特許第6208364号(P6208364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208364グラフェンの製造方法と、グラフェンの分散組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208364
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】グラフェンの製造方法と、グラフェンの分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20170925BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C01B32/184
   H01B1/24 A
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-538069(P2016-538069)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-500265(P2017-500265A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】KR2014012640
(87)【国際公開番号】WO2015099378
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0164671
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0184902
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、クォン−ナム
(72)【発明者】
【氏名】ユ、クァン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ウォン−チョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キル−ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、スン−ボ
(72)【発明者】
【氏名】キム、イン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミ−チン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チン−ヨン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/042482(WO,A1)
【文献】 特開2013−075795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材および分散剤の分散液に物理的力を印加する段階を含み、
前記分散剤は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を60重量%以上の含有量で含む混合物を含み、
前記黒鉛またはその誘導体は、物理的力の印加下にナノスケールの厚さを有するグラフェン(graphene)フレークで形成されるグラフェンの製造方法であって、
前記グラフェンフレークは、1.5乃至50nmの厚さを有するグラフェンの製造方法
【請求項2】
黒鉛またはその誘導体は、グラファイト、膨張黒鉛(expanded graphite)、不定形黒鉛、板状型黒鉛、人造黒鉛、炭素層間にインターカレーション化合物が挿入されている改質黒鉛および炭素ナノ繊維からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記分散液は、水溶媒または極性有機溶媒内に炭素系素材および分散剤が溶解または分散された分散液である、請求項1または2に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記分散剤に含まれている複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物を元素分析した時、酸素含有量が全体元素含有量の12乃至50重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記分散剤に含まれているポリ芳香族炭化水素酸化物は、5乃至30個のベンゼン環が含まれている芳香族炭化水素に酸素含有作用基が一つ以上結合された構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記芳香族炭化水素は、7乃至20個のベンゼン環を構造内に有する、請求項5に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記物理的力の印加段階は、高速均質器(High Speed Homogenizer)、高圧均質器(High Pressure Homogenizer)、ボールミル、ビードミルまたは超音波照射器を使用した方法で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項8】
前記グラフェンフレークは、0.1乃至10μmの直径を有し、50乃至6000の直径/厚さの比を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項9】
前記グラフェンフレークは、その表面に前記分散剤が物理的に付着された状態で形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項10】
前記グラフェンフレークの分散液からグラフェンフレークを回収および乾燥する段階をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項11】
前記回収段階は、遠心分離、減圧濾過または加圧濾過で行われる、請求項10に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項12】
前記乾燥段階は、30乃至200℃の温度下に真空乾燥して行われる、請求項10または11に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項13】
複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を60重量%以上の含有量で含む混合物を含む分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークと、
前記グラフェンフレークを溶解または分散させる極性溶媒と、を含むグラフェンの分散組成物。
【請求項14】
前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークを形成した後、これを極性溶媒に溶解または分散させて製造される、請求項13に記載のグラフェンの分散組成物。
【請求項15】
前記極性溶媒は、水、NMP、アセトン、DMF、DMSO、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、THF、エチレングリコール、ピリジン、ジメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、ブタノン、α−テルピネオール、ギ酸、酢酸エチルおよびアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上を含む、請求項13または14に記載のグラフェンの分散組成物。
【請求項16】
前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークは、極性溶媒の100重量部に対して50重量部以下で含まれる、請求項13〜15のいずれか一項に記載のグラフェンの分散組成物。
【請求項17】
伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材として使用される、請求項13〜16のいずれか一項に記載のグラフェンの分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークを容易に製造することができるグラフェンの製造方法と、これを使用して得られたグラフェンの分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にグラフェンは、炭素原子が2次元上でsp2結合による6角形状で連結された配列をなしながら炭素原子層に対応する厚さを有する半金属性物質である。最近、一層の炭素原子層を有するグラフェンシートの特性を評価した結果、電子の移動度が約50,000cm2/Vs以上で、非常に優れた電気伝導度を示すことができることが報告されている。
【0003】
また、グラフェンは、構造的、化学的安定性および優れた熱伝導度の特徴を有している。しかも、相対的に軽い元素である炭素だけからなり、1次元あるいは2次元ナノパターンを加工することが容易である。何よりも前記グラフェンシートは、安価の材料として従来のナノ材料と比較する場合、優れた価格競争力を有している。
【0004】
このような電気的、構造的、化学的、経済的特性によりグラフェンは、今後シリコン基盤半導体技術および透明電極を代替できると予測され、特に優秀な機械的物性で柔軟電子素子分野に応用が可能であると期待される。
【0005】
このようなグラフェンの多くの長所および優れた特性により、グラファイトなど炭素系素材からグラフェンをより効果的に量産できる多様な方法が提案または研究されてきた。特に、グラフェンの優れた特性がより劇的に発現するように、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンシートまたはフレークを容易に製造することができる方法に関する研究が多様に行われてきた。このような従来のグラフェン製造方法には次のようなものがある。
【0006】
まず、テープを使用するなど物理的な方法でグラファイトからグラフェンシートを剥離する方法が知られている。しかし、このような方法は、量産に不適であり、剥離収率が非常に低い。
【0007】
また、グラファイトを酸化するなどの化学的な方法で剥離したり、グラファイトの炭素層間に酸、塩基、メタルなどを挿入してインターカレーション化合物(intercalation compound)から剥離させたグラフェンまたはその酸化物を得る方法が知られている。しかし、前者の方法は、グラファイトを酸化して剥離を行い、これから得られたグラフェン酸化物を再び還元してグラフェンを得る過程で、最終製造されたグラフェン上に多数の欠陥が発生することがある。これは最終製造されたグラフェンの特性に悪影響を及ぼすおそれがある。そして、後者の方法も、インターカレーション化合物を使用および処理するなどの工程が追加的に必要であるため、全体的な工程が複雑になり、収率が不充分であり、工程の経済性が落ちるおそれがある。ひいては、このような方法では大面積のグラフェンシートまたはフレークを得るのが容易でない。
【0008】
このような方法の問題点により、最近はグラファイトなどを液状分散させた状態で、超音波照射またはボールミルなどを使用したミリング方法でグラファイトに含まれている炭素層を剥離してグラフェンを製造する方法が最も多く適用されている。しかし、このような方法も十分に薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンを得るのが難しかったり、剥離過程でグラフェン上に多くの欠陥が発生したり、剥離収率が不充分になるなどの問題点があった。
【0009】
これによって、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンシートまたはフレークをより高い収率で容易に製造することができる製造方法が継続して要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークを容易に製造することができるグラフェンの製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、前記製造方法で得られたグラフェンフレークを含み、極性溶媒にグラフェンが高濃度で均一に分散されたグラフェンの分散組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材および分散剤の分散液に物理的力を印加する段階を含み、前記分散剤は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量約300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を約60重量%以上の含有量で含む混合物を含み、前記黒鉛またはその誘導体は、物理的力の印加下にナノスケールの厚さを有するグラフェン(graphene)フレークで形成されるグラフェンの製造方法を提供する。
【0013】
前記グラフェンの製造方法で、前記黒鉛またはその誘導体は、グラファイト、膨張黒鉛(expanded graphite)、不定形黒鉛、板状型黒鉛、人造黒鉛、炭素層間にインターカレーション化合物が挿入されている改質黒鉛および炭素ナノ繊維からなる群より選択された1種以上になることができる。
【0014】
また、前記分散液は、水溶媒または極性有機溶媒内に炭素系素材および分散剤が溶解または分散された分散液になることができる。
【0015】
この時、前記分散剤は、これに含まれている複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物を元素分析した時、酸素含有量が全体元素含有量の約12乃至50重量%であるものになることができる。また、前記分散剤に含まれているポリ芳香族炭化水素酸化物は、5乃至30個、あるいは7乃至20個のベンゼン環が含まれている芳香族炭化水素に酸素含有作用基が一つ以上結合された構造を有することができる。
【0016】
そして、前記グラフェンの製造方法で、前記物理的力の印加段階は、高速均質器(High Speed Homogenizer)、高圧均質器(High Pressure Homogenizer)、ボールミル、ビードミルまたは超音波照射器を使用した方法で行われ得る。
【0017】
このようなグラフェン製造方法で形成されたグラフェンフレークは、約1.5乃至50nm、あるいは約5乃至30nmの厚さを有することができ、約0.1乃至10μm、あるいは約0.1乃至5μmの直径を有することができ、約50乃至6000、あるいは約50乃至1000の直径/厚さの比を有することができる。
【0018】
そして、前記グラフェンフレークは、その表面に前記分散剤が物理的に付着された状態で形成され得る。
【0019】
一方、前述したグラフェンの製造方法は、前記グラフェンフレークの分散液からグラフェンフレークを回収および乾燥する段階をさらに含むこともでき、前記回収段階は、遠心分離、減圧濾過または加圧濾過で行われ得る。また、前記乾燥段階は、約30乃至200℃の温度下に真空乾燥して行われ得る。
【0020】
本発明はまた、前述した製造方法で得られたグラフェンフレークを含み、このようなグラフェンフレークが極性溶媒内に高濃度で均一に分散されたグラフェンの分散組成物を提供する。このようなグラフェンの分散組成物は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量約300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を約60重量%以上の含有量で含む混合物を含む分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークと、前記グラフェンフレークを溶解または分散させる極性溶媒と、を含むことができる。
【0021】
このような分散組成物は、前述した製造方法を通じて前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークを形成した後、その分散性を向上させるための別途の処理なしに、これを極性溶媒に直ちに(または連続的に)溶解または分散させて製造され得る。
【0022】
また、前記分散組成物で、前記極性溶媒は、水、NMP、アセトン、DMF、DMSO、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、THF、エチレングリコール、ピリジン、ジメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、ブタノン、α−テルピネオール、ギ酸、酢酸エチルおよびアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0023】
そして、前記分散組成物で、前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークは、極性溶媒の100重量部に対して約50重量部以下で含まれ得る。
【0024】
このようなグラフェンの分散組成物は、伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材などで使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、特定の分散剤の使用および剥離方法の最適化により、原料である黒鉛またはその誘導体をより均一に分散させた状態で効果的に剥離してグラフェンフレークを製造することができる。したがって、本発明によれば、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークが高い収率で容易に製造され得る。
【0026】
しかも、本発明の方法により製造されたグラフェンフレークは、その分散性や溶解度を向上させるための追加的な処理がなくても、それ自体で多様な極性溶媒に対して非常に優れた分散性などを示すことができる。したがって、このようなグラフェンフレークを含むグラフェンの分散組成物は、伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材などの多様な分野および用途で非常に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態のグラフェンの製造方法で使用可能な高圧均質器の原理を示す概略的な模式図である。
図2a】製造例の分散剤製造のために使用されるpitchの分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析して示した図面である(分子量400乃至500領域の拡大図)。
図2b】製造例の分散剤製造のために使用されるpitchの分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析して示した図面である(分子量400乃至500領域の拡大図)。
図3a】製造例1で得られた分散剤の分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析して示した図面である(分子量400乃至500領域の拡大図)。
図3b】製造例1で得られた分散剤の分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析して示した図面である(分子量400乃至500領域の拡大図)。
図4】pitchおよび製造例1の分散剤をそれぞれ13C CPMAS NMRで分析して、その分析結果を示した図面である。
図5】pitchおよび製造例1の分散剤をそれぞれFT−IRで分析して、その分析結果を示した図面である。
図6】製造例2乃至4でそれぞれ得られた分散剤の分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析し、その分析結果を比較して示した図面である。
図7】実施例のグラフェンフレークの製造のために原料として使用されたグラファイトの電子顕微鏡写真(a)と、実施例1乃至4でそれぞれ製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真(b)乃至(f)を示す。
図8】実施例4のグラフェンフレークの直径および厚さを測定するためのTEM分析結果(a)および(b)と、AFM分析結果(c)および(d)をそれぞれ示す。
図9】比較例1で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示す。
図10】比較例2で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示す。
図11】試験例2で、実施例4で得られたグラフェンフレークを多様な溶媒に再分散させて再分散性を評価した結果を示す肉眼観察写真である。
図12】試験例2で、比較例1で得られたグラフェンフレークを極性溶媒である水に再分散させて再分散性を評価した結果を実施例4と比較して示す肉眼観察写真である。
図13】試験例3で、実施例4のグラフェンフレークを使用してグラフェンフィルムを製造した後、その面抵抗を測定した結果を示すグラフである。
図14】試験例3で、実施例4のグラフェンフレークを使用してペースト組成物を製造し、これをPET基材にコーティングしてフィルムを形成したものと、その面抵抗を測定した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の具体的な実施形態に係るグラフェンの製造方法と、グラフェンの分散組成物などについてより具体的に説明する。
【0029】
以下の明細書で使用された用語の一部は次のとおり定義され得る。
【0030】
まず、以下の明細書で、「分散剤」とは、水溶媒、有機溶媒、その他液状の媒質内に他の成分、例えば、グラファイト、その他黒煙またはその誘導体や、グラフェン(フレーク)などの炭素系素材を均一に分散させるための任意の成分を称すことができる。このような「分散剤」および炭素系素材など分散の対象になる他の成分が液状媒質内に分散されている組成物を「分散組成物」と称すことができ、このような「分散組成物」は、溶液状、スラリー状またはペースト状などの色々な状態で存在することができる。また、このような「分散組成物」は、二次電池の導電材組成物;各種電池、ディスプレイまたは素子などの製造過程で適用される電極用または伝導性組成物;二次電池などの活物質組成物;各種高分子または樹脂複合体製造用組成物;または色々な電子素材または素子などの製造過程で適用されるインクまたはペースト組成物など多様な用途で使用可能なものであって、その用途が別に制限されず、前記「分散剤」および分散対象成分が液状媒質内に共に含まれてさえいれば、その状態や用途に関係なく前記「分散組成物」の範疇に属すると定義され得る。
【0031】
また、以下の明細書で、「ポリ芳香族炭化水素」とは、単一化合物構造内に芳香族環、例えば、ベンゼン環が2個以上、あるいは5個以上結合および包含されている芳香族炭化水素化合物を称すことができる。また、「ポリ芳香族炭化水素酸化物」は、前述した「ポリ芳香族炭化水素」が酸化剤と反応を起こしてその化学構造内に酸素含有作用基が一つ以上結合している任意の化合物を称すことができる。この時、前記酸化剤との反応により「ポリ芳香族炭化水素」に導入可能な酸素含有作用基は、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、ニトロ基またはスルホン酸など芳香族環に結合可能であり、作用基中に酸素を一つ以上含む任意の作用基になることができる。
【0032】
そして、以下の明細書で「炭素系素材」とは、炭素−炭素結合を主に含む任意の素材、例えば、グラフェン(graphene)、炭素ナノチューブ、グラファイト(graphite)などの黒煙またはその誘導体、カーボンブラック、C60で表されるフラーレン(fullerene)、その他これと類似するフラーレン系素材またはこれらの誘導体などを包括して称すことができる。ただし、このような「炭素系素材」の範疇には、本発明で「分散剤」の主成分または主原料になる「ポリ芳香族炭化水素」またはその酸化物は属しないと解釈され得る。
【0033】
また、以下の明細書で分散剤のような一定の成分がグラフェンフレークなどの他の成分の表面に「物理的に付着」されているということは、両成分間に共有結合または配位結合などの化学結合が媒介されず、物理的力だけで一定の成分が他の成分の表面に接着、付着、吸着または少なくとも一部が埋込されて固定された状態で存在することを称すことができる。
【0034】
一方、発明の一実施形態によれば、黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材および分散剤の分散液に物理的力を印加する段階を含み、前記分散剤は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を60重量%以上の含有量で含む混合物を含み、前記黒鉛またはその誘導体は、物理的力の印加下にナノスケールの厚さを有するグラフェン(graphene)フレークで形成されるグラフェンの製造方法が提供される。
【0035】
このような一実施形態のグラフェン製造方法は、特定の分散剤の存在下に、グラファイトなどの黒鉛またはその誘導体を水溶媒または極性有機溶媒に均一に分散させた後、これに物理的力を加えて剥離する段階を含むことができる。
【0036】
このような一実施形態の製造方法によれば、後述する特定の分散剤の作用で黒鉛またはその誘導体がより均一に分散された状態で剥離されてグラフェンフレークで製造され得る。また、以下でさらに後述するが、前記黒鉛またはその誘導体に物理的力を加えて剥離を行う工程が高圧均質器などを使用する方法より最適化され得る。
【0037】
結果的に、一実施形態の製造方法では、原料である黒鉛またはその誘導体の分散状態が最適化された状態で、より効果的な工程で剥離を行ってグラフェンフレークを製造することができる。その結果、一実施形態によれば、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークが高い収率で容易に製造され得る。
【0038】
しかも、一実施形態の方法により製造されたグラフェンフレークは、その表面に分散剤が物理的に付着された状態で存在することによって、その分散性や溶解度を向上させるための追加的な処理がなくても、それ自体で多様な極性溶媒に対して非常に優れた分散性などを示すことができる。したがって、このようなグラフェンフレークを含むグラフェンの分散組成物が伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材などの多様な分野および用途で非常に効果的に使用することができる。
【0039】
一方、一実施形態の方法による優れた効果は、特定の分散剤の使用により発現できるところ、以下ではまずこのような分散剤について具体的に説明した後、これを使用した一実施形態のグラフェン製造方法について具体的に説明する。
【0040】
前記一実施形態の方法で使用される分散剤は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量約300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を約60重量%以上の含有量で含む混合物を含むことができる。
【0041】
石油または石炭など化石燃料の精製過程でクズなどとして排出されるピッチ(pitch)は、アスファルト製造などのために使用される副産物として、多数の芳香族環を有するポリ芳香族炭化水素を複数種含む粘性ある混合物の形態を帯びることができる。しかし、本発明者らの実験結果、このようなピッチなどに対して酸化剤を使用した酸化工程を経るようになると、前記ピッチに含まれているポリ芳香族炭化水素のうち、過度に大きい分子量を有するポリ芳香族炭化水素の少なくとも一部が分解され、比較的に狭い分子量分布を有するポリ芳香族炭化水素の混合物が得られることが確認された。これと共に、各ポリ芳香族炭化水素の芳香族環に一つ以上の酸素含有作用基が導入されながら、ポリ芳香族炭化水素酸化物を複数種含む混合物が得られることが確認された。
【0042】
具体的に、このような方法で得られるポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物は、MALDI−TOF MSで分析した時、分子量が約300乃至1000、あるいは約300乃至700であるポリ芳香族炭化水素酸化物を約60重量%以上、あるいは約65重量%以上、あるいは約70乃至95重量%で含むことが確認された。このような混合物中に含まれるポリ芳香族炭化水素酸化物の具体的な種類、構造および分布などは、その原料になるピッチの種類やその由来、あるいは酸化剤の種類などにより変わり得る。しかし、少なくとも、前記分散剤に含まれるポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物は、5乃至30個、あるいは7乃至20個のベンゼン環がそれぞれ含まれているポリ芳香族炭化水素に酸素含有作用基が一つ以上導入された構造を有するポリ芳香族炭化水素酸化物を複数種含み、このような混合物中のポリ芳香族炭化水素酸化物は、前述した分子量分布、つまり、分子量約300乃至1000、あるいは約300乃至700の酸化物が全体混合物の約60重量%以上になる分子量分布を有するようになる。
【0043】
この時、前記酸素含有作用基の種類は、ピッチなどの酸化工程で使用される酸化剤の種類などにより変わり得るが、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、ニトロ基およびスルホン酸からなる群より選択された1種以上になることができ、前記ポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物内には前記で言及した作用基中に選択された複数種の多様な作用基を有する色々なポリ芳香族炭化水素酸化物が包含および混合され得る。
【0044】
前述した構造的特性および分子量分布などを充足するポリ芳香族炭化水素酸化物と、これらの混合物は、芳香族環が集まった疎水性π−ドメインと、前記芳香族環などに結合された酸素含有作用基による親水性領域を同時に有することができる。これらのうち、疎水性π−ドメインは、黒煙またはその誘導体や、グラフェン(フレーク)など炭素−炭素結合が形成されている炭素系素材の表面とπ−π相互作用することができ、親水性領域は、それぞれの単一の炭素系素材(例えば、それぞれのグラフェンや、黒煙またはその誘導体の各粒子)間の反発力が発現するようにすることができる。その結果、前記ポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物を含む前述した分散剤は、水溶媒や極性有機溶媒など液状媒質内で炭素系素材の分子の間に存在してこのような炭素系素材を均一に分散させることができる。したがって、前記分散剤は、相対的に小さい量が使用されても前記炭素系素材をより高濃度で均一に分散させる優れた分散力を示すことが確認された。
【0045】
しかも、前述した分散剤は、酸素含有作用基などによる親水性領域の存在により、それ自体で水溶性を示すことができるため、環境にやさしい水溶媒内でも前記炭素系素材を均一に分散させることができる。特に、前記分散剤は、環境にやさしい水溶媒だけでなく、多様な極性有機溶媒内で、前記炭素系素材を高濃度で均一に分散させることができる優れた分散力を示すことが確認された。
【0046】
特に、前述のような優れた分散力は、前記ポリ芳香族炭化水素酸化物の化合物自体を分離された1〜2種で使用することだけでは達成しにくく、前述した分子量分布(分子量範囲および含有量範囲)を充足する複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物を使用してこそ達成可能であることが確認された。このような優れた分散力は、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物の形態の前述した分散剤が多種の成分を含み、広い分子量分布を有するためであり、このような優れた分散力により分散剤を非常に少量使用しても、前記1〜2種の分離された化合物を使用することと同等な分散効果を達成することができる。これは分散対象成分から後ほど除去される一種の不純物として作用する分散剤の残留量を大幅に減少させることができる効果へも帰結され得る。
【0047】
また、このような分散剤の優れた分散力により、一実施形態の製造方法で原料である黒鉛またはその誘導体をより均一に高濃度に分散させることができるようになる。したがって、このような最適化した分散状態で原料を剥離することによって、より薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークの容易な製造を可能にする主な要因の一つになることができる。ひいては、前記分散剤は、最終形成されたグラフェンフレーク表面に物理的に付着された状態で維持され得るため、一実施形態の方法で製造されたグラフェンフレークがそれ自体で多様な極性溶媒に優れた分散性などを示すようにできる。
【0048】
一方、前述した分散剤は、これに含まれている複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物を元素分析した時、全体混合物に含まれている酸素含有量が全体元素含有量の約12乃至50重量%、あるいは約15乃至45重量%になることができる。このような酸素含有量は、前記ポリ芳香族炭化水素酸化物で酸化工程により酸素含有作用基が導入された程度を反映するものであり、このような酸素含有量の充足により前述した親水性領域が適切な程度に含まれ得る。その結果、前述した一実施形態の方法でこのような分散剤を使用して原料である黒鉛またはその誘導体をより均一に分散させ、これから薄い厚さを有するグラフェンフレークをより効果的に得ることができ、最終製造されたグラフェンフレークの分散性をより向上させることができる。
【0049】
前記酸素含有量は、前述した混合物に含まれている複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物を元素分析して算出することができる。つまり、前記混合物試料(例えば、約1mg)を、例えば、薄い箔の上で約900℃内外の高温で加熱すれば箔が瞬間的に溶けながらその温度が約1500乃至1800℃まで上昇することができ、このような高温により前記混合物試料から気体が発生してこれを捕集および元素含有量を測定および分析することができる。このような元素分析の結果、前記複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物に含まれている炭素、酸素、水素および窒素の総元素含有量が測定および分析され、このような総元素含有量に対する酸素含有量を求めることができる。
【0050】
一方、前述した分散剤は、酸化剤の存在下に、分子量約200乃至1500のポリ芳香族炭化水素を含む混合物を酸化する段階を含む方法により製造され得る。
【0051】
前述したように、石油または石炭など化石燃料の精製過程でクズなどとして排出されるピッチは、ポリ芳香族炭化水素を複数種含み、粘性を帯びたり粉末形態を有する混合物状態になることができる。もちろん、ピッチの原料や由来などにより前記ポリ芳香族炭化水素の具体的種類、構造、組成比または分子量分布などが変わり得るが、前記ピッチは、例えば、5乃至50個の芳香族環、例えば、ベンゼン環が構造中に含まれているポリ芳香族炭化水素を複数種含むことができ、概して分子量約200乃至1500のポリ芳香族炭化水素を含むことができる。例えば、前記分散剤の製造方法で出発物質として使用される分子量約200乃至1500のポリ芳香族炭化水素を含む混合物(例えば、ピッチ)は、このような分子量範囲のポリ芳香族炭化水素を約80重量%以上、あるいは約90重量%以上の含有量で含むことができる。
【0052】
ところで、このようなピッチなどポリ芳香族炭化水素を含む混合物に対して酸化剤を使用した酸化工程を経るようになると、前記ピッチに含まれているポリ芳香族炭化水素中に過度に大きい分子量を有するポリ芳香族炭化水素が分解され、比較的に狭い分子量分布を有するポリ芳香族炭化水素の混合物が得られる。例えば、約1000、あるいは約700を超える分子量を有するポリ芳香族炭化水素が小さい分子量を有するものに分解され得る。また、これと共に各ポリ芳香族炭化水素の芳香族環に一つ以上の酸素含有作用基が導入されながら、ポリ芳香族炭化水素酸化物を複数種含む混合物、言い換えれば、一実施形態の方法で使用される分散剤が非常に簡単に製造され得る。
【0053】
このような分散剤の製造方法で、酸化剤は、その種類が特に制限されず、芳香族炭化水素に酸素含有作用基を導入する酸化反応を起こすことができるものであれば特別な制限なしに全て使用することができる。このような酸化剤の具体的な例としては、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、過酸化水素(H22)、硫酸アンモニウムセリウム(IV)(Ammonium cerium(IV) sulfate;(NH44Ce(SO44または硝酸アンモニウムセリウム(IV)(Ammonium cerium(IV) nitrate;(NH42Ce(NO36などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上の混合物を使用することもできることはもちろんである。
【0054】
そして、このような酸化段階は、水溶媒内で、約10乃至110℃の反応温度下に約0.5乃至20時間行われ得る。具体的な例で、硫酸および/または硝酸などの溶液状酸化剤の存在下に、前記ポリ芳香族炭化水素を含む混合物を一定量添加し、常温、例えば、約20℃あるいは80℃で約1乃至12時間前記酸化段階を行うことができる。このような酸化段階の反応温度または時間などを調節することによって、前述した分散剤の特性、例えば、ポリ芳香族炭化水素が酸化される程度などを適切に調節して所望の特性を有する分散剤を製造することができる。
【0055】
また、前述のように、前記製造方法の出発物質になる分子量約200乃至1500のポリ芳香族炭化水素を含む混合物は、化石燃料またはその産物から得られたピッチ(pitch)に由来することができ、このような原料などの種類により、前記ポリ芳香族炭化水素の種類、構造または分子量分布などは互いに異なるようになり得る。それにもかかわらず、前記ピッチなどに由来する分子量約200乃至1500のポリ芳香族炭化水素を含む混合物に対して酸化工程を行うことによって、炭素系素材に対して優れた分散力を示す前述した分散剤が簡単に製造され得る。
【0056】
一方、前述した製造方法は、酸化段階後に、その結果物を精製して複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物を得る段階をさらに含むことができ、このような精製段階は、酸化段階の結果物を遠心分離する段階を含んで行われ得る。このような精製段階の進行で、前述した分子量分布などを充足するポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物をより純度高く、かつ適切に得ることができ、これを含む分散剤を使用して一実施形態の方法でグラフェンをより効果的に製造することができる。
【0057】
一方、一実施形態に係るグラフェンの製造方法では、まず、前述した分散剤と、黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材とを含む分散液を得ることができる。
【0058】
この時、前記原料として使用可能な黒鉛またはその誘導体の種類は、特に制限されず、炭素原子層が積層された形態の立体構造を有することによって、高速、高圧、超音波照射または前段力などの任意の物理的力により剥離されて一つ以上の炭素原子層を有するグラフェンなどで製造され得る任意の炭素系素材を使用することができる。
【0059】
したがって、このような黒鉛またはその誘導体の範疇には、通常、グラファイトで称される通常の黒鉛だけでなく、これから製造され得る任意の誘導体や、これと類似に炭素原子層が積層された形態の立体構造を有する任意の類似体を全て包括して称すことができる。そのより具体的な例としては、膨張黒鉛(expanded graphite)、不定形黒鉛、板状型黒鉛、人造黒鉛、炭素層間にインターカレーション化合物が挿入されている改質黒鉛または炭素ナノ繊維などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上の混合物を前記原料である黒鉛またはその誘導体として使用することもできる。これらのうち、前記炭素ナノ繊維の場合、これをなす炭素原子層が繊維の軸方向に対して垂直配列されたものをより適切に使用することができ、これからグラフェンフレークをより好ましく製造することができる。
【0060】
また、前記分散液は、水溶媒または極性有機溶媒内に、黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材および前述した特定の分散剤が溶解または分散された分散液になることができる。このような分散液では、特定の分散剤の作用により、黒鉛またはその誘導体を含む炭素系素材が非常に均一に分散された状態で存在することができるため、このような最適化した分散状態で以降の剥離工程を行ってより薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークが効果的に形成され得る。
【0061】
そして、前記原料として使用される分散液で、前記水溶媒または極性有機溶媒としては、水、NMP、アセトン、DMF、DMSO、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、THF、エチレングリコール、ピリジン、ジメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、ブタノン、α−テルピネオール、ギ酸、酢酸エチルおよびアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上のような任意の水溶媒または極性有機溶媒を使用することができる。
【0062】
一方、一実施形態のグラフェン製造方法で、前記分散液を形成および提供した後には、これに対して物理的力を印加して前記黒鉛またはその誘導体を剥離することができ、これによってグラフェンフレークを製造することができる。この時、物理的力を印加する剥離工程は、従来からグラフェンの製造のために適用可能であると知られた任意の方法を全て適用して行うことができ、その他にも高圧均質器(High Pressure Homogenizer)を使用する方法など多様な方法を適用して行うことができる。
【0063】
このような方法の具体的な例としては、高速均質器(High Speed Homogenizer)、高圧均質器(High Pressure Homogenizer)、ボールミル、ビードミルまたは超音波照射器を使用した方法などが挙げられる。ただし、超音波照射を利用した方法は、大面積を有するグラフェンを得ることが難しかったり、剥離過程でグラフェン上に多くの欠陥が発生したり、剥離収率が不充分になるおそれがある。また、ボールミルやビードミルを使用する方法も十分に薄い厚さを有するグラフェンを得にくいおそれがあり、剥離収率も不十分になるおそれがある。
【0064】
したがって、上記方法の中でも、高速均質器または高圧均質器を使用した方法をより適宜に適用することができ、最も適宜には、高圧均質器を使用した方法を適用することができる。図1には、一実施形態のグラフェンの製造方法で使用可能な高圧均質器の原理を示す概略的な模式図が示されている。
【0065】
図1を参照すると、高圧均質器は、原料の流入部と、グラフェンフレークなど剥離結果物の流出部と、前記流入部と流出部の間を連結し、マイクロメータースケールの直径を有する微細流路とを含む構造を有することができる。このような高圧均質器の流入部を通じて、例えば、約100乃至3000barの高圧を印加しながら黒鉛またはその誘導体を含む分散液状態の原料を流入させると、このような原料がミクロン(μm)スケール、例えば、約10乃至800μm直径を有する微細流路を通過しながら、このような原料に高い前段力(shear force)が印加され得る。このような前段力の作用で前記黒鉛またはその誘導体が非常に効率的に剥離され、その結果、前述した分散剤との上昇作用で非常に薄い厚さおよび大面積を有するグラフェンフレークを製造できるようになることが確認された。
【0066】
したがって、一実施形態の方法で、前記高圧均質器を利用した方法を適用して、他の方法に比べても一層効果的に炭素原子層に対応する薄い厚さおよび一層大きい面積を有するグラフェンフレークを効果的かつ容易に製造することができる。
【0067】
一方、前述した一実施形態のグラフェンの製造方法は、前記グラフェンフレークの分散液からグラフェンフレークを回収および乾燥する段階をさらに含むこともでき、前記回収段階は、遠心分離、減圧濾過または加圧濾過で行われ得る。また、前記乾燥段階は、約30乃至200℃の温度下に真空乾燥して行われ得る。
【0068】
前述した一実施形態の方法によれば、炭素原子層の厚さに対応する非常に薄い厚さおよび非常に大きい面積(直径)を有するグラフェンフレークが高い収率で容易に製造され得る。
【0069】
例えば、このようなグラフェンフレークは、約1.5乃至50nm、あるいは約5乃至30nmの厚さを有することができ、約0.1乃至10μm、あるいは約0.1乃至5μmの大きい直径を有することができる。また、前記グラフェンフレークは、厚さに比べて面積(直径)が非常に大きくなり、約50乃至6000、あるいは約50乃至1000の直径/厚さの比を有することができる。この時、前記グラフェンフレークの「直径」とは、「グラフェンフレークの各粒子を最も広い面積を有する平面上でみた時、各粒子の平面上の任意の二点を連結する直線距離中の最長距離」で定義され得る。
【0070】
このように、一実施形態の方法でより薄い厚さおよび大きい面積を有するグラフェンフレークなどが製造されることによって、このようなグラフェンフレークは、グラフェンの優れた電気伝導性、熱伝導性および安定性をより極大化して発現することができる。
【0071】
また、前記グラフェンフレークは、前述した分散剤が表面に物理的に付着された状態で形成され得る。このような分散剤の物理的に付着により、前記グラフェンフレークは別途の処理や工程進行の必要性がなくても、直ちに多様な極性溶媒に対して非常に優れた分散性を示すことができる。つまり、従来のグラフェンフレークは、通常、少なくとも一部の溶媒に対する分散性が非常に落ちてその活用のためには分散性向上のための別途の処理を行ったり、別途の分散剤などの使用が必要であったことに比べて、一実施形態の方法で製造されたグラフェンフレークは、このような別途の処理などの必要性がなくても直ちに多様な極性溶媒に対する優れた分散性を示すことができる。
【0072】
したがって、一実施形態の方法で製造されたグラフェンフレークを直ちに(連続的に)多様な極性溶媒に再分散させて伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材などの多様な用途で活用できるようになる。
【0073】
そこで、発明の他の実施形態によれば、前述したグラフェンフレークを含むグラフェンの分散組成物が提供される。このような分散組成物は、前述した特定の分散剤、つまり、複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物であって、分子量約300乃至1000のポリ芳香族炭化水素酸化物を約60重量%以上の含有量で含む混合物を含む分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークと、前記グラフェンフレークを溶解または分散させる極性溶媒と、を含むことができる。
【0074】
前述のように、このような分散組成物は、前述した製造方法を通じて前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークを形成した後、その分散性を向上させるための別途の処理なしに、これを極性溶媒に直ちに(または連続的に)溶解または分散させて製造され得る。
【0075】
また、このような分散組成物で、前記グラフェンフレークを分散させるための極性溶媒としては、水などの水溶媒や、任意の極性溶媒を特別な制限なしに適用することができる。このような極性溶媒の具体的な例としては、水、NMP、アセトン、DMF、DMSO、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、THF、エチレングリコール、ピリジン、ジメチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、ブタノン、α−テルピネオール、ギ酸、酢酸エチルおよびアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0076】
そして、前記分散組成物で、前記分散剤が表面に物理的に付着されているグラフェンフレークは、極性溶媒の100重量部に対して約50重量部以下で含まれてもよく、前記グラフェンフレークが最大約50重量部の高濃度で含まれても、極性溶媒に均一に分散された状態を維持することができる。
【0077】
このように、前記分散組成物では、グラフェンフレークに物理的に付着された特定の分散剤の作用で、前記グラフェンフレークがそれ自体で多様な極性溶媒に対して優れた分散性を示すことができる。したがって、前記分散組成物は、実際適用される用途などを考慮して多様な極性溶媒に前記グラフェンフレークを高濃度で均一に分散させた状態を維持することができる。したがって、このような分散組成物は、グラフェンの優れた特性を極大化して発現させることができ、グラフェンの適用が必要な多様な用途で適用され得る。
【0078】
より具体的に、このようなグラフェンの分散組成物は、伝導性ペースト組成物、伝導性インク組成物、放熱基板形成用組成物、電気伝導性複合体、EMI遮蔽用複合体または電池用導電材として使用することができ、その他にも分散状態のグラフェンの適用が可能か必要であると知られた任意の用途で適用され得る。
【0079】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳しく説明する。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0080】
製造例1:分散剤の製造
ポスコから入手した石油副産物であるピッチ(pitch)に対して次のような酸化工程および精製工程を行って実施例1の分散剤を製造した。
【0081】
まず、硫酸/硝酸の混合溶液(体積比3:1)の75mlにピッチ0.5乃至1.5gを添加し、70℃で約3.5時間酸化反応を行った。
【0082】
以降、前記酸化反応が行われたピッチ反応溶液を常温で冷却させた後、5倍程度蒸溜水で希釈させた後、約3500rpmで30分間遠心分離した。次に、上澄液を除去し、同一量の蒸溜水を入れて再分散した後に、同一の条件で再び遠心分離して最終的に沈殿物を回収し乾燥した。これによって、実施例1の分散剤を製造した。
【0083】
まず、このような分散剤の製造過程中、原料として使用されたピッチの分子量分布をMALDI−TOF mass spectrumで分析して図2aおよび図2b(分子量400乃至500領域の拡大図)に示し、製造例1の分散剤の分子量分布を同様に分析して図3aおよび図3b(分子量400乃至500領域の拡大図)に示した。このような分析は、MALDI−TOF mass spectrum装備(Ultraflex II、Bruker)を使用し、前記ピッチまたは分散剤をマトリックス(matrix)に入れて混合した後に乾燥して進行した。
【0084】
前記図2aおよび図2b(拡大図)を参照すると、pitchの場合、分子量200乃至1500の分子量を有するポリ芳香族炭化水素を含むことが確認され、特に図2bの拡大図で分子量14Da間隔で大きいピークが検出されることから、互いに異なる個数の芳香族環(ベンゼン環)を有する複数種のポリ芳香族炭化水素が脂肪族炭化水素(aliphatic hydrocarbon)により連結されていることが確認された。これに比べて、図3aおよび図3b(拡大図)を参照すると、製造例1の分散剤は、ポリ芳香族炭化水素にそれぞれ44Daと16Dの間隔で存在する大きいピークが観察されたが、これはこのような芳香族炭化水素に−COOH、−OHまたは−SO3Hなど酸素含有作用基が導入されたポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物の形態で存在することを証明するものであり、約300乃至1000、あるいは約300乃至700の分子量を有する酸化物が60重量%以上で含まれることが確認された。
【0085】
また、前記原料として使用されたpitch(上段)および製造例1の分散剤(下段)をそれぞれ13C CPMAS NMR(Varian 400MHz Solid−State NMR)で分析して、その分析結果を図4に比較して示した。図4を参照すると、pitchでは芳香族炭化水素の炭素由来ピークと、一部の脂肪族炭化水素の炭素由来ピークが確認されたが、酸素含有作用基の存在は確認されなかった。これに比べて、製造例1の分散剤に対するNMR分析結果、酸素含有作用基のピークが確認された。このような酸素含有作用基の種類は、エポキシ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基などであることが確認された。
【0086】
付加して、前記原料として使用されたpitchおよび製造例1の分散剤をそれぞれ粉末状態でFT−IR(Agilent 660−IR)で分析してその分析結果を図5に比較して示した。このような図5からも、製造例1の分散剤で酸素含有作用基のピークが生成されることを確認した。
【0087】
製造例2乃至4:分散剤の製造
ポスコから入手した石油副産物であるピッチ(pitch;ただし、製造例1とは異なるサンプルのピッチを使用)を使用し、酸化反応時間をそれぞれ1時間(製造例2)、3.5時間(製造例3)および7時間(製造例4)で異にしたことを除いては、製造例1と同様な方法で行って製造例2乃至4の分散剤をそれぞれ製造した。
【0088】
このような分散剤を製造例1と同様な方法でMALDI−TOF mass spectrumで分析して、図6に比較して共に示した。図6を参照すると、酸化時間の増加により、分散剤中の分子量約1000、あるいは約700超過の成分(ポリ芳香族炭化水素酸化物)の含有量が減少し、分子量約300乃至1000、あるいは約300乃至700のポリ芳香族炭化水素酸化物をより高い含有量で含む混合物形態の分散剤が得られることが確認された。
【0089】
試験例1:分散剤の酸素含有量の測定
製造例3および4で得られた分散剤試料薬1mgを薄い箔の上で約900℃内外の高温で加熱した。この時、箔が瞬間的に溶けながらその温度が約1500乃至1800℃まで上昇し、このような高温により前記試料から気体が発生した。このような気体を捕集および元素分析して炭素、酸素、水素および窒素の各元素含有量を測定および分析した。このような分析結果は、各分散剤の製造のために使用されたピッチに対する分析結果と比較して下記表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
前記表1を参照すると、製造例3および4の分散剤中には、各元素の含有量を分析した時、酸素の含有量が全体元素含有量の約12乃至50重量%、あるいは約30乃至40重量%になることが確認された。
【0092】
比較製造例1:分散剤
商用化された下記の化学式1の分散剤(PNS)を比較製造例1とした。
【0093】
【化1】
【0094】
比較製造例2:分散剤
商用化された分散剤であるSodium dodecyl bezen esulfonate(SDBS)を比較製造例2とした。
【0095】
実施例1:グラフェンフレークの製造
製造例1の分散剤15mgが分散されている水分散液100mlにプリスティングラファイト(pristine graphite)0.5gを添加して分散液を形成した。チップタイプ(Tip−type)超音波照射器を使用し、320Wパワーおよび30分間隔で2回にわたって連続的に前記分散液に超音波を照射して、前記グラファイトを剥離し、実施例1のグラフェンフレークを製造した。
【0096】
図7の(a)には、グラフェンフレーク製造のために原料として使用されたグラファイトの電子顕微鏡写真を示し、(b)には、実施例1で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図7の(b)を参照すると、グラフェンフレークが比較的に良好に形成されていることが確認された。
【0097】
実施例2:グラフェンフレークの製造
実施例1と同様にプリスティングラファイトの分散液を形成した。このような分散液を12000rpmで回転している高速均質器に1時間にかけて通過させた。これによって、前記グラファイトを剥離し、実施例2のグラフェンフレークを製造した。
【0098】
図7の(a)には、グラフェンフレークの製造のために原料として使用されたグラファイトの電子顕微鏡写真を示し、(c)には、実施例2で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図7の(c)を参照すると、グラフェンフレークが比較的に良好に形成されていることが確認された。
【0099】
実施例3:グラフェンフレークの製造
実施例1と同様にプリスティングラファイトの分散液を形成した。0.3mmのZrO2ビードを有し、湿式で10回ビードが充填されたビードミルのチャンバーを適用し、前記分散液をビードミルのチャンバーに通過させてミリングおよび粉砕を行った。これによって、前記グラファイトを剥離し、実施例3のグラフェンフレークを製造した。
【0100】
図7の(a)には、グラフェンフレークの製造のために原料として使用されたグラファイトの電子顕微鏡写真を示し、(d)には、実施例3で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図7の(d)を参照すると、50nm内外の厚さを有するグラフェンフレークが比較的に良好に形成されていることが確認された。
【0101】
実施例4:グラフェンフレークの製造
実施例1と同様にプリスティングラファイトの分散液を形成した。このような分散液を約1600barの高圧で高圧均質器の流入部に流入させて微細流路を通過させ、このような過程を10回繰り返した。これによって、前記グラファイトを剥離し、実施例4のグラフェンフレークを製造した。
【0102】
図7の(a)には、グラフェンフレークの製造のために原料として使用されたグラファイトの電子顕微鏡写真を示し、(e)および(f)((e)の拡大図)には、実施例4で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図7の(e)および(f)を参照すると、実施例1乃至3に比べても薄い厚さおよび大きい面積を有し、欠陥が最小化されたグラフェンフレークが非常に良好に形成されていることが確認された。
【0103】
このような実施例4のグラフェンフレークをTEM分析してそのイメージを図8の(a)および(b)((a)の拡大図)に示した。前記図8の(a)を参照すると、実施例4で製造されたグラフェンフレークは、約0.5乃至5μmの直径を有する非常に大面積のものと確認された。また、前記図8の(b)を参照すると、前記実施例4のグラフェンフレークは、TEM分析のために配置した下部の炭素グリッド(図面の赤色矢印)が前記グラフェンフレークを通じて観察される程度に非常に薄い厚さを有することが確認された。
【0104】
付加して、実施例4のグラフェンフレークをAFM分析してその結果を図8の(c)および(d)にそれぞれ示した。これを参照すると、実施例4のグラフェンフレークは、約6乃至17nmの非常に薄い厚さを有することが確認された。
【0105】
比較例1:グラフェンフレークの製造
比較製造例1の分散剤1.0g、水50mLおよびプリスティングラファイト2.5gを混合して分散液を形成した。このような分散液を約1600barの高圧で高圧均質器の流入部に流入させて微細流路を通過させ、このような過程を10回繰り返した。これによって、前記グラファイトを剥離し、比較例1のグラフェンフレークを製造した。
【0106】
図9には、比較例1で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図9を参照すると、比較製造例1の分散剤を使用する場合、製造されたグラフェンフレークが比較的に厚く形成されるなどグラファイトの剥離が良好に行われていないことが確認された。
【0107】
比較例2:グラフェンフレークの製造
比較製造例2の分散剤1.0g、水50mLおよびプリスティングラファイト2.5gを混合して分散液を形成した。このような分散液を約1600barの高圧で高圧均質器の流入部に流入させて微細流路を通過させ、このような過程を10回繰り返した。これによって、前記グラファイトを剥離し、比較例2のグラフェンフレークを製造した。
【0108】
図10には、比較例2で製造されたグラフェンフレークの電子顕微鏡写真を示した。図10を参照すると、比較製造例2の分散剤を使用する場合にも、製造されたグラフェンフレークが比較的に厚く形成されるなどグラファイトの剥離が良好に行われていないことが確認された。
【0109】
試験例2:グラフェンフレークの極性溶媒に対する再分散性の評価
まず、実施例4でグラフェンフレークの分散液を製造した後、8000rpmで30分間遠心分離して沈殿物であるグラフェンフレークを回収した。以降、55℃のオーブンで3日間真空乾燥して、グラフェンフレークを乾燥状態で得た。
【0110】
このようなグラフェンフレークの粉末20mgを図11に示された多様な溶媒10mlに加え、バスタイプ超音波照射器(bath type sonicator)で1時間再分散させた。図11には、このような再分散性を評価した結果を示す肉眼観察写真が示されている。
【0111】
追加的に、比較例1で製造されたグラフェンフレークの分散液に対しても、同様に処理して乾燥状態のグラフェンフレークを得た後、同様な方法で極性溶媒(水)に対して再分散性を評価した。このように再分散性を評価した結果を示す肉眼観察写真を図12に前記実施例4と比較して示した。
【0112】
図11を参照すると、実施例で得られたグラフェンフレークは、多様な極性溶媒に高濃度で非常に均一に分散され得ることが確認された。これは実施例で使用された特定の分散剤の作用と予測される。特に、従来の方法で製造されたグラフェンフレークが極性溶媒内で再びかたまって別途の処理なしでは分散されにくいこととは異なり、実施例のグラフェンフレークはそれ自体で多様な極性溶媒に均一に分散され得るため、より多様な用途で容易に適用され得ることが確認された。
【0113】
これに比べて、図12を参照すると、比較製造例1(PNS)の分散剤を使用した場合、グラフェンフレークが良好に分散されず、バイアルの壁についてかたまった状態で単に水に浮かんでいる状態で存在することが確認された。
【0114】
これは単に1〜2種の分離された化合物の形態を有する比較製造例1の分散剤とは異なり、製造例1の分散剤が複数種のポリ芳香族炭化水素酸化物の混合物の形態であり、このようなポリ芳香族炭化水素酸化物の分子量範囲および含有量範囲が最適化されて、炭素系素材とより効果的に相互作用し、これによって炭素系素材をより良好に分散および剥離させることができるためとみられる。
【0115】
特に、実施例1および4と、比較例1を比較する時、実施例1および4の分散剤は、最初使用されたプリスティングラファイト2.5gの同一重量を基準に換算しても、比較例1に比べて小さい重量で使用された。それにもかかわらず、実施例でグラフェンフレークに対して比較例に比べて優れた剥離特性および分散性が発現しているところ、これは実施例および製造例による分散剤の非常に優れた分散力を裏付け、分散剤の使用必要含有量が大幅に減少することとなり、後ほどグラフェンフレークから除去される必要がある残留分散剤の量も大幅に減少することとなることを意味する。
【0116】
試験例3:グラフェン含有フィルムの製造および電気的特性の評価(面抵抗の測定)
まず、実施例4で得られたグラフェンフレークをそれぞれ0.1、0.5、1.0、2.0、3.0mg/mlの多様な濃度で水に再分散させて水分散液を形成した。このような水分散液20mlを直径が47mmであり、気孔の大きさが200nmである多孔性AAOメンブレインを使用して真空濾過することによってグラフェン含有フィルムを製造した。このようなグラフェン含有フィルムに対して4−ポイントプローブ装置を使用して互いに異なる領域で面抵抗を測定し、その測定結果を図13に示した。
【0117】
図13を参照すると、水分散液中のグラフェンフレークの濃度が増加するほど、フィルム厚さが増加して面抵抗は減少する傾向を示し、全体的にグラフェン含有フィルムが低い面抵抗および優れた電気伝導度を有することが確認された。これによって、実施例のグラフェンフレークが薄い厚さを有しても、ある程度優れた電気的特性を示すという点と、グラフェンフレーク表面に物理的に付着された分散剤が前記グラフェンフレークの電気伝導度に特別な悪影響を及ぼさないという点が確認される。
【0118】
一方、実施例4の乾燥グラフェンフレーク5.0gと、NMP12mlを混合し、ペーストミキサーを使用して1500rpmで2分間攪拌して高粘度のペースト組成物を得た。このようなペースト組成物をPET基材にバーコーティングし、100℃オーブンで30分間乾燥して残留溶媒を除去した。このような方法でグラフェン含有フィルムを形成し、フィルム上の11個地点で4−ポイントプローブ装置を使用して面抵抗を測定した。図14には、前記フィルムを形成したものと、その面抵抗を測定した結果が示されている。
【0119】
図14を参照すると、前記面抵抗の平均が約47.5(±4.8)Ω/□であり、比較的大きい厚さのフィルム状態でも低い面抵抗および優れた電気伝導度を有することが確認された。これによって、前記グラフェンフレークを使用して伝導性ペースト、インクジェットプリンティング用インク組成物または伝導性インク組成物を形成し、これを適用して伝導性パターンを形成したり、前記フィルム状態で放熱基板などの素材として応用するなど多様な分野や用途で使用できることが確認された。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14