【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
<評価方法>
(1)ガーレー透気度
JIS P8117に準拠し、王研式透気度試験機EGO1型(旭精工製)にて測定した。
【0038】
(2)突刺し強度
島津製万能型試験機AGS−Xを用い、針の直径1.0mm、押し込み速度300mm/minの条件で測定し、膜が破れる時の最大荷重を突刺し強度(針貫通強度)とした。
【0039】
(3)粉落ち試験
10cm角に切ったサンプルの表裏面を、5cm角の黒色発泡クロロプレンゴム(イノアックコーポレーション社製、製品番号C−4205)で10往復こすり、目視評価を行った。
・評価基準
○:粉落ちが生じていなかった。 ×:粉落ちが生じた。
【0040】
<原材料>
各実施例、比較例に用いた原材料は、以下の通りである。各エラストマーの()内の表示は略号である。
(ポリプロピレン系樹脂)
PP :日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP FY6HA」
MFR=2.4g/10分、融点=158℃
(ポリオレフィン系樹脂)
PO1:プライムポリマー社製 商品名「ハイゼックス 3300F」
MFR=1.1g/10分、融点=132℃
PO2:日本ポリエチ社製 商品名「ノバテック SF240」
MFR=2.0g/10分、融点=126℃
(ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー)
EL1:クラレ社製 商品名「セプトン1001」
スチレン−水添イソプレンブロックコポリマー(SEP)
EL2:クラレ社製 商品名「セプトン2006」
スチレン−水添イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)
EL3:クラレ社製 商品名「セプトン8004」
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)
EL4:クラレ社製 商品名「セプトン8006」
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)
EL5:旭化成ケミカルズ社製 商品名「タフテックL605」
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)
EL6:旭化成ケミカルズ社製 商品名「タフテックL606」
スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)
(オレフィン系エラストマー)
EL7:三井化学社製 商品名「タフマーP0480」
エチレン−プロプレンコポリマー(EPM)
EL8:ダウ・ケミカルジャパン社製 商品名「エンゲージ8480」
エチレン−オクテンコポリマー(EOM)
(充填剤)
充填剤1:硫酸バリウム、平均粒径=1.1μm
【0041】
また、各エラストマーの物性を表1に示す。
【0042】
【表1】
(MFR測定条件)
スチレン系エラストマー :230℃、2.16kg
オレフィン系エラストマー:190℃、2.16kg
【0043】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂として、PPを100質量部、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーとしてEL1を43質量部の割合で配合し、設定温度190℃〜210℃に設定した同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=25mmφ、L/D=40)に投入して溶融混練し、ダイ温度210℃、ダイ幅300mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度110℃の設定でキャスティングし、幅=280mm、平均厚み=300μmのシートを得た。
次に、得られた原反シートを、ロール延伸機にて、縦方向に、延伸温度20℃、延伸倍率1.5倍で延伸した後、さらに延伸温度120℃、延伸倍率2倍で延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度145℃、延伸倍率3倍で延伸を行い、厚み平均100μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂「PP」の添加量を100質量部にし、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーEL1の添加量を67質量部にしたこと以外は、実施例1と同様の方法により、厚み平均108μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL2に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、厚み平均100μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例4)
実施例3の原反シートの、ロール延伸機での縦延伸工程において、20℃での延伸倍率を2倍としたこと以外は、実施例3と同様に成形し、厚み平均90μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例5)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL3に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、厚み平均118μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0048】
(実施例6)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL4に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、厚み平均90μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例7)
実施例6の原反シートの、ロール延伸機での縦延伸工程において、20℃での延伸倍率を2倍としたこと以外は、実施例3と同様に成形し、厚み平均80μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL5に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、微多孔性フィルムを製造しようとしたが、縦延伸時に良好な均一白化が見られずシートにシワが生じ、さらに横延伸過程でシートが破断し、微多孔性フィルムが得られなかった。結果を表3に示す。
【0051】
(比較例2)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL6に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、微多孔性フィルムを製造しようとしたが、縦延伸時に良好な均一白化が見られずシートにシワが生じ、良好な透気特性が得られなかったため、以降の評価は行っていない。結果を表3に示す。
【0052】
(比較例3)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL7に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、微多孔性フィルムを製造しようとしたが、縦延伸時に良好な均一白化が見られずシートにシワが生じ、良好な透気特性が得られなかったため、以降の評価は行っていない。結果を表3に示す。
【0053】
(比較例4)
実施例1において、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーをEL8に変更したこと以外は、実施例1と同様に成形し、微多孔性フィルムを製造しようとしたが、縦延伸時に良好な均一白化が見られずシートにシワが生じ、良好な透気特性が得られなかったため、以降の評価は行っていない。結果を表3に示す。
【0054】
(比較例5)
実施例5と同様の方法で原反シートを作製し、この原反シートをシートの縦方向に20℃で3倍延伸したが、延伸中にシートが破断したため、以降の評価は行っていない。結果を表3に示す。
【0055】
(比較例6)
実施例5と同様の方法で原反シートを作製し、この原反シートをシートの縦方向に120℃で3倍、次いで145℃で横方向に3倍の延伸倍率で逐次延伸を行ったが、フィルムに良好な均一白化が見られず、良好な透気性能が得られなかったため、以降の評価は行っていない。結果を表3に示す。
【0056】
(比較例7)
ポリオレフィン系樹脂としてPO100質量部に対し、PO2を233質量部、充填剤1を500質量部の割合で配合し、これに加えて、硬化ひまし油(KFトレーディング社製、商品名「H−COP」)を20質量部、酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガフォス168」)を1.3質量部、熱安定剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.7質量部を添加し、同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径=40mmφ、L/D=32)に投入し、設定温度240℃で溶融混練してストランドダイより押出した後、ストランドを水中で冷却固化し、カッターによりストランドをカットし、ペレット状に加工した樹脂組成物を作製した。
得られた樹脂組成物を240℃の溶融状態で押出し、シートを作製した。
次に、得られた原反シートを、ロール延伸機にて、縦方向に延伸温度20℃、延伸倍率1.5倍で延伸した後、さらに延伸温度110℃、延伸倍率2倍で延伸し、次いで、この縦延伸フィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、横方向に延伸温度100℃、延伸倍率3倍で延伸を行い、厚み平均150μmの微多孔性フィルムを得た。これについて評価を行った。結果を表3に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表2に示すとおり、実施例の本発明のフィルムは、高い透気特性を有するとともに、高い突刺し強度を有している。また、粉落ちのデメリットも無く衛生面にも優れた微多孔性フィルムを得ることができた。
【0060】
一方、表3に示すとおり、比較例1から4のように、MFR値が大きい、すなわち粘度が低いポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを用いた場合や、ポリオレフィン系エラストマーを用いた場合には、原反シートを延伸した際、均一白化が見られず良好な透気特性が得られない結果となった。本発明のフィルム製造においては、原反シートの海部であるポリプロピレン系樹脂中に島部としてのエラストマーが均一分散していることが必要であり、こられの系ではそれが見られなった事が原因と思われる。以下に、実施例1と比較例4の原反シート断面の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像を示す(
図1、
図2)。
図1(実施例1)の分散状態では、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂中に球状に均一分散していることが見受けられるが、
図2(比較例4)の状態では、オレフィン系エラストマーが引き伸ばされて広がってしまっていることが分かる。本発明のフィルムは、原反シートの延伸工程の際に、海部であるポリプロピレン系樹脂と島部であるポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの界面に応力集中させてボイドを形成させ、多孔化させることにより製造できると考えられる。そのため、本発明においては、原反シートの構造が非常に重要であることが分かる。
【0061】
また、比較例5において、20℃での低温延伸工程の延伸倍率を3倍まで上げようとした所、シートが破断してしまう結果となり、比較例6において、120℃での高温延伸工程のみで微多孔フィルムを作製しようとした所、良好な透気特性が発現せず、有用な微多孔フィルムが得られない結果となった。このように本発明は、低温での冷延伸工程と高温での熱延伸工程を含む延伸工程を行うことにより、良好な透気特性を付与できるものである。
【0062】
また、比較例7のように、無機充填剤を添加してフィルムを作成した場合、粉落ち試験での粉落ちが目立ち、衛生面での問題を解消させることができなかった。