特許第6207087号(P6207087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

特許6207087透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルム
<>
  • 特許6207087-透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルム 図000003
  • 特許6207087-透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルム 図000004
  • 特許6207087-透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207087
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170925BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/00 M
   H01B5/14 A
   C09J7/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-161802(P2014-161802)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-36982(P2016-36982A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】客野 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千恵
(72)【発明者】
【氏名】岡本 理恵
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087240(JP,A)
【文献】 特開2012−255122(JP,A)
【文献】 特開2013−226676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
B32B 27/00
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼合して使用される透明導電性フィルム用表面保護フィルムであって、
基材フィルムの片面に、イソシアネート系架橋剤および架橋触媒を含むアクリル系粘着剤を用いて積層された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層の30℃での貯蔵弾性率が4.0×10Pa以上であり、かつ前記粘着剤層は、下記式で表される前記粘着剤層の乾燥開始15分後の前記粘着剤層に含まれる前記イソシアネート系架橋剤の反応率Kが75%以上であることを特徴とする透明導電性フィルム用表面保護フィルム。
反応率K(%)=(1−a/b)×100
(ここで、aは、前記粘着剤層の乾燥開始15分後の前記粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比であり、bは未硬化時の前記粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比であり、前記イソシアネート系架橋剤のイソシアネート(−N=C=O)に起因する2270cm−1のピーク強度と、前記粘着剤層の(メタ)アクリル酸エステルのC=Oに起因する1730cm−1のピーク強度とを測定した後、上記式により、前記粘着剤層を乾燥開始15分後の前記粘着剤層に含まれる前記イソシアネート系架橋剤の反応率Kを算出するものである。)
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電性フィルム用表面保護フィルムが、樹脂フィルムの一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼合された透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼り合わせて使用される透明導電性フィルム用表面保護フィルム、及びそれを用いた透明導電性フィルムに関する。さらに詳細には、本発明は、形成されている粘着剤層が、表面の平滑性を維持し、透明導電性フィルムに貼り合わせても優れたハンドリング性を有し、透明導電性フィルムの製造・加工工程において、表面保護フィルムに起因する外観の欠点不良が改善され、かつ、タッチパネル用透明電極製造工程での生産性が良好な、透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルムを提供する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネル、電子ペーパー、電磁波シールド材、各種センサ、液晶パネル、有機EL、太陽電池などの技術分野において、基材の一方の面に、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物化合物)、AZOやGZO(ZnO(酸化亜鉛)にアルミニウムやガリウムを添加した化合物)等からなる透明導電膜が形成された透明導電性フィルム(以下、単に「導電性フィルム」と呼ぶこともある。)が、透明電極などの形成用として広く利用されている。
また、タッチパネル用の透明電極の製造工程では、ITO、AZOやGZO等からなる透明導電膜が形成された透明導電性フィルムを、アニール処理する金属酸化膜の結晶化工程や、レジストの印刷工程、エッチング処理工程、銀ペーストによる配線回路の形成工程、絶縁層の印刷工程、打抜き工程など、多くの加熱工程や薬液処理の工程を経る。そのような透明電極の製造工程において、透明導電性フィルムの透明導電膜が形成された面の反対側面に汚損、損傷が生じるのを防止するために、透明導電性フィルム用表面保護フィルムが貼り合わせて使用される。
【0003】
透明電極の製造工程中において、アニール処理や銀ペーストによる配線回路の形成などが、約150℃程度の温度にて加熱処理されることから、透明導電性フィルム用保護フィルムには耐熱性が求められる。
タッチパネル用などの、透明電極の製造工程に使用される透明導電性フィルム用保護フィルムについて、各種の提案がされている。例えば、特許文献1には、融点が200℃以上である熱可塑性樹脂フィルムからなる基材の片面に、粘着剤層を設けた、透明導電性フィルム用表面保護フィルムが提案されている。ポリエチレンやポリプロピレンなどの、ポリオレフィン樹脂を基材に用いた透明導電性フィルム用表面保護フィルムに比べて、耐熱性が良好であるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンナフタレート樹脂を含有した基材フィルムの片面に、粘着剤を塗布した後に、所定の温度・滞留時間・引張張力にて乾燥する、透明導電性フィルム用表面保護フィルムの製造方法が提案されている。当該製造方法で得られた透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、透明導電性フィルムに貼り合わせた後、加熱工程を経ても大きなカールが発生しないとしている。
【0005】
特許文献3には、樹脂フィルムの片面に透明導電膜を設け、該透明導電膜を設けた面とは反対の樹脂フィルム面に保護フィルムを設けた透明導電膜及び保護フィルム付き樹脂フィルムにおいて、前記保護フィルムが、150℃、30分間加熱後の熱収縮率がMD及びTD方向ともに0.5%以下である第一のフィルムと前記透明導電膜及び保護フィルム付き樹脂フィルムの線膨張係数との差が40ppm/℃以下である線膨張係数を有する第二のフィルムからなり、かつ上記第一フィルムと第二フィルムを前記樹脂フィルムからこの順に設けることが提案されている。この発明を適用すれば、タッチパネル化等の加工工程中の熱処理による寸法変化及びカールがない透明導電フィルムが得られるとしている。
【0006】
また、特許文献4には、所定の厚さおよび剛軟度の剥離フィルムを用いることにより、表面保護フィルムの粘着剤層表面が平滑であり、外観の欠点不良が改善された、透明導電性フィルム用表面保護フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−170535号公報
【特許文献2】特許第4342775号公報
【特許文献3】特開平11−268168号公報
【特許文献4】特開2013−226676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特許文献4と同様に、表面保護フィルムの粘着剤層が、表面の平滑性を維持し、外観の欠点不良が改善された、透明導電性フィルム用表面保護フィルムを提供するものである。特許文献4の表面保護フィルムでは、40℃における剛軟度が0.30mN〜40mNである剥離フィルムを用いることを特徴としているが、当該の剛軟度を有するフィルムは厚さが厚くなり、コストが高くなる問題があった。また、表面保護フィルムの製造時または、ユーザーで表面保護フィルムの使用時に、使用する加工機械の仕様により、表面保護フィルムの巻き取り径が制約を受けることがある。その場合に、基材の厚さが厚い剥離フィルムを使用した表面保護フィルムでは、基材の厚さが薄い剥離フィルムを使用した物に比べて、所定巻き取り径での巻き取り長さが短くなり、タッチパネル用透明電極製造工程での生産性が落ちる問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ロール体から巻き戻された状態において、透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層が、表面の平滑性を維持し、透明導電性フィルムに貼り合わせても優れたハンドリング性を有し、透明導電性フィルムの製造・加工工程において、透明導電性フィルム用表面保護フィルムに起因する外観の欠点不良が改善され、かつ、タッチパネル用透明電極製造工程での生産性が良好な、透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、基材フィルムまたは剥離フィルムに粘着剤を塗布し、乾燥工程で粘着剤中の溶剤を蒸発させた後、剥離フィルムまたは基材フィルムを貼り合わせ、ロール形状に巻き取ることにより製造される。発明者らは、鋭意検討を進めた結果、乾燥開始15分後の粘着剤層の硬化状態と、粘着剤層の表面の凹凸状変形に相関があることを見出した。さらに、乾燥開始後15分以内に粘着剤層の硬化が進む粘着剤を用いることにより、たとえ基材の厚さの薄い剥離フィルムを、透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層の貼り合わせ用に使用した場合でも、前記粘着剤層の被着体に貼り合わされる表面に凹凸の変形が生じるのを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
表面保護フィルムの製造工程において、基材フィルムに粘着剤を塗布・乾燥させて粘着剤層を形成した後、ロール状態で養生するのが一般的であるが、その養生期間中にロールの巻き締り等の影響で、剥離フィルムの変形が発生する。そのため、剥離フィルムが変形した後に粘着剤層が硬化する場合には、剥離フィルムの表面形状が粘着剤層の表面に転写してしまい、これが、透明導電性フィルムの製造・加工工程を経ると透明導電性フィルムの外観が著しく悪くなる原因となっている。
【0012】
本発明は、透明導電性フィルム用表面保護フィルムをロール状で養生する期間において、剥離フィルムが変形する前に粘着剤層の硬化を進行させることで、剥離フィルムが変形しても、粘着剤層の表面の変形を抑制し、平滑性を維持することを技術思想としている。
すなわち、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムをロール状で養生する期間において、剥離フィルムが貼り合わされた粘着剤層が、剥離フィルムの変形に引きずられて変形する前に、粘着剤層の硬化を進め、被着体に貼り合わされる粘着剤層の表面に凹凸が生じるのを防ぎ、平滑性を維持するものである。
発明者らは、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率と、エージング(養生)完了後の粘着剤層の貯蔵弾性率とを測定することで、粘着剤層の硬化の進行状態を把握できることを見出した。より具体的には、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率と、エージング(養生)完了後の粘着剤層の貯蔵弾性率とが所定の範囲にあれば、たとえ基材の厚さの薄い剥離フィルムを、透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層の貼り合わせ用に使用した場合でも、前記粘着剤層の被着体に貼り合わされる表面に凹凸の変形が生じるのを抑制できる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、次の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを提供する。
樹脂フィルムの一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼合して使用される透明導電性フィルム用表面保護フィルムであって、基材フィルムの片面に、イソシアネート系架橋剤および架橋触媒を含むアクリル系粘着剤を用いて積層された粘着剤層を有し、前記粘着剤層の30℃での貯蔵弾性率が4.0×10Pa以上であり、かつ前記粘着剤層は、下記式で表される前記粘着剤層の乾燥開始15分後の前記粘着剤層に含まれる前記イソシアネート系架橋剤の反応率Kが75%以上であることを特徴とする透明導電性フィルム用表面保護フィルム。
反応率K(%)=(1−a/b)×100
(ここで、aは、前記粘着剤層の乾燥開始15分後の前記粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比であり、bは未硬化時の前記粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比であり、前記イソシアネート系架橋剤のイソシアネート(−N=C=O)に起因する2270cm−1のピーク強度と、前記粘着剤層の(メタ)アクリル酸エステルのC=Oに起因する1730cm−1のピーク強度とを測定した後、上記式により、前記粘着剤層を乾燥開始15分後の前記粘着剤層に含まれる前記イソシアネート系架橋剤の反応率Kを算出するものである。)
【0014】
また、前記の透明導電性フィルム用表面保護フィルムが、樹脂フィルムの一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼合された透明導電性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、ロール体から巻き戻された状態において、形成されている粘着剤層が、表面の平滑性を維持し、透明導電性フィルムに貼り合わせても優れたハンドリング性を有し、透明導電性フィルムの製造・加工工程において、表面保護フィルムに起因する外観の欠点不良が改善され、かつ、タッチパネル用透明電極製造工程での生産性が良好な、透明導電性フィルム用表面保護フィルム及びそれを用いた透明導電性フィルムを提供することができる。
【0016】
また、近年、スマートフォンなどの高機能携帯端末の筐体の薄型化に伴い、使用される透明導電性フィルムの薄型化が進んでいる。本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、タッチパネル用の透明電極の製造工程において、薄型化された透明導電性フィルムに、貼り合わせた状態で加熱工程を経た後でも、発生するカールが非常に小さい。このことにより、タッチパネル用の透明電極の製造工程の作業性、生産効率を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、一例を示す断面図である。
図2】本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、透明導電性フィルムに貼り合わせた例を示す断面図である。
図3】本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、製造方法の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、一例を示す断面図である。この透明導電性フィルム用表面保護フィルム5は、透明な可撓性を有する基材フィルム1の片面に、粘着剤層2が積層されている。粘着剤層2の被着体に貼り合わされる表面上には、粘着剤層の表面を保護するための剥離処理された剥離フィルム3が、剥離処理された面を介して積層されている。
【0019】
基材フィルム1としては、透明な可撓性を有するプラスチックフィルムが用いられる。これにより、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、基材の一方の面に透明導電膜が形成された透明導電性フィルムの、他方の面に貼合貼着したまま、導電性フィルムの外観検査を行うことができる。基材フィルム1として使用されるプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムが挙げられる。また、ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、且つ、光学適性を有するものであれば、他の樹脂種類のプラスチックフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルム、一軸または二軸延伸されたフィルムなど、特に制約は受けないが、基材フィルムの加熱収縮率が、低いことが好ましい。
【0020】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの基材フィルム1の厚みは、特に制限されるものではなく、使用する透明導電性フィルムに合わせて選定すればよい。使用する透明導電性フィルムが100μm以上のような厚い場合には、透明導電性フィルム自体のハンドリング性はそれ程悪くないため、表面保護フィルムは透明導電性フィルムの表面を保護することに主眼をおけばよい。そのため、表面保護フィルムの基材フィルム1の厚みは25〜75μm程度のものが使用できる。
【0021】
一方、使用する透明導電性フィルムが50μm以下のような薄い場合には、透明導電性フィルム自体のハンドリング性が悪いため、表面保護フィルムはハンドリング性も考慮して、基材フィルムの厚さの厚いものを使用することが望ましい。具体的な基材フィルムの厚さとしては、100〜188μm程度のものが好ましい。
【0022】
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が積層された面の反対側面に、表面の汚れを防止する目的の防汚層や、帯電防止層、オリゴマー防止層、傷つき防止のハードコート層を積層することや、コロナ放電処理やアンカーコート処理などの易接着性の処理を施してもよい。
【0023】
本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層2は、アクリル系粘着剤が好適であり、中でも、イソシアネート系架橋剤および架橋触媒を使用したアクリル系粘着剤が好適である。透明導電性フィルム用表面保護フィルムが透明導電性フィルムを保護した状態で行われる、加熱処理の前後での粘着力の変化の少ない粘着剤であれば、アクリル系粘着剤の組成については特に限定されるものではなく、公知の材料を使用できる。
【0024】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル樹脂組成物)に架橋剤を添加したもので、必要に応じて粘着付与剤を添加した粘着剤が好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーを共重合したポリマーが一般的である。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー組成は、(メタ)アクリル系モノマーが50%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが100%でもよい。
【0025】
架橋剤としては、イソシアネート化合物が好適であり、中でも1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物が好適である。
ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。2官能のイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物や、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
【0026】
架橋剤の添加量は、(メタ)アクリル系ポリマーの種類、重合度、官能基量などを考慮して決めればよく特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤0.5〜10重量部程度とするのが一般的である。
【0027】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、ロール状で養生する期間において、剥離フィルムが変形する前に粘着剤層の硬化を進行させる必要があることから、(メタ)アクリル系ポリマーと架橋剤との架橋反応を促進するために、架橋触媒を添加することが好ましい。架橋触媒は、(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物、有機鉄化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。
第三級アミンとしては、トリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラアルキルジアミン、N,N−ジアルキルアミノアルコール、トリエチレンジアミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体等が挙げられる。
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。
架橋触媒の添加量は、(メタ)アクリル系ポリマーの種類、重合度、官能基量や、架橋触媒の種類、添加量などを考慮して決めればよく、特に限定されないが、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜0.5重量部程度とするのが一般的である。
【0028】
また、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長するために、必要に応じて架橋遅延剤を含有してもよい。
架橋遅延剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ−ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ−ジケトンが挙げられる。特にアセチルアセトン、アセト酢酸エチルからなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。これらはケトエノール互変異性化合物であり、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
架橋遅延剤の添加量は特には限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、1.0〜5.0重量部程度添加するのが一般的である。
【0029】
また、必要に応じて、粘着剤に粘着付与剤を添加してもよい。粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
【0030】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層2には、必要に応じて、帯電防止剤を混合しても良い。帯電防止剤としては、(メタ)アクリル系ポリマーに対して分散または相溶性の良いものが好ましい。使用できる帯電防止剤としては、界面活性剤系、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。透明性や(メタ)アクリル系ポリマーに対する親和性などから、界面活性剤系、イオン性液体、アルカリ金属塩などが、好ましい。粘着剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類やベースポリマーとの相溶性を考慮して適宜決めることができる。また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、透明導電性フィルムから剥離時の、必要とされる剥離帯電圧、被着体の汚染性、粘着力などを考慮して、帯電防止剤の種類や、添加量を具体的に設定する。
【0031】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層2の厚みは、特に限定はないが、例えば、5〜50μm程度の厚みにすることが好ましい、さらに5〜30μm程度の厚みにすることがより好ましい。粘着剤層2の厚みが、50μmを超えると、透明導電性フィルム用表面保護フィルムを製造するコストが、増大するので競争力を損なう。粘着剤層2の厚みが、5μm未満であると、透明導電性フィルムへの密着性が低下したり、透明導電性フィルムに表面保護フィルムを貼り合わせる際に異物が混入した場合に、透明導電性フィルムが大きく変形してしまう問題がある。
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層2は、被着体の表面に対する剥離強度が、0.05〜0.5N/25mm程度の、軽度な粘着性を有する微粘着剤層であることが好ましい。このような、微粘着剤層を有する透明導電性フィルム用表面保護フィルムとすることにより、被着体から容易に剥がし易い、優れた操作性が得られる。
【0032】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの剥離フィルム3の材質は、特に限定されない。使用できる剥離フィルムの材質としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルムなどのポリオレフィンフィルムや、ポリエステルフィルムなどのフィルムの表面に、シリコーン系剥離剤などの剥離剤を用いて剥離処理を施した剥離フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。また、複数のフィルムを、接着剤を用いて積層したものや、フィルムに樹脂を溶融押出してラミネートした積層フィルムでも良い。これらの単層又は積層フィルムに、シリコーン系剥離剤などの剥離剤を用いて剥離処理を施し、剥離フィルムが得られる。
【0033】
また、本発明に係わる透明導電性フィルム用表面保護フィルムの剥離フィルム3の厚さは、特に制限を受けるものではなく、使用しやすい厚さのものを選定すればよい。一般的には、19μm〜75μm程度のものが多い。
剥離フィルム3を厚くすると、ロール状に巻いた同じ巻き径のロール体において、透明導電性フィルム用表面保護フィルムの全長が短くなることや、製造コストが増えることから、剥離フィルム3の適切な厚みが導かれる。また、剥離フィルム3は、単層のポリエステルフィルムに剥離処理した剥離フィルムや、ポリエステルフィルムを、接着剤を用いて多層に積層したフィルムに、剥離処理を施した剥離フィルムが好ましい。
【0034】
また、基材フィルム1に、粘着剤層2および剥離フィルム3を、順に積層する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、基材フィルム1に、粘着剤層2を塗布・乾燥させた後に剥離フィルム3を貼合する方法、剥離フィルム3に、粘着剤層2を塗布・乾燥させた後に基材フィルム1を貼合する方法など、いずれの方法でも良い。
また、基材フィルム1に、粘着剤層を形成するのは、公知の方法で行うことができる。具体的には、リバースコート法、コンマコート法、グラビアコート法、スロットダイコート法、メイヤーバーコート法、エアーナイフコート法などの、公知の塗工方法を採用することができる。
【0035】
また、剥離フィルム3に、剥離処理を施す方法は、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコート法、メイヤーバーコート法、エアーナイフコート法などの塗工方法により、剥離フィルム3の片面に剥離剤を塗工し、加熱または紫外線照射などにより剥離剤を乾燥・硬化すれば良い。必要に応じて、剥離処理するフィルムにあらかじめコロナ処理やプラズマ処理、アンカーコートなどの剥離剤のフィルムへの密着性を向上させる前処理を行っても良い。
【0036】
また、図2は、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、透明導電性フィルムに貼り合わせた積層フィルム11の、一例を示す概略構成図である。
この積層フィルム11は、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルム5から剥離フィルム3を剥がして得られる粘着フィルム4を、その粘着剤層2を利用して、透明導電性フィルム10の表面に貼り合わせたものである。透明導電性フィルム10は、樹脂フィルム6の一方の面6aに透明導電膜7が形成されたものである。粘着フィルム4は、樹脂フィルム6の他方の面6bに貼り合わされる。
透明導電性フィルム10としては、ITO、AZOやGZO等の透明導電膜が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ITO、AZOやGZO等の透明導電膜が形成された環状ポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。このような透明導電性フィルムは、タッチパネル、電子ペーパー、電磁波シールド材、各種センサ、液晶パネル、有機EL、太陽電池などの技術分野において、透明電極などの形成用として広く利用される。
本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、タッチパネルなどの透明電極の製造工程において、作業性、生産効率を大幅に改善でき、薄型化した透明導電性フィルムであっても、作業性、ハンドリング性を低下させることがないという優れた効果を奏する。
【0037】
また、図3は、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、製造方法の一例を示す概念図である。
剥離処理された剥離フィルム3の巻かれたロール体21と、基材フィルム1の巻かれたロール体22から、それぞれ剥離フィルム3及び基材フィルム1が繰り出される。基材フィルム1の一方の面には、粘着剤塗布装置23により粘着剤が塗布される。粘着剤が塗布された基材フィルム1は、乾燥炉24にて乾燥し、粘着フィルム4となる。粘着フィルム4の粘着剤層が形成された面と、剥離フィルム3の剥離処理された面とを対向させ、圧着ロール25,26にて圧着され、透明導電性フィルム用表面保護フィルム5が得られる。透明導電性フィルム用表面保護フィルム5は、ロール体27に巻き取られる。一般に、透明導電性フィルム用表面保護フィルム5の保管や運搬はロール体27の状態で行われる。透明導電性フィルム10に貼り合わせるときには、透明導電性フィルム用表面保護フィルム5が、ロール体27から巻き戻される。
【実施例】
【0038】
次に、実施例に基づいて、本発明をさらに説明する。
(実施例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
厚みが25μmの二軸延伸したポリエステルフィルムの片面に、付加反応型シリコーン(東レダウコーニング製、品名:SRX−211の100重量部に対して、白金触媒SRX−212の1重量部を添加したもの)を、トルエン・酢酸エチル1:1混合溶媒にて希釈した塗料を、メイヤバー工法にて、乾燥後のシリコーン膜の厚みが0.1μmとなるように塗工した。さらに、温度120℃の熱風循環式のオーブンにて、1分間に渡り乾燥・硬化させて、実施例1の剥離フィルムを得た。
【0039】
また、粘着剤層は、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合した、固形分40%のアクリル系ポリマー100重量部に対して、HDI系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、品名:コロネートHX)4重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03重量部を添加、混合した粘着剤組成物を用いて形成した。厚みが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが20μmとなるように、前記粘着剤組成物を塗布し、温度130℃の熱風循環式のオーブンにて1分間に渡り粘着剤を乾燥させた。その後、前記にて作製した実施例1の剥離フィルムのシリコーン処理面を、粘着剤層の表面上に貼り合わせて積層し、実施例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは92%であった。
【0040】
(実施例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
架橋剤の添加量をアクリル系ポリマー100重量部に対して、6重量部にした以外は実施例1と同様にして、実施例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは82%であった。
【0041】
(実施例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の厚みを40μmにした以外は実施例1と同様にして、実施例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは82%であった。
【0042】
(実施例4の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の乾燥温度を120℃にした以外は実施例1と同様にして、実施例4の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは77%であった。
【0043】
(比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤層の乾燥温度を100℃にした以外は実施例1と同様にして、比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは56%であった。
【0044】
(比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
粘着剤組成物として、2−エチルヘキシルアクリレートと、ブチルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを共重合した、固形分40%のアクリル系ポリマー100重量部に対して、HDI系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、品名:コロネートHX)1重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03重量部を添加、混合した粘着剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは90%であった。
【0045】
(比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの作製)
架橋剤の添加量をアクリル系ポリマー100重量部に対して、2重量部にした以外は比較例2と同様にして、比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを得た。このサンプルの粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは74%であった。
【0046】
以下、評価試験の方法および、試験結果について示す。ここで、「ハードコート処理PETフィルム」は、透明導電性フィルム用基材(フィルム)の一例として用いた。
【0047】
(反応率Kの測定)
フィルムに粘着剤を塗工し、熱風循環式オーブンにて粘着剤中の溶剤を乾燥後、粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼合する。このサンプルを23℃、50%RH環境下に15分間放置した後、剥離フィルムを剥がし、粘着剤層の表面の赤外吸収スペクトルをフーリエ変換赤外吸光光度法にて測定する。架橋剤のイソシアネート(−N=C=O)に起因する2270cm−1のピーク強度と粘着剤の(メタ)アクリル酸エステルのC=Oに起因する1730cm−1のピーク強度を測定し、2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比を算出し、これをサンプルのピーク強度比(a)とした。
同様にして、未硬化時のピーク強度比は、粘着剤に架橋触媒を添加せず、80℃の熱風循環式オーブンにて乾燥後、速やかに(例えば1分以内に)サンプルの粘着剤層の2270cm−1/1730cm−1のピーク強度を測定し、こちらを未硬化時のピーク強度比(b)とした。下記の式により反応率Kを求めた。
反応率K(%)=(1−a/b)×100
(ここで、aは、サンプルの粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比であり、bは未硬化時の粘着剤層のフーリエ変換赤外吸光光度法による2270cm−1/1730cm−1のピーク強度比である。)
【0048】
(貯蔵弾性率の測定)
実施例、比較例で得られたサンプルを40℃のオーブンにて5日間養生した後、粘着剤層の30℃での貯蔵弾性率を粘弾性測定装置(エービーエム社製 動的粘弾性測定装置Reogel−E4000)にて測定した。
【0049】
(透明導電性フィルム用表面保護フィルムの初期粘着力の測定)
厚みが50μmの二軸延伸したポリエステルフィルムの片面に、ハードコート処理が施された、ITOフィルムにも使用されるハードコート処理したPETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)を用いた。25mm巾に裁断した透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、PETフィルムのハードコート処理が施された面に、貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下に1時間保管し、初期粘着力の測定サンプルとした。その後、引張試験機を用いて、300mm/分の剥離速度で180°の方向に、透明導電性フィルム用表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを初期粘着力(N/25mm)とした。
測定装置は、島津製作所社製の、型式:EZ−Lの、小型卓上試験装置を用いた。
【0050】
〈透明導電性フィルム用表面保護フィルムの加熱後粘着力の測定〉
25mm巾に裁断した透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、PETフィルムのハードコート処理が施された面に、貼り合わせた後、150℃環境下に1時間保管し、加熱後粘着力の測定サンプルとした以外は、初期粘着力の測定と同様にして測定し、これを加熱後粘着力(N/25mm)とした。
測定装置は、島津製作所社製の、型式:EZ−Lの、小型卓上試験装置を用いた。
【0051】
(ハードコート処理PETフィルムに透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼り合わせた時の、ハンドリング性の確認方法)
透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査を行ったサンプルを、下記の透明導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いた。ハードコート処理したPETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)のハードコート処理面に透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼合し、その後積層品をA4サイズにカットする。カットしたサンプルの4つの角の内1つの角を持ち、フィルム面で空中を扇ぐように前後に往復20回振る。その後ハードコート処理PETフィルムに折れや変形が無いかを目視にて確認する。ハードコート処理PETフィルムに折れや変形のないものを(○)、折れまたは変形があるものを(×)とした。
【0052】
(透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査の方法)
テストコーターにて、透明導電性フィルム用表面保護フィルムのロール品(400mm幅×100m巻)を作製し、40℃のオーブンにて5日間保温して、粘着剤の養生を行う。その後、ロール品から巻き戻した透明導電性フィルム用表面保護フィルムの、端部から50mの所(両端から略等距離の位置)のサンプルの外観を目視にて観察する。粘着剤層の表面が平滑なものを(○)、粘着剤層の表面に弱い凹凸が発生しているものを(△)、粘着剤層の表面に強い凹凸が発生しているものを(×)とした。
【0053】
(ハードコート処理フィルムの外観検査の方法)
透明導電性フィルム用表面保護フィルムの外観検査を行ったサンプルを、下記の透明導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いた。ハードコート処理PETフィルム(きもと社製、品名:KBフィルム#50G01)のハードコート処理面に透明導電性フィルム用表面保護フィルムを貼合し、その後150℃で1時間の加熱処理を行う。透明導電性フィルム用表面保護フィルムを剥離した後、ハードコート処理PETフィルムの表面状態を目視にて観察する。ハードコート処理PETフィルムの外観が平滑なものを(○)、凹凸状に弱い変形が発生しているものを(△)、凹凸状に強い変形が発生しているものを(×)とした。
【0054】
それぞれのサンプルについての測定結果を、表1に示す。表1において、「ポリマーA」は、実施例1に記載したアクリル系ポリマーであり、「ポリマーB」は、比較例2に記載したアクリル系ポリマーである。また、表1中の貯蔵弾性率の値は、例えば4.0×10を4.0E+05とするように、Eの前後に仮数および指数を置く形式で表記した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示した測定結果から、以下のことが判る。
実施例1〜3において、透明導電性フィルム用表面保護フィルムに用いた粘着剤層の、乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、82〜92%であり、加熱工程の前後で粘着力の変化が小さく、かつ、粘着剤層の表面の凹凸が非常に少ない(小さい)。この表面保護フィルムを使用したハードコート処理PETフィルムの外観は、良好なものとなった。また、実施例1〜3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムを、ハードコート処理PETフィルムに貼り合わせた時のハンドリング性も、非常に良好であった。
実施例4については、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、77%であり、実施例1〜3に比べると、粘着剤層の表面の凹凸が若干大きくなった。しかし、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写することなく、外観が良好なハードコート処理PETフィルムが得られた。
【0057】
一方、比較例1においては、透明導電性フィルム用表面保護フィルムに用いた粘着剤層の、乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは、56%と低い値であった。その結果、比較例1の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。
また、比較例2では、粘着剤層の貯蔵弾性率が4.0×10Pa未満と小さいが、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kは90%と高い値を示した。しかし、比較例2の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。同様に、比較例3では、粘着剤層の貯蔵弾性率が4.0×10Pa未満と小さいが、粘着剤層の乾燥開始15分後の粘着剤層の反応率Kが74%であった。しかし、比較例3の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、粘着剤層の表面に凹凸が生じており、ハードコート処理PETフィルムと貼合した積層品を加熱処理した際に、粘着剤層の表面の凹凸形状が、ハードコート処理PETフィルムに転写して、ハードコート処理PETフィルムの外観が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、タッチパネル用の透明電極の製造工程において、薄型化された透明導電性フィルムに、貼り合わせた状態で加熱工程を経た後でも、発生するカールが非常に小さい。このことにより、タッチパネル用の透明電極の製造工程の作業性、生産効率を大幅に改善できる。また、本発明の透明導電性フィルム用表面保護フィルムは、タッチパネル、電子ペーパー、電磁波シールド材、各種センサ、液晶パネル、有機EL、太陽電池などの技術分野において使用される、透明導電性フィルムの製造・加工用の表面保護フィルムとして幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…剥離フィルム、4…粘着フィルム、5…透明導電性フィルム用表面保護フィルム、6…樹脂フィルム、6a…樹脂フィルムの一方の面、6b…樹脂フィルムの他方の面、7…透明導電膜、10…透明導電性フィルム、11…積層フィルム、21…剥離フィルムのロール体、22…基材フィルムのロール体、23…粘着剤塗布装置、24…乾燥炉、25,26…圧着ロール、27…透明導電性フィルム用表面保護フィルムのロール体。
図1
図2
図3