(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
培養袋の注入口は、スパウト、スクリューキャップ、押込キャップ、王冠、ゴム栓、ウレタン栓、シリコン栓、コルク栓、モルトン栓、綿栓、紙栓、3方コック、ファスナー、チャック、ジッパーの何れか1種類以上であることを特徴とする、請求項1に記載の微生物培養器。
培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、一平方メートルあたり0.1〜3.0gのペプトンと、0.1〜3.0gの酵母エキスと、0.1〜0.5gのカゼイン分解
物と、0〜0.5gのグルコースと、0.075〜0.3gのピルビン酸ナトリウムと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.1〜0.5gの溶性デンプンと、0.01〜0.05gの硫酸マグネシウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であることを特徴とする、請求項6に記載の微生物培養器。
培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、一平方メートルあたり0.38〜9.0gの肉エキスまたは魚肉エキスと、0.63〜15.0gのトリプトンと、0〜3.0gのグルコースと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の微生物培養器。
培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、一平方メートルあたり2.5〜40.0gの麦芽エキスと、0〜40.0gのグルコースと、0.25〜4.0gのペプトンと、0〜0.3gのリン酸一カリウムと、0〜0.1gのクロラムフェニコールと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の微生物培養器。
シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋とを備える微生物培養器の、滅菌袋に封止されている培養袋を滅菌袋から取り出し、
培養袋の注入口を開いて注入口から培養袋内へ透析液を入れ、
注入口を密閉してから培養袋を微生物培養の条件下に置いて微生物を培養し、
培養した微生物の存在又は量を検査し、
前記培養袋は、前記培地を入れられた開封部分が開封状態のままガス透過性の滅菌袋に入れられてから前記滅菌袋のみ封止され、前記滅菌袋内が滅菌ガスの雰囲気中で滅菌された後に前記滅菌袋が未開封のまま前記開封部分が密封されたものである、
透析液の検査方法。
シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋とを備える微生物培養器の、滅菌袋に封止されている培養袋を滅菌袋から取り出し、
培養袋の注入口を開いて注入口から培養袋内へ試料液を入れ、
注入口を密閉してから培養袋を微生物培養の条件下に置き、
前記培養袋は、前記培地を入れられた開封部分が開封状態のままガス透過性の滅菌袋に入れられてから前記滅菌袋のみ封止され、前記滅菌袋内が滅菌ガスの雰囲気中で滅菌された後に前記滅菌袋が未開封のまま前記開封部分が密封されたものである、
微生物の培養方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
袋状容器にシート状の培地を収容した微生物培養器は、例えば、袋状容器の開口部分のジッパーを開けて開口状態にし、滅菌ガスの雰囲気中に置くことで滅菌済みの微生物培養器とすることができる。しかし、このようにして滅菌処理した微生物培養器は、滅菌処理後、開口部分を閉じるまでの間、開口部分を通じて容器内部に微生物等の異物が侵入する虞がある。また、開口部分の開閉物としてジッパー類を用いた袋状容器は、密閉性が低いため、開口部分を閉じた状態であっても異物類が侵入する虞があり、また、例えば、透析液といった本来的に細菌数の少ない試料を細菌検出のために多量に入れることは困難である。
【0008】
そこで、本願は、侵入する異物の存在を抑制し且つ多量の試料を入れることが可能な微生物培養器、微生物検査キット、透析液の検査方法、微生物の培養方法、微生物の検査方法、及び微生物培養器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、培養袋に試料を入れるための注入口を、培地を内部に入れるための開封部分とは別に設けることにした。
【0010】
詳細には、本発明は、シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋を含む、微生物培養器である。このような微生物培養器であれば、試料を培養袋内に入れる際は、培地を出し入れ可能な開封部分に比べて異物が通過しにくい注入口を通じて入れることになるため、侵入する異物の存在が抑制される。また、容器の密閉性が高く漏れ出しにくいため、多量の試料を入れることも可能である。
【0011】
なお、培養部の注入口は、試料の注入後に密封状態とすることが可能なものであれば如何なるものであってもよく、例えば、スパウト、スクリューキャップ、押込キャップ、王冠、ゴム栓、ウレタン栓、シリコン栓、コルク栓、モルトン栓、綿栓、紙栓、3方コック、ファスナー、チャック、ジッパーの何れか1種類以上を適用可能である。
【0012】
また、上記微生物培養器は、シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋と、を備えるものであってもよい。このような微生物培養器であれば、培養袋の外側の減菌状態が減菌袋によって保たれるため、培養袋に試料を入れる際、培養袋の中に異物が入る可能性が低い。
【0013】
また、上記微生物培養器は、好気性菌の検出用であり、培養袋は、酸素透過性の素材で形成されていてもよい。培養袋が酸素透過性の素材で形成されていれば、酸素が培養袋の外側から内側へ供給されるため、好気性菌を育成可能となる。
【0014】
また、上記微生物培養器は、嫌気性菌の検出用であり、培養袋は、酸素不透過性の素材で形成されていてもよい。培養袋が酸素不透過性の素材で形成されていれば、酸素が培養袋の外側から内側へ供給されないため、嫌気性菌を育成可能となる。
【0015】
また、微生物培養器は、透析液中または逆浸透水中に含まれる微生物の検出用であり、培養袋内の培地は、透析液中または逆浸透水中に含まれている栄養成分を補う所定の補助栄養成分を有するものであってもよい。培地が、透析液中に元々含まれている栄養成分を補う程度の所定の補助栄養成分を有するものであれば、透析液中の微生物を栄養過多により死滅させることなく、培養袋内で育成することが可能である。
【0016】
なお、培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、例えば、一平方メートルあたり0.1〜3.0gのペプトンと、0.1〜3.0gの酵母エキスと、0.1〜0.5gのカゼイン分解物と、0〜0.5gのグルコースと、0.075〜0.3gのピルビン酸ナトリウムと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.1〜0.5gの溶性デンプンと、0.01〜0.05gの硫酸マグネシウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であってもよい。この程度の成分が培地に含まれていれば、透析液中または逆浸透水中の微生物を培養袋内で育成することが可能である。
【0017】
なお、培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、例えば、一平方メートルあたり0.38〜9.0gの肉エキスまたは魚肉エキスと、0.63〜15.0gのトリプトンと、0〜3.0gのグルコースと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であってもよい。この程度の成分が培地に含まれていれば、透析液中または逆浸透水中の微生物を培養袋内で育成することが可能である。
【0018】
なお、培養袋内の培地が有する所定の補助栄養成分とは、例えば、一平方メートルあたり2.5〜40.0gの麦芽エキスと、0〜40.0gのグルコースと、0.25〜4.0gのペプトンと、0〜0.3gのリン酸一カリウムと、0〜0.1gのクロラムフェニコールと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であってもよい。この程度の成分が培地に含まれていれば、透析液中または逆浸透水中の微生物を培養袋内で育成することが可能である。
【0019】
また、本発明は、上記何れかの微生物培養器を含む微生物検査キットとしての側面から捉えることも可能である。
【0020】
また、本発明は、透析液の検査方法としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋とを備える微生物培養器の、滅菌袋に封止されている培養袋を滅菌袋から取り出し、培養袋の注入口を開いて注入口から培養袋内へ透析液を入れ、注入口を密閉してから培養袋を微生物培養の条件下に置いて微生物を培養し、培養した微生物の存在又は量を検査する、透析液の検査方法であってもよい。
【0021】
また、本発明は、微生物の培養方法としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋とを備える微生物培養器の、滅菌袋に封止されている培養袋を滅菌袋から取り出し、培養袋の注入口を開いて注入口から培養袋内へ試料液を入れ、注入口を密閉してから培養袋を微生物培養の条件下に置く、微生物の培養方法であってもよい。
【0022】
また、本発明は、微生物の検査方法としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、上記微生物の培養方法によって培養した微生物の存在又は量を検査する微生物の検査方法であってもよい。
【0023】
また、本発明は、微生物培養器の製造方法としての側面から捉えることも可能である。例えば、本発明は、シート状の培地を内部に入れて封止した注入口付の培養袋と、培養袋を内部に入れて封止した滅菌袋とを備える微生物培養器の製造方法であって、培地を培養袋の開封部分から内部に入れた培養袋を、ガス透過性を有する滅菌袋に収容して滅菌袋を封止処理し、封止処理を行った滅菌袋を滅菌ガスの雰囲気中に置いて、滅菌袋内に収容されている培養袋内の培地を滅菌処理し、培養袋を収容した滅菌袋を封止したままの状態で、培養袋の開封部分を滅菌袋の外側から閉じ、滅菌処理を施した培地が入った培養袋を密封処理するものであってもよい。
【0024】
侵入する異物の存在を抑制し且つ多量の試料を入れることができるようにするために、例えば、キャップ類のような開口部分の大きさが小さく且つ密閉性も高いものを注入口として用いた袋状容器にシート状の培地を収容し、滅菌ガスの雰囲気中に置くことで滅菌済みの微生物培養器とする場合、開口部分の大きさが小さい故に、滅菌処理後の袋状容器内に滅菌ガスが残留する可能性が高くなる。袋状容器内に滅菌ガスが残留していると、培養しようとする微生物の生育に影響を与える。残留ガスは、袋状容器にガス透過性の材料を用いていても容器内から完全に抜け切ることは難しい。また、開口部分の大きさが小さいものであっても、滅菌処理後、開口部分を閉じるまでの間、開口部分を通じて容器内部に異物が侵入する可能性を排除できない。しかし、微生物培養器をこのような方法で製造すれば、培地の滅菌処理後、培養袋が密封処理されるまでの間、培養袋が滅菌袋の内部に収容されたままの状態が保たれるので、滅菌処理後の培養袋に異物が入る可能性が極めて低い。また、微生物培養器をこのような方法で製造すれば、培地の滅菌処理後、培養袋が密封処理されるまでの間、培養袋が滅菌袋の内部に収容されたままの状態となるので、培養袋の開放部分を大きくすることが可能であり、培養袋内に残留する滅菌ガスを、ガス透過性を有する滅菌袋を介して滅菌袋の外側から誘引して除去することが可能になる。
【0025】
なお、微生物培養器の製造方法は、滅菌処理後、密封処理前に、滅菌処理を行った滅菌袋を真空中に置いて、滅菌袋内に残留する滅菌ガスを取り除く除去処理を更に行ってもよい。当該除去処理を更に行えば、残留する滅菌ガスが抑制された微生物の培養器を製造することが可能である。
【0026】
また、微生物培養器の製造方法は、培養袋を減菌袋から取り出す取り出し処理を更に行うものであってもよい。当該取り出し処理を更に行えば、滅菌処理済みの培養袋を流通させることが可能である。
【0027】
また、培養袋の内面は、滅菌袋を形成する素材のうち少なくとも滅菌袋の内面を形成する素材よりも低い温度で熱溶着可能な素材で形成されており、密封処理は、開封部分を滅菌袋の外側から閉じた状態で培養袋を加熱し、培養袋を密封するものであってもよい。滅菌袋の外側から熱溶着により密封処理を行えば、密封処理が容易であり、且つ、培養袋の密封性を高めて異物の侵入をより確実に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
上記発明によれば、侵入する異物の存在を抑制し且つ多量の試料を入れることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明の実施形態を以下に説明する。以下に示す実施形態は例示であり、本願発明の技術的範囲をこれらに限定するものではない。
【0031】
<微生物培養器>
図1は、実施形態に係る微生物培養器の外観図の一例である。微生物培養器1は、
図1に示すように、袋状の培養袋10にシート状の培地20を入れた微生物培養器であり、滅菌袋30に収容されている。なお、微生物培養器1は、培養袋10を収容する滅菌袋30が備わっているものに限定されるものでなく、滅菌袋30は省略されていてもよい。微生物培養器1は、細菌を検査する際にあると便利なものを適宜含めた微生物検査キットの全部または一部を構成するものであってもよい。培養袋10には、試料を容器内に注入するための注入口11が取り付けられている。培養袋10は、2枚重ねにしたシート状の素材(例えば、Polymer等の熱融解性材料)の縁同士を溶着したものであり、
図1に示すように、縁の部分12A,12Bが溶着されている。滅菌袋30についても、培養袋10と同様、2枚重ねにしたシート状の素材の縁同士を溶着したものであり、
図1に示すように、縁の部分31A,31Bが溶着されている。
【0032】
培養袋10の材質としては試料の添加時に該試料が漏れず、液体不浸透性であって、一方好気性細菌が生育する酸素透過性を有していることが望ましい。また、微生物の生育を観察するために透明または半透明であることが好ましい。このような要求を満たす材質としては、例えば、実質的に無孔性であり、酸素透過率が3mL/m
2/24時間以上であることが好ましい。具体的には、例えば、上述したようなPolymer等の樹脂フィルムが挙げられる。微生物の生育にとって十分なガス透過性があるように、その際のフィルムの厚みは150μmの範囲であるのが適当である。樹脂としては具体的にポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの複合物などが挙げられる。例えば、ポリプロピレンを用いる場合、ガス透過性の観点から、その厚みは150μm以下であることが望ましい。
【0033】
培養袋10の形状は特に限定されないが、例えば、正方形や長方形といった方形であれば量産に便利である。また、培養袋10の大きさは、試料の液量に合わせて自在に決定可能であり、例えば、想定される試料の液量が10mLとすれば100×120mm〜160×200mm程度のものを用意すると便利である。
【0034】
また、培養袋10の注入口11は、試料を容器内に注入可能であれば如何なるものであってもよく、密閉性に優れるキャップ類の他、例えば、ジッパー類を用いることも可能である。
【0035】
<微生物培養器の製造方法>
微生物培養器1は、例えば、以下のような製造工程により製造可能である。
【0036】
図2は、培養袋10に培地20を入れる様子を示した図の一例である。微生物培養器1を製造するには、縁の部分12Bを溶着する前の開放部分13から培地20を培養袋10内に入れる。
【0037】
図3は、培地20を内部に入れた培養袋10を滅菌袋30に収容する様子を示した図の一例である。培地20を培養袋10内に入れた後は、開放部分13を開いたままの状態の培養袋10を、縁の部分31Bを溶着する前の開放部分32から滅菌袋30内に入れる。
【0038】
図4は、培養袋10を収容した滅菌袋30を封止する様子を示した図の一例である。培養袋10を滅菌袋30内に収容した後は、開放部分32を溶着シーラー2で閉じて滅菌袋30を封止処理する。これにより、滅菌袋30は、滅菌袋30を構成する2つのシート状の素材同士が、
図1において示した縁の部分31Bで互いに溶着し、滅菌袋30が封止された状態となる。
【0039】
図5は、開放部分32を溶着シーラー2で閉じた後の滅菌袋30を示した図の一例である。開放部分32を溶着シーラー2で閉じると、滅菌袋30の内部は、縁の部分31A,31Bにより全周に渡って閉じられた状態となる。従って、滅菌袋30内の培養袋10は、滅菌袋30の外部の微生物やその他の異物から隔離された状態となる。
【0040】
図6は、
図5の符号A−Aが示す線で切断した場合の滅菌袋30の断面図の一例である。滅菌袋30は、滅菌袋30を構成する2枚のシート状の素材のうち何れか一方がガス透過性を有するシート31で形成されており、何れか他方が当該シート31に対して融着可能な熱融解性のフィルム33で形成されている。滅菌袋30は、このように構成されているため、開放部分32を溶着シーラー2で閉じることが可能である他、開放部分13を閉じた状態でも滅菌袋30を所定のガスの雰囲気中に置けば当該所定のガスがシート31を透過し、滅菌袋30内の収容物を当該所定のガスに晒すことが可能である。
【0041】
そこで、本製造方法においては、開放部分32を溶着シーラー2で閉じて封止処理を行った滅菌袋30を滅菌ガスの雰囲気中に置き、滅菌袋30内に収容されている培養袋10の外側や内側、培養袋10内の培地20等を滅菌処理する。滅菌袋30を滅菌ガスの雰囲気中に置くことにより、滅菌袋30内に収容されている培養袋10の外側や内側、培養袋10内の培地20等に付着していた微生物が死滅する。なお、滅菌袋30のガス透過性を有するシート31に、例えば、ガスが接触すると変色するインク等のインジケータ類を設けておけば、微生物培養器1が滅菌処理されたものであるか否かの判別が容易である。
【0042】
滅菌処理の具体例としては、例えば、以下のような処理が挙げられる。すなわち、例えば、ガスが接触すると変色するインジケータ類を培養袋10あるいは滅菌袋30等の適当な場所に貼り付け、培養袋10を収容した滅菌袋30を滅菌機に挿入する。滅菌機の温度設定は例えば45℃程度にする。そして、滅菌機の扉を閉めて缶内を減圧し(例えば、ゲージ圧でー0.085MPa程度)、真空状態にする。次に、EO(エチレンオキサイド)ガスを所定の圧力(例えば、ゲージ圧で0.110MPa)まで入れる。そして、所定の時間(例えば、設定圧力に達してから12時間)が経過するまで放置する。この間、滅菌機内では滅菌作用が徐々に進行する。所定の時間が経過後、滅菌機内をガス抜きして真空引きを行う。培養袋10は縁の部分12Bが溶着されず、開放部分13が開いたままの状態となっているため、培養袋10内にEOガスが残留することなく速やかに排出される。真空引き後は空気を供給して空気置換を行う。そして、このような真空引きと空気置換とを更に2回行い、計3回のエアレーションを実施する。そして、滅菌機の扉を開いて製品を取出し、インジケータの変色を確認する。インジケータの変色を確認したら、滅菌処理を完了したものとする。
【0043】
図7は、培地20が入った培養袋10を封止する様子を示した図の一例である。滅菌袋30を滅菌ガスの雰囲気中に置いて滅菌処理を施した後は、培養袋10内の滅菌ガスを除去する処置を行った後、培養袋10を収容した滅菌袋30を封止したままの状態で、培養袋10の開放部分13を滅菌袋30の外側から溶着シーラー2で閉じ、滅菌処理を施した培地20が入った培養袋10を密封処理する。これにより、培養袋10は、培養袋10を構成する2つのシート状の素材同士が、
図1において示した縁の部分12Bで互いに溶着し、培養袋10が密封された状態となる。
【0044】
なお、培養袋10内の滅菌ガスを除去する処置としては、例えば、滅菌処理終了後、培養袋10の密封処理開始前までの間、培養袋10を収納した滅菌袋30を非滅菌ガス雰囲気中に長時間置く方法、或いは、真空引き可能な槽内に培養袋10を収納した状態の滅菌袋30を配置して真空引きを行い、当該滅菌袋30を低気圧の雰囲気中に置く方法等がある。
【0045】
図8は、開放部分13を溶着シーラー2で閉じた後の培養袋10を収容した滅菌袋30を示した図の一例である。開放部分13を溶着シーラー2で閉じると、培養袋10の内部は、縁の部分12A,12Bにより全周に渡って閉じられた状態となる。従って、培養袋10内の培地20は、培養袋10の外部の微生物やその他の異物から隔離された状態となる。
【0046】
図9は、
図8の符号B−Bが示す線で切断した場合の滅菌袋30および培養袋10の断面図の一例である。培養袋10は、培養袋10を構成する2枚のシート状の素材の各々が、試料を漏らさない液体不浸透性および微生物の生育に必要な酸素を透過する酸素透過性を有し、且つ、何れか一方の素材が他方の素材に対して融着可能でありながら、滅菌袋30を構成するフィルム33には融着しにくいように形成されている。
【0047】
すなわち、滅菌袋30のフィルム33の外側面を構成する素材を「素材1(外側)」、フィルム33の内側面を構成する素材を「素材1(内側)」、滅菌袋30のシート31を構成する素材を「素材2」、培養袋10のフィルム14の外側面を構成する素材を「素材3(外側)」、フィルム14の内側面を構成する素材を「素材3(内側)」、培養袋10のフィルム15の外側面を構成する素材を「素材4(外側)」、フィルム15の内側面を構成する素材を「素材4(内側)」とした場合、各素材の融点が次のような関係を満たすようにすることで、開放部分13を閉じる際の溶着シーラー2の温度を適当に調整し、培養袋10を滅菌袋30に融着させることなく、培養袋10の開放部分13を滅菌袋30の外側から溶着シーラー2で閉じることが可能となる。
「素材3,4(内側)」≪「素材1(内側)」≪「素材1(外側),素材2,素材3,4(外側)」
【0048】
微生物培養器1は、上記一連の製造工程を経ることにより完成に至る。本実施形態に係る微生物培養器1は、上記一例の製造工程を経て完成に至るため、例えば、滅菌袋30を省略した状態で培養袋に滅菌処理を施し、その後に培養袋の開放部分を閉じる場合に比べ、菌類やその他の異物が培養袋内に侵入する可能性を大幅に抑制可能である。また、上記一連の製造工程を経ることにより完成に至った微生物培養器1は、例えば、培養袋10を滅菌袋30に収容したままの状態で出荷することにより、流通過程における培養袋10の表面への微生物やその他の異物の付着を抑制することが可能である。培養袋10の表面への異物の付着が抑制されれば、注入口11を開けた際、培養袋10内に異物が侵入する可能性が低下する。
【0049】
なお、上記製造方法は、培地20を培養袋10内に入れるに際し、注入口11の反対側に設けた開放部分13から培地20を培養袋10内に入れる態様に限定されるものでなく、例えば、注入口11の付近あるいはその他部分に設けた開放部分から培地20を培養袋10内に入れてもよい。また、上記製造方法は、培養袋10を滅菌袋30に収容するに際し、注入口11の側から入れる態様に限定されるものでなく、例えば、開放部分13の側から培養袋10を滅菌袋30内に入れてもよい。
【0050】
また、培地20は、例えば、次のような方法により、培養袋10に収容した状態にしてもよい。例えば、培養袋10を構成するシート状の素材を2枚重ねにし、それらの間に培地20を挟み、シート状の素材の縁同士を加熱して縁の部分12Aを溶着させることにより、培地20を培養袋10に収容した状態にしてもよい。
【0051】
また、培養袋10は、シート状の素材の縁同士を加熱して溶着したものに限定されるものでなく、例えば、粘着テープ等で接着することにより形成したものであってもよい。
【0052】
<滅菌袋の素材>
なお、滅菌袋30は、例えば、以下の表1に示す材料を用いることにより実現可能である。
【表1】
【0053】
上記表1において、「素材1(外側)」は
図6に示したフィルム33の外側(シート31に触れない側)の部分に相当し、「素材1(内側)」は
図6に示したフィルム33の内側(シート31に触れる側)の部分に相当し、「素材2」は
図6に示したシート31に相当する。滅菌袋30は、例えば、上記表1に示す材質のものを用いることにより、ガス透過性をシート31に付与し、シート31に対して融着可能な熱融解性をフィルム33に付与することが可能である。
【0054】
また、培養袋10は、例えば、以下の表2に示す材料を用いることにより実現可能である。
【表2】
【0055】
上記表2において、「素材3(外側)」は
図9に示したフィルム14の外側(フィルム15に触れない側)の部分に相当し、「素材3(内側)」は
図9に示したフィルム14の内側(フィルム15に触れる側)の部分に相当し、「素材4(内側)」は
図9に示したフィルム15の内側(フィルム14に触れる側)の部分に相当し、「素材4(外側)」は
図9に示したフィルム15の外側(フィルム14に触れない側)の部分に相当する。なお、培養袋10を構成する素材は、上記表2に示される態様に限定されるものでなく、例えば、外側がPET/PEで内側がOPP/PEといった具合に、表2に示した素材の組み合わせを更に変形することも可能である。
【0056】
ここで、上記表2に示した各材質の酸素透過度および融点は、下記の表3,4,5に示す通りである。
【表3】
【0059】
培養袋10は、上記表3,4,5に示したような酸素透過度および融点を有する材質のものを、例えば、上記表2に示したようなパターンで組み合わせて用いることにより、試料を漏らさない液体不浸透性および微生物の生育に必要な酸素を透過する酸素透過性をフィルム14,15に付与し、且つ、何れか一方のフィルムが他方のフィルムに対して融着可能でありながら、滅菌袋30を構成するフィルム33よりも融点の低い熱融解性をフィルム14,15に付与することが可能である。
【0060】
<培地>
なお、培養袋10に収容する培地20は、微生物の生育に適する積層物であることが望ましく、例えば、多孔質マトリックス層と水溶性高分子化合物層とを含むシート状の培地が好適である。培地20のさらなる具体的構造としては、例えば、基板、水溶性高分子化合物層及び多孔質マトリックス層を含むものがある。
【0061】
上記水溶性高分子層には、培養を目的とする微生物に適した栄養成分を含ませることができる。水溶性高分子層にはさらに、pH調製剤、目的以外の微生物の生育を抑制する選択剤、微生物の生育を見やすくする又は特定の微生物の生育を確認するための発色剤、色素、界面活性剤、無機塩類などから選ばれる少なくとも1種を含ませることができる。
【0062】
培地20の製造方法としては、例えば、水溶性高分子化合物、及び培養を目的とする微生物に適した栄養成分、pH調製剤、目的以外の微生物の生育を抑制する選択剤、微生物の生育を見やすくする又は特定の微生物の生育を確認するための発色剤、色素、界面活性剤、無機塩類などを含む水溶液を基板上に塗布して乾燥してフィルムを形成させる方法があり、上記の各成分を別々に含む水溶性高分子化合物の水溶液を逐次塗布し重層してもよい。この場合、培地20は、多孔質マトリックス層、及び少なくとも1層の水溶性高分子化合物層を含み、水溶性高分子化合物層の少なくとも1層は栄養成分を含むものとなる。
【0063】
培地20の具体的な製法としては、例えば、ポリエステルなどのフィルム(基板)上に栄養成分、塩成分および、発色酵素基質を含む水溶性高分子化合物の水溶液を塗布し、乾燥フィルム化する方法などが挙げられる。
【0064】
さらに別の態様としては、例えば、ポリエステルなどのフィルム(基板)上に水溶性高分子の水溶液を重層し、乾燥フィルム化した後、このフィルム上に栄養成分などを含む水溶性高分子の水溶液を重層し、乾燥フィルム化する。さらにこのフィルム上に発色剤を含む水溶性高分子の水溶液(この水溶液にはさらに栄養成分およびpH調整剤を含んでいてもよい)を重層し乾燥フィルム化する。そして、フィルム層の上に、さらに多孔質マトリックスを重層して乾燥する方法などが挙げられる。多孔質マトリックス層があることにより試料液が拡散しやすく使いやすくなる。多孔質マトリックスを重層する場合、一番上の層が乾燥する前に多孔質マトリックスを重層してから乾燥させるとよい。栄養成分、pH調製剤、選択剤、発色剤、色素、界面活性剤、無機塩類などの各種成分のすべて又は一部を、グラビアロールなどを用いて多孔質マトリックスに塗布しておいてもよい。
【0065】
本実施形態に係る微生物培養器1を製造する際は、このようにして作製した乾燥フィルム状の培地層をポリエステルなどのフィルム(基板)から剥がし、もしくは剥がさずに、培養する試料液量に見合った大きさに切断して作成したシート状の培地20を用意し、上記一連の製造工程を実行する。
【0066】
なお、培地20の基板としては、加熱乾燥時の引っ張り強度が十分であれば特に限定されるものではないが、一般的には、例えば20〜50μm厚のポリエステルフィルムが使用される。
【0067】
培地20の水溶性高分子化合物層を形成する水溶性高分子化合物は、試料を加えたとき溶解して10cps以上の粘度を示し、微生物の生育を阻害しないものなら如何なるものであってもよい。例えば、ポリビニルアルコール;変性ポリビニルアルコール(酢酸ビニルの重合の際に、不飽和ジカルボン酸〔例えば、マレイン酸、フマール酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、これらの無水物、またはこれらのモノアルキルエステル〕を共重合したもの(重合方法は例えば、特公昭61−42002号公報参照)、ポリビニルアルコールに環状酸無水物を反応させたもの;セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシメチルセルロース);澱粉およびその誘導体(例えば可溶性澱粉、カルボキシメチル化澱粉);セルロース誘導体、澱粉およびその誘導体以外の多糖類(例えば、ヒアルロン酸、グアーガム、アラビアゴム);アクリル酸およびその誘導体(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アクリル酸(塩)−ビニルアルコールコポリマー);ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);タンパク質、タンパク質誘導体(例えば、コラーゲン)が挙げられる。
【0068】
水溶性高分子化合物は、オストワルド粘度計を用いて20℃で測定した4質量%水溶液の粘度が、好ましくは10cps以上、さらに好ましくは15〜80cpsを示す。このような水溶性高分子化合物を使用することにより、微生物が培地の内部に侵入することなく、また分裂を開始した微生物が培地表面を移動することなく、主としてその表面にコロニーを形成し、その計数が容易になるので好ましい。これらの水溶性高分子化合物の中でも、セルロース誘導体及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれるものが好ましく、鹸化度75〜95%、分子量25000〜250000のポリビニルアルコールが特に好ましい。本実施形態に係る微生物培養器1の培地20において好適な水溶性高分子化合物の含有量は、40〜300g/m
2が適当であり、70〜150g/m
2が好ましい。
【0069】
培地20の多孔質マトリックス層を形成するための材料として、合成繊維(例えば、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル(特に親水化処理したもの)、ポリオレフィン(特に親水化処理したもの)ポリウレタン)、半合成繊維(例えば、レーヨン等)、天然繊維(例えば、羊毛(獣毛)、絹、綿、セルロース、パルプ等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維)等で形成された編織布、繊維ウェブ、不織布、上記繊維の構成素材で作られた多孔質フィルム、スポンジ、多孔質セラミックス等があげられる。多孔質マトリックスは必ずしも親水性である必要はないが、親水性の多孔質マトリックスまたは親水化処理した多孔質マトリックスを用いれば吸水速度が速くなり、作業の能率が上がる。親水性または親水化処理した多孔質マトリックスの表面に水溶性物質を塗布しておくと微生物の分散性が向上し、より好ましい。多孔質マトリックスのなかでは繊維ウェブや不織布が好ましい。繊維ウェブや不織布を構成する繊維としてはナイロン、コットン、セルロース、レーヨンが好ましく、ナイロンからなる繊維ウェブまたは不織布が特に好ましい。ナイロン不織布ではメルトブローン製法で作製した不織布が好ましい。多孔質マトリックス層の好ましい例として、目付40〜100g/m
2、通気度7〜24cm/secのナイロンメルトブロー不織布がある。多孔質マトリックス層の具体例としては、例えば、国際公開第01/44437号パンフレットに開示されているものがある。
【0070】
培地20に用いられる栄養成分、すなわち培地成分としては、検出目的とする微生物の生育に適したものであれば如何なるものであってもよい。例えば、汎用の液体培地や寒天培地から寒天を除いた培地成分等が利用できる。さらに検出目的以外の微生物の生育を抑える選択剤や、生じたコロニーを見やすくするための指示薬、発色剤等をシート状培地に加えてもよく、また特定の微生物を検出するために発色または蛍光酵素基質を加えてもよい。その他、色素、界面活性剤、無機塩類などを添加することができる。
【0071】
微生物のための培地成分としては、例えば、一般生菌検査用としては、酵母エキス・ペプトン・ブドウ糖混合物、肉エキス・ペプトン混合物、ペプトン・大豆ペプトン・ブドウ糖混合物や、これらにリン酸塩、塩化ナトリウム、炭酸塩、マグネシウム塩などの塩類を加えた混合物が、大腸菌・大腸菌群検査用としては、デソキシコール酸ナトリウム・ペプトン・クエン酸鉄アンモニウム・塩化ナトリウム・リン酸二カリウム・乳糖・ニュートラルレッド混合物、ペプトン・乳糖・リン酸二カリウム・エオジンY・メチレンブルー混合物等が、ブドウ球菌検査用としては、肉エキス・ペプトン・塩化ナトリウム・マンニット・フェノールレッド・卵黄混合物、ペプトン・肉エキス・酵母エキス・ピルビン酸ナトリウム・グリシン・塩化リチウム・亜テルル酸卵黄液混合物等が、ビブリオ検査用としては、酵母エキス・ペプトン・蔗糖・チオ硫酸ナトリウム・クエン酸ナトリウム・コール酸ナトリウム・クエン酸第2鉄・塩化ナトリウム・牛胆汁・ブロムチモールブルー・チモールブルー混合物等が、腸球菌用としては、牛脳エキス・ハートエキス・ペプトン・ブドウ糖・リン酸二カリウム・窒化ナトリウム・ブロムチモールブルー・塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム混合物等が、真菌用としては、ペプトン・ブドウ糖混合物、酵母エキス・ブドウ糖混合物、ポテトエキス・ブドウ糖混合物等、麦芽エキス・ペプトン・ブドウ糖混合物等が、サルモネラ用としては、ペプトン、肉エキス、グリセリン、チオ硫酸ナトリウム、L−リジン、クエン酸鉄アンモニウム、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム混合物などが、水系細菌用としては、ペプトン、酵母エキス、カザミノ酸、グルコース、リン酸塩、溶性デンプン、マグネシウム塩混合物などや、肉エキスまたは魚肉エキス、トリプトン、グルコースなどが用いられる。
【0072】
pH調整剤としては、例えば、リン酸塩、炭酸塩(リン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。このようなpH調整剤は微生物の生育に適したpHを維持するように使用されるものである。
【0073】
選択剤としては、抗生物質,合成抗菌剤等の抗生剤、色素、界面活性剤、無機塩等が用いられる。抗生物質としては、メチシリン、セフタメタゾール、セフィキシム、セフタジジム、セフスロジン、バシトラシン、ポリミキシンB、リファンピシン、ノボビオシン、コリスチン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン等が例示でき、合成抗菌剤としては、サルファ剤、ナリジクス酸、オラキンドックス等が例示できる。
【0074】
また、色素としては、静菌または殺菌作用のあるクリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等が例示できる。また、界面活性剤としては、Tergitol7,ドデシル硫酸塩,ラウリル硫酸塩等が例示できる。また、無機塩類としては、亜セレン酸塩、亜テルル酸塩、亜硫酸塩、窒化ナトリウム、塩化リチウム、シュウ酸塩、高濃度の塩化ナトリウム等が例示できる。これら以外にもタウロコール酸塩、グリシン、胆汁末、胆汁酸塩、デオキシコール酸塩等を用いることができる。
【0075】
生じたコロニーを見やすくするために、水溶性高分子化合物層にテトラゾリム塩またはエステラーゼ、フォスファターゼなどの発色または蛍光酵素基質を加えておくことで、微生物の生育を発色または蛍光スポットして容易に観察できる。また、特定の微生物が有する酵素の発色または蛍光酵素基質を加えておくことで、特定の微生物が検出できる利点がある。例えば5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド、6−クロロ−3−インドキシル−β−D−グルクロン酸などがある。
【0076】
また、透析液または逆浸透水の検査を目的とする場合の培地成分としては、透析液中または逆浸透水中の微生物が栄養過多により死滅しないよう、透析液中に元々含まれている栄養成分を補う程度、或いは逆浸透水中の微量な微生物に必要な所定の補助栄養成分を有するものであればよく、例えば、一平方メートルあたり0.1〜3.0gのペプトンと、0.1〜3.0gの酵母エキスと、0.1〜0.5gのカゼイン分解物と、0〜0.5gのグルコースと、0.075〜0.3gのピルビン酸ナトリウムと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.1〜0.5gの溶性デンプンと、0.01〜0.05gの硫酸マグネシウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体を挙げることができる。
【0077】
上記成分のうち、培地成分(菌を生育させる為に必要な成分)は、0.1〜3.0gのペプトンと、0.1〜3.0gの酵母エキスと、0.1〜0.5gのカゼイン分解物と、0〜0.5gのグルコースと、0.075〜0.3gのピルビン酸ナトリウムと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.1〜0.5gの溶性デンプンと、0.01〜0.05gの硫酸マグネシウムであり、0〜0.3gのリン酸二カリウムについてはpH調整剤となる成分である。上記の範囲を超えた場合、菌の増殖速度の低下、生菌数の減少等により、検出速度や感度が低下、もしくは検出不能となる。
【0078】
また、上記成分のうち、発色基質(生育した菌を見やすくする為の成分)は、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であり、上記の下限を超えた場合、目視で検出し難くなる。また、上記の上限を超えた場合、菌の増殖に阻害がかかり検出感度が低下する。または、基質の過剰な着色により、バックグラウンドが高くなる。結果として、菌数を区別し難くなる。
【0079】
また、透析液または逆浸透水の検査を目的とする場合の培地成分としては、透析液中または逆浸透水中の微生物が栄養過多により死滅しないよう、透析液中に元々含まれている栄養成分を補う程度、或いは逆浸透水中の微量な微生物に必要な所定の補助栄養成分を有するものであればよく、例えば、一平方メートルあたり0.38〜9.0gの肉エキスまたは魚肉エキスと、0.63〜15.0gのトリプトンと、0〜3.0gのグルコースと、0〜0.3gのリン酸二カリウムと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体を挙げることができる。
【0080】
上記成分のうち、培地成分(菌を生育させる為に必要な成分)は、0.38〜9.0gの肉エキスまたは魚肉エキスと、0.63〜15.0gのトリプトンと、0〜3.0gのグルコースであり、0〜0.3gのリン酸二カリウムについてはpH調整剤となる成分である。上記の範囲を超えた場合、菌の増殖速度の低下、生菌数の減少等により、検出速度や感度が低下、もしくは検出不能となる。
【0081】
また、上記成分のうち、発色基質(生育した菌を見やすくする為の成分)は、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であり、上記の下限を超えた場合、目視で検出し難くなる。また、上記の上限を超えた場合、菌の増殖に阻害がかかり検出感度が低下する。または、基質の過剰な着色により、バックグラウンドが高くなる。結果として、菌数を区別し難くなる。
【0082】
また、透析液または逆浸透水の検査を目的とする場合の培地成分としては、透析液中または逆浸透水中の微生物が栄養過多により死滅しないよう、透析液中に元々含まれている栄養成分を補う程度、或いは逆浸透水中の微量な微生物に必要な所定の補助栄養成分を有するものであればよく、例えば、一平方メートルあたり2.5〜40.0gの麦芽エキスと、0〜40.0gのグルコースと、0.25〜4.0gのペプトンと、0〜0.3gのリン酸一カリウムと、0〜0.1gのクロラムフェニコールと、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体を挙げることができる。
【0083】
上記成分のうち、培地成分(菌を生育させる為に必要な成分)は、2.5〜40.0gの麦芽エキスと、0〜40.0gのグルコースと、0.25〜4.0gのペプトンであり、0〜0.3gのリン酸一カリウムについてはpH調整剤となる成分である。0〜0.1gのクロラムフェニコールについては選択剤となる成分である。上記の範囲を超えた場合、菌の増殖速度の低下、生菌数の減少等により、検出速度や感度が低下、もしくは検出不能となる。
【0084】
また、上記成分のうち、発色基質(生育した菌を見やすくする為の成分)は、0.015〜0.1gのテトラゾリウム塩または0.15〜1.0gのインドキシル誘導体であり、上記の下限を超えた場合、目視で検出し難くなる。また、上記の上限を超えた場合、菌の増殖に阻害がかかり検出感度が低下する。または、基質の過剰な着色により、バックグラウンドが高くなる。結果として、菌数を区別し難くなる。
【0085】
培地20の形状は、例えば、正方形又は長方形等の方形であれば製造が容易である。培地20の面積、厚みは、検査する試料液量及びシート状培地に使用する水溶性高分子化合物、多孔質マトリックス及びそれらの量によって適宜決定する。培地20は、望ましくは、下記式(1)に示される水溶性高分子化合物の質量と検体となる試料液量の関係を満たし、及び上述したようにシート状培地における水溶性高分子化合物の含有量40〜300g/m
2を満たすような大きさであることが好ましい。
式(1):0.08<水溶性高分子化合物の重量(g)/試料液量(mL)<0.5
【0086】
培地20の好ましい構成として、基板(例えばポリエステルフィルム)上に、水溶性高分子化合物層、栄養成分を含む水溶性高分子化合物層、水溶性高分子化合物層、及び多孔質マトリックス層がこの順で積層されたものを挙げることができる。また、別の構成として、基板(例えばポリエステルフィルム)上に、水溶性高分子化合物層、栄養成分を含む水溶性高分子化合物層、発色剤を含む水溶性高分子化合物層、及び多孔質マトリックス層がこの順で積層されたものを挙げることができる。上記の多孔質マトリックス層には、例えば、栄養成分、pH調製剤、選択剤、発色剤、色素、界面活性剤、無機塩類などの各種成分のすべて又は一部を塗布してもよい。本実施形態に係る微生物培養器1の培地20としては、例えば、国際公開第97/24432号パンフレットに開示された微生物培養器材を使用することもできる。
【0087】
上記培地20を収容した使用前の微生物培養器1を保存する条件は、栄養成分や発色剤の種類や安定性などによって適宜選ぶことができ、例えば、一般的な条件である低温から常温の範囲を選択することも可能である。
【0088】
<微生物培養器の使用方法>
図10は、滅菌袋30から培養袋10を取り出す様子を示した図の一例である。また、
図11は、培養袋10内に試料を入れる様子を示した図の一例である。微生物培養器1を使用する際は、
図10に示すように、滅菌袋30から培養袋10を取り出す。このとき、滅菌袋30に保護されていた培養袋10の表面に異物類がなるべく付着しないように配慮することが好ましい。次に、
図11に示すように、培養袋10の注入口11を開いて試料を培養袋10内に入れ、注入口11を再び閉じる。培養にあたっては、培地20における水溶性高分子化合物の質量(g)と試料液の容量(mL)とが上記式(1)の関係にあることが望ましい。注入口11を閉じて培養袋10内を密閉した後は、培養袋10を、培養しようとする微生物に適した温度及び時間などの条件下に置き、微生物の培養を開始する。なお、本実施形態に係る微生物培養器1は、好気性菌の培養に適しているが、培養袋10を酸素不透過性の素材で形成することにより、嫌気性菌の培養を行うことも可能である。嫌気性菌の検出用として用いる場合の培養袋10の材質としては試料の添加時に該試料が漏れず、液体不浸透性であって、一方嫌気性細菌が生育する酸素不透過性を有していることが望ましい。また、微生物の生育を観察するために透明または半透明であることが好ましい。このような要求を満たす材質としては、例えば、実質的に無孔性であり、酸素透過率が0〜20mL/m
2/24時間であることが好ましい。
【0089】
上記方法によって培養した微生物の存在又は量を検査することで、微生物の様々な検査を行うことが可能となる。
【0090】
<培養袋の変形例>
なお、培養袋10は、例えば、
図12から
図15に示すように、注入口11の位置を適宜変更することも可能である。
【0091】
また、注入口11は、例えば、
図16に示されるような単なるネジ式のキャップに限定されるものでなく、試料の注入および注入口11の開閉が可能なものであれば如何なるものであってもよい。注入口11として適用可能なキャップ以外の例としては、例えば、スパウト、スクリューキャップ、押込キャップ、王冠、ゴム栓、ウレタン栓、シリコン栓、コルク栓、モルトン栓、綿栓、紙栓、3方コック、ファスナー、チャック、ジッパーの何れか1種類以上を挙げることができる。すなわち、例えば、
図17に示されるようなワンタッチ式のキャップ、
図18に示されるように試料を注射針等で入れるゴム式の蓋(口にゴム栓を挿入し、それをアルミキャップ等を用いて固定してある)、或いは
図19に示されるように医療機器などで使われる薬液類注入用の三方弁等をチューブで繋いだもの、
図20に示されるようにいわゆるバイアル瓶に使われる板状のゴム式の蓋(口にゴム板で栓をし、それをアルミキャップ等を用いて固定してある)等を挙げることができる。
【実施例】
【0092】
<培地の実施例1>
水0.125Lに鹸化度89%重合度1700のポリビニルアルコール15gを加え加熱溶解後、20μm厚0.5×0.5mのポリエステルフィルム上に塗布し、120℃、5分間乾燥しフィルム化した。このフィルム上に、鹸化度89%、重合度1700のポリビニルアルコール8g、ペプトン0.0625g、酵母エキス0.0625g、カザミノ酸0.0625g、グルコース0.015625g、リン酸二カリウム0.0375g、溶性デンプン0.0625g、硫酸マグネシウム0.00625gを水0.125Lに溶解して、110℃、7分間乾燥した。このフィルム上に、ポリビニルアルコール2.5g、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート0.075g、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド0.0075gを水0.05Lに溶解して重層し、目付65g/m
2、通気度110L/m
2secのナイロンメルトブロー不織布を張り合わせ100℃30秒間乾燥した。
【0093】
当該シート状の培地20を120×150mmに切断して培養袋10に入れ、培地20を入れた培養袋10を滅菌袋30に入れて開放部分32を閉じ、エチレンオキサイドガスで滅菌を行い、開放部分13を閉じて微生物培養器1を作製した。ここで用いた培養袋20は、ナイロン/LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)のフィルム(大きさ:150×220mm)を2枚重ねにし、注入口11となるスパウトを挟んだ状態で縁の部分12Aを溶着したものである。また、ここで用いた滅菌袋30は、メディコム社(メディコムは登録商標)の滅菌ロールバック(大きさ:200×350)である。
【0094】
なお、本実施例に係る培地20は、グルコース濃度が低く炭酸ナトリウム濃度もゼロのため、測定試料としては、例えば、グルコースとpH調整剤を含むものであることを要する。また、増殖が遅い菌を培養する場合、更に酵母エキス等の栄養成分を追加することが望ましい。栄養が過多になると、細菌に対する浸透圧の上昇等の理由により細菌の生育が阻害される可能性があるが、本実施例に係る培地20は、グルコース濃度を下げ、炭酸ナトリウム濃度をゼロにすることで、栄養成分を追加しても増殖阻害がかかりにくい。
【0095】
<培地の実施例2>
水0.125Lに鹸化度89%重合度1700のポリビニルアルコール15gを加え加熱溶解後、20μm厚0.5×0.5mのポリエステルフィルム上に塗布し、120℃、5分間乾燥しフィルム化した。このフィルム上に、鹸化度89%、重合度1700のポリビニルアルコール8g、肉エキス0.375g、トリプトン0.625g、グルコース0.125gを水0.125Lに溶解して、110℃、7分間乾燥した。このフィルム上に、ポリビニルアルコール2.5g、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート0.075g、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド0.0075gを水0.05Lに溶解して重層し、目付65g/m
2、通気度110L/m
2secのナイロンメルトブロー不織布を張り合わせ100℃30秒間乾燥した。
【0096】
当該シート状の培地20を120×150mmに切断して培養袋10に入れ、培地20を入れた培養袋10を滅菌袋30に入れて開放部分32を閉じ、エチレンオキサイドガスで滅菌を行い、開放部分13を閉じて微生物培養器1を作製した。ここで用いた培養袋20は、ナイロン/LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)のフィルム(大きさ:150×220mm)を2枚重ねにし、注入口11となるスパウトを挟んだ状態で縁の部分12Aを溶着したものである。また、ここで用いた滅菌袋30は、メディコム社(メディコムは登録商標)の滅菌ロールバック(大きさ:200×350)である。
【0097】
<培地の実施例3>
水0.125Lに鹸化度89%重合度1700のポリビニルアルコール15gを加え加熱溶解後、20μm厚0.5×0.5mのポリエステルフィルム上に塗布し、120℃、5分間乾燥しフィルム化した。このフィルム上に、鹸化度89%、重合度1700のポリビニルアルコール8g、麦芽エキス2.5g、グルコース2.5g、ペプトン0.125g、リン酸一カリウム0.0375g、クロラムフェニコール0.0125gを水0.125Lに溶解して、110℃、7分間乾燥した。このフィルム上に、ポリビニルアルコール2.5g、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルフォスフェート0.075g、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド0.0075gを水0.05Lに溶解して重層し、目付65g/m
2、通気度110L/m
2secのナイロンメルトブロー不織布を張り合わせ100℃30秒間乾燥した。
【0098】
当該シート状の培地20を120×150mmに切断して培養袋10に入れ、培地20を入れた培養袋10を滅菌袋30に入れて開放部分32を閉じ、エチレンオキサイドガスで滅菌を行い、開放部分13を閉じて微生物培養器1を作製した。ここで用いた培養袋20は、ナイロン/LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)のフィルム(大きさ:150×220mm)を2枚重ねにし、注入口11となるスパウトを挟んだ状態で縁の部分12Aを溶着したものである。また、ここで用いた滅菌袋30は、メディコム社(メディコムは登録商標)の滅菌ロールバック(大きさ:200×350)である。
【0099】
<MF法および簡易的MF法との比較>
透析液の検査に関連し、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた方法と、従来からあるMF法との比較を行った。本比較においては、菌液を透析液で希釈して約4CFU/mLとしたものを用意した。この菌液を、上記実施形態に係る微生物培養器1とMF法のフィルタとにそれぞれ25mL添加した。MF法では、菌液を吸引ろ過後、フィルタをR2A寒天培地上に移した。それぞれ25℃で培養して3日後、5日後の菌数を測定した(Methylobacterium extorquensのみ7日後も測定した)。その結果を以下に示す。
【表6】
【0100】
また、透析液の検査に関連し、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた方法と、従来からある簡易式のMF法との比較を行った。本比較においては、菌液を透析液で希釈して約0.4CFU/mLとしたものを用意した。この菌液を、上記実施形態に係る微生物培養器1と従来からある簡易的MF法のフィルタとにそれぞれ25mL添加した。簡易的MF法では、菌液を吸引ろ過後、mTGE培地を2mL加えて吸引ろ過した。それぞれ25℃で培養して3日後、5日後の菌数を測定した(Methylobacterium extorquensのみ7日後も測定した)。その結果を以下に示す。
【表7】
【0101】
上記表6、表7より、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた方が、従来からあるMF法あるいは簡易的MF法を用いた場合に比べ、菌数が多く確認されることが判る。この結果より、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた方が、従来からあるMF法あるいは簡易的MF法に比べて検出される菌数の多い、高精度の細菌検査を実現可能であることが判る。
【0102】
なお、上記の表6,7に示すデータは、上記の実施例1に係る培地を用いた場合のものであるが、上記の実施例2に係る培地を用いた場合のデータについては下記の表8に示す通りであり、上記の実施例3に係る培地を用いた場合のデータについては下記の表9に示す通りである。なお、表6,7においては3日後と5日後の菌数を示したが、下記の表8,9においては3日後と6日後の菌数を示している。
【表8】
【表9】
【0103】
上記の表8,9より、少なくとも実施例3に係る培地については、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた方が、従来からあるMF法を用いた場合に比べ、菌数が多く確認されることが判る。また、実施例2に係る培地については、上記実施形態に係る微生物培養器1を用いた場合と、従来からあるMF法を用いた場合とで、ほぼ同等の菌数が確認されることが判る。