特許第6208430号(P6208430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208430
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】レーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170925BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   B23K26/38 Z
   B23K26/40
   B23K26/064 A
   B23K26/046
   B23K26/04
   B23K26/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-12209(P2013-12209)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143354(P2014-143354A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】森數 洋司
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】 山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−142303(JP,A)
【文献】 特開2005−288501(JP,A)
【文献】 特開2006−114786(JP,A)
【文献】 特開2006−035710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
H01L 21/301
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー加工方法であって、
被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路として被加工物の入射面から内部に形成するフィラメント形成工程と、
該フィラメント形成工程が実施された被加工物に加工を施すパルスレーザー光線を該フィラメントに照射して該フィラメントに沿って伝送することにより加工を施すレーザー加工工程と、を含み、
該フィラメント形成工程は、被加工物の加工ラインに沿って隣接するフィラメント同士が離間して形成されるように所定の間隔でパルスレーザー光線を照射し、上面から下面に渡り被加工物の屈折率よりも高い屈折率となり光伝送路となる領域を形成して複数のフィラメントをなし、
該レーザー加工工程はパルスレーザー光線を照射することにより実施され、照射されるパルスレーザー光線は、隣接する全ての該フィラメントに対し、該フィラメントに沿って内部に導かれ上面から下面に至る破壊層形成されるようにスポット径、繰り返し周波数、および加工送り速度が設定されるものであって、
該フィラメント形成工程において照射されるパルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を、0.2〜0.3に設定する、
ことを特徴とするレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物の内部に加工ラインに沿ってレーザー加工を施すレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された機能層によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる加工ラインによって区画されており、このストリートに沿って分割することによって個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
また、光デバイス製造工程においては、サファイア基板や炭化珪素基板の表面にn型窒化物半導体層およびp型窒化物半導体層からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することにより光デバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスを製造している。
【0004】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割する技術である。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物をストリートに沿って分割する方法として、その被加工物に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線をストリートに沿って照射することによりアブレーション加工を施してレーザー加工溝を形成し、この破断起点となるレーザー加工溝が形成されたストリートに沿って外力を付与することにより割断する技術が実用化されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開平10―305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、ウエーハの内部にレーザー光線の集光点を位置付けて改質層を形成するためには開口数(NA)が0.8前後の集光レンズを用いる必要があり、例えば厚みが300μmのウエーハを個々のデバイスに分割するためには改質層を数段重ねて形成しなければならず生産性が悪いという問題がある。
また、ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射すると、ウエーハの入射面近傍でアブレーション加工が施されてエネルギーがウエーハの内部まで浸透しないため、ストリートに沿って複数回パルスレーザー光線を照射しなければならず生産性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物の加工ラインに沿ってパルスレーザー光線を2回照射することにより、被加工物を加工ラインに沿って破断可能な状態に加工することができるレーザー加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物にレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー加工方法であって、
被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路として被加工物の入射面から内部に形成するフィラメント形成工程と、
該フィラメント形成工程が実施された被加工物に加工を施すパルスレーザー光線を該フィラメントに照射して該フィラメントに沿って伝送することにより加工を施すレーザー加工工程と、を含み、
該フィラメント形成工程は、被加工物の加工ラインに沿って隣接するフィラメント同士が離間して形成されるように所定の間隔でパルスレーザー光線を照射し、上面から下面に渡り被加工物の屈折率よりも高い屈折率となり光伝送路となる領域を形成して複数のフィラメントをなし、
該レーザー加工工程はパルスレーザー光線を照射することにより実施され、照射されるパルスレーザー光線は、隣接する全ての該フィラメントに対し、該フィラメントに沿って内部に導かれ上面から下面に至る破壊層形成されるようにスポット径、繰り返し周波数、および加工送り速度が設定されるものであって、
該フィラメント形成工程において照射されるパルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を、0.2〜0.3に設定する
ことを特徴とするレーザー加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工方法は、被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路として被加工物の入射面から内部に形成するフィラメント形成工程と、該フィラメント形成工程が実施された被加工物に加工を施すパルスレーザー光線を該フィラメントに照射して該フィラメントに沿って伝送することにより加工を施すレーザー加工工程とを含み、該フィラメント形成工程は、被加工物の加工ラインに沿って隣接するフィラメント同士が離間して形成されるように所定の間隔でパルスレーザー光線を照射し、上面から下面に渡り被加工物の屈折率よりも高い屈折率となり光伝送路となる領域を形成して複数のフィラメントをなし、該レーザー加工工程はパルスレーザー光線を照射することにより実施され、照射されるパルスレーザー光線は、隣接する全ての該フィラメントに対し、該フィラメントに沿って内部に導かれ上面から下面に至る破壊層形成されるようにスポット径、繰り返し周波数、および加工送り速度が設定されるものであって、該フィラメント形成工程において照射されるパルスレーザー光線を集光する集光レンズの開口数(NA)を、0.2〜0.3に設定するので、レーザー加工工程において照射されるパルスレーザー光線は、フィラメント形成工程において形成された被加工物の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路として導かれるため被加工物の入射面(上面)から下面に亘って加工することができるため、被加工物の厚みが厚くてもパルスレーザー光線をフィラメント形成工程とレーザー加工工程の2回照射すればよいため生産性が極めて良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるレーザー加工方法によって加工される被加工物としての光デバイスウエーハの斜視図。
図2図1に示す光デバイスウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着された状態を示す斜視図。
図3】本発明によるレーザー加工方法におけるフィラメント形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図4】本発明によるレーザー加工方法におけるフィラメント形成工程の説明図。
図5】本発明によるレーザー加工方法におけるウエーハ分割工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図6】本発明によるレーザー加工方法におけるウエーハ分割工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるレーザー加工方法について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によるレーザー加工方法によって加工される被加工物としての光デバイスウエーハの斜視図が示されている。図1に示す光デバイスウエーハ2は、厚みが300μmのサファイア基板の表面2aに発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイス21がマトリックス状に形成されている。そして、各光デバイス21は、格子状に形成されたストリートと呼ばれる加工ライン22によって区画されている。
【0015】
上述した光デバイスウエーハ2を加工ライン22に沿って分割するために、加工ライン22に沿ってレーザー加工を施すレーザー加工方法について説明する。
先ず、光デバイスウエーハ2を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図2に示すように、環状のフレーム3の内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープ30の表面に光デバイスウエーハ2の裏面2bを貼着する。
【0016】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、被加工物である光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を加工ライン22に沿って照射し、サファイア基板の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路としてサファイア基板の入射面から内部に形成するフィラメント形成工程を実施する。このフィラメント形成工程は、図3に示すレーザー加工装置4を用いて実施する。図3に示すレーザー加工装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42と、チャックテーブル41上に保持された被加工物を撮像する撮像手段43を具備している。チャックテーブル41は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって図3において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって図3において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0017】
上記レーザー光線照射手段42は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング421を含んでいる。ケーシング421内には図示しないパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング421の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光レンズ422aを備えた集光器422が装着されている。この集光器422の集光レンズ422aは、開口数(NA)が0.2〜0.3の範囲に設定されることが重要である。図示の実施形態においては開口数(NA)が0.25に設定されている。なお、レーザー光線照射手段42は、集光器422によって集光されるパルスレーザー光線の集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(図示せず)を備えている。
【0018】
上記レーザー光線照射手段42を構成するケーシング421の先端部に装着された撮像手段43は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0019】
上述したレーザー加工装置4を用いて、光デバイスウエーハ2を構成するサファイア基板に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を加工ライン22に沿って照射し、サファイア基板の屈折率よりも高い屈折率のフィラメントを光伝送路としてサファイア基板の入射面から内部に形成するフィラメント形成工程について、図3および図4を参照して説明する。
先ず、上述した図3に示すレーザー加工装置4のチャックテーブル41上に光デバイスウエーハ2が貼着されたダイシングテープ30側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープ30を介して光デバイスウエーハ2をチャックテーブル41上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル41に保持された光デバイスウエーハ2は、表面2aが上側となる。なお、図3においてはダイシングテープ30が装着された環状のフレーム3を省いて示しているが、環状のフレーム3はチャックテーブル41に配設された適宜のフレーム保持手段に保持される。このようにして、光デバイスウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル41は、図示しない加工送り手段によって撮像手段43の直下に位置付けられる。
【0020】
チャックテーブル41が撮像手段43の直下に位置付けられると、撮像手段43および図示しない制御手段によって光デバイスウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段43および図示しない制御手段は、光デバイスウエーハ2の所定方向に形成されている加工ライン22と、該加工ライン22に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42の集光器422との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、光デバイスウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成された加工ライン22に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0021】
上述したアライメント工程を実施したならば、図4で示すようにチャックテーブル41をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42の集光器422が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の加工ライン22を集光器422の直下に位置付ける。このとき、図4の(a)で示すように光デバイスウエーハ2は、加工ライン22の一端(図4の(a)において左端)が集光器422の直下に位置するように位置付けられる。次に、集光器422から照射されるパルスレーザー光線LB1の集光点P1を光デバイスウエーハ2の入射面である表面2a(上面)から僅かに内部に位置付ける。このパルスレーザー光線の集光点P1は、図示の実施形態においては図4の(c)に示すように光デバイスウエーハ2の入射面である表面2a(上面)から160μm下方位置に設定されている。そして、集光器422からサファイア基板に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル41を図4の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる(フィラメント形成工程)。そして、図4の(b)で示すようにレーザー光線照射手段42の集光器422の照射位置に加工ライン22の他端(図4の(a)において左端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル41の移動を停止する。
【0022】
上記フィラメント形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :1030nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
パルス幅 :10ps
平均出力 :3W
集光レンズの開口数(NA) :0.25
集光スポット径 :φ10μm
ホーカス :−160μm(入射面からデホーカス)
加工送り速度 :800mm/秒
【0023】
上述した加工条件によってフィラメント形成工程を実施することにより、光デバイスウエーハ2の内部には、入射面である表面2a(上面)から裏面2b(下面)に亘って加工ライン22に沿って所定の間隔(図示の実施形態においては16μmの間隔((加工送り速度:800mm/秒)/(繰り返し周波数:50kHz))でサファイア基板の屈折率よりも高い屈折率のフィラメント23が形成される。このフィラメント23は、後述するレーザー加工工程における光伝送路として機能する。
【0024】
上述したように所定の加工ライン22に沿って上記フィラメント形成工程を実施したら、チャックテーブル41を矢印Yで示す方向に光デバイスウエーハ2に形成された加工ライン22の間隔だけ割り出し移動し(割り出し工程)、上記フィラメント形成工程を遂行する。このようにして所定方向に形成された全ての加工ライン22に沿って上記フィラメント形成工程を実施したならば、チャックテーブル41を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された加工ライン22に対して直交する方向に延びる加工ライン22に沿って上記フィラメント形成工程を実行する。
【0025】
上述したフィラメント形成工程を実施したならば、フィラメント形成工程が実施された被加工物に加工を施すパルスレーザー光線をフィラメント23に照射してフィラメント23に沿って伝送することにより加工を施すレーザー加工工程を実施する。このレーザー加工工程は、上記図3に示すレーザー加工装置4と同様のレーザー加工装置を用いて実施することができる。即ち、レーザー加工工程を実施するには、図5に示すようにレーザー加工装置4のチャックテーブル41上に光デバイスウエーハ2が貼着されたダイシングテープ30側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープ30を介して光デバイスウエーハ2をチャックテーブル41上に保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル41に保持された光デバイスウエーハ2は、表面2aが上側となる。なお、図5においてはダイシングテープ30が装着された環状のフレーム3を省いて示しているが、環状のフレーム3はチャックテーブル41に配設された適宜のフレーム保持手段に保持される。このようにして、光デバイスウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル41は、図示しない加工送り手段によって撮像手段43の直下に位置付けられる。そして、上述したアライメント工程が実施される。
【0026】
次に、チャックテーブル41をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段42の集光器422が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の加工ライン22を集光器422の直下に位置付ける。このとき、図6の(a)で示すように光デバイスウエーハ2は、加工ライン22の一端(図6の(a)において左端)が集光器422の直下に位置するように位置付けられる。次に、集光器422から照射されるパルスレーザー光線LB2の集光点P2を光デバイスウエーハ2の入射面である表面2a(上面)に位置付ける。そして、集光器422からサファイア基板に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル41を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図6の(b)で示すようにレーザー光線照射手段42の集光器422の照射位置に加工ライン22の他端(図6の(a)において左端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル41の移動を停止する。
【0027】
上記フィラメント形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :355nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :10kHz
パルス幅 :10ps
平均出力 :7W
集光レンズの開口数(NA) :0.25
集光スポット径 :φ10μm
ホーカス :0μm(入射面でジャストホーカス)
加工送り速度 :100mm/秒
【0028】
上述した加工条件においては、集光スポット径がφ10μmのパルスレーザー光線は加工ライン22に沿って10μmの間隔((加工送り速度:100mm/秒)/(繰り返し周波数:10kHz))で照射されるので、上述したように16μmの間隔で形成されたフィラメント23に照射することができる。このようにして光デバイスウエーハ2の入射面である表面2a(上面)に加工ライン22に沿って照射されたパルスレーザー光線は、フィラメント23に照射されるとフィラメント23がサファイア基板の屈折率よりも高い屈折率に形成されているため、図6の(c)で示すようにフィラメント23に沿って内部に導かれ破壊層24を形成する。このように、レーザー加工工程において照射されるパルスレーザー光線は、サファイア基板の屈折率よりも高い屈折率に形成されたフィラメント23を光伝走路として導かれるため光デバイスウエーハ2の入射面である表面2a(上面)から裏面2b(下面)に亘って破壊層24を形成することができるので、生産性が極めて良好となる。このようにして形成された破壊層24は、強度が低下せしめられた状態となる。
【0029】
上述したように所定の加工ライン22に沿って上記レーザー加工工程を実施したら、チャックテーブル41を矢印Yで示す方向に光デバイスウエーハ2に形成された加工ライン22の間隔だけ割り出し移動し(割り出し工程)、上記レーザー加工工程を遂行する。このようにして所定方向に形成された全ての加工ライン22に沿って上記レーザー加工工程を実施したならば、チャックテーブル41を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された加工ライン22に対して直交する方向に延びる加工ライン22に沿って上記レーザー加工工程を実行する。
【0030】
以上のようにしてフィラメント形成工程およびレーザー加工工程が実施された光デバイスウエーハ2は、破壊層24が形成された加工ライン22に沿って破断するウエーハ分割工程に搬送される。そして、ウエーハ分割工程においては、破壊層24が形成された加工ライン22に沿って外力を付与することにより、光デバイスウエーハ2は強度が低下せしめられた破壊層24に沿って容易に破断され、個々の光デバイスに分割される。
【0031】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては光デバイスウエーハを構成するサファイア基板の表面からレーザー光線を入射させているが、裏面から入射してもよい。
また、上述した実施形態においては光デバイスウエーハを個々の光デバイスに分割する例を示したが、本発明はガラス板に細孔をあける場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0032】
2:光デバイスウエーハ
21:光デバイス
22:加工ライン
23:フィラメント
24:破壊層
3:環状のフレーム
30:ダイシングテープ
4:レーザー加工装置
41:レーザー加工装置のチャックテーブル
42:レーザー光線照射手段
422:集光器
図1
図2
図3
図4
図5
図6