(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)とを(A)/(B1)=99/1〜60/40(体積比)で含有する含フッ素共重合体組成物からなり、
前記非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)が、平均分散粒子径8μm以下の微粒子として前記含フッ素共重合体組成物中に含まれ、
前記含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が、90MPa以上であることを特徴とする耐熱電線用被覆材料。
溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と、450℃以下に融点を有しない非フッ素系樹脂(B2)とを(A)/(B2)=99/1〜60/40(体積比)で含有する含フッ素共重合体組成物からなり、
前記非フッ素系樹脂(B2)が、平均分散粒子径8μm以下の微粒子として前記含フッ素共重合体組成物中に含まれ、
前記含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が、90MPa以上であることを特徴とする耐熱電線用被覆材料。
溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と、平均粒子径が8μm以下で、450℃以下に融点を有しない非フッ素系樹脂(B2)とを(A)/(B2)=99/1〜60/40(体積比)で混練して得られる含フッ素共重合体組成物からなり、
前記含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が、90MPa以上であることを特徴とする耐熱電線用被覆材料。
前記含フッ素共重合体(A)が、カルボニル基、カーボネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、カルボニルジオキシ基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、およびイソシアネート基からなる群より選ばれる1つ以上の反応性官能基を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の耐熱電線用被覆材料。
前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく構成単位(a1)と、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーに基づく構成単位(a2)と、フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレンを除く。)に基づく構成単位(a3)とを含有し、
前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)と、前記構成単位(a3)の合計モル量に対して、構成単位(a1)が50〜99.89モル%で、構成単位(a2)が0.01〜5モル%で、構成単位(a3)が0.1〜49.99モル%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の耐熱電線用被覆材料。
前記含フッ素共重合体(A)の372℃、49N荷重下での溶融流れ速度が、0.5〜15g/10分である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の耐熱電線用被覆材料。
前記含フッ素共重合体組成物が、硫酸水50wt%の浸漬試験において、48時間浸漬させたときの引張伸度保持率が80%以上、および純水100℃で150時間浸漬させたときの引張伸度保持率が70%以上であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の耐熱電線被覆材料。
請求項1または2に記載の耐熱電線用被覆材料の製造方法であって、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)とを400℃以上450℃未満の温度で溶融混練して含フッ素共重合体組成物を調製することを特徴とする、耐熱電線用被覆材料の製造方法。
請求項3〜5のいずれか一項に記載の耐熱電線用被覆材料の製造方法であって、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と非フッ素系樹脂(B2)とを400℃以上450℃未満の温度で溶融混練して含フッ素共重合体組成物を調製することを特徴とする、耐熱電線用被覆材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の耐熱電線用被覆材料(以下、「被覆材料」ともいう。)は、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)とを含有する含フッ素共重合体組成物からなる。含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との比率は、(A)/(B1)=99/1〜60/40(体積比)であり、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系樹脂(B2)との比率は、(A)/(B2)=99/1〜60/40(体積比)である。
【0011】
[含フッ素共重合体(A)]
本発明の耐熱電線用被覆材料である含フッ素共重合体組成物は、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)を含有する。
溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)は、成形加工性等の点からは、該共重合体の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度(Melt Flow Rate:以下、「MFR」という。)が、0.1〜1000g/10分となる温度が存在する共重合体であることが好ましい。MFRは、49N荷重下で測定される。MFRは含フッ素共重合体(A)の分子量の目安であり、MFRが大きいと分子量が低く、小さいと分子量が大きいことを示す。
含フッ素共重合体(A)は、該共重合体の融点よりも20℃以上高い温度において、MFRが0.5〜100g/10分となる温度が存在する共重合体であることがより好ましく、1〜30g/10分となる温度が存在する共重合体であることがさらに好ましく、5〜20g/10分となる温度が存在する共重合体であることが最も好ましい。MFRが上記範囲の下限値以上であると、含フッ素共重合体組成物の成形加工性や、該含フッ素共重合体組成物から形成された被覆の表面の平滑性、外観がより優れ、上記範囲の上限値以下であると、該含フッ素共重合体(A)を含有する含フッ素共重合体組成物の機械強度がより優れる。
【0012】
含フッ素共重合体組成物から形成された被覆の耐スクレープ摩耗特性が優れる点からは、含フッ素共重合体(A)の372℃、49N荷重下におけるMFRは、0.5〜15g/10分であることが好ましく、1〜15g/10分がより好ましく、5〜13g/10分が特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)のMFRは、上述のとおり、分子量の目安である。MFRを小さくするためには、含フッ素共重合体(A)を熱処理して架橋構造を形成し、分子量を上げる方法;含フッ素共重合体(A)を製造する際のラジカル重合開始剤の使用量を減らす方法;等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる含フッ素共重合体(A)は、下記式(1)を満たす蓋然性が高い。
下記式(1)を満たす含フッ素共重合体(A)を用いることにより、含フッ素共重合体組成物が後述の非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)を含む場合、該非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)が平均分散粒子径8μm以下の微粒子として含フッ素共重合体組成物中に分散しやすい。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)が平均分散粒子径8μm以下の微粒子として分散した含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用い、電線の芯線を被覆すると、ウエルドラインからの裂けを発生することなく被覆できる。また、電線の耐スクレープ摩耗特性が優れる。
同様に、下記式(1)を満たす含フッ素共重合体(A)を用いることにより、含フッ素共重合体組成物が後述の非フッ素系樹脂(B2)を含む場合、該非フッ素系樹脂(B2)が凝集せずに、含フッ素共重合体組成物中に平均分散粒子径8μm以下の微粒子として分散しやすい。非フッ素系樹脂(B2)が平均分散粒子径8μm以下の微粒子として分散した含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用い、電線の芯線を被覆すると、ウエルドラインからの裂けを発生することなく被覆できる。また、電線の耐スクレープ摩耗特性が優れる。非フッ素系樹脂(B2)として、平均粒子径が8μm以下の粉体を用いることにより、非フッ素系樹脂(B2)が含フッ素共重合体組成物中に平均分散粒子径8μm以下の微粒子として分散した含フッ素共重合体組成物を得ることができる。
【0014】
また、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)を含む該含フッ素共重合体組成物は、高温での弾性率が優れ、200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が90MPa以上となりやすい。そのため、該含フッ素共重合体組成物からなる被覆材料で形成された被覆を備えた電線を200℃以上で長期間高温に暴露させても、被覆の形状を保持できる。200℃での貯蔵弾性率が90MPaを下回る場合は、例えば275℃の耐ストレスクラック試験でのクラックや剥離が生じない場合でも、被覆が伸びたり、被覆の表面外観が悪化したりし、被覆状態が変化する傾向がある。含フッ素共重合体組成物が後述の非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)を含む場合、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径及び200℃での含フッ素共重合体組成物の貯蔵弾性率が上記規定を満たすと、耐ストレスクラック性に優れ、耐ストレスクラック試験後の外観変化が少ない被覆を形成できる。同様に、含フッ素共重合体組成物が後述の非フッ素系樹脂(B2)を含む場合、該非フッ素系樹脂(B2)の平均分散粒子径及び200℃での含フッ素共重合体組成物の貯蔵弾性率が上記規定を満たすと、耐ストレスクラック性に優れ、耐ストレスクラック試験後の外観変化が少ない被覆を形成できる。これらの含フッ素共重合体組成物は、フッ素樹脂に基づく柔軟性も維持できる。
【0015】
αb−αa≧5(ppm/℃)…(1)
【0016】
式(1)中、αaは、含フッ素共重合体(A)の線膨張係数を示し、αbは、含フッ素共重合体(A)を混練機において400℃で10分間溶融混練した後の該含フッ素共重合体(A)の線膨張係数を示す。
ここでの「400℃」との温度は、含フッ素共重合体(A)自身の温度である。また、「400℃で10分間溶融混練する」との条件は、含フッ素共重合体(A)を混練機に投入、昇温し、含フッ素共重合体(A)が397℃に到達した時点から10分間にわたって、含フッ素共重合体(A)を400±3℃(すなわち、397〜403℃)の範囲内で溶融混練することをいう。10分間溶融混練した後には、含フッ素共重合体(A)を混練機から取り出し、室温で放置して降温する。その後、該含フッ素共重合体(A)について、線膨張係数αbを測定する。溶融混練時のサンプル量は、上記条件内で溶融混錬できれば、特に制限されるものではない。
【0017】
線膨張係数αaの測定には、含フッ素共重合体(A)をプレス成形(プレス条件:加工温度380℃、圧力10MPa、プレス時間5分間)して得られたシートを切断して得た4mm×55mm×0.25mmの短冊状のサンプルを用いる。
線膨張係数の測定は、該サンプルをオーブンにて250℃で2時間乾燥させ、サンプルの状態を調整した後に実施する。測定には、SII社製熱機械分析装置(TMA/SS6100)を用い、空気雰囲気下、チャック間距離20mm、2.5gの負荷荷重をかけながら、30℃から250℃まで5℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの線膨張に伴う変位量を測定する。測定終了後、50℃から100℃までの間のサンプルの変位量から、線膨張係数αa(ppm/℃)を求める。
線膨張係数αbの測定は、混練機において上述のように400℃で10分間溶融混練した後の含フッ素共重合体(A)のプレス成形品から切り出されたサンプルを用いる以外は、線膨張係数αaと同様の方法で行う。
【0018】
含フッ素共重合体(A)は、高温での弾性率がより優れ、耐ストレスクラック性がより良好な被覆を形成可能な含フッ素共重合体組成物が得られやすい点から、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましい。また、含フッ素共重合体(A)は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
また、含フッ素共重合体(A)の線膨張係数αaは、寸法安定性の点から、0〜250(ppm/℃)が好ましく、0〜200(ppm/℃)がより好ましい。
αb−αa≧10(ppm/℃)…(2)
αb−αa≧50(ppm/℃)…(3)
αb−αa≦150(ppm/℃)…(4)
【0019】
(αb−αa)値が上記範囲を満足する含フッ素共重合体(A)としては、カルボニル基、カーボネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、カルボニルジオキシ基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、イソシアネート基からなる群より選ばれる1つ以上の反応性官能基を有する共重合体等が挙げられる。反応性官能基を有する含フッ素共重合体(A)は、その(αb−αa)値が上記範囲を満足しやすい。
反応性官能基としては、カーボネート基、カルボニルジオキシ基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、または酸無水物残基が好ましく、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、または酸無水物残基がより好ましい。
ハロホルミル基としては、フルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。また、アルコキシカルボニル基(エステル基ともいう。)としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が好ましい。
【0020】
含フッ素共重合体(A)の有する反応性官能基としては、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相容性が優れ、また、非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる点から、酸無水物残基であることが最も好ましい。
【0021】
含フッ素共重合体(A)の反応性官能基の量が増加すると、(αb−αa)値も増加する傾向となる。それ故、含フッ素共重合体(A)の有する反応性官能基の量は、含フッ素共重合体(A)の(αb−αa)値と相関すると考えられる。(αb−αa)値が上記範囲を満足するためには、反応性官能基の含有量が、含フッ素共重合体(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対し10〜60000個が好ましい。反応性官能基の含有量は、含フッ素共重合体(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対し100〜10000個がより好ましく、300〜5000個が最も好ましい。
【0022】
含フッ素共重合体(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対する反応性官能基の含有量(個数)は、NMR、赤外吸収スペクトル分析等の方法により、測定できる。例えば、特開2007−314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて反応性官能基を有する構成単位の割合を求め、該割合から、反応性官能基の含有量を算出することができる。
【0023】
反応性官能基を有する含フッ素共重合体(A)の製造方法としては、(1)重合反応で含フッ素共重合体(A)を製造する際に、反応性官能基を有するモノマーを使用する方法、(2)反応性官応基を有するラジカル重合開始剤や連鎖移動剤を用いて、重合反応で含フッ素共重合体(A)を製造する方法、(3)反応性官能基を有しない含フッ素共重合体を加熱して、該共重合体を部分的に熱分解することで、反応性官能基(例えばカルボニル基。)を生成させ、反応性官能基を有する含フッ素共重合体(A)を得る方法、(4)反応性官能基を有しない含フッ素共重合体に、官能基を有するモノマーをグラフト重合して、該共重合体に反応性官能基を導入する方法、などが挙げられる。反応性官能基は、含フッ素共重合体(A)の主鎖末端および側鎖の少なくとも一方に位置する。
【0024】
反応性官能基を有する含フッ素共重合体(A)の製造方法としては、(1)の方法が好ましい。
酸無水物残基を有する含フッ素共重合体(A)としては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)に基づく構成単位(a1)と、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーに基づく構成単位(a2)と、フッ素モノマー(ただし、TFEを除く。)に基づく構成単位(a3)とを含有する共重合体が好ましい。ここで、構成単位(a2)の有する酸無水物残基が反応性官能基に相当する。
【0025】
構成単位(a2)を形成する、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーとしては、無水イタコン酸(以下、「IAH」ともいう。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」ともいう。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」ともいう。)、無水マレイン酸等が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上用いてもよい。なかでも、IAH、CAH、およびNAHからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。IAH、CAH、およびNAHからなる群から選ばれる1種以上を用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11−193312号公報参照。)を用いることなく、酸無水物残基を含有する含フッ素共重合体(A)を容易に製造できる。IAH、CAH、およびNAHのなかでは、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相容性が優れ、また、非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる点から、NAHがより好ましい。
【0026】
構成単位(a3)を形成するフッ素モノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」ともいう。)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」ともいう。)等のフルオロオレフィン、CF
2=CFOR
f1(ただし、R
f1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基。)、CF
2=CFOR
f2SO
2X
1(R
f2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X
1はハロゲン原子又は水酸基。)、CF
2=CFOR
f3CO
2X
2(ここで、R
f3は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X
2は水素原子又は炭素数3以下のアルキル基。)、CF
2=CF(CF
2)
pOCF=CF
2(ここで、pは1又は2。)、CH
2=CX
3(CF
2)
qX
4(ここで、X
3は水素原子又はフッ素原子、qは2から10の整数、X
4は水素原子又はフッ素原子。)及びペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0027】
これらフッ素モノマーのなかでも、VdF、CTFE、HFP、CF
2=CFOR
f1及びCH
2=CX
3(CF
2)
qX
4からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、CF
2=CFOR
f1、又はHFPがより好ましい。
CF
2=CFOR
f1としては、CF
2=CFOCF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2CF
3、CF
2=CFO(CF
2)
8F等が挙げられ、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
3(以下、「PPVE」ともいう。)が好ましい。
CH
2=CX
3(CF
2)
qX
4としては、CH
2=CH(CF
2)
2F、CH
2=CH(CF
2)
3F、CH
2=CH(CF
2)
4F、CH
2=CF(CF
2)
3H、CH
2=CF(CF
2)
4H等が挙げられ、CH
2=CH(CF
2)
4F又はCH
2=CH(CF
2)
2Fが好ましい。
【0028】
含フッ素共重合体(A)は、構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との合計モル量に対して、構成単位(a1)が50〜99.89モル%で、構成単位(a2)が0.01〜5モル%で、構成単位(a3)が0.1〜49.99モル%であることが好ましく、構成単位(a1)が50〜99.4モル%で、構成単位(a2)が0.1〜3モル%で、構成単位(a3)が0.5〜49.9モル%であることがより好ましく、構成単位(a1)が50〜98.9モル%で、構成単位(a2)が0.1〜2モル%で、構成単位(a3)が1〜49.9モル%であることが特に好ましい。
【0029】
各構成単位の含有量が上記範囲内であると、含フッ素共重合体(A)は、耐熱性、耐薬品性に優れ、含フッ素共重合体組成物は高温での弾性率に優れる。
特に、構成単位(a2)の含有量が上記範囲内であると、含フッ素共重合体(A)の有する酸無水物残基の量が適切な量となり、含フッ素共重合体(A)は非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相容性に優れ、また、非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる。
構成単位(a3)の含有量が上記範囲内であると、含フッ素共重合体(A)は成形性に優れ、含フッ素共重合体組成物からなる被覆は、耐ストレスクラック性等の機械物性により優れる。
なお、構成単位(a2)の含有量が、構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との合計モル量に対して0.01モル%とは、該含フッ素共重合体(A)の反応性官能基の含有量が含フッ素共重合体(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対して100個であることに相当する。構成単位(a2)の含有量が、構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との合計モル量に対して5モル%とは、該含フッ素共重合体(A)の反応性官能基の含有量が含フッ素共重合体(A)の主鎖炭素数1×10
6個に対して50000個であることに相当する。
【0030】
構成単位(a2)を有する含フッ素共重合体(A)には、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーが一部加水分解し、その結果、酸無水物残基に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等。)に基づく構成単位が含まれる場合がある。該ジカルボン酸に基づく構成単位が含まれる場合、該構成単位の含有量は、構成単位(a2)に含まれるものとする。
また、各構成単位の含有量は、含フッ素共重合体(A)の溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析等により、算出できる。
【0031】
含フッ素共重合体(A)は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に加えて、フッ素原子を有しないモノマーである、非フッ素モノマー(ただし、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーを除く。)に基づく構成単位(a4)を有していてもよい。
非フッ素モノマーとしては、エチレン、プロピレン等の炭素数3以下のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられ、1種以上を使用できる。なかでも、エチレン、プロピレン、又は酢酸ビニルが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0032】
含フッ素共重合体(A)が構成単位(a4)を含有する場合、構成単位(a4)の含有量は、構成単位(a1)と構成単位(a2)と構成単位(a3)との合計モル量を100モルとした際に、5〜90モルが好ましく、5〜80モルがより好ましく、10〜65モルが最も好ましい。
また、含フッ素共重合体(A)の全構成単位の合計モル量を100モル%とした際に、構成単位(a1)〜(a3)の合計モル量は60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、68モル%以上が最も好ましい。好ましい上限値は、100モル%である。
【0033】
含フッ素共重合体(A)の好ましい具体例としては、TFE/PPVE/NAH共重合体、TFE/PPVE/IAH共重合体、TFE/PPVE/CAH共重合体、TFE/HFP/IAH共重合体、TFE/HFP/CAH共重合体、TFE/VdF/IAH共重合体、TFE/VdF/CAH共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/IAH/E共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/CAH/エチレン共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/CAH/エチレン共重合体、CTFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/IAH/エチレン共重合体、CTFE/CH
2=CH(CF
2)
4F/CAH/エチレン共重合体、CTFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/IAH/エチレン共重合体、CTFE/CH
2=CH(CF
2)
2F/CAH/エチレン共重合体等が挙げられる。
【0034】
含フッ素共重合体(A)の製造方法としては、特に制限はないが、例えばラジカル重合開始剤を用いる重合方法が好ましい。該重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶剤とを使用する懸濁重合、水性媒体と乳化剤とを使用する乳化重合が挙げられ、なかでも溶液重合が好ましい。
【0035】
ラジカル重合開始剤としては、その半減期が10時間である温度が、0〜100℃である開始剤が好ましく、20〜90℃である開始剤がより好ましい。
具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF
2)
rCOO)
2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0036】
重合時には、含フッ素共重合体(A)の溶融粘度を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。
連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
【0037】
また、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の少なくとも一方として、上述したように、反応性官応基を有する化合物を用いてもよい。これにより、製造される含フッ素共重合体(A)に、反応性官能基を導入することができる。
このようなラジカル重合開始剤としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートなどが挙げられ、連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0038】
溶液重合で使用される溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、クロロヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル等が用いられる。炭素数は、4〜12が好ましい。
ペルフルオロカーボンの具体例としては、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。
ヒドロフルオロカーボンの具体例としては、1−ヒドロペルフルオロヘキサン等が挙げられる。
クロロヒドロフルオロカーボンの具体例としては、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
ヒドロフルオロエーテルの具体例としては、メチルペルフルオロブチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチル2,2,1,1−テトラフルオロエチルエーテル等が挙げられる。
【0039】
重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
構成単位(a2)を有する含フッ素共重合体(A)を重合する場合、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーの重合中の濃度は、全モノマーに対して0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜2モル%が最も好ましい。該モノマーの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向があり、上記範囲にあると、製造時の重合速度が適度で、かつ、得られる含フッ素共重合体(A)は、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相容性に優れ、また、非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる。重合中、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素モノマーが重合で消費されるに従って、消費された量を連続的または断続的に重合槽内に供給し、該モノマーの濃度を上記範囲内に維持することが好ましい。
【0040】
[非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)および非フッ素系樹脂(B2)]
本発明の耐熱電線用被覆材料である含フッ素共重合体組成物は、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)を含有する。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)を含有すると、含フッ素共重合体組成物の200℃における貯蔵弾性率が90MPa以上となりやすく、例えば250℃を超える環境下での耐ストレスクラック性に優れる被覆を形成しやすい。また、該被覆が形成された電線の耐スクレープ摩耗特性が優れる。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、含フッ素共重合体組成物を混練することにより、平均分散粒子径8μm以下で含フッ素共重合体組成物中に分散する。非フッ素系樹脂(B2)は、あらかじめ平均粒子径8μm以下とされたパウダー状、フィブリル状等の粉体であり、含フッ素共重合体組成物を混練することにより、平均分散粒子径8μm以下で含フッ素共重合体組成物中に分散する。
【0041】
(非フッ素系熱可塑性樹脂(B1))
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、分子中にフッ素原子を含まない熱可塑性樹脂である。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)としては、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(以下、「PEEK」ともいう。)、ポリエーテルイミド(以下、「PEI」ともいう。)、半芳香族ポリアミド、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリルゴム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−フェニルマレイミド共重合体、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド(以下、「PAI」ともいう。)、熱可塑性ポリイミド(以下、「TPI」ともいう。)等が挙げられる。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)としては、高温での弾性率に優れ、200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が90MPa以上の含フッ素共重合体組成物が得られやすい点から、TPIが好ましい。
【0042】
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、後述の混練温度、49N荷重下におけるMFRが、0.5〜200g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分がより好ましく、3〜50g/10分が最も好ましい。MFRが上記範囲内であると、含フッ素共重合体(A)との混練性に優れ、含フッ素共重合体組成物から形成された被覆の表面の平滑性、被覆の機械強度がより優れる。
【0043】
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、平均分散粒子径8μm以下の微粒子として含フッ素共重合体組成物中に分散している。本明細書において平均分散粒子径は、該含フッ素共重合体組成物のプレス成形品の切断面を顕微鏡観察することにより、求められる。
【0044】
(非フッ素系樹脂(B2))
非フッ素系樹脂(B2)は、分子中にフッ素原子を含まず、450℃以下に融点を有しない樹脂である。非フッ素系樹脂(B2)として、平均粒子径8μm以下のパウダー状、フィブリル状等の粉体を用いることにより、該非フッ素系樹脂(B2)は平均分散粒子径8μm以下の微粒子として含フッ素共重合体組成物中に含まれる。非フッ素系樹脂(B2)は450℃以下に融点を有しないため、含フッ素共重合体組成物製造時の混練において、溶融しにくい。
非フッ素系樹脂(B2)は、ガラス転移温度を450℃以下に有していることが好ましい。450℃以下にガラス転移温度を有する非フッ素系樹脂(B2)は、含フッ素共重合体組成物中においてより分散しやすい。
ガラス転移温度は、昇温速度10℃/分の条件で、示差走査熱量計で測定された示差走査熱量分析曲線(DSC曲線)の変曲点における温度である。
【0045】
非フッ素系樹脂(B2)としては、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。非フッ素系樹脂(B2)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。入手性及びより分散しやすい点から、非フッ素系樹脂(B2)としては、ポリイミドが好ましい。なお、本明細書において、単に「ポリイミド」といった場合、熱可塑性ではないポリイミドのことである。
非フッ素系樹脂(B2)としては、平均粒子径が8μm以下の粉体を使用する。非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径は6μm以下が好ましい。平均粒子径が上記範囲の非フッ素系樹脂(B2)を使用して調製した含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用い、電線の芯線を被覆すると、ウエルドラインからの裂けを発生することなく被覆でき、かつ、含フッ素共重合体組成物から形成された被覆の耐スクレープ摩耗特性が優れる。
【0046】
使用する非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50体積%となる平均粒子径(D50)である。なお、非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径は、他の方法でも求めることができ、例えば、走査型顕微鏡で倍率を調整し5個の粒子状物質の直径を求め、その平均値からも算出することもできる。
非フッ素系樹脂(B2)の粒子形状は、上記装置により測定される該平均粒子径が上記範囲であれば制限はなく、たとえば、パウダー状、フィブリル状等が挙げられる。得られる電線の被覆の表面平滑性向上の点から、パウダー状が好ましい。
【0047】
[耐熱電線用被覆材料(含フッ素共重合体組成物)]
本発明の耐熱電線用被覆材料は、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)とを(A)/(B1)=99/1〜60/40(体積比)で含有する含フッ素共重合体組成物、または、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と非フッ素系樹脂(B2)とを(A)/(B2)=99/1〜60/40(体積比)で含有する含フッ素共重合体組成物からなる。含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)との上記体積比が上記範囲であると、含フッ素共重合体組成物が非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)を含む場合、含フッ素共重合体組成物中において、非フッ素熱可塑性樹脂(B1)は平均分散粒子径が8μm以下の微粒子として分散しやすい。また、含フッ素共重合体組成物が非フッ素系樹脂(B2)を含む場合、含フッ素共重合体組成物中において、非フッ素系樹脂(B2)が平均分散粒子径が8μm以下の微粒子として分散しやすい。そのため、該含フッ素共重合体組成物を耐熱電線用被覆材料として用い、電線の芯線を被覆すると、被覆された部分においてウエルドが発生せず、ウエルドラインからの被覆の裂けが生じない。ウエルドラインからの被覆の裂けを抑制する点からは、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は5μm以下の微粒子として分散することがより好ましい。また、得られた電線の耐スクレープ摩耗特性にも優れる。
【0048】
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の分散性に優れる点からは、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との体積比は、(A)/(B1)=99/1〜70/30が好ましく、(A)/(B1)=97/3〜75/25がより好ましく、(A)/(B1)=97/3〜80/20が最も好ましい。非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる点からは、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系樹脂(B2)との体積比は、(A)/(B2)=99/1〜70/30が好ましく、(A)/(B2)=97/3〜75/25がより好ましく、(A)/(B2)=97/3〜80/20が最も好ましい。
また、含フッ素共重合体(A)が反応性官能基を有すると、含フッ素共重合体(A)は非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相溶性に優れ、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径はより小さくなりやすい。同様に、含フッ素共重合体(A)が反応性官能基を有すると、非フッ素系樹脂(B2)が分散しやすくなる。
【0049】
含フッ素共重合体組成物の200℃における貯蔵弾性率は90MPa以上であり、95MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。このような高い貯蔵弾性率は、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)を含フッ素共重合体(A)に加えることで達成しやすく、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)としてTPIを採用した場合、又は非フッ素系樹脂(B2)としてポリイミドを採用した場合により達成しやすい。
【0050】
含フッ素共重合体組成物は、その特性を大きく損なわない限り、充填剤、顔料、その他の添加剤を含有できる。
充填剤としては、無機フィラー(D)を含有することが好ましい。無機フィラー(D)の具体例としては、繊維状フィラー類(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ステンレス鋼マイクロファイバー等)、粉末状フィラー類(タルク、マイカ、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、炭酸カルシウム、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、二酸化チタン等)等が挙げられる。無機フィラー(D)は1種以上を使用できる。含フッ素共重合体組成物中の無機フィラー(D)の含有量は、(含フッ素共重合体(A)+非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2))/無機フィラー(D)が、質量比で90/10〜50/50であることが好ましい。この範囲にあると、含フッ素共重合体組成物は、機械的特性や電気特性に優れる。
【0051】
顔料としては、有機顔料、無機顔料等の着色顔料(E)が挙げられる。具体例としては、カーボンブラック(黒色顔料)、酸化鉄(赤色顔料)、アルミコバルト酸化物(青色顔料)、銅フタロシアニン(青色顔料、緑色顔料)、ペリレン(赤顔料)、バナジン酸ビスマス(黄顔料)等が挙げられる。
顔料の含有量としては、含フッ素共重合体組成物中、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。顔料の含有量が20質量%超となると、フッ素樹脂に基づく非粘着性や耐摩耗性が損なわれるおそれがある。
【0052】
含フッ素共重合体組成物は、硫酸水50wt%の浸漬試験において、48時間浸漬させたときの引張伸度保持率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、純水100℃で150時間浸漬させたときの引張伸度保持率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、硫酸水の浸漬試験は耐薬品性、純水の浸漬試験は耐水性が、それぞれ優れていることを示す。含フッ素共重合体組成物に用いる非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は、耐水性や耐薬品性に劣るものが多いが、本発明の含フッ素共重合体組成物は、そのような非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)を用いても、良好な耐薬品性、耐水性を有する。なお、含フッ素共重合体組成物の引張伸度保持率は、含フッ素共重合体組成物を成形して得られるシートを用いて評価するのが好ましい。この場合、含フッ素共重合体組成物を成形して得られるシートの引張伸度保持率が、前記の範囲であることが好ましい。
【0053】
[耐熱電線用被覆材料の製造方法]
本発明の被覆材料である含フッ素共重合体組成物が、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)を含む態様である場合、該含フッ素共重合体組成物は、含フッ素共重合体(A)と、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)と、必要に応じて配合されるその他の成分(充填剤、顔料等。)とを混練押出機等を用いて溶融混練する方法で製造することが好ましい。
溶融混練には、種々の混練機が使用できるが、押出機を用いることが好ましい。
混練押出機のスクリューは、2軸スクリュータイプが好ましい。
溶融混練温度は、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の種類に応じて設定できるが、400℃以上450℃未満が好ましく、400〜430℃がより好ましい。該温度が400℃以上であると、溶融混練において、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)との相容性が向上し、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)は平均分散粒子径8μm以下で分散しやすくなる。
混練押出機での滞留時間は、10秒以上30分以下が好ましい。スクリュー回転数は、5rpm以上1500rpm以下が好ましく、10rpm以上500rpm以下がより好ましい。
【0054】
本発明の被覆材料である含フッ素共重合体組成物が、非フッ素系樹脂(B2)を含む態様である場合、該フッ素共重合体組成物は、含フッ素共重合体(A)と非フッ素系樹脂(B2)と、必要に応じて配合されるその他の成分(充填剤、顔料等。)とを混練押出機等を用いて溶融混練する方法で製造することが好ましい。
溶融混練には、種々の混練機が使用できるが、押出機を用いることが好ましい。
混練押出機のスクリューは、2軸スクリュータイプが好ましい。
溶融混練温度は、非フッ素系樹脂(B2)の種類に応じて設定できるが、400℃以上450℃未満が好ましく、400〜430℃がより好ましい。該温度が400℃以上であると、溶融混練において、非フッ素系樹脂(B2)は平均分散粒子径8μm以下で分散しやすくなる。
混練押出機での滞留時間は、10秒以上30分以下が好ましい。スクリュー回転数は、5rpm以上1500rpm以下が好ましく、10rpm以上500rpm以下がより好ましい。
【0055】
[電線]
本発明の電線は、芯線と、該芯線の表面に形成された上述の被覆材料からなる被覆とを有する。
本発明の被覆材料は、電線の被覆に用いられる。芯線(導体)に被覆を形成して電線とする方法には特に制限はないが、押し出し機を用いて、電線の芯線上に溶融樹脂(被覆材料)を被覆させるように押し出す成形方法(電線成型)が好ましい。
【0056】
本発明の被覆材料は、溶融成形が可能な含フッ素共重合体(A)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)または非フッ素系樹脂(B2)とを特定の体積比で含有し、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)や非フッ素系樹脂(B2)が含フッ素共重合体組成物中で分散し、200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率が、90MPa以上である含フッ素共重合体組成物からなる。そのため、高温での弾性率に優れ、耐ストレスクラック性に優れる被覆を形成できる。また、被覆を形成した際に、ウエルドラインから被覆が剥離することもない。また、得られた電線の耐スクレープ摩耗特性にも優れる。そのため、本発明の被覆材料は、高い耐熱性が要求される航空機用電線、高電圧電線、通信電線、電気ヒータ電線等の電線における被覆の形成に好適に使用できる。特に高温での耐ストレスクラック性に優れるため、航空機用電線への使用が好適である。また、本発明の電線は、上述の被覆材料からなる被覆を備えているため、信頼性に優れる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
含フッ素共重合体(A)の共重合組成、反応性官能基の含有量、融点、MFRおよび線膨張係数と、耐熱電線用被覆材料である含フッ素共重合体組成物の貯蔵弾性率、含フッ素共重合体組成物中の非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径と、非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径およびガラス転移温度は以下の方法により測定した。また、電線の耐ストレスクラック性および耐スクレープ摩耗特性を以下の方法で評価した。
【0058】
[含フッ素共重合体(A)]
(1)共重合組成
共重合組成を溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析により求めた。
(2)反応性官能基の含有量
以下の赤外吸収スペクトル分析によって、含フッ素共重合体(A)における反応性官能基を有するNAHに基づく繰返し単位の割合を求めた。
含フッ素共重合体(A)をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素共重合体中のNAHに基づく構成単位における吸収ピークは、いずれも1778cm
−1に現れる。該吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol
−1・L・cm
−1を用いて、NAHに基づく構成単位の割合(モル%)を求めた。
そして、該割合を例えばa(モル%)とすると、主鎖炭素数1×10
6個に対する反応性官能基(酸無水物基)の個数は、[a×10
6/100]個と算出される。
(3)融点(℃)
セイコー電子社製示差走査熱量計(DSC装置)を用い、含フッ素共重合体(A)を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点(Tm)とした。
なお、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の融点についても同様に測定した。
(4)MFR(g/10分)
テクノセブン社製メルトインデクサーを用い、融点より20℃以上高い温度である372℃、5kg(49N)荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから、10分間(単位時間)に流出する含フッ素共重合体(A)の質量(g)を測定した。
なお、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)のMFRについても同様に測定した。ただし、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)については、MFRの測定温度を融点より20℃以上高い温度である420℃とした。
(5)線膨張係数αaおよびαb(ppm/℃)
(5−1)サンプルの作製
含フッ素共重合体(A)をテスター産業社製メルト熱プレス機でプレス成形し、80mm×80mm×0.25mm厚のシートを得た。プレス条件は、温度380℃、圧力10MPa、プレス時間5分間とした。得られたシートから、4mm×55mm×0.25mmの短冊状のシートを切り出し、これを測定用のサンプルとした。
(5−2)測定
線膨張係数の測定は、上記サンプルをオーブンにて250℃で2時間乾燥させ、サンプルの状態調整を行った後、実施した。測定には、SII社製熱機械分析装置(TMA/SS6100)を用い、空気雰囲気下、チャック間距離20mm、2.5gの負荷荷重をかけながら、30℃から250℃まで5℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの線膨張に伴う変位量を測定した。測定終了後、50℃から100℃までの間のサンプルの変位量から、線膨張係数(ppm/℃)を求めた。
(5−3)400℃、10分間の溶融混練
線膨張係数αaおよびαbのうち、線膨張係数αbの測定に際しては、含フッ素共重合体(A)を混練機において400℃で10分間溶融混練した後、常温まで冷却したものについて、上記(5−1)の方法でサンプルを作成し、上記(5−2)の方法で測定を実施した。
混練機における400℃で10分間の溶融混練は、具体的には以下のように実施した。
東洋精機社製ラボプラストミル混錬機に、含フッ素共重合体(A)の40gを投入、昇温し、含フッ素共重合体(A)が397℃に到達した時点から10分間にわたって、400±3℃の条件下で、スクリュー回転数30rpmにて溶融混練を実施した。10分間溶融混練した後、含フッ素共重合体(A)を混練機から取り出し、室温で放置して降温、冷却した。
【0059】
[非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)および非フッ素系樹脂(B2)]
(1)非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径(μm)
日立ハイテクノロジー社製の走査型電子顕微鏡「FE−SEM」を用い、測定対象の含フッ素共重合体組成物のプレスシート(上記の80mm×80mm×0.25mm厚のシート)を液体窒素中で凍結後切断し、切断面を観察した。倍率3000倍で5個の粒子状物質の直径を「FE−SEM」に付属の測長機能を用いて計測し、その平均値から平均分散粒子径を算出した。なお、各粒子状物質については、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いた元素分析により、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)であることを確認した。
(2)非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径(μm)
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−3000(製品名)」を用いて測定された粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50体積%となる平均粒子径(D50)を非フッ素系樹脂(B2)の平均粒子径とした。測定は、非フッ素系樹脂(B2)の試料0.1gを10%イソプロピルアルコール水溶液20ccに浸し、超音波を30秒かけた。その後、純水を30cc加え、さらに30秒間超音波をかけた後、室温で30分放置したものを用いて行った。
(3)非フッ素系樹脂(B2)のガラス転移温度(℃)
セイコー電子社製示差走査熱量計(DSC装置)を用い、非フッ素系樹脂(B2)を10℃/分の速度で昇温したときのDSC曲線の変曲点における温度である。
【0060】
[含フッ素共重合体組成物(被覆材料)および電線]
(1)貯蔵弾性率(MPa)
(1−1)サンプルの作製
含フッ素共重合体組成物をテスター産業社製メルト熱プレス機でプレス成形し、0.25mm厚のシートを得た。プレス条件は、加工温度380℃、圧力10MPa、プレス時間5分間とした。該シートから、長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmの短冊状のサンプルを切り出した。
(1−2)測定
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により200℃で測定する値である。具体的には、SII社製動的粘弾性装置「DMS6100」を用い、上記サンプルについて、引張モード、つかみ巾20mmとし、25℃から昇温速度2℃/minで昇温して200℃に到達した時の貯蔵弾性率を測定した。周波数は1Hzとした。
【0061】
(2)耐ストレスクラック性(275℃)
電線を275℃のオーブンに入れ、96時間熱処理した後、一晩室温にて養生してから自己径巻き付けによるストレスを電線に付与し、再度275℃のオーブンに入れ、1時間熱処理した。その後、被覆におけるクラックと、芯線からの被覆の剥離とが生じているか確認した。クラックと剥離のどちらも生じないものを、耐ストレスクラック性が良好であると評価した。また、被覆におけるクラック又は芯線からの被覆の剥離が生じたものを不良と評価した。
(3)スクレープ摩耗抵抗(耐スクレープ摩耗特性)
電線を長さ2mに切り出し、安田精機社製「マグネットワイヤー摩耗試験機(往復式)(製品名)」を用い、ISO6722−1に準拠した試験方法によって、下記条件にてスクレープ摩耗抵抗を測定した。
ニードル直径:0.45±0.01mm、
ニードル材質:SUS316(JIS G 7602準拠)、
摩耗距離:15.5±1mm、
摩耗速度:55±5回/分、
荷重:7N、
試験環境:23±1℃。
摩耗抵抗は、ニードルの往復運動によって、芯線が被覆から露出するまでに要したニードルの往復回数で表される。摩耗抵抗(回数)が多ければ、耐スクレープ摩耗特性に優れる。
【0062】
(4)硫酸水50wt%浸漬試験
含フッ素共重合体組成物をテスター産業社製メルト熱プレス機でプレス成形し、8×8×1mm厚のプレスシートを得た。プレス条件は、加工温度380℃、圧力10MPa、プレス時間を5分間とした。得られたプレスシートを50wt%に調整された硫酸水溶液で浸したSUS製の耐圧容器(φ120、高さ125mm)にシート全体が硫酸水で浸されるように入れ、48時間常温、暗所にて放置した。
その後、容器からプレスシートを取り出し、水洗いした後シリカゲル入りのデシケーターにて乾燥させ、サンプル形状をASTM D1822に準拠されたミクロダンベル(厚み1mm)にし、温度23±2℃、湿度50%±10%に制御された恒温、恒湿環境下において、東洋精機社製ストログラフを用いて、標線間距離7.6mm、引張り速度50m/minの条件で引張り試験を行った。初期のサンプル長さに対する破断時のサンプル長さの割合が引張り伸度であり、浸漬後のサンプルの引っ張り伸度を浸漬前のサンプルの引っ張り伸度で除した値を引張伸度保持率(%)とし、この引っ張り伸度保持率が高い値ほど硫酸水50wt%に対する耐性が高いことを意味する。
【0063】
(5)純水100℃浸漬試験
(4)と同様の手順で得られた8×8×1mm厚のプレスシートを純水で浸されたSUS製の耐圧容器(φ120、高さ125mm)にシート全体が純水で浸されるように入れた後、二葉科学社製「多重安全式乾燥器MSO-60H」にて100℃、150時間の条件で熱暴露させた。その後、(4)と同様の手順、試験条件にてプレスシートを水洗い、乾燥させ、東洋精機社製ストログラフを用いて引っ張り試験を行い、(4)と同様の算出方法にて引張伸度保持率を求めた。また、引っ張り伸度保持率が高い数値ほど純水100℃に対する耐性が高いことを意味する。また、上記で使用した純水は栗田工業社製超純水設備より得られ、電気抵抗値は15MΩ・cm以上で管理されているものを使用した。
【0064】
(製造例1)含フッ素共重合体(A−1)の製造
構成単位(a1)を形成するTFEと、構成単位(a2)を形成するNAH(「無水ハイミック酸」、日立化成社製)と、構成単位(a3)を形成するCF
2=CFO(CF
2)
3F(ペルフルオロプロピルビニルエーテル、旭硝子社製)(以下、「PPVE」という。)を用いて、含フッ素共重合体(A−1)を次のようにして製造した。
まず、369kgの1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(AK225cb、旭硝子社製)(以下、「AK225cb」という。)と、30kgのPPVEとを、予め脱気された内容積が430Lの撹拌機付き重合槽に仕込んだ。次いで、この重合槽内を加熱して50℃に昇温し、さらに50kgのTFEを仕込んだ後、該重合槽内の圧力を0.89MPa/Gまで昇圧した。なお、「0.89MPa/G」とは、ゲージ圧が0.89MPaであることを示す。以下、同様である。
さらに、(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.36質量%の濃度でAK225cbに溶解した重合開始剤溶液を調製し、重合槽中に当該重合開始剤溶液の3Lを1分間に6.25mLの速度にて連続的に添加しながら重合を行った。また、重合反応中における重合槽内の圧力が0.89MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。また、NAHを0.3質量%の濃度でAK225cbに溶解した溶液を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ、連続的に仕込んだ。
重合開始8時間後、32kgのTFEを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を室温まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリをAK225cbと固液分離した後、固体分を150℃で15時間乾燥することにより、33kgの含フッ素共重合体(A−1)を得た。含フッ素共重合体(A−1)の比重は2.15であった。
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、この含フッ素共重合体(A−1)の共重合組成は、TFEに基づく構成単位(a1)/NAHに基づく構成単位(a2)/PPVEに基づく構成単位(a3)=97.9/0.1/2.0(モル%)であった。
また、含フッ素共重合体(A−1)の反応性官能基(酸無水物基)の含有量は、含フッ素共重合体(A−1)の主鎖炭素数1×10
6個に対して1000個であった。
含フッ素共重合体(A−1)の融点は300℃であり、融点より20℃以上高い372℃、49N荷重下でのMFRは、17.6g/10分であった。
含フッ素共重合体(A−1)の線膨張係数は、αa=139ppm/℃、αb=218ppm/℃であり、αb−αa=79ppm/℃であった。
【0065】
(参考例1)含フッ素共重合体(A−2)
含フッ素共重合体(A−2)として、PFA(旭硝子社製、製品名「Fluon PFA 73PT」)を用い、線膨張係数αbおよびαaを含フッ素共重合体(A−1)と同様の方法で測定した。αa=168ppm/℃、αb=170ppm/℃であり、αb−αa=2ppm/℃であった。
【0066】
(製造例2)含フッ素共重合体(A−3)の製造
製造例1で得られた含フッ素共重合体(A−1)を260℃で24時間熱処理することにより、含フッ素共重合体(A−3)を得た。含フッ素共重合体(A−3)の融点は305℃であり、融点より20℃以上高い372℃、49N荷重下でのMFRは、11.0g/10分であった。
含フッ素共重合体(A−3)の線膨張係数は、αa=135ppm/℃、αb=215ppm/℃であり、αb−αa=80ppm/℃であった。
【0067】
[実施例1]
東洋精機社製ラボプラストミル混錬機に、含フッ素共重合体(A−1)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)であるTPI(B−1)とを体積比(A−1)/(B−1)=90/10となるように投入し、スクリュー回転数30rpm、混錬時間10分間、混錬温度400℃の条件下で溶融混錬した。
得られた含フッ素共重合体組成物について、200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率、含有するTPI(B−1)の平均分散粒子径を測定した。結果を表1に示す。
なお、TPI(B−1)としては、TPI:三井化学社製、製品名「AURUM PD−500」を用いた。TPI(B−1)の融点は385℃であり、融点より20℃以上高い420℃でのMFRは、31g/10分であった。
【0068】
ついで、得られた含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用いて、芯線に被覆を設ける電線成型(電線押し出し成型)を実施した。成型条件は、シリンダー温度:350〜390℃、ダイス温度:390℃、引き取り速度:10〜30m/minとし、電線径:φ2.8mm、被覆厚み:0.5mm、芯線径φ:1.8mm(撚り線)の電線を得た。該電線において、ウエルドラインから被覆が裂けることはなかった。該電線について耐ストレスクラック試験を行った結果、被覆におけるクラック、芯線からの被覆の剥離のいずれも認められず、耐ストレスクラック性が良好であった。また、スクレープ摩耗抵抗は、6377回であった。
【0069】
[実施例2]
含フッ素共重合体(A−1)とTPI(B−1)との体積比(A−1)/(B−1)を80/20とした以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得て、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
また、得られた含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用いて、実施例1と同様にして電線を得た。該電線において、ウエルドラインから被覆が裂けることはなかった。該電線について耐ストレスクラック試験を行った結果、被覆におけるクラック、芯線からの被覆の剥離のいずれも認められず、耐ストレスクラック性が良好であった。また、スクレープ摩耗抵抗は、6501回であった。
【0070】
[実施例3]
含フッ素共重合体(A−1)に代えて、含フッ素共重合体(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得て、実施例1と同様に各種測定、電線成型等を行った。電線成型は、ウエルドラインから被覆が裂けることなく行えた。
また、得られた電線について耐ストレスクラック試験を行った結果、被覆におけるクラック、芯線からの被覆の剥離のいずれも認められず、耐ストレスクラック性が良好であった。また、スクレープ摩耗抵抗は、28656回であった。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
TPI(B−1)に代えて、非フッ素系樹脂(B2)として、平均粒子径が6μmのポリイミドパウダー(ダイセル・エボニック社製、製品名「P84NT」、平均粒子径6μm品)を用いた以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得て、実施例1と同様に各種測定、電線成型等を行った。ただし、電線成型の成形条件において、シリンダー温度およびダイス温度のみ実施例1から変更し、シリンダー温度:310〜350℃、ダイス温度:350℃とした。
用いたポリイミドパウダーは、ガラス転移温度が337℃である。また、少なくとも450℃以下には融点を有さず、混錬温度である400℃において溶融しない。
電線成型は、ウエルドラインから被覆が裂けることなく行えた。
また、得られた電線の被覆は表面平滑性に優れ、ポリイミドパウダーが被覆中で凝集せずに微粒子として分散していることが示唆された。
また、得られた電線について耐ストレスクラック試験を行った結果、被覆におけるクラック、芯線からの被覆の剥離のいずれも認められず、耐ストレスクラック性が良好であった。また、スクレープ摩耗抵抗は、12083回であった。
【0072】
[実施例5]
実施例2で得られた含フッ素共重合体組成物を用いて、硫酸水50wt%で48時間の浸漬試験および純水100℃で150時間の浸漬試験を実施した。浸漬後の得られた含フッ素共重合体組成物の引張伸度保持率はそれぞれ100.0%、88.2%であった。
硫酸水50wt%浸漬試験(48時間):浸漬前44.36%、試験後44.36%
純水100℃浸漬試験(150時間):浸漬前44.36%、試験後39.11%
【0073】
[比較例1]
東洋精機社製ラボプラストミル混錬機に、含フッ素共重合体(A−1)のみを投入し、実施例1と同様の条件で溶融混練した。
該含フッ素共重合体(A−1)について、200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率を測定したところ、66MPaであった。
また、実施例1と同様にして電線成型を行ったところ、ウエルドラインから被覆が裂けることなく、電線が得られたが、該電線のスクレープ摩耗抵抗は3370回であった。
【0074】
[比較例2]
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)としてPAI(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得た。該含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率を測定したところ、84MPaであった。
なお、PAI(B−2)としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製、製品名「TORLON 400TF」を用いた。
【0075】
[比較例3]
非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)としてPEI(B−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得た。該含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率を測定したところ、88MPaであった。
なお、PEI(B−3)としては、サビック社製、製品名「Ultem 1000、1040、XH6050、STM1700」を用いた。
【0076】
[比較例4]
含フッ素共重合体(A−1)とTPI(B−1)との体積比(A−1)/(B−1)を80/20とし、溶融混練を380℃で行った以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得た。該含フッ素共重合体組成物が含有するTPI(B−1)の平均分散粒子径を測定したところ、10μmであった。
得られた含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用いて、実施例1と同様にして、電線を得ようとしたとしたがウエルドラインを起点に被覆が剥離し、芯線に対しての被覆自体ができなかった。
【0077】
[比較例5]
含フッ素共重合体(A)として参考例1の含フッ素共重合体(A−2)を用い、含フッ素共重合体(A−2)とTPI(B−1)との体積比(A−2)/(B−1)を80/20とした以外は、実施例1と同様にして含フッ素共重合体組成物を得た。該含フッ素共重合体組成物が含有するTPI(B−1)の平均分散粒子径を測定したところ、10μmであった。
得られた含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用いて、実施例1と同様にして、電線を得ようとしたとしたが、ウエルドが生じ、ウエルドラインを起点に被覆が剥離し、芯線に対しての被覆自体ができなかった。
【0078】
[比較例6]
ポリイミドパウダーとして、平均粒子径が30μmのポリイミドパウダー(ダイセル・エボニック社製、製品名「P84NT」、平均粒子径30μm品)を用いた以外は、実施例4と同様にして含フッ素共重合体組成物を得て、同様に各種測定、電線成型等を行った。
用いたポリイミドパウダーは、ガラス転移温度が337℃である。また、少なくとも450℃以下には融点を有さず、混錬温度である400℃において溶融しない。
含フッ素共重合体組成物の200℃での動的粘弾性率測定による貯蔵弾性率を測定したところ、114MPaであった。
また、実施例1と同様にして電線成型を行ったところ、ウエルドラインから被覆が裂けることなく、電線が得られたが、該電線のスクレープ摩耗抵抗は3447回であった。
【0079】
[比較例7]
東洋精機社製ラボプラストミル混錬機に、含フッ素共重合体(A−1)と非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)であるTPI(B−1)とを体積比(A−1)/(B−1)=50/50となるように投入し、スクリュー回転数30rpm、混錬時間10分間、混錬温度400℃の条件下で溶融混錬した。
ついで、得られた含フッ素共重合体組成物を被覆材料として用いて、芯線に被覆を設ける電線成型(電線押し出し成型)を実施した。成型条件は、シリンダー温度:350〜390℃、ダイス温度:390℃、引き取り速度:10〜30m/minとし、電線径:φ2.8mm、被覆厚み:0.5mm、芯線径φ:1.8mm(撚り線)の電線を得ようとしたが、ウエルドが生じ、ウエルドラインを起点に被覆が剥離し、芯線に対しての被覆自体ができなかった。
【0080】
[比較例8]
熱可塑性樹脂(B1)としてPEEK:ソルベイアドバンストポリマーズ社製、製品名「KetaSpire(登録商標) KT−820」のみを用いて、実施例5と同様の方法にて浸漬試験を実施した。得られた(B1)の伸度保持率はそれぞれ78.6%、68.0%であった。
硫酸水50wt%浸漬試験(48時間):浸漬前196.59、試験後154.59
純水100℃浸漬試験(150時間):浸漬前196.59、試験後133.6
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すように、実施例1〜4の含フッ素共重合体組成物は、200℃での貯蔵弾性率が90MPaを超え、高温での弾性率に優れた。また、実施例1〜3では、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径が8μm以下であり、実施例4では、非フッ素系樹脂(B2)として平均粒子径が6μmのものを用いた。そのため、これらの実施例では、被覆において、ウエルドラインからの裂けが生じず、また、高温での耐ストレスクラック性および耐スクレープ摩耗特性に優れる電線が得られた。
これに対して、比較例1〜3の含フッ素共重合体組成物は200℃での貯蔵弾性率が低かった。比較例4および5の含フッ素共重合体組成物は、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)の平均分散粒子径が大きく、該組成物を被覆材料として用いて、芯線に被覆を設けようとしたがウエルドラインからの裂けが生じ、芯線に対しての被覆自体ができなかった。比較例6では、電線の耐スクレープ摩耗特性が劣った。また、比較例7の含フッ素共重合体組成物は、実施例1および2と同様に含フッ素共重合体(A−1)および非フッ素系熱可塑性樹脂(B−1)を用いたものであるが、(A−1)と(B−1)の体積比が本発明の範囲から外れるため、被覆材料として用いて、芯線に被覆を設けようとしたがウエルドラインからの裂けが生じ、芯線に対しての被覆自体ができなかった。
また、実施例5から、本発明の含フッ素共重合体組成物は、優れた耐薬品性、耐水性を有することが分かった。また、比較例8は、含フッ素共重合体(A)を用いず、非フッ素系熱可塑性樹脂(B1)のみ用いたため、耐薬品性、耐水性、いずれも劣るものであった。