(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
即席麺類や米飯等に添えて用いられるかき揚げ天ぷらは、数種類の細く切った野菜類あるいは小エビ等を主材とする種材を、小麦粉、澱粉等からなる衣でつないで、食用油で揚げたものである。かき揚げ天ぷらの製造方法としては、野菜やシーフードなどの大量の具材と衣液とを混合したバッターを円盤状のリテーナーに供給し、油槽に浸漬する方法が一般的に行われている。
【0003】
ここで、バッターは粘性があるため、リテーナーにバッターを供給しても均一の厚みに広がることはなく、場所によって厚みが異なってしまう。そして、この状態で揚げると、熱の通りにムラができるとともに、見た目の悪いかき揚げができてしまう。そのため、バッターを押圧し、均一の厚みに均すことが通常行われている。
【0004】
バッターを均す方法としては、板などを用いて押圧することが多い。しかし、バッターは付着しやすいものであり、均一の厚みに均すことができないばかりか、かき揚げごとに重量のばらつきが出てしまうといった問題がある。
【0005】
これに対して、天ぷら用食材の付着しにくいテフロン(登録商標)の板に凹溝を設け、天ぷら用食材との接触面積を減らすとともに、エアを噴出して天ぷら用食材の付着を防止する押えパッドが開示されている(特許文献1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の押えパッドは、あくまで天ぷら用食材を均一の厚みに均すためのものであって、手造り感を付与することは意図していない。そのため、かき揚げに手造り感を付与する場合には、別工程を設けなければならないといった問題がある。また、エアの供給手段が必須であり、設備が煩雑になるといった問題もある。
【0008】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、リテーナーに供給されたバッターを略均一の厚さに均すとともに、手造り感を付与することができる成形板を提供することを目的とする。また、バッターの成形時に、煩雑な装置を設けることなく、バッターの付着を防止することができる成形板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、リテーナーに供給されたバッターを成形するための成形板であって、成形板の少なくとも片面に複数の溝を設けることで、複数の凹凸部を形成した成形板を提供する。
【0010】
かかる構成によれば、成形板で押圧することで、バッターをほぼ均一な厚さに均すことができる。また、成形板表面に凹凸部が設けられているのでバッター表面に手造りしたような凹凸を形成することができる。
【0011】
前記した構成において、凸部の形状を錐台にすることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、より手造りしたような凹凸を形成することができる。
【0013】
前記した構成において、隣り合う錐台の面同士がなす角度が75度〜120度であることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、バッター中の具材が成形板の溝に嵌ることを抑制することができる。
【0015】
前記した構成において、錐台の高さが、5〜10mmであることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、凸部の先端がリテーナーまで通り抜けることなく、バッター表面に手造りしたような凹凸感を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形板にバッターが付着するのを防ぎつつ、バッターを略均一な厚さに均すことができる。したがって、揚げムラもなく重量のばらつきがほとんどないかき揚げが提供できる。また、成形板の凹凸によって、手造り感も同時に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の成形板が設置されたかき揚げ製造装置の概略図である。
図2は、本発明にかかる成形板の説明図であって、(a)が平面図、(b)が(a)のA−A断面矢視図である。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0020】
まず、本発明の成形板を備えたかき揚げ製造装置について説明する。
図1に示すかき揚げ製造装置1は、いわゆる衣液と具材が混ぜ合わされたバッターを所定量ずつリテーナーに投入した後、油槽で揚げることによってかき揚げを製造するための装置である。そして、このかき揚げ装置1には、リテーナーに投入されたバッターを成形するための成形装置が設置されている。
【0021】
図1に示すように、かき揚げ製造装置1は、主に、バッター供給装置10と、バッター成形装置20と、バッターを揚げるための油槽30と、リテーナーを搬送するための搬送装置40とを備えて構成されている。
【0022】
バッター供給装置10は、搬送装置40上に並んだリテーナーにバッターを供給すための装置であり、混合されたバッターを貯留するホッパー11と、ホッパー11内のバッターをリテーナーに供給する充填ノズル部12を有している。
【0023】
ホッパー11は、バッターを貯留しておくためのものである。バッターはホッパー11内で具材と衣液を混ぜて作成してもよいし、予め作成しておいたバッターをホッパー11内に供給しても良い。
【0024】
充填ノズル部12は、ホッパー11内のバッターを連続駆動しているリテーナー内に供給するための装置である。充填ノズル部12は、ホッパー11下部に設けられた配管の先端に配置されている。また、充填ノズル部12の開閉はシステム制御されており、リテーナーに対して定量的にバッターを供給することができる。
なお、定量的にバッターを供給する方法としては、重量で供給量を制御する方法もある。
【0025】
成形装置20は、バッター供給装置10によってリテーナーに供給されたバッターを一定の厚みに成形する装置であるとともに、手造りしたかのような凹凸形状をバッターの表面に付与する機能も有している。
【0026】
図1に示すように、成形装置20は、バッターを押圧する成形板21と、該成形板21を上下に移動させてリテーナー中のバッターに成形板21を押し当てることができるようにするための駆動手段22と、を備えて構成される。
【0027】
成形板21は、平面視円形の板状部材であって、バッター供給装置10から供給されるバッターの厚みを均一に整えるための部材である。成形板21は一列あたり複数個配置されている。
【0028】
成形板21は押圧した時に変形しない程度の剛性を備えている素材で構成されている。成形板21の素材としては、例えば、鉄、ステンレス、銅などの金属や、プラスチック、テフロン(登録商標)などの合成樹脂が上げられる。
【0029】
ここで、
図2(a)及び(b)に示すように、成形板21の片面には縦横で直行する複数の凹部23(以下、「溝23」と言う。)と、溝23によって囲まれた複数の凸部24が形成されている。
【0030】
溝23は、バッターを押圧した際に、バッターと成形板21との間の空気を外部に排出する役割を果たす。
【0031】
図2(b)に示すように、各溝23は直行するように等間隔に設けられており、バッターとの接触面に向かって溝幅が漸増している。また、溝23は成形板21の周縁部にまで到達している。そして、複数の溝23を設けることによって、後述する複数の凸部24が形成されている。
なお、溝23の溝幅は、バッターとの接触面に向かって漸増する形状に限られず、等間隔であっても良い。また、溝は成形板の両面に設けられていてもよい。
【0032】
凸部24は、バッターを押圧した際に、バッターの表面に手造りしたかのような凹凸形状を付与する。
【0033】
本実施例において、凸部24は角錐台形状である。より詳しくは、凸部24は溝23を設けることによって形成されたものであり、規則正しく配置されている。また、角錐台における上面及び底面の中心が一致している。
【0034】
ここで、凸部24の高さhは5〜10mmの範囲であることが好ましい。5mm未満だと、押圧した際に溝23のすべてがバッターで埋まってしまい、バッターと成形板21との間の空気を排出することができない。一方、高さhが10mmを超えてしまうと、凸部24の先端がリテーナーまで突き抜けてしまうか、高さを出すために成形板21を大きくせざるをえず、成形しづらくなるという問題がある。
【0035】
また、凸部24の一辺wは3mm以上であることが好ましい。3mm未満だと凹凸が小さく手造り感を付与できない。
【0036】
さらに、隣り合う角錐台の面同士がなす角度αが75°〜120°の範囲であることが好ましい。75°未満だと凸部24同士の距離が近くなり、手造り感を付与できないばかりか、具材が面と面の間に挟まりこみやすいという問題がある。また、120°より大きいと成形板21上の凸部24の数が足りないか、凸部24の高さが十分確保できず、バッターが付着する恐れがある。
【0037】
なお、凸部24の形状は、角錐台形状に限られず、円錐、円錐台、円柱、多角錐、多角錐台、多角柱などであってもよく、これらの組み合わせでも良い。また、各凸部24において、上面と底面の中心がずれていても良い。
【0038】
駆動手段22は、後述する搬送手段40にあわせて、成形板21を上下に復動させるために設けられる。本実施例においては、駆動手段22と成形板21は、成形板21の凹凸部が設けられている面とは反対側の面でシリンダ等を介して接合している。
【0039】
駆動手段22については、成形板21を上下に複動させることができれば、構成は特に制限されない。駆動手段22の具体例としては、無端回動コンベアやモータなどが挙げられる。
【0040】
無端回動コンベアを用いる場合、コンベアの軌道の一部に後述する搬送手段40へ向けて突出した区間を設ければよい。これにより、コンベアの軌道に従って成形板21が移動すると、突出した区間を通過するときに成形板21が下降する。そして、成形板21が下降することで、バッターを押圧し成形することができる。
【0041】
一方、モータを用いる場合、カムを用いればよい。カムを用いることで、成形板21を上下に駆動させることができる。
【0042】
なお、コンベア、モータ、カム等は既存の技術を用いることができ、特に制限されない。
【0043】
油槽30は、成形されたバッターを油揚げするための装置である。油槽30は、移送手段40の進行方向上であって、バッター供給装置10、成形装置20の後に設けられている。
【0044】
油槽30中には、植物性油脂、動物性油脂またはこれらの組み合わせで満たされている。また油槽30中の油脂は、ヒーターなどによって適温に保たれている。
【0045】
油槽30の幅と長さは特に制限されないが、複数列のリテーナーが一度に入る幅を有し、揚げ時間が十分に確保できる長さであることが好ましい。
【0046】
移送手段40は、リテーナーを連続的に移動させ、供給されたバッターを各工程に搬送するための装置である。移送手段40は、例えば、コンベアとリテーナーとで構成されている。コンベア上には、コンベアの幅方向に成形装置20の成形板数に対応する複数個のリテーナーが設けられ、かつ、コンベアの周方向に対して等間隔に複数設けられている。
【0047】
コンベアはリテーナーを搬送するための装置である。コンベアは無端回動であり、連続駆動しながら各工程を周回するようになっている。
【0048】
図1に示すように、移送手段の一区間が油槽30中に進入することで、リテーナーは油槽30中に浸漬するようになっている。移送手段40としては、単一のコンベアでも良いし、複数のコンベアを組み合わせてもよい。たとえば、油槽30中に別のコンベアを設け、リテーナーの受渡を行うようにしても良い。
【0049】
リテーナーはバッターの受け皿であるとともに、かき揚げなどの型として機能する。リテーナーはコンベア上に設けられており、コンベアの駆動に従い、各工程を周回する。
【0050】
リテーナーの素材・形状等は特に制限されないが、耐熱性、耐久性などの観点から鉄製、スチール製、ステンレス製などが好ましい。
【0051】
次に、かき揚げ製造装置1の動作およびかき揚げの製造方法について説明する。
【0052】
まず、ホッパー11内のバッターが、充填ノズル部12から移送手段40のリテーナーに供給される。このとき、複数のリテーナーに対して一つの充填ノズル部12でバッターを供給しても良いが、一列当たりのリテーナーの数に対応した数だけ充填ノズル部12が設けられていることが好ましい。これにより、一度に大量生産が可能となる。また、充填ノズル部12の開閉時間はシステムによって制御されている。これにより、各リテーナーに対して略同じ量のバッターを供給することができる。さらに、充填ノズル部12の開閉は、リテーナーの動きに合わせて行われる。なお、供給されるバッターは空気が混入していないことが好ましい。空気が混入していると、バッターの供給量にばらつきが生じるためである。
【0053】
リテーナーに供給されたバッターは、次に成形工程に移送される。成形工程では、移送手段40の上部に設けられた成形装置20から成形板21が下降し、リテーナー中のバッターを押圧する。ここで、成形装置20の駆動手段22であるコンベアと成形板21とはシリンダによって連結されており、コンベアの周回とともに成形板21も周回するようになっている。そして、成形装置20のコンベアの一部は下方に突き出た(すなわち移送手段40側に突き出た)区間を有しており、この区間を移動する際に成形板21が最も下降した状態を維持するようになっている。さらに、成形装置20のコンベアも移送手段のコンベアと同調するように連続駆動しているため、成形板21が再度上昇しない限りバッターを押圧し続けることとなる。これにより、継続的な押圧が可能となり、バッターを均一な厚みに均すことができる。
【0054】
成形板21は、リテーナーの動きと同調するように下降し、リテーナーの中央に供給されたバッターと接触する。そして、そのまま下降を続け、バッターを押圧する。バッターは成形板21に押圧されることでリテーナー中に広がり均一な厚みに成形される。また、成形板21によって、バッターの表面には凹凸が設けられる。このとき、成形板21には周縁部まで到達する溝が設けられているため、押圧しても成形板21とバッターの間の空気が溝23を通じて外に排出される。これにより、成形板21とバッターとの間に真空ができず、成形板21へのバッターの付着を防止することができる。また、成形板21への付着を防ぐことができるので、重量のばらつきや厚みのばらつきを抑えることができる。さらに、バッターの表面に設けられた凹凸によって手造り感を奏することができる。つまり、従来のように別装置を設けることなく、成形と手造り感の付与を一度に行うことができる。
【0055】
次に、成形装置20で成形されたバッターは油揚げ工程に移送される。ここで、移送手段40の一区間は油槽30中に進入するように配置されている。これにより、リテーナーが油槽30中に導かれ、バッターは油揚げされる。かき揚げは、リテーナーを反転するなどしてリテーナーから取り出され、別の移送手段によって油槽から引き揚げられる。一方、空になったリテーナーは周回して、再度かき揚げ製造工程に使用される。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施例に限定されない。例えば、
図3に示すように、成形板の各凸部において、上面と底面の中心がずれた形状としても良い。これにより、より手造り感を増すことが出来る。
【0057】
また、前記実施例では各凹部が等間隔に設けられ、かつ、各凹部同士が直行する例を示したが、これに限られず、間隔が不揃い、及び/又は、直行していない形状としても良い。この場合においても、本発明の目的を達成することができる。
【0058】
さらに、前記実施例では、かき揚げ製造装置に成形板を用いた場合を例に説明したが、これに限られず、手作業で行う場合に用いても良い。この場合においても、かき揚げの成形を簡便に行うことができる。