特許第6206446号(P6206446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206446フレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルデバイスの製造方法、フレキシブルデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206446
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】フレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルデバイスの製造方法、フレキシブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20170925BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20170925BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08G73/10
   H05K1/03 610N
   H05K1/03 670A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-106345(P2015-106345)
(22)【出願日】2015年5月26日
(62)【分割の表示】特願2009-47876(P2009-47876)の分割
【原出願日】2009年3月2日
(65)【公開番号】特開2015-178628(P2015-178628A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 由美子
(72)【発明者】
【氏名】上田 篤
(72)【発明者】
【氏名】二川 佳子
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−046054(JP,A)
【文献】 特開2007−016200(JP,A)
【文献】 特開2007−162005(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/014406(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/050300(WO,A1)
【文献】 特開2005−163012(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/082152(WO,A1)
【文献】 特開平11−277699(JP,A)
【文献】 特表2007−512568(JP,A)
【文献】 特表2010−507829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79
C08G 73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の樹脂組成物を硬質キャリア基板上に塗布成膜して樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂膜上に回路を形成する工程と、前記回路が表面に形成された樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程と、を含む、表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板の製造法に用いられ、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物であって、一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R
【化2】
から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもい)、R
【化3】
から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である。但し、Rがp−フェニレンジアミン残基であるとき、Rはピロメリット酸無水物残基ではない。)で表される構造単位を全構造単位中60%以上有する重量平均分子量が15,000〜200,000であるポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有してなるフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項2】
フレキシブルデバイス基板が、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板又は電子ペーパー用基板である、請求項1に記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物を硬質キャリア基板上に塗布成膜してポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項4】
ポリイミド樹脂膜の厚さが、1〜20μmである請求項に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項5】
ポリイミド樹脂膜のガラス転移温度が、300℃以上である請求項3又は4に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項6】
ポリイミド樹脂膜の100℃〜200℃の範囲における熱膨張係数が、20ppm/K以下である請求項3〜5のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物から得られるポリイミド樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱膨張、高耐熱性、靭性に優れる、各種フレキシブルデバイスにおいて、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等のフレキシブルデバイス基板用であるポリイミド前駆体樹脂組成物に関し、特にフレキシブルディスプレイ用基板として有用であるポリイミド前駆体樹脂組成物に関する。また、本発明は前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を用いるフレキシブルデバイスの製造方法及び前記製造方法により得られるフレキシブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種ディスプレイにはガラス基板が用いられているが、ガラス基板は軽量化、薄型化すると強度が低下する問題を抱えている。そこでガラス基板の代替品として、軽量かつ成型加工が容易であるゆえに薄型化可能なプラスチック基板の採用が求められている。ガラス基板よりも高い靭性を持つプラスチック基板の採用は、曲げたり丸めたりすることが可能なフレキシブルディスプレイパネルの実現を可能とする。例えば、特許文献1には、硬質キャリア基板の上にプラスチック基板を設け、この上に画素回路及びディスプレイ層を形成した後、前記硬質キャリア基板から剥離するというディスプレイの製造法が記載されている。この方法によれば、予め独立したフィルム状の基板を用いるよりも、薄く軽量な基板を形成できるという利点がある。
この方法は、軽量かつ高靭性であるプラスチック基板となるが、耐熱性において、ガラス基板に劣るという問題がある。たとえば、プラスチック基板上にTFTを形成することを考えたとき、製造工程上、プラスチック基板は200℃以上の高温に耐える必要がある。しかし、プラスチックのガラス転移点は高くても約150℃であるため、耐熱性に劣る。前記特許文献1中には、耐熱性の高いものとして、体積プロセスにより形成されるパリレンが具体的に記載されているが、成膜プロセスが煩雑であるという欠点がある。特許文献1中には、スピンコート等の塗布により、ポリイミド、PEN(ポリエチレンナフタレート樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)、BCB(ベンゾシクロブテン樹脂)等いくつかのポリマを用いてプラスチック基板層を形成することも示唆されてはいるが、十分な特性を有する具体的なポリマの開示はされていない。
このように、特許文献1に記載されるフレキシブルディスプレイの製造方法では、塗布によって簡単に薄膜が形成でき、その上に回路を形成した後に剥離する工程を経ることができる、靭性と耐熱性を同時に持つプラスチック基板は、未だ知られていない。
そこで、現在では、工程は煩雑となってしまうが、高耐熱性であるガラス基板にTFTを形成し、高温プロセスを終えてからTFTを一時基板に転写、さらに一時基板からプラスチック基板へ再転写する方法によって、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイの製造がなされている。
一方、電子機器の小型軽量化に伴い、リード・オン・チップ(LOC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)、チップ・オン・フィルム(COF)等の電子部品向けフレキシブル配線基板については、近年盛んに開発がなされている。たとえば、特許文献2、3および4には、ポリイミドフィルムを用いた電子部品向けフレキシブル回路基板の製造法が記載されている。この方法は、一般に、ポリイミドの長尺フィルムを形成し、次いでその表面に、接着剤層の形成やアッシングなどの表面処理を施したうえで、銅箔などの導電体層を形成するものである。そして、さらに導電体層をエッチング処理することでポリイミド上に回路を形成することができ、これを金属積層体やフレキシブル回路基板となす。これらには芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類から得られる芳香族ポリイミドフィルムが優れた耐熱性やフレキシブル性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−512568号公報
【特許文献2】特開平11−4055号公報
【特許文献3】特開2006−291165号公報
【特許文献4】特開2006−225667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等のフレキシブルデバイス基板用としては、簡易な工程に適用でき、かつ、要求特性を高度に満足するものは知られていない。即ち、前記フレキシブルデバイス基板用としては、さらなる薄膜化の要求がなされ、また、工程上一旦キャリア基板上に薄膜を形成した状態でその上に各種回路を形成し、その後に剥離することができる液状樹脂組成物が要求されるが、このような工程に用いることができ、かつ、高度な要求特性を有する液状樹脂組成物は知られていない。
本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池の受光デバイスであるフレキシブルデバイスにおいて、ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずに剥離ができる、液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたフレキシブルデバイス及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は次の各項に関する。
(1) 液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂膜上に回路を形成する工程と、前記回路が表面に形成された樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程と、を含む、表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板の製造法に用いられ、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物であって、一般式(1)
【0006】
【化1】
(一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R
【0007】
【化2】
から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲンで置換されても良い)、R
【0008】
【化3】
から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である。但し、p−フェニレンジアミンに基づく構造単位であるとき、Rピロメリット酸無水物に基づく構造単位ではない。)で表される構造を有する重量平均分子量が15,000〜200,000であるポリイミド前駆体、又は、1,4−シクロヘキサンジアミンに基づく構造単位とs−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に基づく構造単位とを有するポリイミド前駆体と、有機溶媒とを含有してなるフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
(2)フレキシブルデバイス基板が、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板又は電子ペーパー用基板である、前記(1)に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
(3) ポリイミド前駆体の重量平均分子量が、15,000から200,000である前記(1)又は(2)に記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜してポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法。
(5) ポリイミド樹脂膜の厚さが、1〜20μmである前記(4)に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
(6) ポリイミド樹脂膜のガラス転移温度が、300℃以上である前記(4)又は(5)に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
(7) ポリイミド樹脂膜の100℃〜200℃の範囲における熱膨張係数が、20ppm/K以下である前記(4)から(6)のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
(8) 前記(4)から(7)のいずれかに記載されたフレキシブルデバイスの製造方法により製造された表示デバイスであるフレキシブルデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明における液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物は、低熱膨張、高耐熱性、高靭性に優れ、表示デバイス又は受光デバイスの基板として適したポリイミド薄膜を形成できる。
また、現在の主流である、ベースフィルムとしてすでにフィルムとして成型されている、厚さの決まったものを用いるのではなく、デバイスの製造に即して塗布成膜する液状の組成物を使用するため、スピンコートやスクリーン印刷などによりガラス基板などのキャリア基板上に塗布できる。この時、塗布膜厚を変化させることにより、樹脂膜(ベースフィルム)の厚さを所望の厚さ、特に薄膜に調整することも可能となり、したがってフレキシブルデバイスのさらなる薄型化も可能となる。これにより、最終製品の小型化、軽量化も可能となる。
また、ガラス基板等のキャリア基板上に薄く塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜として成膜でき、その上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じない上、その後キャリア基板から剥がす際には、ポリイミド膜自体にも、その上に形成された回路等にも欠陥を生じることがなく、きれいに剥がせるものである。従って、これを用いた表示デバイス又は受光デバイスとなるフレキシブルデバイスの製造方法は、キャリア基板上に形成されたベースフィルムに直接回路を形成し、その後剥離することが可能となるため、再転写の製造工程を省略することができる。そして得られるフレキシブルデバイスは、薄くても靱性が高く、耐熱性にも優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ディスプレイデバイスの製造例を示し、ガラス基板上に液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布成膜して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程を示す模式図である。
図2】ディスプレイデバイスの製造例を示し、ポリイミド樹脂膜上にTFT電極を形成した状態を示す模式図である。
図3】ディスプレイデバイスの製造例を示し、図2のTFT電極上に液晶表示素子、カバーフィルムの層を形成した状態を示す模式図である。
図4】ディスプレイデバイスの製造例を示し、ガラス基板からディスプレイデバイスを剥離する工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液状のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物は、キャリア基板上に塗布、乾燥、成膜し、次いで、好ましくは加熱等の手段により、脱水閉環させて、固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、その上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、フレキシブルデバイスの製造方法に用いられるものである。この方法によれば、前述のように直接固体状のポリイミド樹脂膜(ベースフィルム)へ回路を形成することが可能となり、再転写の製造工程を省略することができる。
本発明における液状のポリイミド前駆体樹脂組成物は、以下の一般式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体と有機溶媒を含む。
一般式(1)
【0012】
【化4】
(一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R
【0013】
【化5】
から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲンで置換されても良い)、R
【0014】
【化6】
から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である。但し、p−フェニレンジアミンに基づく構造単位であるとき、Rピロメリット酸無水物に基づく構造単位ではない。)
一般式(1)において、Rは、各々独立に水素又は1価の有機基を示し、1価の有機基として、炭素原子数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。RにおけるR’としては、炭素原子数1〜3のアルキル基等の炭化水素基が挙げられ、そのアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)で置換されていても良い。
ポリイミド前駆体は、一般に1つのテトラカルボン酸残基と1つのジアミン残基から形成される構造単位(括弧でくくられた構造単位)が繰り返し単位となって形成されるが、本発明においては一般式(1)で示される括弧でくくられた構造単位が、全構造単位中40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。
ポリイミド前駆体は、一般にテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合することにより得られる。この重合は両者を有機溶媒中で混合することにより行うことができる。
【0015】
前記一般式(1)で示される構造を形成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、シクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。その他のテトラカルボン酸二無水物を併用することもでき、その例としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルフォニルジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物などが挙げられる。一般式(1)で示される構造を形成するテトラカルボン酸二無水物の使用量は、テトラカルボン酸二無水物の総量に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。
【0016】
また、前記一般式(1)で示される構造単位を形成するために用いられるジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。その他のジアミンを併用することもでき、そのジアミンとしては、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ベンゾフェノンジアミン、4,4’−ジ(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、5,5’−メチレン−ビス−(アントラニル酸)、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル−6,6’−ジスルホン酸等の芳香族ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン等の複素環式ジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンなどが挙げられる、ジアミンであるならば、この限りでなく併用できる。一般式(1)で示される構造を形成するジアミンの使用量は、ジアミンの総量に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0017】
重合に使用する有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、また、これらは2種以上を併用してもよい。ポリイミド前駆体樹脂組成物を生成後、粘度を調整するために、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどを用いても良く、これらは2種以上を併用してもよい。ポリイミド前駆体樹脂組成物におけるポリイミド前駆体/有機溶媒の質量割合としては、良好な薄膜を形成できる塗布性等の観点から、ポリイミド前駆体/有機溶媒で、5/95〜95/5が好ましい。
製造されるポリイミド前駆体の分子量としては、硬化膜の伸び及び溶媒への溶解性の観点から、重量平均分子量で、15,000〜200,000が好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線により換算して算出することができる。
【0018】
また、本発明のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物は、必要に応じて感光性を付与することが可能である。例えば、ネガ型の感光性を付与する場合、ポリイミド前駆体としてポリアミド酸(一般式(1)においてRが水素原子であるもの)にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するアミンを配合して感光性を付与することができる。このようなアミンとしては、例えば、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられるがこの範囲には限られない。また、ポリイミド前駆体としてポリアミド酸エステル(一般式(1)においてRが一価の有機基であるもの)を用い、このときのRとして、アクリロキシアルキル基やメタクリロキシアルキル基等のアクリロイル基やメタクリロイル基を含む構造のものを用いて、感光性を付与することも可能である。これらのように、ネガ型の感光性を付与する場合、一般的にはさらに、ラジカル重合開始剤等の光重合開始剤を、樹脂組成物総量に対して0.01〜10質量%用いることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物には、被塗布体との接着性向上のため、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を添加することができる。上記カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノエチルトリプロポキシシラン、γ−アミノエチルトリブトキシシラン、γ−アミノブチルトリエトキシシラン、γ−アミノブチルトリメトキシシラン、γ−アミノブチルトリプロポキシシラン、γ−アミノブチルトリブトキシシラン、などが挙げられ、また上記チタンカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシチタン、γ−アミノプロピルトリメトキシチタン、γ−アミノプロピルトリプロポキシチタン、γ−アミノプロピルトリブトキシチタン、γ−アミノエチルトリエトキシチタン、γ−アミノエチルトリメトキシチタン、γ−アミノエチルトリプロポキシチタン、γ−アミノエチルトリブトキシチタン、γ−アミノブチルトリエトキシチタン、γ−アミノブチルトリメトキシチタン、γ−アミノブチルトリプロポキシチタン、γ−アミノブチルトリブトキシチタン、などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。このときの使用量は、ポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、0.1質量%以上、3質量%以下が好ましい。
その他、必要に応じて、各種添加剤を配合することも可能である。
【0020】
本発明の液状のポリイミド前駆体樹脂組成物の塗布は、キャリア基板(支持体)に均一な厚みを形成できる方法であれば、種類を問わず適用できる。例として、ダイコーティングやスピンコーティング、スクリーン印刷による塗布が可能である。
本発明における液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布、乾燥、イミド閉環して得られるポリイミド樹脂膜の厚さは、1〜20μmであることが望ましい。これは、厚さが1μmに満たない場合にポリイミドフィルムが十分な耐性を保持できず、フレキシブルデバイスとして使用したとき応力に耐え切れず破壊されるためである。また、20μmを超えて厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまう。したがって、フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながらより薄膜化するには、2〜10μmの厚みであることが最も望ましい。
【0021】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法において、ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布するキャリア基板(支持体)は、自立性を持つ硬質なものであって、耐熱性があれば良い。つまり製造工程上必要とされる高温にさらされても変形しない素材を用いていれば良い。具体的には、一般に200℃以上、好ましくは250℃以上のガラス転移温度を持つ素材を用いるのが望ましく、このようなものとしてはガラスが挙げられる。キャリア基板の厚さは、0.3mmから5.0mmが好ましく、0.5mmから3.0mmがより好ましく、0.7mmから1.5mmであるものがさらに好ましい。
塗布した本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、一般に、加熱乾燥した後、脱水閉環してポリイミド樹脂膜を形成する。その加熱温度としては通常100〜500℃、好ましくは150〜450℃、さらに好ましくは200〜400℃の範囲を任意に選択することができる。また加熱時間は、通常1分〜6時間、好ましくは3分〜4時間、さらに好ましくは15分〜2時間とされる。
こうして形成されるポリイミド樹脂のフィルムの熱膨張率は、100〜200℃の範囲において20ppm/K以下であることが好ましく、15ppm/K以下であることがより好ましく、10ppm/K以下であることがさらに好ましく、被塗布体であるキャリア基板(例えばガラス基板)と同程度の熱膨張であることが最も好ましい。熱膨張率は、乾燥後のポリイミドフィルムを5mm×15mmに切り出したものを用い、サーマルメカニカルアナライザー(例えば、株式会社リガク製)によって25℃から450℃まで、毎分5℃ずつ昇温することで測定することができる。
さらに、形成されるポリイミド樹脂は、破断伸びが、5%以上が好ましく(25℃)、10%以上がより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。破断伸びは、乾燥後のポリイミドフィルムを10mm×60mmに切り出したサンプルを用い、オートグラフ(例えば株式会社島津製作所製)により測定することができる。
また、形成されるポリイミド樹脂の弾性率は、1GPa以上であることが好ましく(25℃)、1.5GPa以上であることがより好ましく、2GPa以上であることがさらに好ましい。破断伸びは乾燥後のポリイミドフィルムを10mm×60mmに切り出したサンプルを用い、オートグラフ(例えば株式会社島津製作所製)により測定することができる。
【0022】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、以上のようにして形成したポリイミド膜の上に、表示デバイス、受光デバイスに必要な回路を形成する工程を含む。この工程はフレキシブルデバイスの種類により異なる。例えば、TFT液晶ディスプレイデバイスを製造する場合には、この上に例えばアモルファスシリコンのTFTを形成することが出来る。TFTは、ゲート金属層、窒化ケイ素ゲート誘電体層、ITI画素電極を含む。さらにこの上に液晶ディスプレイに必要な構造を、公知の方法によって形成することも出来る。本発明において得られるポリイミド樹脂膜は耐熱性、靱性等各種特性に優れるので、回路等を形成する手法は特に制限されない。
以上のようにして、回路等が表面に形成された固体状のポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する。剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行っても良い。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である。
本発明における、フレキシブルデバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示デバイス、太陽電池、CMOSなどの受光デバイスを挙げることが出来る。特に、薄型化かつフレキシブル性を付与したいデバイスへの適用に最適である。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、p−フェニレンジアミン5.41gとN−メチルピロリドン181.03gを仕込み、15分間、40℃で加熱攪拌しモノマーを溶解させた。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gを加え、さらに30分間攪拌し、粘度1100mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は70000であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ5μmになるように製膜した。次いで、硬化炉を用い200℃で30分間、さらに350℃で60分間加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。イミド化後の膜厚は3μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。
【0024】
測定条件は、次の通り。
ガラス転移温度:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25〜450℃、試料サイズ5mm×15mm)
熱分解温度:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25〜620℃、試料サイズ5mm×15mm)
熱膨張率:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25〜450℃、試料サイズ5mm×15mm)
破断点応力:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm)
弾性率:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm)
伸び:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm)
重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフ(株式会社島津製作所製)
【0025】
(実施例2)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、p−フェニレンジアミン3.86gと1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.18g、N−メチルピロリドン85gを仕込み、15分間、40℃で加熱攪拌しモノマーを溶解させた。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸無水物10.19gと1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル酸無水物)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを0.78g加え、さらに30分間攪拌し、粘度2000mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は80000であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで45秒間、次いで160℃のホットプレートで45秒間ベークし、厚さ8μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は5μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0026】
(実施例3)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン11.99gとN−メチルピロリドン77gを仕込み、室温(25℃)で15分間攪拌しモノマーを溶解した。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物11.01gを加えさらに室温で30分間攪拌し、粘度7200mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は72400であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、100℃のホットプレートで2分間、次いで130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ13μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は9μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0027】
(実施例4)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、1,4−ジアミノシクロヘキサン5.59gをN−メチルピロリドン80gを仕込み、70℃で15分間加熱攪拌しモノマーを溶解した。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.41gを加え80℃で30分間攪拌後、自然冷却し粘度9200mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は53000であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、100℃のホットプレートで2分間、次いで130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ15μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は10μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0028】
(実施例5)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン1.49gと1,4−ジアミノシクロヘキサン4.78g、N−メチルピロリドン80gを仕込み、70℃で15分間加熱攪拌しモノマーを溶解した。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物13.01gと3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物0.71gを加え80℃で30分間加熱攪拌後、自然冷却し液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は87900であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、100℃のホットプレートで2分間、次いで130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ15μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は10μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0029】
(比較例1)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル6.03gと1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.39g、N−メチルピロリドン85gを仕込み、室温で15分間攪拌しモノマーを溶解させた。その後ピロメリット酸二無水物3.46gと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物5.11gを加え、さらに24時間攪拌した。その後80℃の加熱攪拌で粘度調整を行い、粘度1100mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は76000であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物をガラス基板上にスピンコートで塗布した後、140℃のホットプレートで1分間ベークし、厚さ8μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は4μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0030】
(比較例2)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.07gと1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.26g、N−メチルピロリドン68g、ジイソブチルケトン17gを仕込み、15分間攪拌した。その後3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物6.67gを加えさらに30分間攪拌し、粘度1100mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は81000であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、120℃のホットプレートで3分間ベークし、厚さ14μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は8μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0031】
(比較例3)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン8.93gとN−メチルピロリドン85gを仕込み、室温で15分間攪拌しモノマーを溶解した。その後s−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物6.07gを加えさらに30分間攪拌し、粘度500mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体樹脂の重量平均分子量は78100であった。
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、80℃のホットプレートで2分間、次いで120℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ7μmになるように製膜した。次いで、実施例1に記載の条件で加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。この膜厚は3μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。測定条件は実施例1に記載の条件に従った。
【0032】
ディスプレイデバイスの製造例
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を用いたフレキシブル液晶ディスプレイの製造例を示す。
図1に示すようにキャリア基板としてガラス基板を用い、ガラス基板上に各液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を、スピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ約5μmになるように製膜した。次いで、硬化炉を用い200℃で30分間、さらに350℃で60分間加熱硬化してイミド化し、固体状の樹脂膜であるポリイミド樹脂フィルムを形成した。この膜厚は3μmであった。このポリイミド膜上に、既知の方法に従って図2に示すようにTFT電極を形成することができた。さらにその上に既知の方法に従って、図3に示すように液晶表示素子、カバーフィルムの層を形成することができ。その後、図4に示すようにガラス基板から、フレキシブルデバイスを剥離することができ
このようにして得られる、実施例のフレキシブル液晶ディスプレイは良好な性能を示したが、比較例のものはポリイミド膜物性が劣るため、信頼性に優れるフレキシブル液晶ディスプレイは得られなかった
【0033】
【表1】
表1に示したように、本発明の一般式(1)で表される構成単位を有するポリイミド前駆体を用いた樹脂膜は、ガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張率などの熱特性、破断点応力、弾性率、伸びなどの機械特性に優れる。これに対し、一般式(1)で表される構成単位を有さない比較例1〜3は、熱特性、機械特性に劣る。また、実施例のポリイミド前駆体は、薄膜の樹脂膜にもかかわらず、その上に形成した各種回路(TFT電極、液晶表示素子)にはがれなどの欠陥を生じさせることなくキャリア基板からの剥離性に優れる。
図1
図2
図3
図4