特許第6207059号(P6207059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207059
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】導電路
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20170925BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 7/20 20060101ALI20170925BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20170925BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20170925BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01B7/00 304Z
   H01B7/18 D
   H01B7/20
   H01F17/06 D
   H02G3/04 037
   H02G3/04 081
   H05K9/00 K
   H05K9/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-133349(P2013-133349)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-8100(P2015-8100A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年10月23日
【審判番号】不服2016-15935(P2016-15935/J1)
【審判請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今堀 雅明
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
(72)【発明者】
【氏名】林 真也
【合議体】
【審判長】 和田 志郎
【審判官】 山澤 宏
【審判官】 稲葉 和生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−73702(JP,A)
【文献】 特開2008−98124(JP,A)
【文献】 特開2004−111178(JP,A)
【文献】 特開平11−337840(JP,A)
【文献】 特開平11−53957(JP,A)
【文献】 特開2009−225605(JP,A)
【文献】 特開2000−013081(JP,A)
【文献】 特開2005−223212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、
前記複数の電線を保持する電線保持部材と、
前記電線保持部材の開口から導出された前記複数の電線を案内する導電性の金属からなるガイド部材と、
前記電線保持部材と前記ガイド部材との間で前記複数の電線を覆い前記ガイド部材に接続されている可撓性を有する編組シールドと、
前記複数の電線を貫通させる貫通孔が形成され、前記複数の電線から放射される電磁波を吸収する電磁波吸収部品と、
を備え、
前記電磁波吸収部品は、前記保持部材から前記複数の電線の延伸方向に離間し、前記電線保持部材と前記ガイド部材との間において前記複数の電線の外周側に配置され、
前記ガイド部材の前記電線保持部材側に形成された開口端面から前記電磁波吸収部品の中心部までの間における前記複数の電線及び前記編組シールドの長さが、前記電線保持部材の開口端面から前記電磁波吸収部品の中心部までの間における前記複数の電線及び前記編組シールドの長さよりも長い
導電路。
【請求項2】
前記編組シールドは、弛んだ状態で前記ガイド部材に接続されている、
請求項1に記載の導電路。
【請求項3】
前記編組シールドは、前記複数の電線と前記電磁波吸収部品の前記貫通孔の内面との間に介在する、
請求項1又は2に記載の導電路。
【請求項4】
前記電線保持部材及び前記電磁波吸収部品はそれぞれ、少なくとも一部がシールドシェルの内部に収容され、
前記電磁波吸収部品と前記シールドシェルとは、互いに固定されている、
請求項1又は2に記載の導電路。
【請求項5】
前記編組シールドは、前記複数の電線及び前記電磁波吸収部品の外周側を覆う、
請求項1、2、又は4の何れか1項に記載の導電路。
【請求項6】
前記電磁波吸収部品は、電磁波を吸収する環状の磁性体コアと、前記磁性体コアの外周側に配置され、前記磁性体コアよりも高い弾性を有する緩衝材とを有する、
請求項5に記載の導電路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機能を備えた導電路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車におけるインバータと電動モータとを接続する導電路として、電線から放射される電磁ノイズを低減するためのシールド手段が施されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の導電路は、金属製のパイプからなるメインシールド部と、メインシールド部よりも短く、かつ変形可能なサブシールド部とを備える。サブシールド部は、筒状の編組シールド(筒状編組部材)と、編組シールドとメインシールド部とを接続する接続用パイプと、インバータに取り付けるための取付部が形成されたシールドシェルとを有している。編組シールドの小径部は、接続用パイプのインバータ側の端部に被せられ、その外側からカシメリングにより固定されている。これにより、編組シールドと接続用パイプとが導通する。一方、編組シールドの大径部は、シールドシェルの筒部に被せられ、その外側からカシメリングにより固定されている。これにより、編組シールドとシールドシェルとが導通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インバータ装置のスイッチング素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることにより交流電流を生成し、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって電動モータを駆動する場合、この交流電流に含まれる高調波成分に起因する電線からの電磁ノイズによって、電線の周囲に配置された制御装置等の動作に影響が出るおそれがある。そこで、より電磁ノイズを吸収する作用が大きいフェライトコア等の環状の電磁波吸収部品を電線に装着することが考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の導電路の編組シールドの一部に電磁波吸収部品を単に装着し、車両等の振動が発生する環境下で用いた場合、荷重の大きい電磁波吸収部品が振動することによってシールド素線の断線等につながり、編組シールドの接続性が損なわれるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、編組シールドの接続性を確保しながら電磁ノイズを低減することができる導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電線と、前記電線を保持する電線保持部材と、前記電線保持部材の開口から導出された前記電線を案内する導電性の金属からなるガイド部材と、前記電線保持部材と前記ガイド部材との間で前記電線を覆い前記ガイド部材に接続されている可撓性を有する編組シールドと、前記電線を貫通させる貫通孔が形成され、前記電線から放射される電磁波を吸収する電磁波吸収部品とを備え、前記電磁波吸収部品は、前記電線保持部材と前記ガイド部材との間において前記電線の外周側に配置され、前記ガイド部材の前記電線保持部材側に形成された開口端面から前記電磁波吸収部品の中心部までの間における前記電線及び前記編組シールドの長さが、前記電線保持部材の開口端面から前記電磁波吸収部品の中心部までの間における前記電線及び前記編組シールドの長さよりも長い導電路を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導電路及びワイヤハーネスによれば、編組シールドの接続性を確保しながら電磁ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る導電路、及び導電路によって接続されるインバータ及び電動モータを示し、(a)は全体図、(b)は(a)のA部拡大図である。
図2図1のB−B線断面図である。
図3】第1の電線保持装置を示し、(a)は外観図、(b)は分解図である。
図4】電磁波吸収部品及び固定部材の周辺部における導電路の断面図である。
図5】電磁波吸収部品の分解斜視図である。
図6図1における電磁波吸収部品及びその周辺部の拡大図である。
図7】本発明の変形例に係る導電路を示し、電磁波吸収部品及び固定部材の周辺部における断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る導電路を示し、第1の電線保持装置における電線の延伸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る導電路、及び導電路によって接続されるインバータ及び電動モータを示し、(a)は全体図、(b)は(a)のA部拡大図である。図2は、図1のB−B線断面図である。
【0012】
(導電路1の構成)
この導電路1は、例えば車両に搭載され、車両の走行用の駆動源としての電動モータ92にインバータ91から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)制御された電流を供給する。この電流には、パワートランジスタ等のスイッチング素子のスイッチングによる高調波成分が含まれる。
【0013】
導電路1は、一端部にインバータ91の筐体に固定される第1の電線保持装置1aが設けられ、他端部に電動モータ92の筐体に固定される第2の電線保持装置1bが設けられている。また、導電路1は、U相、V相、及びW相の三相交流電流を電動モータ92に供給する複数(3本)の電線(第1〜第3の電線11〜13)と、第1の電線保持装置1a及び第2の電線保持装置1bからそれぞれ導出された第1〜第3の電線11〜13を案内するガイド部材としてのパイプ3と、第1〜第3の電線11〜13を覆う筒状の編組シールド10と、第1〜第3の電線11〜13から放射される電磁波を吸収する電磁波吸収部品2とを備えている。電磁波吸収部品2は、樹脂テープを巻き回してなる固定部材20によって、第1〜第3の電線11〜13に沿った方向への移動、及び第1〜第3の電線11〜13に対する回転が規制されている。
【0014】
図2に示すように、第1の電線11は、銅等の良導電性金属からなる中心導体111と、中心導体111の外周を被覆する絶縁体112とを有する絶縁電線である。同様に、第2の電線12は、中心導体121及び中心導体121の外周を被覆する絶縁体122を有する絶縁電線であり、第3の電線13は、中心導体131及び中心導体131の外周を被覆する絶縁体132を有する絶縁電線である。第1〜第3の電線11〜13は、一括して束ねられて、その一部がパイプ3内に収容されている。
【0015】
編組シールド10は、例えば銅を錫メッキしてなる複数のシールド素線100からなる。本実施の形態では、図1(b)に示すように、6本のシールド素線100を1本の素線束とし、この素線束どうしをX字状にクロスさせて編み合わせることにより、可撓性を有する編組シールド10が形成されている。この編組シールド10は、例えば手作業によって網目の大きさを変えることで、内径を拡大又は収縮させることが可能である。本実施の形態では、編組シールド10は、その一部において、内径を拡大させて弛ませた状態で用いられる。編組シールド10は、第1の電線保持装置1aとパイプ3との間、及び第2の電線保持装置1bとパイプ3との間で第1〜第3の電線11〜13をそれぞれ覆っている。
【0016】
パイプ3は、導電性の金属からなり、両端部に開口(第1の開口3a及び第2の開口3b)を有する筒状に形成されている。第1の開口3aは第1の電線保持装置1aに向かって開口し、第2の開口3bは第2の電線保持装置1bに向かって開口している。
【0017】
図2に示すように、パイプ3の第1の開口3a側(第1の電線保持装置1a側)の端部には、第1の金属バンド31がパイプ3の外周面との間に編組シールド10を挟んで配置されている。この第1の金属バンド31をパイプ3の外周から加締め付けることにより、第1の電線保持装置1a側に設けられた編組シールド10とパイプ3とが導通可能となる。このとき、編組シールド10は弛んだ状態でパイプ3に接続されている。
【0018】
同様に、パイプ3の第2の開口3b側(第2の電線保持装置1b側)の端部には、第2の金属バンド32がパイプ3の外周面との間に編組シールド10を挟んで配置されている。この第2の金属バンド32をパイプ3の外周から加締め付けることにより、第2の電線保持装置1b側に設けられた編組シールド10とパイプ3とが導通可能となる。
【0019】
第1の電線保持装置1a及び第2の電線保持装置1bは、それぞれ同様に構成されているため、第1の電線保持装置1aを例にとって、以下詳細に説明する。
【0020】
(第1の電線保持装置1aの構成)
図3は、第1の電線保持装置1aを示し、(a)は外観図、(b)は分解図である。
【0021】
第1の電線保持装置1aは、第1〜第3の電線11〜13を保持する樹脂製の電線保持部材5と、電線保持部材5の一部を収容する導電性の金属からなるシールドシェル4と、電線保持部材5に連結され、環状のシール部材60を保持するシール保持部材6と、編組シールド10の外周に配置される環状部材7と、帯状の締付部材8とを備える。
【0022】
第1の電線11の先端部には、第1の接続端子110が例えば圧着により接続されている。同様に、第2の電線12の先端部には、第2の接続端子120が、第3の電線13の先端部には、第3の接続端子130が接続されている。
【0023】
シールドシェル4は、電線保持部材5の開口5aを含む一部を収容する筒状の収容部41と、インバータ91(図1参照)の筐体に固定されるフランジ部42とを一体に有している。フランジ部42には、図略のボルト挿通孔が形成され、このボルト挿通孔を挿通するボルトによってシールドシェル4がインバータ91の接地された筐体に固定される。
【0024】
電線保持部材5は、第1〜第3の電線11〜13を挿通させる複数(3つ)の挿通孔を有し、第1〜第3の電線11〜13が導出される複数(3つ)の開口5aがパイプ3側に向かって開口している。電線保持部材5は、シールドシェル4の収容部41に例えば圧入によって固定されている。シール保持部材6に保持されたシール部材60は、シール保持部材6とインバータ91の筐体に形成された図略の取付孔の内面との間をシールする。
【0025】
環状部材7は、例えばアセテートクロステープであり、シールドシェル4の収容部41との間に編組シールド10を挟んで、編組シールド10の外周に複数回にわたって環状に巻き回されている。締付部材8は、例えばステンレス等の金属からなり、環状部材7の外周側に配置され、環状部材7及び編組シールド10を加締めている。
【0026】
編組シールド10は、その一端がパイプ3に設けられた第1の金属バンド31で加締められることによりパイプ3と導通可能となり、他端が第1の電線保持装置1aの締付部材8で加締められることによりシールドシェル4と導通可能となっている。
【0027】
(電磁波吸収部品2の構成)
図4は、電磁波吸収部品2及び固定部材20の周辺部における導電路1の断面図である。図4では、電磁波吸収部品2、固定部材20、及び編組シールド10を導電路1の軸方向に沿って切断し、その内部における第1〜第3の電線11〜13を示している。図5は、電磁波吸収部品2の分解斜視図である。
【0028】
電磁波吸収部品2は、第1磁性体コア21、第2磁性体コア22、第1ゴム部材23、及び第2ゴム部材24を備えている。電磁波吸収部品2の中心部には、第1〜第3の電線11〜13を一括して挿通させる貫通孔20aが形成されている。この貫通孔20aは、第1磁性体コア21の中心部に形成された貫通孔21a、第2磁性体コア22の中心部に形成された貫通孔22a、及び第1ゴム部材23の中心部に形成された貫通孔23aの結合により形成されている。
【0029】
第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22としては、フェライトコア、アモルファスコア、あるいはパーマロイコア等の高透磁率の環状のコア部材を用いることができる。本実施の形態では、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22が軟磁性を示すソフトフェライト(例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等)からなる。なお、その他に、六方晶フェライト(ハードフェライト)やガーネットフェライト、あるいはコバルトフェライトを用いることが可能である。第1磁性体コア21と第2磁性体コア22とは、導電路1の軸方向に沿って並列している。第1磁性体コア21は、環状の一部材として形成されていてもよく、例えば断面半円状の一対の部材の組み合わせにより環状に形成されていてもよい。第2磁性体コア22についても同様である。
【0030】
第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22は、第1〜第3の電線11〜13から放射される電磁波(電磁ノイズ)を吸収し、この電磁波のエネルギーを振動等の力学的エネルギーや熱エネルギーに変換する。これにより、導電路1から放射される電磁波が周辺に配置された情報処理装置等に及ぼす悪影響が低減される。
【0031】
第1ゴム部材23は、第1磁性体コア21と第2磁性体コア22との間に挟持された環板状の部材であり、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の電磁波の吸収に伴う振動や車両の振動による摩耗を抑制している。第2ゴム部材24は、その内周面を第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の外周面に対向させて第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の外周側に配置された筒状の部材である。
【0032】
第1ゴム部材23及び第2ゴム部材24は、例えば接着により第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22に一体化されている。第1ゴム部材23及び第2ゴム部材24は、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22よりも高い弾性を有する緩衝材として機能する。
【0033】
固定部材20は、貫通孔20aにおける第1〜第3の電線11〜13の挿通方向への電磁波吸収部品2の移動を規制する。また、固定部材20は、第1〜第3の電線11〜13に対する電磁波吸収部品2の回転をも規制する。
【0034】
固定部材20は、図4に示す第1〜第5領域201〜205を1本の樹脂テープを巻き回して形成されている。本実施の形態では、編組シールド10は、第1〜第3の電線11〜13と電磁波吸収部品2の貫通孔20aの内面との間に介在している。より具体的には、編組シールド10が第1〜第3の電線11〜13と共に電磁波吸収部品2の貫通孔20aを挿通しており、固定部材20の第1領域201及び第5領域205における樹脂テープは、編組シールド10の外周に接して巻き回されている。また、電磁波吸収部品2は、図4に示すように、貫通孔20aに第1〜第3の電線11〜13を挿通させることで、第1〜第3の電線11〜13を束ねている。
【0035】
図6は、図1における電磁波吸収部品2及びその周辺部の拡大図である。なお、図6では、電線保持部材5を破線で示す。
【0036】
電磁波吸収部品2は、第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10の外周側に配置され、第1の電線保持装置1a側寄りに位置している。より具体的には、パイプ3の第1の開口端面31aから電磁波吸収部品2の中心部までの間における第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10の長さLが、電線保持部材5の開口端面50aから電磁波吸収部品2の中心部までの間における第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10の長さLよりも長い。ここで、電磁波吸収部品2の中心部とは、電磁波吸収部品2において、第1の電線保持装置1a側の端面2aからの距離と、パイプ3側の端面2bからの距離が等しくなる部分のことである。
【0037】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0038】
(1)電磁波吸収部品2は、パイプ3と編組シールド10との接続部分(第1の金属バンド31)よりも第1の電線保持装置1a側に配置されている。すなわち、パイプ3の第1の開口端面31aから電磁波吸収部品2の中心部までの間における第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10の長さLが、電線保持部材5の開口端面50aから電磁波吸収部品2の中心部までの間における第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10の長さLよりも長いので、長さLが長さLよりも短い場合と比較して、電動モータ92の振動や車両の走行に伴う振動がパイプ3に伝わりパイプ3が軸方向に交差する方向に振動しても、その振動が比較的長い距離に亘って第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10により吸収される。これにより、電磁波吸収部品2の軸方向に交差する方向の振動が抑制され、パイプ3と編組シールド10との接続部分に加わる引張力が低減される。したがって、シールド素線100の断線を抑制することができ、パイプ3と編組シールド10との接続性確保につながる。
【0039】
(2)編組シールド10は、弛んだ状態でパイプ3に接続されているため、パイプ3と編組シールド10との接続部分に加わる引張力がより低減される。したがって、編組シールド10とパイプ3との接続性がより確実となる。
【0040】
(3)パイプ3は、導電性を有する金属からなるため、シールド機能を発揮すると共に、第1〜第3の電線11〜13に対する外部からの異物の干渉を回避することが可能である。
【0041】
(4)電磁波吸収部品2は、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の外周側に配置された第2ゴム部材24を有するので、電磁波吸収部品2が導電路1の軸方向に交差する方向に振動した際、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の外周面の軸方向の端部における角部が固定部材20(樹脂テープ)に当たることを避けることができる。これにより、固定部材20を構成する樹脂テープの破れ等を抑制することができ、固定部材20の耐久性が高められる。
【0042】
(5)電磁波吸収部品2は、第1〜第3の電線11〜13を一括して挿通させる貫通孔20aを有し、第1〜第3の電線11〜13を束ねているので、第1〜第3の電線11〜13同士の間隔を空けることなく、電磁波吸収部品2を装着することができる。これにより、第1〜第3の電線11〜13の取り回しがよくなる。
【0043】
また、第1の実施の形態に係る導電路1は、例えば以下のように変形して実施することも可能である。
【0044】
(変形例)
図7は、本発明の変形例に係る導電路1Aを示し、電磁波吸収部品2及び固定部材20の周辺部における断面図である。本変形例において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する構成要素については、共通する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0045】
第1の実施の形態に係る導電路1は、電磁波吸収部品2の貫通孔20aを第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10が挿通していたが、本変形例に係る導電路1Aは、編組シールド10が、第1〜第3の電線11〜13及び電磁波吸収部品2の外周側を覆い、固定部材20は編組シールド10の外側に配置されている。
【0046】
本変形例では、固定部材20の第1領域201及び第5領域205における樹脂テープが、電磁波吸収部品2の貫通孔20aから露出した第1〜第3の電線11〜13の外周側における電磁波吸収部品2の両側(第1の電線保持装置1a側及び第2の電線保持装置1b側)において、編組シールド10の外周に接して巻き回されている。また、固定部材20の第3領域203における樹脂テープは、電磁波吸収部品2の外周側において、編組シールド10の外周に接して巻き回されている。
【0047】
本変形例によっても、第1の実施の形態について説明した(1)〜(4)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。また、電磁波吸収部品2の第2ゴム部材24によって第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22の外周面における角部が編組シールド10に当たることを避けることができる。したがって、編組シールド10の耐久性をさらに高めることができる。またさらに、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22は、第1〜第3の電線11〜13から放射される電磁波を編組シールド10を介することなく吸収するので、第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22による電磁波の吸収量を増大させることができる。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について図8を参照して説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る導電路1Bを示し、第1の電線保持装置1cにおける第1〜第3の電線11〜13の延伸方向に沿った断面図である。本実施の形態において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する構成要素については、共通する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0049】
第1の実施の形態に係る導電路1は、電磁波吸収部品2が第1の電線保持装置1aの外部に配置されていたが、本実施の形態に係る導電路1Bは、電磁波吸収部品2Aの少なくとも一部が第1の電線保持装置1cのシールドシェル4の内部に収容されている。
【0050】
電磁波吸収部品2A及び電線保持部材5は、第1〜第3の電線11〜13の軸方向に並んで配置されている。電磁波吸収部品2Aは、一方の端面2Aaが電線保持部材5の開口端面50aに接触し、他方の端面2Ab及び外周面2Acがシールドシェル4の内面4aに接触している。本実施の形態では、電磁波吸収部品2Aは、シールドシェル4に圧入により固定されている。なお、電磁波吸収部品2Aは、接着剤等によりシールドシェル4に固定されていてもよい。
【0051】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。また、電磁波吸収部品2Aが第1の電線保持装置1cのシールドシェル4の内部に収容されているため、パイプ3が軸方向に交差する方向に振動しても、その振動が第1〜第3の電線11〜13及び編組シールド10により吸収されるので、電磁波吸収部品2Aに伝わる振動をより低減することができる。
【0052】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0053】
[1]電線(第1〜第3の電線11〜13)と、前記電線(第1〜第3の電線11〜13)を保持する電線保持部材(5)と、前記電線保持部材(5)の開口(5a)から導出された前記電線(第1〜第3の電線11〜13)を案内する導電性の金属部材からなるガイド部材(パイプ3)と、前記電線保持部材(5)と前記ガイド部材(パイプ3)との間で前記電線(第1〜第3の電線11〜13)を覆う可撓性を有する編組シールド(10)と、前記電線(第1〜第3の電線11〜13)を貫通させる貫通孔(20a)が形成され、前記電線(第1〜第3の電線11〜13)から放射される電磁波を吸収する電磁波吸収部品(2)とを備え、前記電磁波吸収部品(2)は、前記電線保持部材(5)と前記ガイド部材(パイプ3)との間において前記電線(第1〜第3の電線11〜13)の外周側に配置され、前記ガイド部材(パイプ3)の前記電線保持部材(5)側に形成された開口端面(第1の開口端面31a)から前記電磁波吸収部品(2)の中心部までの間における前記電線(第1〜第3の電線11〜13)及び前記編組シールド(10)の長さ(L)が、前記電線保持部材(5)の開口端面(50a)から前記電磁波吸収部品(2)の中心部までの間における前記電線(第1〜第3の電線11〜13)及び前記編組シールド(10)の長さ(L)よりも長い導電路(1,1A,1B)。
【0054】
[2]前記編組シールド(10)は、弛んだ状態で前記ガイド部材(パイプ3)に接続されている、[1]に記載の導電路(1,1A,1B)。
【0055】
[3]前記編組シールド(10)は、前記電線(第1〜第3の電線11〜13)と前記電磁波吸収部品(2)の前記貫通孔(20a)の内面との間に介在する、[1]又は[2]に記載の導電路(1)。
【0056】
[4]前記電線保持部材(5)及び前記電磁波吸収部品(2A)はそれぞれ、少なくとも一部がシールドシェル(4)の内部に収容され、前記電磁波吸収部品(2A)とシールドシェル(4)とは、互いに固定されている、[1]又は[2]に記載の導電路(1B)。
【0057】
[5]前記編組シールド(10)は、前記電線(第1〜第3の電線11〜13)及び前記電磁波吸収部品(2,2A)の外周側を覆う、[1]、[2]、又は[4]の何れか1項に記載の導電路(1A,1B)。
【0058】
[6]前記電磁波吸収部品(2,2A)は、電磁波を吸収する環状の磁性体コア電磁波を吸収する環状の磁性体コア(第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22)と、前記磁性体コア(第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22)の外周側に配置され、前記磁性体コア(第1磁性体コア21及び第2磁性体コア22)よりも高い弾性を有する緩衝材(第2ゴム部材24)とを有する、[5]に記載の導電路(1A,1B)。
【0059】
[7]複数の前記電線(第1〜第3の電線11〜13)を備え、前記電磁波吸収部品(2,2A)は、前記貫通孔(20a)に前記複数の電線(第1〜第3の電線11〜13)を挿通させることで、前記複数の電線(第1〜第3の電線11〜13)を束ねている、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の導電路(1,1A,1B)。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0061】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、導電路1,1A,1Bの電線(第1〜第3の電線11〜13)が3本である場合について説明したが、これに限らず、電線の本数は1又は2、あるいは4本以上であってもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、固定部材20を1本の樹脂テープを巻き付けて形成した場合について説明したが、これに限らず、例えば複数本の樹脂テープによって固定部材20が形成されていてもよい。また、電磁波吸収部品2を両側から挟むように第1〜第3の電線11〜13に取り付けられたクリップを固定部材20としてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、電磁波吸収部品2Aはシールドシェル4に収容された状態で固定されていたが、これに限らず、例えば電磁波吸収部品2Aの端面2Aaが、シールドシェル4の開口端面に接触するようにシールドシェル4の外部に配置され、電磁波吸収部品2A及びシールドシェル4が固定部材20によって固定されていてもよい。
【0064】
また、導電路1,1A,1Bの用途にも特に限定はない。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B…導電路、1a,1c…第1の電線保持装置、1b…第2の電線保持装置、2,2A…電磁波吸収部品、2a,2Aa…端面、2b,2Ab…端面、2Ac…外周面、3…パイプ(ガイド部材)、4…シールドシェル、4a…内面、5…電線保持部材、5a…開口、6…シール保持部材、7…環状部材、8…締付部材、10…編組シールド、11…第1の電線、12…第2の電線、13…第3の電線、20…固定部材、20a…貫通孔、21…第1磁性体コア、21a…貫通孔、22…第2磁性体コア、22a…貫通孔、23…第1ゴム部材、23a…貫通孔、24…第2ゴム部材(緩衝材)、31…第1の金属バンド、31a…第1の開口端面、32…第2の金属バンド、41…収容部、42…フランジ部、50a…開口端面、60…シール部材、91…インバータ、92…電動モータ、100…シールド素線、110…第1の接続端子、120…第2の接続端子、130…第3の接続端子、111,121,131…中心導体、112,122,132…絶縁体、201〜205…第1〜第5領域
図1
図2
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図6
図7
図8