特許第6207248号(P6207248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207248
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20170925BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20170925BHJP
   C23F 1/26 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/306 F
   H01L21/308 F
   C23F1/18
   C23F1/26
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-126506(P2013-126506)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-2284(P2015-2284A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】石崎 隼郎
(72)【発明者】
【氏名】大宮 大輔
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0262569(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/093445(WO,A1)
【文献】 特開2011−228618(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/064001(WO,A1)
【文献】 特表2012−522895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306−21/3063、21/308、
21/3205−21/3213、
21/465−21/467、21/768、
23/52−23/522、
H05K 3/02− 3/08、
C23F 1/00− 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング液組成物において、
(A)過酸化水素:0.1〜15質量%;
(B)フッ化物イオン供給源:0.02〜2質量%;
(C)有機カルボン酸:5〜60質量%;及び
(D)アゾール系化合物及び窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物:0.01〜5質量%
よりなる水溶液からなることを特徴とするエッチング液組成物。
【請求項2】
(C)有機カルボン酸が、クエン酸である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
(D)アゾール系化合物及び窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が、5−アミノ−1H−テトラゾールおよびアデニンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエッチング液組成物に、更に、安定剤、可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘性調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤及び界面活性剤から選択される添加剤を0.001〜50質量%の範囲内で含有するエッチング液組成物。
【請求項5】
チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング方法において、エッチング液組成物として請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエッチング液組成物を用いることを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関し、更に詳細には、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等に代表される表示デバイスの配線材料は、ディスプレイの大型化及び高解像度化といった要求を満たすために銅や銅を主成分とする配線が採用されており、バリア膜としてチタンや窒化チタン等に代表されるチタン系金属が併用して用いられていることが知られている。銅とチタン系の多層被膜のウエットエッチングに関する技術は種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、過酸化水素、硝酸、フッ素イオン供給源、アゾール、第四級アンモニウムヒドロキシド及び過酸化水素安定剤を含み、pH1.5〜2.5である銅層及びチタン層を含む多層薄膜用エッチング液が開示されている。また、特許文献2には、フッ素イオン供給源、過酸化水素、硫酸塩、リン酸塩、アゾール系化合物及び溶媒を含むことを特徴とするエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011―093445号公報
【特許文献2】特開2008−288575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングすることによってチタン系被膜と銅系被膜からなる細線を形成するために上記に開示されたエッチング液を用いた場合、エッチング速度を制御することができず所望の幅の細線を得ることができない場合や、所望の断面形状の細線を得ることができない場合があるという問題点があった。好ましい細線の断面形状は、細線上部の幅が細線下部の幅未満である形状であり、逆に細線の断面形状において、細線上部の幅が細線下部の幅以上である場合は細線が崩れやすいので好ましくない。従来のエッチング液を使用した場合には、細線の断面形状において、細線上部の幅が細線下部の幅以上である形状となる場合が多かった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜の一括でエッチングにおいて、所望の幅の細線を得ることができ、また、好ましい断面形状の細線を得ることができるエッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(A)過酸化水素、(B)フッ化物イオン供給源、(C)有機カルボン酸、(D)アゾール系化合物及び窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液組成物が、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためのエッチング液組成物において、(A)過酸化水素:0.1〜15質量%、(B)フッ化物イオン供給源:0.02〜2質量%、(C)有機カルボン酸:5〜60質量%、及び(D)アゾール系化合物及び窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物:0.01〜5質量%を含む水溶液からなることを特徴とするエッチング液組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は上記エッチング液組成物を用いることを特徴とするチタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするエッチング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするために用いられるエッチング液組成物において、所望の幅の細線を得ることができ、また、細線の断面形状において、細線上部の幅が細線下部の幅未満である細線を得ることができる。エッチング液組成物及び該エッチング液組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
まず、本明細書に記載する「チタン系被膜」とは、チタンを含む膜であればよく、特に限定されるものではないが、金属チタン及びチタンニッケル合金等に代表されるチタン合金から選ばれる1種以上からなる膜を総称するものである。
また、本明細書に記載する「銅系被膜」とは、銅を含む膜であればよく、特に限定するものではないが、例えば、金属銅及び銅ニッケル合金等に代表される銅合金から選ばれる1種以上からなる膜を総称するものである。
【0012】
本発明のエッチング液組成物において、(A)過酸化水素[以下、(A)成分と略す場合がある]の濃度は、所望とする被エッチング材であるチタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよいが、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%である場合が特に好ましい。(A)成分の濃度が、0.1質量%未満であると、充分なエッチング速度が得られないために好ましくなく、一方、15質量%よりも多い場合はエッチング速度の制御が困難となる場合があることから好ましくない。
【0013】
本発明のエッチング液組成物に用いられる(B)フッ化物イオン供給源[以下、(B)成分と略す場合がある]は、エッチング液組成物中でフッ化物イオンを発生するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウムなどが挙げられる。ここで、アルカリ金属のフッ化物塩は、エッチング処理後に被エッチング基体にアルカリ金属が残留する場合があることから、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウムを用いることが好ましい。
【0014】
本発明のエッチング液組成物において、(B)成分の濃度は、所望とする被エッチング材である、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよいが、0.02〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%が特に好ましい。(B)成分の濃度が、0.02質量%未満である場合は、充分なエッチング速度が得られないために好ましくなく、一方、2質量%よりも多い場合は、被エッチング基体にガラスを用いられている場合にガラスを腐食する場合があることから好ましくない。
【0015】
本発明のエッチング液組成物において、(C)有機カルボン酸[以下、(C)成分と略す場合がある]は、カルボキシル基を有する有機化合物であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、テトラカルボン酸、トリカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸、およびそれらの無水物が挙げられる。
【0016】
上記テトラカルボン酸、テトラカルボン酸一無水物又はテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、以下に列挙した化合物(C−1)〜(C−19)のテトラカルボン酸、テトラカルボン酸を脱水してなる一無水物または二無水物が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
上記トリカルボン酸、トリカルボン酸一無水物としては、例えば、以下に列挙した化合物(C−20)〜(C−23)のトリカルボン酸、トリカルボン酸を脱水してなる一無水物が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
上記ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びこれらのジカルボン酸を脱水してなる一無水物が挙げられる。
【0023】
上記モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等が挙げられる。
【0024】
本発明のエッチング液組成物において、好適な(C)成分としては、例えば、クエン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シュウ酸及び酢酸が挙げられ、クエン酸を用いた場合はエッチング液の保存安定性が高いことから特に好ましい。
【0025】
本発明のエッチング液組成物において、(C)成分の濃度は、所望とする被エッチング材である、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜の厚みや幅によって適宜調節すればよく、5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。(C)成分の濃度が5質量%よりも少ないと、エッチング液を長時間連続して使用した場合にエッチング能力が失活してしまう場合があるために好ましくなく、一方、(C)成分の濃度が50質量%よりも多い場合はエッチング速度の制御が困難となる場合があることから好ましくない。
【0026】
本発明のエッチング液組成物に用いられる(D)アゾール系化合物及び窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物[以下、(D)成分と略す場合がある]について説明する。
【0027】
上記アゾール系化合物は、特に限定されるものではなく、窒素原子を1つ以上含み2つの2重結合を有する複素5員環を構造中に有する化合物であればよいが、例えば、1−メチルピロールに代表されるアルキルピロールおよびピロールなどのアゾール化合物;1−メチルイミダゾールに代表されるアルキルイミダゾール、アデニン、1,3−イミダゾール(以下、イミダゾールと略す場合がある)およびピラゾールなどのジアゾール化合物;1,2,4−トリアゾール、5−メチルー1H―ベンゾトリアゾール及び1H―ベンゾトリアゾール(以下、ベンゾトリアゾールと略す場合がある)および3−アミノ−1H―トリアゾールなどのトリアゾール化合物;1H―テトラゾール、5―メチルー1H―テトラゾール、5−フェニルー1H―テトラゾールおよび5−アミノ−1H―テトラゾール(以下、5−アミノテトラゾールと略す場合がある)などのテトラゾール化合物;1,3−チアゾール、4−メチルチアゾールおよびイソチアゾールなどのチアゾール化合物、イソオキサゾールなどのオキサゾール化合物が挙げられる。これらのうち、アデニンおよびテトラゾール化合物が好ましく、なかでもアデニンおよび5−アミノ−1H―テトラゾールが特に好ましい。(D)成分としては、アゾール系化合物を用いた場合は、細線を形成するために最低限必要なエッチング時間以上にエッチング処理を行なった場合にも得られる細線の品質に影響がないことから好ましい。
【0028】
上記窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を構造中に有する化合物は、特に限定されるものではなく、構造中に窒素原子を1つ以上含み3つの2重結合を有する複素6員環を有する化合物(以下、ピリジン系化合物と記載することがある)であればよいが、例えば、2−メチルピリジンに代表されるアルキルピリジン化合物、2−アミノピリジン及び2−(2−アミノエチル)ピリジンに代表されるアミノピリジン化合物、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン及びテトラジンが挙げられ、アミノピリジン化合物が好ましく、なかでも2−アミノピリジンが特に好ましい。
【0029】
本発明のエッチング液組成物において、(D)成分の濃度は、所望とする被エッチング材である、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜の厚み、幅および所望の細線の形状によって適宜調節すればよく、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。(D)成分の濃度が0.01質量%未満である場合は、エッチング後に得られた細線の断面形状において、細線上部の幅が細線下部の幅以上である細線が得られてしまう場合があるために好ましくなく、一方、5質量%を超える量を添加しても配合効果の向上は見られない。(D)成分の濃度は、アゾール系化合物又はピリジン系化合物を単独で使用する場合には、アゾール系化合物又はピリジン系化合物の濃度を意味し、アゾール系化合物又はピリジン系化合物を混合して使用する場合にはアゾール系化合物又はピリジン系化合物の濃度の和を意味する。なお、アゾール系化合物とピリジン系化合物を混合して使う場合のアゾール系化合物又はピリジン系化合物の濃度の比率は1:30〜30:1の範囲が好ましく、1:25〜25:1の範囲である場合がより好ましく、1:5〜5:1の範囲である場合は、添加効果が特に高いことから特に好ましい。
【0030】
また、本発明のエッチング液組成物には、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分のほかに、本発明の効果を阻害することのない範囲で、周知の添加剤を配合させることができる。当該添加剤としては、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等が挙げられ、これらを使用する場合の濃度は、一般的に、0.001質量%〜50質量%の範囲である。
【0031】
これらのなかで、pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸及び硝酸から選択される無機酸及びそれらの塩、水溶性有機酸[上記(C)成分の有機カルボン酸を除く]及びそれらの塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属類、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化アルカリ土類金属類、炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの4級アンモニウムヒドロキシド類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機アミン類、アンモニアが挙げられ、これらは1種類または2種類以上の混合物で使用することができる。pH調整剤を使用する場合は、所望とするpHとなるだけ添加すればよい。なお、本発明のエッチング液組成物はpH1〜5の範囲内であることが望ましい。pH が低すぎると銅のエッチング速度が速くなりすぎるため、銅の配線細りが大きくなる。pHが5を超えると、過酸化水素の安定性を低下させるだけでなく、銅、特にチタンの溶解速度が極めて遅くなり、エッチングに時間を要してしまうために好ましくない。
【0032】
また、界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性活性剤及び両性界面活性剤を添加することができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダムまたはブロック付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。なかでも、アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダムまたはブロック付加物を用いた場合は、得られる細線の直線性が良好であり、エッチング液の保存安定性が良好であることから好ましい。アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダムまたはブロック付加物のなかでもリバース型であるものを用いた場合は、低起泡性であることからさらに好ましい。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を使用する場合の濃度は、一般的に、0.001質量%〜10質量%の範囲である。
【0033】
本発明のエッチング液組成物は、上記成分以外の成分は水である。従って、本発明のエッチング液組成物は、上記成分を所定量含有する水溶液の形で提供される。
【0034】
本発明のエッチング液組成物は、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするため際に使用される。チタン系被膜は1層であっても、2層以上の積層膜であってもよい。また、銅系被膜は1層であっても、2層以上の積層膜であってもよい。チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜は、銅系被膜がチタン系被膜の上層であってもよく、下層であってもよく、上層及び下層にあってもよい。また、チタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜において、チタン系被膜と銅系被膜は交互に積層された構成のものであってもよい。
【0035】
本発明のエッチング剤組成物を用いたチタン系被膜と銅系被膜からなる積層膜を一括でエッチングするためエッチング方法は、特に限定されるものではなく、周知一般のエッチング方法を用いることができ、ディップ式、スプレー式、スピン式などによるエッチング方法が挙げられる。例えば、スプレー式のエッチング方法によって、ガラス基板上にチタン、銅の順に積層された基体をエッチングする場合には、基材へ本発明のエッチング液組成物を噴霧することで、ガラス基板上にチタン被膜及び銅被膜をエッチングすることができる。
【0036】
なお、この際のエッチング条件は特に限定されるものではなく、エッチング対象の形状や膜厚などに応じて任意に設定することができる。例えば、噴霧条件は、0.01Mpa〜0.2Mpaが好ましく、0.01Mpa〜0.1MPaが特に好ましい。また、エッチング温度は、10℃〜50℃が好ましく、20℃〜50℃が特に好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるので、必要なら上記温度範囲内に維持するよう公知の手段によって温度を制御することもできる。また、エッチング時間は、エッチング対象が完全にエッチングされるに十分必要な時間とすればよいので特に限定されるものではない。例えば、膜厚1μm程度、線幅10μm程度および開口部100μm程度のエッチング対象であれば、上記温度範囲であれば10〜300秒程度エッチングを行えばよい。
【0037】
本発明のエッチング液組成物及びエッチング液組成物を用いたエッチング方法は、主に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、有機EL、太陽電池、照明器具等の電極や配線を加工する際に好適に使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
表1に示す配合でエッチング液組成物を配合し、本発明品No.1〜22を得た。なお、含有量の残部は水である。
【0039】
【表1】
【0040】
[比較例A]
表2に示す配合でエッチング液組成物を配合し、比較品No.1〜7を得た。なお、含有量の残部は水である。
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例2]
ガラス基板上にチタン(30nm)、銅(500nm)の順に積層した基体上にポジ型液状レジストを用いて線幅10μm、開口部100μmのレジストパターンを形成した基板を10mm×10mmに切断してテストピースとし、このテストピースを本発明品No.1〜22を使用して35℃、スプレー圧0.05MPaの条件でスプレー方によるパターンエッチングを行った。エッチング処理時間は、各々のエッチング剤において、配線間残渣が無くなる時間だけ実施し、この時間を「最適エッチング時間」と定義した。
【0043】
[比較例B]
ガラス基板上にチタン(30nm)、銅(500nm)の順に積層した基体上にポジ型液状レジストを用いて線幅10μm、開口部100μmのレジストパターンを形成した基板を10mm×10mmに切断してテストピースとし、このテストピースを比較品No.1〜7を使用して35℃、スプレー圧0.05MPaの条件でスプレー方によるパターンエッチングを行った。エッチング処理時間は、最適エッチング時間である。
【0044】
[評価例1]
実施例2および比較例Bによって得られたテストピースについて、テストピース上部を光学顕微鏡で確認することで細線が形成されているか確認した。ここで、細線が形成されている場合を○、細線が形成されていない場合を×として評価した。また、走査型電子顕微鏡を用いてテストピース断面を観察し、細線上部及び下部の幅を確認した。細線上部の幅が細線下部の幅未満場合を△、細線上部の幅が細線下部の幅以上である場合を△’として評価した。なお、細線上部の幅が細線下部の幅未満である場合(△)は、細線が安定していることから好ましく、細線上部の幅が細線下部の幅以上である場合(△’)は細線が崩れやすいために不適である。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3の結果より、評価例1〜22は全てのサンプルで細線を形成することができており、且つ細線の上部の幅が下部の幅未満であることがわかった。一方、比較例1〜6では、比較例3及び5のみ細線を形成することができ、細線の上部の幅が下部の幅未満である細線を形成することができたのは比較例3だけであった。
【0047】
[実施例3]
ガラス基板上にチタン(30nm)、銅(500nm)の順に積層した基体上にポジ型液状レジストを用いて線幅10μm、開口部100μmのレジストパターンを形成した基板を10mm×10mmに切断してテストピースとし、このテストピースを本発明品No.2、4、5及び16を使用して35℃、スプレー圧0.05MPaの条件でスプレー方によるパターンエッチングを行った。なお、エッチング処理時間は、最適エッチング時間から30秒間多く実施した。
【0048】
[比較例C]
ガラス基板上にチタン(30nm)、銅(500nm)の順に積層した基体上にポジ型液状レジストを用いて線幅10μm、開口部100μmのレジストパターンを形成した基板を10mm×10mmに切断してテストピースとし、このテストピースを比較品No.3を使用して35℃、スプレー圧0.05MPaの条件でスプレー方によるパターンエッチングを行った。なお、エッチング処理時間は、最適エッチング時間から30秒間多く実施した。
【0049】
[評価例2]
実施例3、比較例Cによって得られたテストピースについて、テストピース上部を光学顕微鏡で確認することで細線が形成させているか確認した。ここで、細線が形成されている場合を○、細線が形成されていない場合を×として評価した。また、走査型電子顕微鏡を用いて該テストピースの断面を観察し、細線上部及び下部の幅を確認した。細線上部の幅が細線下部の幅未満場合を△、細線上部の幅が細線下部の幅以上である場合を△’として評価した。細線上部の幅が細線下部の幅未満である場合(△)は、細線が安定していることから好ましく、細線上部の幅が細線下部の幅以上である場合(△’)は細線が崩れやすいために不適である。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
※1:銅層が全て溶解し、無くなってしまった。
【0051】
表4の結果より、比較例7は銅層が全て溶解してしまっていることがわかった。よって、比較品3はプロセスウインドウが非常に狭いということがわかった。一方、評価例23〜25は全てのサンプルで全てのサンプルで細線を形成することができており、且つ細線の上部の幅が下部の幅未満であることがわかった。
よって、本発明のエッチング液組成物は最適エッチング時間以上にエッチング処理を行なった場合にも得られる細線の品質に影響がないことから、プロセスウインドウが広いエッチング液組成物であることがわかった。