特許第6207366号(P6207366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207366
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】二流体ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/04 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   B05B7/04
   !H01L21/304 643C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-250202(P2013-250202)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107442(P2015-107442A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】八木原 惇
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−298765(JP,A)
【文献】 特開2007−144377(JP,A)
【文献】 特開平7−222942(JP,A)
【文献】 特開昭62−95160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18,7/00−9/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体の混合流体を噴射する二流体ノズルであって、
液体供給源から液体供給手段によって液体が供給される液体供給口と、
気体供給源から気体供給手段によって気体が供給される気体供給口と、
液体と気体の混合流体を噴射する噴射口と、
該気体供給口と該噴射口とを連通させる通気路と、
該通気路に接続して該液体供給口から供給された液体を該通気路を流れる気体に合流させる通水路と、を含み、
該通気路は、該気体供給口の面積よりも狭窄する断面積を有する第1の絞り部と、該第1の絞り部と該噴射口との間に配設され該通気路が該第1の絞り部より拡張する拡張部と、を有し、
該通水路は、該液体供給口の面積よりも狭窄する断面積を有する第2の絞り部を有し、該第2の絞り部は狭窄した断面積のまま該通気路における該拡張部と該噴射口との間に、該通気路に対して直角から±5°の角度で接続しており、
該気体供給源から該気体供給口に気体が供給され、該液体供給源から該液体供給口に液体が供給された際には、該噴射口から気体と液体との混合流体が噴射され、
該気体供給源から該気体供給口に気体が供給され、該液体供給源からの液体の供給が中断した際には、該噴射口から気体のみが噴射されることを特徴とする二流体ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を洗浄する際に使用する二流体ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造プロセスでは、ICやLSI等のデバイスが複数表面に形成された半導体ウエーハの裏面を研削装置で研削して、半導体ウエーハを所定厚みに加工する。その後、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿ってダイシングして個々のデバイスチップが製造される。このようにして得られたデバイスチップは、樹脂封止によりパッケージングされ、携帯電話やパソコン等の各種電子機器に広く利用されている。
【0003】
半導体ウエーハをダイシングする装置としては、チャックテーブルに吸引保持した半導体ウエーハに対して、高速回転する円板状の薄い切削ブレードを切り込ませていくブレード式の切削装置が一般的である(例えば、特開平8−25209号公報参照)。
【0004】
ブレード式の切削装置でダイシングされた半導体ウエーハは、付着している切削屑等を除去するために洗浄する必要があることから、洗浄装置を備えた切削装置が提供されている(例えば、特開2003−229382号公報参照)。
【0005】
半導体ウエーハの切削装置に具備される洗浄装置は、特許文献2に記載されているように、半導体ウエーハをスピンナーテーブルに吸着して保持し、スピンナーテーブルを回転させながら洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出して半導体ウエーハの洗浄を実施する。
【0006】
洗浄終了後、洗浄水の供給を停止し、エアーノズルからエアーを吹きかけながらスピンナーテーブルを回転させることにより、水分を除去して半導体ウエーハをスピン乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−25209号公報
【特許文献2】特開2003−229382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗浄水供給ノズルとしては、洗浄水とエアーを混合して半導体ウエーハに噴射する二流体ノズルが使用されることがある。また、半導体ウエーハの乾燥時にエアーを吹き付けるためには、エアー専用のエアーノズルからエアーを半導体ウエーハに吹き付けている。
【0009】
このような構成の洗浄装置では、ノズルの数に応じてノズルを支える支持アームや配管を用意しなければならず、その構成が複雑になり、装置自体のコストアップにもつながることから、ノズルや配管の数を減らすことが望まれている。そこで、洗浄に使用する二流体ノズルから液体と気体の混合流体の他に乾燥時に使用する気体のみを噴射させて、ノズルの数を減らそうとする試みが行われている。
【0010】
しかし、従来の二流体ノズルはその構造から、液体の供給を停止して気体のみを噴射しようとしても、液体配管内に残った液体が気体の流れに吸引されて噴射されてしまう場合があり、気体のみの噴射は難しいという問題がある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構造で液体と気体の混合流体を噴出する他に、気体のみを噴射することもできる二流体ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、気体と液体の混合流体を噴射する二流体ノズルであって、液体供給源から液体供給手段によって液体が供給される液体供給口と、気体供給源から気体供給手段によって気体が供給される気体供給口と、液体と気体の混合流体を噴射する噴射口と、該気体供給口と該噴射口とを連通させる通気路と、該通気路に接続して該液体供給口から供給された液体を該通気路を流れる気体に合流させる通水路と、を含み、該通気路は、該気体供給口の面積よりも狭窄する断面積を有する第1の絞り部と、該第1の絞り部と該噴射口との間に配設され該通気路が該第1の絞り部より拡張する拡張部と、を有し、該通水路は、該液体供給口の面積よりも狭窄する断面積を有する第2の絞り部を有し、該第2の絞り部は狭窄した断面積のまま該通気路における該拡張部と該噴射口との間に、該通気路に対して直角から±5°の角度で接続しており、該気体供給源から該気体供給口に気体が供給され、該液体供給源から該液体供給口に液体が供給された際には、該噴射口から気体と液体との混合流体が噴射され、該気体供給源から該気体供給口に気体が供給され、該液体供給源からの液体の供給が中断した際には、該噴射口から気体のみが噴射されることを特徴とする二流体ノズルが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二流体ノズルによると、通水路は液体供給口の面積よりも通水路の断面積が狭窄する第2の絞り部を有し、第2の絞り部は狭窄した断面積のまま通気路における拡張部と噴射口との間に通気路に対して直角から±5°の角度で接続しているため、噴射口から気体のみを噴射する際に、通水路に残留した液体は、拡張部を気体が通過する際に第2の絞り部が吸引抵抗として働くため、通水路に残留した液体が気体の流れで吸引されることがなく、噴射口から気体のみを噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】洗浄装置内に本発明の二流体ノズルを具備した切削装置の斜視図である。
図2】ウエーハをダイシングテープを介して環状フレームで支持した形態であるフレームユニットの斜視図である。
図3】本発明の二流体ノズルを具備したスピンナー洗浄装置の斜視図である。
図4】二流体ノズルでウエーハを洗浄している状態のスピンナー洗浄装置の斜視図である。
図5図5(A)は液体と気体の混合流体を噴射している状態の本発明実施形態に係る二流体ノズルの縦断面図、図5(B)は気体のみを噴射している状態の二流体ノズルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、スピンナー洗浄装置に本発明の二流体ノズルを具備した切削装置2の斜視図が示されている。
【0017】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示モニタ6が設けられている。
【0018】
切削装置2の切削対象である半導体ウエーハ11は、図2に示すように、例えば厚さが100μmのシリコンウエーハからなっており、表面に複数のストリート(分割予定ライン)13が格子状に形成されているとともに、複数のストリート13によって区画された各領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。
【0019】
このように構成された半導体ウエーハ(以下、単にウエーハと略称することがある)11は、図2に示すように、粘着テープであるダイシングテープTに裏面が貼着され、ダイシングテープTの外周部が環状フレームFに貼着されてフレームユニット17とされ、図1に示したウエーハカセット8中にフレームユニット17が複数枚収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置されている。
【0020】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8から切削前のウエーハ11を搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入ユニット10が配設されている。
【0021】
ウエーハカセット8と搬出入ユニット10との間には、搬出入対象のウエーハ11が一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハ11を一定の位置に位置合わせする一対のセンタリングバー14が配設されている。
【0022】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハ11を吸着して搬送する旋回アームを有する搬送ユニット16が配設されており、仮置き領域12に搬出されて位置合わせされたウエーハ11は、搬送ユニット16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引保持される。
【0023】
チャックテーブル18は、回転可能且つ図示しない加工送り機構によりX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハ11の切削すべき領域を検出するアライメントユニット22が配設されている。20は環状フレームFをクランプするクランプである。
【0024】
アライメントユニット22は、ウエーハ11の表面を撮像する撮像ユニット24を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって切削すべき領域を検出することができる。撮像ユニット24によって取得された画像は、表示モニタ6に表示される。
【0025】
アライメントユニット22の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハ11に対して切削加工を施す切削ユニット26が配設されている。切削ユニット26はアライメントユニット22と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0026】
切削ユニット26は、回転可能なスピンドル28の先端に外周に切刃を有する切削ブレード30が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード30は撮像ユニット24のX軸方向の延長線上に位置している。切削ユニット26のY軸方向の移動は図示しない割り出し送り機構により達成される。
【0027】
34は切削加工の終了したウエーハ11を洗浄するスピンナー洗浄装置であり、切削加工の終了したウエーハ11は搬送ユニット32によりスピンナー洗浄装置34まで搬送され、スピンナー洗浄装置34でスピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0028】
図3を参照すると、本発明実施形態に係る二流体ノズルを具備したスピンナー洗浄装置34の斜視図が示されている。スピンナー洗浄装置34は、スピンナーテーブル36と、スピンナーテーブル36を包囲して配設された洗浄受け容器38とを具備している。洗浄受け容器38は3本(図3及び図5には2本のみ図示)の支持脚54により支持されている。
【0029】
スピンナーテーブル36は、ポーラスセラミックス等の多孔性材料から形成された吸引保持部40と、吸引保持部40を囲繞する金属製の枠体42とから構成される。吸引保持部40は図示しない吸引手段に選択的に連通される。
【0030】
従って、スピンナーテーブル36は、スピンナーテーブル36上にフレームユニット17を載置し、図示しない吸引手段により負圧を作用させることにより、吸引保持部40上にダイシングテープTを介してウエーハ11を吸引保持する。環状フレームFは図示しないクランプにより固定される。
【0031】
スピンナーテーブル36は電動モータ44の出力軸46に連結されている。支持機構48は複数の支持脚50と、支持脚50にそれぞれ連結され電動モータ44に取り付けられた複数のエアーシリンダ52とから構成される。
【0032】
このように構成された支持機構48は、エアーシリンダ52を作動することにより、電動モータ44及びスピンナーテーブル36を上昇位置であるウエーハ搬入・搬出位置と、図3及び図4に示す下降位置である洗浄位置に位置付け可能である。
【0033】
スピンナー洗浄装置34は、切削加工後の半導体ウエーハ11を洗浄する二流体ノズル56を具備している。二流体ノズル56は図3に示す待避位置と、図4に示すウエーハ11上方の洗浄位置との間で揺動可能に配設されている。二流体ノズル56は、洗浄水と加圧された空気との混合流体を噴出する。
【0034】
次に、図5を参照して、本発明実施形態に係る二流体ノズル56の作用について説明する。図5(A)は液体と空気との混合流体を噴射している状態の二流体ノズル56の縦断面図、図5(B)は気体のみを噴射している状態の二流体ノズル56の縦断面図である。
【0035】
二流体ノズル56は、液体供給源66から液体供給手段60によって液体が供給される液体供給口58と、気体供給源74から気体供給手段64によって気体が供給される気体供給口62と、液体と気体の混合流体を噴射する噴射口80と、気体供給口62と噴射口80とを連通させる通気路82と、通気路82に接続して液体供給口58から供給された液体を通気路82を流れる気体に合流させる通水路84とを有している。
【0036】
液体供給手段60は、液体供給源66と、液体供給源66と二流体ノズル56の液体供給口58とを接続する液体供給路68と、液体供給路68に介装され液体供給路68を開閉する電磁弁70と、液体供給源66から二流体ノズル56の液体供給口58に液体を送るポンプ72とを含んでいる。
【0037】
気体供給手段64は、気体供給源74と、気体供給源74と二流体ノズル56の気体供給口62とを接続する気体供給路76と、気体供給路76に介装され気体供給路76を開閉する電磁弁78とを含んでいる。
【0038】
液体供給源66は、例えば純水等の液体を供給するが、ウエーハ11を洗浄できる液体であれば純水に限定されるものではない。気体供給源74は、例えば圧縮エアー源から構成され、圧縮されたエアーを二流体ノズル56の気体供給口62に供給する。
【0039】
二流体ノズル56の通気路82は、気体供給口62の面積よりも狭窄する断面積を有する第1の絞り部86と、第1の絞り部86と噴射口80との間に配設され通気路82が第1の絞り部86よりも拡張する拡張部88とを有している。
【0040】
通水路84は、液体供給口58の面積よりも通水路84の断面積が狭窄する第2の絞り部90を有しており、第2の絞り部90は狭窄した断面積のまま通気路82における拡張部88と噴射口80との間に通気路82に対して概略直角に接続されている。ここで、概略直角とは、直角に対して±5°の範囲内であるのが好ましい。
【0041】
図5(A)に示すように、電磁弁78を開位置に切り替えると、気体供給源74から気体(圧縮エアー)が二流体ノズル56の気体供給口62に供給され、電磁弁70を開位置に切り替えてポンプ72を作動すると、液体供給源66から純水等の液体が二流体ノズル56の液体供給口58に供給される。従って、二流体ノズル56の噴出口80からは気体と液体との混合流体92が噴射される。
【0042】
一方、図5(B)に示すように、電磁弁78は開位置に維持したまま電磁弁70を閉位置に切り替えると、液体供給源66からの液体の供給は停止されるが、二流体ノズル56の通水路84内には液体96が残留する。
【0043】
通水路84は通気路82における拡張部88と噴射口80との間に直角に接続されているため、第1の絞り部86及び拡張部88を含む通気路82内を圧縮エアー等の気体が通過したとしても、第2の絞り部90が吸引抵抗として働くため、通水路84内の液体96は気体の流れに吸引されることなく、二流体ノズル56の噴射口80からは気体94のみ噴射される。
【0044】
なお、通水路84は通気路82における拡張部88と噴射口80との間に通気路に対して直角に接続されていることが好ましいが、直角に対して±5°の範囲内で接続されていれば、通水路84内の液体96が通気路82を通過する気体の流れに吸引されないことを確認した。
【0045】
特に図示しないが、電磁弁78を閉位置に切り替えて、電磁弁70を開きポンプ72を作動すると、液体供給源66からの純水等の液体を二流体ノズル56の噴射口80から噴射できることを確認した。
【符号の説明】
【0046】
2 切削装置
11 半導体ウエーハ
17 フレームユニット
18 チャックテーブル
30 切削ブレード
34 スピンナー洗浄装置
36 スピンナーテーブル
44 電動モータ
56 二流体ノズル
58 液体供給口
60 液体供給手段
62 気体供給口
64 気体供給手段
66 液体供給源
72 ポンプ
74 気体供給源
80 噴射口
82 通気路
84 通水路
86 第1の絞り部
88 拡張部
90 第2の絞り部
図1
図2
図3
図4
図5