(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の脚を有する脚構造体の上端部に、トロリが横行するブーム及びガーダを有する上架構造体が接合されたクレーンを製造する際に、前記脚構造体の上端部に前記上架構造体を上架するクレーンの上架構造体の上架システムにおいて、
前記脚の数と同数の上架装置を有し、該上架装置が、前記脚に固定された少なくとも一つの定滑車と前記上架構造体に固定された少なくとも一つの動滑車を含む組み合わせ滑車と、該組み合わせ滑車に巻き回された鋼索と、該鋼索を巻き取る巻取装置と、前記定滑車と前記動滑車のいずれか一つの回転数を検知する回転数検知手段と、前記定滑車と前記動滑車との間の上下距離を検出する距離検出手段と、を備えると共に、
それぞれの上架装置の回転数検出手段と距離検出手段とに接続される制御部を備え、
前記制御部が、それぞれの回転数検知手段で検知された前記回転数から、前記巻取装置が巻き取った前記鋼索の巻取量を算出し、該巻取量と前記鋼索の掛け本数とから前記上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを逐次算出し、前記距離検出手段で検出された上下距離に基づいてそれぞれの上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを算出
し、この算出した巻上高さに基づいて、前記巻取量と前記鋼索の掛け本数とから算出した巻上高さを補正し、それぞれの上架装置による補正された巻上高さの差が最小になるように、それぞれの巻取装置を制御する構成であることを特徴とするクレーンの上架構造体の上架システム。
【背景技術】
【0002】
コンテナターミナルなどの港湾で使用される岸壁クレーン、移動型のジブクレーン、アンローダークレーン、及びロープロファイルクレーンなど大型の脚クレーンを製造するには、地上にてブーム、マスト、ガーダ、トロリ、及び機械室などを有する上架構造体を組み立ててから、その上架構造体を、脚を有する脚構造体の上方側に上架して、脚構造体と繋ぎ合わせている。しかし、この上架構造体は数百トンから千トンを超えるものあり、この重量を安全に持ち上げるのは容易ではない。
【0003】
これに関して、千トンクラスの吊り上げ能力を有するフローティングクレーンを用いて上架構造体を吊り上げ、脚構造体と接合する方法や、上架構造体を吊り上げるための上架用構造物を別途設置し、その上架用構造物の上方の四隅にセンターホールジャッキなどの引上装置を設置し、その引上装置により引き上げられるチェーンやガイドロッドが接続された吊具によって上架構造体を上架して、脚構造体と接合する方法が提案されている。
【0004】
しかし、フローティングクレーンを用いる方法では、海上から陸上の構造物を吊り上げるため、海上の波を含めた気象の影響を受けやすいことにより、上架構造体と脚構造体の接合時の位置決めが困難で危険性が高かった。
【0005】
一方、上架用構造物を用いる方法では、上架用構造物を設けるための地面を補強したスペースの確保が必要であった。また、引上装置が上架用構造物の上に設置されていることにより、上架構造体の重量が重くなると引上装置を大型化する必要がある場合に、大型化に伴って引上装置の重量が増加することにより上架用構造物を補強する必要があった。
【0006】
そこで、上架構造体を、脚構造体を利用して一体上架する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この方法は、脚構造体を利用することで、フローティングクレーンや上架用構造物を必要としないが、上架構造体を上架する装置として、センターホールジャッキなどの引上装置を用いることで、上架構造体の重量が重くなった場合には、その引上装置を大型化する必要がある。また、その大型化に伴って装置の重量も増加するので、引上装置を脚構造体の上部に設けた構成では、脚構造体を補強する必要がある。加えて、チェーンやガイドロッドによって上架構造体を引き上げているが、上架構造体の重量が重くなれば、このチェーンやガイドロッドを強化する必要があり、チェーンやガイドロッド自体の重量も重くなる。
【0008】
従って、上架構造体の重量によっては引上装置が大型化することやその大型化に伴う重量が増加することにより、クレーンを製造するコストが増加すると共に、大型化した引上装置を脚構造体に取り付ける作業が難しくなる。
【0009】
更に、このチェーンやガイドロッドは扱い難く、それらを収容する作業や取り付ける作
業が困難であるという問題もある。例えば、チェーンの場合では、曲げ方向が限られているため巻き取ることができないことや引上装置に取り付ける作業が困難であることが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の発明者は、上架構造体を、脚に固定された少なくとも一つの定滑車と上架構造体に固定された少なくとも一つの動滑車を含む組み合わせ滑車と、組み合わせ滑車に巻き回されるワイヤロープと、ワイヤロープを巻き取る巻取装置とを有した複数の上架装置により、脚構造体を利用して上架する方法を提案している。
【0012】
この方法においては、各上架装置が上架構造体を均等に上架しないと、上架構造体を吊り上げる力が均等にならずに、上架構造体を捻る力が発生する。そこで、各上架装置が上架構造体を巻き上げた高さを検出し、各上架装置でその高さを同じにするように巻取装置をフィードバック制御している。
【0013】
この各上架装置が上架構造体を巻き上げた高さを検出する方法には、巻取装置のワイヤドラムの回転数からワイヤロープを巻き取った量を算出し、その量から巻き上げた高さを算出する方法がある。
【0014】
しかし、ワイヤドラムとして多層巻きドラムを使用する場合には、層が変わることで下層に巻き取られたワイヤロープによってドラム径が変化する。そこで、層が変わるタイミングを予測することが必要となるが、ワイヤロープの伸びが完全には予測できないことから、層が変わるタイミングを予測することは困難である。そのため、ワイヤロープを巻き取った量を精度良く検出できない。
【0015】
また、ワイヤロープのロープ径が均一ではないため、層が増えるごとにロープ径の差がドラム径に与える誤差が累積する。これも、ドラム径を精度良く検出できない要因となっている。
【0016】
加えて、上架構造体によっては、組み合わせ滑車に掛け回されるワイヤロープの掛け本数が各上架装置で異なる場合がある。その場合にも、各上架装置の各ワイヤドラムで層が変わるタイミングが完全に異なるため、ワイヤロープを巻き取った量を精度良く検出することが困難になる。
【0017】
一方、上架装置を巻き上げた高さを検出する方法には、定滑車と動滑車との間の距離をレーザー距離計によって検出し、その距離から算出する方法もある。しかし、レーザー距離計は、精度が高い反面、雨、霧、太陽光などの環境を起因とする悪影響を受け易く、常時検出することが出来ない。
【0018】
更に、上架構造体に水平器などの傾きを検出する機器を設けて、上架構造体が水平に上架されているか否かを確認する方法もある。しかし、上架構造体を上架するときに、上架構造体は自重による撓みが生じる。従って、水平器などで検出される傾きが、各上架装置の巻き上げ高さの違いによるものか、あるいは自重による撓みによるものかを判断する必要があるが、それを判断することは困難である。
【0019】
従って、本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、フローティングクレーンや上架用構造物を用いることなく、複数の上架装置で脚構造体を利用して上架構造体を上架するときに、各上架装置が上架構造体を巻き上げた高さを精度良く、且つ常時検出することができ、上架構造体に過度な力が掛かることを防止することができるクレーンの製造方法及びクレーンの上架構造体の上架システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の問題を解決するための本発明のクレーンの製造方法は、複数の脚を有する脚構造体の上端部に、トロリが横行するブーム及びガーダを有する上架構造体を上架して接合するクレーンの製造方法において、前記脚に固定された少なくとも一つの定滑車と前記上架構造体に固定された少なくとも一つの動滑車を含む組み合わせ滑車と該組み合わせ滑車に巻き回される鋼索と該鋼索を巻き取る巻取装置とを有した複数の上架装置により、前記上架構造体を、前記脚構造体を前記上架構造体の重量を負担する支持体として利用して、前記脚構造体の上方側に上架するときに、それぞれの上架装置の前記定滑車と前記動滑車のいずれか一つの回転数から前記巻取装置が巻き取った前記鋼索の巻取量を逐次算出し、該巻取量と前記組み合わせ滑車に巻き回された前記鋼索の掛け本数とから、それぞれの上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを逐次算出し、算出したそれぞれの上架装置の巻上高さの差が最小になるように、それぞれの上架装置の巻取装置の巻取速度を制御することを特徴とする方法である。
【0021】
なお、ここでいうクレーンとは、コンテナターミナルなどの港湾で使用される岸壁クレーン、移動型のジブクレーン、アンローダークレーン、及びロープロファイルクレーンなど大型の脚クレーンのことであり、クレーンによっては上架構造体にブーム及びガーダを支えるマストや、トロリの横行装置や吊具の巻上装置などを収用した機械室を備えたものも含む。
【0022】
また、ここでいう鋼索は、チェーンやガイドロッドと比較して柔軟性が高いワイヤロープなどのことをいう。また、巻取装置とは、例えば、ワイヤロープを巻き取ることが可能なワイヤドラム、減速機、及びモータ(電動機)を備える装置のことをいう。
【0023】
この方法によれば、巻取装置が巻き取った鋼索の巻取量を滑車の回転数で算出することによって、巻取装置に多層巻きドラムを用いても、層が変わった時のドラム径の変化や鋼索径の不均一さによるドラム径の変化などによる誤差の影響を回避することができる。これにより、巻取量を精度良く検出することができる。
【0024】
また、滑車の回転数を検出するというシンプルな方法で巻取量を算出するので、環境の影響を受け難く、常時検出することができる。
【0025】
従って、精度の高い巻取量を常時算出することによって、その巻取量と掛け本数から算出される上架構造体の巻上高さも精度が高いものとなる。そして、その巻上高さを各上架装置で比較して、その差が最小になるように、各上架装置の巻取装置の巻取速度をフィードバック制御するので、上架構造体を捻る力の発生を回避して、上架構造体に過度な力が掛かることを防ぐことができる。
【0026】
また、上記のクレーンの製造方法において、それぞれの上架装置の前記定滑車と前記動滑車との間の上下距離から前記上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを算出し、この算出した巻上高さに基づいて、前記巻取量と前記鋼索の掛け本数とから算出した巻上高さを補正することが望ましい。
【0027】
この方法によれば、滑車の回転数から算出される巻上高さを、定滑車と動滑車の間の上
下距離から算出される巻上高さで補正する。これにより、仮に滑車の回転数から算出される巻上高さに、各滑車の滑車径の誤差、鋼索の伸び、鋼索径の変化、及び鋼索径の誤差などが累積しても、その影響を排除することができる。これにより、精度と信頼性を両立した巻上高さを検出して、信頼性の高い上架構造体の上架を行うことができる。
【0028】
また、滑車の回転数から算出される巻上高さを、定滑車と動滑車の間の上下距離から算出される巻上高さで補正した際に、滑車の回転数から算出される巻取量の補正量を算出し、以降の巻上高さの算出時にその補正量を使用して、滑車の回転数から巻取量を算出するようにするとよい。
【0029】
そして、上記の課題を解決するための本発明のクレーンの上架構造体の上架システムは、複数の脚を有する脚構造体の上端部に、トロリが横行するブーム及びガーダを有する上架構造体が接合されたクレーンを製造する際に、前記脚構造体の上端部に前記上架構造体を上架するクレーンの上架構造体の上架システムにおいて、前記脚の数と同数の上架装置を有し、該上架装置が、前記脚に固定された少なくとも一つの定滑車と前記上架構造体に固定された少なくとも一つの動滑車を含む組み合わせ滑車と、該組み合わせ滑車に巻き回された鋼索と、該鋼索を巻き取る巻取装置と、前記定滑車と前記動滑車のいずれか一つの回転数を検知する回転数検知手段とを備えると共に、それぞれの上架装置の回転数検出手段と接続される制御部を備え、前記制御部が、それぞれの回転数検知手段で検知された前記回転数から、前記巻取装置が巻き取った前記鋼索の巻取量を算出し、該巻取量と前記鋼索の掛け本数とから前記上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを逐次算出し、それぞれの上架装置による巻上高さの差が最小になるように、それぞれの巻取装置を制御する構成である。
【0030】
なお、ここでいう回転数検出手段とは、滑車の回転数を検出可能なものであり、例えば、滑車の回転体に設けた検出体と、その検出体を機械的に検出可能なスイッチ、又は近接センサや磁気センサなどのセンサとを備え、検出体を検出した回数を数えることで滑車の回転数を検出するシーブエンコーダなどのことをいう。
【0031】
また、ここでいう制御部は、各上架装置の巻取装置を制御する各制御装置を相互通信可能にする構成や、各巻取装置を制御する総合制御装置を備える構成を含む。
【0032】
この構成によれば、滑車の回転数を検出する回転数検出手段を設けることで、各上架装置での上架構造体の巻上高さを精度良く、且つ常時検出することができる。そして、その検出された巻上高さを比較して、差が最小になるように巻取装置をフィードバック制御するので、上架構造体に過度な力が掛かることを防止することができる。
【0033】
また、上記のクレーンの上架構造体の上架システムにおいて、前記上架装置が、それぞれの上架装置が、前記定滑車と前記動滑車との間の上下距離を検出する距離検出手段を備えると共に、前記制御部が、前記距離検出手段と接続され、前記距離検出手段で検出された上下距離に基づいてそれぞれの上架装置が巻き上げた前記上架構造体の巻上高さを算出し、この算出した巻上高さに基づいて、前記巻取量と前記鋼索の掛け本数とから算出した巻上高さを補正する制御を行う構成であることが望ましい。
【0034】
なお、ここでいう距離検出手段とは、定滑車と動滑車との間の上下距離を検出するものであり、例えば、従来技術で説明したレーザー距離計などのことをいう。
【0035】
この構成によれば、天候などにより影響を受けない回転数検出手段が巻上高さを常時検出し、仮に回転数検出手段に誤差が累積したとしても、距離検出手段によりその巻上高さを補正することができる。これにより、精度と信頼性を両立することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のクレーンの製造方法及びクレーンの上架構造体の上架システムによれば、滑車の回転数から巻取装置が巻き取った鋼索の巻取量を算出するので、巻取装置に多層巻きドラムを用いても、層が変わった時のドラム径の変化や鋼索径の不均一さによるドラム径の変化による誤差の影響を回避して、精度良く検出することができる。また、滑車の回転数を検出するというシンプルな方法のため、環境の影響を受け難く、常時検出することができる。
【0037】
従って、精度の高い巻取量を常時算出することによって、その巻取量と掛け本数から算出される上架構造体の巻上高さも精度が高いものとなる。そして、その巻上高さを各上架装置で比較して、差が最小になるように、各上架装置の巻取装置の巻取速度をフィードバック制御するので、上架構造体を捻る力の発生を回避して、上架構造体に過度な力が掛かることを防ぐことができる。
【0038】
また、滑車の回転数から算出した巻上高さに、仮に各滑車の滑車径の誤差、鋼索の伸び、鋼索径の変化、及び鋼索径の誤差などが累積しても、定滑車と動滑車との間の上下距離から算出した巻上高さで、滑車の回転数から算出した巻上高さを補正するので、精度と信頼性を両立した巻上高さの検出を可能にして、信頼性の高い上架構造体の上架を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のクレーンの製造方法と、その製造方法で用いられるクレーンの上架構造体の上架システムとを図に例示した実施形態に基づいて説明する。なお、以下の説明では、クレーンの上架構造体を脚構造体の下端部に仮固定した状態を上架前構造物1A、クレーンの上架構造体を上架し、脚構造体と上架構造体を接合した状態を完成体のクレーン1Bとする。また、
図3の(a)では、各定滑車を32A〜32C、各動滑車を33A及び33Bとし、
図3の(b)では、各定滑車を32A〜32E、各動滑車を33A〜33Dとして記載しているが、以下では、各定滑車を示す場合は符号32を、各動滑車を示す場合は符号33を用いることとする。加えて、
図4では、上架装置31Dのみを記載しているが、この構成は上架装置31A〜31Cについても同様の構成である。
【0041】
このクレーンの製造方法の実施形態では、脚構造体10の下端部に上架構造体20を支持して仮固定した上架前構造物1Aを組み立て、その上架前構造物1Aに上架システム30を取り付けて、上架前構造物1Aを輸送船で輸送する。そして、輸送先で、上架システム30により脚構造体10を利用して上架構造体20を脚構造体10の上端部に上架して接合する方法である。そして、上架構造体20を上架するときに、各上架装置31A〜31Dが巻き上げた上架構造体20の巻上高さ算出し、各上架装置31A〜31Dによる巻上高さの差が最小になるよう制御する方法である。
【0042】
そこで、まず、上架前構造物1Aについて、
図1及び
図2を参照しながら説明する。この上架前構造物1Aは、脚構造体10と、脚構造体10の下端部に支持され仮固定された上架構造体20を備える。
【0043】
脚構造体10は、クレーン1Bの使用時に海側に配置される海側脚11aと陸側に配置される陸側脚11bとをそれぞれ二本ずつ備え、海側脚11aと陸側脚11bのそれぞれには走行装置12を設けている。また、この脚構造体10は、海側脚11a同士、陸側脚11b同士をそれぞれ接続するシルビーム13と、対向する海側脚11aと陸側脚11bとを接続するポータルタイビーム14とを備えている。加えて、この脚構造体10は、各脚11a、11bの上端部に上架構造体20との接合部となる第一タイビーム部材(上梁部材)15を備えている。
【0044】
上架構造体20は、吊具を有するトロリ21が横行するブーム22とガーダ23を備えると共に、マスト24、テンションバー25、バックステー26、及び機械室27を備え、機械室27には吊具の巻上装置、トロリ21の横行装置、及びブーム22の起伏装置を備えている。また、この上架構造体20は、脚構造体10との接合部となる第二タイビーム部材(上梁部材)28を備えている。加えて、この上架構造体20は、マスト24の走行装置12の走行方向での幅が、
図2に示すように、各海側脚11a同士の間(各陸側脚11b同士の間)の幅よりも狭く形成されている。
【0045】
なお、脚構造体の第一タイビーム部材15と上架構造体の第二タイビーム部材28を接合して一体化するとタイビームが形成される。
【0046】
そして、
図1に示すように、この上架前構造物1Aは、上架構造体20を下方から支持する吊上部材40とその吊上部材40を支持するブラケット(支持部材)16を備えている。
【0047】
ブラケット16は、脚構造体10の各海側脚11aと各陸側脚11bのそれぞれに設けられ、脚構造体10の下端部で、且つ各海側脚11a同士、各陸側脚11b同士の間に、上架構造体20を直接的又は間接的に支持するブラケットである。なお、この実施形態では、吊上部材40を介在させて、間接的に上架構造体20を支持している。
【0048】
次に、この上架前構造物1Aに取り付けられる
図3及び
図4に例示する本発明の上架システム30は、脚構造体10を上方から見たときに、脚構造体10の四隅となる位置に上架装置31A〜31Dを備えている。
【0049】
この各上架装置31A〜31Dは、
図3に示すように、定滑車32と、動滑車33とを含む組み合わせ滑車34を備えて構成される。
【0050】
更に、各上架装置31A〜31Dは、
図1及び
図2に示すように、組み合わせ滑車34に巻き回されたワイヤロープ35と、ワイヤロープ35を巻き取る巻取装置36と、定滑車32を有する上方シーブブロック37と、定滑車32と組となる動滑車33を有する下方シーブブロック38とを備えて構成される。
【0051】
定滑車32は、上方シーブブロック37に取り付け及び取り外し可能に設けられており、上方シーブブロック37を介して、各脚11a、11bの上端部に固定されている。
【0052】
この定滑車32を有する上方シーブブロック37が、各脚11a、11bの上端部に固
定されることにより、定滑車32に負荷される上架構造体20の荷重は、各脚11a、11bの鉛直方向(脚長手方向)に作用する。これにより、脚構造体10の各ビームなどに過大な負荷が生じることが回避できるので、脚構造体10を特別に補強することなく上架構造体20を上架することができる。
【0053】
動滑車33は、下方シーブブロック38に取り付け及び取り外し可能に設けられており、下方シーブブロック38と吊上部材40を介して、脚構造体10の下端部に仮固定された上架構造体20に固定されている。
【0054】
この動滑車33を有する下方シーブブロック38は、吊上部材40の端部に固定されることにより、脚構造体10を上方から見たときに、脚構造体10の四隅となる位置に配置された吊上部材40の端部を引き上げることができる。
【0055】
また、このように、上方シーブブロック37を介して定滑車32を、下方シーブブロック38を介して動滑車33を固定することで、定滑車32と動滑車33のそれぞれを直接固定する場合と比較して、より容易に上架前構造物1Aに取り付ける、あるいは取り外すことができる。
【0056】
上記の定滑車32と動滑車33は、上架構造体20の重量に応じて各上方シーブブロック37と各下方シーブブロック38に設けられる数を増減して、ワイヤロープ35の掛け本数を増減するように構成されている。
【0057】
例えば、
図3の(a)に示すように、一対の上方シーブブロック37と下方シーブブロック38のワイヤロープ35の掛け本数を四本にする場合には、上方シーブブロック37に定滑車32A〜32Cを、下方シーブブロック38に動滑車33A及び33Bを設ける。これにより、各上架装置31A〜31Dの吊上げ能力はワイヤロープ35の張力の四倍となる。
【0058】
また、
図3の(b)に示すように、一対の上方シーブブロック37と下方シーブブロック38のワイヤロープ35の掛け本数を八本にする場合には、上方シーブブロック37に定滑車32A〜32Eを、下方シーブブロック38に動滑車33A〜33Dを設ける。これにより、各上架装置31A〜31Dの吊上げ能力はワイヤロープ35の張力の八倍となる。
【0059】
このように、上架構造体20の重量に応じたワイヤロープ35の掛け本数となるように、定滑車32と動滑車33の数を調節することによって、上架構造体20の重量が重くなった場合に、巻取装置36を大型化することなく、上架構造体20を上架することができる。
【0060】
なお、各上架装置31A〜31Dのワイヤロープ35の掛け本数は、上架構造体20の重心位置によっては、各上架装置31A〜31Dのそれぞれで異なる本数とするとよい。
【0061】
ワイヤロープ35は、素線を撚り合わせることによってストランドを形成し、心綱を中心にそのストランドを撚り合わせて形成される。このワイヤロープ35は、一方の端部35aが上方シーブブロック37に固定されており、他方の端部が巻取装置36に固定され、組み合わせ滑車34に巻き回されている。このワイヤロープ35は、従来の上架方法で用いられていたチェーンやガイドロッドと比較して軽く、且つ柔軟性が高い。従って、片付けなどの作業を容易且つ迅速に行うことができる。また、チェーンやガイドロッドと比較して収納場所も取らないため、輸送する場合などにも適している。
【0062】
巻取装置36は、ワイヤロープ35を巻き取る装置であり、
図4に示すように、ワイヤドラム36aと減速機36bとモータ36cを備えている。
【0063】
この巻取装置36は各脚11a、11bの下端部、好ましくは、仮固定した上架構造体20よりも下方側の位置、この実施形態ではシルビーム13と同等の高さの位置となるように巻取装置用ブラケット39により各脚11a、11bに固定される。巻取装置36を仮固定した上架構造体20よりも下方側に固定することで、上架構造体20を上架するときの荷重を各脚11a及び11bの上部だけではなく下部にも分散することができるので、脚構造体10を余分に補強する必要がなくなる。
【0064】
そして、本発明の上架システム30の実施形態では、
図4及び
図5に示すように、上架装置31Dにシーブエンコーダ(回転数検出手段)41と、レーザー距離計(距離検出手段)42とを備えると共に、シーブエンコーダ41とレーザー距離計42を総合制御装置47に接続して構成される。なお、上架装置31A〜31Cについても同様の構成のため、その説明を省略する。
【0065】
シーブエンコーダ41は、
図6の(a)及び(b)に示すように、第一ストライカ43、第二ストライカ44、第一リミットスイッチ45、及び第二リミットスイッチ46を備え、定滑車32Aの回転数を検出する装置である。
【0066】
第一ストライカ43は、
図6の(a)及び(b)に示すように、定滑車32Aの円盤面32aの外縁側に設けられる突起であり、円盤面32aの回転方向に沿って等間隔に複数設けられている。
【0067】
第二ストライカ44は、第一ストライカ43よりも定滑車32Aの円盤面32aの内縁側に設けられる突起であり、円盤面32aの回転方向に沿って等間隔に複数設けられている。また、この第二ストライカ44は、第一ストライカ43からずれたタイミングで検出されるように、第一ストライカ43に対して円盤面32aの回転方向にずらして配置される。
【0068】
第一リミットスイッチ45は、第一ストライカ43と接触し、その接触によりアクチュエータがスイッチを入り切りする電気スイッチであり、第一ストライカ43を機械的に検出するスイッチである。同様に、第二リミットスイッチ46は、第二ストライカ44を機械的に検出するスイッチである。
【0069】
そして、これらの第一リミットスイッチ45と第二リミットスイッチ46でカウントされた回数が、総合制御装置47に送られ、総合制御装置47が、定滑車32Aの回転数を検出するように構成される。
【0070】
このシーブエンコーダ41は、シンプルな構成のため、環境を起因とする悪影響を受け難く、常時、定滑車32Aの回転数を検出することができる。
【0071】
レーザー距離計42は、
図5に示すように、上方シーブブロック37に設けられ、下方シーブブロック38に向けてレーザーを照射して、上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間、つまり定滑車32と動滑車33との間の上下距離を検出する距離計である。また、このレーザー距離計42は、上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間の上下距離を精度良く検出することができるが、雨、霧、太陽光などの環境を起因とする悪影響により、その上下距離を検出できない場合がある。そこで、このレーザー距離計42は、環境を起因とする悪影響が無い場合に、定滑車32と動滑車33との間の上下距離を検出するように構成される。
【0072】
総合制御装置47は、各上架装置31A〜31Dのシーブエンコーダ41が検出した定滑車32Aの回転数ω1〜ω4と各上架装置31A〜31Dのレーザー距離計42が検出した上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間の上下距離s1〜s4が入力され、各上架装置31A〜31Dの各減速機36bと各モータ36cに各巻取速度v1〜v4を出力するコントローラであり、上架システム30を操作する操作装置を有して構成される。
【0073】
この総合制御装置47は、常時検出される回転数ω1〜ω4から各上架装置31A〜31Dによる上架構造体20の巻上高さh1〜h4を算出し、それらの差が最小になるように各巻取装置36の巻取速度v1〜v4を制御する。環境を起因とする悪影響が無い場合には、回転数ω1〜ω4から算出された巻上高さh1〜h4を、上下距離s1〜s4から算出された巻上高さH1〜H4で補正する制御を行う。
【0074】
次に、本発明に係る実施の形態のクレーン1Bの製造方法について説明する。
【0075】
まず、
図1及び
図2に示すように、脚構造体10を組み立て、脚構造体10の各脚11a、1bのそれぞれにブラケット16を接合する。次に、このブラケット16に吊上部材40を掛け渡す。次に、ブラケット16と吊上部材40に支持されるように上架構造体20を組み立てて、脚構造体10の下端部に上架構造体20を仮固定して上架前構造物1Aを構築する。
【0076】
次に、上架前構造物1Aに上架システム30の各上架装置31A〜31Dを脚構造体10の上方から見たときに、脚構造体10の四隅となる位置に配置して、取り付ける。
【0077】
次に、上架システム30を取り付けた上架前構造物1Aを、輸送船に載せる。このとき、ブラケット16と吊上部材40により脚構造体10と上架構造体20が一体化した上架前構造物1Aを、各走行装置12により岸壁から輸送船設けられた軌道上を走行させて、輸送船に載せる。上架前構造物1Aは、上架構造体20が張り出している方向を輸送船2の幅方向に向けて積載され、複数の上架前構造物1Aが輸送船2の前後方向に並んで置かれる。
【0078】
次に、輸送先に輸送された上架前構造物1Aを輸送船に載せたときと同様にして、輸送船から降ろす。そして、上架構造体20の上架作業を行う場所まで移動させ、上架構造体20の脚構造体10に対する仮固定を解除する。
【0079】
次に、上架システム30を用いて、脚構造体10を利用して上架構造体20を上架する。まず、
図4に示す環境を起因とする悪影響によりレーザー距離計42で上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間の上下距離を検出できない場合について説明する。なお、以下では、各上架装置31A〜31Dで同様の工程が行われるため、ここでは、
図4に示す上架装置31Dについて説明し、その他についてはその説明を省略する。
【0080】
まず、作業者が総合制御装置47を操作して、上架装置31Dの各巻取装置36を駆動してワイヤロープ35の巻き取りを開始する。次に、上架装置31Dの第一リミットスイッチ45と第二リミットスイッチ46が、定滑車32Aの回転に伴って回転する第一ストライカ43と第二ストライカ44をそれぞれ検出し、そのカウントした回数を総合制御装置47に送る。
【0081】
次に、総合制御装置47が、定滑車32Aの回転数ω4を検出する。なお、この回転数ω4は、ワイヤロープ35の巻き取りが開始されてからの総回転数とする。
【0082】
このとき、
図6の(a)に示すように、定滑車32Aが右回りで回転する場合には、第一リミットスイッチ45が第一ストライカ43を検出するよりも先に、第二リミットスイッチ46が第二ストライカ44を検出することで、定滑車32Aが右回りで回転し、上架装置31Dが上架構造体20を上架していることを検出することができる。これにより、上架構造体20を巻き上げる場合と巻き下げる場合を検出することができる。
【0083】
次に、総合制御装置47が、定滑車32Aの回転数ω4から、上架装置31Dの巻取装置36が巻き取ったワイヤロープ35の巻取量L4を算出する。なお、この巻取量L4は、ワイヤロープ35の巻き取りが開始されてからの総巻取量とする。
【0084】
次に、総合制御装置47が、算出された巻取量L4と上架装置31Dの組み合わせ滑車34におけるワイヤロープ35の掛け本数n4とから、上架装置31Dが巻き上げた上架構造体20の巻上高さh4を算出する。
【0085】
次に、総合制御装置47が、上記と同様にして算出された上架装置31Aの巻上高さh1、上架装置31Bの巻上高さh2、上架装置31Cの巻上高さh3、及び上架装置31Dの巻上高さh4を比較する。そして、それらの各巻上高さh1〜h4の差が最小になるように各巻取速度v1〜v4を算出する。次に、総合制御装置47が、各巻取速度v1〜v4に基づいて各減速機36bと各モータ36cを制御する。
【0086】
例えば、巻上高さh1〜h4が、h1>h2>h3>h4であれば、各巻取速度v1〜v4が、v1<v2<v3<v4となる。このように、定滑車32Aの回転数ω1〜ω4から巻上高さh1〜h4を検出し、各巻上高さh1〜h4の差が最小になるように各巻取装置36の巻取速度v1〜v4をフィードバック制御する。
【0087】
次に、
図5に示す環境を起因とする悪影響が無く、レーザー距離計42が使用できる場合について説明する。まず、上記と同様にして、総合制御装置47が各巻上高さh1〜h4を算出する。
【0088】
次に、上架装置31Dのレーザー距離計42が、上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間の上下距離s4を検出する。
【0089】
次に、総合制御装置47が、レーザー距離計42で検出された上下距離s4から、上架装置31Dが巻き上げた上架構造体20の巻上高さH4を算出する。
【0090】
次に、総合制御装置47が、巻取量L4と掛け本数n4とから算出された巻上高さh4を、上下距離s4から算出された巻上高さH4で補正して補正巻上高さH4’を算出する。同様にして、上架装置31Aの巻上高さh1を巻上高さH1で補正して補正巻上高さH1’を、上架装置31Bの巻上高さh2を巻上高さH2で補正して補正巻上高さH2’を、上架装置31Cの巻上高さh3を巻上高さH3で補正して補正巻上高さH3’をそれぞれ算出する。
【0091】
次に、総合制御装置47が、補正された各補正巻上高さH1’〜H4’を比較して、各補正巻上高さH1’〜H4’の差が最小になるように各巻取速度v1’〜v4’を算出する。これ以降は、補正を行わない場合と同様である。
【0092】
そして、総合制御装置47は、補正巻上高さH1’〜H4’とワイヤロープ35の掛け本数n1〜n4から補正巻取量L1’〜L4’を算出する。この補正巻取量L1’〜L4’と回転数ω1〜ω4から算出された巻取量L1〜L4の差を補正量として、次回の巻取量の算出の際に使用する。
【0093】
次に、
図2に示すように、上架構造体20を上架すると、脚構造体10の第一タイビーム部材15の位置と、上架構造体20の第二タイビーム部材28の位置を合わせる。この第一タイビーム部材15と第二タイビーム部材28の位置を合わせる際にも、前述した制御を用いることで、容易に位置を合わせることができる。そして、第一タイビーム部材15と第二タイビーム部材28とを接合して一体化することにより、タイビームを形成する。
【0094】
次に、上架構造体20に固定されている吊上部材40を取り外し、吊上部材40を吊り降ろしてから、各上架装置31A〜31Dをクレーン1Bから取り外す。そして、ブラケット16を各脚11a及び11bから取り外して、クレーン1Bの製造方法は完了する。
【0095】
上記の実施の形態のクレーン1Bの製造方法によれば、
図1及び
図2に示すように、上架構造体20を、各脚11a、11bに設けたブラケット16と上架構造体20に固定した吊上部材40により、脚構造体10の下方で且つ海側脚11a同士、陸側脚11b同士の間に支持して仮固定して、地上付近で上架構造体20を組み立てることができる。これにより、上架構造体20を組立てる作業の安全性を確保することができる。
【0096】
また、上架構造体20をブラケット16と吊上部材40で支持して仮固定しておくことで、上架構造体20を脚構造体10の下端部に仮固定した状態の上架前構造物1Aを、脚構造体10の各走行装置12により容易に移動させることができる。これにより、上架構造体20を上架する場所が限定されることなく、場所を問わずにクレーン1Bを製造することができるので、
図8に示すように、上架前構造物1Aを輸送して、輸送先で上架構造体20を上架してクレーン1Bを組立てることができる。
【0097】
加えて、
図3及び
図4に示すように、上架構造体20を脚構造体10の上方に上架するときに、組み合わせ滑車34を有する各上架装置31A〜31Dを用いることで、上架構造体20の重量が増加した場合には、定滑車32と動滑車33の数を増やし、組み合わせ滑車34に巻き回されたワイヤロープ35の掛け本数を増やすだけで、ワイヤロープ35を巻き取る巻取装置36を大型化することなく上架することができる。また、従来のチェーンやガイドロッドと比較して、軽く且つ柔軟性の高いワイヤロープ35により上架構造体20を上架することができる。従って、各上架装置31A〜31Dを小型化することができると共に、各上架装置31A〜31Dを脚構造体10と上架構造体20に容易に取り付けることができるので、上架構造体20の上架作業を、場所を問わずに行うことができる。
【0098】
上記の理由から、このクレーン1Bの製造方法によれば、脚構造体10を利用して上架構造体20を上架するので、フローティングクレーンや上架用構造物などを用いることがないため、場所を問わずに上架構造体20を上架することができる。
【0099】
そのため、完成体のクレーン1Bと比較して重心の位置が低くなる上架前構造物1Aのまま輸送し、輸送先で上架構造体20を上架することができる。これにより、輸送船で輸送する場合に、輸送船の重心の位置を低くすることができるので、大型の輸送船を用いずに、一隻の輸送船で同時輸送する台数を多くすることができ、輸送コストを大幅に下げることができる。
【0100】
そして、クレーン1Bの製造時に行われる上架構造体20の上架方法によれば、組み合わせ滑車34の定滑車32Aの回転数から各上架装置31A〜31Dのワイヤロープ35の各巻取量L1〜L4を算出するので、多層巻きのワイヤドラム36aの層が変わること
によるドラム径が変化することやワイヤロープ35の径が不均一であることなどの要因に影響されずに各巻取装置36のワイヤロープ35の巻取量L1〜L4を精度良く且つ常時検出することができる。
【0101】
その巻取量L1〜L4と組み合わせ滑車34に巻き回されたワイヤロープ35の掛け本数n1〜n4とから、上架構造体20の巻上高さh1〜h4を算出し、この巻上高さh1〜h4を比較する。そして、各巻上高さh1〜h4の差が最小になるように各巻取装置36の巻取速度v1〜v4をフィードバック制御することで、各上架装置31A〜31Dが均等に上架構造体20を上架することができる。
【0102】
これにより、各上架装置31A〜31Dによって上架構造体20を上架するときに、上架構造体20を捻る力の発生を回避して、上架構造体20に過度な力が掛かることを防ぐことができる。
【0103】
また、環境を起因とする悪影響が無く、レーザー距離計42で上下距離s1〜s4を検出できれば、定滑車32Aの回転数ω1〜ω4から検出される巻取量L1〜L4と掛け本数n1〜n4とから算出される巻上高さh1〜h4を、上方シーブブロック37と下方シーブブロック38との間の上下距離s1〜s4から算出される巻上高さH1〜H4で補正し、補正巻上高さH1’〜H4’を算出するので、シーブエンコーダ41の累積した誤差の影響を排除することができる。
【0104】
詳しくは、補正された各補正巻上高さH1’〜H4’から、回転数ω1〜ω4から巻取量L1〜L4を算出する際の補正量を算出し、次回以降に回転数ω1〜ω4から補正巻取量L1’〜L4’を算出することができる。これにより、定滑車32と動滑車33の滑車径の誤差、ワイヤロープ35の伸び、ワイヤロープ35径の変化、及びワイヤロープ35径の誤差などの影響を排除することができる。
【0105】
従って、上架構造体20を脚構造体10の上端部に上架する際に、精度と信頼性を両立した巻上高さh1〜h4を常時検出することができ、信頼性の高い制御を行うことができる。
【0106】
なお、上記の実施形態では、コンテナターミナルなどの港湾で使用される岸壁クレーンを例に説明したが、本発明はこれに限定されずに、例えば、移動型のジブクレーン、アンローダークレーン、及びロープロファイルクレーンなど大型の脚クレーンに適用することができる。
【0107】
また、上記の実施形態では、トロリ21、ブーム22、ガーダ23、マスト24、テンションバー25、バックステー26、及び機械室27を備えた上架構造体20を例に説明したが、クレーンの種類などによりこの構成は変更される。
【0108】
また、上記の実施形態では、上架前構造物1Aを輸送船で輸送し、輸送先で上架構造体20を上架する製造方法を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、輸送元で上架構造体20を上架する場合にも適用することができる。従来技術におけるフローティングクレーンや上架用構造物を用いる方法や、脚構造体を利用する方法では、上架構造体を上架し、完成体のクレーンとして組立てるまで、位置を動かすことができない。しかし、本発明では、上架前構造物1Aを移動させて、別の場所で組み立て作業を行うことが可能となる。
【0109】
また、上記の実施形態では、各上架装置31A〜31Dのシーブエンコーダ41が定滑車32Aの回転数を検出する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、動
滑車33Aの回転数を検出するように構成してもよい。但し、シーブエンコーダ41が回転数を検出する滑車は、上架構造体20の重量が変わっても常に上方シーブブロック37、又は下方シーブブロック38に固定される滑車が望ましい。
【0110】
また、上記の実施形態では、シーブエンコーダ41として、リミットスイッチを用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されずに、例えば、近接センサや磁気センサなどのセンサでストライカを検出するものを用いてもよい。
【0111】
また、上記の実施形態では、定滑車32Aの回転数ω1〜ω4を累積した総回転数として例を説明したが、例えば、単位時間当たりの回転数を検出して、単位時間当たりに巻き上げられた巻上高さを比較するようにしてもよい。
【0112】
また、上記の実施形態では、レーザー距離計42を、環境を起因とする悪影響がない場合にシーブエンコーダ41と同様に常時、上下距離s1〜s4を検出するように構成した例を説明したが、巻上高さH1〜H4を用いた補正は常時する必要がないため、例えば、上架構造体20の上架を始める前、途中、又は終了時などに行って、シーブエンコーダ41の誤差を解消するようにしてもよい。