特許第6207250号(P6207250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207250
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】サンプルの性状を測定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20170925BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01B11/06 G
   G01N21/45 A
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-127893(P2013-127893)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-2151(P2014-2151A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】12172463.7
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13167065.5
(32)【優先日】2013年5月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン ハイチマ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス アンナ クアエダッカーズ
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−221027(JP,A)
【文献】 特表2011−506972(JP,A)
【文献】 特開平8−161433(JP,A)
【文献】 米国特許第5596409(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって得られる相関曲線から前記サンプルの性状を測定する方法であって、前記サンプルは、前記広帯域干渉法で用いられる広帯域照射光が透過する単層又は複数層の薄膜を備え、
干渉光の強度を、前記サンプル表面からのスキャン距離の関数として含む前記相関曲線を取得し、
自己相関曲線を相互相関曲線として算出するために、取得された前記相関曲線の自己相関を計算し、
算出された前記相互相関曲線としての前記自己相関曲線からサンプルの性状を決定する
性状測定方法。
【請求項2】
前記サンプルの性状を決定する際、前記算出された自己相関曲線から前記薄膜の膜厚を決定する
請求項1記載の性状測定方法。
【請求項3】
前記サンプルの性状を決定する際、前記算出された自己相関曲線から前記薄膜の屈折率を決定する
請求項1又は2記載の性状測定方法。
【請求項4】
前記算出された自己相関曲線に対し、物理モデルのフィッティングを行う
請求項1〜3のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項5】
ルックアップテーブルを取得するために、複数の参照自己相関曲線を、これらと関連する参照性状と共にメモリに保存し、
保存された前記参照自己相関曲線のうち、前記算出された自己相関曲線に最もよく適合するものを見つけるために、算出された前記自己相関曲線と、前記ルックアップテーブル中の前記参照自己相関曲線とを繰り返し比較し、
前記参照自己相関曲線のうち、前記算出された自己相関曲線に最もよく適合するものに関連する前記参照性状から、前記性状を決定する
請求項1〜4のうちのいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項6】
前記ルックアップテーブルに、前記参照自己相関曲線の一部を保存し、前記参照自己相関曲線のうち前記算出された自己相関曲線に最も適合するものを見つけるために、前記算出された自己相関曲線の、前記参照自己相関曲線の一部に対応する部分と、前記ルックアップテーブル中の、前記参照自己相関曲線の前記保存された一部とを繰り返し比較する
請求項5記載の性状測定方法。
【請求項7】
(a)前記広帯域干渉法を行う間に、前記対物レンズの焦点面を通じて前記参照性状を有する参照サンプルの参照面をスキャンし、
(b)前記干渉光の強度を、前記参照面からのスキャン距離の関数として表す参照相関曲線を取得し、
(c)前記参照自己相関曲線を算出するために、取得した前記参照相関曲線の自己相関を計算し、
(d)前記ルックアップテーブルを取得するために、前記参照自己相関曲線をメモリに保存するとともに、前記参照自己相関曲線と関連する既知の性状を、前記参照性状として前記参照自己相関曲線と共にメモリに保存し、
(e)複数の前記参照自己相関曲線が、これと関連する既知の性状と共に前記ルックアップテーブルに保存される様に、異なる既知の性状を有する複数の前記参照サンプルの複数の前記参照面に対して、前記ステップ(a)から前記ステップ(d)までを繰り返し行う
請求項5又は6記載の性状測定方法。
【請求項8】
既知の前記参照性状の関数として前記参照自己相関曲線を算出し、
前記ルックアップテーブルを取得するために前記参照自己相関曲線を、これらと関連する既知の前記参照性状と共にメモリに保存し、
複数の前記参照自己相関曲線が、これらに関連する前記既知の参照性状と共に前記ルックアップテーブルに保存される様に、前記参照自己相関曲線の算出と前記参照自己相関曲線及びこれらと関連する既知の前記参照性状とを、複数の既知の前記参照性状について、繰り返し行う
請求項5又は6記載の性状測定方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された性状測定方法及び、前記サンプルの高さ等の既知の第2の校正性状によって決定される性状及び校正相関曲線を算出し、
校正された相互相関曲線を算出するために、前記取得された相関曲線と算出された前記校正相関曲線との相関を計算し、
前記サンプルの第2の性状を決定するために、前記校正された相互相関曲線と前記既知の第2の校正性状を用いる
請求項1〜8のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項10】
前記サンプルは、請求項2〜8のいずれかに記載された性状測定方法によって決定された膜厚を有する薄膜を備えており、
前記薄膜の既知の膜厚及び、前記表面の高さ等の既知の第2の校正性状に基づいて校正相関曲線を算出し、
校正された相互相関曲線を取得するために、前記取得された相関曲線と前記校正相関曲線との相関を計算し、
前記サンプルの第2の性状を決定するために、前記校正された相互相関曲線と前記既知の第2の校正性状を用いる
請求項2〜8のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項11】
前記サンプルは、請求項2〜8のいずれかに記載された性状測定方法によって決定された膜厚を有する薄膜を備えており、
複数の校正相関曲線を複数の既知の膜厚の関数としてメモリに記憶し、これと共に、前記表面の高さ等の既知の第2の校正性状を前記メモリに保存し、
前記決定された薄膜の膜厚に基づいて前記メモリから前記校正相関曲線を選択し、
校正された相互相関曲線を算出するために、前記取得された相関曲線と前記校正相関曲線との相関を計算し、
前記サンプルの第2の性状を決定するために、前記校正された相互相関曲線及び前記既知の第2の校正性状を用いる
請求項2〜8のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項12】
前記校正された相互相関曲線からの前記サンプルの高さ等の前記第2の性状を決定するために、前記校正された相互相関曲線のシフト量を用いる
請求項9〜11のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項13】
前記校正された相互相関曲線にフーリエ変換を行い、
フーリエ変換された信号の位相差信号の傾きに対してフィッティングを行う
ことによって、前記取得された相関曲線中、前記校正された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もる
請求項9〜12のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項14】
所定の信号を生成するために前記校正された相互相関曲線に対してフーリエ変換を行い、
フーリエ変換された信号に対してフィルタリングを行い、
フィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を行い、
逆フーリエ変換された信号の絶対値の最大値又はまとまりの中心の位置を算出し、
付加的に、前記逆フーリエ変換された信号の位相のゼロ交差点のうち、前記逆フーリエ変換された信号の最大値又はまとまりの中心の位置に最も近いものの位置を算出する
ことによって、前記取得された相関曲線中、前記校正された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もる
請求項9〜12のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項15】
前記相関曲線は、前記サンプルの高さの関数として示され、
前記自己相関曲線の形状は、前記サンプルの高さに依存しない
請求項1〜14のいずれか1項記載の性状測定方法。
【請求項16】
単層又は複数層の薄膜を備えたサンプルの性状を測定する性状測定システムであって、
前記サンプルの表面に広帯域を有するビームを照射する広帯域発光装置と、
前記広帯域を有するビームを、参照反射手段において反射する参照ビームと、前記サンプルの表面において反射される測定ビームに分割するビームスプリッタと、
前記参照反射手段から反射された前記参照ビームと、前記サンプルの表面において反射された前記測定ビームとから生成された干渉信号を取得する取得手段と、
前記サンプルの表面をスキャンするスキャナと、
前記取得手段において取得された干渉信号を表す信号を前記取得手段から、距離信号を表す信号を前記スキャナから取得し、前記干渉信号及び前記距離信号を組み合わせて、干渉光強度を前記サンプル表面からのスキャン距離の関数として表す、取得された相関曲線を生成するプロセッサと
を備え、当該システムは、
自己相関曲線を算出するために、前記取得された相関曲線の、前記取得された相関曲線自身との相関を計算する自己相関装置を備え、
前記プロセッサは、前記自己相関曲線から前記サンプルの性状を決定する際に使用される
性状測定システム。
【請求項17】
前記相関曲線は、前記サンプルの高さの関数として示され、
前記自己相関曲線の形状は、前記サンプルの高さに依存しない
請求項16記載の性状測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって得られる相関曲線からサンプルの性状を測定する方法であって、
干渉光の強度を、サンプル表面からのスキャン距離の関数として含む相関曲線を取得するものに関する。
【背景技術】
【0002】
干渉光強度を、サンプル表面からのスキャン距離の関数として表す相関曲線は、ミラウ型、マイケルソン型及び/又はリーニッヒ型の干渉測定装置によって取得される。
【0003】
この様な装置は、サンプルの性状(例えば、高さ、膜厚、反射係数等)を測定し
広帯域を有するビームを照射する広帯域発光装置と、
この広帯域を有するビームを、参照反射手段において反射する参照ビームと、前記サンプルの表面において反射される測定ビームに分割するビームスプリッタと、
上記参照反射手段から反射された上記参照ビームと、上記サンプルの表面において反射された上記測定ビームとから生成された干渉信号を取得する取得手段と、
上記サンプルの表面と当該装置との距離を変化させるスキャン手段と、
上記取得手段において取得された干渉光強度を表す信号を上記取得手段から、距離信号を上記スキャン手段から取得し、干渉光強度を表す信号及び距離信号を組み合わせて、干渉光強度をサンプル表面からのスキャン距離の関数として表す、取得された相関曲線を生成するプロセス手段とを備えている。
【0004】
米国特許出願公開2007/0046953及び米国特許出願公開2006/0262321においては、複雑な表面構造を有する測定対象の表面を測定するスキャン干渉法が開示されている。スキャン干渉法信号と、この複雑な表面構造に対応する形状を有するモデル信号との相互相関曲線を用いれば、サンプル表面の高さに対応する座標にピークを生成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/0046953
【特許文献2】米国特許出願公開2006/0262321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
広帯域干渉法を用いて対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって取得できる相関曲線からサンプルの性状を決定するためには、改良された方法が必要であると考えられる。
【0007】
本発明は、相関曲線からサンプルの性状を測定する改良された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る性状測定方法は、広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって得られる相関曲線からサンプルの性状を測定する方法であって、
サンプル表面からのスキャン距離の関数として表された干渉光の光量を含む相関曲線を取得し、
取得された相関曲線の自己相関を算出して、この取得された相関曲線自身との自己相関曲線を、相互相関関数として算出し、
算出された相互相関曲線としての自己相関関数から上記サンプルの性状を決定する。
【0009】
相互相関曲線として自己相関曲線を用いてサンプルの性状を決定した場合、外乱に強く、且つ比較的高速に取得された相関曲線からサンプルの性状を決定することが可能である。この相関曲線は、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンする装置において算出しても良いし、この装置からこの装置とは別途設けられたコンピュータシステムに送信し、このコンピュータシステムにおいてサンプルの性状を決定しても良い。また、後者の方法は、取得装置において取得された一又は複数の画素信号に対して行うことも可能である。
【0010】
ある実施形態において、性状測定方法は、自己相関曲線から薄膜の膜厚を測定する。上記取得された相関曲線の自己相関を計算し、自己相関曲線を算出することにより、サンプルの高さに依存せずに薄膜の膜厚を自己相関曲線から測定することが可能となる。
【0011】
更なる実施形態において、上記サンプルの性状の測定において、自己相関曲線から屈折率を算出しても良い。上記取得された相関曲線の自己相関を計算し、自己相関曲線を算出することにより、サンプルの高さに依存せずに積層型のサンプル表面の膜厚及び屈折率を自己相関曲線から測定することが可能となる。
【0012】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、所定の物理モデルを用い、上記自己相関曲線に対するフィッティングを行う。所定の物理モデルを用い、上記自己相関曲線に対してフィッティングを行うことにより、サンプルの性状を算出することが可能である。
【0013】
一実施形態に係る性状測定方法においては、
ルックアップテーブル(LUT)を提供するメモリ内に複数の参照自己相関曲線を記憶し、
算出した自己相関曲線と上記ルックアップテーブルに記憶された一連の参照自己相関曲線とを適宜比較し、保持された参照自己相関曲線の中から、算出された自己相関曲線に最も良く適合するものを見つける。
【0014】
ルックアップテーブルに記憶された参照自己相関曲線と算出された自己相関曲線とを比較することにより、最適な自己相関曲線を高速に判断することが可能である。
【0015】
一実施形態に係る性状測定方法においては、
ルックアップテーブルを提供するメモリに複数の参照自己相関曲線を、これら参照自己相関曲線に対応する特性と共に記憶し、
算出した自己相関曲線と上記ルックアップテーブルに記憶された参照自己相関曲線とを適宜比較し、算出した自己相関曲線に適合する参照自己相関曲線を特定し、
上記特定された参照自己相関曲線に対応する特性から、上記サンプルの性状を決定する。
【0016】
ルックアップテーブルに記憶された参照自己相関曲線と算出された自己相関曲線とを比較することにより、上記サンプルの性状を高速に判断することが可能である。
【0017】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、上記参照自己相関曲線の一部分を上記ルックアップテーブルに記憶し、算出した自己相関曲線の一部分と上記ルックアップテーブルに記憶された参照自己相関曲線の一部分とを適宜比較し、算出した自己相関曲線に最も適合する参照自己相関曲線を見つける。即ち、自己相関曲線の一部のみを比較することにより、計算処理が単純化され、必要なメモリの容量を減少させ、更に計算処理の速度を向上させることが可能である。
【0018】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、
(a)広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じて、既知の性状を有する参照サンプルの参照面をスキャンし、
(b)参照面からのスキャン距離の関数として表された干渉光の光量を表す参照相関曲線を取得し、
(c)取得した参照相関曲線の自己相関関数を計算して、参照自己相関曲線を算出し、
(d)算出した自己相関曲線を、上記既知の表面性状と共に参照表面性状としてルックアップテーブルを供給するメモリに記憶し、
(e)異なる既知の特性を有する複数の参照用サンプルの複数の参照面について、上記a〜dのステップを行い、複数の参照自己相関曲線を、上記異なる既知の特性と共にルックアップテーブルに記憶する。
【0019】
もし参照用のサンプルが使用可能であれば、参照用のサンプルをスキャンして参照自己相関曲線を算出することにより、上記参照自己相関曲線をより簡便に取得することも可能である。
【0020】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、
参照自己相関曲線を、既知の特性を変数とする関数として算出し、
ルックアップテーブルを提供するメモリに、参照自己相関曲線を、上記既知の特性と共に記憶し、
上記参照自己相関曲線の算出と記憶を、複数の既知の特性について繰り返し行い、複数の参照自己相関曲線を、これらに対応する既知の特性と共にルックアップテーブルに記憶する。ある自己相関曲線から既知の性状を算出することは困難であり、場合によっては不可能であるが、既知の性状から参照自己相関曲線を算出することは可能である場合がある。一連の性状から一連の自己相関曲線を算出すれば、LUT内に参照自己相関関数を保持し、算出した自己相関曲線と比較することが可能である。
【0021】
一実施形態に係る性状測定方法においては、
上述した性状測定方法のうちのいずれかによって決定された校正相関曲線及び性状を、既知の、又は選択されたサンプル表面の高さ等の第2の性状を用いて算出し、
取得された相関曲線及び算出された校正相関曲線の相関関数を計算して校正された相互相関曲線を算出し、
校正された相互相関関数及び上記既知の第2の校正用の性状を用いて上記サンプルの第2の性状を決定する。
【0022】
予め決定された性状を用いれば、変数パラメータはただ1つしか残されていない。従って、LUTには2つの変数を用意する代わりに1つの変数を用意すれば良く、LUTのサイズを削減することが可能である。
【0023】
更なる実施形態において、上記サンプルは上述の方法によって決定された膜厚の薄膜を備えていても良く、当該実施形態に係る性状測定方法においては、
校正相関曲線を既知の薄膜の膜厚及び既知の第2の校正用の性状、例えば表面の高さ等に基づいて算出し、
取得された相関曲線及び校正相関曲線についての相関を計算して校正された相互相関関数を取得し、
校正された相互相関曲線を用いて上記第2の性状、例えばサンプル表面の高さ等を決定する。このような方法によれば、膜厚及び高さの両方を算出することが可能である。
【0024】
本発明の一実施形態においては、サンプルは上述の方法によって決定された膜厚の薄膜を有していても良く、性状測定方法においては、
複数の薄膜の既知の膜厚を変数として有する関数で表される複数の校正相関関数及びこれら相関関数に対応する既知の第2の性状、例えばサンプル表面の高さ等をメモリに保持し、
メモリ内の上記予め決定された薄膜の膜圧に基づいて校正相関曲線を選択し、
取得された相関曲線及び校正相関曲線の相関を算出して校正された相互相関曲線を取得し、
当該校正された相互相関曲線を用いてサンプルの第2の性状を決定しても良い。
【0025】
薄膜の膜圧として既知の値を用いることにより、既知の膜圧に基づいて校正相関曲線を選択することが可能となる。これにより、膜厚及び高さの両方を決定することが可能となる。
【0026】
本発明の一実施形態においては、
校正された相互相関曲線のシフト量を用い、この校正された相互相関曲線から、サンプル表面の高さ等の第2の性状を決定することが可能である。
これによって、薄膜の膜厚及び高さを同時に決定することが可能となる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る性状測定方法においては、
校正された相互相関曲線をフーリエ領域において解析し、校正された相互相関曲線から、サンプル表面の高さ等の第2の性状を決定する。
【0028】
この方法によれば、薄膜の膜圧及び高さが同時に決定される。上記高さは、校正された相互相関曲線のシフト量から決定されても良い。この校正された相互相関曲線の形状は相関曲線に類似しているため、当該方法によって性状測定を行う者は、相関曲線の解析に用いられるアルゴリズムによって上記校正された相互相関曲線の解析を行っても良い。校正された相互相関曲線の振幅が最大値を有する場合、ある値の見積もりは、当該校正された相互相関曲線に対してフーリエ変換を行い、フーリエ変換された信号にフィルタリングを行い、フィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を行い、当該逆フーリエ変換された信号のまとまりの中心を計算することによって行われる。当該まとまりの中心は、上記校正された相互相関曲線のシフト量、即ち、サンプル表面の高さを好適に示す。
【0029】
ある実施形態に係る性状測定システムは、単層または複数層の薄膜を備えたサンプルの所定の性状を測定するシステムであって、
このサンプルの表面に広帯域を有するビームを照射する広帯域発光装置と、
上記広帯域を有するビームを、参照反射手段において反射される参照ビームと、上記サンプルの表面において反射する測定ビームに分割されるビームスプリッタと、
上記参照反射手段から反射された参照ビームと、上記サンプルの表面において反射された測定ビームとから生成された干渉信号を取得する取得手段と、
上記サンプルの表面をスキャンするスキャナと、
上記取得手段において取得された干渉信号を表す信号と上記スキャナにおいて取得された距離信号を表す信号とを取得し、上記干渉信号及び上記距離信号を組み合わせて、干渉光強度を上記サンプル表面からのスキャン距離の関数として表す、取得された相関曲線を生成する第1のプロセッサとを備え、当該システムは、
上記取得された相関曲線と第2の相関曲線との相関を計算して相互相関曲線を算出する相互相関装置と、
上記相互相関曲線から上記サンプルの性状を決定する様に構成され、備えられた第2のプロセッサとを更に備える。
【0030】
上記システムは、本願の明細書に記載されたいずれかの性状測定方法を行う際に用いられても良く、これらの性状測定方法に関連する特徴や利点を含んでいても良い。
【0031】
また、上記相互相関装置は 、上記取得された相関曲線の自己相関関数を算出する自己相関装置であっても良い。
【0032】
更なる実施形態に係る性状測定方法は、広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって得られる相関曲線からサンプルの性状を測定する方法であって、
サンプル表面からのスキャン距離の関数として表された干渉光の光量を含む相関曲線を取得し、
取得された相関曲線と第2の相関曲線との相関を計算して、相互相関曲線を算出し、
算出された相互相関曲線から上記サンプルの表面性状を決定する。
【0033】
算出された相互相関曲線を用いてサンプルの性状を決定することにより、取得された相関曲線と、既知の性状を有する第2の相関曲線を比較することが可能となるので、外乱に強く、且つ比較的高速に、取得された相関曲線からサンプルの性状を決定することが可能である。従って、取得された相関曲線と第2の相関曲線とのシフト量を好適に比較することが可能である。
【0034】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、上記算出された相互相関曲線に対して物理モデルのフィッティングを行う。算出された相互相関曲線に物理モデルのフィッティングを行うことにより、サンプルの性状が決定される。
【0035】
本発明の一実施形態に係る性状測定方法においては、
複数の参照相互相関曲線を、これら複数の参照相関曲線に関連する性状と共にメモリに保持してLUTを供給し、
算出された相互相関曲線と上記LUTに記憶された一連の参照相互相関曲線とを適宜比較し、保持された参照相互相関関数の中から上記算出された相互相関曲線と最も適合するものを見つけ、
上記算出された相互相関曲線に最も良く適合する参照相互相関曲線に関連する表面性状から、上記性状を決定する。
【0036】
保持された参照相互相関曲線と算出された相互相関曲線との比較を行うことにより、関連する性状を高速で見つけることが可能である。
【0037】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、参照相互相関関数の一部を上記LUTに保持し、算出した相互相関曲線の一部分と上記ルックアップテーブルに記憶された参照相互相関曲線の一部分とを適宜比較し、算出された相互相関曲線に最も適合する参照相互相関曲線を見つける。即ち、算出された相互相関曲線と参照相互相関曲線の一部のみを比較することにより、計算処理が単純化され、必要なメモリの容量を減少させ、計算処理の速度を向上させることが可能である。
【0038】
更なる実施形態に係る性状測定方法においては、
参照相互相関曲線を既知の性状を変数として有する関数として算出し、
参照相互相関曲線を、これと関連する既知の性状と共にメモリに保持してLUTを供給し、
上記参照相互相関曲線の算出と記憶を、複数の既知の特性について繰り返し行い、複数の参照相互相関曲線を、これらに対応する既知の特性と共にLUTに保持する。
【0039】
ある自己相関曲線から既知の性状を算出することは困難であり、場合によっては不可能であるが、既知の性状から参照相互相関曲線を算出することは可能である場合がある。一連の表面性状から一連の相互相関曲線を算出すれば、LUT内に参照相互相関関数を保持し、算出された相互相関曲線と比較することが可能である。
【0040】
上記実施形態に係る性状測定方法のうちのいずれかにおいては、
上記いずれかの実施形態に係る方法によって決定される性状及び既知の第2の校正性状、例えばサンプル表面の高さ等から校正相関曲線を算出し、
取得された相関曲線と算出された校正相関曲線との相関を計算して校正された相互相関曲線を算出し、
校正された相互相関曲線を用いて上記サンプルの第2の性状を決定する。
【0041】
予め決定された性状を計算に用いることにより、可変パラメータが一つのみ残され、第2の性状をより容易に決定することが可能となる。
【0042】
上記第2の性状は、上記校正された相互相関曲線のシフト量から決定されても良い。相互相関曲線の形状は相関曲線と類似するため、当該方法によって性状測定を行う者は、相関曲線の解析に用いるアルゴリズムによって上記校正された相互相関曲線の解析を行っても良い。校正された相互相関曲線の振幅が最大値を有する場合、ある値の見積もりは、当該校正された相互相関曲線に対してフーリエ変換を行い、フーリエ変換された信号にフィルタリングを行い、フィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を行い、当該逆フーリエ変換された信号のまとまり(mass)の中心を計算することによって行われる。当該まとまりの中心は、上記校正された相互相関曲線のシフト量、即ち、サンプル表面の高さを好適に示す。
【0043】
上記性状測定方法においては、上記校正された相互相関曲線の位相を表す位相信号を算出し、上記位相信号のゼロ交差点に相当する上記高さのうち、予想された上記高さに最も近いものを決定し、更に隣接する位相信号におけるゼロ交差点を見つけることによって当該位相信号が2π及び−2πと等しくなる様な上記高さをそれぞれ決定することも可能である。ここで、干渉光パターン信号の値は、当該位相信号のゼロ交差点から決定することも可能である。
【0044】
上記実施形態におけるフーリエ変換の代替手段として、他の変換手法を用いることも可能である。当該代替手段を用いた他の実施形態としては、複素ウェーブレットを用いることによってコヒーレンス信号から位相信号を導き出し、予期された最大値近傍のウェーブレットを用いて算出された相互相関曲線への演算を行い、算出された信号から位相の計算を行う事が可能である。
【0045】
更に、本発明の他の側面においては、当該方法において、離散的な導関数に依存しない様に当該信号にフィルタリングを行うことも可能である。
【0046】
本発明には、下記項目に示す更なる実施形態が含まれている。
【0047】
(1)広帯域干渉法を行う間に、対物レンズの焦点面を通じてサンプル表面をスキャンすることによって得られる相関曲線からサンプルの性状を測定する方法であって、
サンプル表面からのスキャン距離の関数として表された干渉光の光量を含む相関曲線を取得し、
取得された相関曲線と、第2の相関曲線(又は当該取得された相関曲線自身)との相関関数を算出して、相互相関曲線(例えば、自己相関曲線)を算出し、
当該相互相関曲線の性状を決定する方法。
【0048】
(2)上記項目(1)に示す方法において、上記算出された相互相関曲線に対して物理モデルのフィッティングを行う方法。
【0049】
(3)上記項目(1)又は(2)に係る方法において、
複数の参照相互相関曲線を、これらと関連する性状と共にメモリに保存してLUTを構成し、
算出された相互相関曲線をLUT中の参照相互相関曲線と繰り返し比較して保存された参照相互相関曲線のうち、算出された相互相関曲線と最も良く適合するものを見つけ、
参照相互相関曲線のうちで上記算出された相互相関曲線に最も良く適合するものに関連付けられた性状から上記性状を決定する方法。
【0050】
(4)上記項目(3)に示す方法において、参照相互相関曲線の一部を上記LUT中に保存し、参照相互相関曲線のうち、上記算出された相互相関曲線に最も良く適合するものを見つけるために、参照相互相関曲線の、上記LUT中に保存された部分と、算出された相互相関曲線の同様の部分とを繰り返し比較する方法。
【0051】
(5)上記項目(3)又は(4)記載の方法であって、
参照相互相関曲線を既知の性状の関数として算出し、
上記LUTを構成するために、参照相互相関曲線を、その既知の性状と共にメモリに保存し、
複数の参照相互相関曲線を、これらの既知の性状と共に上記LUT中に保持するために、上記参照相互相関曲線の算出及び参照相互相関曲線及び既知の性状の保存を繰り返し行う方法。
【0052】
(6)上記項目に係る実施形態のうちのいずれかに係る方法であって、
既知の第1の性状に基づいて第2の相関曲線を算出し、
上記相互相関曲線を算出するために、取得された相関曲線及び上記第2の相関曲線の相関を計算し、
サンプルの第2の性状を決定するために当該算出された相互相関曲線を使用する方法。
【0053】
(7)上記いずれかの項目に係る方法であって、
上記算出された相互相関曲線中、当該算出された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もることによってサンプルの性状を決定するために、算出された相互相関曲線のシフト量を用いる方法。
【0054】
(8)上記いずれかの項目に係る方法であって、
上記算出された相互相関曲線中、当該算出された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もり、
信号を生成するために当該算出された相互相関曲線に対してフーリエ変換を行い、
当該フーリエ変換された信号に対してフィルタリングを行い、
当該フィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を行い、
上記算出された相互相関曲線中、当該算出された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もるために、当該逆フーリエ変換された信号のまとまりの中心を計算する。
【0055】
(9)上記いずれかの項目に係る方法であって、
当該算出された相互相関曲線の位相を示す位相信号を求める方法。
【0056】
(10)上記項目(9)に係る方法であって、上記算出された相互相関曲線から位相を求める際に、
信号を取得するために算出された相互相関曲線に対してフーリエ変換を行い、
位相を算出する方法。
【0057】
(11)上記項目(9)又は項目(10)に係る方法であって、
上記フーリエ変換された信号にフィルタリングを行う方法であり、このフィルタリングにおいては、付加的に、予め設定された周波数領域の間で周波数に重み付けを行い、
このフィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を行う方法。
【0058】
(12)上記項目(9)に係る方法であって、算出された相互相関曲線から位相を求める際に、
複素ウェーブレットを選択し、
予期された最大値近傍のウェーブレットに算出された相互相関曲線を適用し、
当該適用された信号から位相の計算を行う方法。
【0059】
(13)上記項目(11)に係る方法であって、上記算出された相互相関曲線中、算出された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もる前に、逆フーリエ変換された信号の振幅の、1以上2以下の数の乗数が計算される方法。
【0060】
(14)上記いずれかの項目に係る方法であって、
フーリエ変換によって、上記算出された相互相関曲線を空間周波数領域に変換し、
算出された相互相関曲線中の波数の関数として干渉光の位相を概算するために、上記変換されたデータに最小二乗法によるフィッティングを行い、
他項数の計数からサンプルの性状を算出する方法。
【0061】
(15)上記項目(9)から項目(14)のうちのいずれかに係る方法であって、
算出された相互相関曲線の位相を表す位相信号を求め、
位相信号のゼロ交差点のうち、算出された相互相関曲線の振幅が最大となると予想された点に最も近いものを決定し、
算出された相互相関曲線中、算出された相互相関曲線の振幅が最大になる点を、上記位相信号のゼロ交差点から見積もる方法。
【0062】
(16)上記項目(9)から項目(14)のいずれかに係る方法であって、
算出された相互相関曲線の位相を示す位相信号を求め、
当該位相信号の傾きを決定し、
サンプルの性状を決定するために当該位相信号の傾きを使用する方法。
【0063】
(17)サンプルの性状を決定するためのシステムであって、
このサンプルの表面に広帯域を有するビームを照射する広帯域発光装置と、
上記広帯域を有するビームを、参照反射手段において反射する参照ビームと、上記サンプルの表面において反射する測定ビームに分割するビームスプリッタと、
上記参照反射手段から反射された参照ビームと、上記サンプルの表面において反射した測定ビームとの干渉光を受光する取得手段と、
上記サンプル表面と上記装置との間の距離を変化させるスキャナと、
上記取得手段において取得された干渉信号を表す信号と上記スキャナにおいて取得された距離信号とを取得し、干渉光強度を上記サンプル表面からのスキャン距離の関数として表した、取得された相関曲線を生成するプロセッサとを備え、当該システムは、
上記算出された相互相関曲線から上記サンプルの性状を決定する様に構成され、備えられた第2のプロセッサとを更に備え、
上記プロセッサは、上記算出された相互相関曲線から上記サンプルの性状を決定する様に構成され、備えられている方法。
【0064】
(18)上記項目(17)に係るシステムであって、上記プロセッサは、算出された相互相関曲線中、算出された相互相関曲線の振幅が最大となる点を見積もるために使用され、算出された相互相関曲線にフーリエ変換を行い、フーリエ変換された信号に、付加的にフィルタリングを行い、信号に対して逆フーリエ変換を行い、当該逆フーリエ変換された信号のまとまりの中心の位置を算出するために使用される。
【0065】
(19)上記項目(16)に係るシステムであって、上記プロセッサは、算出された相互相関曲線の位相を示す位相信号を求め、位相信号のゼロ交差点のうち、予期された高さに最も近いものに相当する高さの値を決定し、位相が2π及び−2πの整数倍となる高さの値を、当該整数と同数の隣接する位相線のゼロ交差点を決定することによって決定する。
【0066】
(20)上記項目(16)に記載されたシステムであって、算出された相互相関曲線から位相信号を求めるために、上記プロセッサを用いて、
算出された相互相関曲線にフーリエ変換を行い、
逆フーリエ変換された信号から位相信号を算出する方法。
【0067】
(21)上記項目(20)に記載された方法であって、
予め設定された周波数領域の外側の周波数を全て削除し、この領域の間である要素を用いて周波数に重み付けを行うフィルタリング処理を、フーリエ変換された信号に対して付加的に行い、
位相信号を計算する前に当該信号に対して逆フーリエ変換を行う方法。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】ある実施形態に係る干渉測定装置を示す。
図2a】膜厚を決定するための2つの一致する相関曲線の相互相関曲線である自己相関曲線を開示する。
図2b図2aの自己相関曲線を算出し、分析し、膜厚を決定するための、ある実施形態に係るフローチャートを開示する。
図3a】ある実施形態に係る、相関曲線の計算を行うためのフローチャートを開示する。
図3b】同一の膜厚を有する2つのサンプルについての2つの相関曲線であって、これらの高さのシフト量を決定するために算出されたものを、相互相関曲線と共に示す。
図4a図3bの相互相関曲線の解析の結果を示している。
図4b図3bの相互相関曲線の解析の結果を示している。
図4c図3bの相互相関曲線を解析するためのフローチャートを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0069】
例示の為にのみ、対応する参照番号が参照する部分を示す図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0070】
図1は、第1の実施形態に係る性状測定装置4を示している。性状測定装置4は、サンプルの性状を測定する。性状測定装置4としては、例えばミラウ型、マイケルソン型、リーニッヒ型の干渉計等を採用することが可能である。
【0071】
性状測定装置4は、広帯域の光を供給する広帯域発光装置23を備えていても良い。広帯域発光装置23は、広帯域光源5、第1のレンズ6、第1の鏡7及び第2のレンズ8を備えていても良く、広帯域のビーム9を供給する。この広帯域のビーム9は、平行光であっても良い。また、この広帯域のビーム9は、第2のビームスプリッタ10によって反射され、対物レンズ17を透過した後にビームスプリッタ12に到達しても良い。ビームスプリッタ12は、この広帯域のビーム9を参照のビームと測定のビームに分割しても良い。
【0072】
参照用のビームは参照鏡14によって反射されても良い。測定用のビームは、薄膜2を包含するサンプル1の表面において反射されても良い。参照鏡14において反射された参照用のビームは、ビームスプリッタ2において再び反射されても良い。サンプル1及び薄膜2から反射された測定用のビームは、ビームスプリッタ12を透過して良い。測定ビーム及び参照ビームは干渉し、対物レンズ17、第2のビームスプリッタ10及びレンズ15を透過し、受光装置(取得装置)16に到達しても良い。更に、干渉光ビームの光量は受光装置16において測定されても良い。
【0073】
参照鏡14、対物レンズ17及びビームスプリッタ12は、ミラウ型の干渉計を構成していても良く、スキャナ11によって、対物レンズ17の光軸方向に沿ったサンプル1に対するスキャンが行われても良い。
【0074】
受光装置16を構成する光学センサの各受光素子の出力信号からは、相関曲線が読み出されても良い。この相関曲線は図1中の20内に示す通り、各受光素子において受光された干渉光の光量Iを、サンプル1からのZ方向の距離Zの関数として示したものである。本実施形態に係る性状測定装置4は、第1のプロセッサ18を備える。第1のプロセッサ18は、受光装置16において取得された干渉光の光量を示す各受光素子の信号を入力し、更にスキャナ11からはサンプル1との距離を示す信号を入力する。また、第1のプロセッサ18は、入力した受光素子の信号及び距離を示す信号を統合し、受光装置16を構成する受光素子毎に、干渉光の光量Iをサンプル1からのZ方向の距離zの関数として表す。
【0075】
入射角θの単色光の相関関数は、以下のように表される。
【0076】
【数1】
【0077】
ここで、Iは相関曲線の信号の振幅であり、zはスキャンの位置であり、tは薄膜の膜圧であり、I1は参照ビームの光量であり、Rはサンプル1表面の反射係数であり、I2は測定ビームの光量であり、Φ(k,θ,t)は単層の薄膜での反射による位相のシフト量である。薄膜での反射についての物理的説明は、“O.S. Heavens, Optical properties of films, Butterworth Scientific Publications, 1955”に更に詳しく記載されている。
【0078】
干渉光の各波長成分が上記相関曲線に与える影響は、上記数1で表されたI(z,k,θ,t)を全ての角度成分について積分することによって求まる。この積分は、入射角θのコサインの部分についての積分として表すことが可能である。
【0079】
【数2】
【0080】
白色光の薄膜での反射についての物理的説明は、“P. de Groot, X. C. de Lega, Signal modeling for low-coherence height-scanning interference microscopy, Applied optics, Vol 43, No. 25, 1 September 2004 “に更に詳しく記載されている。
【0081】
取得された相関曲線に対し、直接物理モデルによるフィッティングを行うのは容易でないと考えられる。第1に、当該フィッティングは非線形の曲線を取り扱うものであり、取り扱う相関曲線も一義的に表現することが難しく、繰り返し最適化を行う必要があると考えられるからである。第2に、相関曲線は周期性を有するため、フィッティングの計算過程において、測定された相関曲線と物理モデルから計算された相関曲線との誤差の極小値が複数存在すると考えられるからである。仮にサンプル1表面のz値の初期値が最終的な解に対して充分近くない場合(即ち、1/4λ以上離れている場合。但し、λは波長を表す。)、上記測定された相関曲線と物理モデルから計算された相関曲線との誤差が初期値に最も近い極小値に近づくようにフィッティング計算が進行してしまい、最終的には間違った値に収束してしまう。
【0082】
受光装置16が複数の受光素子から構成され、それぞれの受光素子において最適化処理が行われる場合、各受光素子において取得された相関曲線について、独立に上記非線形フィッティングを行うだけでは、好適にサンプル1表面の性状測定を行う事は困難であると考えられる。好適にサンプル1表面の性状測定を行うためには、メモリ中のテーブルに解空間(LUT: Look Up Table)を構築し、測定によって取得したデータをこの解空間中のデータと比較することが可能である。ここで、相関曲線同士のフィッティングにおいては、2又はそれ以上のパラメータ(例えば、サンプル1の高さや薄膜の膜圧等)が存在するため、全てのパラメータの組み合わせをLUT内に用意しようとした場合、要求されるLUTのサイズは膨大なものとなってしまう恐れがある。
【0083】
しかしながら、上記相関曲線についての自己相関曲線の形状はサンプル1の高さに依存しない。従って、上記LUT内のフィッティングパラメータとしてサンプル1の高さを含めなくても、薄膜2の膜厚等、サンプル1の表面性状を決定することが可能である。尚、相互相関装置19は、取得された相関曲線と所定の第2の相関曲線との相関を計算し、相互相関曲線として自己相関曲線を算出しても良い。
【0084】
信号処理においては、相互相関関数の計算を行うことにより、ある時間差で2つの波が発生した場合、当該2つの波の波形がどの程度類似しているかを、当該時間差の関数として求めることが可能である。相互相関関数は、スライディング点乗積(sliding dot product)またはスライディング内積(sliding inner-product)としても知られている。関数f及び関数gについての相互相関関数は、関数f及び関数gが連続関数だった場合には下記数3の様に、関数f及び関数gが離散関数だった場合には下記数4の様に定義される。
【0085】
【数3】
【0086】
【数4】
【0087】
ここで、関数f*は、関数fの共役関数である。従って、もし関数fが実数関数の場合には、f=f*の関係が成立する。“+”の記号(実際には、“○”と“+”を重ねた記号)は、相互相関を表している。即ち、f+gは、関数f及びgの相互相関関数を表している。τは、関数f及びgで表される波形を有する波が与えられる時間差である。また、関数f及び関数gは連続関数であり、関数F及び関数Gは、それぞれ関数f及び関数gをフーリエ変換したものである。周波数領域における相互相関は、下記の様に表すことが出来る。
[フーリエ変換]
【0088】
【数5】
【0089】
【数6】
【0090】
【数7】
【0091】
【数8】
【0092】
ここで、ωは各周波数であり、kは1〜N−1までの整数である。虚数iは、−1の平方根として定義される。
[逆フーリエ変換]
【0093】
【数9】
【0094】
【数10】
【0095】
【数11】
【0096】
【数12】
【0097】
離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換FFTを用いて計算することが可能である。Xcorr(f,g)=inverse FFT(conjungated (FFT (f))*fft (g))との計算式を用いることにより、関数fと関数gとの相互相関関数corrを、数値計算によって有効に算出することが可能である。この計算式を操作することにより、Xcorr(f,g)=inverseFFT(conjungated (FFT (g))*fft(f))との式が得られる。尚、高速フーリエ変換については、”Cooley, James W., and John W. Tukey, "An algorithm for the machine calculation of complex Fourier series," Math. Comput. 19, 297-301 (1965)”に、より詳細な説明がなされている。また、相互相関及び自己相関については、”Julius.S Bendat, Allan G. Piersol , Random data , analysis and measurement procedures, 2nd edition, John Wiley & sons Inc. , ISBN 0-471-04000-2, 1986”に、より詳細に説明されている。
【0098】
サンプル1の性状は、相互相関装置19及び第2のプロセッサ21によって算出された相互相関曲線から求めても良い。例えば、薄膜2の膜厚を求めるためには、第2の相関曲線35として、取得された相関曲線33のコピーを用い、相互相関曲線31を取得された相関曲線33の自己相関曲線としても良い(図2a参照。)図2aは、2つの一致する相関曲線33、相関曲線35及び、これらの相互相関曲線である自己相関曲線31を示している。
【0099】
従って、上記自己相関曲線31に対するフィッティングは、薄膜2の膜厚を唯一のフィッティングパラメータとする一次元の問題に帰する。上記フィッティングモデルには、フィッティングパラメータとして薄膜2の膜厚を有する、モデル化された自己相関曲線を用いても良い。相互相関曲線31にはサンプル1表面の高さが影響しない為、当該モデルにおいてはサンプル1表面の高さを任意の固定値に設定することが可能である。但し、サンプル1の高さはスキャナ11によるスキャンの範囲内に収まる必要があるため、当該モデルに使用されるサンプル1の高さは、実際には制限されるものと考えられる。尚、当該モデルにより複数の参照相互相関曲線を生成し、対応する表面性状と共にメモリ22に保持することにより、LUTを供給することが可能である。また、LUT中の複数の参照相互相関曲線と相互相関装置19において算出された相互相関曲線とを、図1中の第2のプロセッサ21によって比較し、LUT中の複数の参照相互相関曲線の中から、相互相関装置19において算出された相互相関曲線と最も適合するものを見つけても良い。更に、参照相互相関関数の一部のみを保持することにより、必要とされるメモリ22の記憶容量を削減し、また、第2のプロセッサ21の処理速度を増すことも可能である。
【0100】
本実施形態に係る性状測定方法においては、広帯域干渉法に用いられる広帯域干渉光を透過する複数層の薄膜を有するサンプルの性状の測定を行い、相互相関曲線から複数層の薄膜の性状を決定することも可能である。例えば各層に位置する薄膜の膜圧や、反射係数等を決定することが可能である。
【0101】
図2bは、例えば薄膜の膜圧や反射係数等、サンプルの性状を算出するためのフローチャートを示している。ステップ24においては、サンプル1表面からのスキャン距離を変数として有する関数として表された干渉光強度を有する相関曲線が、例えば第1のプロセッサ18(図1)において取得される。ステップ25においては、相互相関曲線算出装置19(図1)によって取得された相関曲線の自己相関関数が計算され、相互相関曲線として自己相関曲線が取得される。ステップ26においては、第2のプロセッサ21(図1)において、相互相関曲線としての自己相関曲線からサンプル1の性状が決定される。
【0102】
ステップ26においては、第2のプロセッサによって、上記算出された自己相関曲線に対する物理モデルのフィッティングを行い、これによってサンプル1の性状を決定することが可能である。例えば、ステップ27において複数の参照自己相関関数を、これらと対応する性状と共にメモリ22(図1)に保持し、LUTを構成しても良い。また、ステップ26においては、ステップ25において算出された自己相関曲線と、LUTに保持された参照自己相関曲線とを、第2のプロセッサ21(図1)によって比較し、上記自己相関曲線に最もよく適合する参照自己相関曲線を決定しても良い。更に、ステップ28においては、上記自己相関曲線に最もよく適合した参照自己相関曲線に対応する性状に対応する性状を表示することも可能である。
【0103】
メモリ22(図1)には、参照自己相関曲線の一部のみを保持することも可能である。また、ステップ26においては、ステップ25において算出された自己相関曲線中、上記参照自己相関曲線の一部と同じ部分を、LUT中に保持された当該部分と比較し、これによって上記算出された自己相関曲線と最も適合する参照自己相関曲線を決定することも可能である。
【0104】
ステップ29においては、メモリ22(図1)に参照自己相関曲線を保存するために、広帯域干渉法を行い、この間に、対物レンズの焦点面を通じて既知の性状を有する参照サンプルの参照面をスキャンし、参照面からのスキャン距離の関数として表された干渉光の光量を表す参照相関曲線を取得することも可能である。また、ステップ30においては、取得された参照相関曲線の自己相関曲線を計算して、参照自己相関曲線を算出することも可能である。ステップ30において取得された参照自己相関曲線は、ステップ27において上記既知の性状と共にメモリ22(図1)に保持され、LUTを供給する。更に、異なる既知の性状を有する複数の参照サンプルの複数の参照面に対してステップ29からステップ31を繰り返し行い、LUTに複数の参照相関曲線及び当該既知の性状を保持することも可能である。
【0105】
ステップ32においては、既知の性状を変数に持つ関数とする参照自己相関曲線を算出し、当該参照自己相関曲線を当該既知の性状と共にメモリ22(図1)に保持し、ステップ27においてLUTを構成することも可能である。
【0106】
例えば薄膜2の膜厚の様に、ある性状(以下、第1の性状と呼ぶ)が、上述の方法や他の方法により決定された場合、又は製造工程から既知であった場合等には、例えばサンプル1の高さ等、第1の性状とは異なる第2の性状を、上述の方法と同様の方法によって決定することも可能である。
【0107】
図3aには、このような測定方法に係るフローチャートを示している。第1のステップにおいては、薄膜2の膜厚等、第1の性状が取得される(ステップ34)。次に、ステップ36においては、取得された第1の性状に基づいて、当該第1の性状を用いた相関計算を行って校正用の相関曲線を算出し、又はLUTから選択し、これと共に例えばサンプル1の高さ等の第2の校正用の性状を算出し、又はLUTから選択することが可能である。ステップ38においては、上記既知の薄膜2と同じ膜厚の薄膜を有し、且つ高さが未知であるサンプル1の測定を行い、相関曲線を取得しても良い。ステップ40においては、当該校正用の相関曲線とステップ38において取得された相関曲線との相関計算を行い、相互相関曲線を取得することも可能である。この相互相関曲線及びこれに対応する未知の性状は、サンプル1の高さ等、第2の性状を決定するために使用される。また、当該相互相関曲線は、サンプル1の高さ等、第2の性状を決定するために、第2のプロセッサ21(図1)において使用することも可能である。
【0108】
第1の性状は薄膜2の反射係数であっても良く、同様の反射係数を用いて算出された校正用の相関曲線は、第2の性状を決定するために用いられても良い。
【0109】
ここで、同じ膜厚の薄膜を有する2つのサンプルについての、2つの相関曲線について考える。サンプルの高さを最上面のz位置とすると、相関曲線37に対応するサンプルの高さh1は既知であり、他の相関曲線39に対応するサンプルの高さh2は未知である。仮に相関曲線37及び相関曲線39のシフト量δzが決定可能であった場合、上記未知のサンプルの高さh1は、以下の様に表すことが出来る。
【0110】
【数13】
【0111】
既知のサンプルの高さh2についての相関曲線は、同じ膜厚を有するサンプルについてのシミュレーションによって求めることも可能であるし、メモリ22のLUT内から選択することも可能である。取得された相関曲線と既知の高さh2を有するサンプルについての相関曲線から求められた相互相関曲線は、相互相関装置19によって算出することが可能である。ステップ42(図3a)においては、対応する未知のサンプル1の高さh1は、測定及びシミュレーションによってそれぞれ取得された相関曲線のシフト量δzに基づき、第2のプロセッサによって算出しても良い。
【0112】
相互相関関数の計算を付加的に行った場合、上記シフト量δzは、相互相関関数の包絡線が中心に来るように与えられると考えられる。即ち、シフト量δzはこれによって修正される。これにより、当該アルゴリズムのロバスト性を向上させ、実用的な態様とすることが可能である。
【0113】
相互相関曲線の対称性を用いて、当該モデルの質を更にチェックすることも可能である。即ち、ステップ42において、相互相関曲線の対称性を見積もることも可能である。例えば、取得された相関曲線における薄膜の膜厚が既知の膜厚と異なる場合、上記相互相関曲線は非対象になるものと考えられる。本実施形態に係る性状測定方法を行う者は、より良い解を見つけるために、薄膜の膜厚の2番目に良い極小値についてのテストを行っても良い。
【0114】
当該相互相関曲線の形状は、相関曲線の形状と極めて類似している。従って、高精度にシフト量δzを算出してサンプルの高さh1を見積もろうとする場合、本実施形態に係る性状測定方法を行う者は、相関曲線の解析に用いる複数のアルゴリズムのうちの一つを選択して使用することも可能である。
【0115】
本実施形態に係る性状測定方法を行う者は、US2011/0090511記載の、IFFT zero crossing methodを使用することも可能である(図4a,4b及び4c参照)。当該方法を用いて高さマップを算出しようとする場合、予め相互相関曲線に前処理を施しておく事が必要となる場合もある。当該前処理においては、当該相互相関曲線の外側に存在するデータを除去し、当該相互相関曲線から傾斜、直線または放射線成分を除いて当該データについての処理が更に行われる前にエッヂ効果を抑制することも可能である。
【0116】
実際の演算処理における第1のステップでは、下記ステップに従って、大まかに高さマップを算出することも可能である。
【0117】
第1のステップ45においては、まず、フーリエ変換(FFT)45を相互相関曲線43に適用することが可能である。当該信号の周波数の大きさを求めることが出来なければ、周波数指数(frequency indices)を求めれば良い。グラフにおいては、絶対値(任意単位)と空間周波数(1/nm)との関係を示している。
【0118】
第2のステップ47においては、上記フーリエ変換のフィルタリングによって当該演算に関係しない周波数成分をゼロにする。当該フィルタリングにおいては、負の周波数(複素周波数とも呼ばれる)成分及び極めて低い周波数成分、即ち、最も低い周波数成分またはこの周波数成分及びその次に低い周波数成分の大きさ及び位相をゼロにする。当該信号は、当該周波数成分に周波数が調和する数(frequency harmonic number)をかけることによって更にフィルタリングすることが可能である。当該グラフは、振幅(任意単位)及び空間周波数の関係を示している。
【0119】
第3のステップにおいては、当該フィルタリング後の周波数スペクトルについて、逆フーリエ変換(IFFT)49の算出が行われる。相互相関曲線の場合には、当該フーリエ逆変換の絶対値を用いて上記シフト量δzを大まかに見積もることが可能である。
【0120】
nを正の値、好ましくは1〜2、更に好ましくは約1.8とした場合、得られた信号の絶対値をn乗することも可能である。当該得られた信号のまとまりの中心の位置を、大まかな高さ位置とすることも可能である。当該まとまりの中心の位置は、信号Sの合計に位置zをかけ、信号Sの合計によって割ることによって算出可能である。信号Sの合計は、像の数nによって置き換えることも可能である。信号Sのまとまりの中心は、下記の様に表される。
【0121】
【数14】
【0122】
大まかな高さマップは、被測定対象の表面の高さの見積もりとして取り扱う事が可能である。
【0123】
更に正確な測定を行うために、当該データの位相を用いても良い。当該データの位相を算出するためには、少なくとも2つの方法を実行することが考えられる。上記位相を算出する一つ目の方法には、フーリエ変換が含まれる。先ず、上記大まかな高さの見積もりにおける方法と同様に当該相関曲線に対してフーリエ変換を行う。
【0124】
フーリエ領域においては、フィルタを適用することが可能である。当該フィルタリングにおいては、当該演算に関係しない周波数成分(位相複素周波数を含む)の大きさ及び位相が全てゼロにする。当該実施形態においては、ハミング窓関数やその他の関数を用いることが可能である。
【0125】
次に、フィルタリングされた信号に対して逆フーリエ変換を適用することが可能である。当該信号の位相は、ステップ52において行われる。これにより、データの位相を2πの法とした場合の位相差信号51が算出される。このような位相差信号は図4bの下段において、51として表されている。当該グラフはラジアンを単位として表された角度とマイクロメータを単位として表された高さの関係を示している。当該逆フーリエ変換51の位相のゼロ交差点のうち、見積もられた高さに最も近いものは、包絡関数49のまとまりの中心位置の近傍において第1の線形フィッティングを行うことにより、決定される。当該ゼロ交差点は、ステップ54において相互相関曲線を見積もる場合において最終的に得られる高精度なシフト量δzの見積もりである。
【0126】
位相を計算する第2の方法においては、ウェーブレット変換を行う事が可能である。当該方法においては種々のウェーブレットを用いることが可能であるが、本実施形態においては、Morletウェーブレットを用いる。Morletウェーブレットは、下記式によって表される。
【0127】
【数15】
【0128】
当該ウェーブレットのパラメータは、下記の通りである。ssは、スキャンのステップ幅(データの取得に用いられるサンプリングの間隔)、Lwはウェーブレットの長さであり、ここでは0.5λ0、δ0はここでは1/λ0である。ここでは、平均光源有効波長(mean source effective wavelength)は、λ0であり、予め取得されたデータをフーリエ解析することによって算出可能である。このデータは、光源(source)、対物レンズの開口数(numerical objective)及びサンプルに依存する、測定系の所定の設定によって変化する。kはウェーブレット中のポイント数であり、−N〜Nで表される整数である。尚、ここでは、Nは8に設定される。また、kはウェーブレットを生成する際に用いても良い。また、当該計算処理の最終段階においては、複素共役をとることも出来る。
【0129】
このウェーブレットは、コンボリューションの様な単独の相互相関曲線について与えることが可能であり、本実施形態においては、当該計算は以下の様に行われる。ウェーブレットは、kが−8〜8までに存在するので、長さが17であることが分かる。相互相関曲線におけるポイント数(size number points)と同様の行数及び列数を有する大きさのアレイを生成することが可能である。次に、当該アレイの最初の行の最初の17個の点に、上記ウェーブレットを含ませる。次に、2番目の行の、2個目から18個目までの点に、上記ウェーブレットを含ませる。次に、3番目の行の、3個目から19個目までの点に、上記ウェーブレットを含ませる。以下、ウェーブレットが上記相互相関曲線の長さに到達するまで同様の処理を行う。次に、当該アレイの各行を相互相関曲線の振幅の大きさによって割り、新たなアレイを生成することが可能である。次に、当該新たなアレイの列ごとの合計を取得することが可能である。これにより、当該相互相関曲線のウェーブレット係数のセットが生成される。これらウェーブレット係数は、複素数である。ウェーブレット係数の角度は、サンプル上の上記空間的な位置における光の位相及び位置を表すことが可能である。これは、データの位相を2πの法とした場合の位相差信号である。この結果は、図4bに信号51として示す。
【0130】
プロセス時間を削減するため、上記大まかに見積もった位置近傍の少数の点についてのみ、当該ウェーブレットの計算を行うことも可能である。
【0131】
上記いずれかの方法によって位相が既知となれば、位相に基づいて高さマップを生成することが可能となる。(フーリエ変換され、フィルタリングされ、逆フーリエ変換された信号の)まとまりの中心を用いた上記方法に複素数を用いれば、大まかな見積もりは可能なので、上記大まかな位置を最初の開始位置とすることが可能である。位相がゼロとなる位置のうち、補間の際に求められた、上記大まかな見積もり位置に最も近い位置は、上記サンプルの特定の空間位置における高さ位置として選択することが可能である。当該位置は、ゼロ交差点としても知られている。当該位相がゼロになる位置は、図4bの51に点線で示されている。
【0132】
位相が+2πである点及び−2πである点においても、位相差信号は、Δz軸と交差する(即ち振幅が0になる)。位相が+2πである時及び−2πである時の交点は、隣接する位相線に対する線形補完の際に求められる。更に、+2π及び−2πの如何なる整数倍も、次の位相線におけるゼロ交点を計算することにより、算出することが可能である。これら位相がゼロ、2π等である場合のゼロ交差点は、予期される位置の周辺で位相信号に対して位相接続法を実行し、補間又は関数へのデータのフィッティングを行い、位置を計算することによってゼロ交差点を見つけることによっても求められる。もし信号中のノイズによって不適切なゼロ交差点が選択されてしまった場合には、+2π及び−2πにおける交差点を用いてこれらを訂正することも可能である。
【0133】
シフト量δzを求める他の方法としては、相互相関曲線の関数のフーリエ変換における位相の傾きを決定することが考えられる。シフト量δzは当該傾きに比例し、上記高さh1を好適に決定することも可能である。我々は、US5398113に記載の方法を用いて、相互相関曲線から高さ等の第2の性状を決定することも可能である。
【0134】
当該方法においては、各ピクセルにフーリエ解析を行い、相互相関曲線を空間周波数領域に変換する。相互相関曲線における波数の関数である干渉光の位相は、最小二乗多項式によるフィッティングを変換後のデータに適用することにより、概算される。例えば高さの様な第2の性状は、当該多項式の係数から算出される。
【0135】
本発明は様々な実施形態を含んでおり、開示された実施形態は単にこれら複数の実施形態のうちの一例に過ぎない。従って、本明細書において開示された特定の構造、機能に関する詳細は発明の内容を限定するものではなく、単に請求の基礎であり、且つ当業者に発明の内容を開示するためのものであり、実際にはどのような適切な構造及び機能を適用することも可能である。更に、本明細書において用いられた語句は本発明の内容を限定することを意図しておらず、発明の容易な理解の為に用いたものである。
【0136】
本明細書において、一つの構造、プロセスその他の事項(以下、単に構造等と呼ぶ。)として示された構造等は、複数であっても良い。また、本明細書において「A及びB」との記載及び「A又はB」との記載は、「A及びBのうちの少なくとも一方」との記載に置き換えることが可能である。また、請求項中の如何なる参照番号によっても、当該クレームに係る発明を限定解釈することは出来ない。お互いに異なる独立クレームに特定の単位が記載されているとしても、これらの単位の組合せを優位な点として用いることが出来ないと言う事は出来ない。発明の範囲は、クレームによってのみ限定される。
【符号の説明】
【0137】
1…サンプル、2…薄膜、4…性状測定装置、5…広帯域光源、6…第1のレンズ、7…第1の鏡、8…第2のレンズ、9…広帯域のビーム、10…ビームスプリッタ、11…スキャナ、12…ビームスプリッタ、14…参照鏡、15…レンズ、16…受光装置、17…対物レンズ、18…第1のプロセッサ、19…相互相関装置、21…第2のプロセッサ、22…メモリ、23…広帯域発光装置、31…算出された相互相関曲線、33…取得された相関曲線、35…第2の相関曲線。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c