(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。本実施形態の薄片試料作製方法は、
図1に示すように、ウエーハ状の半導体デバイス等の試料Sから薄片試料1を取り出した後、該薄片試料1を試料ホルダ3の側壁にデポジション膜を利用して固定し、薄片試料1の薄片加工を実施する方法である。側壁に薄片試料1を固定することで薄片加工時に照射するビームが他の構成に衝突し、スパッタリングされた物質が薄片試料1に付着することを防ぐことができる。なお、本実施形態では、
図2に示すように、集束イオンビーム(FIB)と電子ビーム(EB)という2つのビームを照射できるダブルビーム式の集束イオンビーム装置10を利用して、TEM観察用の薄片試料1を作製する場合を例にして説明する。また、同一ステージ11上に、試料S及び試料ホルダ3が配置されている場合を例に挙げて説明する。図示する例では、薄片試料1において1aが表面、1bが断面である。
【0015】
まず、この集束イオンビーム装置10について説明する。
集束イオンビーム装置10は、試料S及び試料ホルダ3が載置されるステージ11と、FIB及びEBを照射する照射機構12と、FIB或いはEBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出する検出器13と、デポジション膜を形成するための原料ガスGを供給するガス銃14と、検出された二次荷電粒子Eに基づいて画像データを生成すると共に、該画像データを表示部15に表示させ、また、集束イオンビーム装置10が備える各部の制御を行う制御部16(像形成部、加工領域設定部、画像処理部)と、薄片試料1を挟持して保持することが可能なマニピュレータ17と、記憶部18とを備えている。
【0016】
上記試料Sは、ホルダ20に固定された状態でステージ11上に載置されている。このホルダ20は、
図3及び
図4に示すように、中央に開口部21aを有する円形枠状に形成され、上面に試料Sを載置するホルダ本体21と、ホルダ本体21に載置された試料Sの外周に当接し、試料Sをホルダ本体21上で位置決めするガイド部22とを備えている。ガイド部22は、ホルダ本体21の外周において、例えば等間隔に隙間を空けた状態で4箇所に設けられている。また、これらガイド部22の間には、ホルダ本体21に装着自在とされた試料カセット23がそれぞれ配置されている。そして、これら各試料カセット23には、試料ホルダ3を挟持することができる固定台24が複数装着されている。
【0017】
固定台24は、
図5に示すように、基部24aと、図示しない固定ねじの締め込みによって基部24aに固定される固定部24bとで構成されており、基部24aと固定部24bと間で試料ホルダ3を挟持することができるようになっている。つまり、試料ホルダ3は、試料Sを載置しているホルダ20を介して、試料Sと同じステージ11上に配置された状態となっている。
【0018】
このステージ11は、
図2に示すように制御部16の指示にしたがって作動するようになっており、5軸に変位することができるようになっている。即ち、ステージ11は、ホルダ20を水平面に平行で且つ互いに直交するX軸及びY軸と、これらX軸及びY軸に対して直交するZ軸とに沿って移動させる水平移動機構30aと、ホルダ20をX軸(又はY軸)回りに回転させて傾斜させるチルト機構30bと、ホルダ20をZ軸回りに回転させるローテーション機構30cとから構成される変位機構30によって支持されている。よって、変位機構30によりステージ11を5軸に変位させることで、FIB或いはEBを所望する位置に向けて照射することができるようになっている。ところで、ステージ11及び変位機構30は、真空チャンバ31内に収納されている。そのため、真空チャンバ31内でFIB或いはEBの照射や原料ガスGの供給等が行われるようになっている。
【0019】
上記照射機構12は、ステージ11の上方に配置されており、Z軸に平行な鉛直にFIBを照射するFIB鏡筒32(集束イオンビーム鏡筒)と、Z軸に対して斜めにEBを照射するSEM鏡筒33とから構成されている。FIB鏡筒32は、イオン発生源32a及びイオン光学系32bを有しており、イオン発生源32aで発生させたイオンをイオン光学系32bで細く絞ってFIBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。また、SEM鏡筒33は、電子発生源33a及び電子光学系33bを有しており、電子発生源33aで発生させた電子を電子光学系33bで細く絞ってEBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。ここで、FIB鏡筒32とSEM鏡筒33を入れ替えて、Z軸に平行な鉛直にEBを照射し、Z軸に対して斜めにFIBを照射しても良い。この場合、チルト機構30bによりステージ11を傾斜させ、試料Sや試料ホルダ3の表面がFIBに対し垂直になるように配置することが可能である。
【0020】
検出器13は、FIB或いはEBが照射されたときに、試料Sや試料ホルダ3から発せられる二次電子や二次イオン等の二次荷電粒子Eを検出して、制御部16に出力している。ガス銃14は、デポジション膜の原料となる物質(例えば、フェナントレン、プラチナ、カーボンやタングステン等)を含有した化合物ガスを原料ガスGとして供給するようになっている。この原料ガスGは、FIBの照射によって発生した二次荷電粒子Eによって分解され、気体成分と固体成分とに分離するようになっている。そして、分離した2つの成分のうち、固体成分が堆積することで、デポジション膜となる。
【0021】
マニピュレータ17は、基端側がチルト機構30bに装着された駆動部17aと、該駆動部17aに支持されたプローブ17bとを有している。なお、
図2では、見易くするために駆動部17aをチルト機構30bから離した状態で図示している。そして、駆動部17aは、プローブ17bを水平移動、上下移動及び回転移動させることが可能とされている。これにより、試料Sから作製した薄片試料2とプローブ17bとをデポジションにより固定し、プローブ17bに固定した薄片試料2を、固定したまま自在に移動させることが可能とされている。
【0022】
制御部16は、上述した各構成品を総合的に制御していると共に、FIB鏡筒32及びSEM鏡筒33の加速電圧やビーム電流を変化させることができる。特に、制御部16は、FIB鏡筒32の加速電圧やビーム電流量を変化させることで、FIBのビーム径を自在に調整できるようになっている。これにより、観察画像を取得するだけでなく、試料Sを局所的にエッチング加工することができるようになっている。しかも、エッチング加工する際に、ビーム径を調整することで粗加工から仕上げ加工まで加工精度を自由に変えることが可能とされている。
【0023】
また、制御部16は、FIB或いはEBの照射により検出器13で検出された二次荷電粒子Eを、輝度信号に変換して観察画像データを生成した後、該観察画像データに基づいて表示部15に観察画像を出力させている。これにより、表示部15は、観察画像を表示できるようになっている。また、制御部16には、オペレータが入力可能な入力部16aが接続されており、該入力部16aによって入力された信号に基づいて各構成品を制御している。つまり、オペレータは、入力部16aを介して、所望する領域にFIBやEBを照射して観察したり、所望する領域にFIBを照射してエッチング加工を行ったり、所望する領域に原料ガスGを供給しながらFIBを照射してデポジション膜を堆積させたりすることができるようになっている。記憶部18は、例えば、ハードディスクやSSD(solid state drive)等であり、集束イオンビーム装置10が備える各部が用いるデータを記憶する。
【0024】
次に、本実施形態における薄片試料1の作製方法について説明する。本実施形態では、制御部16は、上級技術者が薄片試料1(第1の試料)を作製する際に用いた各設定情報を、加工ステップ毎に記憶部18に記憶する。そして、他の技術者が薄片試料1(第2の試料)を作製する際には、制御部16は、上級技術者が薄片試料1を作製した際に用いた設定情報を記憶部18から読み出し、読み出した設定情報に基づいて集束イオンビーム装置10の各部を制御して薄片試料1を作製する。これにより、集束イオンビーム装置10は、より容易な操作で品質の均一性を保った薄片試料1を作製することができる。なお、第1の試料と第2の試料がそれぞれ別の試料の場合について説明するが、同一の試料であって、異なる場所を加工する場合にも適用できる。また、上級技術者の設定情報を他の技術者が使用する場合について説明するが、同一の技術者が事前に記憶させた設定情報を用いて試料を作製する場合にも適用できる。
【0025】
設定情報は、例えば、加工前後の薄片試料1の画像や、FIBで加工する予定の加工領域を表示する加工枠の設定位置を示す値や、加工条件を示す値や、観察条件を示す値である。加工枠の設定位置を示す値としては、薄片試料1の断面のエッジから加工枠の断面側の辺までの相対的な距離を示す値である。加工条件を示す値としては、例えば、FIBのビーム条件(加速電圧、ビーム電流)や、加工設定(走査方向、方式、ビーム照射間隔、深さ設定(ドーズ量))や、試料ステージチルト角や、加工時の視野サイズ)である。また、観察条件を示す値としては、例えば、加工終点を判断するためのSEM観察条件(加速電圧、電流、走査速度、走査方式、積算方法(フレーム積算、ドット積算)や、検出器13またはSEM鏡筒33内部の検出器の選択や、コントラスト/ブライトネス設定である。なお、設定情報は上記の値に限らず、薄片試料1の作製に用いる情報であればどのような情報でも良い。
【0026】
次に、制御部16が、上級技術者が薄片試料1を作製する際に入力した各設定情報を、加工ステップ毎に記憶部18に記憶する設定情報登録処理について説明する。
図6は、本実施形態において、上級技術者が薄片試料1を作製する際に入力した各設定情報を、加工ステップ毎に記憶部18に記憶する設定情報登録処理を示したフローチャートである。以下、加工ステップ1〜4の4つのステップを実行することで、薄片試料1を作製する例を用いて説明する。なお、本実施形態では加工ステップ1〜4の4つのステップを実行することで、薄片試料1を作製する例を用いて説明するが、これに限らず、どのような加工ステップ数でも良い。例えば、3つ以下の加工ステップを実行することで、薄片試料1を作製するようにしても良く、5つ以上の加工ステップを実行することで、薄片試料1を作製するようにしても良い。
【0027】
(ステップS101)制御部16は、「レシピ登録モード」と「レシピ読み出しモード」との入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、設定情報を記憶させる場合は、入力部16aを操作して「レシピ登録モード」を選択する。制御部16は、入力部16aが「レシピ登録モード」を選択する入力を受け付けたと判定した場合にはステップS102の処理に進む。なお、制御部16は、入力部16aが「レシピ読み出しモード」を選択する入力を受け付けたと判定した場合には、後述する試料作製処理を実行する。
【0028】
(ステップS102)制御部16は、登録するレシピの名称の入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、登録するレシピの名称を入力する。制御部16は、入力部16aが入力を受け付けたレシピの名称を、登録レシピ名として記憶部18に記憶する。その後、ステップS103の処理に進む。
【0029】
(ステップS103)制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工前の薄片試料1の画像を取得する。また、制御部16は、加工ステップ1の加工処理で用いる設定情報の入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、加工ステップ1の加工処理で用いる設定情報を入力する。制御部16は、入力部16aが入力を受け付けた設定情報と、加工前の薄片試料1の画像とを「加工ステップ1」の設定情報として、ステップS102の処理で記憶した登録レシピ名に関連付けて記憶部18に記憶する。その後、ステップS104の処理に進む。
【0030】
(ステップS104)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS103の処理で入力部16aが入力を受け付けた設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ1)を行う。その後、ステップS105の処理に進む。
【0031】
(ステップS105)制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ1の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。また、制御部16は、加工ステップ2の加工処理で用いる設定情報の入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、加工ステップ2の加工処理で用いる設定情報を入力する。制御部16は、入力部16aが入力を受け付けた設定情報と、加工ステップ1の加工を行った後の薄片試料1の画像とを「加工ステップ2」の設定情報として、ステップS102の処理で記憶した登録レシピ名に関連付けて記憶部18に記憶する。その後、ステップS106の処理に進む。
【0032】
(ステップS106)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS105の処理で入力部16aが入力を受け付けた設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ2)を行う。その後、ステップS105の処理に進む。
【0033】
(ステップS107)制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ2の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。また、制御部16は、加工ステップ3の加工処理で用いる設定情報の入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、加工ステップ3の加工処理で用いる設定情報を入力する。制御部16は、入力部16aが入力を受け付けた設定情報と、加工ステップ2の加工を行った後の試料1の画像とを「加工ステップ3」の設定情報として、ステップS102の処理で記憶した登録レシピ名に関連付けて記憶部18に記憶する。その後、ステップS108の処理に進む。
【0034】
(ステップS108)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS107の処理で入力部16aが入力を受け付けた設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ3)を行う。その後、ステップS109の処理に進む。
【0035】
(ステップS109)制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ3の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。また、制御部16は、加工ステップ4の加工処理で用いる設定情報の入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、加工ステップ4の加工処理で用いる設定情報を入力する。制御部16は、入力部16aが入力を受け付けた設定情報と、加工ステップ3の加工を行った後の薄片試料1の画像とを「加工ステップ4」の設定情報として、ステップS102の処理で記憶した登録レシピ名に関連付けて記憶部18に記憶する。その後、ステップS110の処理に進む。
【0036】
(ステップS110)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS109の処理で入力部16aが入力を受け付けた設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ4)を行う。その後、ステップS111の処理に進む。
(ステップS111)制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ4の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。また、制御部16は、加工ステップ4の加工を行った後の薄片試料1の画像を「加工後の薄片試料画像」として、ステップS102の処理で記憶した登録レシピ名に関連付けて記憶部18に記憶する。その後、処理を終了する。
【0037】
上述した処理により、上級技術者が薄片試料1を作製する際に入力した各設定情報を、加工ステップ毎に記憶部18に記憶することができる。例えば、加工ステップ1は加速電圧30kV、ビーム電流120pAのFIBで薄片試料の膜厚が150nmになるまで粗加工するステップである。加工ステップ2は加速電圧30kV、ビーム電流80pAのFIBで薄片試料の膜厚が80nmになるまで中間加工するステップである。加工ステップ3は加速電圧5kV、ビーム電流40pAのFIBで薄片試料の膜厚が30nmになるまで中間加工するステップである。加工ステップ4は加速電圧2kV、ビーム電流20pAのFIBで薄片試料の膜厚が20nmになるまで仕上加工するステップである。
【0038】
次に、集束イオンビーム装置10が、上級技術者が薄片試料1を作製する際に用いた各設定情報に基づいて薄片試料1を作製する試料作製処理について説明する。
図7は、本実施形態において、集束イオンビーム装置10が、上級技術者が薄片試料1を作製する際に用いた各設定情報に基づいて薄片試料1を作製する試料作製処理を示したフローチャートである。
【0039】
(ステップS201)制御部16は、「レシピ登録モード」と「レシピ読み出しモード」との入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、設定情報に基づいて薄片試料1を作製する場合は、入力部16aを操作して「レシピ読み出しモード」を選択する。制御部16は、入力部16aが「レシピ読み出しモード」を選択する入力を受け付けたと判定した場合にはステップS202の処理に進む。なお、制御部16は、入力部16aが「レシピ登録モード」の入力を受け付けたと判定した場合には、上述した設定情報登録処理を実行する。
【0040】
(ステップS202)制御部16は、記憶部18が記憶している「登録レシピ名」の選択入力を受け付ける画面を表示部15に表示させる。操作者は、入力部16aを操作して、薄片試料1の作製に用いる「登録レシピ名」を選択入力する。制御部16は、入力部16aが選択入力を受け付けた「登録レシピ名」に関連付けられた設定情報を記憶部18から読み出す。その後、ステップS203の処理に進む。
【0041】
(ステップS203)制御部16は、ステップS202の処理で読み出した設定情報のうち、「加工ステップ1」の設定情報を集束イオンビーム装置10の各部に設定する。なお、操作者が設定情報を変更できるようにしてもよい。その後、ステップS204の処理に進む。
【0042】
(ステップS204)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS203の処理で設定した「加工ステップ1」の設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ1)を行う。なお、ステップS203の処理で、操作者が設定情報を変更した場合、操作者が変更した設定情報に基づいて薄片試料1の加工を行う。続いて、制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ1の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。その後、ステップS205の処理に進む。
【0043】
(ステップS205)制御部16は、ステップS202の処理で読み出した設定情報のうち、「加工ステップ2」の設定情報を集束イオンビーム装置10の各部に設定する。なお、操作者が設定情報を変更できるようにしてもよい。その後、ステップS206の処理に進む。
【0044】
(ステップS206)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS205の処理で設定した「加工ステップ2」の設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ2)を行う。なお、ステップS205の処理で、操作者が設定情報を変更した場合、操作者が変更した設定情報に基づいて薄片試料1の加工を行う。続いて、制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ2の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。その後、ステップS206の処理に進む。
【0045】
(ステップS207)制御部16は、ステップS202の処理で読み出した設定情報のうち、「加工ステップ3」の設定情報を集束イオンビーム装置10の各部に設定する。なお、操作者が設定情報を変更できるようにしてもよい。その後、ステップS208の処理に進む。
【0046】
(ステップS208)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS207の処理で設定した「加工ステップ3」の設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ3)を行う。なお、ステップS207の処理で、操作者が設定情報を変更した場合、操作者が変更した設定情報に基づいて薄片試料1の加工を行う。続いて、制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ3の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。その後、ステップS209の処理に進む。
【0047】
(ステップS209)制御部16は、ステップS202の処理で読み出した設定情報のうち、「加工ステップ4」の設定情報を集束イオンビーム装置10の各部に設定する。なお、操作者が設定情報を変更できるようにしてもよい。その後、ステップS210の処理に進む。
【0048】
(ステップS210)制御部16は、集束イオンビーム装置10が備える各部を制御し、ステップS209の処理で設定した「加工ステップ4」の設定情報に基づいて、薄片試料1の加工(加工ステップ4)を行う。なお、ステップS209の処理で、操作者が設定情報を変更した場合、操作者が変更した設定情報に基づいて薄片試料1の加工を行う。続いて、制御部16は、集束イオンビーム装置10の各部を制御し、加工ステップ4の加工を行った後の薄片試料1の画像を取得する。その後、処理を終了する。
【0049】
上述した処理により、制御部16は、上級技術者が薄片試料1を作製した際に用いた設定情報を記憶部18から読み出し、読み出した設定情報に基づいて集束イオンビーム装置10の各部を制御して薄片試料1を作製することができる。
【0050】
次に、各加工ステップでの処理の一例について説明する。
図8は、本実施形態における各加工ステップでの処理手順の一例を示したフローチャートである。なお、加工ステップ1〜4は、設定情報が異なるのみで、処理内容は同様である。一般的に、薄片試料1の加工領域の厚さに応じて、加工に用いるビーム電流や電圧を変更するが、処理内容は同様である。
【0051】
また、各ステップでの設定については、「レシピ登録モード」では、制御部16は、上級技術者が設定した値を記憶部18に記憶させる。また、「レシピ読み出しモード」では、制御部16は、記憶部18から読み出して設定する。
【0052】
(ステップS301)FIBのビーム条件の選択を行う。その後、ステップS302の処理に進む。
(ステップS302)薄片試料1の位置合わせ(Front)を行う。ここで、Frontとは、SEM鏡筒33側の断面であり、対向する断面をBackとする。例えば、ステージの移動によりFront位置を視野中心への移動を行い、ステージの回転により断面の回転方向のずれの補正、つまりSlant合わせを行う。なお、微調整を実施した場合はFront位置として自動更新する。その後、ステップS303の処理に進む。
【0053】
(ステップS303)SEMのビーム条件の選択を行う。例えば、視野合わせ、Focus、Stigma調整を行う。その後、ステップS304の処理に進む。
(ステップS304)加工枠の設定を行う。その後、ステップS305の処理に進む。
【0054】
(ステップS305)加工しながら、SEM観察し断面パターンの変化により、ステージの回転によりSlant補正を実施する。その後、ステップS306の処理に進む。
(ステップS306)適当な厚みまで加工を実施する。例えば、厚みは薄片試料の表面のSIM像と断面のSEM像で判断する。つまり、
図9(a)に示すように薄片試料1の表面1aに垂直方向からFIBを走査照射し形成した観察像と
図9(b)に示すように薄片試料1の断面2にEBを走査照射し形成した観察像から判断する。なお、
図9(a)、
図9(b)に示したXY方向は、各観察像の座標系のXY方向を示す。また、加工後のSEM像を保存する。その後、ステップS306の処理に進む。
【0055】
(ステップS307)ステージを180度回転させ、BackをSEM鏡筒33側に向け、さらに視野中心に移動させる。その後、ステップS308の処理に進む。
(ステップS308)SEMの視野合わせ、Focus、Stigma調整を行う。その後、ステップS309の処理に進む。
【0056】
(ステップS309)加工枠の設定を行う。その後、ステップS310の処理に進む。
(ステップS310)適当な厚みまで加工を実施する。また、加工後のSEM像を保存する。その後、処理を終了する。
【0057】
上述した各ステップでの処理を繰り返すことで、薄片試料1を作製することができる。なお、「レシピ読み出しモード」におけるステップS304およびステップS309の処理での加工枠の設定は、例えば、以下の手順で行う。
図10は、本実施形態における「レシピ読み出しモード」での加工枠の設定処理手順の一例を示したフローチャートである。
【0058】
(ステップS401)レシピ登録モードで登録した上級技術者が加工枠を設定した際の観察条件で試料の観察像を取得する。ここで観察条件は、加工枠の設定位置精度や画像処理に影響を及ぼす視野サイズ、画像の明るさについて登録した条件を用いることが重要である。その後、ステップS402の処理に進む。
【0059】
(ステップS402)エッジ認識の容易化のため、取得されるSIM像に対してデコンボリューション処理やエッジ強調の画像処理を実施する。その後、ステップS403の処理に進む。特に、加速電圧が低い場合やビーム電流量が大きい場合ではビーム径が大きいため、加工枠の位置設定の基準となる断面のエッジ位置の画像認識が困難になる。例えば、仕上加工においては薄片試料の膜厚よりもビーム径が大きくなる。この場合、画像処理により観察像における断面位置が正確に認識できるので正確な位置に加工枠を設定することができる。
(ステップS403)上記処理をした画像の断面を加工する位置に操作者が加工枠を配置する。そして、レシピに保存されている断面のエッジと加工枠の位置関係を、当該画像の断面のエッジ位置を基準として反映させ、操作者が配置した加工枠の位置を修正する。ここで、断面のエッジと加工枠の位置関係とは、断面のエッジと加工枠の相対的な位置であり、断面のエッジと加工枠との画像上での距離である。つまり、
図11(a)に示すように、まず操作者が、薄片試料1の表面1aの加工を行う位置に加工枠1101を配置する。次にレシピの情報と観察画像に基づき、制御部16は加工枠1101の位置を
図11(b)に示すように修正する。特に、加速電圧が低い場合やビーム電流量が大きい場合においては、ビーム径が大きくなるため、加工枠よりも広い範囲にビームが照射される。
図11(a)に示すように観察画像における薄片試料1の表面1aにかかるように加工枠1101を設定し加工を実施すると実際には加工枠よりも広い範囲にビームが照射され、薄片試料の広い範囲がエッチング加工されてしまう。そこで、制御部16によって
図11(b)に示すように薄片試料1から遠ざかるように加工枠1101の位置を修正する。これにより正確に断面を加工することができる。ここで、加工枠の位置の修正は、Y方向のみでも良い。特に断面1bと加工枠の断面側の境界線の位置関係が重要であるからである。境界線が断面に近すぎると薄片試料が削れ過ぎてしまい、遠すぎると所望の膜厚に仕上げることができない。その後、処理を終了する。
【0060】
なお、加工を実施中に加工条件等をその場で変更した場合には加工枠設定Scan指示を入力部16aに入力(例えば、加工枠設定Scanボタンをクリック)すると、現在表示されている加工枠を自動認識されたエッジ位置に対して、レシピ登録された位置へ自動で設定する。また、微調整を実施する場合は入力部16a(例えば、Wizrd内の矢印ボタン)を操作してピクセル単位で実施する。
【0061】
上述したとおり、本実施形態によれば、制御部16は、上級技術者が薄片試料1を作製する際に用いた各設定情報を、加工ステップ毎に記憶部18に記憶する。また、他の技術者が薄片試料1を作製する際には、制御部16は、上級技術者が薄片試料1を作製した際に用いた設定情報を記憶部18から読み出し、読み出した設定情報に基づいて集束イオンビーム装置10の各部を制御して薄片試料1を作製する。これにより、集束イオンビーム装置10は、より容易な操作で品質の均一性を保った薄片試料1を作製することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態における集束イオンビーム装置10が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0063】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0064】
以上、この発明の一実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。