特許第6206976号(P6206976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6206976
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20170925BHJP
   F28F 1/30 20060101ALI20170925BHJP
   F28F 1/06 20060101ALI20170925BHJP
   F28F 1/08 20060101ALI20170925BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20170925BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F28F1/32 M
   F28F1/30 C
   F28F1/06
   F28F1/08
   F28D1/053 A
   F25B39/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-547031(P2014-547031)
(86)(22)【出願日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2013080788
(87)【国際公開番号】WO2014077318
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-251291(P2012-251291)
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿園 直毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洋介
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−247539(JP,A)
【文献】 特許第4815612(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0142201(US,A1)
【文献】 特開2011−174676(JP,A)
【文献】 特開平01−219497(JP,A)
【文献】 特開2002−107074(JP,A)
【文献】 特開2008−180468(JP,A)
【文献】 特開2008−232592(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/090872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F25B 39/00
F28D 1/053
F28F 1/06
F28F 1/08
F28F 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱部材の表面に滑らかな曲面を用いて断面が波形で波の頂部が連続する頂部線と波の底部が連続する底部線とがV字形状となるよう複数の波形凹凸が形成されており、前記複数の波形凹凸に対して第1の熱交換用流体をV字形状における上下方向に流して熱交換する熱交換器において、
前記複数の波形凹凸は、前記頂部線におけるV字の傾斜部位と前記第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、頂部と底部との中間となる中間部が連続する中間部線におけるV字の傾斜部位と前記第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器であって、
前記熱交換器は、コルゲートフィン型熱交換器であり、
前記伝熱部材は、コルゲートフィンであり、
前記波形凹凸は、頂部と底部とが対称となるよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱交換器であって、
前記伝熱部材は、前記第1の熱交換用流体と熱交換する第2の熱交換用流体の流路を形成する扁平な複数のチューブであり、
前記チューブの扁平な外表面に前記波形凹凸が形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱交換器であって、
前記複数の波形凹凸は、前記第1の熱交換用流体の上流側に位置する波形凹凸の波形における振幅が前記第1の熱交換用流体の上流側に位置する波形凹凸の波形における振幅より大きくなるよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱交換器であって、
前記複数の波形凹凸の前記頂部線および前記底部線は、V字が複数回に亘って連続して繰り返されるよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項5記載の熱交換器であって、
前記複数の波形凹凸は、前記頂部線の屈曲部位が前記伝熱部材の端部近傍に位置するよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱交換器であって、
前記複数の波形凹凸は、前記頂部線の屈曲部位における頂部の高さが前記頂部線の屈曲部位とは異なる部位における頂部の高さより高くなるよう形成されている、
ことを特徴とする熱交換器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、詳しくは、伝熱部材の表面に滑らかな曲面を用いて断面が波形で波の頂部が連続する頂部線と波底部が連続する底部線とがV字形状となるよう複数の波形凹凸が形成されており、前記複数の波形凹凸に対して第1の熱交換用流体をV字形状における上下方向に流して熱交換する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器としては、熱交換用チューブやフィンに、波の頂部を連ねた線や波の底部を連ねた線が空気の主要な流れに対してなす角が10度から60度の範囲となり且つ空気の主要な流れに沿った所定間隔の折り返し線で対称に折り返す波形の凹凸を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この熱交換器では、空気の流れの剥離や局所的な増速を抑制すると共に空気の流れに有効な二次流れを生じさせて伝熱効率を向上させ、全体として熱交換効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−180468号公報
【特許文献2】特開2008−232592号公報
【特許文献3】特開2012−137288号公報
【発明の概要】
【0004】
上述の熱交換器では、熱交換用チューブやフィンに形成された波形の凹凸における波は一定の波長で一定の振幅となるように形成されており、空気などの熱交換用流体の流れに対して、伝熱促進や熱交換用流体の流動抵抗が最適となる形状であるか否かは定かではない。
【0005】
本発明の熱交換器は、熱交換用チューブやフィンなどの熱交換部材に波形の凹凸が形成された熱交換器において、伝熱促進がより高く流動抵抗がより低くなる熱交換器を提案することを主目的とする。
【0006】
本発明の熱交換器は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱交換器は、
伝熱部材の表面に滑らかな曲面を用いて断面が波形で波の頂部が連続する頂部線と波底部が連続する底部線とがV字形状となるよう複数の波形凹凸が形成されており、前記複数の波形凹凸に対して第1の熱交換用流体をV字形状における上下方向に流して熱交換する熱交換器において、
前記複数の波形凹凸は、前記頂部線におけるV字の傾斜部位と前記第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、頂部と底部との中間位置となる中間部が連続する中間部線におけるV字の傾斜部位と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるよう形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の熱交換器では、複数の波形凹凸は、滑らかな曲面を用いて断面が波形に形成されており、更に、波の頂部が連続する頂部線と波の底部が連続する底部線とがV字形状となるように かつ、頂部線におけるV字の傾斜部位と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、頂部と底部との中間となる中間部が連続する中間部線におけるV字の傾斜部位と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるよう形成されている。上述した先行技術文献に記載された熱交換器と同様に、本発明の熱交換器では、滑らかな曲面を用いて波の頂部が連続する頂部線と波底部が連続する底部線とがV字形状となるように複数の波形凹凸を形成することにより、第1の熱交換用流体の流れに対して剥離や局所的な増速を抑制すると共に第1の熱交換用流体の流れに対して伝熱促進に有効な二次流れを生じさせる。そして、頂部線におけるV字の斜線部位と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が中間部線におけるV字の斜線部位と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるようすることにより、伝熱促進がより高く流動抵抗がより小さい熱交換器とすることができる。ここで、「頂部と底部との中間となる中間部」は、頂部と底部とに対して高さ方向における中間位置(平均高さ位置)となる部分を意味している。中間部が連続する中間部線は、頂部線や底部線がV字形状となっているから、V字形状となる。波形凹凸が第1の平均角度が第2の平均角度より小さくなるように形成されているということは、頂部線のV字の屈曲部位と傾斜部位の端部(V字が連続する場合には隣接する屈曲部位)との距離が、対応する中間部線のV字の屈曲部位と斜線部位の端部(V字が連続する場合には隣接する屈曲部位)との距離より長くなるように形成されていることになる。このように形成すると、頂部線の屈曲部位における波の立ち上がり(登り)の角度が大きくなるように形成することができるから、これにより、第1の熱交換用流体の主要な流れに対して更に有効な二次流れを生じさせ、伝熱促進を向上させることができる。また、頂部線のV字の傾斜部位における波の立ち上がりの角度を小さくなるように形成することができるから、これにより、第1の熱交換用流体が頂部線を乗り越える際の抵抗を小さくすることができる。これらの結果、伝熱促進が高く流動抵抗が小さな熱交換器とすることができる。
【0009】
こうした本発明の熱交換器において、前記熱交換器はコルゲートフィン型熱交換器であり、前記伝熱部材はコルゲートフィンであり、前記波形凹凸は頂部と底部とが対称となるよう形成されている、ことを特徴とすることもできる。即ち、コルゲートフィン型熱交換器のコルゲートフィンに本発明の波形凹凸の形状を適用したものである。ここで、「波形凹凸は頂部と底部とが対称となるよう形成されている」は、フィンの一方の面における波の頂部と底部はフィンの他方の面における波の底部と頂部となることから、フィンの一方の面における波の頂部の形状とフィンの他方の面における波の頂部の形状とが同一になるように形成されていることを意味している。このように波形凹凸を形成することにより、フィンの一方の面または他方の面のいずれに流れる第1の熱交換用流体に対しても主要な流れに対する有効な二次流れを形成することができ、伝熱促進を向上させることができるのである。
【0010】
また、本発明の熱交換器において、前記伝熱部材は前記第1の熱交換用流体と熱交換する第2の熱交換用流体の流路を形成する扁平な複数のチューブであり、前記チューブの扁平な外表面に前記波形凹凸が形成されている、ことを特徴とするものとすることもできる。即ち、複数のチューブを有する熱交換器のチューブの外表面に本発明の波形凹凸の形状を適用したものである。ここで、「第1の熱交換用流体」と「第2の熱交換用流体」は、いずれも熱交換媒体を意味しており、例えば、「第1の熱交換用流体」として空気などを用い、「第2の熱交換用流体」としてオイルや水などを用いてもよいし、逆に、「第2の熱交換用流体」として空気などを用い、「第1の熱交換用流体」としてオイルや水などを用いてもよい。
【0011】
さらに、本発明の熱交換器において、前記複数の波形凹凸は、前記第1の熱交換用流体の上流側に位置する波形凹凸の波形における振幅が前記第1の熱交換用流体の上流側に位置する波形凹凸の波形における振幅より大きくなるよう形成されている、ことを特徴とするものとすることもできる。即ち、伝熱部材において、第1の熱交換用流体の入口側に形成された波形凹凸の波形における振幅が第1の熱交換用流体の出口側に形成された波形凹凸の波形における振幅より大きくなるように波形凹凸を形成するのである。ここで「波形における振幅」は、波形凹凸の頂部の高さや底部の深さに相当する。
【0012】
あるいは、本発明の熱交換器において、前記複数の波形凹凸の前記頂部線および前記底部線は、V字が複数回に亘って連続して繰り返されるよう形成されている、ことを特徴とするものとすることもできる。ここで、「V字が複数回に亘って連続して繰り返される」とは、例えばV字を2回に亘って連続して繰り返すことによりW字となるように、V字を横に接触させた状態で複数個並べて得られる形状、即ちジグザグ形状を意味している。こうした複数の波形凹凸の頂部線および底部線がV字が複数回に亘って連続して繰り返されるよう形成されている態様の本発明の熱交換器において、前記複数の波形凹凸は、前記頂部線の屈曲部位が前記伝熱部材の端部近傍に位置するよう形成されている、ことを特徴とするものとすることもできる。つまり、波形凹凸の頂部線と底部線はV字が複数回に亘って連続して繰り返されるよう形成されており、更に、こうした頂部線の屈曲部位が伝熱部材の端部近傍に位置するように形成されているのである。例えば、V字が連続するように形成された波形凹凸の頂部線の端部(伝熱部材の端部)はV字の斜線部位における下方の部位となっているのである。こうすることにより、伝熱部材の表面に伝熱促進に大きく寄与する部位である頂部線の屈曲部位をより多く形成することができ、伝熱促進を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の熱交換器において、前記複数の波形凹凸は、前記頂部線の屈曲部位における頂部の高さが前記頂部線の屈曲部位とは異なる部位における頂部の高さより高くなるよう形成されている、ことを特徴とするものとすることもできる。頂部線の屈曲部位における頂部の高さが頂部線の屈曲部位とは異なる部位における頂部の高さより高くなるよう形成することにより、第1の熱交換用流体の主要な流れに対する二次流れを更に有効に生じさせて伝熱促進を向上させることができる。一方、「頂部線の屈曲部位における頂部の高さが頂部線の屈曲部位とは異なる部位における頂部の高さより高くなるように形成する」ことは、言い換えれば、「頂部線の屈曲部位とは異なる部位における頂部の高さが頂部線の屈曲部位における頂部の高さより低くなるように形成する」ことになる。これにより、頂部線の屈曲部位とは異なる部位における第1の熱交換用流体の流れに対する抵抗を小さくすることができる。これらの結果、伝熱促進が高く流動抵抗が小さな熱交換器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施例のコルゲートフィン型の熱交換器20の構成の概略を示す構成図である。
図2】2つの扁平チューブ30の間にコルゲートフィン40が配置されている様子の外観を拡大して示す拡大外観図である。
図3】コルゲートフィン40の水平面を2つの扁平チューブ30の断面と共に示す説明図である。
図4】第1実施例の波形凹凸を立体的に示して説明する説明図である。
図5】比較例と第1実施例の波形凹凸を補助線と共に立体的に示す説明図である。
図6】第1実施例の波形凹凸を補助線と共に模式的に示す説明図である。
図7図2のA−A断面を図中のAの矢印方向から見たA−A断面図である。
図8】波状の平板に一様流れの流体を導入したときに平板上に生じる流体の二次流れと温度による等高線とを示す説明図である。
図9】波形凹凸の位置と局所熱流速の等値線と局所せん断応力の等値線との関係をシミュレーションした結果を示す説明図である。
図10】変形例の波形凹凸を立体的に示して説明する説明図である。
図11図10のB−B断面を図中のBの矢印方向から見たB−B断面図である。
図12図10のC−C断面を連続させて図中のCの矢印方向から見たC−C断面図である。
図13図210のD−D断面を連続させて図中のDの矢印方向から見たD−D断面図である。
図14】本発明の第2実施例としての熱交換器120の外観を示す外観図である。
図15】第2実施例の熱交換器120に用いられる熱交換用チューブ130の扁平面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施例のコルゲートフィン型の熱交換器20の構成の概略を示す構成図であり、図2は扁平チューブ30の間にコルゲートフィン40が配置されている様子の外観を拡大して示す拡大外観図であり、図3はコルゲートフィン40の水平面42を両側の扁平チューブ30の断面と共に示す説明図である。また、図4は第1実施例のコルゲートフィン40に形成された波形凹凸を立体的に示して説明する説明図であり、図5は第1実施例のコルゲートフィン40に形成された波形凹凸と比較例とを補助線と共に立体的に示す説明図であり、図6は第1実施例の波形凹凸を補助線と共に模式的に示す説明図であり、図7図2のA−A断面を図中のAの矢印方向から見たA−A断面図である。
【0017】
第1実施例のコルゲートフィン型の熱交換器20は、各種の空気調和装置や冷凍装置などの冷凍サイクルに用いられる熱交換器として、或いは、内燃機関からの排ガスや燃料電池からのオフガスから熱エネルギを回収する熱回収装置などのエネルギ変換装置に用いられる熱交換器として用いられ、図1に示すように、扁平な中空管として形成されてハイドロフルオロカーボンや水,オイルなどの熱交換媒体(第2の熱交換用流体)の流路をなす複数の扁平チューブ30と、第2の熱交換用流体を全体として迂流させるための3つの隔壁28a,28b,28cと、各扁平チューブ30の間や扁平チューブ30と3つの隔壁28a,28b,28cとの間,扁平チューブ30と側壁29a,29bとの間に各々配置されて空気や排ガスなどの熱交換媒体(第1の熱交換用流体)の流路において熱交換による伝熱促進を行なう複数のコルゲートフィン40と、これらからなる熱交換部の上部に配置されて第2の熱交換用流体の流入口23と流出口24とが形成された上部ヘッダー22と、熱交換部の下部に配置された下部ヘッダー26とを備える。第1実施例のコルゲートフィン型の熱交換器20の扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン40,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26は、第2の熱交換用流体や第1の熱交換用流体に対して耐腐食性を有すると共に熱伝導率の高い金属材料、例えば、第1の熱交換用流体として空気が用いられるときにはアルミニウムや銅,ステンレス、第1の熱交換用流体として内燃機関からの排ガスや燃料電池からの排ガスが用いられるときにはステンレスなどにより形成されている。以下の説明では、コルゲートフィン型の熱交換器20としては、空気調和装置に用いられる熱交換器であり、扁平チューブ30や隔壁28a,28b,28c,側壁29a,29b,コルゲートフィン40,上部ヘッダー22,下部ヘッダー26の各部材についてはアルミニウムにより形成され、大きさとしては、扁平チューブ30の間隔が5mm〜10mm、コルゲートフィン40の水平面42の間隔(垂直面48の高さ)が1mm〜2mm程度であり、第2の熱交換用流体としてハイドロフルオロカーボンを用い、第1の熱交換用流体として空気を用いるもの、を具体例として用いる。
【0018】
上部ヘッダー22の内側には、隔壁28a,28cと整合する位置に隔壁28a,28cが延在するように仕切壁25a,25bが形成されており、下部ヘッダー26の内側には、隔壁28bと整合する位置に隔壁28bが延在するように仕切壁27が形成されている。したがって、第2の熱交換用流体(例えばハイドロフルオロカーボン)は、図中矢印で示すように、流入口23から上部ヘッダー22の内側に流れ込み、隔壁28aより右側の3つの扁平チューブ30の内側を鉛直上方から鉛直下方に流れ、下部ヘッダー26内で仕切壁27により隔壁28a,28bの間の3つの扁平チューブ30に供給され、3つの扁平チューブ30の内側を鉛直下方から鉛直上方に流れて上部ヘッダー22の仕切壁25a,25bの間の空間に流れ込み、隔壁28b,28cの3つの扁平チューブ30の内側を鉛直上方から鉛直下方に流れて仕切壁28bの右側の空間に至り、隔壁28cより左側の3つの扁平チューブ30の内側を鉛直下方から鉛直上方に流れて上部ヘッダー22の仕切壁25bの左側の空間に入り、その後、流出口24から排出される。なお、第1の熱交換用流体(空気)は、図1では表面から裏面に向けて、図2では斜め左下から斜め右上に向けて、図3では下から上に向けて、複数の扁平チューブ30の間を抜けるように流れる。
【0019】
コルゲートフィン40は、水平面42と垂直面48とが交互につづら折り状(蛇腹状)に形成され、垂直面48が扁平チューブ30にろう付けなどにより接合されている。コルゲートフィン40の水平面42には、滑らかな曲面により複数の波形凹凸が形成されている。第1実施例の複数の波形凹凸は、図3に示すように、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角が鋭角の範囲の角度となるように、頂部線43および底部線44がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線43の屈曲部位43aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置するように、頂部線43におけるV字の斜線部位43bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、波形凹凸における平均高さとなる中間部が連続する中間部線45におけるV字の斜線部位45bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるように、水平面42の一方の面における凸部の形状と同面における凹部の形状とが表裏一体となるように、図7に示すように、第1の熱交換用流体(空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように、形成されている。以下に、実施例のコルゲートフィン40に形成された波形凹凸について詳しく説明する。なお、波の頂部は、波の凸部と凹部との繰り返しにおける凸部の頂を意味しており、波の底部は、波の凸部と凹部との繰り返しにおける凹部の底を意味している。
【0020】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、図3に示すように、滑らかな曲面により、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角が鋭角の範囲の角度となるように形成されている。ここで、頂部線43や底部線44と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角は、10度ないし60度が好ましく、15度ないし45度が更に好ましく、25度ないし35度がより理想的である。このように、滑らかな曲面により波形凹凸を形成し、頂部線43や底部線44と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角が10度から60度の範囲内の角度となるように波形凹凸を形成するのは、第1の熱交換用流体の流れに対して剥離や局所的な増速を抑えて、伝熱促進に有効な空気の二次流れを発生させるためである。図8に波状の平板に一様流れの流体を導入したときに平板上に生じる流体の二次流れ(矢印)と温度による等高線とを示す。図示するように、滑らかな曲面による波形凹凸により、流体の剥離や局所的な増速を抑制して強い二次流れを生じさせ、かつ、壁面付近で大きな温度勾配を生じさせていることがわかる。これにより、伝熱促進をより高くすることができると共に流動抵抗を小さくすることができる。
【0021】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、頂部線43や底部線44がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように形成されている。V字状に複数回に亘って連続して繰り返すとは、例えばV字を2回に亘って連続して繰り返すことによりW字となるように、V字を横に接触させた状態で複数個並べて得られる形状、即ちジグザグ形状となるように形成されていることを意味している。これにより、第1の熱交換用流体による熱交換に有効な二次流れを水平面42の多くの部位に生じさせることができ、伝熱促進をより高くすることができる。
【0022】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、頂部線43における斜線部位43bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、波形凹凸における平均高さとなる中間部が連続する中間部線45における斜線部位45bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるように形成されている。図5(a)の比較例の波形凹凸は、頂部線943と頂部線944とがV字状となるように、屈曲部位943aも斜線部位943bも第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角が同じで一定となるように形成されている。図4および図5(b)に示す第1実施例の波形凹凸は、図5の補助線に示すように、比較例の波形凹凸の頂部線943に対して、波型凹凸の平均高さとなる中間部が連続する中間部線945の変形がなるべく生じないように、屈曲部位943aについては図中上下に伸張するよう移動させて屈曲部位43aとし、直線の頂部線943については僅かにS字カーブを描くように変形させて頂部線43としたものである。したがって、第1実施例の波形凹凸の底部線44は比較例の底部線944と同一である。図4および図5(b)には、波形凹凸の頂部線43だけを立体的に示したが、底部線44も頂部線43と同様に形成されている。中間部線45は、頂部線43や底部線44がV字形状となっているから、V字形状となり、頂部線43の屈曲部位43aや底部線44の屈曲部位44aが比較例の位置から図中上下方向に伸張した位置とされることにより、若干ではあるが図中上下方向に伸張する。頂部線43の傾斜部位43bと第2の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度θ1は、図6に示すように、頂部線43の斜線部位43bの図中上下方向の長さL1とV字の幅Wを用いると、tanθ1=(1/2)W/L1を満たす角度として表わされ、中間部線45の傾斜部位45bと第2の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度θ2は、中間部線45の斜線部位45bの図中上下方向の長さL2とV字の幅Wを用いると、tanθ2=(1/2)W/L2を満たす角度として表わされる。中間部線45に図中上下方向への若干の伸張(図6の上下方向として長さΔL)があったとしても、中間部線45の図6中上下方向への伸張ができるだけ生じないようにするため、L1>L2+ΔLとなることから、第1の平均角度θ1は第2の平均角度θ2より小さくなる。
【0023】
上述したように、中間部線45は若干ではあるが図中上下方向に伸張しているが、説明の容易のために、図6には図中上下方向には伸張しないものとして表わした。図6中、太実線が頂部線43であり、細実線が伸張前の比較例の頂部線943であり、太破線が底部線44であり、細破線が伸張前の比較例の底部線944であり、太一点鎖線が中間部線45である。第1の熱交換用流体(空気)の流れに沿って見たときに、頂部線43や底部線44の逆V字の屈曲部位において、頂部線43の屈曲部位43aと中間部線45の屈曲部位45aとの距離をL11、中間部線45の屈曲部位45aと底部線44の屈曲部位44aとの距離をL12、底部線44の屈曲部位44aと中間部線45の屈曲部位45との距離をL13、中間部線45の屈曲部位45aと頂部線43の屈曲部位43aとの距離をL14、頂部線43や底部線44のV字の屈曲部位において、頂部線43の屈曲部位43aと中間部線45の屈曲部位45aとの距離をL21、中間部線45の屈曲部位45aと底部線44の屈曲部位44aとの距離をL22、底部線44の屈曲部位44aと中間部線45の屈曲部位45との距離をL23、中間部線45の屈曲部位45aと頂部線43の屈曲部位43aとの距離をL24とすると、以下の式(1)が成立する。このため、波形凹凸は、図中上から下に向けて第2の熱交換用流体(空気)を流したときには、逆V字の屈曲部位では、底部線44の屈曲部位44aから中間部線45の屈曲部位45aまでは比較的緩やかな登りの傾斜となり、中間部線45の屈曲部位45aから頂部線43の屈曲部位43aまでは比較的急な登りの傾斜となり、頂部線43の屈曲部位43aから中間部線45の屈曲部位45aまでは比較的緩やかな下りの傾斜となり、中間部線45の屈曲部位45aから底部線44の屈曲部位44aまでは比較的急な下りの傾斜となる。また、V字の屈曲部位では、底部線44の屈曲部位44aから中間部線45の屈曲部位45aまでは比較的急な登りの傾斜となり、中間部線45の屈曲部位45aから頂部線43の屈曲部位43aまでは比較的緩やかな傾斜となり、頂部線43の屈曲部位43aから中間部線45の屈曲部位45aまでは比較的急な下りの傾斜となり、中間部線45の屈曲部位45aから底部線44の屈曲部位44aまでは比較的緩やかな下りの傾斜となる。
【0024】
L11=L13=L22=L24>L12=L14=L21=L23 (1)
【0025】
このように複数の波形凹凸を頂部線43の斜線部位43bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第1の平均角度)が中間部線45の斜線部位45bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第2の平均角度)より小さくなるように形成するのは、次の理由による。図9は、比較例の波形凹凸の位置と局所熱流速の等値線と局所せん断応力の等値線との関係をシミュレーションした結果を示す説明図である。図示するように、局所熱流速は、第1の熱交換用流体の流れの方向から見て、底部線44から頂部線43に至る部位で大きく、頂部線43から底部線44に至る部位で小さくなっている。また、底部線44の屈曲部位44aから頂部線43の屈曲部位43aに至る部位は、底部線44の傾斜部位44bから頂部線43の傾斜部位43bに至る部位より大きくなっており、この部位でも第1の熱交換用流体の流入側の方が流出側より大きくなっている。局所せん断応力は、頂部線43で大きくなっており、屈曲部位43aの方が傾斜部位43bより大きくなっている。また、第1の熱交換用流体の流出側の方が流入側より大きくなっている。局所熱流速が大きな部位は、伝熱促進が高く熱交換に大きく寄与する部位を示し、局所せん断応力が大きな部位は、第1の熱交換用流体の流れに対する抵抗が大きな部位を示す。したがって、局所熱流速が大きな部位の形状を強調すると共に局所せん断応力が大きな部位の形状を緩和することにより、伝熱促進が高く流動抵抗が小さい熱交換器とすることができる。逆V字の屈曲部位における中間部線45の屈曲部位45aから頂部線43の屈曲部位43aまでの部位は局所熱流速が大きな部位であるから、この部位を比較的急な登りの傾斜とすることにより、伝熱促進を高くすることができる。一方、頂部線43の傾斜部位43bと第2の熱交換用流体とのなす角の平均(第1の平均角度)は比較例の頂部線943と同様となる中間部線45の傾斜部位45bと第1の熱交換用流体とのなす角の平均(第2の平均角度)が小さくなっていると共にV字の屈曲部位における中間部線45の屈曲部位45aから頂部線43の屈曲部位43aまでの部位が比較的緩やかな登りの傾斜となっているから、第1の熱交換用流体は頂部線43を乗り越えやすくなる。このため、第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗が小さくなる。
【0026】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、水平面42の一方の面における凸部(頂部線43における屈曲部位43aおよび傾斜部位43b)の形状と同面における凹部(底部線44における屈曲部位44aおよび傾斜部位44b)の形状とが表裏一体となるように形成されている。即ち、水平面42の一方の面における頂部線43の屈曲部位43aと傾斜部位43bの形状と同面における底部線44の屈曲部位44aと傾斜部位44bの形状とが表裏一体、即ち表裏入れ替えれば一致するように形成されている。これにより、コルゲートフィン40の水平面42の一方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換と水平面42の他方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換とを同様に行なうことができ、伝熱促進がより高く流動抵抗のより小さな熱交換器とすることができる。
【0027】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、頂部線43の屈曲部位43aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置するように形成されている。即ち、頂部線43の屈曲部位43aがより多く形成されるように複数の波形凹凸が形成されているのである。これにより、局所熱流速が高い部位である頂部線43の屈曲部位43aを水平面42により多く形成することができ、伝熱促進がより高い熱交換器とすることができる。
【0028】
コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸は、第1の熱交換用流体(例えば空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成されている。図7に示すように、頂部線43の屈曲部位43aの高さは、第1の熱交換用流体(例えば空気)の入口に最も近い屈曲部位43aの高さHinから出口に最も近い屈曲部位43aの高さHoutとなるように徐々に低くなっている。同様に、底部線44の屈曲部位44aの深さは、第1の熱交換用流体(例えば空気)の入口に最も近い屈曲部位44aの深さHinから出口に最も近い屈曲部位44aの深さHoutとなるように徐々に浅くなっている。図9の局所せん断応力では、第1の熱交換用流体の流出側の方が流入側より大きくなっているから、局所せん断応力の大きな第1の熱交換用流体の出口側の頂部線43の高さを入口側の高さに比して低くすることにより、第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗を小さくすることができる。
【0029】
以上説明した第1実施例の熱交換器20によれば、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、滑らかな曲面により、頂部線43や底部線44と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角が鋭角の範囲の角度となるように、頂部線43や底部線44がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線43における斜線部位43bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、波形凹凸における平均高さとなる中間部が連続する中間部線45における斜線部位45bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるように形成することにより、第1の熱交換用流体の流れに対して剥離や局所的な増速を抑えて伝熱促進に有効な空気の二次流れを発生させることができ、局所熱流速の大きな部位を強調して伝熱促進を図り、局所せん断応力の大きな部位のせん断応力を小さくして第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗を小さくすることができる。これらの結果、伝熱促進がより高く流動抵抗のより小さな熱交換器とすることができる。
【0030】
しかも、第1実施例の熱交換器20によれば、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、水平面42の一方の面における凸部の形状と同面における凹部の形状とが表裏一体となるように形成することにより、コルゲートフィン40の水平面42の一方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換と水平面42の他方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換とを同様に行なうことができる。この結果、伝熱促進がより高く流動抵抗のより小さな熱交換器とすることができる。
【0031】
また、第1実施例の熱交換器20によれば、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、頂部線43の屈曲部位43aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置するように形成することにより、局所熱流速が高い部位である頂部線43の屈曲部位43aを水平面42により多く形成することができ、伝熱促進がより高い熱交換器とすることができる。
【0032】
さらに、第1実施例の熱交換器20によれば、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、第1の熱交換用流体(例えば空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成することにより、第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗を小さくすることができる。
【0033】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、水平面42の一方の面における凸部の形状と同面における凹部の形状とが表裏一体となるように形成するものとしたが、水平面42の一方の面における凸部の形状と同面における凹部の形状とが異なるものとなるように形成するものとしてもよい。例えば、複数の波形凹凸を、頂部線43については屈曲部位43aの高さが斜線部位43bの高さより高くなるように形成するが、底部線44については屈曲部位44aの深さが斜線部位44bの深さと同じになるよう形成するものとしたり、逆に、底部線44については屈曲部位44aの深さが斜線部位44bの深さより深くなるように形成するが、頂部線43については屈曲部位43aの高さが斜線部位43bの高さと同じになるよう形成するものとしたりしてもよい。
【0034】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、頂部線43の屈曲部位43aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置するように形成するものとしたが、頂部線43の屈曲部位43aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置しないように形成するものとしても構わない。
【0035】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、第1の熱交換用流体の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成するものとしたが、第1の熱交換用流体の入口側の波の振幅も出口側の波の振幅も同じになるように形成するものとしてもよい。
【0036】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、頂部線43や底部線44がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように形成するものとしたが、頂部線43や底部線44がV字状に2回だけ連続してW字状になるように形成するものとしてもよいし、頂部線43や底部線44が単一のV字の形状になるよう形成するものとしてもよい。
【0037】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、頂部線43における斜線部位43bと底部線44における斜線部位44bがS字カーブとなるように形成するものとしたが、頂部線43における斜線部位43bと底部線44における斜線部位44bがS字カーブを描く必要はなく、第1の熱交換用流体の流れに対して凸となる形状や凹となる形状としてもよいし、直線となる形状としてもよい。
【0038】
第1実施例の熱交換器20では、コルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸を、滑らかな曲面により、波の頂部を連ねた頂部線43や波の底部を連ねた底部線44と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角γが鋭角の範囲の角度となるように、頂部線43や底部線44がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線43におけるV字の斜線部位43bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、波形凹凸における平均高さとなる中間部が連続する中間部線45におけるV字の斜線部位45bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるように形成するものとしたが、更に、頂部線における屈曲部位の高さが頂部線におけるV字の斜線部位の高さより高くなるように形成するものとしてもよい。図10に変形例の波形凹凸を立体的に示す。図10の変形例の波形凹凸は、図4の第1実施例の波形凹凸と比較して、頂部線53の屈曲部位53aについては第1実施例の頂部線43の屈曲部位43aを若干隆起した形状として、頂部線53の斜線部位53bについては第1実施例の頂部線43の斜線部位43bを若干つぶした形状として得ることができる。図11は、図10の波形凹凸の頂部線53に沿ったA−A断面であり、頂部線53の波形凹凸の平均高さとなる中心位置からの高さも示している。図示するように、V字状の頂部線53の屈曲部位53aは、中心位置からの高さHuaが斜線部位53bの中心位置からの高さHubより高くなるように形成されている。このように、頂部線53の屈曲部位53aについては第1実施例の頂部線43の屈曲部位43aを若干隆起した形状とし、頂部線53の斜線部位53bについては第1実施例の頂部線43の斜線部位43bを若干つぶした形状とするのは、図9を用いて説明したように、局所熱流速が大きな部位の形状を強調すると共に局所せん断応力が大きな部位の形状を緩和するためである。即ち、局所熱流速が大きな部位である頂部線53の屈曲頂部53aの高さを高くすることにより伝熱促進を高くし、局所せん断応力が大きな頂部線53の傾斜部位53bの高さを低くすることにより流動抵抗を小さくすることができる。なお、図10には、頂部線53の形状を説明するために底部線54の形状については示さないものとしたが、変形例の波形凹凸は、頂部線53の形状と底部線54の形状とが表裏一体のものとなっている。したがって、頂部線53における屈曲部位53aの高さが頂部線53におけるV字の斜線部位53bの高さより高くなるように形成されているのと同様に、底部線54における屈曲部位54aの深さが頂部線53におけるV字の斜線部位53bの深さより深くなるように形成されている。図12は、図10のC−C断面に相当する変形例の波形凹凸の断面図であり、図13図10のD−D断面に相当する変形例の波形凹凸の断面図である。図12および図13に示すように、変形例の波形凹凸は、頂部線53の屈曲部位53aの高さHuaが頂部線53の傾斜部位53bの高さHubより高くなるように、底部線54の屈曲部位54aの深さHdaが底部線54の傾斜部位53bの深さHdbより深くなるように、頂部線53の屈曲部位53aの高さHuaと底部線54の屈曲部位54aの深さHdaとが一致するように、頂部線53の傾斜部位53bの高さHubと底部線54の傾斜部位53bの深さHdbとが一致するように、形成されている。これにより、コルゲートフィン40の水平面42の一方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換と水平面42の他方の面側に流れる第1の熱交換用流体との熱交換とを同様に行なうことができ、伝熱促進がより高く流動抵抗のより小さな熱交換器とすることができる。
【0039】
こうした変形例の波形凹凸でも、頂部線53の屈曲部位53aがコルゲートフィン40の水平面42の端部近傍に位置するように形成するものとしてもよいし、第1の熱交換用流体の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成するものとしてもよいし、頂部線53や底部線54がV字状に2回だけ連続してW字状になるように形成するものとしてもよいし、頂部線53や底部線54が単一のV字の形状になるよう形成するものとしてもよいし、水平面42の一方の面における凸部の形状と同面における凹部の形状とが異なるものとなるように形成するものとしてもよい。
【0040】
図14は本発明の第2実施例としての熱交換器120の外観を示す外観図であり、図15は第2実施例の熱交換器120に用いられる熱交換用チューブ130の扁平面を示す説明図である。第2実施例の熱交換器120は、図示するように、偏平な中空管として形成され並列に配置された複数の熱交換用チューブ130と、この複数の熱交換用チューブ130の端部を覆うように取り付けられて複数の熱交換用チューブ30に熱交換流体を流出入する一対のヘッダー140,150とにより構成されている。
【0041】
熱交換用チューブ130は、熱伝導性を有する材料、例えば、ステンレス材料により厚みが0.1mmに形成された板材をプレス加工及び折り曲げ加工等を用いて、厚み0.5mmの偏平な管状に形成されている。熱交換用チューブ130の偏平面(正面および裏面)の外壁面側には、滑らかな曲面により複数の波形凹凸が形成されている。第2実施例の複数の波形凹凸は、第1実施例のコルゲートフィン40の水平面42に形成された複数の波形凹凸と同様に、波の頂部を連ねた頂部線143や波の底部を連ねた底部線144と第1の熱交換用流体(例えば、空気)の主要な流れとのなす角γが鋭角の範囲の角度(第2実施例では約30度)となるように、頂部線143および底部線144がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線143におけるV字の斜線部位143bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第1の平均角度が、波形凹凸における平均高さとなる中間部が連続する中間部線145におけるV字の斜線部位145bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均としての第2の平均角度より小さくなるように、頂部線143の屈曲部位143aが扁平面の端部近傍に位置するように、第1の熱交換用流体(空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように、形成されている。
【0042】
第2実施例の複数の波形凹凸が、滑らかな曲面により、頂部線143や底部線144と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角γが鋭角の範囲の角度となるように、頂部線143や底部線144がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線143の斜線部位143bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第1の平均角度)が中間部線145の斜線部位145bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第2の平均角度)より小さくなるように形成されている理由や、第2実施例の複数の波形凹凸が頂部線143の屈曲部位143aが扁平面の端部近傍に位置するように形成されている理由、第2実施例の複数の波形凹凸が第1の熱交換用流体(空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成されている理由は、第1実施例の波形凹凸と同様である。
【0043】
以上説明した第2実施例の熱交換器120によれば、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、滑らかな曲面により、波の頂部を連ねた頂部線143や波の底部を連ねた底部線144と第1の熱交換用流体(空気)の主要な流れとのなす角γが鋭角の範囲の角度となるように、頂部線143や底部線144がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線143の斜線部位143bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第1の平均角度)が中間部線145の斜線部位145bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第2の平均角度)より小さくなるように形成することにより、剥離や局所的な増速を抑えて伝熱促進に有効な空気の二次流れを有効に発生させることができ、局所熱流速の大きな部位を強調して伝熱促進を図り、局所せん断応力の大きな部位のせん断応力を小さくして第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗を小さくすることができる。これらの結果、伝熱促進がより高く流動抵抗のより小さな熱交換器とすることができる。
【0044】
しかも、第2実施例の熱交換器120によれば、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、頂部線143の屈曲部位143aが扁平面の端部近傍に位置するように形成することにより、局所熱流速が高い部位である頂部線143の屈曲部位143aを扁平面により多く形成することができ、伝熱促進がより高い熱交換器とすることができる。
【0045】
また、第2実施例の熱交換器120によれば、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、第1の熱交換用流体(例えば空気)の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成することにより、第1の熱交換用流体の流れに対する流動抵抗を小さくすることができる。
【0046】
第2実施例の熱交換器120では、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、頂部線143の屈曲部位143aが扁平面の端部近傍に位置するように形成するものとしたが、頂部線143の屈曲部位143aが扁平面の端部近傍に位置しないように形成するものとしても構わない。
【0047】
第2実施例の熱交換器120では、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、第1の熱交換用流体の入口側の波の振幅が出口側の波の振幅より大きくなるように形成するものとしたが、第1の熱交換用流体の入口側の波の振幅も出口側の波の振幅も同じになるように形成するものとしてもよい。
【0048】
第2実施例の熱交換器120では、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、頂部線143や底部線144がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように形成するものとしたが、頂部線143や底部線144がV字状に2回だけ連続してW字状になるように形成するものとしてもよいし、頂部線143や底部線144が単一のV字の形状になるよう形成するものとしてもよい。
【0049】
第1実施例の熱交換器20では、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、滑らかな曲面により、波の頂部を連ねた頂部線143や波の底部を連ねた底部線144と第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角γが鋭角の範囲の角度となるように、頂部線143および底部線144がV字状に複数回に亘って連続して繰り返すように、頂部線143の斜線部位143bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第1の平均角度)が中間部線145の斜線部位145bと第1の熱交換用流体の主要な流れとのなす角の平均(第2の平均角度)より小さくなるように形成するものとしたが、更に、頂部線における屈曲部位の高さが頂部線におけるV字の斜線部位の高さより高くなるように形成するものとしてもよい。即ち、熱交換用チューブ130の扁平面の外壁面側に形成された複数の波形凹凸を、図10に例示した変形例の波形凹凸の形状としてもよい。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について第1実施例および第2実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、熱交換器の製造産業などに利用可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15