特許第6206413号(P6206413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206413重合性化合物、重合性組成物、高分子、及び光学異方体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206413
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】重合性化合物、重合性組成物、高分子、及び光学異方体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20170925BHJP
   C07C 251/86 20060101ALI20170925BHJP
   C07D 295/22 20060101ALI20170925BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20170925BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08F20/36
   C07C251/86CSP
   C07D295/22
   C09K19/38
   G02B5/30
【請求項の数】11
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2014-542161(P2014-542161)
(86)(22)【出願日】2013年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2013078099
(87)【国際公開番号】WO2014061709
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-232314(P2012-232314)
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
(72)【発明者】
【氏名】桐木 智史
(72)【発明者】
【氏名】奥山 久美
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141245(WO,A1)
【文献】 特開2008−291218(JP,A)
【文献】 特開2009−149754(JP,A)
【文献】 特開2011−006360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C07C 1/00−409/44
C07D 295/00−295/32
C09K 19/00−19/60
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
〔式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−を表す。
、Gそれぞれ独立して、炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
、Zはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の四価の芳香族基を表す。
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の二価の芳香族基を表す。
x1、Ax2はそれぞれ独立して、
芳香族炭化水素環基、
芳香族複素環基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルキル基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルケニル基、または、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルキニル基を表す。
y1、Ay2はそれぞれ独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、シアノ基、置換アミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−SO、若しくは、水酸基で置換されてもよい、炭素数1〜6のアルキル基、
芳香族炭化水素環基、
芳香族複素環基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルキル基、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルケニル基、または、
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環基を有するアルキニル基、
を表す。ここでRは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
前記Ax1、Ax2、Ay1、Ay2が有する環は置換基を有していてもよい。
また、前記Ax1とAy1、Ax2とAy2は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
、Qはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
m、nはそれぞれ独立して、0又は1を表す。〕で示される重合性化合物。
【請求項2】
前記Ax1とAy1に含まれる芳香環π電子の総数が24以下であり、かつ、Ax2とAy2に含まれる芳香環π電子の総数が24以下である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
前記Ax1とAy1、Ax2とAy2がそれぞれ一緒になって形成する環が、下記式(II)
【化2】
〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。R同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよい。また、環を構成する任意のC−R結合が、N−R(Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、又は、−O−に置き換えられていてもよく、環構造中に不飽和結合を有していてもよい。aは0〜2の整数を表し、「−」は結合手を表す。〕
で表される含窒素複素環であることを特徴とする、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項4】
前記Aが、置換基を有していてもよい、四価のベンゼン環基又は四価のナフタレン環基であり、A、Aが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、フェニレン基又はナフチレン基である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項5】
前記Z、Zが、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項6】
前記Z、Zがそれぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−であり、G、Gがそれぞれ独立して、炭素数1〜12の2価のアルキレン基である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする重合性組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性化合物、及び重合開始剤を含有する重合性組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の重合性化合物、又は、請求項7若しくは請求項8に記載の重合性組成物を重合して得られる高分子。
【請求項10】
液晶性高分子である請求項9に記載の高分子。
【請求項11】
請求項10に記載の高分子を構成材料とする光学異方体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを作製することができる、重合性化合物、重合性組成物及び高分子、並びに光学異方体に関する。
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)は、偏光板や位相差板等の光学フィルムを用いることにより高精細な表示が可能であることから、優れた表示デバイスとして広く使用されている。
【0003】
位相差板には、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板や直線偏光の偏光振動面を90度変換する1/2波長板等がある。これらの位相差板は、ある特定の単色光に対しては正確に光線波長の1/4λあるいは1/2λの位相差に変換可能なものである。
しかしながら、従来の位相差板には、位相差板を通過して出力される偏光が有色の偏光に変換されてしまうという問題があった。これは、位相差板を構成する材料が位相差について波長分散性を有し、可視光域の光線が混在する合成波である白色光に対して各波長ごとの偏光状態に分布が生じることから、全ての波長領域において正確な1/4λあるいは1/2λの位相差に調整することが不可能であることに起因する。
このような問題を解決するため、広い波長域の光に対して均一な位相差を与え得る広帯域位相差板、いわゆる逆波長分散性を有する位相差板が種々検討されている(特許文献1〜6)。
【0004】
一方、モバイルパソコン、携帯電話等の携帯型情報端末の高機能化及び普及に伴い、フラットパネル表示装置の厚みを極力薄く抑えることが求められてきている。その結果、構成部材である位相差板の薄層化も求められている。
薄層化の方法としては、フィルム基材に低分子重合性化合物を含有する重合性組成物を塗布することにより位相差板を作成する方法が、近年では最も有効な方法とされている。優れた波長分散性を有する低分子重合性化合物又はそれを用いた重合性組成物の開発が多く行われている(特許文献7〜24)。
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載の低分子重合性化合物又は重合性組成物は、逆波長分散性が不十分であったり、工業的プロセスにおける加工には適していない高い融点を有しているため、フィルムに塗布することが困難であったり、液晶性を示す温度範囲が極端に狭かったり、工業的プロセスにおいて一般に使用される溶媒への溶解度が低かったりするなど、性能面で多くの課題を有している。また、これらの低分子重合性化合物等は、非常に高価な試薬を用いる合成法を駆使し、多段階で合成されるものであることから、コスト面でも課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−68816号公報
【特許文献2】特開平10−90521号公報
【特許文献3】特開平11−52131号公報
【特許文献4】特開2000−284126号公報(US20020159005A1)
【特許文献5】特開2001−4837号公報
【特許文献6】国際公開第2000/026705号
【特許文献7】特開2002−267838号公報
【特許文献8】特開2003−160540号公報(US20030102458A1)
【特許文献9】特開2005−208414号公報
【特許文献10】特開2005−208415号公報
【特許文献11】特開2005−208416号公報
【特許文献12】特開2005−289980号公報(US20070176145A1)
【特許文献13】特開2006−330710号公報(US20090072194A1)
【特許文献14】特開2009−179563号公報(US20090189120A1)
【特許文献15】特開2010−31223号公報
【特許文献16】特開2011−6360号公報
【特許文献17】特開2011−6361号公報
【特許文献18】特開2011−42606号公報
【特許文献19】特表2010−537954号公報(US20100201920A1)
【特許文献20】特表2010−537955号公報(US20100301271A1)
【特許文献21】国際公開第2006/052001号(US20070298191A1)
【特許文献22】米国特許第6,139,771号
【特許文献23】米国特許第6,203,724号
【特許文献24】米国特許第5,567,349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、実用的な低い融点を有し、汎用溶媒に対する溶解性に優れ、低コストで製造可能で、かつ、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを得ることができる、重合性化合物、重合性組成物、及び高分子、並びに、光学異方体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、下記式(I)で表される重合性化合物、又は前記重合性化合物と重合開始剤を含有する重合性組成物を重合して得られる高分子を構成材料とする光学異方体を用いることで、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、性能面で満足のいく光学フィルムを低コストで製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、(1)〜(9)の重合性化合物、(10)、(11)の重合性組成物、(12)、(13)の高分子、及び、(14)の光学異方体が提供される。
(1)下記式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
〔式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
、Gはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。該脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
、Zはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の四価の芳香族基を表す。
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数4〜30の二価の芳香族基を表す。
x1、Ax2はそれぞれ独立して、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
y1、Ay2はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
前記Ax1、Ax2、Ay1、Ay2が有する環は置換基を有していてもよい。
また、前記Ax1とAy1、Ax2とAy2は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
、Qはそれぞれ独立して、水素原子、又は、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
m、nはそれぞれ独立して、0又は1を表す。〕で示される重合性化合物。
【0012】
(2)前記Ax1、Ax2、Ay1、Ay2が有する環が、芳香環であることを特徴とする、(1)に記載の重合性化合物。
(3)前記Ax1とAy1に含まれる芳香環π電子の総数が24以下であり、かつ、Ax2とAy2に含まれる芳香環π電子の総数が24以下である(1)に記載の重合性化合物。
(4)前記Ax1とAy1、Ax2とAy2がそれぞれ一緒になって形成する環が、下記式(II)
【0013】
【化2】
【0014】
〔式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。R同士は、すべて同一であっても、相異なっていてもよい。また、環を構成する任意のC−R結合がN−R(Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、又は、−O−で置き換えられていてもよく、環構造中に不飽和結合を有していてもよい。aは0〜2の整数を表し、「−」は結合手を表す。〕
で表される含窒素複素環であることを特徴とする、(1)に記載の重合性化合物。
【0015】
(5)前記Aが、置換基を有していてもよい、四価のベンゼン環基又は四価のナフタレン環基であり、A、Aが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、フェニレン基又はナフチレン基である(1)に記載の重合性化合物。
(6)前記Y〜Yが、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−である(1)に記載の重合性化合物。
【0016】
(7)前記Z、Zが、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−である(1)に記載の重合性化合物。
(8)前記G、Gが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の2価の脂肪族基〔該脂肪族基には、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。〕である(1)に記載の重合性化合物。
【0017】
(9)前記Y〜Yが、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であり、前記Z〜Zが、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−であり、G〜Gがそれぞれ独立して、炭素数1〜12の2価のアルキレン基である(1)に記載の重合性化合物。
【0018】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の重合性化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする重合性組成物。
(11)(1)〜(9)のいずれかに記載の重合性化合物、及び重合開始剤を含有する重合性組成物。
【0019】
(12)(1)〜(9)のいずれかに記載の重合性化合物、又は、(10)若しくは(11)に記載の重合性組成物を重合して得られる高分子。
(13)液晶性高分子である(12)に記載の高分子。
(14)(13)に記載の高分子を構成材料とする光学異方体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の重合性化合物、重合性組成物、高分子によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、性能面で満足のいく光学異方体を低コストで得ることができる。
本発明の光学異方体は、本発明の高分子を構成材料とするため、低コストで得られ、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、性能面で満足のいくものである。
その具体的な実用例としては、本発明のフィルム状の光学異方体を偏光板と組み合わせることで反射防止フィルムを作製することができる。このものは、産業上例えばタッチパネルや有機電界発光素子の反射防止に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、1)重合性化合物、2)重合性組成物、3)高分子、及び、4)光学異方体、に項分けして、詳細に説明する。
【0022】
1)重合性化合物
本発明の重合性化合物は、前記式(I)で表される化合物である。
式中、Y〜Yはそれぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。
【0023】
ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。
としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0024】
これらの中でも、Y〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であるのが好ましい。
【0025】
、Gはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の2価の脂肪族基としては、鎖状構造を有する2価の脂肪族基;飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等の脂環式構造を有する2価の脂肪族基;等が挙げられる。
【0026】
、Gの、前記2価の脂肪族基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;等が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0027】
また、前記脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、Rは、前記Rと同様の、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
【0028】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−S−CH−CH−、−CH−CH−O−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−、−CH−O−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−NR−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−NR−CH−、−CH−NR−CH−CH−、−CH−C(=O)−CH−等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G、Gは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する2価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH−〕、及び、ヘキサメチレン基〔−(CH−〕が特に好ましい。
【0030】
、Zはそれぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z及びZのアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0031】
及びZの炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=CH−CH−、CH−CH=CH−、CH=CH−CH−CH−、CH=C(CH)−CH−CH−、(CHC=CH−CH−、(CHC=CH−CH−CH−、CH=C(Cl)−、CH=C(CH)−CH−、CH−CH=CH−CH−等が挙げられる。
【0032】
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z及びZとしては、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、又は、CH=C(CH)−CH−CH−であるのが好ましく、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−であるのがより好ましく、CH=CH−であるのが特に好ましい。
【0033】
x1、Ax2は、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
x1、Ax2の炭素数2〜30の有機基は、環を複数個有するものであってもよく、炭化水素環及び複素環を有するものであってもよい。
【0034】
x1、Ax2が有する環としては、シクロへキサン環、シクロへプタン環等の飽和炭化水素環;テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピペリジン環、ピロリジン環等の飽和複素環;芳香族炭化水素環;芳香族複素環;等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現しやすい観点から、芳香族炭化水素環、芳香族複素環等の芳香環であるのが好ましい。
【0035】
なお、本発明において、「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示すものを意味する。
【0036】
前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等の縮合環の芳香族複素環;等が挙げられる。
【0037】
x1、Ax2の、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基;芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基;が好ましい。
【0038】
x1、Ax2の、好ましい具体例を以下に示す。但し、本発明においては、Ax1、Ax2は以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の結合手を表す(以下にて同じである。)。
(1)芳香族炭化水素環基
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
(2)芳香族複素環基
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
【0044】
上記式中、Eは、NR、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0045】
【化7】
【0046】
上記式中、X、Y、Zは、それぞれ独立して、NR、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。Rは、前記Rと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0047】
(3)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
【0048】
【化8】
【0049】
(4)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
【0050】
【化9】
【0051】
(5)芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
【0052】
【化10】
【0053】
x1、Ax2が有する環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;等が挙げられる。ここでRは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。
【0054】
また、Ax1、Ax2が有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であっても、縮合多環であってもよい。
なお、Ax1、Ax2の炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAy1、Ay2にて同じである。)。
【0055】
y1、Ay2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
【0056】
y1、Ay2の、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
前記炭素数1〜6のアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換された炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;水酸基;等が挙げられる。ここでRは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。
【0058】
y1、Ay2の、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記Ax1、Ax2で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0059】
これらの中でも、前記Ax1、Ax2、Ay1、Ay2の、炭化水素環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、下記に示す基が好ましく、
【0060】
【化11】
【0061】
(式中Xは、前記と同じ意味を表す。)
下記に示す基がさらに好ましく、
【0062】
【化12】
【0063】
(式中、X、Yは前記と同じ意味を表す。)
下記に示す基が特に好ましい。
【0064】
【化13】
【0065】
(式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
これらの基は任意の位置に、AX1等が有する環の置換基として列記したものと同様の置換基を有していてもよい。
【0066】
また、Ax1とAy1、及び/又は、Ax2とAy2は一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、単環であっても縮合環であってもよい。
なかでも、下記式(II)で表される含窒素複素環が好ましい。
【0067】
【化14】
【0068】
式(II)中、Rは、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シアノ基;ニトロ基;メチルスルフィニル基、メチルスルフィニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基;又は、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;を表す。
これらの中でも、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
は、すべて同一であっても、相異なっていてもよく、隣接するR同士が一緒になって結合して環(飽和炭素環、不飽和炭素環等)を形成していてもよい。
【0069】
また、環を構成する任意のC−R結合が、N−R(Rは水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、又は、−O−で置き換えられていてもよく(但し、−O−が2以上隣接して置き換えられる場合を除く)。環構造中に不飽和結合を有していてもよい。C−R結合が複数のN−Rで置き換えられているとき、複数のN−R同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
aは0〜2の整数を表し、「−」は結合手を表す。
【0070】
下記に、式(II)で表される環の具体例を示す。なお、前記式(II)で表される環、及び、下記に示す具体例は、前記式(I)中の
【0071】
【化15】
【0072】
で表される部分を示すものである。
【0073】
【化16】
【0074】
(式中、R、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0075】
【化17】
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。
かかる置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−SO等が挙げられる。ここでRは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。
【0079】
x1とAy1に含まれる芳香環π電子の総数、Ax2とAy2に含まれる芳香環π電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、ともに24以下であるのが好ましく、6以上18以下であるのがより好ましい。
【0080】
x1とAy1の好ましい組み合わせとしては、Ax1が炭素数4〜30の芳香族基で、Ay1が水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又は、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせ、及び、Ax1とAy1が一緒になって前記式(II)で表される基を形成しているものが挙げられる。
【0081】
x1とAy1のより好ましい組み合わせは、Ax1が炭素数4〜30の芳香族基で、Ay1が、炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせ、及び、Ax1とAy1が一緒になって前記式(II)で表される基を形成しているものである。
x2とAy2の好ましい組み合わせも、Ax1とAy1の好ましい組み合わせと同様である。
また、Ax1とAx2、Ay1とAy2が、それぞれ同一であるのがより好ましい。
【0082】
は、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の四価の芳香族基を表す。四価の芳香族基としては、四価の炭素環式芳香族基であっても、四価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、四価の炭素環式芳香族基が好ましく、四価のベンゼン環基又は四価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す四価のベンゼン環基又は四価のナフタレン環基がさらに好ましい。
なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y、Yを便宜上記載している(Y、Yは、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0083】
【化20】
【0084】
これらの中でも、Aとしては、下記に示す式(A11)〜(A19)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A17)、(A18)で表される基がさらに好ましく、式(A11)で表される基が特に好ましい。
【0085】
【化21】
【0086】
の、炭素数4〜30の四価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記AX1等が有する環の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。Aとしては、置換基を有さないものが好ましい。
【0087】
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等が挙げられる。
【0088】
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;等が挙げられる。
【0089】
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7-ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5-ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;等が挙げられる。
【0090】
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記AX1が有する環の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0091】
これらの中でも、A、Aとしては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A31)〜(A34)
【0092】
【化22】
【0093】
で表される基がさらに好ましく、前記式(A32)で表される基が特に好ましい。
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y、Y(又はY、Y)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型、トランス型の立体異性体が存在し得る。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A32a)とトランス型の異性体(A32b)が存在し得る。
【0094】
【化23】
【0095】
本発明においては、シス型であってもトランス型であっても、あるいはシス型とトランス型の異性体混合物であってもよいが、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0096】
、Aはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の二価の芳香族基を表す。
、Aの芳香族基は単環のものであっても、多環のものであってもよい。
、Aの具体例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
【化24】
【0098】
上記A、Aの具体例として挙げた芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR基;等が挙げられる。ここでRは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としてはフッ素原子が、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0099】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A、Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、フェニレン基又はナフチレン基が好ましく、置換基を有していてもよい、下記式(A41)、(A42)及び(A43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A41)で表される基が特に好ましい。
【0100】
【化25】
【0101】
、Qはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記AX1等で例示したのと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、Q、Qは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
また、m、nはそれぞれ独立して、0又は1を表し、双方が0であることが好ましい。
なお、本発明化合物には、炭素−窒素二重結合に基づく立体異性体が存在し得るが、これらはすべて本発明に含まれる。
【0102】
本発明の重合性化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(1)製造方法1
本発明の重合性化合物のうち、Ax1とAx2、Ay1とAy2がそれぞれ同じである、下記式(I−1)で表される化合物は、例えば、下記に示す反応により製造することができる。
【0103】
【化26】
【0104】
(式中、Y〜Y、G、G、Z、Z、Ax1、Ay1、A〜A、Q、Q、m及びnは、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(4)で表されるカルボニル化合物(カルボニル化合物(4))を、式(3)で表されるヒドラジン化合物(ヒドラジン化合物(3))と、〔カルボニル化合物(4):ヒドラジン化合物(3)〕のモル比で、1:2〜1:3の割合で用いて反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする本発明の式(I−1)で示される重合性化合物を製造することができる。
【0105】
この場合、(±)−10−カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸;等の酸触媒を添加して反応を行うことができる。酸触媒を添加することで反応時間が短縮され、収率が向上する場合がある。酸触媒の添加量は、カルボニル化合物(4)1モルに対して、通常0.001〜1モルである。また、酸触媒はそのまま添加してもよいし、適当な溶液に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0106】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0107】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン化合物(3)1gに対し、通常1〜100gである。
【0108】
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0109】
ヒドラジン化合物(3)は、次のようにして製造することができる。
【0110】
【化27】
【0111】
(式中、Ax1、Ay1は前記と同じ意味を表す。X、Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0112】
すなわち、式(2a)で表される化合物とヒドラジン(1)を、適当な溶媒中、(化合物(2a):ヒドラジン(1))のモル比で、1:1〜1:20、好ましくは1:2〜1:10で反応させて、対応するヒドラジン化合物(3a)を得ることができ、さらに、ヒドラジン化合物(3a)と式(2b)で表される化合物を反応させることで、ヒドラジン化合物(3)を得ることができる。
【0113】
ヒドラジン(1)としては、通常1水和物のものを用いる。ヒドラジン(1)は、市販品をそのまま使用することができる。
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアルコール系溶媒とエーテル系溶媒の混合溶媒が好ましい。
【0114】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドラジン1gに対し、通常1〜100gである。
反応は、−10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数時間である。
【0115】
また、ヒドラジン化合物(3)は、次のように、従来公知の方法を用いて、ジアゾニウム塩(5)を還元することによって製造することができる。
【0116】
【化28】
【0117】
式(5)中、Ax1、Ay1は、前記と同じ意味を表す。Xは、ジアゾニウムに対する対イオンである陰イオンを示す。Xとしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン等の無機陰イオン;ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン等の有機陰イオン;等が挙げられる。
【0118】
上記反応に用いる還元剤としては、金属塩還元剤が挙げられる。
金属塩還元剤とは、一般に低原子価金属を含む化合物、もしくは金属イオンとヒドリド源からなる化合物である(「有機合成実験法ハンドブック」1990年社団法人有機合成化学協会編 丸善株式会社発行810ページを参照)。
金属塩還元剤としては、NaAlH、NaAlH(Or)(p、qはそれぞれ独立して1〜3の整数を表し、p+q=4である。rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)、LiAlH、iBuAlH、LiBH、NaBH、SnCl、CrCl、TiCl等が挙げられる。
【0119】
還元反応においては公知の反応条件を採用することができる。例えば、特開2005−336103号公報、新実験化学講座 1978年 丸善株式会社発行 14巻、実験化学講座 1992年 丸善株式会社発行 20巻、等の文献に記載の条件で反応を行うことができる。
また、ジアゾニウム塩(5)は、アニリン等の化合物から常法により製造することができる。
【0120】
x1とAx2、Ay1とAy2がそれぞれ異なる本発明化合物を製造する場合には、段階的に反応を行えばよい。すなわち、化合物(4)に化合物(3)を1当量反応させた後、引き続き1当量の下記式(3’)
【0121】
【化29】
【0122】
(Ax2、Ay2は、前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を、同様の反応条件にて反応させることにより、目的物を得ることができる。
【0123】
また、Ax1とAy1又はAx2とAy2が一緒になって環を形成している化合物を製造する場合には、例えば、化合物(3)として、下記式(3”)
【0124】
【化30】
【0125】
(式中、R、aは前記と同じ意味を表す)で表される化合物を用いればよい。
式(3”)で表される化合物の多くは公知物質であり、公知の方法により製造し、入手することができる(特開2005−289988号公報等参照)。また、式(3”)として市販されているものを、所望により精製して使用することもできる。
【0126】
カルボニル化合物(4)は、典型的には、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合・修飾することにより製造することができる。
【0127】
エーテル結合の形成は、以下のようにして行うことができる。
(i)式:D1−hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2−OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを混合して縮合させる(ウイリアムソン合成)。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基を表す(以下にて同じ。)
(ii)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1−J(Jはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iv)式:D1−OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1−halで表される化合物と、式:D2−OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる(ウルマン縮合)。
【0128】
エステル結合及びアミド結合の形成は、以下のようにして行うことができる。
(vi)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NHで表される化合物とを、脱水縮合剤(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド等)の存在下に脱水縮合させる。
(vii)式:D1−COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1−CO−halで表される化合物を得、このものと式:D2−OH又はD2−NHで表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1−COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、このものに、式:D2−OH又はD2−NHで表される化合物を反応させる。
(ix)式:D1−COOHで表される化合物と、式:D2−OH又はD2−NHで表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0129】
より具体的には、カルボニル化合物(4)のうち、前記式(4)中、式:Z−Y−G−Y−A−Y−で表される基が、式:Z−Y−G−Y−A−Y−で表される基と同一であり、Yが、Y11−C(=O)−O−で表される基である化合物(4’)は、以下に示す反応により製造することができる。
【0130】
【化31】
【0131】
(式中、Y、Y、Y、G、Z、A、A、A、Q、Q、及びmは、前記と同じ意味を表す。Y11は、Y11−C(=O)−O−がYとなる基を表す。Yは前記と同じ意味を表す。Lは、水酸基、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。)
【0132】
上記反応においては、式(6)で表されるジヒドロキシ化合物(化合物(6))と式(7)で表される化合物(化合物(7))とを、(化合物(6):化合物(7))のモル比で、1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(4’)を得ることができる。
【0133】
化合物(7)が、式(7)中、Lが水酸基の化合物(カルボン酸)である場合には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。
脱水縮合剤の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1〜3モルである。
【0134】
また、化合物(7)が、式(7)中、Lがハロゲン原子の化合物(酸ハライド)である場合には、塩基の存在下に反応させることにより、目的物を得ることができる。
用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常1〜3モルである。
化合物(7)が、式(7)中、Lがメタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基の化合物(混合酸無水物)である場合もハロゲン原子の場合と同様である。
【0135】
上記反応に用いる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、ヒドロキシ化合物(6)1gに対し、通常1〜50gである。
【0136】
化合物(7)の多くは公知化合物であり、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)及びアミド結合(−C(=O)NH−、−NHC(=O)−)の形成反応を任意に組み合わせて、所望の構造を有する複数の公知化合物を適宜結合・修飾することにより製造することができる。
【0137】
化合物(6)の多くは公知物質であり、公知の方法により製造し、入手することが出来る。例えば、前記式(6)において、Aが3価のベンゼン環基で、Q、Qがともに水素原子である化合物は、1,4−ジメトキシベンゼンに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の塩基の存在下、n−ブチルリチウムなどのアルキルリチウムを添加した後、N,N−ジメチルホルムアミドを添加し、全容を攪拌することにより、ホルミル体を得、次いで、このものに、三臭化ホウ素を作用させることで、脱メチル化体である目的物を得ることができる。また、化合物(6)として市販されているものを、所望により精製して使用することもできる。
【0138】
(2)製造方法2
本発明の重合性化合物のうち、Ax1とAx2が同じで、Ay1とAy2が同じで、−Y−A−Y−G−Y−Zと、−Y−A−Y−G−Y−Zとが同じである、下記式(I−2)で表される化合物は、例えば、下記に示す反応により製造することができる。
【0139】
【化32】
【0140】
(式中、Y、Y、Y、G、Z、Ax1、Ay1、A、A、A、Q、Q、L、Y11及びmは、前記と同じ意味を表す。)
上記反応においては、式(8)で表されるヒドラジド化合物(化合物(8))と化合物(7)とを、(化合物(8):化合物(7))のモル比で、1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(I−2)を得ることができる。
上記反応の反応条件は、前記化合物(6)と化合物(7)との反応の反応条件と同様である。
【0141】
化合物(8)は、下記のようにして製造することができる。
【0142】
【化33】
【0143】
(式中、Ax1、Ax2、A、Q、及びQは、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、化合物(6)とヒドラジン化合物(3)とを、(化合物(6):化合物(3))のモル比で、1:2〜1:4、好ましくは1:2〜1:3の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(8)を得ることができる。
上記反応の反応条件は、前記カルボニル化合物(4)とヒドラジン化合物(3)との反応の反応条件と同様である。
【0144】
なお、Ax1とAx2、Ay1とAy2がそれぞれ異なる本発明化合物を製造する場合には、化合物(8)の代わりに、下記式(8’)
【0145】
【化34】
【0146】
(式中、Ax1、Ax2、Ay1、Ay2、A、Q、及びQは、前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を、化合物(7)と反応させればよい。
化合物(8’)は、化合物(6)に化合物(3)を1当量反応させた後、引き続き1当量の前記式(3’)で表される化合物を、同様の反応条件にて段階的に反応させることにより得ることができる。
【0147】
いずれの反応においても、反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、蒸留法等の公知の分離・精製手段を施すことにより、目的物を単離することができる。
【0148】
目的とする化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0149】
2)重合性組成物
本発明の第2は、本発明の重合性化合物の少なくとも1種を含有する重合性組成物である。本発明の重合性組成物は、重合開始剤を含有するのが好ましい。重合開始剤は本発明の重合性化合物の重合反応をより効率的に行う観点から配合される。
【0150】
用いる重合開始剤としては、重合性化合物が有する重合性基の種類に応じて適宜なものを選択して使用すればよい。例えば、重合性基がラジカル重合性であればラジカル重合開始剤を、アニオン重合性の基であればアニオン重合開始剤を、カチオン重合性の基であればカチオン重合開始剤を、それぞれ使用すればよい。
【0151】
ラジカル重合開始剤としては、加熱することにより、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である熱ラジカル発生剤;と、可視光線、紫外線(i線など)、遠紫外線、電子線、X線等の露光光の露光により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤;のいずれも使用可能であるが、光ラジカル発生剤を使用するのが好適である。
【0152】
光ラジカル発生剤としては、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。これらの化合物は、露光によって活性ラジカルまたは活性酸、あるいは活性ラジカルと活性酸の両方を発生する成分である。光ラジカル発生剤は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0153】
アセトフェノン系化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル・フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4’−モルフォリノブチロフェノン等を挙げることができる。
【0154】
ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0155】
本発明においては、光重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度をさらに改良することができる点で好ましい。
「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、下記で定義するメルカプタン系化合物、アミン系化合物等が好ましい。
【0156】
メルカプタン系化合物としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−2,5−ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。アミン系化合物としては、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノベンゾニトリル等を挙げることができる。
【0157】
トリアジン系化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0158】
O−アシルオキシム系化合物の具体例としては、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−ヘプタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−〔4−(ベンゾイル)フェニル〕−オクタン−1,2−ジオン 2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(3−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、1−(9−エチル−6−ベンゾイル−9H−カルバゾール−3−イル)−エタノン 1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)ベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。
【0159】
光ラジカル発生剤は市販品をそのまま用いることもできる。具体例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、品名:Irgacure651、品名:Irgacure819、品名:Irgacure907、及び商品名:Irgacure OXE02、ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919等が挙げられる。
【0160】
前記アニオン重合開始剤としては、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0161】
また、前記カチオン重合開始剤としては、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
これらの重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の重合性組成物において、重合開始剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0162】
また、本発明の重合性組成物には、表面張力を調整するために、界面活性剤を配合するのが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いればよく、例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤、例えば、セイミケミカル(株)製KH−40等が挙げられる。本発明の重合性組成物において、界面活性剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0163】
また、本発明の重合性組成物には、さらに、後述の他の共重合可能な単量体、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の、その他の添加剤を配合してもよい。本発明の重合性組成物において、その他の添加剤の配合割合は、重合性化合物100重量部に対し、通常、各々0.1〜20重量部である。
【0164】
本発明の重合性組成物は、通常、本発明の重合性化合物、重合開始剤、及び所望によりその他の添加剤の所定量を適当な有機溶媒に混合・溶解させることにより、調製することができる。
【0165】
用いる有機溶媒としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0166】
以上のようにして得られる重合性組成物は、後述するように、本発明の高分子や光学異方体の製造原料として有用である。
【0167】
3)高分子
本発明の第3は、(1)本発明の重合性化合物を重合して得られる高分子、又は、(2)本発明の重合性組成物を重合して得られる高分子である。
ここで、「重合」とは、通常の重合反応のほか、架橋反応を含む広い意味での化学反応を意味するものとする。
【0168】
(1)本発明の重合性化合物を重合して得られる高分子
本発明の重合性化合物を重合して得られる高分子としては、本発明の重合性化合物の単独重合体、本発明の重合性化合物の2種以上からなる共重合体、又は、本発明の重合性化合物と他の共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0169】
前記他の共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−メトキシフェニル、4−(6−メタクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸ビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロリルオキシエチルオキシ)安息香酸−3’,4’−ジフルオロフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸ナフチル、4−アクリロイルオキシ−4’−デシルビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−シアノビフェニル、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−メトキシビフェニル、4−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)−4’−(4”−フルオロベンジルオキシ)−ビフェニル、4−アクリロイルオキシ−4’−プロピルシクロヘキシルフェニル、4−メタクリロイル−4’−ブチルビシクロヘキシル、4−アクリロイル−4’−アミルトラン、4−アクリロイル−4’−(3,4−ジフルオロフェニル)ビシクロヘキシル、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−アミルフェニル)、4−(2−アクリロイルオキシエチル)安息香酸(4−(4’−プロピルシクロヘキシル)フェニル)等が挙げられる。
市販品としては、LC−242(BASF社製)等を用いることができる。また、特開2007−002208号公報、特開2009−173893号公報、特開2009−274984号公報、特開2010−030979号公報、特開2010−031223号公報、特開2011−006360号公報等に開示されている化合物等も用いることができる。
【0170】
また、上記に例示した単量体以外にも、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の重合性不飽和基を複数個有する多官能単量体を使用することができる。
このような多官能単量体としては、1,2−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等のアルカンジオールジアクリレート類;1,2−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタリレート等のアルカンジオールジメタクリレート類;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチレングリコールジアクリレート類;プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート等のポリプロピレングリコールジアクリレート類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等のポリエチレングリコールジメタクリレート類;プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート等のポリプロピレングリコールジメタクリレート類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル等のポリエチレングリコールジビニルエーテル類;エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジアリルエーテル等のポリエチレングリコールジアリルエーテル類;ビスフェノールFエトキシレートジアクリレート;ビスフェノールFエトキシレートジメタクリレート;ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート;ビスフェノールAエトキシレートジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート;トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート;トリメチロールプロパンプロポキシレートトリメタクリレート;イソシアヌル酸エトキシレートトリアクリレート;グリセロールエトキシレートトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート;ジトリメチロールプロパンエトキリレートテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールエトキシレートヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0171】
本発明の重合性化合物、及び必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等の(共)重合は、適当な重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤の使用割合としては、前記重合性組成物中の重合性化合物に対する配合割合と同様でよい。
【0172】
本発明の高分子が、本発明の重合性化合物と、その他の共重合可能な単量体との共重合体である場合、本発明の重合性化合物単位の含有量は、特に限定されるものではないが、全構成単位に対して50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。かかる範囲にあれば、高分子のガラス転移温度(Tg)が高く、高い膜硬度が得られるため好ましい。
【0173】
前記(1)の高分子は、より具体的には、(A)適当な重合開始剤の存在下、前記重合性化合物、及び必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等との(共)重合を適当な有機溶媒中で重合反応を行った後、目的とする高分子を単離し、得られる高分子を適当な有機溶媒に溶解して溶液を調製し、この溶液を適当な基板上に塗工して得られた塗膜を乾燥後、所望により加熱することにより得る方法、(B)前記重合性化合物、及び必要に応じて用いられる他の共重合可能な単量体等を重合開始剤と共に有機溶媒に溶解した溶液を、公知の塗工法により基板上に塗布した後、脱溶媒し、次いで加熱又は活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行う方法等により好適に製造することができる。
用いる重合開始剤としては、前記重合性組成物の成分として例示したのと同様のものが挙げられる。
【0174】
前記(A)の重合反応に用いる有機溶媒としては、不活性なものであれば、特に制限されない。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性に優れる観点から、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜150℃のものがより好ましい。
【0175】
(A)の方法における、高分子を溶解するための有機溶媒、及び、(B)の方法で用いる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易な点から、溶媒の沸点が60〜200℃のものが好ましい。これらの溶剤は単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0176】
用いる基板としては、有機、無機を問わず、公知慣用の材質のものを使用することができる。例えば、有機材料としてはポリシクロオレフィン〔例えば、ゼオネックス、ゼオノア(登録商標;日本ゼオン社製)、アートン(登録商標;JSR社製)、及びアペル(登録商標;三井化学社製)〕、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン等が挙げられ、無機材料としてはシリコン、ガラス、方解石等が挙げられ、中でも有機材料が好ましい。
また、用いる基板は、単層のものであっても、積層体であってもよい。
基板としては、有機材料が好ましく、この有機材料をフィルムとした樹脂フィルムが更に好ましい。
【0177】
(A)の方法において高分子の溶液を基板に塗布する方法、(B)の方法において重合反応用の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が挙げられる。
【0178】
(2)本発明の重合性組成物を重合して得られる高分子
本発明の重合性組成物を重合することにより、本発明の高分子を容易に得ることができる。本発明においては、重合反応をより効率的に行う観点から、前記したような重合開始剤、特に光重合開始剤を含む重合性組成物を用いるのが好ましい。
【0179】
具体的には、前記(B)の方法、即ち、本発明の重合性組成物を、基板上に塗布し、重合させることによって、本発明の高分子を得ることが好適である。用いる基板としては、後述する光学異方体の作製に用いられる基板等が挙げられる。
【0180】
本発明の重合性組成物を基板上に塗布する方法としては、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法が挙げられる。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性組成物に公知慣用の有機溶媒を添加してもよい。この場合は、本発明の重合性組成物を基板上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去するのが好ましい。
【0181】
本発明の重合性化合物又は重合性組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。
【0182】
照射時の温度は、30℃以下とすることが好ましい。光照射強度は、通常、1W/m〜10kW/mの範囲、好ましくは5W/m〜2kW/mの範囲である。
【0183】
本発明の重合性化合物又は重合性組成物を重合させて得られる高分子は、基板から剥離して単体で使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学フィルムの有機材料等として使用することもできる。
【0184】
以上のようにして得られる本発明の高分子の数平均分子量は、好ましくは500〜500,000、更に好ましくは5,000〜300,000である。該数平均分子量がかかる範囲にあれば、高い膜硬度が得られ、取り扱い性にも優れるため望ましい。高分子の数平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0185】
本発明の高分子は、架橋点が分子内で均一に存在すると推定され、架橋効率が高く、硬度に優れている。
本発明の高分子によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、性能面で満足のいく光学フィルムを低コストで得ることができる。
【0186】
4)光学異方体
本発明の光学異方体は、本発明の高分子を構成材料とする。
本発明の光学異方体は、例えば、基板上に配向膜を形成し、該配向膜上に、さらに、本発明の高分子からなる液晶層を形成することによって、得ることができる。
【0187】
配向膜は、有機半導体化合物を面内で一方向に配向規制するために基板の表面に形成される。
配向膜は、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリマーを含有する溶液(配向膜用組成物)を基板上に膜状に塗布し、乾燥させ、そして一方向にラビング処理等することで、得ることができる。
配向膜の厚さは0.001〜5μmであることが好ましく、0.001〜1μmであることがさらに好ましい。
【0188】
本発明においては、配向膜あるいは基板にラビング処理を施すことができる。ラビング処理の方法は、特に制限されないが、例えばナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビング処理した時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、ラビング処理後に配向膜をイソプロピルアルコール等によって洗浄することが好ましい。
また、ラビング処理する方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向膜にコレステリック規則性を持つコレステリック液晶層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
【0189】
本発明において、配向膜上に本発明の高分子からなる液晶層を形成する方法としては、前記本発明の高分子の項で記載したのと同様の方法が挙げられる。
【0190】
本発明の光学異方体は、本発明の高分子を構成材料としているので、低コストで製造可能で、かつ、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、性能面でも優れたものである。
本発明の光学異方体としては、位相差板、液晶表示素子用配向膜、偏光板、視野角拡大板、カラーフィルター、ローパスフィルター、光偏光プリズム、各種光フィルター等が挙げられる。
【実施例】
【0191】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1) 化合物1の合成
【0192】
【化35】
【0193】
〈ステップ1:中間体Aの合成〉
【0194】
【化36】
【0195】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、1,4−ジメトキシベンゼン7.0g(50.67mmol)、N,N,N’,N’―テトラメチルエチレンジアミン29.44g(253.33mmol)、及びジエチルエーテル280mlを加え、均一な溶液とした。この溶液を0℃に冷却し、2.6M n−ブチルリチウム(n−ヘキサン溶液)97.4ml(253.33mmol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を還流条件下で5時間反応させた後、反応液を−78℃に冷却し、N,N−ジメチルホルムアミド18.52g(253.33mmol)を加え、全容を同温度でさらに1時間攪拌した。その後、反応液に3N塩酸水溶液350mlを−78℃で加え、25℃まで昇温させた後、蒸留水300ml、飽和食塩水200mlを加えて、クロロホルム700mlで抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別し、ロータリーエバポレーターにて、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエン100ml中に加え、5分間攪拌した後、結晶をろ取することで、黄色結晶として中間体Aを6.1g得た(収率:62%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0196】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):10.51(s,2H)、7.46(s,2H)、3.95(s,6H)
【0197】
〈ステップ2:中間体Bの合成〉
【0198】
【化37】
【0199】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、前記ステップ1で合成した中間体A 3.32g(17.10mmol)をジクロロメタン160mlに溶解させ、−40℃に冷却した。この溶液に、三臭化ほう素(17%ジクロロメタン溶液)51.3ml(51.29mmol)を滴下し、全容を同温度で1時間攪拌した後、反応液を25℃に昇温してさらに2時間撹拌した。その後、反応液を氷水600mlに投入し、酢酸エチル500mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて、ろ液から溶媒を減圧除去した。得られた固体をトルエン100ml中に加え、5分間攪拌した後、結晶をろ取することで、黄色結晶として中間体Bを2.67g得た(収率:94%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0200】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):10.23(s,2H)、9.96(s,2H)、7.24(s,2H)
【0201】
〈ステップ3:中間体Cの合成〉
【0202】
【化38】
【0203】
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製)6.41g(21.91mmol)、及びテトラヒドロフラン(THF)50mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、メタンスルホニルクロリド2.56g(22.33mmol)を加え、反応器を水浴に浸して反応液内温を20℃とした。そこへ、トリエチルアミン2.30g(22.75mmol)を、反応液内温を20〜25℃に保持しながら5分間かけて滴下した。水浴を除き、25℃でさらに1.5時間攪拌した後、4−(ジメチルアミノ)ピリジン0.21g(1.69mmol)、中間体B 1.40g(8.43mmol)を加え、再度反応器を水浴に浸して反応液内温を20℃とした。そこへ、トリエチルアミン2.13g(21.07mmol)を、反応液の内温を20〜25℃に保持しながら5分間かけて滴下し、滴下終了後、全容を25℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応液に蒸留水300ml及び飽和食塩水100mlを加え、クロロホルム500mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターでろ液から溶媒を減圧除去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:THF=9:1)により精製することで、白色固体として化合物Cを4.29g、収率:71%で得た。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0204】
H−NMR(500MHz,DMSO−d,TMS,δppm):10.25(s,2H)、8.18(d,4H,J=9.0Hz)、7.91(s,2H)、7.01(d,4H,J=9.0Hz)、6.41(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.19(t,4H,J=6.5Hz)、4.08(t,4H,J=6.5Hz)、1.82−1.91(m,4H)、1.69−1.78(m,4H)、1.44−1.60(m,8H)
【0205】
〈ステップ4:化合物1の合成〉
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ3で合成した中間体C 1.40g(1.96mmol)をTHF50mlに溶解させた。この溶液に、1N塩酸0.40ml(0.40mmol)を加え、1−ブチル−1−フェニルヒドラジン0.66g(4.02mmol)を10分かけて滴下した。全容を25℃にて1時間撹拌した後に、1−ブチル−1−フェニルヒドラジン0.24g(1.46mmol)を追加し、さらに2時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:THF=98:2(体積比、以下にて同じ。))により精製することで、黄色固体として化合物1を1.84g、収率:93%で得た。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0206】
H−NMR(500MHz,DMSO−d,TMS,δppm):8.23(d,4H,J=9.0Hz)、7.86(s,2H)、7.49(s,2H)、7.21−7.31(m,8H)、7.01(d,4H,J=9.0Hz)、6.89(t,2H,J=7.0Hz)、6.42(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.14(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.20(t,4H,J=6.5Hz)、4.08(t,4H,J=6.5Hz)、3.75(t,4H,J=8.0Hz)、1.82−1.91(m,4H)、1.70−1.79(m,4H)、1.44−1.61(m,12H)、1.09−1.20(m,4H)、0,75(t,6H,J=7.5Hz)
【0207】
(実施例2) 化合物2の合成
【0208】
【化39】
【0209】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、実施例1のステップ3で合成した中間体C 5.0g(7.0mmol)及びTHF50mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、1N塩酸1.4ml(1.4mmol)を加えた後、1−アミノ−4−メチルピペラジン2.4g(21.0mmol)を、25℃で、15分かけて添加し、滴下終了後、25℃で5時間攪拌した。反応終了後、反応液に蒸留水300ml、飽和食塩水150mlを加え、酢酸エチル200mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した後、ロータリーエバポレーターにて、ろ液から溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:THF=1:1)により精製することで、淡黄色固体として化合物2を1.7g、収率:27%で得た。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0210】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):8.16(d,4H,J=9.0Hz)、7.68(s,2H)、7.47(s,2H)、6.98(d,4H,J=9.0Hz)、6.41(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.13(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.83(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.19(t,4H,J=6.5Hz)、4.06(t,4H,J=6.5Hz)、3.09(t,8H,J=5.0Hz)、2.50(t,8H,J=5.0Hz)、2.29(s,6H)、1.81−1.89(m,4H)、1.69−1.78(m,4H)、1.44−1.59(m,8H)
【0211】
(実施例3)化合物3の合成
【0212】
【化40】
【0213】
温度計を備えた3つ口反応器に、窒素気流中、実施例1のステップ3で合成した中間体C 1.0g(1.4mmol)、THF30ml、及びメタノール3mlを入れ、均一な溶液とした。この溶液に、1,1,−ジフェニルヒドラジン塩酸塩 0.92g(4.2mmol)を10分かけて添加し、25℃で1時間攪拌した後に、40℃でさらに2時間攪拌した。反応終了後、反応液に、蒸留水150ml、飽和重曹水150mlを加え、酢酸エチル200mlで2回抽出した。有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:THF=98:2)により精製することで、黄色固体として化合物3を1.34g(収率:91%)得た。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0214】
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):7.89(d,4H,J=9.0Hz)、7.85(s,2H)、7.22−7.28(m,8H)、7.15(s,2H)、7.09(d,8H,J=7.5Hz)、7.03(t,4H,J=7.5Hz)、6.91(d,4H,J=9.0Hz)、6.42(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.14(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.84(dd,2H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.22(t,4H,J=6.5Hz)、4.10(t,4H,J=6.5Hz)、1.86−1.94(m,4H)、1.73−1.81(m,4H)、1.47−1.64(m,8H)
【0215】
(参考例1)化合物Aの合成
【0216】
【化41】
【0217】
〈ステップ1:中間体Dの合成〉
【0218】
【化42】
【0219】
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド 20g(144.8mmol)、4−(6−アクリロイル−ヘクス−1−イルオキシ)安息香酸(DKSH社製)105.8g(362.0mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン 5.3g(43.4mmol)、及びN−メチルピロリドン200mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「WSC」と略記する。)83.3g(434.4mmol)を加え、全容を25℃にて12時間攪拌した。反応終了後、反応液を水1.5リットルに投入し、酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにて、ろ液から酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、白色固体として中間体Dを75g得た(収率:75.4%)。
目的物の構造はH−NMRで同定した。
【0220】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS,δppm):10.20(s,1H)、8.18−8.12(m,4H)、7.78(d,1H,J=2.8Hz)、7.52(dd,1H,J=2.8Hz,8.7Hz)、7.38(d,1H,J=8.7Hz)、7.00−6.96(m,4H)、6.40(dd,2H,J=1.4Hz,17.4Hz)、6.12(dd,2H,J=10.6Hz,17.4Hz)、5.82(dd,2H,J=1.4Hz,10.6Hz)、4.18(t,4H,J=6.4Hz)、4.08−4.04(m,4H)、1.88−1.81(m,4H)、1.76−1.69(m,4H)、1.58−1.42(m,8H)
【0221】
〈ステップ2:化合物Aの合成〉
温度計を備えた4つ口反応器に、窒素気流中、先のステップ1で合成した中間体D 10.5g(15.3mmol)、2−ヒドラジノベンゾチアゾール3.0g(18.3mmol)、及びTHF80mlを加え、均一な溶液とした。この溶液に、(±)−10−カンファースルホン酸18mg(0.08mmol)を加え、全容を25℃にて3時間撹拌した。反応終了後、反応液を10%重曹水800mlに投入し、酢酸エチル100mlで2回抽出した。酢酸エチル層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにて、ろ液から酢酸エチルを減圧留去して、淡黄色固体を得た。この淡黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=8:2)により精製し、淡黄色固体として化合物Aを8.0g得た(収率:62.7%)。
目的物の構造はH−NMR、マススペクトルで同定した。
【0222】
H−NMR(500MHz,DMSO−d,TMS,δppm):12.30(br,1H)、8.19(s,1H)、8.17−8.12(m,4H)、7.76(d,1H,J=3.0Hz)、7.68(d,1H,J=7.5Hz)、7.45−7.39(m,3H)、7.28(t,1H,J=8.0Hz)、7.18−7.14(m,4H)、7.09(t,1H,J=8.0Hz)、6.33(dd,2H,J=1.5Hz,17.5Hz)、6.18(dd,2H,J=10.5Hz,17.5Hz)、5.944(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、5.941(dd,1H,J=1.5Hz,10.5Hz)、4.14−4.10(m,8H)、1.80−1.75(m,4H)、1.69−1.63(m,4H)、1.53−1.38(m,8H)
【0223】
LCMS(APCI):calcd for C464710S:833[M];Found:833
【0224】
実施例1〜3で得られた化合物1〜3、下記に示す比較例1で使用する参考例1の化合物1r(日本ゼオン社製、K35)、及び、比較例2で使用する参考例2の化合物2r(BASF社製、LC242)につき、以下に示す方法で相転移温度を測定した。
【0225】
【化43】
【0226】
〈相転移温度の測定〉
化合物1〜3、化合物1r、2rをそれぞれ10mg計量し、固体状態のままで、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板2枚に挟んだ。この基板をホットプレート上に載せ、40℃から200℃まで昇温した後、再び40℃まで降温した。昇温、降温する際の組織構造の変化を偏向光学顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE LV100POL型)で観察した。
【0227】
測定した相転移温度を下記表1に示す。表1中、「C」はCrystal、「N」はNematic、「I」はIsotropicをそれぞれ表す。ここで、Crystalとは、試験化合物が固相にあることを、Nematicとは、試験化合物がネマチック液晶相にあることを、Isotropicとは、試験化合物が等方性液体相にあることを、それぞれ示す。
【0228】
【表1】
【0229】
(実施例4)
実施例1で得られた化合物1 0.5g、合成例1で得られた化合物A 2.0g、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919(ADEKA社製、以下にて同じ。)を75mg、及び、界面活性剤として、KH−40(AGCセイミケミカル社製、以下にて同じ。)の1%シクロペンタノン溶液250mgを、シクロペンタノン2.1g、クロロホルム7.65gに溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物1を得た。
【0230】
(実施例5)
実施例2で得られた化合物2 0.34g、合成例1で得られた化合物A 0.66g、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919を30mg、及び、界面活性剤として、KH−40の1%シクロペンタノン溶液100mgを、シクロペンタノン2.2gに溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物2を得た。
【0231】
(実施例6)
実施例3で得られた化合物3 0.5g、合成例1で得られた化合物A 0.5g、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919を30mg、及び、界面活性剤として、KH−40の1%シクロペンタノン溶液100mgを、クロロホルム3.85gに溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物3を得た。
【0232】
(実施例7)
実施例3で得られた化合物3 0.34g、合成例1で得られた化合物A 0.66g、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919を30mg、及び、界面活性剤として、KH−40の1%シクロペンタノン溶液100mgを、クロロホルム3.85gに溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物4を得た。
【0233】
(比較例1、2)
前記化合物1r及び化合物2rをそれぞれ1.0g、光重合開始剤として、アデカオプトマーN−1919を30mg、及び、界面活性剤として、KH−40の1%シクロペンタノン溶液100mgを、シクロペンタノン2.3gに溶解させた。この溶液を0.45μmの細孔径を有するディスポーサブルフィルターでろ過し、重合性組成物1rおよび2rを得た。
【0234】
〈位相差の測定と波長分散の評価〉
(i)重合性組成物による液晶層の形成
ラビング処理されたポリイミド配向膜の付与された透明ガラス基板(商品名:配向処理ガラス基板;E.H.C.Co.,Ltd.製)に、重合性組成物1〜4、1r、2rのそれぞれを、♯4のワイヤーバーを使用して塗布した。塗膜を、下記表2に示す温度で30秒間乾燥した後、表2に示す温度で1分間配向処理し、液晶層を形成した。その後、液晶層の塗布面側から2000mJ/cmの紫外線を照射して重合させ、波長分散測定用の試料とした。
【0235】
(ii)位相差の測定
得られた試料につき、400nmから800nm間の位相差を、エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M2000U型)を用いて測定した。
(iii)波長分散の評価
測定した位相差を用いて以下のように算出されるα、β値から波長分散を評価した。
【0236】
【数1】
【0237】
広帯域性を示す理想的な波長分散性、即ち逆波長分散性を示す場合、αは1より小となり、βは1より大となる。フラットな波長分散を有している場合、αとβは同程度の値となる。一般的な通常分散を有している場合、αは1より大となり、βは1より小となる。
【0238】
重合して得られた液晶性高分子膜の膜厚(μm)、波長548.5nmにおける位相差(Re)、α、βの値を、下記表2にまとめて示す。
なお、表2中、「割合(%)」は、重合性化合物1と重合性化合物2の配合割合(質量%)を表す。
【0239】
【表2】
【0240】
表2より、本発明に係る実施例4〜7で得られた高分子は、αが1より小さく、βが1より大きいものであった。