(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該ブレードカバー冷却手段は、該ブレードカバーの内部に形成された冷却水路と、該冷却水路に接続された冷却水供給源と、からなることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態1では、放熱板(フィン)でなるブレードカバー冷却機構(ブレードカバー冷却手段)を備えた切削装置について説明し、実施の形態2では、ブレードカバーを冷却水で冷却するブレードカバー冷却機構を備えた切削装置について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、放熱板でなるブレードカバー冷却機構を備えた切削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る切削装置2の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1には、加工対象のウェーハ(被加工物)11を併せて示している。
【0018】
図1に示すように、加工対象のウェーハ11は、例えば、円盤状の半導体ウェーハであり、裏面側に貼着されたダイシングテープ13を介して環状のフレーム15に支持されている。ウェーハ11の表面は、格子状に配列されたストリート(分割予定ライン)で複数の領域に区画されており、各領域にはIC等のデバイスが設けられている。
【0019】
切削装置2は、各構成を支持する基台4を備えている。基台4の前方の角部には、カセットエレベータ6が設けられている。このカセットエレベータ6には、ウェーハ11を収容するカセット8が載置される。
【0020】
カセットエレベータ6は、昇降可能に構成されており、カセット8に収容されるウェーハ11の位置をZ軸方向(高さ方向)において調整する。なお、
図1では、カセット8の輪郭のみを示している。
【0021】
Y軸方向(割り出し送り方向)においてカセットエレベータ6と隣接する位置には、仮置き機構10が設けられている。仮置き機構10は、Y軸方向に移動可能に構成されたプッシュプル機構12と、X軸方向(加工送り方向)において相互に離間接近可能な一対のガイドレール14とを含む。
【0022】
プッシュプル機構12は、カセットエレベータ6の昇降により同じ高さに位置付けられたウェーハ11をガイドレール14に引き出し、又はガイドレール14に載置されたウェーハ11をカセット8に挿入する。ガイドレール14はL字型の断面形状を有しており、フレーム15をX軸方向において挟み込むことでウェーハ11を所定の位置に合わせる。
【0023】
X軸方向においてカセットエレベータ6と隣接する位置には、矩形状の開口4aが形成されている。この開口4a内には、X軸移動テーブル16、X軸移動テーブル16をX軸方向に移動させるX軸移動機構(不図示)、及びX軸移動機構を覆う防水カバー18が設けられている。
【0024】
X軸移動機構は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール(不図示)を備えており、X軸ガイドレールには、X軸移動テーブル16がスライド可能に設置されている。X軸移動テーブル16の下面側には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、X軸ガイドレールと平行なX軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0025】
X軸ボールネジの一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジを回転させることで、X軸移動テーブル16はX軸ガイドレールに沿ってX軸方向に移動する。
【0026】
X軸移動テーブル16上には、ウェーハ11を吸引保持するチャックテーブル(保持手段)20が設けられている。チャックテーブル20の周囲には、ウェーハ11を支持する環状のフレーム15を四方から挟持固定するクランプ22が設置されている。
【0027】
チャックテーブル20は、モータ等の回転機構(不図示)と連結されており、鉛直軸(Z軸)の周りに回転する。また、チャックテーブル20は、上述のX軸移動機構でX軸方向に移動する。
【0028】
チャックテーブル20の上面は、ウェーハ11を吸引保持する保持面20aとなっている。この保持面20aは、チャックテーブル20の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されている。
【0029】
開口4aと仮置き機構10との間の位置には、ウェーハ11を搬送する第1搬送機構24が配置されている。第1搬送機構24によって仮置き機構10からチャックテーブル20へと搬送されたウェーハ11は、保持面20aに作用する吸引源の負圧でチャックテーブル20に吸引保持される。
【0030】
基台4の後方には、支持台4bが配置されている。この支持台4bの開口4a側には、ウェーハ11を切削する切削ユニット26が支持されている。切削ユニット26は、Y軸移動機構(不図示)によってY軸方向に移動すると共に、Z軸移動機構(不図示)によってZ軸方向に移動する。切削ユニット26と隣接する位置には、ウェーハ11を撮像する撮像ユニット28が設けられている。
【0031】
切削装置2の制御部(不図示)は、撮像ユニット28で撮像された画像に基づき、切削ユニット26をウェーハ11のストリートに位置合わせする。その後、切削ユニット26を下降させると共にチャックテーブル20をX軸方向に移動(加工送り)させることで、ウェーハ11をストリートに沿って切削できる。
【0032】
開口4a及び支持台4bと隣接する位置には、円形の開口4cが形成されており、この開口4c内には洗浄機構30が配置されている。洗浄機構30は、ウェーハ11を保持した状態で回転可能なスピンナテーブル32を備えている。
【0033】
スピンナテーブル32と近接する位置には、スピンナテーブル32に保持されたウェーハ11に洗浄液を供給する洗浄ノズル(不図示)が設けられている。また、支持台4bにおいて、開口4c側の側面には、ウェーハ11をチャックテーブル20からスピンナテーブル32へと搬送する第2搬送機構34が設けられている。
【0034】
洗浄機構30で洗浄されたウェーハ11は、第1搬送機構24で仮置き機構10に搬送される。仮置き機構10に搬送されたウェーハ11は、ガイドレール14によって位置合わせされた後に、プッシュプル機構12でカセット8に収容される。支持台4bの上面には、加工条件等を表示するモニタ36が配置されている。
【0035】
図2は、本実施の形態に係る切削ユニット26の構造を模式的に示す一部断面側面図である。
図2に示すように切削ユニット26は、回転軸となる円柱状のスピンドル38を含むスピンドルユニット(
図2において不図示、例えば、
図3参照)を備えている。スピンドル38の一端側には、円形の切削ブレード40を装着可能なマウントフランジ42が固定されている。
【0036】
切削ブレード40は、円盤状のハブ基台40aの外周部分に円環状の切り刃40bが固定された、いわゆるハブブレードである。ハブ基台40aの第1面側をマウントフランジ42に係合させ、第2面側にナット44を締め込むことで、切削ブレード40はスピンドル38の一端側に固定される。
【0037】
上述した切削ブレード40の大部分は、直方体状のブレードカバー46で覆われている。ブレードカバー46は、スピンドルユニットに固定された第1カバー48と、第1カバー48に装着される第2カバー50とを含む。
【0038】
第1カバー48には、スピンドル38の一端側を挿通するスピンドル挿通部48aが形成されている。このスピンドル挿通部48aにスピンドル38の一端側を挿通すると共に、第1カバー48をスピンドルユニットに固定し、第2カバー50を第1カバー48に装着することで、切削ブレード40をブレードカバー46で覆うことができる。第2カバー50は、例えば、ネジ等の部材で第1カバー48に装着される。
【0039】
第1カバー48に第2カバー50を装着した状態のブレードカバー46の内側には、切削ブレード40を収容するブレード収容空間46aが形成されている。ブレード収容空間46aを構成する内壁面の形状は、切削ブレード40、マウントフランジ42、ナット44等の形状に対応している。
【0040】
ブレードカバー46の底部(下部)には、第1カバー48と第2カバー50との境界に相当する位置に、切削ブレード40の切り刃40bを挿通するスリット(開口)46bが形成されている。これにより、切り刃40bの先端部分は、スリット46bを通じてブレードカバー46の下方に突出される。
【0041】
スリット46bと近接する位置には、吸入路46c,46dが形成されている。この吸入路46c,46dは、開口(不図示)を通じてブレード収容空間46aと連通しており、加工点近傍の外気と共に切削液をブレード収容空間46a内に取り込む。これにより、切削液の飛散を防止できる。
【0042】
また、ブレードカバー46の上部には、外気吸入路46e,46fが形成されている。外気吸入路46e,46fの内部には、切り刃40bの状態を検出するブレード検出機構52が配置されている。
【0043】
このブレード検出機構52は、第1カバー48側の外気吸入路46eに配置された発光部52aと、第2カバー50側の外気吸入路46fに配置された受光部52bとを含む。発光部52a及び受光部52bは、切り刃40bの上部を挟み込むように配置されている。これにより、ブレード検出機構52は、受光部52bの受光量に基づいて切り刃40bの摩耗や破損を検出できる。
【0044】
第1カバー48側には、吸入路46c,46d、外気吸入路46e,46f等を通じてブレード収容空間46a内に取り込まれたエアーを、ブレード収容空間46aの外部に排出するパージエアー排出路48bが形成されている。パージエアー排出路48bの一端側は、スピンドル挿通部48aと接続されている。パージエアー排出路48bの他端側は、切削装置2の支持台4bに設けられた排気口54(
図1)等を通じて吸引源56に接続されている。
【0045】
また、ブレードカバー46の上部には、吸引源(不図示)に接続された排出口(不図示)が形成されている。ブレード収容空間46a内に取り込まれた切削液は、この排出口を通じてブレードカバー46の外部に排出される。なお、切削液排出用の吸引源は、吸引源56と共通でも良いし、吸引源56と異なるものでも良い。
【0046】
このように構成された切削ユニット26において、ウェーハ11は、ブレードカバー46の開口46bから突出される切り刃40bで切削される。ウェーハ11の切削時には、ブレードカバー46内に設けられた切削液供給ノズル(不図示)から、切り刃40bに対して切削液が供給される。
【0047】
本実施の形態では、切削ブレード40がブレードカバー46で覆われているので、切削ブレード40の回転に伴う切削液の飛散を防ぐことができる。これにより、ウェーハ11への切削屑の付着を抑制できる。
【0048】
ところで、切削液の飛散を防ぐために、本実施の形態で示すようなブレードカバー46を用いると、切削によって生じた熱で切削ブレード40及びブレードカバー46が高温になり、スピンドル38が熱膨張して高精度な切削は難しくなる。そこで、本実施の形態では、ブレードカバー46の外周に放熱板(フィン)58を設ける。
【0049】
放熱板58は、ブレードカバー46の熱を外部へと逃がすブレードカバー冷却機構(ブレードカバー冷却手段)として機能する。この放熱板58を設けることで、切削ブレード40及びブレードカバー46に熱が溜まり難くなるので、スピンドル38の熱膨張を抑制して高精度な切削を実現できる。なお、放熱板58の数や形状は、要求される冷却性能に応じて任意に変更できる。
【0050】
以上のように、本実施の形態に係る切削装置2は、先端の一部を除いて切削ブレード40を覆うブレードカバー46と、ブレードカバー46を冷却する放熱板(フィン)58(ブレードカバー冷却機構(ブレードカバー冷却手段))とを備えるので、切削屑が取り込まれた切削液の飛散を防いでウェーハ(被加工物)11への切削屑の付着、残存を防止すると共に、スピンドル38の熱膨張を抑制して高精度な切削を実現できる。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、ブレードカバーを冷却水で冷却するブレードカバー冷却機構を備えた切削装置について説明する。なお、本実施の形態に係る切削装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る切削装置2の構成と共通している。よって、実施の形態1と共通する構成については共通の符号を付し、本実施の形態では、主に、実施の形態1とは異なる構成について説明する。
【0052】
図3は、本実施の形態に係る切削ユニットの構造を模式的に示す一部断面側面図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る切削ユニットは、円柱状のスピンドル38を含むスピンドルユニット60を備えている。スピンドル38は、筒状のスピンドルハウジング62に支持されている。
【0053】
スピンドルハウジング62の内部には、エアー供給路62aが形成されている。このエアー供給路62aは、エアー供給源64と接続されており、スピンドル38を浮動状態で支持するスラストエアーベアリング66及びラジアルエアーベアリング68にエアーを供給する。
【0054】
スラストエアーベアリング66は、スピンドル38に設けられた円盤状のスラストプレート38aに対して、回転軸と平行な方向のエアーを吹き付けることで、スピンドル38の位置を回転軸と平行な方向において一定に保つ。一方、ラジアルエアーベアリング68は、スピンドル38に対して、回転軸と垂直な方向のエアーを吹き付けることで、スピンドル38の位置を回転軸と垂直な方向において一定に保つ。
【0055】
スピンドルハウジング62の内側には、スピンドル38に回転力を付与するモータ70が配置されている。モータ70は、スピンドルハウジング62に固定されたステータ72と、スピンドル38に連結されたロータ74とを備え、ステータ72とロータ74との間に作用する電磁力でスピンドル38を回転させる。
【0056】
スピンドル38の一端側には、マウントフランジ42を介して円形の切削ブレード40が装着されている。切削ブレード40を覆うブレードカバー76の内部には、冷却水路76aが形成されている。一方、本実施の形態のブレードカバー76には、実施の形態1のような放熱板58が設けられていない。なお、ブレードカバー76の構成は、冷却水路76a及び放熱板58を除いて、実施の形態1に係るブレードカバー46の構成と共通である。
【0057】
スラストエアーベアリング66及びラジアルエアーベアリング68に供給されたエアーの一部は、ブレードカバー76のブレード収容空間46a側に流入し、パージエアー排出路48bを通じて外部へと排出される。また、スラストエアーベアリング66及びラジアルエアーベアリング68に供給されたエアーの他の一部は、スピンドルハウジング62に形成されたエアー排出路62bを通じて外部に排出される。
【0058】
ブレードカバー76の内部に形成された冷却水路76aは、スピンドルハウジング62の内部に形成された冷却水供給路62cを介して冷却水供給源78と接続されている。また、冷却水路76aは、スピンドルハウジング62の内部に形成された冷却水排出路62dと接続されている。
【0059】
これにより、冷却水供給源78からの冷却水は、冷却水供給路62cを通じて冷却水路76aに供給され、ブレードカバー76を冷却した後に、冷却水排出路62dを通じて外部に排出される。
【0060】
このように、本実施の形態に係る切削装置では、ブレードカバー76の内部に形成された冷却水路76aと、冷却水路76aに接続された冷却水供給源78とがブレードカバー冷却機構(ブレードカバー冷却手段)として機能するので、スピンドル38の熱膨張を抑制して高精度な切削を実現できる。
【0061】
本実施の形態で示す構成、方法等は、他の実施の形態に係る構成、方法等と適宜組み合わせることが可能である。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、ブレードカバー冷却機構(ブレードカバー冷却手段)として、放熱板(フィン)58と、冷却水路76a及び冷却水供給源78とのいずれかを用いた態様について示しているが、双方を組み合わせても良い。この場合、ブレードカバーの冷却効果をさらに高めることができる。
【0063】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。