【実施例】
【0038】
次に、実施例に基づいて、本発明をさらに説明する。
(実施例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
厚みが25μmの二軸延伸したポリエステルフィルムの片面に、付加反応型シリコーン(東レダウコーニング製、品名:SRX−211の100重量部に対して、白金触媒SRX−212の1重量部を添加したもの)を、トルエン・酢酸エチル1:1混合溶媒にて希釈した塗料を、メイヤバー工法にて、乾燥後のシリコーン膜の厚みが0.1μmとなるように塗工した。さらに、温度120℃の熱風循環式のオーブンにて、1分間に渡り乾燥・硬化させて、実施例1の剥離フィルムを得た。
【0039】
また、粘着剤層は、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合した、固形分40%のアクリル系ポリマー100重量部に対して、HDI系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、品名:コロネートHX)4重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03重量部を添加、混合した粘着剤組成物を用いて形成した。厚みが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが20μmとなるように、前記粘着剤組成物を塗布し、温度130℃の熱風循環式のオーブンにて1分間に渡り粘着剤を乾燥させた。その後、前記にて作製した実施例1の剥離フィルムのシリコーン処理面を、粘着剤層の表面上に貼り合わせて積層し、実施例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは92%であった。
【0040】
(実施例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
架橋剤の添加量をアクリル系ポリマー100重量部に対して、6重量部にした以外は実施例1と同様にして、実施例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは82%であった。
【0041】
(実施例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の厚みを40μmにした以外は実施例1と同様にして、実施例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは82%であった。
【0042】
(実施例4の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の乾燥温度を120℃にした以外は実施例1と同様にして、実施例4の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは77%であった。
【0043】
(比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の乾燥温度を100℃にした以外は実施例1と同様にして、比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは56%であった。
【0044】
(比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤組成物として、2−エチルヘキシルアクリレートと、ブチルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合した、固形分40%のアクリル系ポリマー100重量部に対して、HDI系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、品名:コロネートHX)1重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03重量部を添加、混合した粘着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは90%であった。
【0045】
(比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
架橋剤の添加量をアクリル系ポリマー100重量部に対して、2重量部にした以外は比較例2と同様にして、比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは74%であった。
【0046】
以下、評価試験の方法および、試験結果について示す。ここで、「ハードコート処理PETフィルム」は、透明導電性フィルム用基材(フィルム)の一例として用いた。
【0047】
(反応率Kの測定)
フィルムに粘着剤を塗工し、熱風循環式オーブンにて粘着剤中の溶剤を乾燥後、粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼合する。このサンプルを23℃、50%RH環境下に15分間放置した後、剥離フィルムを剥がし、粘着剤層の表面の赤外吸収スペクトルをフーリエ変換赤外吸光光度法にて測定する。架橋剤のイソシアネート(−N=C=O)に起因する2270cm
−1のピーク強度と粘着剤の(メタ)アクリル酸エステルのC=Oに起因する1730cm
−1のピーク強度を測定し、2270cm
−1/1730cm
−1のピーク強度比を算出し、これをサンプルのピーク強度比(a)とした。
同様にして、未硬化時のピーク強度比は、粘着剤に架橋触媒を添加せず、80℃の熱風循環式オーブンにて乾燥後、速やかに(例えば1分以内に)サンプルの粘着剤層の2270cm
−1/1730cm
−1のピーク強度を測定し、こちらを未硬化時のピーク強度比(b)とした。下記の式により反応率Kを求めた。
反応率K(%)=(1−a/b)×100
(ここで、aは、サンプルの粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm
−1/1730cm
−1のピーク強度比であり、bは未硬化時の粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm
−1/1730cm
−1のピーク強度比である。)
【0048】
(貯蔵弾性率の測定)
実施例、比較例で得られたサンプルを40℃のオーブンにて5日間養生した後、粘着剤層の30℃での貯蔵弾性率を粘弾性測定装置(エービーエム社製 動的粘弾性測定装置Reogel−E4000)にて測定した。
【0049】
(透明導電性フィルム用表面保護フィルムの初期粘着力の測定)
厚みが50μmの二軸延伸したポリエステルフィルムの片面に、ハードコート処理が施された、ITOフィルムにも使用されるハードコート処理したPETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)を用いた。25mm巾に裁断した透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、PETフィルムのハードコート処理が施された面に、貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下に1時間保管し、初期粘着力の測定サンプルとした。その後、引張試験機を用いて、300mm/分の剥離速度で180°の方向に、透明導電性フィルム用表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを初期粘着力(N/25mm)とした。
測定装置は、島津製作所社製の、型式:EZ−Lの、小型卓上試験装置を用いた。
【0050】
〈透明導電性フィルム用表面保護フィルムの加熱後粘着力の測定〉
25mm巾に裁断した透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、PETフィルムのハードコート処理が施された面に、貼り合わせた後、150℃環境下に1時間保管し、加熱後粘着力の測定サンプルとした以外は、初期粘着力の測定と同様にして測定し、これを加熱後粘着力(N/25mm)とした。
測定装置は、島津製作所社製の、型式:EZ−Lの、小型卓上試験装置を用いた。
【0051】
(ハードコート処理PETフィルムに透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼り合わせた時の、ハンドリング性の確認方法)
透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査を行ったサンプルを、下記の透明導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いた。ハードコート処理したPETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)のハードコート処理面に透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼合し、その後積層品をA4サイズにカットする。カットしたサンプルの4つの角の内1つの角を持ち、フィルム面で空中を扇ぐように前後に往復20回振る。その後ハードコート処理PETフィルムに折れや変形が無いかを目視にて確認する。ハードコート処理PETフィルムに折れや変形のないものを(○)、折れまたは変形があるものを(×)とした。
【0052】
(透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査の方法)
テストコーターにて、透明導電性フィルム用表面保護フィルムのロール品(400mm幅×100m巻)を作製し、40℃のオーブンにて5日間保温して、粘着剤の養生を行う。その後、ロール品から巻き戻した透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、端部から50mの所(両端から略等距離の位置)のサンプルの外観を目視にて観察する。粘着剤層の表面が平滑なものを(○)、粘着剤層の表面に弱い凹凸が発生しているものを(△)、粘着剤層の表面に強い凹凸が発生しているものを(×)とした。
【0053】
(ハードコート処理フィルムの外観検査の方法)
透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査を行ったサンプルを、下記の透明導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いた。ハードコート処理PETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)のハードコート処理面に透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼合し、その後150℃で1時間の加熱処理を行う。透明導電性フィルム用表面保護フィルムを剥離した後、ハードコート処理PETフィルムの表面状態を目視にて観察する。ハードコート処理PETフィルムの外観が平滑なものを(○)、凹凸状に弱い変形が発生しているものを(△)、凹凸状に強い変形が発生しているものを(×)とした。
【0054】
それぞれのサンプルについての測定結果を、表1に示す。表1において、「ポリマーA」は、実施例1に記載したアクリル系ポリマーであり、「ポリマーB」は、比較例2に記載したアクリル系ポリマーである。また、表1中の貯蔵弾性率の値は、例えば4.0×10
5を4.0E+05とするように、Eの前後に仮数および指数を置く形式で表記した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示した測定結果から、以下のことが判る。
実施例1〜3において、透明導電性フィルム用表面保護フィルムに用いた粘着剤層の、乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、82〜92%であり、加熱工程の前後で粘着力の変化が小さく、かつ、粘着剤層の表面の凹凸が非常に少ない(小さい)。この表面保護フィルムを使用したハードコート処理PETフィルムの外観は、良好なものとなった。また、実施例1〜3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、ハードコート処理PETフィルムに貼り合わせた時のハンドリング性も、非常に良好であった。
実施例4については、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、77%であり、実施例1〜3に比べると、粘着剤層の表面の凹凸が若干大きくなった。しかし、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写することなく、外観が良好なハードコート処理PETフィルムが得られた。
【0057】
一方、比較例1においては、透明導電性フィルム用表面保護フィルムに用いた粘着剤層の、乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、56%と低い値であった。その結果、比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。
また、比較例2では、粘着剤層の貯蔵弾性率が4.0×10
5Pa未満と小さいが、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは90%と高い値を示した。しかし、比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。同様に、比較例3では、粘着剤層の貯蔵弾性率が4.0×10
5Pa未満と小さいが、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kが74%であった。しかし、比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。