特許第6207632号(P6207632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207632新規な化合物およびこれを用いた有機電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207632
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを用いた有機電子素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20170925BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C07D405/14
   C07D409/14
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-555925(P2015-555925)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-511756(P2016-511756A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】KR2014001020
(87)【国際公開番号】WO2014123369
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0013211
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】テ・ユン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミンスン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ドンホン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ソク・キム
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/026377(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0196158(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0094415(KR,A)
【文献】 国際公開第2012/119111(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0226046(US,A1)
【文献】 特開2013−075841(JP,A)
【文献】 特開2014−103104(JP,A)
【文献】 特表2014−529586(JP,A)
【文献】 特表2014−535173(JP,A)
【文献】 Oyston, S. et al,J. Mater. Chem.,2005年,vol.15,p.5164-5173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表されることを特徴とする、化合物。
【化1】
前記化学式1において、
X1〜X5およびY1〜Y5は、それぞれ独立に、C−Cy、CRまたはNであり、
X6およびY6は、それぞれ独立に、Cであり、
X1〜X5のうちの1つまたは2つは、Nであり、X1〜X5のうちの少なくとも1つは、C−Cyであり、
Y1〜Y5のうち1つまたは2つは、Nであり、Y1〜Y5のうちの少なくとも1つは、C−Cyであり、
Cyは、ジベンゾフラン基またはジベンゾチオフェン基であり、
Rは、水素であり、
nおよびmは、それぞれ独立に、1であり、
Lは、ナフチル基である。
【請求項2】
前記化学式1の
【化2】
は、それぞれ独立に、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【化3】
前記Cyは、化学式1で定義された通りである。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【請求項4】
第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極との間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を含むことを特徴とする、有機電子素子。
【請求項5】
前記有機物層は、電子遮断層、電子注入層および電子輸送層のうちの少なくとも1層を含み、前記電子遮断層、電子注入層および電子輸送層のうちの少なくとも1層が前記化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の有機電子素子。
【請求項6】
前記電子輸送層が前記化合物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の有機電子素子。
【請求項7】
前記有機物層は、発光層を含み、前記発光層が前記化合物を含むことを特徴とする、請求項4に記載の有機電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2013年2月6日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2013−0013211号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、有機電子素子の寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性を向上させることができる新規な化合物が有機物層に含まれている有機電子素子に関するものである。
【背景技術】
【0003】
有機電子素子とは、正孔および/または電子を用いた電極と有機物との間における電荷交流を必要とする素子を意味する。有機電子素子は、動作原理によって、下記のように大別して2つに分けられる。第一は、外部の光源から素子に流入した光子によって有機物層でエキシトン(exiton)が形成され、このエキシトンが電子と正孔に分離され、これら電子および正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されて電流源(電圧源)として使用される形態の電気素子である。第二は、2個以上の電極に電圧または電流を加えて電極と界面をなす有機物半導体に正孔および/または電子を注入し、注入された電子と正孔によって動作する形態の電子素子である。
【0004】
有機電子素子の例としては、有機電子素子、有機太陽電池、有機感光体(OPC)、有機トランジスタなどがあり、これらはすべて素子の駆動のために正孔の注入または輸送物質、電子の注入または輸送物質、または発光物質を必要とする。以下では、主に有機発光素子について具体的に説明するが、前記有機電子素子では、正孔の注入または輸送物質、電子の注入または輸送物質、または発光物質が類似する原理で作用する。
【0005】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機電子素子は、通常、陽極と陰極、およびこれらの間に有機物層を含む構造を有する。ここで、有機物層は、有機電子素子の効率および安定性を高めるために、それぞれ異なる物質で構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなるとよい。このような有機電子素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が会った時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時に光を発する。このような有機電子素子は、自発光、高輝度、高効率、低い駆動電圧、広い視野角、高いコントラスト、高速応答性などの特性を有することが知られている。
【0006】
有機電子素子において、有機物層として使用される物質は、機能によって、発光物質と電荷輸送物質、例えば、正孔注入物質、正孔輸送物質、電子輸送物質、電子注入物質などに分類できる。また、発光物質は、発光色によって、青色、緑色、赤色発光物質と、より良い天然色を具現するために必要な黄色および橙色発光物質に区分できる。一方、発光物質として1つの物質だけを使用する場合、分子間相互作用によって最大発光波長が長波長に移動し、色純度が低下したり、発光減衰効果によって素子の効率が減少する問題が発生するため、色純度の増加とエネルギー転移による発光効率を増加させるために、発光物質としてホスト/ドーパント系を使用することができる。
【0007】
有機電子素子が前述の優れた特徴を十分に発揮するためには、素子内の有機物層をなす物質、例えば、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などが安定かつ効率的な材料によって裏付けられることが先行されなければならないが、安定かつ効率的な有機電子素子用有機物層材料の開発がまだ十分になされていない。したがって、新たな材料の開発が要求され続けており、このような材料の開発の必要性は前述した他の有機電子素子においても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、有機電子素子で使用可能な物質に要求される条件、例えば、寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性などを満足させることができ、置換基によって有機電子素子で要求される多様な役割を果たすことができる化学構造を有する化合物を含む有機電子素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、下記の化学式1で表される化合物を提供する。
【化1】
【0010】
前記化学式1において、
X1〜X5およびY1〜Y5は、それぞれ独立に、C−Cy、N−Cy、CRまたはNであり、
X6およびY6は、それぞれ独立に、CまたはNであり、
X1〜X6のうちの少なくとも1つは、Nであり、X1〜X5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはN−Cyであり、
Y1〜Y6のうちの少なくとも1つは、Nであり、Y1〜Y5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはN−Cyであり、
X6がNの時、X1〜X5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはCRであり、
Y6がNの時、Y1〜Y5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはCRであり、
Cyは、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
Rは、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基であり、
nおよびmは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、
n+mは、2〜6であり、
Lは、置換もしくは非置換のn+m価のアリール基である。
【0011】
また、本明細書は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極との間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化合物を含むことを特徴とする、有機電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書の一実施形態にかかる有機電子素子は、寿命特性が向上するという利点がある。
【0013】
本明細書の一実施形態にかかる有機電子素子は、光効率が向上するという利点がある。
【0014】
本明細書の一実施形態にかかる有機電子素子は、低い駆動電圧を有するという利点がある。
【0015】
本明細書の一実施形態にかかる有機電子素子は、電気化学的安定性および熱的安定性が向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】基板1、陽極2、発光層3、陰極4からなる有機電子素子の例を示したものである。
図2】基板1、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および陰極4からなる有機電子素子の例を示したものである。
図3】製造例1で合成した構造式29の化合物に対するNMRグラフである。
図4】製造例2で合成した構造式30の化合物に対するNMRグラフである。
図5】製造例3で合成した構造式31の化合物に対するNMRグラフである。
図6】製造例4で合成した構造式32の化合物に対するNMRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書をより詳細に説明する。
【0018】
本明細書は、ヘテロ環化合物を提供する。
【0019】
前記ヘテロ環化合物は、下記の化学式1で表されるとよい。
【化2】
【0020】
前記化学式1において、
X1〜X5およびY1〜Y5は、それぞれ独立に、C−Cy、N−Cy、CRまたはNであり、
X6およびY6は、それぞれ独立に、CまたはNであり、
X1〜X6のうちの少なくとも1つは、Nであり、X1〜X5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはN−Cyであり、
Y1〜Y6のうちの少なくとも1つは、Nであり、Y1〜Y5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはN−Cyであり、
X6がNの時、X1〜X5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはCRであり、
Y6がNの時、Y1〜Y5のうちの少なくとも1つは、C−CyまたはCRであり、
Cyは、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
Rは、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基であり、
nおよびmは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、
n+mは、2〜6であり、
Lは、置換もしくは非置換のn+m価のアリール基である。
【0021】
前記化学式1において、Cyは、置換もしくは非置換のチオフェン基;置換もしくは非置換のフラン基;置換もしくは非置換のベンゾチオフェン基;置換もしくは非置換のベンゾフラン基;置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラン基であり得る。
【0022】
前記化学式1において、Cyは、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラン基であり得る。
【0023】
具体的には、Cyは、下記の化学式で表されるとよい。
【化3】
【0024】
ここで、Xは、OまたはSであり、
pは、0〜7の整数であり、
Zは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基である。
【0025】
前記化学式1において、Cyは、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよい。
【化4】
【0026】
ここで、Xは、OまたはSであり、
pは、0〜7の整数であり、
Zは、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基である。
【0027】
前記化学式1において、
【化5】
は、それぞれ独立に、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよい。
【化6】
【0028】
ここで、前記Cyは、化学式1で定義された通りである。
【0029】
前記化学式1において、前記X1〜X6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり得る。この場合、
【化7】
は、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよい。
【化8】
【0030】
ここで、前記Cyは、化学式1で定義された通りである。
【0031】
前記化学式1において、前記Y1〜Y6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり得る。この場合、
【化9】
は、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよい。
【化10】
前記化学式1において、
【化11】
は、互いに同一であってもよい。
【0032】
前記化学式1において、
【化12】
は、互いに対称であってもよい。具体的には、Lを中心として点対称または線対称であってもよい。
【0033】
前記化学式1において、前記Lは、置換もしくは非置換のn+m価のフェニル基;置換もしくは非置換のn+m価のビフェニル基;置換もしくは非置換のn+m価のターフェニル基;置換もしくは非置換のn+m価のスチルベン基;置換もしくは非置換のn+m価のナフチル基;置換もしくは非置換のn+m価のアントラセニル基;置換もしくは非置換のn+m価のフェナントレン基;置換もしくは非置換のn+m価のピレニル基;置換もしくは非置換のn+m価のペリレニル基;置換もしくは非置換のn+m価のクリセニル基;または置換もしくは非置換のn+m価のフルオレン基であり得る。
【0034】
前記化学式1において、前記Lは、置換もしくはn+m価のフェニル基;置換もしくは非置換のn+m価のナフチル基;または置換もしくは非置換のn+m価のフルオレン基であり得る。
【0035】
本明細書において、n+mは2〜6であるので、n+m価の置換基は、2価の置換基、3価の置換基、4価の置換基、5価の置換基または6価の置換基を意味する。
【0036】
前記化学式1において、前記Lは、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよい。
【化13】
【0037】
ここで、oは、0〜4の整数であり、
R1は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基であり、
R2およびR3は、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルチオキシ基;置換もしくは非置換のアリールチオキシ基;置換もしくは非置換のアルキルスルホキシ基;置換もしくは非置換のアリールスルホキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;または置換もしくは非置換のフルオレニル基であり、
前記R1〜R3は、互いに隣接する基と脂肪族またはヘテロの縮合環を形成することができる。
前記化学式1において、前記nおよびmは、1であり得る。
前記化学式1において、Cyは、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラン基であり、
X1〜X6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり、Y1〜Y6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyである。
前記化学式1において、Cyは、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラン基であり、
X1〜X6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり、Y1〜Y6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり、
前記Lは、置換もしくは置換もしくはn+m価のフェニル基;置換もしくは非置換のn+m価のナフチル基;または置換もしくは非置換のn+m価のフルオレン基である。
【0038】
前記化学式1において、Cyは、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェン基;または置換もしくは非置換のジベンゾフラン基であり、
X1〜X6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり、Y1〜Y6のうちの1つまたは2つは、NまたはN−Cyであり、
前記Lは、置換もしくは非置換のフェニレン基;置換もしくは非置換の2価のナフチル基;または置換もしくは非置換の2価のフルオレン基であり、
nおよびmは、1である。
【0039】
以下、本明細書にかかる化合物において、前記化学式1の置換基をより具体的に説明する。
本明細書において、「置換もしくは非置換の」との用語は、重水素、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、アミン基、アルコキシ基、シリル基、アリールアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバゾール基、アリールアミン基、ヘテロアリールアミン基、アリール基で置換もしくは非置換のフルオレニル基、およびニトリル基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換されたか、もしくはいずれの置換基も有さず、「H」であることを意味する。
【0040】
本明細書において、前記ハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0041】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、1〜12であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0042】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、2〜12であることが好ましい。具体例としては、ブテニル基;ペンテニル基;またはスチルベニル基(stylbenyl)、スチレニル基(styrenyl)などの、アリール基の連結されたアルケニル基があるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0043】
本明細書において、前記アルコキシ基は、炭素数1〜12であることが好ましく、より具体的には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシなどが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0044】
本明細書において、前記アリール基またはアリーレン基は、単環式または多環式であり得、炭素数は特に限定されないが、6〜40であることが好ましい。単環式アリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、スチルベンなどが挙げられ、多環式アリール基の例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレン基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0045】
また、単環式アリーレン基の例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、2価のスチルベンなどが挙げられ、多環式アリーレン基の例としては、2価のナフチル基、2価のアントラセニル基、2価のフェナントレン基、2価のピレニル基、2価のペリレニル基、2価のクリセニル基、2価のフルオレン基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0046】
本明細書において、フルオレニル基は、2個の環有機化合物が1個の原子を介して連結された構造であって、例としては、
【化14】
などがある。
【0047】
本明細書において、フルオレニル基は、開かれたフルオレニル基の構造を含み、ここで、開かれたフルオレニル基は、2個の環化合物が1個の原子を介して連結された構造において一方の環化合物が連結の切れた状態の構造であって、例としては、
【化15】
などがある。
【0048】
本明細書において、アミン基の炭素数は特に限定されないが、1〜30であることが好ましい。アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9−メチル−アントラセニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0049】
本明細書において、アリールアミン基の例としては、置換もしくは非置換の単環式のジアリールアミン基、置換もしくは非置換の多環式のジアリールアミン基、または置換もしくは非置換の単環式および多環式のジアリールアミン基を意味する。
【0050】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子としてO、NおよびSのうちのいずれか1つ以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2〜60であることが好ましい。
【0051】
本明細書において、ヘテロ環基は、ヘテロアリール基であり得る。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンズチアゾール基、ベンズカルバゾール基、ベンズチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンズフラニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0052】
例えば、前記ヘテロアリール基は、下記の構造式のような化合物が好ましいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0053】
【化16】
【0054】
本明細書の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式のうちのいずれか1つで表されるとよいが、これらに限定されるものではない。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0055】
本明細書にかかる新規な化合物は、熱的安定性に優れるという利点がある。これにより、有機電子素子内において、電荷の移動によって発生するジュール熱(joule heating)に対して安定した効果がある。
【0056】
本明細書にかかる新規な化合物は、深いHOMO準位を有するという利点がある。
【0057】
本明細書にかかる新規な化合物は、高い三重項(triplet)状態を有するという利点がある。
【0058】
本明細書にかかる新規な化合物は、正孔安定性を有するという利点がある。
【0059】
本明細書にかかる新規な化合物は、発光素子を含めた有機電子素子で純粋に使用したり、不純物を混ぜて使用が可能である。
【0060】
本明細書にかかる新規な化合物は、有機電子素子において、正孔注入および/または正孔輸送物質としての適切なエネルギー準位を有することができる。本明細書では、前記化合物中の置換基によって適切なエネルギー準位を有する化合物を選択して有機電子素子に使用することにより、駆動電圧が低く、光効率が高い素子を実現することができる。
【0061】
また、前記コア構造に多様な置換基を導入することにより、エネルギーバンドギャップの微細な調節を可能にし、一方で、有機物の間における界面での特性を向上させ、物質の用途を多様化することができる。
【0062】
一方、前記化学式1で表される化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱的安定性に優れている。このような熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因となる。
【0063】
本明細書にかかる有機電子素子は、光効率が向上し、高い熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させるという利点がある。
【0064】
また、本明細書にかかる有機電子素子は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極との間に配置された1層以上の有機物層を含む有機電子素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0065】
有機電子素子の例としては、有機発光素子、有機太陽電池、有機感光体(OPC)、有機トランジスタなどがあるが、これらにのみ限定されない。
【0066】
本明細書の有機電子素子は、前述した化学式1で表される化合物を用いて1層以上の有機物層を形成することを除いては、通常の有機電子素子の製造方法および材料によって製造できる。
【0067】
例えば、本明細書にかかる有機電子素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e−beam evaporation)のようなPVD(physical vapor deposition)方法を利用して、基板上に金属または伝導性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて陽極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に陰極として使用可能な物質を蒸着させることによって製造できる。このような方法のほか、基板上に、陰極物質から有機物層、陽極物質を順に蒸着させて有機電子素子を作ることもできる。
【0068】
また、前記有機物層は、多様な高分子素材を用いて、蒸着法でない溶媒工程(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティングまたは熱転写法などの方法によってより少数の層に製造することができる。
【0069】
本明細書の有機電子素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本明細書の有機電子素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機電子素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含むことができる。
【0070】
したがって、本明細書の有機電子素子において、前記有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、および正孔注入および正孔輸送を同時に行う層のうちの1層以上を含むことができ、前記層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0071】
また、前記有機物層は、発光層を含むことができ、前記発光層が前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0072】
さらに、前記有機物層は、電子遮断層、電子輸送層、電子注入層、および電子輸送および電子注入を同時に行う層のうちの1層以上を含むことができ、前記層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0073】
また、本明細書の化合物は、有機電子素子において、有機物層物質、特に、正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、電子輸送層物質などとして使用できる。
【0074】
前記陽極物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑となるように、仕事関数の大きい物質が好ましい。本明細書で使用可能な陽極物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0075】
前記陰極物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易となるように、仕事関数の小さい物質であることが好ましい。陰極物質の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0076】
前記正孔注入物質としては、低い電圧で陽極から正孔がきちんと注入できる物質であって、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が、陽極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、金属ポルフィリン(porphyrine)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリ化合物系の伝導性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0077】
前記正孔輸送物質としては、陽極や正孔注入層から正孔が輸送されて発光層に移すことができる物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が適している。具体例としては、アリールアミン系の有機物、伝導性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0078】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子がそれぞれ輸送されて結合させることによって、可視光線領域の光を発することができる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0079】
前記電子輸送物質としては、陰極から電子がきちんと注入されて発光層に移すことができる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が適している。具体例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0080】
本明細書にかかる有機電子素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型または両面発光型であり得る。
【0081】
本明細書にかかる有機電子素子は、有機発光素子であり得る。
【0082】
例えば、本明細書の有機発光素子の構造は、図1および図2に示すような構造を有することができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0083】
図1には、基板1上に、陽極2、発光層3および陰極4が順次に積層された有機電子素子の構造が例示されている。このような構造において、前記化合物は、前記発光層3に含まれるとよい。
【0084】
図2には、基板1上に、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および陰極4が順次に積層された有機発光素子の構造が例示されている。このような構造において、前記化合物は、前記正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7または電子輸送層8に含まれるとよい。
【0085】
本明細書の一実施形態にかかる化合物は、有機発光素子の有機物層に使用可能であり、より具体的には、正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質または電子輸送層物質として使用可能である。
【0086】
有機発光素子で使用される物質としては、純粋な有機物質、または有機物質と金属とが錯体をなす錯化合物が大部分を占めており、用途によって、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分できる。
【0087】
ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p−タイプの性質を有する有機物質、すなわち、酸化されやすく、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。
【0088】
一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n−タイプの性質を有する有機物質、すなわち、還元されやすく、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。
【0089】
発光層物質としては、p−タイプの性質とn−タイプの性質を同時に有する物質、すなわち、酸化および還元状態ですべて安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された時、これを光に転換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0090】
本明細書にかかる化合物は、酸化されやすく、酸化時に電気化学的に安定しており、正孔注入物質や正孔輸送物質としての使用に好ましい。
【0091】
本明細書にかかる化合物は、還元されやすく、還元時に電気化学的に安定しており、電子輸送物質としての使用に好ましい。
【0092】
本明細書にかかる化合物は、酸化および還元状態ですべて安定しており、エキシトンが形成された時、これを光に転換する発光効率が高く、発光層物質としての使用に好ましい。
【0093】
低電圧駆動可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔および電子が発光層の外部に抜けないようにしなければならない。このために、有機発光素子に使用される物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMOまたはLUMOエネルギー準位を有しなければならない。
【0094】
本明細書にかかる化合物は、正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔および電子が発光層の外部に抜けないような適切なHOMOまたはLUMO準位を有するという利点がある。
【0095】
本明細書にかかる化合物は、化学的安定性に優れるという利点がある。
【0096】
本明細書にかかる化合物は、適切な正孔または電子移動度を有することにより、有機発光素子の発光層において正孔および電子の密度が均衡をなすようにエキシトンの形成を極大化するという利点がある。
【0097】
本明細書にかかる化合物は、水分や酸素による物質の変形が少ないという利点がある。
【0098】
本明細書にかかる化合物は、素子の安定性のために、金属または金属酸化物を含む電極との界面を良好にするという利点がある。
【0099】
本明細書にかかる有機太陽電池は、第1電極と第2電極、およびこれらの間に配置された有機物層を含む構造からなるとよく、有機物層として、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層を含むことができる。本出願の一実施形態にかかる化合物は、有機太陽電池の有機物層に使用可能であり、より具体的には、電子輸送層に使用可能である。
【0100】
本明細書にかかる有機感光体は、導電性基材、電子輸送物質を含む電荷輸送層、電荷生成層を含むことができる。本出願の一実施形態にかかる化合物は、有機感光体の電荷輸送層に使用できる。
【0101】
本明細書にかかる有機トランジスタは、第1電極、第2電極、正孔注入層、有機薄膜層、電子注入層、電子輸送層などを含むことができる。本出願の一実施形態にかかる化合物は、有機トランジスタの電子輸送層に使用できる。
【実施例】
【0102】
前記化学式1の化合物の製造方法およびこれらを用いた有機電子素子の製造は、以下の実施例で具体的に説明する。しかし、下記の実施例は本明細書を例示するためのものであり、本明細書の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0103】
(実施例)
<製造例1>構造式29の製造
【化29】
2,7−ジブロモナフタレン(2,7−dibromonaphthalene)(5.9g、20.7mmol)と化合物A(16.9g、45.5mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.7g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式29(6.7g、53%)を得た。
MS:[M+H]=615
【0104】
<製造例2>構造式30の製造
【化30】
2,7−ジブロモナフタレン(2,7−dibromonaphthalene)(5.7g、20.0mmol)と化合物B(17.0g、43.9mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.7g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式30(6.0g、46%)を得た。
MS:[M+H]=647
【0105】
<製造例3>構造式31の製造
【化31】
2,7−ジブロモナフタレン(2,7−dibromonaphthalene)(15.3g、53.4mmol)と化合物C(43.8g、118mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(1.9g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式31(9.9g、30%)を得た。
MS:[M+H]=617
【0106】
<製造例4>構造式32の製造
【化32】
2,7−ジブロモナフタレン(2,7−dibromonaphthalene)(4.4g、15.2mmol)と化合物D(13.0g、33.5mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.5g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式32(5.6g、56%)を得た。
MS:[M+H]=649
【0107】
<製造例5>構造式41の製造
【化33】
2−ブロモ−7−ヨードナフタレン(2−bromo−2−iodonaphthalene)(30g、90.1mmol)と化合物A(33.4g、90.1mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(300mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(1.0g、1mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、化合物E(17.4g、43%)を得た。
【0108】
化合物E(5g、11.1mmol)と化合物B(4.3g、11.1mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.38g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式41(4.3g、32%)を得た。
MS:[M+H]=630
【0109】
<製造例6>構造式42の製造
【化34】
2−ブロモ−7−ヨードナフタレン(2−bromo−2−iodonaphthalene)(30g、90.1mmol)と化合物C(33.5g、90.1mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(300mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(1.0g、1mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、化合物F(10.2g、25%)を得た。
【0110】
化合物F(5.2g、11.5mmol)と化合物D(4.5g、11.1mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.38g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式42(3.0g、41%)を得た。
MS:[M+H]=632
【0111】
<製造例7>構造式43の製造
【化35】
化合物F(6.5g、13.9mmol)と化合物B(5.39g、13.9mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.48g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式43(1.7g、19%)を得た。
MS:[M+H]=647
【0112】
<製造例8>構造式44の製造
【化36】
化合物E(6g、13.3mmol)と化合物C(4.95g、11.1mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)(100mL)に完全に溶かした後、2M炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、Pd(PPh(0.46g、3mol%)を入れた後、24時間撹拌還流した。常温に温度を下げて水層を除去し、有機層を濾過した。固体をシリカゲル(silica gel)に吸着してカラムし、構造式44(2.94g、35%)を得た。
MS:[M+H]=631
【0113】
<実施例1>
ITO(indium tin oxide)が500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波で洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行させた。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄をして乾燥させた後、プラズマ洗浄機に輸送させた。また、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を輸送させた。
このように用意されたITO透明電極上に、下記の化学式のヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene;HAT)を500Åの厚さに熱真空蒸着して、正孔注入層を形成した。
【化37】
【0114】
前記正孔注入層上に、前記化学式の4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)(250Å)、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)(50Å)、および4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)(400Å)、Alq3(300Å)、および前記製造例で製造された構造式29の化合物とLiQ(Lithium Quinalate)を1:1の重量比で真空蒸着し、300Åの厚さに熱真空蒸着して、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を順に形成させた。前記電子輸送層上に、順次に12Åの厚さのリチウムフルオライド(LiF)と2000Åの厚さのアルミニウムを蒸着して陰極を形成し、有機電子素子を製造した。
【0115】
前記過程において、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、陰極のリチウムフルオライドは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2x10−7〜5x10−8torrを維持した。
【0116】
前記のように製作された素子に6Vの順方向の電界を加えた時、下記の表1の結果を得た。
【0117】
<実施例2>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例2で合成した構造式30の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0118】
<実施例3>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例3で合成した構造式31の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0119】
<実施例4>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例4で合成した構造式32の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0120】
<実施例5>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例5で合成した構造式41の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0121】
<実施例6>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例6で合成した構造式42の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0122】
<実施例7>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例7で合成した構造式43の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0123】
<実施例8>
前記実施例1の構造式29の化合物の代わりに、前記製造例8で合成した構造式44の化合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0124】
<比較例>
ITO(インジウムスズ酸化物)が1000Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板(corning 7059 glass)を、分散剤を溶かした蒸留水に入れて超音波で洗浄した。洗剤はFischer Co.の製品を使用し、蒸留水はMillipore Co.製品のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行させた。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤の順に超音波洗浄をして乾燥させた。
【0125】
前記ITO電極上に、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(500Å)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)(400Å)、およびAlq3(300Å)を順次に蒸着した後、下記のET−AとLiQ(Lithium Quinalate)を1:1の重量比(300Å)で熱真空蒸着して、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を順に形成させた。前記電子輸送層上に、順次に12Åの厚さのリチウムフルオライド(LiF)と2000Åの厚さのアルミニウムを蒸着して陰極を形成し、有機電子素子を製造した。
【0126】
前記過程において、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、陰極のリチウムフルオライドは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2x10−7〜5x10−8torrを維持した。
【0127】
前記のように製作された素子に6Vの順方向の電界を加えた時、下記の表1の結果を得た。
【化38】
【表1】
【0128】
前記表1の結果から、本発明にかかる新規な化合物は、有機発光素子を含めた有機電子素子の電子輸送層の材料として使用可能であり、これを用いた有機発光素子を含めた有機電子素子は、効率、駆動電圧、安定性などにおいて優れた特性を示すことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6