出された可視光透過率である。係数は、標準の光A、2度視野の値を用いる。
また、組成中の着色成分であるFe
2O
3含有量が0.01質量%以下の場合は、Tv(4mm厚さ換算)は90%以上が好ましく、91%以上がより好ましい。
【0042】
本発明のガラス板は、太陽電池用ガラス板や集光ミラー用ガラス板として好適である。太陽電池用ガラス板として用いる場合は、カバーガラスとして用いてもよく、薄膜太陽電池用ガラス基板として用いてもよい。
【0043】
本発明のガラス板の製造方法においては、溶融ガラスの温度を高くして2価の鉄の割合が高めになったとしても、得られるガラス板のTeの低下が抑えられる。よって、本発明のガラス板の製造方法は、溶融ガラスの温度が高い、フロート法またはダウンドロー法に好適である。
【0044】
以上説明した本発明のガラス板にあっては、酸化物基準のmol百分率表示で、MgO+Al
2O
3+B
2O
3−Na
2Oで表されるS−valueの値が、−10〜10.5の範囲であることにより、2価の鉄の含有量が変化しなくても、2価の鉄が原因の波長約1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する6配位の2価の鉄の割合を減らし、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有さない2価の鉄の割合を増やすと考えられている。そのため、従来のガラス板と同程度の鉄の含有量の場合には、従来のガラス板よりもTeを高くでき、または、従来のガラス板よりも鉄の含有量が多い場合には、従来のガラス板と同レベルのTeにでき、または、従来のガラス板よりも鉄の含有量が少ない場合には、従来のガラス板よりもTeを非常に高くできる。
【0045】
そして、ガラス板の鉄の含有量を比較的多くしてもTeが充分に高いガラス板が得られるため、鉄の含有量が比較的多いガラス原料(すなわち、比較的低価格のガラス原料)を用いることができ、ガラス板の製造コストが低くなる。
また、フロート法またはダウンドロー法で本発明のガラス板を製造する際の溶融ガラスの温度を、より高い温度(すなわち、フロート法またはダウンドロー法で通常のガラス板を製造する場合と同じ温度)にして、Redox(2価の鉄の割合)が高めになったとしても、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有する6配位の2価の鉄の割合を減らし、波長1000〜1100nm付近に吸収のピークを有さない2価の鉄の割合を増やすことができるため、Teが充分に高いガラス板が得られる。このように、Teが高いガラス板を生産性よく製造できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
【0047】
(Redox)
得られたガラス板のFe
2O
3量は、蛍光X線測定によって求めた、Fe
2O
3に換算した全鉄の含有量(%=質量百分率)である。
Redoxの算出に必要なガラス板中の2価の鉄の量は、湿式分析法により定量した。具体的には、得られたガラス板を粉砕し、ガラス粉末をフッ化水素にて溶解したものとビピリジル、酢酸アンモニウム溶液とを混合して発色させ、その吸光ピーク強度を測定し、標準試料により事前に作成した検量線を元に2価の鉄の量を定量した。
【0048】
(Te)
得られたガラス板を4mm厚さに研磨し、JIS R 3106規定の日射透過率(Te)を測定した。
【0049】
(波長1000nmの吸収量)
ガラス板の波長1000nmの吸収量は、単位厚さ(10mm)当たりのFeO=1wt%当たりの吸収係数として下記の式(1)により求めた。
−{ln(T
1000)−ln(R
1000)}/{Fe
2O
3(wt%)×redox/100}×10/4 … 式(1)
ここで、T
1000は、波長1000nmにおける板厚が4mmのガラス板を、分光光度計(日立製作所社製、U−4100)を用いて測定した透過率である。R
1000は、波長1000nmにおける反射による損失である。なお、R
1000は、屈折率からの計算値である。すなわち、ガラスの屈折率をn
1とすると、空気とガラス界面の反射率R
1を、下記の式(2)により求めて、
R
1=(n
1−1)
2/(n
1+1)
2 … 式(2)
光吸収がない場合の反射損失Rを、下記の式(3)として求めることができる。
R=(1−R
1)
2 … 式(3)
このとき、波長1000nmの屈折率は、他の波長5種類の屈折率を求めて、セルマイヤー多項式から外挿することで求めた。
【0050】
ガラス組成を変化させた例1〜15に対して、S−value、Te、波長1000nmの吸収量を求め、表1、2に示した。なお、表1および表2において、波長1000nmの吸収量は、「Abs(1000nm)」として表記した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
S−valueと波長1000nmの吸収量の関係を
図1のグラフに示した。各例の組成は、全鉄量と2価の量「Redox」から、2価の鉄の含有量はほぼ一定であるが、S−valueが、−10〜10.5の範囲で大きくなると、波長1000nmの吸収量は減っていくことが分かる。このことは、S−valueが、−10〜10.5の範囲で大きくなると、Teが高くなることを示す。このことより、波長1000nmの吸収を起こす2価の鉄の量が一定であっても、S−valueの値を調整することにより、波長1000nmの吸収量(つまりはTe)を調整することができ、波長1000nmの吸収量の低い(すなわち、Teの大きい)ガラス組成を得ることができる。