特許第6206947号(P6206947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6206947多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206947
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20100101AFI20170925BHJP
【FI】
   G06N99/00 153
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-78556(P2013-78556)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-203245(P2014-203245A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・電気通信回線を通じて発表 ウェブサイトの掲載日:平成24年10月7日 講演予稿集が掲載されたウェブサイトのURL: http://www.springer.com/computer/image+processing/book/978−3−642−33782−6 ・集会において発表 開催日:平成24年10月7〜13日(8日に発表) 集会名:第12回コンピューター映像に関するヨーロッパ会議(12th European Conference on Computer Vision)
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102336
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 匠
【審査官】 多胡 滋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−211123(JP,A)
【文献】 特開2011−081697(JP,A)
【文献】 Hamed Pirsiavash,外2名,Bilinear classifiers for visual recognition,[online],Neural Information Processing Systems Conference,2009年,[2017年2月6日検索],URL,http://vision.ics.uci.edu/papers/PirsiavashRF_NIPS_2009/PirsiavashRF_NIPS_2009.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習用の教示信号付きの複数の多チャンネルデータ行列に基づき、識別行列を求める学習手段と、前記識別行列を使用して入力された多チャンネルデータ行列を識別し、識別結果を出力する識別手段とを備えた多チャンネルデータ識別装置において、
前記学習手段は、学習用の各多チャンネルデータ行列の識別誤差の和と、前記識別行列のトレースノルムとの和を目的関数とし、
前記目的関数を双対問題を用いて以下に示す数式11に変形し、
【数11】
前記数式11を目的関数として、変形した目的関数の値が最小になるように、最急降下法によって識別行列を求める
ことを特長とする多チャンネルデータ識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法に関するものであり、特に複数の計測装置から得られる複数チャネルの時系列情報から正常/異常などを識別(判定)する多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のセンサーからの時系列情報や、複数の計測装置から得られる複数チャネルの時系列情報である多チャンネル信号は例えば縦軸をチャネル番号、横軸を時間とする特徴行列(特徴次元×物理次元)の形式で表現することができる。そして、多チャンネル時系列信号から正常/異常を判定するには双線形モデルを用いることができ、その双線形モデルの学習(最適化)手法については幾つかの近似手法が提案されている。しかし、近似手法においては局所解となる恐れが存在し、最適性が保証されないので識別精度が低いという問題点があった。
【0003】
そこで、最適解を求めるために、SDP(Semi-definite_programming:半正定値計画法)という手法が提案されている。下記の特許文献1には、半正定値計画法(SDP)を用いて解を求める制御系解析・設計装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−328239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記したSDPにおいては、学習のための計算時間が膨大となってしまい、多数のサンプルを学習に用いることが困難になるという問題点があった。 本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解決し、複数の計測装置から得られる複数チャネルの時系列情報を高精度かつ高速に学習し、識別する多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法は、双線形モデルの学習を計算量が少ない凸最適化問題として定式化した点に特長がある。
【0007】
本発明の多チャンネルデータ識別装置は、学習用の教示信号(クラスラベルや評価値など)付きの複数の多チャンネルデータ行列に基づいて識別行列を求める学習手段と、前記識別行列を使用して入力された多チャンネルデータ行列を識別し、識別結果を出力する識別手段とを備えた多チャンネルデータ識別装置において、前記学習手段は、学習用の各多チャンネルデータ行列の識別誤差の和と、前記識別行列のトレースノルムとの和を目的関数とし、前記目的関数の値が最小になるような識別行列を求めることを主要な特長とする。
【0008】
また、前記した多チャンネルデータ識別装置において、前記学習手段は、前記目的関数を双対問題に基づいて変形し、変形した目的関数の値が最小になるように、最急降下法によって識別行列を求める点にも特長がある。 また、前記した多チャンネルデータ識別装置において、前記学習手段は、前記目的関数を後述する数式に変形し、数式を目的関数として識別行列を求める点にも特長がある。
【0009】
本発明の多チャンネルデータ識別方法は、学習用の教示信号(クラスラベルや評価値など)付きの複数の多チャンネルデータ行列に基づき、学習用の各多チャンネルデータ行列の識別誤差の和と、前記識別行列のトレースノルムとの和を目的関数とし、前記目的関数の値が最小になるような識別行列を求める学習ステップと、前記識別行列を使用して入力された多チャンネルデータ行列を識別し、識別結果を出力する識別ステップとを含むことを主要な特長とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多チャンネルデータ識別装置および多チャンネルデータ識別方法には以下のような効果がある。(1)大域的最適解が保証され、双線形モデルは特徴行列の本質的な構造を抽出することができるので、入力データの識別精度が向上する。 (2)SDPではなく、計算量の小さい凸2次計画法を繰り返すのみなので、学習時の計算量が小さい。 (3)双線形モデルのランク数が自動的に決まり、高速の学習、識別処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の多チャンネルデータ識別装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は本発明の多チャンネルデータ識別方法における学習処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、本発明の識別方法について説明する。複数の計測装置から得られる複数チャネルの時系列信号である多チャンネル信号は、縦軸をチャネル番号、横軸を時間(時刻)として電圧などの各測定値を2次元に並べた特徴行列で表すことができる。このような特徴行列に対する双線形モデルによる識別(判定、推定値を求める)は以下の数式1によって行われる。なお、特徴行列の行数は列数よりも大きいものとする。(なお、列数が行数よりも大きい場合には特徴行列を転置すればよい。)
【0014】
【数1】
【0015】
なお、trはトレース(行列の対角和)である。識別値(判定値、推定値)yハットは特徴行列Xと識別行列Wから算出される。識別行列Wは、数式2に示す学習用の特徴行列(学習サンプル)Xおよびその教示信号(評価値、学習サンプルのラベル)y(例えば正常が+1、異常が−1)から後述する学習処理によって求める。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、識別行列Wとしては以下のような条件が必要とされる。即ち、(1)識別対象を高精度で識別する。(2)計算量が少なく高速な識別を可能とするためにランク数は出来る限り小さい。なお、ランク数(行列の階数、rank)とは、行列の列ベクトルの一次独立なものの最大個数であり、ランク数が増えると計算量がランク数に線形に増加する。これらの条件を満足させるために、以下の数式3に示す目的関数を最小化するような識別行列Wを求める必要がある。
【0018】
【数3】
【0019】
なお、数式3の第1項はWのランク数を表す項であり、第2項は各学習データの識別誤差の和を表す項である。しかし、ランク数を直接最小化させる数式3の最適化問題は効率的に解くことが困難である。そこで、本発明においては識別行列Wの特異値の和であるトレースノルム|W|Σに着目し、トレースノルム|W|Σが小さければランク数も小さいことを利用して、以下の数式4に示すように目的関数のランク数をトレースノルムに置き換える。
【0020】
【数4】
【0021】
以下、この数式4の目的関数の式の変形を行う。まず、トレースノルム|W|Σは以下の数式5の不等式を満足するので、数式4は以下に示す数式6に変形できる。
【0022】
【数5】
【0023】
【数6】
【0024】
更に、数式6の第2項および第3項は、数式7に示すような式の置き換え(双対問題)が可能であるので、最適化対象であるWcをΣc=Wc*WcTに置き換えることで数式6は数式8に変形できる。
【0025】
【数7】
なお、数式7の最後の行の不等号に似た記号および0は非負定値を表す。
【0026】
【数8】
【0027】
本発明においては、この数式8を目的関数として、後述する最急降下法によって新たな最適化対象であるΣcを求め、Σcから以下の数式9によって識別行列Wを求める。
【0028】
【数9】
【0029】
そして、識別処理においては特徴行列Xから特徴行列Wを用いて識別値yを求める。
【0030】
次に、実施例の装置について説明する。 図1は本発明の多チャンネルデータ識別装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図1はセンサー信号を入力するための構成であり、複数のセンサー10、11、12は例えば農業用ビニールハウスの内部の温度、湿度、CO2濃度をデジタル信号に変換し、コンピューター15に出力する。
【0031】
コンピューター15は例えばアナログ電気信号を取り込むための複数のインターフェイス回路(アナログ信号入力回路:サンプリング、A/D変換回路)あるいはデジタル信号を取り込むための複数のインターフェイス回路を備えた周知のパソコン(PC)であってもよい。本発明は、パソコンなどの周知の任意のコンピューター15に後述する処理を実行するプログラムを作成、インストールすることにより実現される。
【0032】
モニタ装置12はコンピューター11の周知の出力装置であり、例えばハウス内の環境や病気予兆の有無について適/不適、正常/異常などの識別結果等をオペレータに表示するために使用される。キーボード13およびマウス14は、オペレータが入力に使用する周知の入力装置である。
【0033】
図2は本発明を使用した学習処理の内容を示すフローチャートである。学習処理においては最急降下法と言われる最適化手法を採用している。前記した数式8に示す目的関数の1次微分を数式10に示す。
【0034】
【数10】
【0035】
学習処理においては上記した数式10の一次微分の大きさが所定の値ε未満になるまで処理を繰り返す。学習処理においては、まず、数式2に示す学習用の特徴行列Xおよびその評価値y(例えば正常が+1、異常が−1)のセットを多数コンピューター15の外部記憶装置などに用意しておく。
【0036】
S10においては、行列Σcをランダムな値で初期化し、j=0の時の初期値とする。S11においては、jに1を代入する。S12においては、λに1を代入する。
【0037】
S13においては、Σc[j]=Σc[j-1]−λ∇J(Σc[j-1])を計算する。S14においては、S13で求めたΣc[j]を、Σc[j]=VΩVT=ΣidωiiiTと固有分解する。なお、V=[v1,…,vd]:固有ベクトル、Ω=diag(ω1,…,ωd):固有値を対角に並べた対角行列である。
【0038】
S15においては、負の固有値を除外して、Σcを更新する。Σc[j]=Σi|ωi>0ωiiiT、S16においては、J(Σc[j])<J(Σc[j-1])?か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS17に移行するが、肯定の場合にはS18に移行する。S17においては、λに0.5λを代入してS13に移行する。
【0039】
S18においては、||∇J(Σc[j]) ||2<εか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS19に移行するが、肯定の場合には学習処理を終了する。なお、「||…||」はノルムを表す記号であり、εは非常に小さな定数(例えばε=10-4)である。S19においては、jに1を加算して、S12に移行する。以上の装置および学習処理によって、高精度かつ少ない計算量で識別行列Wが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は多数のセンサーからの測定信号を初め、心電計からの出力信号、音声その他の音響信号などコンピューターに入力可能な任意の複数の信号の認識、識別、機械の故障等による異音、異常検出に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10〜12…センサー 13…心電計 15…コンピューター 16…モニタ装置 17…キーボード 18…マウス
図1
図2