特許第6206878号(P6206878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206878
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/015 20060101AFI20170925BHJP
   G02F 1/025 20060101ALI20170925BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G02F1/015 501
   G02F1/025
   G02B6/12 363
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-513816(P2014-513816)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2014055124
(87)【国際公開番号】WO2015129039
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-35644(P2014-35644)
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100133282
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 春喜
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 利浩
(72)【発明者】
【氏名】武井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼原 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岡野 誠
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−198465(JP,A)
【文献】 特開2013−041138(JP,A)
【文献】 特開2008−065030(JP,A)
【文献】 特開2012−053399(JP,A)
【文献】 特表2001−500280(JP,A)
【文献】 特表2005−508014(JP,A)
【文献】 特開平10−074969(JP,A)
【文献】 特開2004−031518(JP,A)
【文献】 特開平08−316485(JP,A)
【文献】 特開平11−283922(JP,A)
【文献】 特表2002−540452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
G02F 1/00− 1/125
1/21− 1/335
IEEE Xplore
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む非晶質半導体層からなる第1の光導波路と、水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路とが、光学的な相互作用が及ぶ範囲で異なる層に配置されており、第2の光導波路の少なくとも一部にはp型半導体層、i型半導体層及びn型半導体層からなるpin接合構造を有する電気光変調器が備えられており、電気光変調器により第2の光導波路の屈折率を変化させることにより、第1の光導波路を伝搬する光波を変調する光半導体装置であって、
該電気光変調器のpin接合を構成するp型半導体層及びn型半導体層の少なくとも一方は、シリコンを含む結晶性半導体層であることを特徴とする光半導体装置
【請求項2】
上記第1の光導波路を構成するシリコンを含む非晶質半導体層は、水素化非晶質シリコン層であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶シリコン層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、レーザー結晶化シリコン層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項5】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、金属触媒による固相化結晶シリコン層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項6】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、単結晶シリコン層からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項7】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶SiC層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項8】
上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶SiO層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項9】
上記p型半導体層及びn型半導体層は、上記第2の光導波路の構成要素である上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を介して縦方向に積層して配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項10】
上記p型半導体層及びn型半導体層は、上記第2の光導波路の構成要素である上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を介して横方向に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項11】
上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路は、リング共振器型光導波路であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項12】
上記光半導体装置は、マッハツェンダー干渉計であり、干渉アーム内に層間膜によって積層方向に隔離して、上記pin接合構造を有する電気光変調器が備えられた第2の光導波路が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光変調器を備えた光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同一のシリコン基板上に光デバイスと電子デバイスを融合的に高密度集積するシリコンフォトニクス技術が大きな注目を集めている。この技術は、光通信分野への応用は勿論のこと、集積回路の光インターコネクション分野への応用も大いに期待され、現在も活発に研究開発がすすめられている。
【0003】
シリコンフォトニクス技術では、結晶シリコン(c−Si)が埋め込み酸化膜(BOX)上に形成されたSOI(Silicon On Insulator)基板を用いるのが一般的であるが、c−Siの形成には一般的に1100℃以上の極めて高温の工程を必要とすることや、SOI基板が高価であるといった問題がある。
そこで、400℃以下の低温で成膜可能でありながら、c−Siに匹敵するかあるいは非線形光学特性など一部では凌駕するような光学特性を持つ水素化非晶質シリコン(a−Si:H)を用いたシリコンフォトニクス技術が提案され、これまでに様々な受動素子の研究開発はなされてきた。
【0004】
ところが、光波を搬送波として電気的な信号の通信を行うためには、高速な電気光変換素子や、光路を電気信号で切り替えるような光スイッチング素子などの能動素子が必要であることは言うまでもないが、これらに関連する報告はそう多くはない。その理由として、a−Si:Hは非晶質材料であるために移動度や導電率等の電気的特性が乏しいことが挙げられる。
【0005】
一方で、非特許文献1に示されているように、何かしらの手法によりa−Si:Hの内部に注入あるいは励起された電子は、非常に短時間、典型的にはサブピコ秒の間に緩和していくことが知られており、これはキャリアの波動関数が拡がった状態から局在化した状態、具体的には、裾状態への緩和が極めて速いことに起因する。裾状態は、Siの結合長や結合角の揺らぎに由来するので、この高速なキャリア緩和はランダム構造に起因する非晶質半導体特有の現象といえる。
c−Siをベースとした電気光変調器はこれまで数多く報告されている(例えば、特許文献1)が、c−Siの場合はこの緩和時間が比較的遅く、変調速度を制限する主要な要因の一つとなっている。つまり、キャリア緩和時間の点では、c−Siに比べてa−Si:Hは高速な電気光変調器として有利な特性を有していると言える。
【0006】
図6に、非特許文献2に開示された従来の電気光変調器の断面模式図を示す。
この電気光変調器は、シリコン基板101上に不純物を添加していないi型a−Si:H層103を導波路コアとして備え、下クラッドとして、シリコン基板101とi型a−Si:H層103との間に、i型a−Si:Hと同様に低温成長可能でありながらi型a−Si:Hよりもやや屈折率の低い水素化非晶質シリコンカーバイド(a−SiC:H)に不純物を添加してp型半導体としたp型a−SiC:H層102と、上クラッド層として、i型a−Si:H層103の上に不純物の添加されたn型a−SiC:H層104と、その上部に酸化亜鉛/アルミニウム電極105とを備えている。
【0007】
図6に示す電気光変調器は、最も屈折率の高いi型a−Si:H層103を導波路コアとする光導波路構造を構成すると同時に、p型層(102)、i型層(103)、n型層(104)は、pin構造を構成している。
この電気光変調器では、n型層(104)、p型層(102)のa−SiC:Hの導電率はそれぞれ、2.3×10−6S/cm、1.9×10−8S/cmの各導電率を有している。
【0008】
上記電気光変調器は、シリコン基板101と導波路上部の酸化亜鉛/アルミニウム層105を通してi型a−Si:H層103に電圧が印加されるように外部電源に接続される。i型層(103)に逆バイアスが印加された時、空乏層はそれぞれp型層(102)、n型層(104)側へ広がり、i型層(103)のキャリア密度が減少し、i型a−Si:H層103の屈折率が増加する。
【0009】
それにより、i型a−Si:H層103を導波路コアとする導波路中を伝搬する光波の位相に変調を施すことができる。この場合、上記電気光変調器の動作速度は、主にp型層(102)、n型層(104)の移動度と導電率によって制限されるが、非特許文献2に記載の電気光変調器の場合、p型層(102)とn型層(104)に移動度と導電率が極めて低いa−SiC:Hを用いているために、1Gbpsを超えるような高速な変調動作を得ることは極めて困難である。すなわち、この電気光変調器においては、a−Si:Hの高速キャリア緩和特性が生かされていない。
【0010】
上記の問題点を解決するため、発明者らは先の特許出願(特許文献2参照)において新規な電気光変調器を提案している。
図7に、提案した電気光変調器の一例の断面模式図を示す。
この電気光変調器は、シリコン基板201上にシリコン基板を熱酸化して得られたシリコン熱酸化膜202を備え、その上に0.1μm厚程度のB(ボロン)添加のp型水素化微結晶シリコン(μc−Si:H)層203と、1.3μm厚程度の無添加のi型a−Si:H層204と、0.1μm厚程度のP(リン)添加のn型μc−Si:H層205とが縦方向に積層されている。
さらにその上に、シリコン酸化膜206と、ITO(酸化インジウムスズ)膜207と、アルミニウム(Al)からなる電極208、209とを備える。
【0011】
203、204及び205の各層は、それぞれ同等程度の屈折率(3.4〜3.6)を有しており、また、屈折率1.44程度の、シリコン熱酸化膜202、シリコン酸化膜206及びITO膜207よりも屈折率が高いために、光導波路コアとして機能し、ここを光波が伝搬する。
光導波路は、幅3.0μm程度、高さ1.5μm程度、リブ高さ0.1μm程度のリブ型構造を構成している。また、203、204及び205の各層は、pin構造を構成しており、i型a−Si:H層204に電子あるいは正孔を注入することができる。
【0012】
図8に、本発明者らが提案した電気光変調器の他の一例の断面模式図を示す。
この電気光変調器は、p型半導体層及びn型半導体層を、i型非晶質半導体からなる光導波路を介して縦方向に積層して配置するとともに、上面での電極取り出しを可能としたものである。
図8に示す電気光変調器は、シリコン基板301上にシリコン基板を熱酸化して得られたシリコン熱酸化膜302を備え、その上にB(ボロン)添加のp型μc−Si:H層303と、縦方向に積層した無添加のi型a−Si:H層304と、P(リン)添加のn型μc−Si:H層305とを備える。
さらにその上に、シリコン酸化膜306と、IZO(酸化インジウム亜鉛)膜307と、電極308とを備えている。また、B(ボロン)添加のp型μc−Si:H層303の引出電極として、IZO膜309と、電極310とを備える。
【0013】
303、304及び305の各層は、それぞれ同等程度の屈折率(3.4〜3.6)を有しており、屈折率1.44程度の、シリコン熱酸化膜302、シリコン酸化膜306及びIZO膜307よりも屈折率が高いために、光導波路コアとして機能し、ここを光波が伝搬する。
光導波路は典型的には幅0.5μm程度、高さ0.2μm程度の細線型構造を構成している。
また、303、304及び305の各層はpin構造を構成しており、i型a−Si:H層304に電子及び正孔を注入することができる。
【0014】
以上、本発明者らが提案した電気光変調器の一部を紹介したが、提案した電気光変調器についてまとめると次のようになる。
(1)シリコンを含むi型非晶質半導体からなる光導波路と、i型非晶質半導体からなる光導波路を介して相互に離隔して配置されi型非晶質半導体からなる光導波路とともに光導波路を構成する、シリコンを含むp型半導体層及びシリコンを含むn型半導体層を備えた電気光変調器であって、上記p型半導体層及びn型半導体層の少なくとも一方は結晶性半導体層である電気光変調器。
(2)SOI基板、光集積回路基板等の基板と、基板上に形成されたシリコンを含むi型非晶質半導体からなる光導波路と、i型非晶質半導体からなる光導波路を介して相互に離隔して配置されi型非晶質半導体からなる光導波路とともに光導波路を構成する、シリコンを含むp型半導体層及びシリコンを含むn型半導体層を備えた電気光変調器であって、上記p型半導体層及びn型半導体層の少なくとも一方は結晶性半導体層である電気光変調器。
上記の電気光変調器は、上記p型半導体層及びn型半導体層間に電圧を印加するかあるいは電流を流すことにより、上記i型非晶質半導体からなる光導波路の屈折率を可変とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2009−537871号公報
【特許文献2】特願2014−27772号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Y. Shoji, T. Ogasawara, T. Kamei, Y. Sakakibara, S. Suda, K. Kintaka, H. Kawashima, M. Okano, T. Hasama, H. Ishikawa, and M. Mori, “Ultrafast nonlinear effects in hydrogenated amorphous silicon wire waveguide,” Opt. Express 18, 5668-5673 (2010).
【非特許文献2】F. G. Della Corte, S. Rao, G. Coppola, and C. Summonte, “Electro-optical modulation at 1550 nm in an as-deposited hydrogenated amorphous silicon p-i-n waveguiding device,” Opt. Express 19, 2941-2951 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
シリコン光導波路型の電気光変調器においては、光導波路中のキャリア密度を制御するためのpn接合やpin接合等の機構をシリコン光導波路構造に付与する。
CVD(Chemical Vapor Deposition)やPECVD(Plasma Enhanced CVD)などにより、低温成長したシリコン薄膜に依り上記機構を実現する際には、SiHなどの原料ガスにB、PHなどの不純物ガスを添加することにより、価電子制御を行い、p型シリコン層、i型シリコン層、n型シリコン層を連続して成膜するため、縦にpinが積層された構造となる。
一方、B(ボロン)やP(リン)などの不純物が添加されたシリコンは、室温で多くの自由キャリアが存在しており、主に光通信で使用される波長帯(波長1550nmを中心とする波長帯)においてDrudeの関係式に従い自由キャリア密度におおむね比例する光学的な吸収を持つことが実験的に確かめられている。電気光変調器を高速に駆動させるために、p型シリコン層、n型シリコン層の導電率はなるべく高い方が望ましいが、一方で光吸収が増大するという問題がある。このため、変調器機能を持たない導波路しては、不純物の添加量が少ないか、添加されていないi型シリコン層を用いることが望ましい。
【0018】
この時、積層型pin構造の電気光変調器とi型シリコン層からなる光導波路とを光学的に接続するのは極めて困難であり、電気光変調器箇所にのみp型シリコン層とn型シリコン層をパターニングとエッチングで形成する必要があるため、pin構造を連続して作製できないなど製造プロセスが複雑化し高コスト化が免れない。
【0019】
一方、横型pin構造又はpn構造の電気光変調器においては、i型シリコン層との光学的な結合は、それほど困難ではないが、例えば、リング共振器型電気光変調器と導波路を光学的に結合させるには、通常、同一面内で両者の間に200nmのギャップを形成する必要がある。高価なエキシマレーザーを用いた液浸露光装置を用いれば、このようなギャップ構造の形成は可能であるが、安価なi線露光装置で形成することは難しい。
【0020】
したがって、本発明は、電気光変調器を光導波路とは異なる層に分離して、光導波路との光学的な接続損失を最小限に抑制し、かつ、安価に製造可能な光半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
(1)シリコンを含む非晶質半導体層からなる第1の光導波路と、水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路とが、光学的な相互作用が及ぶ範囲で異なる層に配置されており、第2の光導波路の少なくとも一部にはp型半導体層、i型半導体層及びn型半導体層からなるpin接合構造を有する電気光変調器が備えられており、電気光変調器により第2の光導波路の屈折率を変化させることにより、第1の光導波路を伝搬する光波を変調する光半導体装置であって、該電気光変調器のpin接合を構成するp型半導体層及びn型半導体層の少なくとも一方は、シリコンを含む結晶性半導体層であることを特徴とする光半導体装置。
(2)上記第1の光導波路を構成するシリコンを含む非晶質半導体層は、水素化非晶質シリコン層であることを特徴とする(1)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶シリコン層からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、レーザー結晶化シリコン層からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、金属触媒による固相化結晶シリコン層からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、単結晶シリコン層からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶SiC層であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記シリコンを含む結晶性半導体層は、微結晶SiO層であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光半導体装置。
)上記p型半導体層及びn型半導体層は、上記第2の光導波路の構成要素である上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を介して縦方向に積層して配置されていることを特徴とする(1)ないし()のいずれかに記載の光半導体装置。
10)上記p型半導体層及びn型半導体層は、上記第2の光導波路の構成要素である上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を介して横方向に隣接して配置されていることを特徴とする(1)ないし()のいずれかに記載の光半導体装置。
11)上記水素化非晶質Si−Geからなるi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路は、リング共振器型光導波路であることを特徴とすることを特徴とする(1)ないし(10)のいずれかに記載の光半導体装置。
12)上記光半導体装置は、マッハツェンダー干渉計であり、干渉アーム内に層間膜によって積層方向に隔離して、上記pin接合構造を有する電気光変調器が備えられた第2の光導波路が配置されていることを特徴とする(1)ないし(10)のいずれかに記載の光半導体装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、変調を必要とする第1の光導波路が、pin接合構造を有する電気光変調器を備える第2の光導波路とは異なる層に配置されているため、第1の光導波路と第2の光導波路との光学的な接続損失を最小限に抑制した光半導体装置を得ることができる。
さらに、製造工程的にも受動回路の形成と、能動回路の形成を異なる層に分離できるため製造工程が簡素化し、i線露光装置を利用できるため、低コスト化にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る光半導体装置の断面概念図である。
図2】第1の実施例に係る光半導体装置の鳥瞰図である。
図3】第1の実施例に係る光半導体装置のA−A’断面模式図である。
図4】第2の実施例に係る光半導体装置の鳥瞰図である。
図5】第2の実施例に係る光半導体装置のB−B’断面模式図である。
図6】従来の電気光変調器の断面模式図である。
図7】発明者らの提案に係る電気光変調器の一例の断面模式図である。
図8】発明者らの提案に係る電気光変調器の他の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(本発明に係る光半導体装置)
本発明に係る光半導体装置の断面構造概念図を図1に示す。
本発明に係る光半導体装置は、シリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路407と、シリコンを含むi型半導体層404を構成要素として含む第2の光導波路409とが、光学的な相互作用が及ぶ範囲で異なる層に配置されている。そして、第2の光導波路409の少なくとも一部にシリコンを含むp型半導体層403、シリコンを含むi型半導体層404及びシリコンを含むn型半導体層405からなるpin接合構造を有する電気光変調器409が備えられている。
本発明に係る光半導体装置は、第1の光導波路407を伝搬する光波を光学的な相互作用により、シリコンを含むi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路409に移動させ、少なくともその一部にpin接合構造を有する電気光変調器409により第2の光導波路409の屈折率を変化させることにより、光波を変調した後、第1の光導波路407に伝搬する光波を戻すものである。また、電気光変調器でもある第2の光導波路409が共振器構造を有する場合、共振条件に依っては、第1の光導波路407を伝搬する光波は、第2の光導波路と相互作用せずに、そのまま第1の光導波路407を伝搬する。
【0025】
なお、シリコンを含むp型半導体層403、シリコンを含むn型半導体層405は、相互にその配置を置換することができる。
また、第1の光導波路407、第2の光導波路409も互いに異なる層に配置されている限り、相互にその配置を置換することができる。
【0026】
以下、図2ないし図5を参照して、本発明に係る光半導体装置の実施例を紹介する。
なお、以下に例示する各実施例は、あくまでも本発明に係る光半導体装置の理解を容易にするためのものであって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術思想に基づく変形、他の実施形態等は、当然本発明の光半導体装置に包含されるものである。
【0027】
(第1の実施例)
図2は、本発明の第1の実施例であり、その鳥瞰図を示している。
第1の実施例は、シリコンを含むi型半導体層を構成要素として含む第2の光導波路を、リング共振器型光導波路としたものである。
この光半導体装置は、リング共振器型光導波路504よりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる下クラッド層501と、電気光変調器を備えたリング共振器型光導波路504とシリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路505のいずれよりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる層間膜502と、層間膜502によって互いに積層方向に隔離して配置される、下クラッド層501上のpin接合構造を有する電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504と、例えば水素化非晶質シリコン(a−Si:H)等の低温成膜可能なシリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路505とを備える。この上には、第1の光導波路505よりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる上クラッド層503を備える。
また、図3は、そのA−A’断面模式図である。図3において、p型結晶性シリコン層506、i型水素化非晶質シリコン層507、n型結晶性シリコン層508は、pin接合構造を有する電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路を構成している。
【0028】
(第1の実施例の作製)
次に光半導体装置の作製工程を説明する。
(1)SOI基板、光集積回路基板等の基板上に、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとするシリコン酸化膜を成膜することで下クラッド層501を形成する。必要に応じて、シリコン酸化膜表面を化学的機械的研磨(CMP)法により研磨する。
(2)その後、シリコン酸化膜上にpin構造となるp型結晶性シリコン層506、i型水素化非晶質シリコン層507、n型結晶性シリコン層508からなる3層の各シリコン薄膜をPECVD法により成膜する。
(3)その後、通常の半導体プロセスを用いてpin接合構造を有するシリコンを含むi型半導体層からなる第2の光導波路を形成し、上層と下層の間で光学的かつ電気的に絶縁を確保するために、シリコン酸化膜の層間膜502を成膜する。必要に応じて、シリコン酸化膜表面を化学的機械的研磨(CMP)法により研磨する。
(4)その後、シリコン酸化膜の層間膜502上にa−Si:Hを成膜し、a−Si:Hをコアとする第1の光導波路を通常の半導体プロセスにより形成する。最後に、シリコン酸化膜を成膜し上クラッド層503を形成する。
【0029】
なお、第1の実施例では、下クラッド層501、層間膜502、上クラッド層503を構成する膜として、シリコン酸化膜を例示したが、a−Si:Hよりも屈折率の低い絶縁材料であれば例えば、シリコン亜酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等であってもよい。
また、シリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路505はあくまで例示的な構造を示しているだけにすぎず、シリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路505のような働きをする光導波路は少なくとも1本あればよく、またその配置は電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504と光学的な相互作用が及ぶ範囲に配置されていれば、どのような配置でもよい。
【0030】
(電気光変調器の動作)
上記電気光変調器の動作を説明する。
シリコンを含むi型半導体層からなるリング共振器型光導波路504のpin構造に印加する電圧を制御することでi型半導体層の屈折率を制御することが可能であり、すなわちシリコンを含むi型半導体層からなるリング共振器型光導波路504中を伝搬する光波の伝搬定数を制御することが可能である。
【0031】
(光半導体装置の動作)
印加電圧と、電気光変調器を備えるシリコンを含むi型半導体層からなるリング共振器型光導波路504中を伝搬する光波の電磁界分布と相互作用が及ぶ範囲の材料あるいは形状によって決定する共振波長の光波を、第1の光導波路505に紙面手前から入射した時、電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504と第1の光導波路505が接近する箇所において第1の光導波路505を伝搬する光波は電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504へ結合し、第1の光導波路505の紙面奥側へ透過する光は減少する。
【0032】
電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504に印加されている電圧を上記状態から変化させた時、電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504の屈折率が変化し、共振波長が変化するため、第1の光導波路505手前から入射されている光波は電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504へ結合することなく、第1の光導波路505の紙面奥側へ透過する。つまり、第1の光導波路505を紙面奥側へ透過する光波の強度を、電気光変調器を備えるリング共振器型光導波路504へ印加する電圧で制御することができる。
【0033】
(第2の実施例)
図4は、本発明の第2の実施例であり、その鳥瞰図を示している。
この光半導体装置は、2つの光合分波器605によって構成されるマッハツェンダー干渉計の干渉アーム内に、層間膜602によって積層方向に隔離して配置される層間膜602上のi型水素化非晶質シリコン層608を備える。
そして、シリコン光導波路604よりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる下クラッド層601と、縦方向方向性結合器607、i型水素化非晶質シリコン層608、縦方向方向性結合器607からなる上層の光導波路のいずれよりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる層間膜602と、縦方向方向性結合器607と、a−Si:H等の低温成膜可能なシリコン光導波路604、2つの光合分波器605、干渉光導波路606とを備える。
縦方向方向性結合器607、i型水素化非晶質シリコン層608、縦方向方向性結合器607からなる上層の光導波路上には、該光導波路よりも屈折率が低く、光学的な吸収損失の少ない典型的にはシリコン酸化膜からなる上クラッド層603を備える。
また、図5は、そのB−B’断面模式図である。図5において、p型結晶性シリコン層609、i型水素化非晶質シリコン層608、n型結晶性シリコン層610は、pin接合構造を有する電気光変調器を構成している。
【0034】
上層に配置されているi型水素化非晶質シリコン層608からなる光導波路と下層の光導波路は、上下層間で光波を結合させることのできる縦方向方向性結合器607からなる機構を備える。
上下層間の光波結合の機構は一例を示しているだけにすぎず、上下層間で光波を結合させることができればその他に例えば、グレーティング結合器などを利用してもよい。
【0035】
マッハツェンダー干渉計を構成する光合分波器605は、光波を合分岐させることができればその他にも例えば、多モード干渉導波路型(MMI)光合分波器等でもよい。
i型水素化非晶質シリコン層608と、上下間で光波を結合させる機構である縦方向方向性結合器607は、マッハツェンダー干渉計内に少なくとも一か所に導入されていればよく、干渉光導波路606の途中に挿入されていてもよい。
上記光半導体装置の作製工程は、第1の実施例と同様である。
【0036】
次に、上記光半導体装置の動作を説明する。シリコン光導波路604の紙面手前側から入射した光波は、光合分波器605によって2分岐される。分岐された光波の片方は、縦方向方向性結合器607からなる機構により上層のi型水素化非晶質シリコン層608からなる光導波路に結合する。i型水素化非晶質シリコン層608からなる光導波路は上で説明したものと同様の原理により、伝搬している光波の伝搬定数に変調を施す。その後、縦方向方向性結合器607からなる上下層間で光波を結合させる機構によって、再び下層に戻される。
【0037】
変調を施された光波と干渉光導波路606を伝搬している光波との間には位相差が発生しているため、光合分波器605によって、その位相差にしたがって、合波後の光強度が変化する。それぞれの光波が同相の時、合波して紙面奥側に光は透過する。
一方で、それぞれの光波が反相の時は、合波することなく光波は透過しない。すなわち、光合分波器605の紙面奥側へ透過する光波の強度を、p型結晶性シリコン層609、i型水素化非晶質シリコン層608、n型結晶性シリコン層610からなるpin接合構造へ印加する電圧で制御することができる。
【0038】
以上、各実施例では、シリコンを含む半導体層からなる第1の光導波路として、水素化非晶質シリコン層を例示したが、例えば、水素化非晶質Si−Ge、水素化非晶質Si−C、シリコン窒化膜のようなシリコンを含む非晶質半導体層であればよい。
また、各実施例では、シリコンを含むi型非晶質半導体として、水素化非晶質シリコンを例示したが、水素化非晶質Si−Geであってもよい。特に、水素化非晶質Si−Geは非晶質シリコンや結晶性シリコンに比べて屈折率が高く、i型非晶質半導体に効率的に光を閉じ込めることができるので、光学的な損失を減らすことができる。
【0039】
さらに、各実施例では、pin接合構造を構成するp型半導体層及びn型半導体層として、p型結晶性シリコン層、n型結晶性シリコン層を例示したが、結晶性シリコンとしては、水素化微結晶シリコン、レーザー結晶化シリコン、金属触媒による固相化結晶シリコン、単結晶シリコン、微結晶SiC、微結晶SiOが好ましい。特に、微結晶SiC、微結晶SiOは、非晶質シリコンや結晶性シリコンに比べて屈折率が低く、i型非晶質半導体層に効率的に光を閉じ込めることができるので、光学的な損失を減らすことができる。
【0040】
なお、pin接合構造を構成するp型半導体層及びn型半導体層については、少なくとも一方は結晶性シリコン層であるのが好ましい。
すなわち、p型半導体層及びn型半導体層の少なくとも一方を、水素化微結晶シリコン(μc−Si:H)、レーザー結晶化シリコン、金属触媒による固相化結晶シリコンのような結晶性半導体層とすることにより、i型非晶質半導体層に高速にキャリアを注入でき、a−Si:Hのようなi型非晶質半導体の有する高速なキャリア緩和現象を利用できるため、高速動作が可能で、かつ、光学的な損失の少ない電気光変調器として作動することができる。
さらに、p型半導体層及びn型半導体層の配置については、図1図3に示すようにi型非晶質半導体からなる光導波路を介して縦方向に積層したり、図5に示すようにi型非晶質半導体からなる光導波路を介して横方向に隣接して配置したり、i型非晶質半導体からなる光導波路を介して横方向に対向して配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
101 シリコン基板
102 p型a−SiC:H層
103 i型a−Si:H層
104 n型a−SiC:H層
105 酸化亜鉛/アルミニウム電極
201 シリコン基板
202 シリコン熱酸化膜
203 p型μc−Si:H層
204 i型a−Si:H層
205 n型μc−Si:H層
206 シリコン酸化膜
207 ITO膜
208 電極
209 電極
301 シリコン基板
302 シリコン熱酸化膜
303 p型μc−Si:H層
304 i型a−Si:H層
305 n型μc−Si:H層
306 シリコン酸化膜
307 IZO膜
308 電極
309 IZO膜
310 電極
311 絶縁膜
401 基板
402 下クラッド層
403 シリコンを含むp型半導体層
404 シリコンを含むi型半導体層
405 シリコンを含むn型半導体層
406 層間膜
407 シリコンを含む非晶質半導体層からなる第1の光導波路
408 上クラッド層
409 第2の光導波路であるとともに少なくともその一部にpin接合を有する電気光変調器
501 下クラッド層
502 層間膜
503 上クラッド層
504 リング共振器型光導波路
505 第1の光導波路
506 p型結晶性シリコン層
507 i型水素化非晶質シリコン層
508 n型結晶性シリコン層
601 下クラッド層
602 層間膜
603 上クラッド層
604 シリコン光導波路
605 光合分波器
606 干渉光導波路
607 縦方向方向性結合器
608 i型水素化非晶質シリコン層
609 p型結晶性シリコン層
610 n型結晶性シリコン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8