【文献】
慈恵医大誌,1992年,Vol. 107,pp. 983-995
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0018】
<態様1>
本発明の態様1は、抗菌剤の抗菌活性を促進する抗菌活性促進剤であって、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、若しくは、ホスファチジルエタノールアミン、又は、それらの製薬学的に許容される塩よりなることを特徴とする抗菌活性促進剤である。
【0019】
上記抗菌剤は、本発明の「抗菌活性促進剤」で抗菌活性が促進されるものであれば特に限定はされない。
本発明は、「アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、若しくは、ホスファチジルエタノールアミン、又は、それらの製薬学的に許容される塩」(以下、括弧内を単に「本発明の抗菌活性促進剤」と略記することがある)が、抗菌剤の抗菌活性を促進することを初めて見出してなされたものであり、該特定化合物が抗菌活性促進剤として作用する発明範囲において、促進される側である抗菌剤は、「本発明の抗菌活性促進剤」で抗菌活性が促進されるものであれば特に限定はされない。
【0020】
本発明の抗菌活性促進剤は、抗菌剤がメナキノンを標的とするものであることが好ましく、また、抗菌剤が環状ペプチド化合物であるであることが好ましく、後記式(1)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩である環状ペプチド化合物であるであることが好ましい。
【0021】
<態様2>
本発明の態様2は、「アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、若しくは、ホスファチジルエタノールアミン、又は、それらの製薬学的に許容される塩」、及び、「該抗菌活性促進剤により抗菌活性が促進される抗菌剤」を含有する感染症治療薬である。
すなわち、本発明の態様2は、態様1の上記「本発明の抗菌活性促進剤」と、該抗菌活性促進剤により抗菌活性が促進される抗菌剤との少なくとも2以上の化合物を含有する感染症治療薬である。
【0022】
抗菌効果を促進される側である抗菌剤としては、限定はされないが、メナキノンを標的とする抗菌剤、又は、環状ペプチド化合物であることが好ましい。
【0023】
メナキノンを標的とする抗菌剤の作用機序は、細胞膜でメナキノンと結合し、細胞膜の破壊を引き起こすことである。従って、メナキノンを標的とする抗菌剤であれば、後記する同じくメナキノンを標的とする抗菌剤である「カイコシンE」の抗菌効果を実際に促進することが見出された「本発明の抗菌活性促進剤」が、その抗菌剤の抗菌効果をも促進する場合があることは明確である。
従って、本発明の抗菌活性促進剤、及び、該抗菌活性促進剤により抗菌活性が促進され、メナキノンを標的とする抗菌剤を含有する感染症治療薬は、抗菌効果が促進された結果、明らかに優れた感染症治療薬となる。
【0024】
また、抗菌効果を有する環状ペプチド化合物の抗菌剤としての作用機序は、細胞膜で標的分子と結合し、細胞膜の破壊を引き起こすことであると考えられる。従って、環状ペプチド化合物である抗菌剤であれば、後記する同じく環状ペプチド化合物である「カイコシンE」の抗菌効果を実際に促進することが見出された「本発明の抗菌活性促進剤」が、その環状ペプチド化合物の抗菌効果をも促進する場合があることは明確である。
従って、本発明の抗菌活性促進剤、及び、該抗菌活性促進剤により抗菌活性が促進され、環状ペプチド化合物である抗菌剤を含有する感染症治療薬は、抗菌効果が促進された結果、明らかに優れた感染症治療薬となる。
【0025】
促進される側である抗菌剤として、特に好ましくは、メナキノンを標的とする環状ペプチド化合物であり、更に好ましくは、下記式(1)で表される化合物(以下、「カイコシン」と記載する場合がある)である。
【化1】
[式(1)中、R
1は置換基を有していてもよい炭素数が7、8又は9のアシル基を示し、R
2はメチル基又は水素原子を示し、R
3はエチル基又はメチル基を示す。]
【0026】
カイコシンは、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP−870のリソバクター(Lysobacter)属に属するRH2180−5株、又はその株と同様の化合物を産生する能力を有する変異株を培養し、その培養物から得られるものであることが好ましい。
【0027】
特に、前記式(1)で表される抗菌剤は、カイコ黄色ブドウ球菌感染モデルだけでなく、マウス黄色ブドウ球菌感染モデルでも、バンコマイシンに比して高い治療効果が確認されたものがあり、感染症治療薬の有効成分として好適に用いることができる。
【0028】
上記式(1)中のR
1は、置換基を有していてもよい炭素数が7、8又は9のアシル基を示す。上記アシル基の炭素数には「C=O」の炭素数(1個)も含まれる。置換基を除いた「炭素数が7、8又は9のアシル基」は、「R’−C(=O)−」で表わされ、ここで、R’は、炭素数が6、7又は8のアルキル基を示す。また、R’は直鎖であっても分岐を有していてもよいが、分岐を有していることが好ましい。また、分岐された部分はメチル基であることが好ましく、特に限定はないが、R’の「C=O」とは反対側の末端は、「CH
3(CH
3)CH−」となっていることが特に好ましい。また、R’すなわちR
1が分岐を有する場合には、上記R
1の炭素数(7、8又は9)には、分岐された部分の炭素数も含まれる。また、上記式(1)中のR
1の置換基は、水酸基であることが好ましい。
【0029】
具体的には、上記式(1)中のR
1は、3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサノイル基、3−ヒドロキシ−6−メチル−ヘプタノイル基又は3−ヒドロキシ−7−メチル−オクタノイル基であることが好ましい。
【0030】
また、上記式(1)で示される「環状ペプチド化合物又はその製薬学的に許容される塩」は、R
1が3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサノイル基であり、R
2がメチル基であり、R
3がエチル基であるものが好ましく、R
1が3−ヒドロキシ−7−メチル−オクタノイル基であり、R
2がメチル基であり、R
3がエチル基であるものが好ましい。
本発明においては、上記式(1)で示される「環状ペプチド化合物又はその製薬学的に許容される塩」であって、R
1が3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサノイル基であり、R
2がメチル基であり、R
3がエチル基であるものを「カイコシンE」と記載する。
【0031】
本発明の抗菌活性促進剤を得る方法に限定はなく、如何なる方法で得られたものでもよい。例えば、化学合成によって得られたものであってもよく、微生物を用いて発現させたものであってもよく、生物体から分離したものであってもよい。
また、抗菌剤も、如何なる方法で得られたものでもよい。例えば、化学合成によって得られたものでもよく、微生物が産生したものでもよく、それらを組み合わせて得られたものでもよい。
【0032】
本発明の「アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、又は、ホスファチジルエタノールアミン、又は、それらの製薬学的に許容される塩」は、単離されたものが好ましく、単離・精製されたものがより好ましい。
【0033】
<態様3>
本発明の態様3は、アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、又は、ホスファチジルエタノールアミン(本発明の抗菌活性促進剤)により抗菌活性が促進されるものであることを特徴とする環状ペプチド化合物又はその製薬学的に許容される塩である。
【0034】
本発明の態様3の上記環状ペプチド化合物はメナキノンを標的とするものであることが好ましい。
本発明の態様3は、「上記の環状ペプチド化合物又はその製薬学的に許容される塩」、並びに、「アポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、及び、ホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物又はその製薬学的に許容される塩」を含有する感染症治療薬でもある。
【0035】
本発明の「環状ペプチド化合物又はその製薬学的に許容される塩」を得る方法は、特に限定されない。例えば、化学合成によって得られるもの、該環状ペプチド化合物を産生する微生物の培養によって得られるものであってもよい。
【0036】
<感染症治療薬>
本発明の抗菌活性促進剤、及び、該抗菌活性促進剤により抗菌活性が促進される抗菌剤を含有する感染症治療薬は、感染症に対して優れた治療効果を奏する。
本発明の態様2、3の感染症治療薬は、耐性菌のよる感染症に対して優れた治療効果を奏する。
【0037】
上記抗菌剤は、「本発明の抗菌活性促進剤」で抗菌活性が促進されるものであれば特に限定はされない。メナキノンを標的とする抗菌剤であることがより好ましく、前記式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0038】
上記抗菌剤を得る方法は、特に限定されない。例えば、化学合成によって得られるもの、該環状ペプチド化合物を産生する微生物の培養によって得られるものであってもよい。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP−870のリソバクター(Lysobacter)属に属するRH2180−5株、又はその株と同様の化合物を産生する能力を有する変異株を培養し、その培養物から得られるものであることが好ましい。
【0039】
中でも、特に、前記式(1)で表される抗菌剤は、カイコ黄色ブドウ球菌感染モデルだけでなく、マウス黄色ブドウ球菌感染モデルでも、バンコマイシンに比して高い治療効果が確認されたものがあり、感染症治療薬の有効成分として好適に用いることができる。
【0040】
上記の感染症治療薬中の、環状ペプチド化合物、並びに、本発明の抗菌活性促進剤の含有量には特に制限はなく、目的や投与方法に応じて含有量を適宜選択して用いればよい。
上記の本発明の感染症治療薬中の、抗菌活性促進剤及び抗菌剤の含有量比には特に制限はなく、目的や投与方法に応じて決められるが、抗菌活性促進剤(a)の抗菌剤(b)に対する質量割合は、a/b=0.1〜1000が好ましく、a/b=1〜500がより好ましく、a/b=10〜100が特に好ましい。
【0041】
本発明の抗菌活性促進剤を用いることにより、抗菌剤の有する抗菌活性を1.1倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上促進することができる。
【0042】
また、通常の抗生物質を製剤化する際に用いられる担体や賦形剤等の添加剤を、適宜、剤形等の要求に応じて、抗菌効果を損なわない範囲内で選択して用いることができる。
【0043】
前記の感染症治療薬の剤形は、投与の目的や方法に応じて適宜選択すればよく、例えば、粉末、顆粒、カプセル、錠剤、液剤等の経口投与剤;注射剤、経静脈剤、坐剤、経皮、経鼻、経腸、吸入剤等の非経口投与剤の何れであってもよい。
経口投与剤のための賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、デンプン、ポリビニルピロリドン等、公知の賦形剤を用いることができ、液剤とする場合は、抗菌活性促進剤及び抗菌剤に、不活性な溶媒、例えば、精製水、エタノール等と共に、薬学的に許容される乳剤、懸濁剤、可溶化剤、甘味剤、pH調整剤、芳香剤、防腐剤等を含有させて用いることができる。
【0044】
注射剤として用いる場合は、注射用の蒸留水や生理食塩水のような無菌の水性液剤を用いることができ、非水性の液剤としては、オリーブ油等の植物油;エタノール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール等のアルコール類等を用いることができる。更に、等張化剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、シクロデキストリン等の溶解補助剤を含んでいてもよい。
【0045】
以上のように製剤化した本発明の感染症治療薬の投与量は、症状、年齢、性別、剤形、投与方法、1日の投与回数等を考慮して適宜決定すればよいが、一般的な投与量は、成人1日当たり10mg〜1000mgである。しかしながら、耐性菌に対する治療で多用される重症化患者に点滴によって経静脈剤として用いられる場合等には、更に多い投与量を必要とする場合もあり得る。
【実施例】
【0046】
以下、実施例、試験例及び検討例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。
【0047】
実施例1
<カイコシンEの調製>
カイコシンEは、RH2180−5株を培養し、培養液を精製し得られたものを使用した。培養及び精製手順は、特開2012−006917号公報に掲載されている手順に従った。
【0048】
検討例1
<カイコシンEの膜破壊作用に対するメナキノンの関与>
カイコシンE処理後に細胞分解が観察されること、及び、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(以下、「S.aureus」と略記する場合がある))にカイコシンEを加えるとすぐに膜電位が消失することから、カイコシンEは膜破壊に関与していることが考えられる。
カイコシンEの標的分子の探索を行った結果、カイコシンE抵抗性変異体で、fni又はmenA遺伝子に変異が生じていることが分かった。両遺伝子は、メナキノン生合成経路に関与している。そして、メナキノンをカイコシンEと混合すると、水中で複合体を形成したことより、カイコシンEの標的分子がメナキノンであることが示唆された。
【0049】
そこで、カイコシンEによる膜破壊に対するメナキノンの役割を確認するために、カルセイン封入リポソームを調製し、膜破壊アッセイ(membrane leakage assay)を行った。結果を
図1に示す。
【0050】
図1中の「PG」は、ホスファチジルグリセロール、「PC」はホスファチジルコリン、「MK」はメナキノンを示す。
図1の結果より、メナキノンを含有していないリポソーム(liposome without menaquinone)に比べて、メナキノンを含有しているリポソーム(liposome with menaquinone)においてリポソーム破壊が観察された。
一方、MRSA感染治療用リポペプチド系抗菌薬であるダプトマイシンで同様の実験を行ったが、メナキノンを含有しているか否かでリポソーム破壊の変化は生じなかった。
以上の結果から、メナキノンはカイコシンEによる膜破壊に関与していることが分かった。
【0051】
検討例2
<カイコシンEとメナキノンとの結合相互作用の確認>
等温滴定型熱量計によりカイコシンEとメナキノンとの結合作用の確認を行った。その結果、カイコシンEとメナキノンはモル比率1:1のとき、結合定数(Ka)2.2±0.4×10
5Mで結合していた。
実施例1と2の結果から、細胞膜でカイコシンEとメナキノンが結合し、膜破壊が誘導されることが示唆される。
【0052】
検討例3
<血清によるカイコシンEの抗菌活性促進>
カイコシンE、ダプトマイシン及びバンコマイシンの、Staphylococcus aureusに対する抗菌活性の検討を行った。
Mueller Hinton Broth培地に10%血清(ヒト血漿、仔ウシ血清、ウサギ血清、ヒツジ血清又はマウス血清)を添加した場合と血清を添加しなかった場合のそれぞれのMIC値を、CLSI(旧NCCLS米国臨床検査標準委員会)に基づく微量検体希釈法によって測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果より、仔ウシ血清を加えるとカイコシンEの抗菌活性の促進効果が確認された。ヒト血漿、ウサギ血清、ヒツジ血清、及びマウス血清を、それぞれ培地に加えた場合も同様にカイコシンEの抗菌活性が促進された。
一方、血清を加えても、ダプトマイシン及びバンコマイシンの抗菌活性は促進されなかった。
【0055】
検討例4
<血清濃度変化によるカイコシンEの抗菌活性への影響>
カイコシンEのS.aureusに対する抗菌活性の検討を行った。
血清濃度を0〜20質量%に変化させた場合のそれぞれのMIC値をCLSI(旧NCCLS米国臨床検査標準委員会)に基づく微量検体希釈法によって測定した。測定結果を
図2に示す。
【0056】
縦軸をMIC値(μg/mL)、横軸を血清濃度(%)でプロットすると、血清濃度の増加に伴って逆シグモイド曲線のグラフとなった。
【0057】
検討例5
<カイコシンEの活性促進因子の精製>
表1の結果より、血清の中にカイコシンEの抗菌活性を促進させる因子が含有することが示唆された。次に、血清をエタノール抽出及びODSカラムを用いたクロマトグラフィーにより精製した。ODSカラムにより精製・分画された各フラクションの活性を測定した。測定結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
60%エタノール抽出により精製された血清をODSカラムに吸着させ、有機溶媒濃度を変化させて、カラムに吸着した血清を分画した。表2中、1μg/mLカイコシン存在下において黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する最小濃度を1ユニットと定義する。
表2の結果より、75%エタノールにより溶出されたフラクションの比活性は精製前の血清より190倍上昇した。
【0060】
検討例6
<プロテアーゼ処理による抗菌活性の促進効果への影響>
カイコシンEの活性促進因子がタンパク質であるか否かの検討を行った。まず、トリプシン処理によるカイコシンEの抗菌活性への影響を調べた。その結果を表3に示す。
次に、検討例5における75%エタノールにより溶出されたフラクションについて、トリプシン処理による抗菌活性の促進活性(Enhancing activity)への影響を調べた。その結果を表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
表3の結果より、トリプシン処理によりカイコシンEの抗菌活性は変化しなかった。
一方、表4の結果より、75%エタノールにより溶出されたフラクションについては、トリプシン処理により抗菌活性の促進活性がトリプシン処理前に比べて97%減少した。
以上より、血清中のタンパク質がカイコシンEの抗菌活性の促進に関与していることが示唆された。
【0064】
検討例7
<促進因子の同定>
促進因子を同定するために、検討例5で得た各フラクションをSDS−PAGEによりタンパク質を分離した。その結果を
図3に示す。
また、血清をサイズ排除カラムによるクロマトグラフィーにより精製・分離された各フラクションをSDS−トリプシンゲル電気泳動によりタンパク質を分離した。その結果を
図4に示す。
【0065】
図3中の「Serum」は精製する前の血清である。「EtOH fr.」は60%エタノール抽出により精製された血清である。「Fr.1」は、60%エタノール抽出により精製された血清をODSカラムに供した際の素通り画分、「Fr.2」は25%エタノールにより溶出されたフラクション、「Fr.3」は50%エタノールにより溶出されたフラクション、「Fr.4」は75%エタノールにより溶出されたフラクション、「Fr.5」は100%エタノールにより溶出されたフラクションである。「ND」は抗菌活性の促進活性が確認されなかったことを意味する。
図4中の上段の値は、抗菌活性促進活性(Units)を示している。
【0066】
図3と
図4の結果より、抗菌活性の促進活性が確認されたすべてのフラクションで24kDaにバンドが検出された。バンドの濃度に比例して抗菌活性の促進活性が強くなった。以上のことから、24kDaのタンパク質がカイコシンEの効果を促進させる因子であることが考えられた。
【0067】
上記24kDaのバンドを切り出し、トリプシン消化することにペプチドに断片化した。そして、ペプチドマスフィンガープリンティング法により質量分析を行った結果、上記24kDaのタンパク質はアポリポタンパク質A−Iであることが分かった。
【0068】
実施例2
<アポリポタンパク質A−I、A−IIによるカイコシンEの抗菌活性の促進>
10%仔ウシ血清(Bovine serum)、検討例5で得られた75%エタノールにより溶出させたフラクション(30μg/mL)、ヒト組換え型アポリポタンパク質A−I(rhApoA−I、90μg/mL)、ヒトアポリポタンパク質A−II(hApoA−II、30μg/mL)をそれぞれMueller Hinton Broth培地に添加し、カイコシンEの抗菌活性を確認した。90μg/mL rhApoA−Iは、血清10%に相当する量を添加したことになる。その結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5の結果より、ヒト組換え型アポリポタンパク質A−I存在下でカイコシンEの抗菌活性は、血清非存在下に比べて約31倍上昇した。また、アポリポタンパク質A−Iと構造が類似しているアポリポタンパク質A−IIでも、カイコシンEの抗菌活性が上昇した。
以上のことから、アポリポタンパク質A−I及びA−IIは、カイコシンEの抗菌活性を促進させる因子であることが確認された。
【0071】
検討例8
<肺サーファクタントに含まれるカイコシンEの抗菌活性を促進する因子の精製>
牛の肺サーファクタントに含まれるカイコシンEの抗菌活性を促進する因子の精製を行った。牛肺サーファクタントをブタノールに転溶し、有機溶媒画分をさらにエタノール抽出により精製を行った。その結果を表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
表6において、1μg/mLカイコシン存在下において黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する最小濃度を1ユニットと定義した。表6の結果から、ブタノール転溶及びエタノール抽出により、カイコシンEの抗菌活性を促進する因子の精製をすることができた。
【0074】
検討例9
<カイコシンEの抗菌活性の促進関与因子の同定>
カイコシンEは、リポタンパク質であること、及び細胞膜でカイコシンEとメナキノンが結合し、膜破壊が誘導されることが示唆されることから、細胞膜の構成成分であるリン脂質がカイコシンEの抗菌活性の促進に関与しているか否かの検討を行った。その結果を表7に示す。
【0075】
【表7】
【0076】
表7の結果より、ホスファチジルエタノールアミン(以下、「PE」と略記する場合がある)が、カイコシンEの抗菌活性の促進に関与していることが示唆された。
【0077】
実施例3
<PEのカイコシンEの抗菌活性促進作用の検討>
次に、ホスファチジルエタノールアミンがカイコシンEの抗菌活性に対して促進作用を有するか検討を行った。その結果を表8に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
表8の結果より、ホスファチジルエタノールアミンがカイコシンEの抗菌活性を促進することが分かった。
【0080】
実施例4
<抗菌活性促進剤及び抗菌剤の製剤化>
<<錠剤>>
カイコシンE5.0mg、アポリポタンパク質A−I50mg、ラクトース40mg、デンプン20mg、及び、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5mgを均一に混合した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース8質量%水溶液を結合剤として湿式造粒法で打錠用顆粒を製造した。これに滑沢性を与えるのに必要なステアリン酸マグネシウムを0.5mgから1mg加えてから打錠機を用いて打錠し、錠剤とした。
【0081】
カイコシンE2.0mg、アポリポタンパク質A−I20mgを、2質量%2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン水溶液10mLに溶解し、注射用液剤とした。