特許第6208498号(P6208498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208498
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】研磨パッドおよびウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170925BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20170925BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20170925BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170925BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/304 622F
   H01L21/304 621D
   H01L21/304 621C
   B24D11/00 D
   B24D3/00 320A
   B24D3/28
   C08K3/22
   C08L75/04
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-178167(P2013-178167)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-46550(P2015-46550A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
(72)【発明者】
【氏名】猿見田 誠
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−225987(JP,A)
【文献】 特開2002−233962(JP,A)
【文献】 特開平08−064562(JP,A)
【文献】 特開昭63−139671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24D 3/00
B24D 3/28
B24D 11/00
C08K 3/22
C08L 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するための研磨パッドであって、
シリコンと固相反応を誘発するSiO、CeO、ZrOのいずれかである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発するモース硬度が9以上である研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッド。
【請求項2】
シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するための研磨パッドであって、
シリコンと固相反応を誘発する粒径が2μmである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する粒径が0.5μmである研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッド。
【請求項3】
該液状結合剤は、ウレタンを溶媒で溶解した液体である、請求項1、又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドを使用し、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着し、チャックテーブルの保持面に保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該研磨パッドにpH10〜12のアルカリ溶液を供給しつつ該研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することによりウエーハの裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、
アルカリ溶液の供給を停止して該研磨パッドに純水を供給しつつ該研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項5】
該ゲッタリング層形成工程においては、該チャックテーブルの回転中心と該研磨パッドの回転中心とがウエーハの裏面を摺動する方向に離れるように該チャックテーブルと該研磨パッドを相対的に移動せしめる、請求項4記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するための研磨パッドおよびウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるシリコン基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の矩形領域を区画し、該矩形領域の各々にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように複数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って分割することにより、個々の半導体デバイスを形成する。半導体デバイスの小型化および軽量化を図るために、通常、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々の矩形領域を分割するのに先立って、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成している。
【0003】
しかるに、上述したような半導体ウエーハの裏面を研削すると、半導体デバイスの裏面にマイクロクラックからなる1μm程度の研削歪層が生成され、半導体ウエーハの厚みが100μm以下と薄くなると、半導体デバイスの抗折強度が低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成した後に、半導体ウエーハの裏面にポリッシング加工、ウエットエッチング加工、ドライエッチング加工等を施し、半導体ウエーハの裏面に生成された研削歪層を除去し、半導体デバイスの抗折強度の低下を防いでいる。
【0005】
しかしながら、DRAMやフラッシュメモリ等のようにメモリ機能を有する半導体デバイスが複数形成された半導体ウエーハにおいては、裏面研削後にポリッシング加工、ウエットエッチング加工、ドライエッチング加工等によって研削歪層を除去すると、メモリ機能が低下するという問題がある。これは、半導体デバイス製造工程において半導体ウエーハの内部に含有した銅等の金属イオンが裏面の研削歪層を除去する前にはゲッタリング効果によって裏面側に偏っていたが、裏面の歪層が除去されるとゲッタリング効果が消失して半導体ウエーハの内部に含有した銅等の金属イオンがデバイスが形成された表面側に浮遊することで電流リークが発生するためと考えられる。
【0006】
このような問題を解消するために、半導体ウエーハの裏面に0.2μm以下の厚さのマイクロクラックからなる研削歪層(ゲッタリング層)を形成することにより、半導体デバイスの抗折強度を低下させることなくゲッタリング効果を有する半導体デバイスの製造方法が下記特許文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−317846号公報
【特許文献2】特開2005−85925号公報
【特許文献3】特開2008−108792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献に記載された半導体デバイスの製造方法においては、ポリッシング手段とゲッタリング層形成手段が必要となり、装置構成が複雑になるとともに生産性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、ポリッシング機能とゲッタリング層形成機能を兼ね備えた研磨パッドおよびウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術課題を解決するために、本発明によれば、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するための研磨パッドであって、
シリコンと固相反応を誘発するSiO、CeO、ZrOのいずれかである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発するモース硬度が9以上である研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッド、が提供される。
【0011】
また、上記技術課題を解決するために、本発明によれば、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するための研磨パッドであって、
シリコンと固相反応を誘発する粒径が2μmである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する粒径が0.5μmである研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドが提供される。
上記該液状結合剤は、ウレタンを溶媒で溶解した液体である。
【0012】
また、本発明によれば、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドを使用し、シリコン基板の表面にデバイスが形成されたウエーハの裏面に金属イオンの誘導を規制するゲッタリング層を形成するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着し、チャックテーブルの保持面に保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該研磨パッドにpH10〜12のアルカリ溶液を供給しつつ該研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することによりウエーハの裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、
アルカリ溶液の供給を停止して該研磨パッドに純水を供給しつつ該研磨パッドを回転するとともに該チャックテーブルを回転させながら該研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0013】
上記ゲッタリング層形成工程においては、チャックテーブルの回転中心と研磨パッドの回転中心とがウエーハの裏面を摺動する方向に離れるようにチャックテーブルと研磨パッドを相対的に移動せしめる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による研磨パッドは、シリコンと固相反応を誘発するSiO、CeO、ZrOのいずれかである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発するモース硬度が9以上である研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥して、又はシリコンと固相反応を誘発する粒径が2μmである固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する粒径が0.5μmである研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥して構成されているので、ウエーハの裏面に残存した研削砥石による研削歪を効果的に除去できるとともに、抗折強度を低下させない僅かな傷をウエーハの裏面に形成してゲッタリング層を形成することができる。
【0015】
また、本発明によるウエーハの加工方法は、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥してなる研磨パッドを使用し、ウエーハの表面に保護部材を貼着しチャックテーブルの保持面に保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、研磨パッドにpH10〜12のアルカリ溶液を供給しつつ研磨パッドを回転するとともにチャックテーブルを回転させながら研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することによりウエーハの裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、アルカリ溶液の供給を停止して研磨パッドに純水を供給しつつ研磨パッドを回転するとともにチャックテーブルを回転させながら研磨パッドによってウエーハの裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程とを実施するので、研磨パッドによってウエーハの裏面に残存した研削砥石による研削歪を除去した後に、同じ研磨パッドによってウエーハの裏面にゲッタリング層を効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従って構成された研磨パッドを備えた加工装置の斜視図。
図2図1に示す加工装置に装備される研磨手段の斜視図。
図3図1に示す加工装置に装備される研磨工具の斜視図。
図4図3に示す研磨工具の下方から視た斜視図。
図5】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図6図5に示す半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する保護テープ貼着工程の説明図。
図7】本発明によるウエーハの加工方法における歪層除去工程の説明図。
図8】本発明によるウエーハの加工方法におけるゲッタリング層形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に従って構成された研磨パッドおよびウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1には本発明に従って構成された研磨パッドを備えた加工装置の斜視図が示されている。
図1に示す加工装置は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上部)に設けられ実質的に上下方向に延びる直立壁22とを有している。このように形成された装置ハウジング2は、後述する被加工物であるウエーハを搬入・搬出する搬入・搬出領域2aと粗研削領域2bと仕上げ研削領域2cおよび研磨領域2dを備えている。
【0019】
上記装置ハウジング2の主部21にはターンテーブル3が回転可能に配設されており、このターンテーブル3は図示しないテーブル回動手段によって上記搬入・搬出領域2aと粗研削領域2bと仕上げ研削領域2cおよび研磨領域2dに沿って矢印Aで示す方向に回転せしめられる。このターンテーブル3には、ウエーハ保持手段としての4個のチャックテーブル4a、4b、4c、4dが配設されている。この4個のチャックテーブル4a、4b、4c、4dは図示の実施形態においてはそれぞれ90度の等角度をもって配設されている。このチャックテーブル4a、4b、4c、4dは、それぞれ円盤状の基台と該基台の上面に配設されたポーラスセラミック材からなる吸着保持チャックとからなっており、吸着保持チャックの上面(保持面)に載置された被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。このように構成されたチャックテーブル4a、4b、4c、4dは、それぞれ図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる。
【0020】
上記ターンテーブル3の上面には上記4個のチャックテーブル4a、4b、4c、4dが配設された領域を仕切る仕切り板36、36、36、36が配設されている。この仕切り板36、36、36、36は、ターンテーブル3の回転軸心から半径方向に延在して配設され、その高さはチャックテーブル4a、4b、4c、4dの高さより高く形成されている。
【0021】
上記粗研削領域2bには、粗研削手段としての粗研削ユニット5が配設されている。粗研削ユニット5は、ユニットハウジング51と、該ユニットハウジング51の下端に回転自在に装着された粗研削ホイール52と、該ユニットハウジング51の上端に装着され粗研削砥石を備えた粗研削ホイール52を所定の方向に回転せしめるサーボモータ53と、ユニットハウジング51を装着した移動基台54とを具備している。移動基台54には被案内レール55、55が設けられており、この被案内レール55、55を上記直立壁22に設けられた案内レール22a、22aに移動可能に嵌合することにより、粗研削ユニット5が上下方向即ちチャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に垂直な方向に移動可能に支持される。図示の形態における粗研削ユニット5は、上記移動基台54を案内レール22a、22aに沿って移動させる研削送り手段56を具備している。研削送り手段56は、上記直立壁22に設けられた案内レール22a、22aと平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ネジロッド57と、該雄ネジロッド57を回転駆動するためのパルスモータ58と、上記移動基台54に装着され雄ネジロッド57と螺合する図示しない雌ネジブロックを具備しており、パルスモータ58によって雄ネジロッド57を正転および逆転駆動することにより、粗研削ユニット5を上下方向に移動せしめる。
【0022】
上記仕上げ研削領域2cには、仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット50が配設されている。仕上げ研削ユニット50は、仕上げ研削砥石を備えた仕上げ用の研削ホイール520が上記粗研削ユニット5の粗研削ホイール52と相違する以外は粗研削ユニット5と実質的に同様の構成であり、従って粗研削ユニット5の構成部材と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0023】
上記研磨領域2dには、研磨手段7が配設されている(図1には2点鎖線で一部の輪郭が示されている)。この研磨手段7について、図2を参照して説明する。
図2に示す研磨手段7はケミカルメカニカルポリッシング(CMP)手段からなっており、研磨工具71を着脱可能に装着するマウンター72と、該マウンター72を回転せしめる回転スピンドル731を備えたスピンドルユニット73と、該スピンドルユニット73を上記チャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に対して垂直な方向(Z軸方向)およびスピンドルユニット73を該チャックテーブルの保持面に対して平行な方向(Y軸方向)に移動可能に支持するスピンドルユニット支持手段74と、スピンドルユニット73をチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向(Z軸方向)に移動せしめる第1の研磨送り手段75と、スピンドルユニット73をチャックテーブルの該保持面に対して平行な方向(Y軸方向)に移動せしめる第2の研磨送り手段76とを具備している。スピンドルユニット73は、上記マウンター72を回転駆動するためのサーボモータ730を備えている。
【0024】
研磨工具71は、図3および図4に図示すように円環状の支持基台711と円環状の研磨パッド712とから構成されている。支持基台711はアルミ合金によって形成されており、図3に示すように中心部には研磨液が通る穴711aが形成されている。また、支持基台711には、周方向に間隔をおいてその上面から下方に延びる複数の盲ネジ穴711bが形成されている。支持基台711の下面は円環状の支持面を形成しており、研磨パッド712が両面接着テープによって装着されている。この研磨パッド712は、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥して構成される。なお、研磨パッド712は、図示の実施形態においては直径が450mmで厚みが10mmに形成されており、図3に示すように中心部には研磨液が通る直径がφ10mmの穴712aが形成されている。また、研磨パッド712の下面即ち研磨面には格子状に形成された複数の溝712bが設けられている。この複数の溝712bは、深さが2mm程度で20mmの間隔で形成されている。
【0025】
ここで、研磨パッド712について、更に詳細に説明する。
研磨パッド712は、シリコンと固相反応を誘発する固相反応微粒子と、シリコンよりモース硬度が高く研磨を誘発する研磨微粒子とを液状結合剤に混入し、該液状結合剤を不織布に含浸させ乾燥して構成されている。固相反応微粒子は、SiO2、CeO2、ZrO2のいずれかでよい。なお、固相反応微粒子の粒径は、後述するように2μmが適当である。また、研磨微粒子は、モース硬度が9以上であることが望ましく、ダイヤモンド、SiC、Al2O3、WC、TiN、TaC、ZrC、AlB、B4Cを用いることができる。なお、研磨微粒子の粒径は、後述するように0.5μmが適当である。上記液状結合剤は、ウレタンを溶媒で溶解した液体である。なお、溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチルを用いることができる。
【0026】
以上のように構成された研磨工具71は、上記回転スピンドル731の下端に固定されているマウンター72の下面に研磨工具71を位置付け、マウンター72に形成されている図示しない貫通孔を通して研磨工具71の支持基台711に形成されている盲ネジ孔711bに締結ボルト710(図3参照)を螺着することによって、マウンター72に装着される。なお、このようにしてマウンター72に装着された研磨工具71の研磨パッド712に設けられた穴712aは、支持基台711に設けられた穴711aおよび研磨液供給通路731aを介して図2に示すようにアルカリ溶液供給手段77および純水供給手段78に連通されている。アルカリ溶液供給手段77は、アルカリ溶液供給源771と、該アルカリ溶液供給源771と研磨液供給通路731aとを連通する配管772に配設された電磁開閉弁773とからなっている。なお、アルカリ溶液はpH10〜12が望ましい。pH10〜12のアルカリ溶液としては、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、ピペラジン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを用いることができる。また、上記純水供給手段78は、純水供給源781と、該純水供給源781と研磨液供給通路731aとを連通する配管782に配設された電磁開閉弁783とからなっている。
【0027】
図2を参照して説明を続けると、スピンドルユニット支持手段74は、図示の実施形態においては支持基台741と第1の移動基台742および第2の移動基台743とからなっている。支持基台741の一側面には、上記チャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に対して平行な矢印Yで示す方向に延びる第1の案内レール741a、741aが設けられている。上記第1の移動基台742の一側面には上記支持基台741に設けられた第1の案内レール741a、741aと嵌合する第1の被案内レール742b、742bが設けられており、第1の移動基台742の他側面に上記チャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に対して垂直な矢印Zで示す方向に延びる第2の案内レール742a、742aが設けられている。このように構成された第1の移動基台742は、第1の被案内レール742b、742bを上記支持基台741に設けられた第1の案内レール741a、741aと嵌合することにより、支持基台741に案内レール741a、741aに沿って移動可能に支持される。
【0028】
上記第2の移動基台743の一側面には上記第1の移動基台742に設けられた第2の案内レール742a、742aと嵌合する第2の被案内レール743b、743bが設けられており、この第2の被案内レール743b、743bを第1の移動基台742に設けられた第2の案内レール742a、742aと嵌合することにより、第2の移動基台743は第1の移動基台742に第2の案内レール742a、742aに沿って移動可能に支持される。このように構成された第2の移動基台743の他側面側に上記スピンドルユニット73が装着される。
【0029】
上記第1の研磨送り手段75は、上記研削送り手段56と同様の構成をしている。即ち、第1の研磨送り手段75は、パルスモータ751と、上記第2の案内レール742a、742a間に第2の案内レール742a、742aと平行に配設されパルスモータ751によって回転駆動される雄ネジロッド(図示せず)と、第2の移動基台743に装着されオスネジロッドと螺合する図示しない雌ネジブロックを具備しており、パルスモータ751によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、第2の移動基台743即ちスピンドルユニット73を上記チャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に対して垂直な矢印Zで示す方向に移動せしめる。また、上記第2の研磨送り手段76は、パルスモータ761と、上記第1の案内レール741a、741a間に第1の案内レール741a、741aと平行に配設されパルスモータ761によって回転駆動される雄ネジロッド(図示せず)と、第1の移動基台742に装着され雄ネジロッドと螺合する図示しない雌ネジブロックを具備しており、パルスモータ761によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、第1の移動基台742即ち第2の移動基台743およびスピンドルユニット73を上記チャックテーブル4a、4b、4c、4dの保持面に対して平行な矢印Yで示す方向に移動せしめる。
【0030】
図1に戻って説明を続けると、装置ハウジング2の主部21の前端部(図1において左下端部)には、第1のカセット載置部11aおよび第2のカセット載置部11bが設けられている。第1のカセット載置部11aには加工前のウエーハが収容された第1のカセット111が載置され、第2のカセット載置部11bには加工後のウエーハを収容するための第2のカセット112が載置される。ここで、第1のカセット111に収容されるウエーハについて、図5および図6を参照して説明する。図5には、ウエーハとしての半導体ウエーハ10が示されている。図5に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面10aに複数のストリート101が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成された加工前の半導体ウエーハ10の裏面10bを研削して所定の厚み(例えば、100μm)に形成するに際し、半導体ウエーハ10の表面10aに形成されたデバイス102を保護するために、図6の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ10の表面10aに塩化ビニール等からなる保護テープTを貼着する(保護テープ貼着工程)。このようにして表面10aに保護テープTが貼着された半導体ウエーハ10は、被加工面である裏面10bを上側にして第1のカセット111に収容される。そして、加工前の半導体ウエーハ10が収容された第1のカセット111を第1のカセット載置部11aに載置するとともに、加工後のウエーハを収容するための空の第2のカセット112を第2のカセット載置部11bに載置する。
【0031】
また、装置ハウジング2の主部21の前部(図1において左下部)には仮置き領域12が設けられており、この仮置き領域12に上記第1のカセット111から搬出された加工前の半導体ウエーハ10の中心位置合わせを行う中心合わせ手段120が配設されている。仮置き領域12の後方(図1において右上方)には洗浄領域13が設けられており、この洗浄領域13に加工後のウエーハを洗浄するスピンナー洗浄手段130が配設されている。このスピンナー洗浄手段130は、上記粗研削手段としての粗研削ユニット5と仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット50によって研削加工され、研磨手段7によって研磨加工された後の半導体ウエーハ10を洗浄するとともに、半導体ウエーハ10の洗浄面から洗浄水を遠心力によって飛散させスピンナー乾燥する。
【0032】
上記第1のカセット載置部11aおよび第2のカセット載置部11bの後方にはウエーハ搬送手段14が配設されている。このウエーハ搬送手段14は、ハンド141を装着した従来周知の多軸関節ロボット142と、該多軸関節ロボット142を装置ハウジング2の幅方向に移動する移動手段143とからなっている。上記ハンド141は、180度反転(上下を反転)できるように構成されている。上記移動手段143は、装置ハウジング2の主部21に幅方向に間隔をおいて立設された支持柱143a、143aに取り付けられた案内ロッド143bと、該案内ロッド143bに移動可能に装着された移動ブロック143cと、案内ロッド143bと平行に配設され移動ブロック143cに形成されたネジ穴と螺合するネジ棒143dと、該ネジ棒143dを回転駆動する正転逆転可能なパルスモータ143eとからなっており、移動ブロック143cに上記多軸関節ロボット142が装着されている。このように構成された移動手段143は、パルスモータ143eを正転または逆転駆動しネジ棒143dを回転することにより、移動ブロック143c即ち多軸関節ロボット142を案内ロッド143bに沿って移動せしめる。以上のように構成されたウエーハ搬送手段14は、移動手段143および多軸関節ロボット142を作動することにより、上記第1のカセット111の所定位置に収容された加工前の半導体ウエーハ10を搬出して中心合わせ手段120に搬送するとともに、上記スピンナー洗浄手段130によって洗浄および乾燥された研削後の半導体ウエーハ10を中心合わせ手段120に搬送し、更に中心合わせ手段120に搬送され後述する加工状態検出手段によって加工状態が検出された半導体ウエーハ10を上記第2のカセット112の所定位置に収容する。
【0033】
図示の実施形態における加工装置は、上記中心合わせ手段120に搬送され中心合わせされた加工前の半導体ウエーハ10を上記搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4(a、b、c、d)に搬送するウエーハ搬入手段15と、上記搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4(a、b、c、d)に保持されている加工後の半導体ウエーハ10を搬出し後述する保護テープ洗浄手段および上記スピンナー洗浄手段130に搬送するウエーハ搬出手段16を備えている。このウエーハ搬入手段15とウエーハ搬出手段16は、装置ハウジング2に取り付けられた支持柱17、17に固定され装置ハウジング2の前後方向(長手方向)に延びる案内レール18に沿って移動可能に装着されている。ウエーハ搬入手段15は、吸着パッド151と、該吸着パッド151を下端に支持する支持ロッド152と、該支持ロッド152の上端と連結し上記案内レール18に装着された移動ブロック153とからなっている。このように構成されたウエーハ搬入手段15は、移動ブロック153が図示しない移動手段によって案内レール18に沿って矢印Bで示す方向に適宜移動せしめられるとともに、支持ロッド152が図示しない移動手段によって矢印Cで示す上下方向に適宜移動せしめられるとともに矢印Hで示す方向に旋回せしめられる。
【0034】
また、ウエーハ搬出手段16は、吸着パッド161と、該吸着パッド161を矢印Dで示す方向に移動可能に支持する案内レール162と、該案内レール162を下端に支持する支持ロッド163と、該支持ロッド163の上端と連結し上記案内レール18に装着され矢印Eで示す方向に移動する移動ブロック164とからなっている。なお、ウエーハ搬出手段16の吸着パッド161の径は、上記ウエーハ搬入手段15の吸着パッド151の径より大きく形成されている。このようにウエーハ搬出手段16の吸着パッド161の径を大きく形成するのは、研削され薄くなったウエーハは割れ易いので吸着保持面積を広くするためである。このように構成されたウエーハ搬出手段16は、移動ブロック164が図示しない移動手段によって案内レール18に沿って適宜移動せしめられ、吸着パッド161が図示しない移動手段によって矢印Dで示すように案内レール162に沿って案内レール18と直角な方向に適宜移動せしめられるとともに、支持ロッド163が図示しない移動手段によって矢印Fで示すように上下方向に適宜移動せしめられる。
【0035】
図示の実施形態における加工装置は、上記ウエーハ搬出手段16によって搬出される加工後の上記半導体ウエーハ10の表面10aに貼着された保護テープTを洗浄するための保護テープ洗浄手段19を備えている。この保護テープ洗浄手段19は、回転可能な洗浄スポンジ191と該洗浄スポンジ191を水没状態で収容する洗浄プール192とから構成され、上記搬入・搬出領域2aとスピンナー洗浄手段130の間における吸着パッド161の移動経路内に配設されている。
【0036】
図示の実施形態におけるウエーハの加工装置は以上のように構成されており、以下その作動について主に図1を参照して説明する。
上述した加工装置によってウエーハを加工するには、加工前の半導体ウエーハ10が収容された第1のカセット111を第1のカセット載置部11aに載置するとともに、加工後のウエーハを収容するための空の第2のカセット112を第2のカセット載置部11bに載置する。そして、加工開始スイッチ(図示せず)が投入されると、図示しない制御手段はウエーハ搬送手段14を作動して第1のカセット載置部11aに載置された第1のカセット111の所定位置に収容されている加工前の半導体ウエーハ10を搬出して中心合わせ手段120に搬送する。中心合わせ手段120は、搬送された加工前の半導体ウエーハ10の中心合わせを行う。次に、ウエーハ搬入手段15が作動して、中心合わせ手段120によって中心合わせされた加工前の半導体ウエーハ10を上記搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4aに搬送し、保護テープT側をチャックテーブル4a上に載置する。なお、加工開始時においては、ターンテーブル3は図1に示す原点位置に位置付けられており、ターンテーブル3に配設されたチャックテーブル4aが搬入・搬出領域2aに、チャックテーブル4bが粗研削領域2bに、チャックテーブル4cが仕上げ研削領域2cに、チャックテーブル4dが研磨領域2dにそれぞれ位置付けられている。上述したようにウエーハ搬入手段15によって搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4a上に保護テープT側が載置された加工前の半導体ウエーハ10は、図示しない吸引手段を作動することによって保護テープTを介してチャックテーブル4a上に吸引保持される。従って、チャックテーブル4a上に吸引保持された半導体ウエーハ10は、被加工面である裏面10bが上側となる。
【0037】
搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4aに加工前の半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、図示しないテーブル回動手段を作動して上記ターンテーブル3を図1において矢印Aで示す所定方向に図示の実施形態においては90度の角度だけ回動する。この結果、加工前の半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル4aが粗研削領域2bに位置付けられ、チャックテーブル4bが仕上げ研削領域2cに、チャックテーブル4cが研磨領域2dに、チャックテーブル4dが搬入・搬出領域2aにそれぞれ位置付けられる。このようにしてチャックテーブル4a、4b、4c、4dがそれぞれの領域に位置付けられたならば、粗研削領域2bに位置付けられたチャックテーブル4aに保持されている半導体ウエーハ10に対して粗研削ユニット5によって粗研削加工が実施される。なお、この間に搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4dに加工前の半導体ウエーハ10が搬送され、チャックテーブル4d上に加工前の半導体ウエーハ10が吸引保持される。
【0038】
次に、図示しないテーブル回動手段を作動して上記ターンテーブル3を図1において矢印Aで示す所定方向に更に90度回動する(従って、ターンテーブル3は図1に示す原点位置から180度回動する)。この結果、粗研削領域2bにおいて粗研削加工された半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル4aが仕上げ研削領域2cに位置付けられるとともに、搬入・搬出領域2aにおいて加工前の半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル4dが粗研削領域2bに位置付けられる。そして、チャックテーブル4bが研磨領域2dに、チャックテーブル4cが搬入・搬出領域2aにそれぞれ位置付けられる。この状態で仕上げ研削領域2cに位置付けられたチャックテーブル4aに保持されている粗研削加工された半導体ウエーハ10に対して仕上げ研削ユニット50によって仕上げ研削加工が施されるとともに、粗研削領域2bに位置付けられたチャックテーブル4dに保持されている半導体ウエーハ10に対して粗研削ユニット5によって粗研削加工が実施される。なお、この間に搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4cに加工前の半導体ウエーハ10が搬送され、チャックテーブル4c上に加工前の半導体ウエーハ10が吸引保持される。
【0039】
次に、図示しないテーブル回動手段を作動して上記ターンテーブル3を図1において矢印Aで示す所定方向に更に90度回動する(従って、ターンテーブル3は図1に示す原点位置から270度回動する)。この結果、仕上げ研削領域2cにおいて仕上げ研削加工された半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル4aが研磨領域2dに位置付けられ、粗研削領域2bにおいて粗研削加工された半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル4dが仕上げ研削領域2cに位置付けられるとともに、搬入・搬出領域2aにおいて加工前の半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル4cが粗研削領域2bに位置付けられる。そして、チャックテーブル4bが搬入・搬出領域2aに位置付けられる。上述したようにターンテーブル3が回動し仕上げ研削領域2cに位置付けられたチャックテーブル4dに保持されている粗研削加工された半導体ウエーハ10に対しては仕上げ研削ユニット50によって仕上げ研削加工が施されるとともに、粗研削領域2bに位置付けられたチャックテーブル4cに保持されている半導体ウエーハ10に対しては粗研削ユニット5によって粗研削加工が実施される。
【0040】
また、研磨領域2dに位置付けられたチャックテーブル4aに保持されている仕上げ研削加工された半導体ウエーハ10に対しては、研磨手段7により上記粗研削加工および仕上げ研削加工を実施することによって裏面に生成された研削歪を除去するとともにゲッタリング層を形成する研磨加工が施される。一方、この間に搬入・搬出領域2aに位置付けられたチャックテーブル4bには加工前の半導体ウエーハ10が搬送され、チャックテーブル4b上に加工前の半導体ウエーハ10が吸引保持される。
【0041】
ここで、研磨領域2dに位置付けられたチャックテーブル4(4a)に保持されている仕上げ研削加工された半導体ウエーハ10に研磨手段7によって実施する研磨加工について詳細に説明する。この研磨加工は、研磨工具71の研磨パッド712にpH10〜12のアルカリ溶液を供給しつつ研磨パッド712を回転するとともにチャックテーブル4(4a)を回転させながら研磨パッド712によって半導体ウエーハ10の裏面を研磨することにより半導体ウエーハ10の裏面から歪層を除去する歪層除去工程と、アルカリ溶液の供給を停止して研磨パッド712に純水を供給しつつ研磨パッド712を回転するとともにチャックテーブル4aを回転させながら研磨パッド712によって半導体ウエーハ10の裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程を実施する。
【0042】
上記歪層除去工程は、図7に示すように上述したアルカリ溶液供給手段77を作動して水酸化カリウムを研磨液供給通路731aおよび研磨工具71の支持基台711に設けられた穴711aを介して研磨パッド712に設けられた穴712aに1分間に0.5リットルの割合で供給する。そして、半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル4aを矢印Jで示す方向に505rpmの回転速度で回転し、研磨パッド712を備えた研磨工具71を矢印Kで示す方向に500rpmの回転速度で回転するとともに、上記第1の研磨送り手段75を作動して研磨パッド712の研磨面である下面をチャックテーブル4aに保持された半導体ウエーハ10の裏面(上面)に300g/cm2の研磨圧力を作用せしめる。このとき、チャックテーブル4aの回転中心Lと研磨パッド712の回転中心Mとはオフセットした状態で、半導体ウエーハ10の裏面全体に研磨パッド712の研磨面である下面が接触するように位置付けられる。なお、図示の実施形態における歪層除去工程においては、研磨レートが0.72μm/分に設定され、研磨時間は2分間に設定した。このようにして歪層除去工程を実行することにより、半導体ウエーハ10の裏面が所定量研磨されるとともに水酸化カリウムによりエッチングされるため、上記粗研削加工および仕上げ研削加工を実施することによって半導体ウエーハ10の裏面に形成された研削歪が除去される。
【0043】
上述した歪層除去工程を実施したならば、アルカリ溶液の供給を停止して研磨パッド712に純水を供給しつつ研磨パッド712を回転するとともにチャックテーブル4(4a)を回転させながら研磨パッド712によって半導体ウエーハ10の裏面を研磨することにより裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成するゲッタリング層形成工程を実施する。このゲッタリング層形成工程を実施するには、図8の(a)に示すように上記歪層除去工程を実施した状態で、アルカリ溶液供給手段77の作動を停止して純水供給手段78を作動することにより、水酸化カリウムに替えて純水を研磨液供給通路731aおよび研磨工具71の支持基台711に設けられた穴711aを介して研磨パッド712に設けられた穴712aに1分間に1.0リットルの割合で供給する。そして、半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル4(4a)を矢印Jで示す方向に505rpmの回転速度で回転し、研磨パッド712を備えた研磨工具71を矢印Kで示す方向に500rpmの回転速度で回転するとともに、上記第1の研磨送り手段75を作動して研磨パッド712の研磨面である下面をチャックテーブル4(4a)に保持された半導体ウエーハ10の裏面(上面)に50g/cm2の研磨圧力を作用せしめる。そして、第2の研磨送り手段76を作動して図8の(b)で示すように研磨パッド712を備えた研磨工具71を矢印Nで示すようにチャックテーブル4(4a)の回転中心Lと研磨パッド712の回転中心Mとが半導体ウエーハ10の裏面を摺動する方向に離れるように研磨パッド712を移動せしめる。この研磨パッド712の矢印Nで示す方向への移動は、移動速度が0.67mm/秒で1分間実施して40mm移動せしめる。このようにしてゲッタリング層形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ10の裏面に傷を付けてゲッタリング層を形成ことができる。
【0044】
次に、上記歪層除去工程およびゲッタリング層形成工程を実施する研磨パッド712を構成する研磨微粒子と固相反応微粒子の適正な粒径および適正な配合割合について説明する。
【実験1】
【0045】
目的:研磨微粒子としてのSiCの適正な粒径と、固相反応微粒子としてのSiO2の適正な粒径を見出す。
(1)研磨微粒子としてのSiCの粒径が0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μmの研磨パッドを8種類製作し、水酸化カリウムを供給しながらシリコンウエーハを研磨した。この結果、水酸化カリウムによるエッチングと相まって良好な研磨レートおよび研磨面が得られたのは、粒径が0.5μm〜5μmのSiCであった。
また、水酸化カリウムに替えて純水を供給しながらシリコンウエーハを研磨してゲッタリング効果を確認したところ、上記8種類の全ての研磨パッドでゲッタリング効果が確認できた。
しかし、SiCの粒径が1μm以上になると、抗折強度が低下した。
従って、研磨微粒子としてのSiCの粒径は、0.5μmが適正であることを見出した。

(2)固相反応微粒子としてのSiO2の粒径が0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μmの研磨パッドを7種類製作し、水酸化カリウムを供給しながらシリコンウエーハを研磨した。この結果、水酸化カリウムによるエッチングと固相反応により良好な研磨面が得られたのは、粒径が2μmのSiO2であった。
従って、固相反応微粒子としてのSiO2の粒径は、2μmが適正であることを見出した。
【実験2】
【0046】
目的:研磨パッドを構成する液状結合剤の原料である個体ウレタンと固相反応微粒子としてのSiO2(粒径2μm)と研磨微粒子としてのSiC(粒径0.5μm)との適正な重量比率を見出す。
(1)個体ウレタン:1gに対して(SiO2:1g+SiC:4g=5g)、(SiO2:2g+SiC:3g=5g)、(SiO2:3g+SiC:2g=5g)、(SiO2:4g+SiC:1g=5g)と4種類の研磨パッドを製作し、それぞれ研磨作業を実施した結果、研磨レートが一番良好だったのは重量比率が(SiO2:2g+SiC:3g=5g)の研磨パッドで、研磨レートが0.73μm/分であった。
従って、個体ウレタンとSiO2とSiCとの重量比率として(1:2:3)を候補としてあげることができる。

(2)個体ウレタン:1gに対して(SiO2:0.67g+SiC:2.66g=3.33g)、(SiO2:1.33g+SiC:2g=3.33g)、(SiO2:2g+SiC:1.33g=3.33g)、(SiO2:2.66g+SiC:0.67g=3.33g)と4種類の研磨パッドを製作し、それぞれ研磨作業を実施した結果、研磨レートが一番良好だったのは重量比率が(SiO2:1.33g+SiC:2g=3.33g)の研磨パッドで、研磨レートが0.72μm/分であった。
従って、個体ウレタンとSiO2とSiCとの重量比率として(1:1.33:2)を候補としてあげることができる。

(3)個体ウレタン:1gに対して(SiO2:0.33g+SiC:1.34g=1.67g)、(SiO2:0.67g+SiC:1g=1.67g)、(SiO2:1g+SiC:0.67g=1.67g)、(SiO2:1.34g+SiC:0.33g=1.67g)と4種類の研磨パッドを製作し、それぞれ研磨作業を実施した結果、研磨レートが一番良好だったのは重量比率が(SiO2:0.67g+SiC:1g=1.67g))の研磨パッドで、研磨レートが0.57μm/分であった。
従って、個体ウレタンとSiO2とSiCとの重量比率として(1:0.67:1)を候補としてあげることができる。

(4)個体ウレタン:1gに対して(SiO2:0.16g+SiC:0.64g=0.8g)、(SiO2:0.32g+SiC:0.48g=8.8g)、(SiO2:0.48g+SiC:0.32g=0.8g)、(SiO2:0.64g+SiC:0.16g=0.8g)と4種類の研磨パッドを製作し、それぞれ研磨作業を実施した結果、研磨レートが一番良好だったのは重量比率が(SiO2:0.32g+SiC:0.48g=8.8g)の研磨パッドで、研磨レートが0.47μm/分であった。
従って、個体ウレタンとSiO2とSiCとの重量比率として(1:0.32:0.48)を候補としてあげることができる。

上記(1)(2)(3)(4)の実験の結果、(1)と(2)の研磨パッドによる研磨レートは比較的高く、(3)と(4)の研磨パッドによる研磨レートは比較的低いこと、および(1)の研磨パッドは多くのSiO2とSiCを使用して不経済であることから、個体ウレタンとSiO2とSiCとの重量比率として(1:1.33:2)が適正であることを見出した。
【符号の説明】
【0047】
2:装置ハウジング
2a:搬入・搬出領域
2b:粗研削領域
2c:仕上げ研削領域
2d:研磨領域
3:ターンテーブル
4a、4b、4c、4d:チャックテーブル
5:粗研削ユニット
50:仕上げ研削ユニット
51:ユニットハウジング
52:研削ホイール
520:仕上げ用の研削ホイール
53:サーボモータ
56:研削送り手段
7:研磨手段
71:研磨工具
72:マウンター
73:スピンドルユニット
75:第1の研磨送り手段
76:第2の研磨送り手段
8:第1の加工状態検出手段
9:第2の加工状態検出手段
10:半導体ウエーハ
111:第1のカセット
112:第2のカセット
120:中心合わせ手段
130:スピンナー洗浄手段
14:ウエーハ搬送手段
15:ウエーハ搬入手段
16:ウエーハ搬出手段
19:保護テープ洗浄手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8