(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206862
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20170925BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20170925BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01L29/48 F
H01L29/48 D
H01L29/44 Y
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-125254(P2012-125254)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251406(P2013-251406A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】辻 崇
(72)【発明者】
【氏名】木下 明将
(72)【発明者】
【氏名】岩室 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲司
【審査官】
河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−069798(JP,A)
【文献】
特開2008−034646(JP,A)
【文献】
特開2011−165856(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/161449(WO,A1)
【文献】
特表2008−518445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/47
H01L 29/41
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板の表面に堆積された、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板よりも不純物濃度の低い第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1の第2導電型半導体領域と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層とショットキー接合を形成する金属膜と、前記金属膜上に形成され前記金属膜より厚い電極用金属膜と、前記第1の第2導電型半導体領域とで構成された素子構造と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられ、前記素子構造の周辺部を囲む第2の第2導電型半導体領域と、
前記第2の第2導電型半導体領域の周辺部を囲み接合終端構造を構成する、第3の第2導電型半導体領域と、
前記第2の第2導電型半導体領域の一部から前記周辺部を覆う絶縁膜と、
を備え、
前記第1の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域よりもアクセプタ濃度が高く、
前記第1または第2の第2導電型半導体領域は、印加する逆バイアス電圧に対応してあらかじめ定められた所定以上のアクセプタ濃度を有し、
前記第3の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域よりも低いアクセプタ濃度であり、かつ前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域が接しており、
前記金属膜の端部は、前記第2の第2導電型半導体領域の一部に接し、前記絶縁膜上に延在し、前記金属膜の外端部および前記電極用金属膜の外端部は、前記第2の第2導電型半導体領域上にのみ位置することを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1または第2の第2導電型半導体領域の前記アクセプタ濃度は、逆バイアス電圧が5Vのとき、8×1017(cm-3)より大きいことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板の表面に、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板よりも不純物濃度の低い第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層を堆積する工程と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に、第1の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層とショットキー接合を形成する金属膜と、前記金属膜上に形成され前記金属膜より厚い電極用金属膜と、前記第1の第2導電型半導体領域とで素子構造を形成する工程と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の表面層に、前記第1の第2導電型半導体領域の周辺部を囲むように、第2の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の表面層に、前記第2の第2導電型半導体領域の周辺部を囲み接合終端構造を構成する、前記第2の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い第3の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第2の第2導電型半導体領域の一部から前記周辺部を覆う絶縁膜を形成する工程と、
を含み、
前記第1の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域よりもアクセプタ濃度が高く、前記第1または第2の第2導電型半導体領域は、印加する逆バイアス電圧に対応してあらかじめ定められた所定以上のアクセプタ濃度を有し、
前記第3の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域よりも低いアクセプタ濃度を有し、かつ前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域が接するよう形成し、
前記金属膜の端部を、前記第2の第2導電型半導体領域の一部に接し、前記絶縁膜上に延在し、前記金属膜の外端部および前記電極用金属膜の外端部は、前記第2の第2導電型半導体領域上にのみ位置するように設けたことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体(SiC)は、シリコン半導体(Si)と比較して大きなバンドギャップを持つため、高い絶縁破壊電界強度を有する。導通状態における抵抗であるオン抵抗は、絶縁破壊電界強度の3乗に逆比例する。このため、例えば、広く用いられている4H型と呼ばれる炭化珪素半導体においては、オン抵抗をシリコン半導体の数100分の1に抑制することができる。また、放熱が容易となる大きな熱伝導度の特性も有している。このように、SiCは、次世代の低損失な電力用半導体素子として期待されており、ショットキーバリアダイオード、MOSFET、PNダイオード、IGBT、GTOなど様々な構造の炭化珪素半導体素子が開発されている。
【0003】
これらのうちのショットキーバリアダイオードは、ユニポーラデバイスであることから、ターンオフ時の逆回復電流が非常に小さく、Si−pinダイオードの置き換えとして期待されている。
【0004】
ショットキーバリアダイオードの作製の概略を以下に説明する。まず、低抵抗n型4H−SiC基板上に、膜厚10μm、ドナー濃度1×10
16cm
-3のn型エピタキシャル層を成長し形成させる。このn型エピタキシャル層上にリング状に、濃度10
17cm
-3台のp型ウェル領域を形成する。このp型ウェル領域の外側に、p型ウェル領域より低濃度のp型ウェル領域を設けてもよい。さらに、低濃度のp型ウェル領域の外側に複数の低濃度のp型ウェル領域を設けてもよい。p型ウェル領域は、Alイオン注入、および1600℃以上の高温でアニールにより形成される。p型ウェル領域は、素子終端構造と呼ばれ、素子終端での電界を緩和させて耐圧劣化を防ぐ機能を有する。
【0005】
また素子によっては、n型エピタキシャル層上において、p型ウェル領域で囲まれた内部の領域に部分的にアクセプタ濃度1×10
18cm
-3以上で複数のp型ウェル領域を所定間隔で形成することがある。この構造はJBS(Junction Barrier Schottky)ダイオードと呼ばれる。これにより、p型ウェル領域間で挟まれたn型領域を逆バイアス時にピンチオフできるため、逆方向のリーク電流を低減できる利点を有する。隣接するp型ウェル領域同士の間隔は、p型ウェル間に挟まれたn領域をピンチオフできるように数μm程度の寸法としている。
【0006】
その後、p型ウェル領域の一部、およびその内側の領域を除いてパターニングされた酸化膜を形成し、酸化膜にオーバーハングするようにショットキーメタルを形成する。JBSのp型ウェル領域の表面には、オーミック電極が形成されることがあるが、工程数が増加し、作製コスト増加につながるため、一般にはJBSのp型ウェル領域の表面もショットキーメタルで被覆され、ショットキー接触となっている。この後、Alメタル、ポリイミド、裏面メタル(裏面電極)を順次形成してショットキーダイオードが完成する。
【0007】
上記のように作製されたショットキーダイオードのAlメタルのアノード電極に印加する正バイアスを増加させると、これに伴って順方向電流が増加するが、最後には自身の発熱によりショットキーメタルとSiCの界面で反応が起き(Tiのシリサイド化あるいはカーバイド化)、ショットキー障壁高さが低下する。これにより、さらに電流が流れるようになり、自己発熱し、界面反応が進む正のフィードバックがかる形となり、最終的には熱破壊に至る。この時の順方向電流をサージ電流と呼ぶ。このようなサージ電流に対する耐性を高めたワイドバンドギャップ半導体が開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−151208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ある半導体装置によっては、順方向電流I
F,SMをできるだけ上げることが要求される。例えば、半導体装置がチップを並列接続させて構成する場合には、ターンオン時に全電流が一つのチップに集中することが考えられ、順方向電流I
F,SMが十分大きくないとこのチップが破壊する問題が生じる。
【0010】
順方向電流I
F,SMを増加させる方法の一つとして、p型ウェル領域上にオーミック電極を形成することにより、pn接合のポテンシャルが内蔵電位V
BIを越える2.5V以上で正孔がn型ドリフト層内に注入される。しかし、この手法ではオーミック電極を形成する必要があり、生産コストが増加するという問題があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、順方向電流を十分大きくでき耐圧を高めることができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板の表面に堆積された、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板よりも不純物濃度の低い第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1の第2導電型半導体領域と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層とショットキー接合を形成する金属膜と、
前記金属膜上に形成され前記金属膜より厚い電極用金属膜と、前記第1の第2導電型半導体領域とで構成された素子構造と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられ、前記素子構造の周辺部を囲む第2の第2導電型半導体領域と、前記第2の第2導電型半導体領域の周辺部を囲み接合終端構造を構成する、第3の第2導電型半導体領域と、
前記第2の第2導電型半導体領域の一部から前記周辺部を覆う絶縁膜と、を備え、前記第
1の第2導電型半導体領域は、前記
第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域よりもアクセプタ濃度が高く、前記第1または第2の第2導電型半導体領域は、印加する逆バイアス電圧に対応してあらかじめ定められた所定以上のアクセプタ濃度を有
し、前記第3の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域よりも低いアクセプタ濃度であり、かつ前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域が接しており、前記金属膜の端部は、前記第2の第2導電型半導体領域の一部に接し、前記絶縁膜上に延在し、前記金属膜の外端部および前記電極用金属膜の外端部は、前記第2の第2導電型半導体領域上にのみ位置することを特徴とする。
【0013】
また、前記第1または第2の第2導電型半導体領域の前記アクセプタ濃度は、
逆バイアス電圧が5Vのとき、8×10
17(cm
-3)より大きいことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板の表面に、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板よりも不純物濃度の低い第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層を堆積する工程と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体基板側に対して反対側の表面層に、第1の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層とショットキー接合を形成する金属膜と、
前記金属膜上に形成され前記金属膜より厚い電極用金属膜と、前記第1の第2導電型半導体領域とで素子構造を形成する工程と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の表面層に、前記第1の第2導電型半導体領域の周辺部を囲むように、第2の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、前記第1導電型ワイドバンドギャップ半導体堆積層の表面層に、前記第2の第2導電型半導体領域の周辺部を囲み接合終端構造を構成する、前記第2の第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い第3の第2導電型半導体領域を選択的に形成する工程と、
前記第2の第2導電型半導体領域の一部から前記周辺部を覆う絶縁膜を形成する工程と、を含み、前記第
1の第2導電型半導体領域は、前記
第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域よりもアクセプタ濃度が高く、前記第1または第2の第2導電型半導体領域は、印加する逆バイアス電圧に対応してあらかじめ定められた所定以上のアクセプタ濃度を有
し、前記第3の第2導電型半導体領域は、前記第2の第2導電型半導体領域よりも低いアクセプタ濃度を有し、かつ前記第2の第2導電型半導体領域および前記第3の第2導電型半導体領域が接するよう形成し、前記金属膜の端部を、前記第2の第2導電型半導体領域の一部に接し、前記絶縁膜上に延在し、前記金属膜の外端部および前記電極用金属膜の外端部は、前記第2の第2導電型半導体領域上にのみ位置するように設けたことを特徴とする。
【0015】
上述した発明によれば、第1または第2の第2導電型半導体領域は、所定以上のアクセプタ濃度を有するため、逆バイアス電圧を減少でき、順方向サージ電流を大きくできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、順方向電流を十分大きくでき耐圧を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図3】p
+型領域のアクセプタ濃度と逆バイアス電圧との関係を示す図表である。
【
図4】活性領域周辺部(エッジ部)に設けられる活性領域を囲む耐圧構造部のp
+型領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。
【0019】
(実施の形態)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製された炭化珪素半導体装置について、接合障壁ショットキー(JBS:Junction Barrier Schottky)構造のダイオードを例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n
+型炭化珪素基板(ワイドバンドギャップ半導体基板)1の主面上にn型炭化珪素エピタキシャル層(ワイドバンドギャップ半導体堆積層)2が堆積されている。
【0020】
n
+型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n型炭化珪素エピタキシャル層2は、n
+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で例えば窒素がドーピングされてなる低濃度n型ドリフト層である。以下、n
+型炭化珪素基板1単体、またはn
+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2とを併せて炭化珪素半導体基体とする。n型炭化珪素エピタキシャル層2のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体のおもて面側)の表面層には、リング状のp型領域3が設けられ、このp型領域3の外周にはp
-型領域4が設けられている。また、p型領域3の内周にはp
+型領域5が設けられている。
【0021】
p型領域3(第2の第2導電型半導体領域)は、活性領域周辺部に設けられ活性領域を囲む耐圧構造部に設けられている。耐圧構造部は、耐圧を保持する領域である。また、p型領域3は、ダイオードの素子構造が形成された活性領域側に設けられ、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー接合を形成するショットキー電極7に接する。ショットキー電極7については後述する。
【0022】
p型領域3は、p
-型領域4よりも高い不純物濃度で例えばアルミニウム(Al)がドーピングされてなる。p型領域3の不純物濃度は、後述するように、所定の濃度以上であることが好ましい。その理由は、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。p型領域3は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー電極7との接合端部の電界集中を回避する機能を有する。また、p
-型領域4は、活性領域の周辺部においてさらに電界を分散させる機能を有する。p
+型領域5およびp
-型領域4は、それぞれ例えばアルミニウムがドーピングされてなる。
【0023】
p
+型領域(第1の第2導電型半導体領域)5は、活性領域に所定の間隔で複数設けられ、JBS構造(素子構造)を構成する。また、p
+型領域5は、p型領域3と離れて設けられる。p
-型領域(第3の第2導電型半導体領域)4は、p型領域3の周辺部に接し、当該p型領域3を囲むように設けられ、接合終端(JTE)構造を構成する。すなわち、活性領域側から耐圧構造部へ向かって、p型領域3およびp
-型領域4の順で並列に配置されている。
【0024】
耐圧構造部上には、p型領域3のp
-型領域4側およびp
-型領域4を覆うように層間絶縁膜6が設けられている。n
+型炭化珪素基板1のn型炭化珪素エピタキシャル層2側に対して反対側の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)には、n
+型炭化珪素基板1とオーミック接合を形成する裏面電極(オーミック電極)10が設けられている。裏面電極10は、カソード電極を構成する。n型炭化珪素エピタキシャル層2のn
+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面(炭化珪素半導体基体のおもて面)には、アノード電極を構成するショットキー電極7が設けられている。ショットキー電極7は、活性領域から耐圧構造部の一部にわたって設けられている。
【0025】
具体的には、ショットキー電極7は、活性領域において露出するn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面(炭化珪素半導体基体のおもて面)全面を覆い、活性領域の周辺部においてp型領域3に接する。また、ショットキー電極7は、活性領域から耐圧構造部へと延在して設けられ、層間絶縁膜6上に張り出している。そして、ショットキー電極7は、層間絶縁膜6を介してp型領域3を覆う。すなわち、ショットキー電極7の最も耐圧構造部側の端部は、JTE構造用のp型領域3上で終端している。
【0026】
ショットキー電極7は、次の材料でできているのがよい。その理由は、本発明の効果が顕著にあらわれるからである。ショットキー電極7は、例えば、IVa族金属、Va族金属、VIa族金属、アルミニウムまたはシリコンでできているのがよい。または、ショットキー電極7は、IVa族金属、Va族金属、VIa族金属、アルミニウムおよびシリコンのうちの2元素または3元素を含む複合膜でできているのがよい。特に、ショットキー電極7は、チタン(Ti)、アルミニウムまたはシリコンでできている、もしくは、チタン、アルミニウムおよびシリコンのうちの2元素または3元素を含む複合膜であるのが好ましい。さらに好ましくは、ショットキー電極7は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とショットキー接合を形成する部分が例えばチタン(Ti)でできているのがよい。
【0027】
ショットキー電極7とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのショットキー障壁高さは、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置を高耐圧半導体装置として使用する場合には、例えば1eV以上であるのが好ましい。また、ショットキー電極7のショットキー障壁高さは、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置を電源装置として使用する場合には、例えば0.5eV以上1eV未満であるのが好ましい。
【0028】
ショットキー電極7上には、例えばアルミニウムでできた電極パッド8が設けられている。電極パッド8は、活性領域から耐圧構造部へと延在し、かつその最も耐圧構造部側の端部はショットキー電極7上で終端している。JTE構造上には、ショットキー電極7および電極パッド8の最も耐圧構造部側の各端部を覆うように、例えばポリイミドからなるパッシベーション膜などの保護膜9が設けられている。保護膜9は、放電防止の機能を有する。
【0029】
図2は、実施例によるV−I特性を示す図表である。横軸はショットキーダイオードのAlメタルのアノード電極に印加する正バイアスV
F(V)、縦軸は順方向電流I
F(A/cm
2)である。
図2中、例えば、V
3=3.5V、V
2=4V、V
1=5V、I
1=540A/cm
2、I
2=675A/cm
2、I
3=771A/cm
2である。
【0030】
1.アノード電極(ショットキー電極)7がn型炭化珪素エピタキシャル層2との界面の全てでショットキー接合である場合(比較例)
この場合、正バイアスV
Fの増加により、順方向電流I
Fも増加し、発熱する。最終的には、自己発熱により、ショットキー接合での反応、例えば、Ti+SiC→TiC+Siなどで合金化してショットキー障壁高さ(φ
B)が低くなる。これにより、順方向電流I
Fが増加し、自己発熱し、順方向電流I
Fが増加する正のフィードバックが生じ破壊に至る。この際の特性は、
図2中、0→Q→R→Aの軌跡で表される。
【0031】
2.十分高いアクセプタ濃度をもつp
+型領域5がアノード電極(ショットキー電極)7の一部に設けられている場合(実施例)
ある逆バイアス電圧V
Kにて、ショットキー電極7とp
+型領域5との逆バイアスに印加されているショットキー界面において、アバランシェ降伏により正孔がp
+型領域5に流れる。この正孔がp
+型領域5からn型炭化珪素エピタキシャル層2に注入され、伝導度変調により、正バイアスV
Fが低減する。このため、以降は、順方向電流I
Fの増加により図中RからSに至るように正バイアスV
Fが低減し、R−S−Bの軌跡となる。このときの発熱量は、P=V
1I
1=V
2I
2により、一定となる。そして、I
2=(V
1/V
2)I
1>I
1となるため、順方向(サージ)電流I
F,SMは向上する。
【0032】
3.p
+型領域5のアクセプタ濃度について
図3は、p
+型領域のアクセプタ濃度と逆バイアス電圧との関係を示す図表である。上記2.において、逆バイアス電圧V
K<V
1となることが重要である。p
+型領域5のアクセプタ濃度(N
A)に依存する。N
Aが大であるほど、逆バイアス電圧V
Kは減少する。逆バイアス電圧V
K=V
1=5Vとしたとき、
図3に基づき、逆バイアス電圧V
Kとアクセプタ濃度N
Aの関係を導出する。
図5において、逆バイアス電圧V
Kを5V以下とするために、N
A>8×10
17(cm
-3)すればよい。ここで、エッジのp型領域3は、p
-型の領域であってもよい。
【0033】
4.p型領域3をp
+型領域としてもよい。
図4は、活性領域周辺部(エッジ部)に設けられる活性領域を囲む耐圧構造部のp
+型領域43を示す断面図である。
図4に示すように、エッジにp
+型領域43、p型領域44、p
-型領域45を設けることにより、逆バイアス電圧V
K<V
1で正孔がp
+型領域43に流入する。エッジ部にp
+型領域43を設けない場合、活性領域に正孔が注入されるが、ショットキー電極7の終端にp
+型領域43を設けると、隣接するエッジ部のp型領域44、p
-型領域45に正孔が流れて、n型炭化珪素エピタキシャル層2への正孔注入領域が活性部とエッジ部の両方となる。これにより、伝導度変調効果がより大きな面積で得られるようになり、より低抵抗化できるようになる。この構成によれば、
図2に示す0→Q→R−S−Cの軌跡の特性が得られる。そして、I
3=(V
2/V
3)I
2>I
2となり、さらに順方向サージ電流I
F,SMを増加できる。
【0034】
以上、説明したように、実施の形態によれば、活性領域周辺に設ける耐圧構造部のp型領域の濃度を所定の濃度以上とすることにより、ショットキー構造における順方向サージ電流I
F,SMを増加させることができ、耐圧を向上できるようになる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、上記実施の形態で説明したダイオードの素子構造に代えて、MOSFETの素子構成であっても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 n
+型炭化珪素基板
2 n型炭化珪素エピタキシャル層
3 p型領域
4 p
-型領域
5 p
+型領域
6 層間絶縁膜
7 ショットキー電極
8 電極パッド
9 保護膜
10 裏面電極