(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シーケンスは、前記エッチング工程の前に行われるブレークスルー工程であり、前記処理容器内の圧力が第1の圧力とされ、且つ前記下部電極に前記第2のバイアス電力が印加された状態で、前記処理容器内において前記第1のガスのプラズマを生成する、該ブレークスルー工程を更に含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4に記載された方法では、エッチングによって形成された凹部を画成する底面にも保護膜が形成される。このため、保護膜の形成後に被エッチング層をエッチングする際には、まず凹部の底面に形成された保護膜を除去し、その後に被エッチング層を深さ方向にエッチングすることになる。このように、特許文献1〜4に記載された方法では、凹部の底面に形成された保護膜を除去する工程が余分に必要となるので、高いエッチングレートで被エッチング層の深さ方向にエッチングを進めることが困難となる。
【0007】
したがって、本技術分野においては、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる被処理体のプラズマ処理方法が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面においては、上部電極と該上部電極に対向して配置される下部電極との間で生成されるプラズマにより処理容器内に配置される被処理体を処理する方法が提供される。この方法は、SF
6、ClF
3、及びF
2の少なくとも何れかを含有する第1のガスを処理容器内に供給し、該第1のガスのプラズマを生成して、被処理体の被エッチング層をエッチングするエッチング工程と、ハイドロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロハイドロカーボンの少なくとも何れかを含有する第2のガスを処理容器内に供給し、該第2のガスのプラズマを生成して、被エッチング層の少なくとも一部に第2のガスに由来する保護膜を形成する第1の成膜工程と、を含む。エッチング工程においては、処理容器内の圧力が第1の圧力とされ、且つ下部電極に第1のバイアス電力が印加される。第1の成膜工程においては、処理容器内の圧力が第1の圧力よりも低い第2の圧力とされ、且つ下部電極に第1のバイアス電力よりも高い第2のバイアス電力が印加される。そして、エッチング工程及び第1の成膜工程を含むシーケンスが繰り返し実行される。
【0009】
上記方法では、まずエッチング工程において、第1のガスのプラズマにより被処理体の被エッチング層がエッチングされる。このエッチング工程により、被エッチング層には側壁及び底面により画成される凹部が形成される。次いで、第1の成膜工程において、第2のガスのプラズマを生成することにより被エッチング層の一部に保護膜が形成される。この第1の成膜工程では、処理容器内の圧力が相対的に低い圧力である第2の圧力に設定され、下部電極に相対的に高いバイアス電力である第2のバイアス電力が印加される。これにより、第1の成膜工程では、凹部の底面に保護膜が形成されることを抑制しつつ、凹部の側壁に保護膜が形成される。これは、第1の成膜工程において、処理容器内の圧力が相対的に低い圧力である第2の圧力に設定され、下部電極に相対的に高いバイアス電力が印加されることにより、第2のガスに含まれるハイドロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロハイドロカーボンが解離して生じる高エネルギーのイオンが凹部内に引き込まれ、イオンのスパッタリング効果によって凹部の底面に形成された保護膜が選択的に除去されることに起因するものである。したがって、その後に再び行われるエッチング工程では、側壁において第1のガスに由来する活性種が保護膜により被エッチング層に接触することが防止され、凹部の底面においては第1のガスに由来する活性種が被エッチング層の分子と活発に反応する。このため、上記方法では、被エッチング層の側方にはエッチングの進行が抑制され、被エッチング層の深さ方向にはエッチングが促進される。なお、このエッチング工程では、相対的に低いバイアス電力である第1のバイアス電力を下部電極に印加してエッチングが行われるので、第1のガスに含まれるSF
6、ClF
3、及びF
2が解離して生じるイオンによって凹部の側壁に形成された保護膜が除去されることが抑制される。したがって、上記方法によれば、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる。
【0010】
上記方法の一形態では、O
2ガスが第1のガスに添加されてもよい。第1のガスにO
2ガスが添加されることにより、被エッチング層をエッチングする際に凹部の側壁にシリコン酸化物を形成することができるので、より高いアスペクト比の形状を形成することができる。
【0011】
上記方法の一形態では、シーケンスは、エッチング工程と第1の成膜工程との間で行われる第2の成膜工程であり、処理容器内の圧力が第1の圧力とされ、且つ下部電極に第1のバイアス電力が印加された状態で、処理容器内において第2のガスのプラズマを生成して、被エッチング層の少なくとも一部に保護膜を形成する、該第2の成膜工程と、第2の成膜工程と第1の成膜工程との間で行われる第3の成膜工程であり、処理容器内の圧力が第1の圧力とされ、且つ下部電極に第2のバイアス電力が印加された状態で、処理容器内において第2のガスのプラズマを生成して、被エッチング層の少なくとも一部に保護膜を形成する、該第3の成膜工程と、を更に含んでもよい。
【0012】
上記方法の第2の成膜工程では、処理容器内の圧力が相対的に高圧な第1の圧力に設定され、且つ下部電極に相対的に低いバイアス電力である第1のバイアス電力が印加される。これにより、前工程であるエッチング工程において処理容器内に供給され、処理容器内に残留した第1のガスに由来するイオンによって凹部の側壁に形成された保護膜が除去されることを防止することができる。また、その後に行われる第3の成膜工程では、処理容器内の圧力が相対的に高圧な第1の圧力に設定され、且つ下部電極に相対的に高いバイアス電力である第2のバイアス電力が印加される。第3の成膜工程では、このように処理容器内の圧力が比較的高圧に設定されるので、被エッチング層に対する保護膜の堆積を促進することができる。また、第3の成膜工程及び第1の成膜工程では、相対的に高いバイアス電力である第2のバイアス電力が印加されるので、イオンのスパッタリング効果により凹部の底面に保護膜が形成されることを抑制することができる。したがって、本形態に係る方法によれば、凹部の底面に保護膜が形成されることを抑制しつつ、凹部の側壁に保護膜を形成することができ、その結果、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる。
【0013】
上記方法の一形態では、シーケンスは、エッチング工程の前に行われるブレークスルー工程であり、処理容器内の圧力が第1の圧力とされ、且つ下部電極に第2のバイアス電力が印加された状態で、処理容器内において第1のガスのプラズマを生成する、該ブレークスルー工程を更に含んでもよい。
【0014】
上記方法のブレークスルー工程では、処理容器内の圧力が相対的に高圧な第1の圧力に設定され、且つ下部電極に相対的に高いバイアス電力である第2のバイアス電力が印加される。このようなブレークスルー工程では、第2のバイアス電力により、第1のガスの分子が解離して生じるイオンが凹部内に引き込まれるので、凹部の底面に残留した堆積物をクリーニングすることができる。したがって、後工程で行われるエッチング工程における被エッチング層の深さ方向へのエッチングレートを高めることができる。
【0015】
上記方法の一形態では、シーケンスの繰り返しの途中から、ブレークスルー工程、第1の成膜工程、及び第3の成膜工程において、下部電極に印加される第2のバイアス電力を増加させてもよい。また、上記方法の一形態では、前記シーケンスの繰り返しの途中から、前記第1の成膜工程、前記第2の成膜工程、及び前記第3の成膜工程において、前記処理容器内に供給される前記第2のガスの流量を減少させてもよい。
【0016】
被エッチング層に高アスペクト比のエッチングをする際に、処理条件を一定とした場合には、深さ方向に向かうにつれて先細った形状の凹部が被エッチング層に形成される。本発明者は、アスペクト比が大きくなるにつれて、凹部の底面に供給されるエッチングに寄与する活性種の量が、凹部の底面に供給される保護膜の形成に寄与する活性種の量と比べて低下することにより、このような現象が生じることを見出した。本形態では、シーケンスの繰り返しの途中からは、第1の成膜工程、第2の成膜工程、及び第3の成膜工程において処理容器内に供給される第2のガスの流量を減少させているので、凹部の底面に供給される保護膜の形成に寄与する活性種の量を減らすことができる。これにより、凹部の形状が先細った形状になることを防止することができる。また、本形態では、ブレークスルー工程、第1の成膜工程、及び第3の成膜工程において下部電極に印加されるバイアス電力を増加させているので、第2のガスに由来するイオンによるスパッタリング効果を大きくすることができる。これにより、凹部の底面に保護膜が形成されることが抑制される。したがって、本形態に係る方法によれば、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる。
【0017】
上記方法の一形態では、第2のガスが、CH
4、CH
3F、C
4F
6、及びC
4F
8のうち少なくとも何れかを含んでもよい。このような第2のガスを用いることにより、凹部の底面に保護膜が形成されることを抑制しつつ、凹部の側壁に保護膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び種々の形態によれば、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる被処理体のプラズマ処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一実施形態に係る被処理体をプラズマ処理する方法を示す流れ図である。
図1に示す方法M1では、第1のガスのプラズマを用いて被処理体の被エッチング層をエッチングする工程S2と、第2のガスのプラズマを用いて被処理体の被エッチング層に保護膜を形成する工程S3とが繰り返し実行される。
【0022】
以下、
図1に示す方法M1の実施に用いることができるプラズマ処理装置について説明する。
図2は、一実施形態のプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2には、プラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。
【0023】
プラズマ処理装置10は、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有しており、その内部に処理空間Sを画成している。処理容器12の側壁には、被処理体Wの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。プラズマ処理装置10は、この処理容器12内に、載置台14を備えている。載置台14は、処理空間Sの下方に設けられている。この載置台14は、下部電極16及び静電チャック18を有している。下部電極16は、略円板形状を有しており、導電性を有している。下部電極16は、例えばアルミニウム製である。
【0024】
下部電極16には、高周波電源32が整合器34を介して電気的に接続されている。高周波電源32は、イオン引き込み用の所定の高周波数(例えば、2MHz〜27MHz)の高周波電力、即ち高周波バイアス電力を下部電極16に印加する。
【0025】
一実施形態においては、下部電極16の内部には、冷媒流路16pが形成されており、冷媒流路16pには、冷媒入口配管、冷媒出口配管が接続され得る。載置台14は、冷媒流路16pの中に適宜の冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、下部電極16及び静電チャック18を所定の温度に制御可能な構成とされている。
【0026】
プラズマ処理装置10では、下部電極16の上面に静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、略円板状の部材であり、絶縁層18a、及び給電層18bを有している。絶縁層18aはセラミック等の絶縁体により形成される膜であり、給電層18bは、絶縁層18aの内層として形成された導電性の膜である。給電層18bには、スイッチSWTを介して直流電源56が接続されている。直流電源56から給電層18bに直流電圧が与えられると、クーロン力が発生し、当該クーロン力によって被処理体Wが静電チャック18上に吸着保持される。
【0027】
一実施形態においては、静電チャック18の内部には、加熱素子であるヒータHTが埋め込まれていてもよい。この実施形態では、静電チャック18は、ヒータHTにより、被処理体Wを所定温度に加熱できるように構成されている。このヒータHTは、配線を介してヒータ電源HPに接続されている。
【0028】
プラズマ処理装置10は、ガス供給ライン58及び60、並びに、伝熱ガス供給部62及び64を更に備え得る。伝熱ガス供給部62は、ガス供給ライン58に接続されている。このガス供給ライン58は、静電チャック18の上面まで延びて、当該上面の中央部分において環状に延在している。伝熱ガス供給部62は、例えばHeガスといった伝熱ガスを、静電チャック18の上面と被処理体Wとの間に供給する。また、伝熱ガス供給部64はガス供給ライン60に接続されている。ガス供給ライン60は、静電チャック18の上面まで延びて、当該上面においてガス供給ライン58を囲むように環状に延在している。伝熱ガス供給部64は、例えばHeガスといった伝熱ガスを、静電チャック18の上面と被処理体Wとの間に供給する。
【0029】
プラズマ処理装置10は、筒状保持部20及び筒状支持部22を更に備え得る。筒状保持部20は、下部電極16の側面及び底面の縁部に接して、当該下部電極16を保持している。筒状支持部22は、処理容器12の底面から垂直方向に延在し、筒状保持部20を介して下部電極16を支持している。プラズマ処理装置10は、この筒状保持部20の上面に載置されるフォーカスリングFRを更に備え得る。フォーカスリングFRは、例えば、石英から構成され得る。
【0030】
一実施形態においては、処理容器12の側壁と筒状支持部22との間には、排気路24が設けられている。排気路24の入口又はその途中には、バッフル板25が取り付けられている。また、排気路24の底面には、排気口26aが設けられている。排気口26aは、処理容器12の底面に嵌め込まれた排気管26によって画成されている。この排気管26には、排気装置28が接続されている。排気装置28は、真空ポンプを有しており、処理容器12内の処理空間Sを所定の真空度まで減圧することができる。
【0031】
プラズマ処理装置10は、更に、処理容器12内にシャワーヘッド38を備えている。シャワーヘッド38は、処理空間Sの上方に設けられている。シャワーヘッド38は、上部電極40及び電極支持体42を含んでいる。
【0032】
上部電極40は、略円板形状を有する導電性の板である。上部電極40には、複数のガス通気孔40hが形成されている。上部電極40は、電極支持体42によって着脱可能に支持されている。電極支持体42の内部には、バッファ室42aが設けられている。プラズマ処理装置10は、ガス供給部44を更に備えており、バッファ室42aのガス導入口42bにはガス供給導管46を介してガス供給部44が接続されている。ガス供給部44は、処理空間Sに第1のガス、第2のガス、及び第3のガスを供給し得る。
【0033】
一実施形態においては、ガス供給部44は、ガス源70a、バルブ70b、流量制御器70c、ガス源72a、バルブ72b、流量制御器72c、ガス源74a、及び、バルブ74b、流量制御器74cを有している。ガス源70aは、第1のガスのガス源である。この第1のガスは、プラズマ処理装置10が被エッチング層、即ち、多結晶シリコン層用をエッチングするためのガスであり、一実施形態においては、SF
6、ClF
3及びF
2の少なくとも何れかを含有するガスである。ガス源70aは、バルブ70b及びマスフローコントローラといった流量制御器70cを介して、ガス供給導管46に接続されている。
【0034】
ガス源72aは、第2のガスのガス源である。この第2のガスは、被エッチング層である多結晶シリコン層に対して堆積物を形成するためのガスである。第2のガスは、ハイドロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロハイドロカーボンの少なくとも何れかを含有するガスである。一実施形態では、CH
4、CH
3F、C
4F
6、及びC
4F
8の少なくとも何れかを含有するガスであり得る。ガス源72aは、バルブ72b及びマスフローコントローラといった流量制御器72cを介して、ガス供給導管46に接続されている。
【0035】
また、ガス源74aは、第3のガスのガス源である。この第3のガスは、第1のガスに添加され得るガスであり、一実施形態においては、O
2ガスである。ガス源74aは、バルブ74b及びマスフローコントローラといった流量制御器74cを介して、ガス供給導管46に接続されている。
【0036】
電極支持体42には、複数のガス通気孔40hにそれぞれ連続する複数の孔が形成されており、当該複数の孔はバッファ室42aに連通している。したがって、ガス供給部44から供給されるガスは、バッファ室42a、ガス通気孔40hを経由して、処理空間Sに供給される。
【0037】
また、上部電極40には、高周波電源35が整合器36を介して電気的に接続されている。高周波電源35は、一実施形態においては、プラズマ生成用の所定の高周波数(例えば、27MHz以上)の高周波電力を上部電極40に印加する。高周波電源35によって上部電極40に高周波電力がそれぞれ与えられると、互いに対向して配置される下部電極16と上部電極40との間の空間、即ち、処理空間Sには高周波電界が形成され、第1のガス及び第2のガスのプラズマが励起される。したがって、一実施形態においては、下部電極16、上部電極40、及び高周波電源32は、一実施形態において、プラズマを発生させる手段を構成している。
【0038】
一実施形態においては、処理容器12の天井部に、環状又は同心状に延在する磁場形成機構48が設けられている。この磁場形成機構48は、処理空間Sにおける高周波放電の開始(プラズマ着火)を容易にして放電を安定に維持するよう機能する。
【0039】
さらに、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部66を更に備えている。この制御部66は、排気装置28、スイッチSWT、高周波電源32、整合器34、高周波電源35、整合器36、ガス供給部44、伝熱ガス供給部62及び64、並びにヒータ電源HPに接続されている。制御部66は、排気装置28、スイッチSWT、高周波電源32、整合器34、高周波電源35、整合器36、ガス供給部44、伝熱ガス供給部62及び64、並びにヒータ電源HPのそれぞれに制御信号を送出する。制御部66からの制御信号により、排気装置28による排気、スイッチSWTの開閉、高周波電源32からの電力供給、整合器34のインピーダンス調整、高周波電源35からの電力供給、整合器36のインピーダンス調整、ガス供給部44による第1のガス、第2のガス、及び添加ガスの供給及びそれらの流量、伝熱ガス供給部62及び64それぞれによる伝熱ガスの供給、ヒータ電源HPからの電力供給が制御される。
【0040】
このプラズマ処理装置10では、被処理体Wを処理するために、ガス源70a、72a、74aのうち選択された一以上のガス源から処理容器12内にガスが供給される。そして、上部電極40にプラズマ生成用の高周波電力が与えられることにより、下部電極16と上部電極40との間に高周波電界が発生する。この高周波電界により、処理空間S内に供給されたガスのプラズマが生成される。そして、このように発生するガスのプラズマにより、被処理体Wの被エッチング層に対するエッチングといった処理が行われる。また、下部電極16に高周波バイアス電力が与えられることによりイオンが被処理体Wに引き込まれる。これにより、被処理体Wの被エッチング層のエッチングが促進される。
【0041】
再び
図1を参照する。以下、上述したプラズマ処理装置10を用いて実施し得る方法M1について、
図1に加えて
図3〜
図5を参照して、より詳細に説明する。
図3は、方法M1の各工程を具体的に説明するためのタイミングチャートである。なお、
図4及び
図5には、被処理体Wの一部分の断面が示されている。
【0042】
図1に示す方法M1では、まず、工程S1において被処理体Wが準備される。この被処理体Wは、
図4(a)に示すように、被エッチング層EL及びマスクMを有している。被エッチング層ELは、例えば多結晶シリコン層である。マスクMは、被エッチング層EL上に形成されており、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンから構成されている。
【0043】
次いで、方法M1においては、被処理体Wの被エッチング層ELをエッチングする工程S2が行われる。工程S2は、工程S2a(ブレークスルー工程)及び工程S2b(エッチング工程)を含んでいる。工程S2aにおいては、被処理体Wをプラズマ処理装置10の静電チャック18上に載置し、被処理体Wの被エッチング層ELをクリーニングする。被エッチング層ELのクリーニングは、処理容器12内において、ガス源70aから供給される第1のガスのプラズマを生成し、当該プラズマに
図4(a)に示した被処理体Wを晒すことにより実施される。第1のガスとしては、例えば、SF
6、ClF
3、F
2の少なくとも何れかを含有するガスが用いられる。
【0044】
工程S2aにおける処理条件について説明する。工程S2aおいては、
図3に示すように、ガス源70aから第1のガスを流量gfe1で供給しながら、排気装置28により処理容器12内を排気することにより、処理容器12内の圧力が第1の圧力PR1に設定される。第1のガスとしてSF
6を用いた場合には、流量gfe1は例えば200sccm程度とすることができる。一実施形態では、第1の圧力PR1は、例えば150mTorr以上の圧力とすることができる。また、工程S2aにおいては、高周波電源35からプラズマ生成用の高周波電力HF1が上部電極40に印加され、高周波電源32から第2のバイアス電力LF2が下部電極16に印加される。この高周波電力HF1は、例えば3000W程度とすることができる。第2のバイアス電力LF2は、例えば100W以上のバイアス電力であり、一実施形態では500W程度とすることができる。
【0045】
続く工程S2bでは、被処理体Wの被エッチング層ELをエッチングすることにより凹部が形成される。工程S2bにおける被エッチング層ELのエッチングは、処理容器12内において、ガス源70aから供給される第1のガスのプラズマを生成し、当該プラズマに工程S2aのエッチングが行われた被処理体Wを晒すことにより実施される。一実施形態においては、工程S2において、第3のガスであるO
2ガスが第1のガスに添加されてもよい。O
2ガスが第1のガスに添加されることにより、被エッチング層ELをエッチングする際に被エッチング層ELにシリコン酸化物が形成されるので、より高いアスペクト比の形状を形成することができる。
【0046】
工程S2bにおける処理条件について説明する。工程S2bおいては、ガス源70aから第1のガスを流量gfe1で供給しながら、排気装置28により処理容器12内を排気することにより、処理容器12内の圧力が第1の圧力PR1に設定される。また、工程S2bにおいては、高周波電源35から高周波電力HF1が上部電極40に印加され、高周波電源32から第1のバイアス電力LF1が下部電極16に印加される。この第1のバイアス電力LF1は、第2のバイアス電力LF2よりも低い高周波バイアス電力であり、その電力は例えば50W程度とすることができる。
【0047】
この工程S2bにより、
図4(b)に示すように、第1のガスの解離により発生するフッ素イオンやフッ素ラジカルといったフッ素の活性種(図中、円で囲まれた「F」がフッ素の活性種を示している)が、被エッチング層のシリコンと反応し、被エッチング層ELがエッチングされる。以下では、工程S2bにより形成された凹状の領域をエッチング領域ERと称する。エッチング領域ERは、側壁SW及び底面BPによって画成されている。
【0048】
次いで、方法M1では、被エッチング層ELの表面の少なくとも一部に保護膜PMを形成する工程S3が行われる。工程S3は、工程S3a(第2の成膜工程)、工程S3b(第3の成膜工程)、及び工程S3c(第1の成膜工程)を含んでいる。工程S3a、工程S3b、及び工程S3cにおける保護膜PMが形成は、処理容器12内においてガス源72aから供給される第2のガスのプラズマを生成し、当該プラズマに工程S2のエッチングが行われた被処理体Wを晒すことにより実施される。
【0049】
工程S3aにおける処理条件について説明する。工程S3aにおいては、
図3に示すように、ガス源72aから第2のガスを流量gfd1で供給しながら、排気装置28により処理容器12内を排気することにより、処理容器12内の圧力が第1の圧力PR1に設定される。例えば、第2のガスとしてC
4F
8ガス及びC
4F
6ガスを含有するガスを用いた場合には、流量gfd1は例えば330sccm(C
4F
8ガスの流量:300sccm、C
4F
6ガスの流量:30sccm)程度とすることができる。また、工程S3aにおいては、高周波電源35から高周波電力HF2が上部電極40に印加され、高周波電源32から第1のバイアス電力LF1が下部電極16に印加される。この高周波電力HF2は、例えば1500W程度とすることができる。
【0050】
次に、工程S3bにおける処理条件について説明する。工程S3bにおいては、
図3に示すように、ガス源72aから第2のガスを流量gfd1で供給しながら、排気装置28により処理容器12内を排気することにより、処理容器12内の圧力が第1の圧力PR1に設定される。また、工程S3bにおいては、高周波電源35から高周波電力HF2が上部電極40に印加され、高周波電源32から第2のバイアス電力LF2が下部電極16に印加される。即ち、工程S3aから工程S3bに移行することにより、下部電極16に印加されるバイアス電力が第1のバイアス電力LF1から第2のバイアス電力LF2に増加される。
【0051】
この工程S3a及び工程S3bでは、第2のガスから解離したハイドロカーボン、フルオロカーボン、又はフルオロハイドロカーボンの活性種が被エッチング層ELに堆積する。これにより、側壁SW及び底面BPに保護膜PMが形成される。また、工程S3a及び工程S3bでは、処理容器12内が相対的に高圧な第1の圧力PR1に設定されることにより、保護膜PMの形成が促進される。なお、工程S3aでは、相対的に低いバイアス電力である第1のバイアス電力LF1が印加されることにより、処理容器12内に残留したフッ素の活性種よって保護膜PMが除去されることが防止される。
【0052】
次に、工程S3cにおける処理条件について説明する。工程S3cでは、
図3に示すように、ガス源72aから第2のガスを流量gfd1で供給しながら、排気装置28により処理容器12内を排気することにより、処理容器12内の圧力が第2の圧力PR2に設定される。この第2の圧力PR2は、第1の圧力PR1よりも低い圧力であり、一実施形態では、75mTorr以下の圧力とすることができる。また、工程S3cにおいては、高周波電源35から第2の高周波電力HF2が上部電極40に印加され、高周波電源32から第2のバイアス電力LF2が下部電極16に印加される。即ち、工程S3bから工程S3cに移行することにより、処理容器12内の圧力が第1の圧力PR1から第2の圧力PR2に低下される。
【0053】
この工程S3cでは、処理容器12内の圧力が相対的に低い圧力である第2の圧力PR2に設定され、下部電極16に相対的に高いバイアス電力であるLF2が印加される。このような工程S3cでは、第2のガスに含まれるハイドロカーボン、フルオロカーボン、又はフルオロハイドロカーボンの活性種が堆積することにより、側壁SW及び底面BPに保護膜PMが形成される。また、これと共に工程S3cでは、
図4(c)に示すように、第2のガス中のハイドロカーボン、フルオロカーボン、又はフルオロハイドロカーボンが解離して生じた高エネルギーのイオン(図中、円がハイドロカーボン、フルオロカーボン、又はフルオロハイドロカーボンが解離して生じたイオンを示している)がエッチング領域ER内に垂直に引き込まれる。これにより、高エネルギーのイオンの底面BPに衝突し、イオンスパッタリング効果により、底面BPに形成された保護膜が除去される。よって、工程S3cにおいては、底面BPにおいて保護膜PMの形成が抑制される。なお、上述のように処理条件が設定された工程S3cにおいては、底面BPにおいて、イオンのスパッタリングによる保護膜PMの除去作用が保護膜PMの堆積速度よりも優位となる。これにより、底面BPにおいては保護膜PMが形成されずに多結晶シリコン層が露出される。
【0054】
一方、側壁SWにおいては、保護膜PMに衝突するイオンの量が底面BPに形成された保護膜PMに衝突するイオンの量よりも少ないので、保護膜PMの堆積速度がイオンのスパッタリングによる保護膜の除去作用よりも優位となり、保護膜PMが形成されることになる。したがって、この工程S3cにより、
図4(c)に示すように、底面BPに保護膜PMが形成されることなく、側壁SWに保護膜PMが形成される。
【0055】
そして、方法M1では、更に工程S2が行われることにより、被エッチング層ELがエッチングされる。即ち、工程S2aが行われることにより、底面BPがクリーニングされる。また、工程S2bが行われることにより、
図5(a)に示すように、多結晶シリコン層が露出した底面BPが深さ方向にエッチングされる。この際、側壁SWのうち保護膜PMが形成された部分はエッチングの進行がしない。その後、
図5(b)に示すように、更に工程S3が行われることにより、側壁SWに保護膜PMが形成される。続いて、
図1に示すように、所定サイクル数の工程S2及び工程S3の繰り返しが行われたか否かが、判定される(
図1の参照符号S4)。工程S2及び工程S3の繰り返しの回数が所定サイクル数に満たないときには、工程S2及び工程S3が更に行われる。一方、工程S2及び工程S3の繰り返しの回数が所定サイクル数行われている場合には、方法M1が終了する。このように工程S2及び工程S3が所定サイクル数繰り返されることにより、
図5(c)に示すような高アスペクト比のエッチング領域ERが形成される。
【0056】
以上説明したように、方法M1の工程S3cでは、処理容器12内の圧力が相対的に低い圧力である第2の圧力PR2に設定され、下部電極16に相対的に高いバイアス電力である第2のバイアス電力LF2が印加される。これにより、第2のガスに含まれるハイドロカーボン、フルオロカーボン、又はフルオロハイドロカーボンが解離して生じるイオンが高いエネルギーでエッチング領域ER内に引き込まれる。そして、イオンのスパッタリング効果によって底面BPに形成された保護膜が選択的に除去される。これにより、工程S3cでは、底面BPに保護膜PMが形成されることが抑制されつつ、側壁SWに保護膜PMが形成される。そして、その後に工程S2bが行われることにより、側壁SWにおいてエッチングに寄与するフッ素の活性種が被エッチング層ELに接触することが保護膜PMにより防止され、底面BPにおいてはフッ素の活性種が被エッチング層ELのシリコンと活発に反応する。このため、方法M1では、被エッチング層ELの側方にはエッチングの進行が抑制され、被エッチング層ELの深さ方向にはエッチングが促進される。また、この工程S2bでは、相対的に低いバイアス電力である第1のバイアス電力LF1を下部電極16に印加してエッチングが行われるので、フッ素のイオンによって側壁SWに形成された保護膜PMが除去されることが抑制される。したがって、方法M1によれば、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる。
【0057】
なお、一実施形態においては、工程S2及び工程S3を含むシーケンスの繰り返しの途中から、工程S2a、工程S3b、及び工程S3cにおいて、下部電極16に印加される第2のバイアス電力を徐々に増加させてもよい。また、一実施形態においては、工程S3a、工程S3b、及び工程S3cにおいて、処理容器内に供給される第2のガスの流量を徐々に減少させていってもよい。例えば、エッチング領域ERのアスペクト比が所定の値を超えた以降は、工程S2a、工程S3b、及び工程S3cにおいて下部電極16に印加される第2のバイアス電力が最終的に1000Wになるように、下部電極16に印加されるバイアス電力を徐々に増加させてもよい。また、それと共に、工程S3a、工程S3b、及び工程S3cにおいて処理容器12内に供給される第2のガスの流量を330sccmから305sccm(C
4F
8ガスの流量:300sccm、C
4F
6ガスの流量:5sccm)になるよう、処理容器12内に供給される第2のガスの流量を徐々に減少させてもよい。
【0058】
被エッチング層ELに高アスペクト比の形状を形成する際に、処理条件を一定とした場合には、深さ方向に向かうにつれて先細った形状のエッチング領域ERが被エッチング層ELに形成される傾向がある。これは、アスペクト比が大きくなるにつれて、底面BPに供給されるエッチングに寄与する活性種の量が、底面BPに供給される保護膜PMの形成に寄与する活性種の量と比べて低下することに起因して生じる現象である。このように、シーケンスの繰り返しの途中からは、工程S3a、工程S3b、及び工程S3において処理容器12内に供給される第2のガスの流量を減少させることにより、底面BPに供給される保護膜PMの形成に寄与する活性種の量を減らすことができるので、エッチング領域ERの形状が先細った形状になることを防止することができる。また、工程S2a、工程S3b、及び工程S3cにおいて下部電極16に印加されるバイアス電力を増加させることにより、第2のガスに由来するイオンによるスパッタリング効果が大きくすることができる。これにより、底面BPに保護膜PMが形成されることがより抑制される。したがって、このような実施形態によれば、高いアスペクト比の形状を高いエッチングレートで形成することができる。
【0059】
以下、上述した種々の実施形態の方法を用いた実験例について説明する。
【0060】
実験例1では、処理容器12内の圧力及び下部電極16に印加されるバイアス電力を変化させたときの凹部の壁面に形成される保護膜PMの膜厚について評価した。実験例1では、
図6に示すような、深さ100μmの穴が形成されたサンプルに対して保護膜PMを形成した。そして、実験例1の処理後の被エッチング層ELの断面のSEM写真を取得し、穴の側壁SWの最下部の領域A、及び穴の底面BP上の領域Bに形成された保護膜PMの厚さを観測した。実験例1では、以下のような条件の下で、被エッチング層ELの表面に保護膜を形成した。実験例1では、処理容器12内に供給する第2のガスとしてC
4F
8ガスを用いた。
【0061】
(実験例1の処理条件)
上部電極40に印加される高周波電力:2000W
C
4F
8ガスの流量:200sccm
処理時間:360秒
【0062】
実験例1は、処理容器12内の圧力を50mTorr、100mTorrに変化させ、下部電極16に印加されるバイアス電力を0W、100W、200Wに変化させた上で実施した。その結果、処理容器12内の圧力を50mTorrとし、下部電極16に印加されるバイアス電力を100Wとした場合、及び処理容器12内の圧力を50mTorrとし、下部電極16に印加されるバイアス電力を200Wとした場合には、領域Bに保護膜PMが形成されないことが確認された。また、この場合であっても、側壁SW上に位置する領域Aには十分な厚さの保護膜PMが形成されることが確認された。一方、処理容器12内の圧力を50mTorrとし、下部電極16に印加されるバイアス電力を0Wとした場合、及び処理容器12内の圧力を100mTorrとし、下部電極16に印加されるバイアス電力を0W、100W、若しくは200Wとした場合には、領域Bに領域Aよりも厚い保護膜PMが形成されることが確認された。この実験例1の結果から、処理容器12内を低圧に設定し、且つ下部電極16に大きなバイアス電力を印加することにより、被エッチング層ELの底面BPに保護膜PMが形成されることを抑制しながら、側壁SWに保護膜PMを形成することができることが確認された。
【0063】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、方法M1の実施に用いるプラズマ処理装置は、上述したプラズマ処理装置10に限定されるものではない。方法M1の実施には、下部電極にプラズマ生成用の高周波電力を供給するタイプのプラズマ処理装置を用いることも可能である。また、平行平板型のプラズマ処理装置の他に、誘導結合型のプラズマ処理装置、又は、プラズマ源としてマイクロ波を用いるプラズマ処理装置を、方法M1の実施に用いることも可能である。
【0064】
また、方法M1においては、工程S2a、工程S3a、及び工程S3bは付加的な工程であり必須の工程ではない。少なくとも工程S2b及び工程S3cが行われれば、被エッチング層ELの底面BPに保護膜PMが形成されることを抑制しながら側壁SWに保護膜PMを形成することが可能である。