(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリットは、前記インジェクタの長手方向の第1の方向から切り込まれた第1のスリットと該第1の方向と反対の第2の方向から切り込まれた第2のスリットが円周方向に沿って交互に形成された請求項4に記載のインジェクタ保持構造。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る熱処理装置1の一例を示す構成図である。本発明の実施形態に係る熱処理炉装置1には、本発明の実施形態に係るインジェクタ保持構造が用いられる。
【0013】
図1に示すように、縦型の熱処理装置1は、長手方向が鉛直方向である略円筒形の処理容器4を有する。処理容器4は、天井を有する外筒6と、外筒6の内側に同心的に配置された円筒体の内筒8とを備える2重管構造を有する。外筒6及び内筒8は、石英などの耐熱性材料から形成される。外筒6及び内筒8は、ステンレスなどから形成されるマニホールド10によって、その下端部が保持される。マニホールド10は、ベースプレート12に固定される。なお、マニホールド10は、外筒6及び内筒8と別部材で構成されているが、構造的には、外筒6及び内筒8と一体的に構成され、外筒6及び内筒8とともに略円筒の内部空間を構成しているため、処理容器4の一部を構成しているものとする。つまり、処理容器4は、石英等の耐熱材料から構成される外筒6及び内筒8と、ステンレス等から構成されるマニホールド10とを備え、マニホールド10は、外筒6及び内筒8を下方から保持すべく、処理容器4の側面下部に設けられる。
【0014】
マニホールド10の下端部の開口部には、例えばステンレススチール等からなる円盤状のキャップ部14が、O−リング等のシール部材16を介して気密封止可能に取り付けられている。また、キャップ部14の略中心部には、例えば磁性流体シール18により気密状態で回転可能な回転軸20が挿通されている。この回転軸20の下端は回転機構22に接続されており、回転軸20の上端には、例えばステンレススチールよりなるテーブル24が固定されている。
【0015】
テーブル24上には、例えば石英製の保温筒26が設置されている。また、保温筒26上には、支持具として例えば石英製のウエハボート28が載置される。
【0016】
ウエハボート28は、ウエハWを処理容器4内で保持するための基板保持手段である。ウエハボート28には、例えば50〜150枚の半導体ウエハW等の基板が、所定の間隔、例えば10mm程度のピッチで収容される。ウエハボート28、保温筒26、テーブル24及びキャップ部14は、例えばボートエレベータである昇降機構30により、処理容器4内に一体となってロード、アンロードされる。
【0017】
マニホールド10の下部には、処理容器4内に処理ガスを導入するための、ガス導入管82が設けられる。ガス導入管82は、マニホールド10を気密に貫通するように設けられた金属ポート75を有する。
【0018】
金属ポート75には、インジェクタ60が挿入されて設けられる。インジェクタ60は、ガス導入管82を経て金属ポート75に供給された処理ガスを、ウエハWに供給するためのガス供給手段である。インジェクタ60は、例えば、石英で構成されてもよいし、SiC等のセラミクスで構成されてもよい。また、インジェクタ60は、石英、セラミクスの他、処理室4の内部を汚染し難い種々の材料を用いて構成することができる。インジェクタ60は、上方の先端部が密封され、ガスを供給するためのガス供給孔61が側面に複数設けられている。つまり、鉛直方向に所定間隔を有してガス供給孔61が設けられ、ガス供給孔61から処理ガスを供給しながらウエハWを熱処理し、ウエハWに成膜を行う。よって、ガス供給孔61は、ウエハWに近接した側に設けられる。
【0019】
インジェクタ60が、金属ポート75に固定保持されないと、シール性が悪化し、ガス供給孔からウエハWに向けて供給されるべき処理ガスが、インジェクタ60の下端部で漏れてしまい、ウエハWに効率よく供給されず、成膜のスループットが低下してしまう。また、運転条件により振動が生じてしまうと、インジェクタ60からパーティクルが発生し、膜に不純物が混入する原因ともなり得る。よって、本実施形態に係るインジェクタ保持構造及び熱処理装置1においては、インジェクタ60を金属ポート75に確実に固定保持させてシール性を向上させるとともに、膜への不純物の混入を防ぐ。なお、インジェクタ60の保持構造については、後に詳述する。
【0020】
また、
図1では、ガス導入管82が1つ設置される構成を示したが、本発明はこの構成に限定されない。使用するガス種の数などに依存して、複数のガス導入管82を有する熱処理装置1であっても良い。また、金属ポート75から処理容器4へと導入されるガスは、ガス供給源80から供給され、流量制御バルブ81により、流量制御される。
【0021】
マニホールド10の上部には、ガス出口36が設けられており、ガス出口36には排気系38が連結される。排気系38は、ガス出口36に接続された排気通路40と、排気通路40の途中に順次接続された圧力調整弁42及び真空ポンプ44とを含む。排気系38により、処理容器4内の雰囲気を圧力調整しながら排気することができる。
【0022】
処理容器4の外周側には、処理容器4を囲むようにしてウエハWなどの被処理体を加熱するヒータ装置48が設けられる。
【0023】
ヒータ装置48は、天井面を有する円筒体の断熱層50を有する。断熱層50は、例えば、熱伝導性が低く、柔らかい無定形のシリカ及びアルミナの混合物によって形成される。
【0024】
断熱層50は、その内周が処理容器4の外面に対して所定の距離だけ離間するよう、配置される。また、断熱層50の外周には、ステンレススチールなどから形成される保護カバー51が、断熱層50の外周全体を覆うように取り付けられている。
【0025】
断熱層50の内周側には、ヒータエレメント52が、螺旋状に巻回して配置されている。ヒータエレメント52は、断熱層50の内周側に、側面の軸方向全体に亘って巻回して設けられている。
【0026】
ヒータエレメント52は、軸方向において、複数のゾーン(例えば4つのゾーン)に分割されている。各々のゾーン毎に断熱層50に設けられる図示しない熱電対により検出した温度に基づいて、図示しない制御部により、各ゾーン毎に独立して個別に温度制御できる構成となっている。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係るインジェクタ保持構造70の一例を示した斜視図である。
図2において、処理容器4のマニホールド10に設けられた金属ポート75が、処理容器4の内周面側から示されている。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70においては、マニホールド10に設置された金属ポート75にインジェクタ60を挿入するだけでなく、ナット72によりインジェクタ60を金属ポート75に固定することによりインジェクタ60を保持する。
【0029】
図3は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70をより詳細に示した図である。
図3(A)は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70の断面構成の一例を示した図であり、
図3(B)は、インジェクタ保持構造70の構成要素の一部であるテーパーリング71の拡大図である。
【0030】
図3(A)に示すように、ナット72は、露出しているナット頭72cのみでなく、金属ポート75に挿入されたテーパー開口部72aと、ねじ部72bとを有する。ナット72は、インジェクタ60を保持すべくインジェクタ60に外嵌され、インジェクタ60を保持した状態でナット頭72c以外の部分が金属ポート75に挿入されて金属ポート75と係合する。これにより、インジェクタ60を金属ポート75に固定保持する。なお、ナット72の詳細な構成は後述するが、内周面にねじ山が形成された一般的なナット頭72cの部分だけでなく、インジェクタ60を固定保持すべく、テーパー開口部72a及びねじ部72bが設けられている。
【0031】
図3(B)は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70の一構成要素であるテーパーリング71の拡大斜視図である。テーパーリング71は、縦長のリング状の形状を有し、ナット72と同様にインジェクタ60に外嵌され、インジェクタ60とナット72との間に挿入されて用いられる。つまり、ナット72は、テーパーリング71を介してインジェクタ60を保持する。
【0032】
テーパーリング71は、その外面にテーパー形状のテーパー面71aを有し、インジェクタ60の長手方向に沿って、一端から徐々に先端の径が細くなる形状、又は逆に言えば一端から徐々に根本の径が太くなる形状を有する。テーパーリング71は、インジェクタ60に装着して用いられるので、内径は、ほぼインジェクタ60の外径に等しいか、少しだけ外径よりも大きい内径を有する。また、テーパーリング71の最も細い部分の外径は、テーパーリング71の厚さを除けばテーパーリング71の内径とほぼ等しいので、インジェクタ60の外径ともほぼ等しい。一方、テーパーリング71の反対側は、インジェクタ60の外径よりも太くなる。
【0033】
図4に示すように、かかるテーパー形状を有するテーパーリング71を用いるとともに、ナット72の先端に、テーパーリング71のテーパー面と係合するテーパー開口部72aを設け、ナット72をインジェクタ60の長手方向(軸方向)に沿って移動させることにより、テーパーリング71のテーパー面71aとナット72のテーパー開口部72aとが容易に係合し、ナット72がテーパーリング71を介してインジェクタ60を保持することができる。
【0034】
図3(B)に戻る。テーパーリング71は、種々の材料で構成することができるが、例えば、ステンレス、ハステロイ等の金属材料で構成してもよい。金属材料を用いる場合、弾性が少ないので、スリット71b、71cをテーパー面71aに形成し、構造的に弾性を持たせるようにする。かかる弾性により、ナット72が均等に力を加えて周囲から締め付けるようにしてインジェクタ60を保持することができ、しっかりとシール性良くインジェクタ60を保持できる。
【0035】
なお、テーパーリング71として、弾性を有するゴムや樹脂を用いることも可能であるが、これらの材料は耐熱性、耐食性に難点があり、高温で基板を処理する熱処理装置1には適用が困難である場合が多い。よって、本実施形態に係るインジェクタ保持構造においては、耐熱性、耐食性の高い材料をテーパーリング71として用いることが好ましい。よって、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70では、テーパーリング71に金属材料を採用した例を挙げている。なお、ステンレスは一般的に用いられる金属材料であり、ハステロイは、耐食性に優れた金属材料であり、両方とも、テーパーリング71の材料として適している。
【0036】
テーパーリング71の材料としては、金属材料の他、セラミクス等を用いることも可能である。金属、セラミクス等の材料は、材料自体の弾性はあまり大きくないが、
図3(B)に示すように、スリット71b、71cをテーパー面71aに形成することにより、構造的に弾性を持たせることができる。これにより、耐熱性及び耐食性を保持しつつ、十分なシール性を確保するための弾性を持たせることができる。
【0037】
なお、
図3(B)においては、インジェクタ60の長手方向に延びる向きのスリット71b、71cをテーパー面71aに形成している。そして、根本(径が大きい方)側から切れ込みが入るスリット71bと、先端(径が小さい方)側から切れ込みが入るスリット71cを、テーパーリング71の周方向に沿って交互に形成し、テーパー面71a全体としてジグザグな形状となるようにテーパーリング71を構成している。テーパーリング71は、全体として弾性を有し、インジェクタ60とナット72との間にクッションのような緩衝性を与え、ナット72がシール性よくインジェクタ60を保持することができる役割を果たすことができれば、種々の形状に構成してよいが、例えば、
図3(B)に示したような、長手方向において切れ込み方向が反対のスリット71b、71cを、周方向に交互に設けた形状としてもよい。
【0038】
また、テーパーリング71のテーパー面71aは、ナット72のテーパー開口部72aと係合することができれば、種々のテーパー角を有して構成されてよい。具体的には、例えば、テーパー開口部72aのテーパー角と同じ角度であってもよいし、テーパーリング71が弾性で収縮することを考慮して、テーパー開口部72aのテーパー角よりも少し大きいテーパー角を有するように構成してもよい。
【0039】
更に、テーパーリング71は、ナット72のテーパー開口部72aと係合することが可能なテーパー面71aを有してさえいれば、他に円筒状の部分等を有していてもよい。例えば、テーパーリング71の根本側に、そのような円筒状の部分が付加されていてもよい。しかしながら、加工コストの低減、余分な材料を処理容器内に持ち込まない観点からは、テーパーリング71は、外周面の総てがテーパー面71aとして構成されたテーパーコーン状(円錐状)に近い形状であることが好ましい。
【0040】
図4は、本発明の実施形態に係るインジェクタ保持構造70の詳細を示す構成図である。
図4(A)は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70の詳細斜視図であり、
図4(B)は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70の詳細断面図である。
【0041】
図4(A)に示すように、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70は、テーパーリング71と、ナット72と、固定ピン73と、保護板74と、金属ポート75とを備える。
【0042】
テーパーリング71は、鉛直方向上側がテーパー面の先端(径の細い方)となるようにインジェクタ60の周囲に外嵌される。ナット72は、テーパー開口部72aがテーパーリング71のテーパー面71aと係合可能なように、テーパーリング71よりも上方に、テーパー開口部72aが下側に来るようにインジェクタ60の周囲に外嵌される。よって、ナット72は、ナット頭72cが上側に来るように配置される。
【0043】
ナット72のねじ部72bの外周面には、ねじ山(
図4(B)参照)が形成されている。金属ポート75の内周面にもねじ山(
図4(B)参照)が形成され、互いに螺合してナット72と金属ポート75とが係合する構成となっている。ナット72のナット頭72cには、複数の貫通孔72dが形成されている。貫通孔72dは、ナット72を金属ポート75に固定し、ナット72の緩みを防止するための構造であり、金属ポート75の先端の肉厚面にも、位置決め孔75dが形成されている。ナット72と金属ポート75が係合する際、ナット頭71cの下端面と金属ポート75の上端の肉厚面は接触する。この時、金属ポート75の位置決め孔75dとナット72の貫通孔72dの位置を一致させ、互いに連通するようにし、貫通孔72dから固定ピン73を挿入すれば、固定ピン73が貫通孔72dと位置決め孔75dの双方を貫いて挿入され、ナット72は金属ポート75に固定され、ナット72の緩みを防止することができる。本実施形態に係るインジェクタ保持構造は、必要に応じて、そのようなナット72の緩み止め構造として、金属ポート75の位置決め孔75d、ナット72の貫通孔71d及び固定ピン73を備えてもよい。固定ピン73は、貫通孔71d及び位置決め孔75dの双方を貫通するように挿入できる径、長さを有すれば、種々の構成を有するピンを利用することができる。
図4(A)においては、先端が屈曲した形状の固定ピン73が用いられている。また、固定ピン73を構成する材料も、耐熱性、耐食性を有する材料から選択されてよく、例えば、金属材料から構成されてもよい。
【0044】
なお、熱処理装置1において、金属ポート75は基本的に処理容器4の内部に連通するマニホールド10に固定され、金属ポート75にインジェクタ60が挿入固定されるため、金属ポート75側に基準となる位置決め孔75dを1個設け、これに対応してナット72側に複数の貫通孔72dを設ける構成とすることが好ましい。ナット72が固定される位置は、ナット72のねじ部72bの回転により回転方向に変化するため、ナット頭72cの周方向に沿って複数の貫通孔72dが所定間隔を有して設けられることが好ましい。
【0045】
また、金属ポート75の位置決め孔75d及びナット72の貫通孔72dの位置には、位置決め用のマーク75b、72eが設けられていてもよい。ナット72を金属ポート75に固定する際、マーク75b、72e同士の回転方向の位置が一致するように合わせることにより、正確な位置決めを行うことができる。更に、インジェクタ60にも、位置決め用のマーク60bを設けるようにしてもよい。これにより、インジェクタ60と金属ポート72eとの位置決めを正確に行うことができる。なお、インジェクタ60と金属ポート75との位置決めの詳細については後述する。
【0046】
金属ポート75は、処理容器4のマニホールド10に固定するための固定構造を備えてもよい。
図4(A)においては、金属ポート75は、ワッシャ構造の固定部材75cを備えている。例えば、固定部材75cをねじ止めすることにより、処理容器4のマニホールド10に固定することができる。
【0047】
保護板74は、テーパーリング71によるインジェクタ60の傷の発生を防止するための部材である。具体的には、保護板74は、インジェクタ60とテーパーリング71との間に挿入され、テーパーリング71の角の部分が石英、SiC等のセラミクス等からなるインジェクタ60に押し付けられたときに、テーパーリング71がインジェクタ60を傷付けることを防止する。テーパーリング71は、スリット71b、71cが切られて角張った部分が多いため、締め付けられた際に、インジェクタ60を傷付けるおそれがある。保護板74は、テーパーリング71が直接インジェクタ60に接触することを防止し、傷の発生を防止する。保護板74は、種々の材料から構成されてよいが、例えば、金属薄板であってもよい。保護板74も、耐熱性、耐食性等を考慮して選択してよい。なお、保護板74は、必須ではなく、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0048】
図4(B)では、インジェクタ60が金属ポート75内に挿入され、インジェクタ保持構造70により保持された状態が示されている。最下部にテーパーリング71があり、テーパー面71aが上を向くように配置されている。一方、ナット72は、テーパー開口部72aがテーパーリング71のテーパー面71aと接触して係合するように、テーパー開口部72aが下を向いて開くように配置されている。ナット72のテーパー開口部72aは、テーパーリング71のテーパー面71aを押し付け、ナット72が下方に移動する程、テーパーリング71の締め付け力が強くなる構造となっている。また、テーパーリング71とインジェクタ60との間には、保護板74が設けられ、テーパーリング71が押し付けられても、テーパーリング71の角がインジェクタ60を傷付けることが無いようにインジェクタ60の表面を保護している。
【0049】
ナット72において、テーパー開口部72aの上方には、ねじ部72bが設けられている。金属ポート75は、内周面にねじ部75fを有し、ねじ部72bのねじ山と金属ポート75のねじ部75fのねじ山とで互いに螺合し、ナット72と金属ポート75とが係合する構造となっている。なお、本実施形態においては、ナット72と金属ポート部75との係合は、ねじ部72b、75f同士の螺合により行われる例が挙げられているが、他の係合手段を用いて係合してもよい。
【0050】
ナット72のねじ部72bの上方には、金属ポート75の内径よりも径が大きいナット頭72cが設けられ、ナット頭72cの底面と金属ポート75の上面が接触して係止する構成となっている。金属ポート75の上端の肉厚面には位置決め孔75d、ナット頭72cには貫通孔72dが各々鉛直方向に形成され、互いの位置を合わせて固定ピン73を貫通させることにより、ナット72の緩みを止めることができる構成となっている。なお、貫通孔72dは、円周方向に沿って複数形成されてもよい。また、貫通孔72d及び位置決め孔75dが設けられている箇所には、位置合わせを行うためのマーク72e、75b(
図4(A)参照)が形成されてもよい。このように、ナット72は、テーパー開口部72a、ねじ部72b、ナット頭72cと役割が異なるため、長手方向に沿って異なる位置に設けられてもよい。
【0051】
なお、金属ポート75にインジェクタ60を挿入固定する際には、まず、金属ポート75にインジェクタ60を挿入する前にインジェクタ60にナット72を外嵌し、次いでインジェクタ60にテーパーリング71を外嵌し、最後に保護板74をインジェクタ60に外嵌してからインジェクタ60を金属ポート75に挿入する。そして、保護板74にテーパーリング71を被せ、更にその上からナット72をテーパーリング71に被嵌させ、ナット72を更に下方に移動させて金属ポート75に挿入する。この時、テーパーリング71のテーパー面71aとナット72のテーパー開口部72aとが接触して係合する。ナット72のねじ部72bが金属ポート75のねじ部75fに達したら、ナット72を回転させ、ねじ部72b、75f同士を螺合させてナット72を金属ポート75に係合させる。ナット頭72cの底面が金属ポート75の上端面と接触して係止したら、ナット72の回転を止める。これにより、インジェクタ60は、ナット72に保持された状態で金属ポート75に固定される。最後に、マーク72e、75bを用いてナット頭72の貫通孔72dを金属ポート75の位置決め孔75dに位置合わせし、貫通孔72dから固定ピン73を挿入して貫通孔72d及び位置決め孔75dを貫通させ、ナット72の緩みを防止する。例えば、このような手順で、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70を用いて、インジェクタ60を金属ポート75に挿入固定することができる。
【0052】
次に、
図5〜8を用いて、インジェクタ60の金属ポート75への挿入固定の際に位置決めを行うための構成及び方法と、金属ポート75の処理容器4への固定方法について説明する。
【0053】
図5は、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70を用いて、インジェクタ60を金属ポート75に挿入固定する工程を示した図である。インジェクタ60の金属ポート75への挿入固定は、
図4(A)、(B)において説明した手順により行われる。
【0054】
図6は、インジェクタ60を金属ポート75に挿入固定する際に位置決めを行うための構成及び方法について説明するための図である。
図6は、処理容器4の中心側から、処理容器4の内周面を見たときの金属ポート75及びインジェクタ60を示している。
図6に示すように、インジェクタ60の下端面には、鉛直方向に切除されたU字状の切欠き60aが形成されている。そして、金属ポート75の内側の底面には、突起75aが形成されている。インジェクタ60の切欠き60aと、金属ポート75の突起75aは、互いに係合する凹凸形状となっており、この凹凸形状を係合させることにより、インジェクタ60と金属ポート75との位置決めができる構成となっている。しかしながら、切欠き60aと突起75aとの係合は、遊びとしてクリアランスを設けた場合には、微細な位置合わせまではできない。そこで、金属ポート75には位置合わせ用のマーク75b、インジェクタ60には位置合わせ用のマーク60bをそれぞれ設け、これを用いて位置合わせを行うことにより、正確な位置決めを最終的に行うことができる。このように、インジェクタ60と金属ポート75とに切欠き60a、突起75aからなる係合構造を設けて粗い位置決めを行い、最終的にマーク60b、75bを用いて正確な位置決めを行うようにしてもよい。なお、インジェクタ60と金属ポート75との係合構造は、切欠き60aと突起75aの係合に限定されるものではなく、用途に応じて種々の係合構造を利用することができる。
【0055】
図7は、金属ポート75を処理容器4のマニホールド10に設置する際の固定方法の一例を示した図である。
図7に示すように、金属ポート75の固定部材75cをねじ90で両側から固定することにより、処理容器4のマニホールド10の内周面に金属ポート75を固定設置することができる。これにより、金属ポート75が回転方向に倒れることを防止することができる。
【0056】
図8は、ガス導入管82を金属ポート75に設置する際の固定方法の一例を示した図である。
図7で説明したように、金属ポート75は、処理容器4のマニホールド10の内周面にねじ90で固定され、
図8に示すように、L字の下端水平部分が処理容器4の外周側に突出している場合には、水平突出部分の先端にガス導入管82を、接続構造83を用いて容易に接続することができる。金属ポート75が固定されていないと、作業者は、一人が処理容器4の内周面側で金属ポート75を保持し、もう一人が処理容器4の外周面側でガス導入管82を金属ポート75に接続する、という作業になってしまう。しかしながら、本実施形態に係るインジェクタ保持構造70は、金属ポート75を処理容器4のマニホールド10の内周面に固定する固定部材75cを備えているため、まず金属ポート75を処理容器4のマニホールド10に内周面側で固定し、次いで外周面側に移動してガス導入管82を金属ポート75に接続することが可能となるため、インジェクタ60の金属ポート75への挿入固定から金属ポート75へのガス導入管82の接続の一連の作業を、一人で行うことが可能となる。
【0057】
このように、本実施形態に係るインジェクタ保持構造を用いることにより、インジェクタの設置作業の作業効率をも向上させることができる。
【0058】
なお、本発明の実施形態においては、金属ポート75を処理容器4の側面下部にあるマニホールド10に固定する例を挙げて説明したが、金属ポート75は、処理容器4の内部と連通する箇所であれば、処理容器4自体及び処理容器4以外の箇所を含めて、種々の箇所に設けることができる。例えば、マニホールド10以外の処理容器4の内部と連通する箇所を設け、当該箇所に金属ポート75を固定するようにしてもよい。更に、処理に影響が無ければ、外筒6及び内筒8を貫く箇所に金属ポート75を設けるようにしてもよい。
【0059】
また、本発明の実施形態においては、インジェクタ保持構造70を適用する基板処理装置として、熱処理装置を用いた例を挙げて説明したが、インジェクタ60を金属ポート75に設置する構造を有する基板処理装置であれば、種々の基板処理装置に適用することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。