(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リン含有銅合金粒子と、錫含有粒子と、特定金属元素M[Mは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]を含有する粒子と、ガラス粒子と、溶剤と、樹脂と、を含有し、前記リン含有銅合金粒子、前記錫含有粒子及び前記特定金属元素Mを含有する粒子の総含有率を100質量%としたときの前記特定金属元素Mを含有する粒子の含有率が、4質量%以上70質量%以下である電極形成用組成物。
前記錫含有粒子は、錫粒子、及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の電極形成用組成物。
前記特定金属元素Mを含有する粒子は、前記特定金属元素Mからなる粒子、及び前記特定金属元素Mの含有率が5質量%以上である前記特定金属元素Mの合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
前記リン含有銅合金粒子、前記錫含有粒子及び前記特定金属元素Mを含有する粒子の総含有率を100質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が、5質量%以上70質量%以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
前記リン含有銅合金粒子、前記錫含有粒子及び前記特定金属元素Mを含有する粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であり、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であり、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
【0029】
<電極形成用組成物>
本発明の電極形成用組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種と、錫含有粒子の少なくとも1種と、特定金属元素Mを含有する粒子(以下「特定金属M含有粒子」ともいう)の少なくとも1種と、ガラス粒子の少なくとも1種と、溶剤の少なくとも1種と、樹脂の少なくとも1種と、を含有する。ここで、Mは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。中でも、電極の抵抗率及び熱処理(焼成)における耐酸化性の観点から、特定金属元素Mは、Ni、Mn、Ag、Ca、Mg、Bi、Cu、Mo、Au、W、Zn、Ta、Nb及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。また、特定金属元素Mは、Mn、Ag、Ca、Mg、Bi、Cu、Mo、Au、W、Zn、Ta、Nb及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよく、Mn、Ag、Ca、Mg、Bi、Mo、Au、W、Ta、Nb及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0030】
電極形成用組成物がかかる構成であることにより、大気中での熱処理(焼成)における銅の酸化が抑制され、抵抗率のより低い電極を形成できる。更に、電極形成用組成物をシリコン基板に付与して電極を形成する際、銅とケイ素とによる反応物相の形成が抑制され、形成される電極とシリコン基板とが良好なオーミックコンタクトを形成できる。これは例えば以下のように考えることができる。
【0031】
前記電極形成用組成物を大気下で熱処理(焼成)すると、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応により、Cu−Sn合金相及びSn−P−Oガラス相が形成される。Cu−Sn合金相の形成により、低抵抗率の電極を形成することができる。ここでCu−Sn合金相は、500℃程度の比較的低温で生成するため、電極形成のための熱処理(焼成)の低温化が可能となり、製造コストを削減できるという効果が期待できる。
【0032】
また電極形成用組成物は、更に特定金属M含有粒子を含む。これにより、熱処理(焼成)して形成される電極の抵抗率を更に低減させることができ、また、より高温での熱処理(焼成)工程でも耐酸化性を保ったまま低抵抗の電極を形成できる。これは、例えば、以下のようにして考えることができる。
【0033】
特定金属元素Mが、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種であると、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応により形成したSn−P−Oガラス相と特定金属M含有粒子とが反応し、特定金属元素Mがガラス相のネットワーク中に参加することで、ガラス相の中を移動できるようになる。結果としてSn−P−Oガラス相内の導電率が向上し、電極全体としての低抵抗率化が図られると考えられる。
【0034】
また、特定金属元素Mが、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。さらに、特定金属元素Mが、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0035】
また、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応により形成したCu−Sn合金相と、特定金属M含有粒子(但し、MはCu以外)とが反応することで、Cu−Sn−M合金相を形成すると考えられる。このCu−Sn−M合金相は、500℃以上の高温(例えば800℃)でも形成されることがある。結果として、電極を形成するための熱処理(焼成)の温度条件を、低温から高温まで種々に対応させることが可能となる。よって、本発明の電極形成用組成物は、後述する様々な構造の太陽電池の電極材料として広範に使用できるという効果が得られると考えられる。
【0036】
また、Cu−Sn−M合金相は、Cu−Sn−M合金相どうしで、又は熱処理(焼成)条件に応じて更に形成されるCu−Sn合金相と共に、電極内で緻密なバルク体を形成する。このバルク体が導電層として機能することで、電極の低抵抗率化が図られる。なお、Cu−Sn合金相とCu−Sn−M合金相とが電極内に混在していても、低抵抗率化は妨げられないと考えられる。ここでいう緻密なバルク体とは、塊状のCu−Sn合金相及びCu−Sn−M合金相が互いに密に接触し、三次元的に連続している構造が形成されていることを意味する。このような構造が形成されていることは、電極を形成した基板について、電極形成面と垂直方向の任意の断面を、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立ハイテクノロジーズ製TM−1000型走査型電子顕微鏡)を用いて100倍〜10000倍の倍率で観察することによって確認することができる。ここで、観察用の断面は、リファインテック社製RCO−961型ダイヤモンドカッター等により切断したときの断面とする。尚、切断後の観察用の断面は、切断機による切削傷等が残っていることがあるので、研磨紙等を用いて研磨し、観察断面の表面凹凸を除去することが好ましく、その後バフ等を用いて鏡面研磨することがより好ましい。
【0037】
また、電極形成用組成物を用いてシリコンを含む基板(以下、単に「シリコン基板」ともいう)上に電極を形成する場合、シリコン基板に対する密着性の高い電極を形成することができ、更に電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが良好となる。これは例えば以下のように考えることができる。
【0038】
リン含有銅合金粒子と錫含有粒子と特定金属M含有粒子とが、熱処理(焼成)工程で互いに反応して、Cu−Sn−M合金相と、Sn−P−Oガラス相と、熱処理(焼成)条件に応じて形成されるCu−Sn合金相と、を含む電極が形成される。Cu−Sn−M合金相及び熱処理(焼成)条件に応じて形成されるCu−Sn合金相が緻密なバルク体であるために、Sn−P−Oガラス相は、Cu−Sn−M合金相とシリコン基板との間、又はCu−Sn−M合金相及びCu−Sn合金相とシリコン基板との間に形成される。これによりCu−Sn−M合金相及びCu−Sn合金相のシリコン基板に対する密着性が向上すると考えることができる。
【0039】
また、Sn−P−Oガラス相が、銅とシリコンとの相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、熱処理(焼成)して形成される電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが良好になると考えることができる。すなわち、電極形成用組成物を用いることで、銅とケイ素との反応を抑えて反応物相(Cu
3Si)の形成を抑制し、半導体性能(例えば、pn接合特性)を低下させることなく、形成された電極のシリコン基板に対する密着性を保ちながら、電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトを発現することができると考えられる。
【0040】
なお、特定金属元素MとしてCuを含んでいても、このCuの酸化は抑えられ、形成される電極の低抵抗率化が図られる。この理由は、電極形成用組成物中にリン含有銅合金粒子が含有されるため、このリンの還元作用により特定金属元素MとしてのCuの酸化も抑えられているためと考えられる。
【0041】
すなわち、電極形成用組成物において、リン含有銅合金粒子に錫含有粒子と特定金属M含有粒子とを組み合わせることで、リン含有銅合金粒子中のリン原子の銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、体積抵抗率の低い電極が形成される。そして、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応で形成したSn−P−Oガラス相とCu−Sn合金相のうち、Sn−P−Oガラス相と特定金属M含有粒子とが反応した場合は、特定金属元素MのSn−P−Oガラス相ネットワークへの参加により、ガラス相の導電率が向上する。また、Cu−Sn合金相と特定金属M含有粒子とが反応した場合は、形成される電極の体積抵抗率を低く保ったまま、Cu−Sn−M合金相及び熱処理(焼成)条件に応じて形成されるCu−Sn合金相の導電層と、Sn−P−Oガラス相とが形成される。そして例えば、Sn−P−Oガラス相が、銅とケイ素の相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、電極とシリコン基板との間に反応物相が形成されることを抑制し、電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトが形成されるという特徴的な機構を、一連の熱処理(焼成)工程において実現できると考えることができる。
【0042】
このような効果は、ケイ素を含む基板上に本発明の電極形成用組成物を用いて電極を形成する場合であれば、一般的に発現するものであり、ケイ素を含む基板の種類は特に制限されるものではない。ケイ素を含む基板としては、太陽電池形成用のシリコン基板、太陽電池以外の半導体デバイスの製造に用いるシリコン基板等を挙げることができる。
【0043】
(リン含有銅合金粒子)
電極形成用組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種を含む。リン含有銅合金としては、リン銅ろう(リン濃度:7質量%程度以下)と呼ばれるろう付け材料が知られている。リン銅ろうは、銅と銅との接合剤としても用いられるものである。電極形成用組成物にリン含有銅合金粒子を用いることで、リンの銅酸化物に対する還元性を利用して、耐酸化性に優れ、体積抵抗率の低い電極を形成することができる。更に、電極を形成する際の熱処理(焼成)において低温化が可能となり、製造コストを削減できるという効果を得ることができる。
【0044】
リン含有銅合金粒子中のリン含有率としては、耐酸化性と形成される電極の低抵抗率化の観点から、6.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、6.3質量%以上7.8質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以上7.5質量%以下であることが更に好ましい。上記リン含有率が8.0質量%以下であることで、形成される電極の抵抗率がより低くなる傾向があり、またリン含有銅合金粒子の生産性に優れる。また上記リン含有率が6.0質量%以上であることで、耐酸化性により優れる傾向がある。
【0045】
リン含有銅合金粒子は、銅及びリンを含み、他の原子を更に含んでいてもよい。他の原子としては、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。
リン含有銅合金粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、前記リン含有銅合金粒子中に3質量%以下とすることができ、耐酸化性と低抵抗率化の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【0046】
リン含有銅合金粒子は、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
リン含有銅合金粒子の粒子径としては特に制限はない。粒度分布において小径側から積算した重量が50%の場合における粒子径(以下、「D50%」と略記することがある)が、0.4μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることがより好ましい。リン含有銅合金粒子のD50%を0.4μm以上とすることで、耐酸化性がより効果的に向上する傾向がある。リン含有銅合金粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極中におけるリン含有銅合金粒子同士、又は後述する錫含有粒子及び特定金属M含有粒子との接触面積が大きくなり、電極の抵抗率がより効果的に低下する傾向がある。
【0048】
尚、リン含有銅合金粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター(株)製LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置)によって測定される。具体的には、溶媒(テルピネオール)125gに、リン含有銅合金粒子を0.01質量%〜0.3質量%の範囲内で添加し、分散液を調製する。この分散液の約100mL程度をセルに注入して25℃で測定する。粒度分布は、溶媒の屈折率1.48として測定する。
【0049】
リン含有銅合金粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子の形状は、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
【0050】
電極形成用組成物におけるリン含有銅合金粒子の含有率は特に制限されない。形成される電極の低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子の含有率は、電極形成用組成物中、15質量%以上75質量%以下であることが好ましく、18質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上65質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
リン含有銅合金は、通常用いられる方法で製造することができる。また、リン含有銅合金粒子は、所望のリン含有率となるように調製したリン含有銅合金を用いて、金属粉末を調製する通常の方法を用いて調製することができ、例えば、水アトマイズ法を用いて定法により製造することができる。尚、水アトマイズ法の詳細については、金属便覧(丸善(株)出版事業部)等の記載を参照することができる。
具体的には、リン含有銅合金を
熔解し、これをノズル噴霧によって粉末化した後、得られた粉末を乾燥し、分級することで、所望のリン含有銅合金粒子を製造することができる。また、分級条件を適宜選択することで所望の粒子径を有するリン含有銅合金粒子を製造することができる。
【0052】
(錫含有粒子)
電極形成用組成物は、錫含有粒子の少なくとも1種を含む。錫含有粒子を含むことにより、抵抗率の低い電極を形成できる。
【0053】
錫含有粒子としては、錫を含む粒子であれば特に制限はない。中でも、錫含有粒子は、錫粒子及び錫合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0054】
錫粒子における錫の純度は特に制限されない。例えば、錫粒子の純度は、95質量%以上とすることができ、97質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0055】
錫合金粒子は、錫を含む合金粒子であれば合金の種類は特に制限されない。錫合金粒子の融点、及びリン含有銅合金粒子及び特定金属M含有粒子との反応性の観点から、錫合金粒子中の錫の含有率は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
【0056】
錫合金粒子の材質としては、Sn−Ag合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag−Sb合金、Sn−Ag−Sb−Zn合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi合金、Sn−Ag−Cu−Bi合金、Sn−Ag−In−Bi合金、Sn−Sb合金、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Bi−Cu−Zn合金、Sn−Bi−Zn合金、Sn−Bi−Sb−Zn合金、Sn−Zn合金、Sn−In合金、Sn−Zn−In合金、Sn−Pb合金等が挙げられる。
【0057】
錫合金粒子の材質のうち、特に、Sn−3.5Ag、Sn−0.7Cu、Sn−3.2Ag−0.5Cu、Sn−4Ag−0.5Cu、Sn−2.5Ag−0.8Cu−0.5Sb、Sn−2Ag−7.5Bi、Sn−3Ag−5Bi、Sn−58Bi、Sn−3.5Ag−3In−0.5Bi、Sn−3Bi−8Zn、Sn−9Zn、Sn−52In、Sn−40Pb等の錫合金粒子が好ましい。これらの材質で構成される錫合金粒子は、Snのもつ融点(232℃)と同じ、又はこれよりも低い融点を有する。そのため、これら錫合金粒子は熱処理(焼成)の初期段階で溶融してリン含有銅合金粒子の表面を覆い、リン含有銅合金粒子とより均一に反応することができるという利点を有する。
尚、錫合金粒子における表記は、例えばSn−AX−BY−CZの場合は、錫合金粒子の中に、元素XがA質量%、元素YがB質量%、元素ZがC質量%含まれていることを示す。
【0058】
これらの錫含有粒子は、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
錫含有粒子は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。
錫含有粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、前記錫含有粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及びリン含有銅合金粒子との反応性の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【0060】
錫含有粒子の粒子径としては特に制限はない。錫含有粒子のD50%は、0.5μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜15μmであることがより好ましく、5μm〜15μmであることが更に好ましい。錫含有粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、錫含有粒子自身の耐酸化性が向上する傾向にある。錫含有粒子のD50%を20μm以下とすることで、電極中におけるリン含有銅合金粒子及び特定金属M含有粒子との接触面積が大きくなり、熱処理(焼成)中の反応が効果的に進む傾向にある。
尚、錫含有粒子のD50%は、リン含有銅合金粒子の場合と同様にして測定する。
【0061】
錫含有粒子の形状は特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と低抵抗率化の観点から、錫含有粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
【0062】
電極形成用組成物における錫含有粒子の含有率は特に制限されない。中でも、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子と特定金属M含有粒子との総含有率を100質量%としたときの錫含有粒子の含有率が、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、7質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上60質量%以下であることが更に好ましく、9質量%以上45質量%以下であることが特に好ましい。
上記錫含有粒子の含有率を5質量%以上とすることで、リン含有銅合金粒子及び特定金属M含有粒子との反応をより均一に生じさせることができる。また上記錫含有粒子の含有率を70質量%以下とすることで、充分な体積のCu−Sn−M合金相及び熱処理(焼成)条件に応じて更に形成されるCu−Sn合金相を形成することができ、形成された電極の体積抵抗率がより低下する。
【0063】
(特定金属M含有粒子)
電極形成用組成物は、特定金属元素Mを含有する粒子(特定金属M含有粒子)の少なくとも1種を含む。ここで、特定金属元素Mは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、Ge、In、Sb、Tl、Pb、Bi及びPoからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。電極形成用組成物が、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子に加えて、特定金属M含有粒子を含有することにより、形成される電極中のSn−P−Oガラス相の抵抗率が低減され、又は熱処理(焼成)工程において、より高温での耐酸化性を発現させることができる。特定金属M含有粒子は、1種単独で使用してもよく、又2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
尚、本発明における特定金属M含有粒子は、前記リン含有銅合金粒子及び前記錫含有粒子以外の粒子である。
【0065】
特定金属M含有粒子とは、特定金属元素Mを5質量%以上含有する粒子であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。
【0066】
特定金属M含有粒子としては、特定金属元素Mからなる粒子及び特定金属元素Mの合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特定金属元素Mからなる粒子及び特定金属元素Mの含有率が5質量%以上である特定金属元素Mの合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0067】
Sn−P−Oガラス相との反応性、Cu−Sn合金相との反応性の観点から、特定金属元素Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、W、Pt、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Mn、Co、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、W、Pt、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよく、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Mn、Co、Zr、Mo、Ag、W、Pt、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。また、Na、K、Mg、Ca、Ba、Mn、Co、Ni、Cu、Mo、Ag、W、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、Na、K、Mg、Ca、Ba、Mn、Co、Cu、Mo、Ag、W、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよく、Na、K、Mg、Ca、Ba、Mn、Co、Mo、Ag、W、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0068】
更に、熱処理(焼成)して形成される電極の低抵抗率化の観点から、特定金属M含有粒子は、Ni、Mn、Ag、Ca、Mg、Bi、Cu、Mo、Au、W、Al、Ni−Cu合金、Ni−Cu−Zn合金、Cu−Bi合金、Cu−Ag合金及びCu−Zn合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で構成される粒子であることが特に好ましい。
【0069】
特定金属元素Mからなる粒子における特定金属元素Mの純度は、例えば、95質量%以上とすることができ、97質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0070】
特定金属元素Mの合金粒子は、特定金属元素Mを含む合金粒子であれば合金の種類は制限されない。また、2種類以上の特定金属元素Mを含む合金を用いてもよい。特定金属元素Mの合金粒子中の特定金属元素Mの含有率(2種類以上の特定金属元素Mが併用される場合は、その合計量の含有率)は、例えば、5質量%以上とすることができ、7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0071】
特定金属元素Mのうち、形成される電極中のSn−P−Oガラス相の抵抗率を低減するためのものとしては、Sn−P−Oガラス相との反応性の観点から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を用いることが好ましく、具体的には、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、Na、K、Mg、Ca及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0072】
特定金属元素Mのうち、Cu−Sn合金相と反応し、高温での耐酸化性を発現させるためのものとしては、Cu−Sn合金相との反応性、及び融点の観点から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属を用いることが好ましく、具体的には、Ti、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、Pt、Au、Al、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、Mn、Co、Ni、Cu、Mo、Ag、W、Au、Pb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0073】
特定金属元素Mの合金粒子としては、Cu−Sn合金、Cu−Zn合金、Cu−Au合金、Fe−Co合金、Fe−Mn合金、Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Cu−Zn合金、Ni−Cr合金、Ni−Cr−Ag合金等の粒子が挙げられる。特に、Ni−58Fe、Ni−60Cu、Ni−6Cu−20Zn等のニッケル合金粒子は、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子に対してより均一に反応することができるという点で、好適に用いることができる。尚、特定金属元素Mの合金粒子における表記は、例えばNi−AX−BY−CZの場合は、ニッケル合金粒子の中に、元素XがA質量%、元素YがB質量%、元素ZがC質量%含まれていることを示す。
【0074】
特定金属M含有粒子は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、Si、B、P、C、N、O、F、S、Cl、H等を挙げることができる。特定金属M含有粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、特定金属M含有粒子中に3質量%以下とすることができ、1質量%以下であることが好ましい。
【0075】
特定金属M含有粒子の粒子径としては特に制限はない。特定金属M含有粒子のD50%は、0.5μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜15μmであることがより好ましく、1.5μm〜15μmであることが更に好ましい。特定金属M含有粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、特定金属M含有粒子自身の耐酸化性が向上する傾向にある。特定金属M含有粒子のD50%を20μm以下とすることで、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子との接触面積が大きくなり、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子との反応が効果的に進む傾向にある。
尚、特定金属M含有粒子のD50%は、リン含有銅合金粒子の場合と同様にして測定する。
【0076】
特定金属M含有粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と形成される電極の低抵抗率化の観点から、特定金属M含有粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
【0077】
電極形成用組成物における特定金属M含有粒子の含有率は、特に制限されない。中でも、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子と特定金属M含有粒子との総含有率を100質量%としたときの特定金属M含有粒子の含有率が、4質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上60質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
上記含有率を4質量%以上とすることで、Cu−Sn−M合金相の形成をより均一に生じさせることができる。また上記含有率を70質量%以下とすることで、充分な体積のCu−Sn−M合金相を形成することができ、電極の体積抵抗率がより低下する。
【0078】
電極形成用組成物における、錫含有粒子と特定金属M含有粒子の含有比は特に制限されない。形成される電極のシリコン基板に対する密着性の観点から、錫含有粒子に対する特定金属M含有粒子の質量比(特定金属M含有粒子/錫含有粒子)は、0.1〜4.0であることが好ましく、0.2〜3.0であることがより好ましい。
【0079】
電極形成用組成物における、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子及び特定金属M含有粒子との含有比は特に制限されない。高温熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化及び電極のシリコン基板に対する密着性の観点から、リン含有銅合金粒子に対する錫含有粒子及び特定金属M含有粒子の総量の質量比〔(特定金属M含有粒子+錫含有粒子)/リン含有銅合金粒子〕は、0.3〜2.5であることが好ましく、0.5〜1.8であることがより好ましい。
【0080】
電極形成用組成物においては、耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子の総含有率が、70質量%以上94質量%以下であることが好ましく、74質量%以上88質量%以下であることがより好ましい。
【0081】
錫含有粒子の粒子径(D50%)と特定金属M含有粒子の粒子径(D50%)の比は特に制限されない。形成されるSn−P−Oガラス相の均一性及び形成される電極のシリコン基板に対する密着性の観点から、錫含有粒子の粒子径(D50%)に対する特定金属M含有粒子の粒子径(D50%)の比(特定金属M含有粒子/錫含有粒子)は、0.05〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましい。
【0082】
リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)と錫含有粒子の粒子径(D50%)の比は特に制限されない。高温熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化及び電極のシリコン基板に対する密着性の観点から、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対する錫含有粒子の粒子径(D50%)比(錫含有粒子/リン含有銅合金粒子)は、0.03〜30であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。
【0083】
リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)と特定金属M含有粒子の粒子径(D50%)の比は特に制限されない。高温熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対する特定金属M含有粒子の粒子径(D50%)比(特定金属M含有粒子/リン含有銅合金粒子)は、0.02〜20であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。
【0084】
(ガラス粒子)
電極形成用組成物は、ガラス粒子の少なくとも1種を含む。電極形成用組成物がガラス粒子を含むことにより、熱処理(焼成)において、形成した電極とシリコン基板との密着性が向上する。また
、特に太陽電池の受光面側の電極形成において、熱処理(焼成)時にいわゆるファイアースルーによって反射防止膜である窒化ケイ素膜が取り除かれ、電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが形成される。
【0085】
ガラス粒子は、形成される電極の低抵抗率化及び該電極とシリコン基板との密着性の観点から、軟化点が650℃以下であり、結晶化開始温度が650℃を超えることが好ましい。尚、軟化点は、熱機械分析装置(TMA)を用いて通常の方法によって測定され、結晶化開始温度は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて通常の方法によって測定される。
【0086】
電極形成用組成物を太陽電池の受光面側の電極の形成に用いる場合、ガラス粒子は、電極形成温度で軟化又は溶融し、窒化ケイ素で構成される反射防止膜に接触して窒化ケイ素を酸化して二酸化ケイ素を生成し、この二酸化ケイ素を取り込むことで、反射防止膜を除去可能なものであれば、当該技術分野において通常用いられるガラス粒子を特に制限なく用いることができる。
【0087】
一般に電極形成用組成物に含まれるガラス粒子は、二酸化ケイ素を効率よく取り込み可能であることから鉛を含むガラスから構成される。このような鉛を含むガラスとしては、特許第03050064号公報等に記載のものを挙げることができ、本発明においてもこれらを好適に使用することができる。
また、環境に対する影響を考慮すると、鉛を実質的に含まない鉛フリーガラスを用いることが好ましい。鉛フリーガラスとしては、特開2006−313744号公報の段落番号0024〜0025に記載の鉛フリーガラス、特開2009−188281号公報等に記載の鉛フリーガラスなどを挙げることができ、これらの鉛フリーガラスから適宜選択して本発明に適用することもまた好ましい。
【0088】
電極形成用組成物を太陽電池の受光面側の電極以外、例えば、裏面取出し電極、バックコンタクト型太陽電池素子におけるスルーホール電極及び裏面電極の形成に用いる場合には、ガラス粒子は、軟化点が650℃以下であり、結晶化開始温度が650℃を超えることが好ましい。このようなガラス粒子であれば、鉛のようなファイアースルーに必要な成分を含むことなく用いることができる。
【0089】
ガラス粒子を構成するガラス成分としては、例えば、酸化ケイ素(SiO、SiO
2等)、酸化リン(P
2O
5)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ホウ素(B
2O
3)、酸化バナジウム(V
2O
5)、酸化カリウム(K
2O)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化リチウム(Li
2O)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化スズ(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タングステン(WO
3)、酸化モリブデン(MoO
3)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ゲルマニウム(GeO
2)、酸化テルル(TeO
2)、酸化ルテチウム(Lu
2O
3)、酸化アンチモン(Sb
2O
3)、酸化銅(CuO等)、酸化鉄(FeO等)、酸化銀(AgO、Ag
2O等)及び酸化マンガン(MnO)が挙げられる。
【0090】
中でも、SiO
2、P
2O
5、Al
2O
3、B
2O
3、V
2O
5、Bi
2O
3、ZnO及びPbOからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることが好ましく、SiO
2、PbO、B
2O
3、Bi
2O
3及びAl
2O
3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることがより好ましい。このようなガラス粒子の場合には、軟化点がより効果的に低下する。更に、このようなガラス粒子は、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、及び特定金属M含有粒子との濡れ性が向上するため、熱処理(焼成)工程での前記粒子間の焼結が進み、より抵抗率の低い電極を形成することができる。
【0091】
他方、低接触抵抗率の観点からは、五酸化二リンを含むガラス粒子(リン酸ガラス、P
2O
5ガラス粒子等)であることが好ましく、五酸化二リンに加えて五酸化二バナジウムを更に含むガラス粒子(P
2O
5−V
2O
5ガラス粒子)であることがより好ましい。五酸化二バナジウムを更に含むことで、耐酸化性がより向上し、電極の抵抗率がより低下する。これは、例えば、五酸化二バナジウムを更に含むことでガラスの軟化点が低下することに起因すると考えることができる。
【0092】
五酸化二リン−五酸化二バナジウムガラス粒子(P
2O
5−V
2O
5ガラス粒子)を用いる場合、五酸化二バナジウムの含有率としては、ガラス粒子の総質量中、1質量%以上であることが好ましく、1質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0093】
ガラス粒子の粒子径としては特に制限はない。ガラス粒子のD50%が、0.5μm〜10μmであることが好ましく、0.8μm〜8μmであることがより好ましい。ガラス粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、電極形成用組成物の調製における作業性が向上する。ガラス粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極形成用組成物中にガラス粒子がより均一に分散し、熱処理(焼成)工程で効率よくファイアースルーを生じることができ、更に、形成される電極のシリコン基板との密着性も向上する傾向にある。
尚、ガラス粒子のD50%は、リン含有銅合金粒子の場合と同様にして測定する。
【0094】
ガラス粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と低抵抗率化の観点から、ガラス粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
【0095】
ガラス粒子の含有率としては電極形成用組成物の全質量中に0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜8質量%であることがより好ましく、1質量%〜8質量%であることが更に好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含むことで、より効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗率化が達成され、またリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子間の反応を促進させることができる。
【0096】
電極形成用組成物において、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、及び特定金属M含有粒子の総質量に対するガラス粒子の質量比〔ガラス粒子/(リン含有銅合金粒子+錫含有粒子+特定金属M含有粒子)〕が、0.01〜0.15であることが好ましく、0.03〜0.12であることがより好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含むことで、より効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗率化が達成され、またリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子間の反応を促進させることができる。
【0097】
更に、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対するガラス粒子の粒子径(D50%)の比(ガラス粒子/リン含有銅合金粒子)が、0.05〜100であることが好ましく、0.1〜20であることがより好ましい。かかる粒子径の比とすることで、より効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗率化が達成され、また、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子間の反応を促進させることができる。
【0098】
(溶剤及び樹脂)
電極形成用組成物は、溶剤の少なくとも1種と、樹脂の少なくとも1種とを含む。これにより電極形成用組成物の液物性(粘度、表面張力等)を、シリコン基板等に付与する際の付与方法に適した範囲内に調整することができる。
【0099】
溶剤としては特に制限はない。溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素溶剤;ジクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トリオキサン等の環状エーテル溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール溶剤;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノプロピオ
ネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリエチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の多価アルコールのエステル溶剤;ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのエーテル溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、及びフェランドレン等のテルペン溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
溶剤としては、電極形成用組成物をシリコン基板に形成する際の付与性(塗布性及び印刷性)の観点から、多価アルコールのエステル溶剤、テルペン溶剤及び多価アルコールのエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、多価アルコールのエステル溶剤及びテルペン溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0101】
樹脂としては熱処理(焼成)処理によって熱分解され得る樹脂であれば、当該技術分野において通常用いられる樹脂を特に制限なく用いることができ、天然高分子化合物であっても合成高分子化合物であってもよい。具体的には、樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース樹脂;ポリビニルアルコール化合物;ポリビニルピロリドン化合物;アクリル樹脂;酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体;ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂;フェノール変性アルキド樹脂、ひまし油脂肪酸変性アルキド樹脂等のアルキド樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ロジンエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
樹脂は、熱処理(焼成)における消失性の観点から、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0103】
樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。中でも樹脂の重量平均分子量は、5000以上500000以
下が好ましく、10000以上300000以下であることがより好ましい。樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、電極形成用組成物の粘度の増加が抑制できる傾向にある。これは例えば、樹脂をリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子に吸着させたときの立体的な反発作用が充分となり、これら粒子同士の凝集が抑制されるためと考えることができる。一方、樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂同士が溶剤中で凝集することが抑制され、電極形成用組成物の粘度の増加が抑制できる傾向にある。また樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂の燃焼温度が高くなることが抑制され、電極形成用組成物を熱処理(焼成)する際に樹脂が完全に燃焼されず異物として残存することが抑制され、より低抵抗な電極を形成することができる傾向にある。
【0104】
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B[東ソー(株)製、商品名])を用いて3次式で近似する。GPCの測定条件は、以下の通りである。
・装置:(ポンプ:L−2130型[(株)日立ハイテクノロジーズ製])、(検出器:L−2490型RI[(株)日立ハイテクノロジーズ製])、(カラムオーブン:L−2350[(株)日立ハイテクノロジーズ製])
・カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450 +・Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成(株)製、商品名)
・カラムサイズ:10.7mm×300mm(内径)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・試料濃度:10mg/2mL
・注入量:200μL
・流量:2.05mL/分
・測定温度:25℃
【0105】
電極形成用組成物において、溶剤と樹脂の含有率は、所望の液物性と使用する溶剤及び樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、溶剤と樹脂の総含有率が、電極形成用組成物の全質量中、3質量%以上29.9質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
溶剤と樹脂の総含有率が上記範囲内であることにより、電極形成用組成物をシリコン基板に付与する際の付与適性が良好になり、所望の幅及び高さを有する電極をより容易に形成することができる。
【0106】
電極形成用組成物においては、耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下であることが好ましく、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子の総含有率が74質量%以上88質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が0.5質量%以上8質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子の総含有率が74質量%以上88質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が1質量%以上8質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が7質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0107】
(フラックス)
電極形成用組成物は、フラックスの少なくとも1種を更に含有してもよい。フラックスを含むことで、リン含有銅合金粒子の表面に酸化膜が形成された場合、該酸化膜を除去し、熱処理(焼成)中のリン含有銅合金粒子の還元反応を促進させることができる。また熱処理(焼成)中の錫含有粒子の溶融も進むためリン含有銅合金粒子との反応が進み、結果として耐酸化性がより向上し、形成される電極の抵抗率がより低下する。更に、フラックスを含むことで電極とシリコン基板との密着性が向上するという効果も得られる。
【0108】
フラックスとしては、リン含有銅合金粒子の表面に形成される酸化膜を除去可能で、錫含有粒子の溶融を促進するものであれば特に制限はない。具体的には、脂肪酸、ホウ酸化合物、フッ化化合物、ホウフッ化化合物等を好ましいフラックスとして挙げることができる。フラックスは、1種単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
フラックスとしてより具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、ステアロール酸、プロピオン酸、酸化ホウ素、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化リチウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化リチウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
【0110】
中でも、熱処理(焼成)時の耐熱性(フラックスが熱処理(焼成)の低温時に揮発しない特性)及びリン含有銅合金粒子の耐酸化性の補完の観点から、ホウ酸カリウム及びホウフッ化カリウムがより好ましいフラックスとして挙げられる。
【0111】
電極形成用組成物がフラックスを含有する場合、フラックスの含有率としては、リン含有銅合金粒子の耐酸化性を効果的に発現させ、錫含有粒子の溶融を促進させる観点及び熱処理(焼成)完了時にフラックスが除去されて形成される空隙率の低減の観点から、電極形成用組成物の全質量中、0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.3質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜3.5質量%であることが更に好ましく、0.7〜3質量%であることが特に好ましく、1質量%〜2.5質量%であることが極めて好ましい。
【0112】
(その他の成分)
電極形成用組成物は、上述した成分に加え、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられるその他の成分を更に含有することができる。その他の成分としては、可塑剤、分散剤、界面活性剤、無機結合剤、金属酸化物、セラミック、有機金属化合物等を挙げることができる。
【0113】
<電極形成用組成物の製造方法>
電極形成用組成物の製造方法としては特に制限はない。リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、特定金属M含有粒子、ガラス粒子、溶剤、樹脂等を、通常用いられる分散方法及び混合方法を用いて、分散及び混合することで製造することができる。
分散方法及び混合方法は特に制限されず、通常用いられる分散方法及び混合方法から適宜選択して適用することができる。
【0114】
<電極形成用組成物を用いた電極の製造方法>
電極形成用組成物を用いて電極を製造する方法としては、電極形成用組成物を、電極を形成する領域に付与し、必要に応じて乾燥した後に、熱処理(焼成)することで所望の領域に電極を形成することができる。前記電極形成用組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば、大気中)で熱処理(焼成)を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。
【0115】
具体的には例えば、前記電極形成用組成物を用いて太陽電池用電極を形成する場合、電極形成用組成物はシリコン基板上に所望の形状となるように付与され、必要に応じて乾燥した後に、熱処理(焼成)されることで、抵抗率の低い太陽電池用電極を所望の形状に形成することができる。また、前記電極形成用組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば、大気中)で熱処理(焼成)を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。更に、前記電極形成用組成物を用いてシリコン基板上に形成された電極は、シリコン基板との密着性に優れ、良好なオーミックコンタクトを達成することができる。
【0116】
電極形成用組成物を付与する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができ、生産性の観点から、スクリーン印刷法が好ましい。
【0117】
電極形成用組成物をスクリーン印刷法によって付与する場合、電極形成用組成物は、ペースト状であることが好ましい。電極形成用組成物は、20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。尚、電極形成用組成物の粘度は、ブルックフィールドHBT粘度計を用いて25℃で測定される。
【0118】
電極形成用組成物の付与量は、形成する電極の大きさ等に応じて適宜選択することができる。例えば、電極形成用組成物の付与量としては、2g/m
2〜10g/m
2とすることができ、4g/m
2〜8g/m
2であることが好ましい。
【0119】
また、電極形成用組成物を用いて電極を形成する際の熱処理(焼成)条件としては、当該技術分野で通常用いられる熱処理条件を適用することができる。
一般に、熱処理(焼成)温度としては800℃〜900℃であるが、本発明の電極形成用組成物を用いる場合には、より低温での熱処理条件から一般的な熱処理条件までの広範な範囲で用いることができる。例えば、450℃〜900℃の広範な熱処理温度で良好な特性を有する電極を形成することができる。
また熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜選択することができ、例えば、1秒〜20秒とすることができる。
【0120】
熱処理装置としては、上記温度に加熱できるものであれば適宜採用することができ、赤外線加熱炉、トンネル炉等を挙げることができる。赤外線加熱炉は、電気エネルギーを電磁波の形で加熱材料に投入し熱エネルギーに変換されるため高効率であり、また、より短時間での急速加熱が可能である。更に、燃焼による生成物がなく、また非接触加熱であるため、生成する電極の汚染を抑えることが可能である。トンネル炉は、試料を自動で連続的に入り口から出口へ搬送し、熱処理(焼成)するため、炉体の区分けと搬送スピードの制御によって、より均一に熱処理(焼成)することが可能である。太陽電池素子の発電性能の観点からは、トンネル炉により熱処理することが好適である。
【0121】
<太陽電池素子及びその製造方法>
本発明の太陽電池素子は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に設けられる前記電極形成用組成物の熱処理物(焼成物)である電極と、を少なくとも有する。これにより、良好な特性を有する太陽電池素子が得られ、該太陽電池素子の生産性に優れる。
なお、本明細書において太陽電池素子とは、pn接合が形成されたシリコン基板と、シリコン基板上に形成された電極と、を有するものを意味する。
【0122】
以下、本発明の太陽電池素子の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。代表的な太陽電池素子の一例として、
図1、
図2及び
図3に、それぞれ、概略断面図、受光面の概略平面図及び裏面の概略平面図を示す。
【0123】
図1に概略断面図を示すように、半導体基板1の一方の面の表面付近にはn
+型拡散層2が形成され、n
+型拡散層2上に出力取出し電極4及び反射防止膜3が形成されている。また他方の面の表面付近にはp
+型拡散層7が形成され、p
+型拡散層7上に裏面出力取出し電極6及び裏面集電用電極5が形成されている。通常、太陽電池素子の半導体基板1には、単結晶又は多結晶シリコン基板が使用される。この半導体基板1には、ホウ素等が含有され、p型半導体を構成している。受光面側は太陽光の反射を抑制するために、NaOHとIPA(イソプロピルアルコール)とを含有するエッチング溶液を用いて、凹凸(テクスチャともいう、図示せず)が形成されている。その受光面側にはリン等がドーピングされ、n
+型拡散層2がサブミクロンオーダーの厚さで形成され、p型バルク部分との境界にpn接合部が形成されている。更に受光面側には、n
+型拡散層2上に窒化ケイ素等の反射防止膜3が、PECVD等によって厚さ90nm前後で設けられている。
【0124】
次に、
図2に概略を示す受光面側に設けられた受光面電極4、並びに
図3に概略を示す裏面に形成される裏面集電用電極5及び裏面出力取出し電極6の形成方法について説明する。
受光面電極4及び裏面出力取出し電極6は、前記電極形成用組成物から形成される。また裏面集電用電極5は、ガラス粒子を含むアルミニウム電極形成用組成物から形成されている。受光面電極4と、裏面集電用電極5及び裏面出力取出し電極6を形成する第一の方法として、前記電極形成用組成物及びアルミニウム電極形成用組成物をスクリーン印刷等にて所望のパターンで付与した後、大気中450℃〜900℃程度で一括して熱処理(焼成)により形成する方法が挙げられる。前記電極形成用組成物を用いることで、比較的低温で熱処理(焼成)しても、抵抗率及び接触抵抗率に優れる受光面電極4及び裏面出力取出し電極6を形成することができる。
【0125】
熱処理(焼成)の際に、受光面側では、受光面電極4を形成する前記電極形成用組成物に含まれるガラス粒子と、反射防止膜3とが反応(ファイアースルー)して、受光面電極4とn
+型拡散層2とが電気的に接続(オーミックコンタクト)される。
【0126】
本発明においては、前記電極形成用組成物を用いて受光面電極4が形成されることで、導電性金属として銅を含みながら、銅の酸化が抑制され、低抵抗率の受光面電極4が、良好な生産性で形成される。
【0127】
更に本発明においては、形成される電極は、Cu−Sn−M合金相及び必要に応じてCu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相とを含んで構成されることが好ましく、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn合金相又はCu−Sn−M合金相とシリコン基板との間に配置される(不図示)ことがより好ましい。これにより銅とシリコン基板におけるケイ素との反応が抑制され、低抵抗で密着性に優れる電極を形成することができる。
【0128】
また、裏面側では、熱処理(焼成)の際に、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物中のアルミニウムが半導体基板1の裏面に拡散して、p
+型拡散層7を形成することによって、半導体基板1と裏面集電用電極5、裏面出力取出し電極6との間にオーミックコンタクトを得ることができる。
【0129】
受光面電極4と、裏面集電用電極5及び裏面出力取出し電極6とを形成する第二の方法として、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物を先に付与し、乾燥後に大気中750℃〜900℃程度で熱処理(焼成)して裏面集電用電極5を形成した後に、本発明の電極形成用組成物を受光面側及び裏面側に付与し、乾燥後に大気中450℃〜650℃程度で熱処理(焼成)して、受光面電極4と裏面出力取出し電極6とを形成する方法が挙げられる。
【0130】
この方法は、例えば以下の場合に有効である。すなわち、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物を熱処理(焼成)する際に、650℃以下の熱処理(焼成)温度では、アルミニウム電極形成用組成物の組成によっては、アルミニウム粒子の焼結及び半導体基板1へのアルミニウム拡散量が不足して、p
+型拡散層を充分に形成できない場合がある。この状態では裏面における半導体基板1と裏面集電用電極5、裏面出力取出し電極6との間にオーミックコンタクトが充分に形成できなくなり、太陽電池素子としての発電性能が低下する場合がある。そこで、アルミニウム電極形成用組成物に最適な熱処理(焼成)温度(例えば750℃〜900℃)で裏面集電用電極5を形成した後、本発明の電極形成用組成物を付与し、乾燥後に比較的低温(450℃〜650℃)で熱処理(焼成)して、受光面電極4及び裏面出力取出し電極6を形成することが好ましい。
【0131】
また本発明の別の態様であるいわゆるバックコンタクト型太陽電池素子に共通する裏面側電極構造の概略平面図を
図4に、それぞれ別の態様のバックコンタクト型太陽電池素子である太陽電池素子の概略構造を示す斜視図を
図5、
図6及び
図7にそれぞれ示す。尚、
図5、
図6及び
図7は、それぞれ
図4におけるAA断面における斜視図である。
【0132】
図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子の半導体基板1には、レーザードリル、エッチング等によって、受光面側及び裏面側の両面を貫通したスルーホールが形成されている。また受光面側には光入射効率を向上させるテクスチャー(図示せず)が形成されている。更に、受光面側にはn型化拡散処理によるn
+型拡散層2と、n
+型拡散層2上に反射防止膜(図示せず)が形成されている。これらは従来のSi型太陽電池素子と同様の工程により製造される。
【0133】
次に、先に形成されたスルーホール内部に、本発明の電極形成用組成物が印刷法やインクジェット法により充填され、更に受光面側にも本発明の電極形成用組成物がグリッド状に付与され、スルーホール電極9及び受光面集電用電極8を形成する組成物層が形成される。
ここで、充填用と付与用に用いる電極形成用組成物は、粘度を始めとして、それぞれのプロセスに最適な組成のものを使用することが望ましいが、同じ組成の電極形成用組成物を用いて充填及び付与を一括で行ってもよい。
【0134】
一方、裏面側には、キャリア再結合を防止するためのn
+型拡散層2及びp
+型拡散層7が形成される。ここでp
+型拡散層7を形成する不純物元素として、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)等が用いられる。このp
+型拡散層7は、例えばBを拡散源とした熱拡散処理が、反射防止膜の形成前の工程において実施されることで形成されていてもよく、又は不純物元素としてAlを用いる場合には、電極形成用組成物の付与工程において、反対面側にアルミニウム電極形成用組成物を付与し、熱処理(焼成)して形成されていてもよい。
【0135】
裏面側には
図4の平面図で示すように、本発明の電極形成用組成物をそれぞれn
+型拡散層2上及びp
+型拡散層7上にストライプ状に付与することによって、裏面電極10及び11が形成される。ここで、アルミニウム電極形成用組成物を用いてp
+型拡散層7を形成する場合は、n
+型拡散層2上にのみ本発明の電極形成用組成物を用い、裏面電極を形成すればよい。
【0136】
その後乾燥して大気中450℃〜900℃程度で熱処理(焼成)して、受光面集電用電極8とスルーホール電極9、及び裏面電極10、11が形成される。また先述したように、裏面電極の一方をアルミニウム電極とする場合は、アルミニウムの焼結性及び裏面電極とp
+型拡散層7とのオーミックコンタクト性の観点から、先にアルミニウム電極形成用組成物を付与し、熱処理(焼成)するによって裏面電極の一方を形成し、その後、本発明の電極形成用組成物を付与し、充填し、熱処理(焼成)することで受光面集電用電極8とスルーホール電極9、及び裏面電極の他方を形成してもよい。
【0137】
また、
図6の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子は、受光面集電用電極を形成しないこと以外は、
図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子と同様にして製造することができる。すなわち
図6の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子において、本発明の電極形成用組成物は、スルーホール電極9と裏面電極10、11の形成に用いることができる。
【0138】
また、
図7の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子は、ベースとなる半導体基板1にn型シリコン基板を用いたことと、スルーホールを形成しないこと以外は、
図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子と同様にして製造することができる。すなわち
図7の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子において、本発明の電極形成用組成物は、裏面電極10、11の形成に用いることができる。
【0139】
なお、本発明の電極形成用組成物は、上記の太陽電池用電極の用途に限定されるものではなく、プラズマディスプレイの電極配線、シールド配線、セラミックスコンデンサ、アンテナ回路、各種センサー回路、半導体デバイスの放熱材料等の用途にも好適に使用することができる。
これらの中でも特にシリコンを含む基板上に電極を形成する場合に好適に用いることができる。
【0140】
<太陽電池>
本明細書において太陽電池とは、太陽電池素子の電極上にタブ線等の配線材料が設けられ、必要に応じて複数の太陽電池素子が配線材料を介して接続されて構成され、封止樹脂等で封止された状態のものを意味する。
本発明の太陽電池は、前記太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の電極上に配線材料が配置されて構成される。太陽電池は更に必要に応じて、配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結され、更に封止材で封止されて構成されていてもよい。
配線材料及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0142】
<実施例1>
(a)電極形成用組成物1の調製
7質量%のリンを含むリン含有銅合金を常法により調製し、これを
熔解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥し、分級した。分級した粉末を不活性ガスとブレンドして、脱酸素及び脱水処理し、7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を作製した。尚、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
【0143】
二酸化ケイ素(SiO
2)3部、酸化鉛(PbO)60部、酸化ホウ素(B
2O
3)18部、酸化ビスマス(Bi
2O
3)5部、酸化アルミニウム(Al
2O
3)5部、酸化亜鉛(ZnO)9部からなるガラス(以下、「G01」と略記することがある)を調製した。得られたガラスG01の軟化点は420℃、結晶化温度は650℃を超えていた。
得られたガラスG01を用いて、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG01粒子を得た。またその形状は略球状であった。
【0144】
なお、ガラス粒子形状は、(株)日立ハイテクノロジーズ製TM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。ガラス粒子の平均粒子径はベックマン・コールター(株)製LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラスの軟化点は(株)島津製作所製DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。
【0145】
上記で得られたリン含有銅合金粒子を33.3部、錫粒子(Sn;粒子径(D50%)は5.0μm;純度99.9%)を22.8部、ニッケル粒子(Ni;粒子径(D50%)は5.0μm;純度99.9%)を22.2部、ガラスG01粒子を7.8部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を11.7部、ポリアクリル酸エチル(EPA、藤倉化成製、重量平均分子量:155000)を2.2部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、電極形成用組成物1を調製した。
【0146】
(b)太陽電池素子の作製
受光面にn
+型拡散層、テクスチャ及び反射防止膜(窒化ケイ素膜)が形成された厚さ190μmのp型半導体基板を用意し、125mm×125mmの大きさに切り出した。その受光面上に、上記で得られた電極形成用組成物1を
図2に示すような電極パターンとなるようにスクリーン印刷法を用いて印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、熱処理(焼成)後の厚さが20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度及び印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0147】
続いて、受光面とは反対側の面(以下、「裏面」ともいう)上に、電極形成用組成物1とアルミニウム電極形成用組成物を、上記と同様にスクリーン印刷で、
図3に示すような電極パターンとなるように印刷した。
電極形成用組成物1からなる裏面出力取出し電極6のパターンは、123mm×5mmで構成され、計2ヶ所印刷した。尚、裏面出力取出し電極6は熱処理(焼成)後の厚さが20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度及び印圧)を適宜調整した。またアルミニウム電極形成用組成物を、裏面出力取出し電極6以外の全面に印刷して裏面集電用電極5のパターンを形成した。また熱処理(焼成)後の裏面集電用電極5の厚さが30μmとなるように、アルミニウム電極形成用組成物の印刷条件を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた。
【0148】
続いてトンネル炉(ノリタケ社製、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、最高温度800℃で保持時間10秒の熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子1を作製した。
【0149】
<実施例2>
実施例1において、電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度800℃で10秒間から、最高温度850℃で8秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子2を作製した。
【0150】
<実施例3>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにマンガン粒子(Mn)を用い、その粒子径を3μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物3を調製し、太陽電池素子3を作製した。
【0151】
<実施例4>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりに銀粒子(Ag)を用い、その粒子径を1.5μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物4を調製し、太陽電池素子4を作製した。
【0152】
<実施例5>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにカルシウム粒子(Ca)を用い、その粒子径を10μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物5を調製し、太陽電池素子5を作製した。
【0153】
<実施例6>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにマグネシウム粒子(Mg)を用い、その粒子径を3.0μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物6を調製し、太陽電池素子6を作製した。
【0154】
<実施例7>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにビスマス粒子(Bi)を用い、その粒子径を5.0μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物7を調製し、太陽電池素子7を作製した。
【0155】
<実施例8>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりに銅粒子(Cu)を用い、その粒子径を5.0μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物8を調製し、太陽電池素子8を作製した。
【0156】
<実施例9>
実施例1において、錫含有粒子として錫粒子(Sn)の代わりにSn−4Ag−0.5Cu(Snに4質量%のAgと0.5質量%のCuを含む合金)からなる錫合金粒子を用い、その粒子径(D50%)を8.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、
電極形成用組成物9を調製し、太陽電池素子9を作製した。
【0157】
<実施例10>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにNi−60Cu(Niに60質量%のCuを含む合金)からなるニッケル合金粒子を用い、その粒子径(D50%)を7.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物10を調製し、太陽電池素子10を作製した。
【0158】
<実施例11>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni、粒子径10μm)に加えて銀粒子(Ag)を用い、その粒子径を1.5μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物11を調製し、太陽電池素子11を作製した。
【0159】
<実施例12>
実施例1において、特定金属M含有粒子としてニッケル粒子(Ni、粒子径10μm)に加えてタンタル粒子(Ta)を用い、その粒子径を5.0μmとして、電極形成用組成物の各成分の含有量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物12を調製し、太陽電池素子12を作製した。
【0160】
<実施例13>
実施例1において、ガラス粒子の組成をガラスG01から、以下に示すガラスG02に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物13を調製し、太陽電池素子13を作製した。
ガラスG02は、酸化バナジウム(V
2O
5)45部、酸化リン(P
2O
5)24.2部、酸化バリウム(BaO)20.8部、酸化アンチモン(Sb
2O
3)5部、酸化タングステン(WO
3)5部からなるように調製した。またこのガラスG02の軟化点は492℃で、結晶化開始温度は650℃を超えていた。
得られたガラスG02を用いて、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG02粒子を得た。またその形状は略球状であった。
【0161】
<実施例14>
実施例1において、溶剤をジエチレングリコールモノブチルエーテルからテルピネオール(Ter)に、また樹脂をポリアクリル酸エチルからエチルセルロース(EC、ダウ・ケミカル日本社製、重量平均分子量:190000)にそれぞれ変更した。具体的には各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子を33.3部、錫粒子を22.8部、ニッケル粒子を22.2部、ガラスG01粒子を7.8部、テルピネオール(Ter)を13.5部、エチルセルロース(EC)を0.4部と変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物14を調製し、太陽電池素子14を作製した。
【0162】
<実施例15〜21>
実施例1において、リン含有銅合金粒子のリン含有量、粒子径(D50%)及びその含有量、錫含有粒子の組成、粒子径(D50%)及びその含有量、特定金属M含有粒子の組成、粒子径(D50%)及びその含有量、ガラス粒子の種類及びその含有量、溶剤の種類及びその含有量、並びに樹脂の種類及びその含有量を表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物15〜21をそれぞれ調製した。
【0163】
次いで、得られた電極形成用組成物15〜21をそれぞれ用い、熱処理の温度及び時間を表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして所望の電極が形成された太陽電池素子15〜21をそれぞれ作製した。
【0164】
<比較例1>
実施例1における電極形成用組成物1の調製において、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子を用いず、代わりに銀粒子(Ag)を用い、その粒子径(D50%)を3.0μmとし、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物C1を調製した。
リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子を含まない電極形成用組成物C1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子C1を作製した。
【0165】
<比較例2>
実施例1における電極形成用組成物1の調製において、リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子を用いず、代わりに銅粒子(Cu)を用い、その粒子径(D50%)を5.0μmとし、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物C2を調製した。
リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子を含まない電極形成用組成物C2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子C2を作製した。
【0166】
<比較例3>
実施例1における電極形成用組成物1の調製において、リンの含有量の異なるリン含有銅合金粒子(リン含有率:1質量%)を用い、そして錫含有粒子及び特定金属M含有粒子としてのニッケル粒子(Ni)を用いずに、表1に示す組成の電極形成用組成物C3を調製した。
電極形成用組成物C3を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C3を作製した。
【0167】
<比較例4>
実施例1における電極形成用組成物1の調製において、錫含有粒子及び特定金属M含有粒子としてのニッケル粒子(Ni)を用いずに、表1に示す組成の電極形成用組成物C4を調製した。
電極形成用組成物C4を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C4を作製した。
【0168】
<比較例5>
実施例1における電極形成用組成物1の調製において、リン含有銅合金粒子の代わりに銅粒子(純度99.5%、粒子径(D50%)5.0μm、含有量33.3部)を用いて、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物C5を調製した。
電極形成用組成物C5を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C5を作製した。
【0169】
【表1】
【0170】
<評価>
作製した太陽電池素子の評価は、擬似太陽光として(株)ワコム電創製WXS−155S−10、電流―電圧(I−V)評価測定器としてI−V CURVE TRACER MP−160(EKO INSTRUMENT社製)の測定装置を組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すJsc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、FF(フィルファクター)、Eff(変換効率)は、それぞれJIS−C−8912、JIS−C−8913及びJIS−C−8914に準拠して測定を行うことで得られたものである。両面電極構造の太陽電池素子において、得られた各測定値を、比較例1(太陽電池素子C1)の測定値を100.0とした相対値に換算して表2に示した。尚、比較例2においては、形成された電極の抵抗率が大きくなり、評価不能であった。その理由は、銅粒子の酸化によるものと考えられる。
【0171】
更に調製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した受光面電極の断面を走査型電子顕微鏡Miniscope TM−1000((株)日立製作所製)を用いて、加速電圧15kVで観察し、電極内のCu−Sn合金相、CuとSnと特定金属元素Mからなる合金相(Cu−Sn−M合金相)、Sn−P−Oガラス相の有無及びSn−P−Oガラス相の形成部位を調査した。その結果も併せて表2に示した。
【0172】
【表2】
【0173】
表2から、比較例3〜5においては、比較例1よりも発電性能が劣化したことが分かる。これは例えば以下のように考えられる。比較例4においては、錫含有粒子が含まれていないために、熱処理(焼成)中にシリコン基板におけるケイ素と銅との相互拡散が起こり、基板内のpn接合特性が劣化したことが考えられる。また比較例5においては、リン含有銅合金粒子を用いずに純銅(リン含有量が0質量%)を用いたために、熱処理(焼成)中に錫含有粒子と反応する前に銅粒子が酸化し、Cu−Sn合金相が形成されずに電極の抵抗が増加したことが考えられる。
【0174】
一方、実施例1〜21で作製した太陽電池素子の発電性能は、比較例1の太陽電池素子の測定値と比べて、ほぼ同等であった。