特許第6208521号(P6208521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208521
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170925BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20170925BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 M
   H01L21/78 B
   H01L21/304 631
   B23K26/40
   B23K26/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-210092(P2013-210092)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-76434(P2015-76434A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】古田 健次
(72)【発明者】
【氏名】淀 良彰
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−109442(JP,A)
【文献】 特開2007−053240(JP,A)
【文献】 特開2005−327789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/40
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインが格子状に形成されているとともに該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程によって表面に保護部材が貼着されたウエーハの保護部材側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程によって所定の厚みに形成されたウエーハの保護部材側をレーザー加工装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程が実施されたウエーハの裏面に絶縁機能を備えた補強シートを装着するとともに補強シート側にダイシングテープを貼着し該ダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハを加熱してウエーハの裏面に装着された補強シートを加熱することにより補強シートを固化させる補強シート加熱工程と、
該補強シート加熱工程を実施することにより補強シートが固化されたウエーハに外力を付与し、ウエーハを改質層が形成された分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するとともに補強シートを個々のデバイスに沿って破断する分割工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該ウエーハ支持工程は、絶縁機能を備えた補強シートが貼着されたダイシングテープを用いて実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該補強シート加熱工程を実施する前にウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離する保護部材剥離工程を実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該分割工程を実施する前にウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離する保護部材剥離工程を実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の分割予定ラインが格子状に形成されているとともに該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成された半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することにより、デバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハの分割予定ラインに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を備えたスピンドルユニットを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって基台に固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0004】
しかるに、切削ブレードは20μm程度の厚さを有するため、デバイスを区画する分割予定ラインとしては幅が50μm程度必要となり、ウエーハの面積に対する分割予定ラインが占める面積比率が大きく、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
一方、近年半導体ウエーハ等のウエーハを分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を位置付けてパルスレーザー光線を照射する内部加工と呼ばれるレーザー加工方法も試みられている。この内部加工と呼ばれるレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側から内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、ウエーハを破断して分割する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、ウエーハの表面にはデバイスを構成する複数の機能層が積層されているため、パルスレーザー光線の集光点をウエーハの内部に位置付けて内部加工を実施するには、ウエーハの裏面側からレーザー光線を照射する必要がある。
しかるに、デバイスを上下に積層して半導体装置を構成するデバイスが形成されたウエーハにおいては予めウエーハの裏面に絶縁性を有する補強シートが装着されており、この補強シートがレーザー光線を遮断するためウエーハの裏面側から内部加工を実施することができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハの裏面に絶縁性を有する補強シートが貼着される場合においても、内部加工を実施することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数の分割予定ラインが格子状に形成されているとともに該複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程によって表面に保護部材が貼着されたウエーハの保護部材側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する裏面研削工程と、
該裏面研削工程によって所定の厚みに形成されたウエーハの保護部材側をレーザー加工装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程が実施されたウエーハの裏面に絶縁機能を備えた補強シートを装着するとともに補強シート側にダイシングテープを貼着し該ダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハを加熱してウエーハの裏面に装着された補強シートを加熱することにより補強シートを固化させる補強シート加熱工程と、
該補強シート加熱工程を実施することにより補強シートが固化されたウエーハに外力を付与し、ウエーハを改質層が形成された分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するとともに補強シートを個々のデバイスに沿って破断する分割工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
記ウエーハ支持工程は、絶縁機能を備えた補強シートが貼着されたダイシングテープを用いて実施する。
上記補強シート加熱工程を実施する前にウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離する保護部材剥離工程を実施する。
上記分割工程を実施する前にウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離する保護部材剥離工程を実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明におけるウエーハの加工方法においては、ウエーハの表面に保護部材を貼着し、該保護部材側を研削装置のチャックテーブルに保持してウエーハの裏面を研削することにより所定の厚みに研削する裏面研削工程を実施し、所定の厚みに研削されたウエーハの保護部材側をレーザー加工装置のチャックテーブルに保持してウエーハの裏面側からウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射することによりウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施した後に、ウエーハの裏面に絶縁機能を備えた補強シートを装着するとともに補強シート側にダイシングテープを貼着し該ダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程を実施するので、ウエーハの裏面に補強シートが貼着される場合においても、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する内部加工としての改質層形成工程を実施することができる。そして、補強シート加熱工程を実施することにより補強シートが固化されたウエーハに外力を付与することによりウエーハを改質層が形成された分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割するとともに補強シートを個々のデバイスに沿って破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるウエーハの加工方法によって分割されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
図2】本発明によるウエーハの加工方法における保護部材貼着工程を示す説明図。
図3】本発明によるウエーハの加工方法における裏面研削工程を実施するための研削装置の要部斜視図。
図4】本発明によるウエーハの加工方法における裏面研削工程を示す説明図。
図5】本発明によるウエーハの加工方法における改質層形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
図6】本発明によるウエーハの加工方法における改質層形成行程を示す説明図。
図7】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の一実施形態を示す説明図。
図8】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の他の実施形態を示す説明図。
図9】本発明によるウエーハの加工方法における補強シート加熱工程を示す説明図。
図10】本発明によるウエーハの加工方法における分割工程を実施するためのテープ拡張装置の斜視図。
図11】本発明によるウエーハの加工方法における分割工程を示す説明図。
図12】本発明によるウエーハの加工方法におけるピックアップ工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、厚みが例えば500μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aに複数の分割予定ライン21が格子状に形成されているとともに、該複数の分割予定ライン21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。以下、この半導体ウエーハ2を分割予定ライン21に沿って個々のデバイス22に分割するウエーハの加工方法について説明する。
【0015】
先ず、半導体ウエーハ2の表面2aに形成されたデバイス22を保護するために、半導体ウエーハ2の表面2aに保護部材を貼着する保護部材貼着工程を実施する。即ち、図2に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに保護部材としての保護テープ3を貼着する。なお、保護テープ3は、図示の実施形態においては厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート状基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ5μm程度塗布されている。
【0016】
半導体ウエーハ2の表面2aに保護部材としての保護テープ3を貼着したならば、半導体ウエーハ2の保護部材側を研削装置のチャックテーブルに保持し、半導体ウエーハ2の裏面を研削して所定の厚みに研削する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図3に示す研削装置4を用いて実施する。図3に示す研削装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41に保持された被加工物を研削する研削手段42を具備している。チャックテーブル41は、上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって図3において矢印41aで示す方向に回転せしめられる。研削手段42は、スピンドルハウジング421と、該スピンドルハウジング421に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル422と、該回転スピンドル422の下端に装着されたマウンター423と、該マウンター423の下面に取り付けられた研削ホイール424とを具備している。この研削ホイール424は、円環状の基台425と、該基台425の下面に環状に装着された研削砥石426とからなっており、基台425がマウンター423の下面に締結ボルト427によって取り付けられている。
【0017】
上述した研削装置4を用いて上記裏面研削工程を実施するには、図3に示すようにチャックテーブル41の上面(保持面)に上記保護部材貼着工程が実施された半導体ウエーハ2の保護テープ3側を載置する。そして、図示しない吸引手段によってチャックテーブル41上に半導体ウエーハ2を保護テープ3を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル41上に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにチャックテーブル41上に半導体ウエーハ2を保護テープ3を介して吸引保持したならば、チャックテーブル41を図3において矢印41aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段42の研削ホイール424を図3において矢印424aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめて、図4に示すように研削砥石426を被加工面である半導体ウエーハ2の裏面2bに接触せしめ、研削ホイール424を図3および図4において矢印424bで示すように例えば1μm/秒の研削送り速度で下方(チャックテーブル41の保持面に対し垂直な方向)に所定量研削送りする。この結果、半導体ウエーハ2の裏面2bが研削されて半導体ウエーハ2は所定の厚み(例えば100μm)に形成される。
【0018】
次に、所定の厚みに研削された半導体ウエーハ2の保護部材側をレーザー加工装置のチャックテーブルに保持し、半導体ウエーハ2の裏面側から半導体ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し、半導体ウエーハ2の内部に分割予定ラインに沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。この改質層形成工程は、図5に示すレーザー加工装置5を用いて実施する。図5に示すレーザー加工装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52と、チャックテーブル51上に保持された被加工物を撮像する撮像手段53を具備している。チャックテーブル51は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない移動機構によって図5において矢印Xで示す加工送り方向および矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0019】
上記レーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521の先端に装着された集光器522からパルスレーザー光線を照射する。また、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部に装着された撮像手段53は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0020】
上述したレーザー加工装置5を用いて実施する改質層形成工程について、図5および図6を参照して説明する。
この改質層形成工程は、先ず上述した図5に示すレーザー加工装置5のチャックテーブル51上に上記研削工程が実施された半導体ウエーハ2の保護テープ3側を載置する。そして、図示しない吸引手段によってチャックテーブル51上に半導体ウエーハ2を保護テープ3を介して吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル51上に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル51は、図示しない加工送り手段によって撮像手段53の直下に位置付けられる。
【0021】
チャックテーブル51が撮像手段53の直下に位置付けられると、撮像手段53および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段53および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されている分割予定ライン21と、分割予定ライン21に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器522との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ2の分割予定ライン21が形成されている表面2aは下側に位置しているが、撮像手段53が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面2bから透かして分割予定ライン21を撮像することができる。
【0022】
以上のようにしてチャックテーブル51上に保持されている半導体ウエーハ2に形成されている分割予定ライン21を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル51をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器522が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン21の一端(図6の(a)において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器522の直下に位置付ける。次に、集光器522から照射されるパルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ2の厚み方向中間部に位置付ける。そして、集光器522からシリコンウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル51即ち半導体ウエーハ2を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる。そして、図6の(b)で示すようにレーザー光線照射手段52の集光器522の照射位置が分割予定ライン21の他端の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル51即ち半導体ウエーハ2の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ2の内部には、分割予定ライン21に沿って改質層210が形成される。
【0023】
なお、上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :1064nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :100kHz
平均出力 :0.3W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0024】
上述したように所定の分割予定ライン21に沿って上記改質層形成工程を実施したら、チャックテーブル51を矢印Yで示す方向に半導体ウエーハ2に形成された分割予定ライン21の間隔だけ割り出し移動(割り出し工程)し、上記改質層形成工程を遂行する。このようにして所定方向に形成された全ての分割予定ライン21に沿って上記改質層形成工程を実施したならば、チャックテーブル51を90度回動せしめて、上記所定方向に形成された分割予定ライン21に対して直交する方向に延びる分割予定ライン21に沿って上記改質層形成工程を実行する。
【0025】
次に、上記改質層形成工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面に絶縁機能を備えた補強シートを装着するとともに補強シート側にダイシングテープを貼着し該ダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程を実施する。このウエーハ支持工程における実施形態においては、図7の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ2の裏面2bに絶縁機能を備えた補強シート6を装着する(補強シート装着工程)。なお、補強シート6は、粘着性を有しており、加熱すると固化せしめられる樹脂シートによって形成されている。このようにして半導体ウエーハ2の裏面2bに補強シート6を装着したならば、図7の(c)に示すように補強シート6が装着された半導体ウエーハ2の補強シート6側を環状のフレームFに装着された伸張可能なダイシングテープTに貼着する。そして、半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ3を剥離する(保護テープ剥離工程)。なお、図7の(a)乃至(c)に示す実施形態においては、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに補強シート6が装着された半導体ウエーハ2の補強シート6側を貼着する例を示したが、補強シート6が装着された半導体ウエーハ2の補強シート6側にダイシングテープTを貼着するとともにダイシングテープTの外周部を環状のフレームFに同時に装着してもよい。
【0026】
上述したウエーハ支持工程の他の実施形態について、図8を参照して説明する。
図8に示す実施形態は、ダイシングテープTの表面に予め補強シート6が貼着された補強シート付きのダイシングテープを使用する。即ち、図8の(a)、(b)に示すように環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープTの表面に貼着された補強シート6に、半導体ウエーハ2の裏面2bを装着する。このように補強シート付きのダイシングテープを使用する場合には、ダイシングテープTの表面に貼着された補強シート6に半導体ウエーハ2の裏面2bを装着することにより、補強シート6が装着された半導体ウエーハ2が環状のフレームFに装着されたダイシングテープTによって支持される。そして、図8の(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ3を剥離する(保護テープ剥離工程)。なお、図8の(a)、(b)に示す実施形態においては、環状のフレームFに外周部が装着されたダイシングテープTの表面に貼着された補強シート6に半導体ウエーハ2の裏面2bを装着する例を示したが、半導体ウエーハ2の裏面2bにダイシングテープTに貼着された補強シート6を装着するとともにダイシングテープTの外周部を環状のフレームFに同時に装着してもよい。
【0027】
上述したように半導体ウエーハ2の裏面に絶縁機能を備えた補強シート6を装着するとともに補強シート6側にダイシングテープTを貼着し該ダイシングテープTの外周部を環状のフレームFによって支持するウエーハ支持工程は上述した改質層形成工程を実施した後に実施するので、半導体ウエーハ2の裏面に絶縁性を有する補強シート6が貼着される場合においても、半導体ウエーハ2の内部に分割予定ライン21に沿って改質層210を形成する内部加工としての改質層形成工程を実施することができる。
【0028】
次に、ウエーハ支持工程が実施された半導体ウエーハ2を加熱して半導体ウエーハ2の裏面に装着された補強シート6を加熱することにより補強シート6を固化させる補強シート加熱工程を実施する。この補強シート加熱工程は、図9に示す加熱装置7を用いて実施する。加熱装置7は、上端が開放した処理ケース71と、該処理ケース71の上端を閉塞するケース蓋72と、処理ケース71内に配設され被加工物を載置する被加工物載置テーブル73と、ケース蓋72の内面に配設されたヒーター74とからなっている。このように構成された加熱装置7を用いて補強シート加熱工程を実施するには、ケース蓋72を開放して被加工物載置テーブル73上に半導体ウエーハ2の裏面に装着された補強シート6が貼着されている環状のフレームFに装着されたダイシングテープT側を載置する。従って、被加工物載置テーブル73上にダイシングテープTを介して載置された半導体ウエーハ2の表面2aが上側となる。このようにして被加工物載置テーブル73上に半導体ウエーハ2の表面2aを上にして環状のフレームFに装着されたダイシングテープT側を載置したならば、ケース蓋72を閉塞した後、ヒーター74を作動して被加工物載置テーブル73上に載置された半導体ウエーハ2を加熱し半導体ウエーハ2の裏面に装着された補強シート6を加熱する。この補強シート加熱工程においては、130℃で2時間加熱する。この結果、半導体ウエーハ2の裏面に装着された補強シート6は、固化せしめられる。
【0029】
上述した補強シート加熱工程を実施したならば、半導体ウエーハ2に外力を付与し、半導体ウエーハ2を改質層210が形成された分割予定ライン21に沿って個々のデバイス22に分割するとともに補強シート6を個々のデバイス22に沿って破断する分割工程を実施する。この分割工程は、図10に示すテープ拡張装置8を用いて実施する。図10に示すテープ拡張装置8は、上記環状のフレームFを保持するフレーム保持手段81と、該フレーム保持手段81に保持された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTを拡張するテープ拡張手段82と、ピックアップコレット83を具備している。フレーム保持手段81は、環状のフレーム保持部材811と、該フレーム保持部材811の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ812とからなっている。フレーム保持部材811の上面は環状のフレームFを載置する載置面811aを形成しており、この載置面811a上に環状のフレームFが載置される。そして、載置面811a上に載置された環状のフレームFは、クランプ812によってフレーム保持部材811に固定される。このように構成されたフレーム保持手段81は、テープ拡張手段82によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0030】
テープ拡張手段82は、上記環状のフレーム保持部材811の内側に配設される拡張ドラム821を具備している。この拡張ドラム821は、環状のフレームFの内径より小さく該環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着される半導体ウエーハ2の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム821は、下端に支持フランジ822を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段82は、上記環状のフレーム保持部材811を上下方向に進退可能な支持手段823を具備している。この支持手段823は、上記支持フランジ822上に配設された複数のエアシリンダ823aからなっており、そのピストンロッド823bが上記環状のフレーム保持部材811の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ823aからなる支持手段823は、図11の(a)に示すように環状のフレーム保持部材811を載置面811aが拡張ドラム821の上端と略同一高さとなる基準位置と、図11の(b)に示すように拡張ドラム821の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。
【0031】
以上のように構成されたテープ拡張装置8を用いて実施する分割工程について図11を参照して説明する。即ち、半導体ウエーハ2の補強シート6側が貼着されているダイシングテープTが装着された環状のフレームFを、図11の(a)に示すようにフレーム保持手段81を構成するフレーム保持部材811の載置面811a上に載置し、クランプ812によってフレーム保持部材811に固定する(フレーム保持工程)。このとき、フレーム保持部材811は図11の(a)に示す基準位置に位置付けられている。次に、テープ拡張手段82を構成する支持手段823としての複数のエアシリンダ823aを作動して、環状のフレーム保持部材811を図11の(b)に示す拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材811の載置面811a上に固定されている環状のフレームFも下降するため、図11の(b)に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTは拡張ドラム821の上端縁に接して拡張せしめられる(テープ拡張工程)。この結果、ダイシングテープTに貼着されている補強シート6および該補強シート6が装着された半導体ウエーハ2には放射状に引張力が作用する。このように補強シート6および半導体ウエーハ2に放射状に引張力が作用すると、半導体ウエーハ2は分割予定ライン21に沿って破断の起点となる改質層210が形成されているので分割予定ライン21に沿って個々のデバイス22に分割されるとともに、個々のデバイス22間に間隔(s)が形成されるため、上記補強シート加熱工程を実施することにより固化せしめられた補強シート6には引張力が作用して個々のデバイス22に沿って破断される。
【0032】
上述した分割工程を実施したならば、図12の(a)に示すようにピックアップコレット83を作動してデバイス22(裏面に補強シート6が装着されている)を吸着し、ダイシングテープTから剥離してピックアップすることにより、図12の(b)に示すようにデバイス22の外周縁に沿って正確に破断された補強シート6が裏面に装着された半導体デバイス22が得られる(ピックアップ工程)。なお、ピックアップ工程においては、上述したように補強シート6が装着された個々のデバイス22間の隙間Sが広げられているので、隣接するデバイス22と接触することなく容易にピックアップすることができる。
【符号の説明】
【0034】
2:半導体ウエーハ
21:分割予定ライン
22:デバイス
210:改質層
3:保護テープ(保護部材)
4:研削装置
41:チャックテーブル
42:研削手段
424:研削ホイール
5:レーザー加工装置
51:チャックテーブル
52:レーザー光線照射手段
522:集光器
6:補強シート
7:加熱装置
71:処理ケース
74:ヒーター
8:テープ拡張装置
81:フレーム保持手段
82:テープ拡張手段
83:ピックアップコレット
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12