【実施例】
【0013】
図1は、本実施例による模擬降雪装置を備えた試験設備の全体構造を示すものである。
一般的には、3mの距離で人間の存在を認識できれば、安全が確保されるとしていることから、この模擬降雪装置は、
図1に示すように、幅4m、奥行き1m、高さ1.5mの試験室1の内部に、側壁から1mのところに、人間を模した試験片2を設置し、擬似雪片噴射部3から擬似雪片4を降雪させた状態で、3m離れた窓5から、ロボット等に搭載されるセンサ6により、試験片2の存在を確実に視認できるか否かを試験する。なお、センサ6としては、CCDカメラ、ステレオカメラ、レーザー測距装置、赤外線測距装置など様々なものが含まれる。
なお、本実施例では、ステンレスフレームに、ビニールシートで天井面、側壁を覆うことで試験室1を製作した。
【0014】
ここで、試験空間内において、試験片2周囲の擬似雪片による反射の影響をも再現するため、所定の降雪量の程度が再現されるよう、擬似雪片4の降下量を、試験片2の周辺の空間内に均等に分配して降下させることが必要となる。
【0015】
図2は、そのための擬似雪片降雪装置の基本構造を説明する図である。
図1に示すような試験空間の床面には、逆裁頭円錐形の擬似雪片貯留部7が設けられ、擬似雪片4が貯留されている。擬似雪片貯留部7の中央部には、貯留した擬似雪片4の直上面に位置するよう、吸引パイプ8の先端が配置されている。吸引パイプ8の外周には、圧縮空気噴出部9が設けられており、吸引パイプ8の内部において、エアコンプレッサー10からの圧縮空気を上方に向けて噴出するようにしている。なお、エアコンプレッサー10は、ボールバルブなどの風量調節機能、圧力調節機能を備えたもので、シミュレーションを行う視界条件に応じて擬似雪片4の噴出量を調整できるようになっている。
【0016】
擬似雪片4としては、発泡ビーズなどの樹脂素材を用いるが、互いに接触したり、衝突することにより静電気が発生して塊となったり、試験装置の側壁に付着するのを防止するため、表面に静電気防止処理を行うことが好ましい。また、擬似雪片4は、比重や粒径により空気中に滞留する時間や、反射量が異なるため、実際に発生する降雪時の視界が再現できるよう、樹脂材料の材質や形状が選定される。本実施例では、粒径が1mm〜3mm程度の球状の樹脂製発泡ビーズを使用した。
【0017】
吸引パイプ8は、試験室1の側壁に沿って天井部まで上昇し、本実施例では、天井面に沿って、試験片2の直上付近までパイプが延設されている。本実施例では、天井部に到るまでを吸引パイプ8、その上端から天井面に沿い、後述する擬似雪片噴射部3までを排出パイプ11と称する。
【0018】
擬似雪片噴射部3から噴射された擬似雪片4は、再び、裁円錐状の擬似雪片貯留部7に回収され、試験期間中、擬似雪片貯留部7の中央部における擬似雪片高さをほぼ一定に維持することができる。これにより、吸引パイプ8から吸引される擬似雪片4の量が変動するのを防止することができる。もちろん、裁円錐状の擬似雪片貯留部7の上端外縁を、試験室1の側壁まで延出させ、噴出された擬似雪片の全量を回収できるようにしてもよい。
【0019】
次に、擬似雪片噴射部3の構造について説明する。
擬似雪片噴射部3は、
図3に示すような、ラッパ状に拡開する円筒状の擬似雪片旋回部12を備えており、その拡開側端部(
図3において上方)に形成した嵌合部13に、天井面に沿ってその中央部付近まで延設された排出パイプ11の末端が結合されている。擬似雪片旋回部12の内周面には、嵌合部13の下方から徐々に縮径する基端部20(
図3において下方)に向けて、所定の高さを有する、螺旋状のフィン14が内周面に設けられている。
【0020】
擬似雪片旋回部12の基端部20外周には、
図4に示されるように、ノズル部15の基端部16が外嵌されている。基端部16の上面には、擬似雪片旋回部12の内周面に形成したフィン14と同数の8本のチューブ17からなるチューブ体18が一体成形されている。各チューブ17の垂直断面は、中心角略45°の扇形形状をしており、内部に擬似雪片4が通過する通路が形成されている。
【0021】
なお、
図4は、チューブ体18の構造を分かりやすく説明したもので、この実施例では、ノズル部15の基端部16が、天井面に沿う擬似雪片旋回部12と連続するように結合されているので、各チューブ17の先端に形成された噴射口から、擬似雪片4が試験片2の周囲に均等に降下するように、各チューブの17の長さや噴射口の向きが選定されている。
【0022】
図4において、各チューブ17の下端は、基端部16の上面
で8本の放射状のリブ19を形成するよう一体成形されており、このリブ19は、擬似雪片旋回部12の下端に嵌合されたとき、8本のフィン14の末端と整合するよう形状が定まられている。このため、各チューブ17の下端と擬似雪片旋回部12の基端部20が正しく位置決めされるよう、双方にマークや、互いに嵌合する凹部、凸部が形成されている。
【0023】
擬似雪片噴射部3の作用について説明する。
図2に示したように、エアコンプレッサー10により、擬似雪片貯留部7に貯留された擬似雪片4は、吸引パイプ8の末端から吸い込まれる。その後、試験空間の天井部に到り、排出パイプ11を経て、擬似雪片旋回部12に導入される。
擬似雪片4は、その自重により、排出パイプ11の内部において、下方を流れることになるが、擬似雪片旋回部12内周に形成された螺旋状のフィン14によりその下流側(
図2において下方側)に向けて、強力な旋回流が形成されることになる。
この旋回流により擬似雪片4に遠心力が作用するが、擬似雪片旋回部12の内周面が徐々に縮径しているため、基端部20に到るまでに、隣り合うフィン14の間に均等に分散されることになる。
その結果、各チューブ17の下端に形成されるリブ19に到るまでに、擬似雪片4が均等に分配され、各チューブ17にほぼ同数の擬似雪片4が導入されるので、各チューブ17の先端に設けられた噴出口から、試験室1内の試験片周辺に同数の擬似雪片4が噴出されることになる。
【0024】
各チューブ17は、エアコンプレッサー10の風量に合わせて、各噴出口から噴出される擬似雪片4が、試験片2の周辺に均等に降下するよう、その先端の噴出口の向きが設定されており、シミュレーションを行う視界条件に応じて最適なものを選択する。なお、各チューブ17の先端の向きを自由に調節できるよう調節機構を設けたり、チューブ17自体をフレキシブルな材質で形成してもよい。各チューブ17の先端に設けられた噴出口から同数の擬似雪片が噴出されるため、調整を簡単に行うことが可能となる。
また、各チューブ17の先端の噴出口の形状によっても、擬似雪片4の空間内における降下密度を調整することが可能である。
【0025】
なお、実施例では、試験室1に擬似雪片噴射部3を1ユニット設けているが、試験室1の容積や、シミュレーションを行う視界条件によっては複数のユニットを設けるようにしても良い。
また、雨天、降雪、濃霧等、実施の気象条件に応じて、それぞれの視界条件が再現できるよう、予め、実験結果を比較し、エアコンプレッサー10の風量や、使用する擬似雪片などを選択できるよう、対応マップを作成することが好ましい。