特許第6208596号(P6208596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208596
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】反応セル、及び生化学自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170925BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01N35/02 A
   G01N21/03 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-31886(P2014-31886)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-158374(P2015-158374A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】505099772
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 宇亨
(72)【発明者】
【氏名】河野 務
(72)【発明者】
【氏名】小森 範尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−157787(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0196271(US,A1)
【文献】 特開2006−349582(JP,A)
【文献】 特表2007−534928(JP,A)
【文献】 特開平05−133881(JP,A)
【文献】 特開2008−096115(JP,A)
【文献】 特開2003−106991(JP,A)
【文献】 特開昭61−247376(JP,A)
【文献】 特開2013−076622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G01N 1/00− 1/34
G01N 33/48−33/98
G01N 35/00−37/00
B01L 1/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学樹脂または光学ガラスで成型され、一端に開口部を形成した有底の反応セルであって、
前記反応セルの管壁は、向かい合う一組の壁面と、前記一組の壁面のそれぞれと角部を介して連接する2つの側壁面と、を有し、
前記一組の壁面の壁厚は、前記角部厚よりも厚く、前記壁面の全体に亘って一様な厚さ、もしくはそれぞれの壁厚の一部に最大値を有する場合は、該最大値を有する位置から前記角部に亘って該壁厚が単調減少することを特徴とする反応セル。
【請求項2】
光学樹脂または光学ガラスで成型され、向かい合う2組の平板と該平板をつなぐ角部、及び底面部からなる反応セルであって、
一組の平板の肉厚をそれぞれa1、a2とし、前記肉厚a1を有する平板の両端につながる角部の最大肉厚をそれぞれb1、b2とし、前記肉厚a2を有する平板の両端につながる角部の最大肉厚をそれぞれb3、b4とした場合、次の関係を満たすことを特徴とする反応セル。
a1>b1、a1>b2、a2>b3、a2>b4
【請求項3】
前記a1、a2、及び前記b1、b2、b3、b4が次の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の反応セル。
max(a1,a2)−min(b1,b2)<0.2mm
【請求項4】
前記平板と、該平板をつなぐ角部との接続部の外周表面に段差を有し、
前記外周表面が、前記接続部において曲率半径rの形状を有し、r>0.1mmを満たしながら前記角部と接続されることを特徴とする請求項2に記載の反応セル。
【請求項5】
光学樹脂または光学ガラスで成型され、向かい合う2組の平板と該平板をつなぐ角部、及び底面部からなり一端に開口部を有する反応セルであって、
前記底面部と前記向かい合う2組の平板との接続部において、前記2組の平板は前記底面部から前記開口部に向けて肉厚が次第に変化するテーパ形状を有し、
前記底面部の上端面から高さhの仮想線と交差する前記平板の一組の肉厚をd1、d2とし、前記高さhにおけるもう一組の平板の肉厚をe1、e2とした時、次の関係を満たすことを特徴とする反応セル。
d1>e1、d1>e2、d2>e1、d2>e2
【請求項6】
前記向かい合う一組の壁面と、前記一組の壁面のそれぞれと角部を介して連接する2つの側壁面は、前記壁面が前記側壁面より肉厚で、該壁面が光透過部となることを特徴とする請求項1記載の反応セル。
【請求項7】
前記一組の平板の肉厚が、前記向かい合う2組の平板のうちの該一組の平板の肉厚が、他の一組の平板の肉厚より厚く、該厚い部分が光透過部となることを特徴とする請求項2記載の反応セル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の反応セルを搭載した生化学自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学自動分析装置に用いる反応セル、及びそれを用いた生化学自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学自動分析装置は血清成分の吸光分析を自動で行なう装置である。血清成分の吸光分析は、血清に試薬を混合・反応させたものに多様な波長の光を透過させ、各波長における吸光光度を測定することで、血清内に存在する糖質やタンパク質、ミネラル等の各成分の含有量を推定する手法であり、健康診断などに利用されている。血清成分の吸光分析の模式図を図9Aに示す。光源901から出た光をスリット902に通過させるなどして平行光(測光光線)903を抽出し、血清と試薬の混合物908に入射させる。透過光を回折格子905により分光してスペクトル906を得る。スペクトルから各波長の吸光度を検出部907で測定し、血清中の各成分の含有量を推定する。
【0003】
血清と試薬を混合させる容器を反応セル904と呼ぶ。光を透過させるために、反応セル904は可視光を含む100nm〜1000nmの帯域における透過率が高いことが望ましい。このため反応セル材料としては光学材料が用いられる。また、分析効率の観点から、透過光を分散させずに一箇所に集めて分析を行なうことを目的として、透過光には平行光が用いられ、反応セルは一般的に平板を組み合わせた箱型形状がとられる。信頼性の高い分析を行なうために必要な血清および試薬の量は数マイクロリットル〜数十マイクロリットルであり、一般的な反応セルの大きさは断面積が数十平方mm、高さが数十mm程度である。分析時に測光に用いる領域は、セル底より数mmの高さに限られる。
【0004】
生化学自動分析装置は、多数の血清の分析を高速かつ自動で行なう観点で、以下のように設計されることがある。ディスクなどにより反応セルを円周上に配置し、円の中心に光源を、動径方向に回折格子を設置して、ディスクを回転させて代わる代わる反応セルを測光する。
【0005】
ここで、反応セルは基本的に消耗品であり、日々の膨大な回数の生化学検査に対応するため、高い生産力が求められる。このため、反応セルは光学樹脂または光学ガラスの射出成形にて箱型に成形・製造される。また、生産力向上とコスト削減の観点から、数個〜数十個のセルを一体で成形した反応セル(以下、連セルと表記)を用いることがある。この連セル成形に関しては特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−283539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反応セルの成形・製造においては成形不良がしばしば問題となる。成形不良としてはウェルドや異物が挙げられる。このうちウェルドは未充填部が固化したものであり、ミクロなノッチ形状を呈している。ウェルドが光透過部に存在すると、測光において光の散乱が起こって分析効率が落ち、場合によっては測定エラーを生じることがある。このため、成形後の検査において光透過部にウェルドが認められた場合は、不良品として出荷対象からは除外される。特に、上述の連セルはセルの中でひとつでも成形不良があった場合に、一体成形された他のセルごと不良品となる。このため、連セルでは光透過部におけるウェルド発生が歩留まりに与える影響が単一セル成形に比べて大きく、より重大な問題となる。
【0008】
また、ウェルドが存在すると、セルが衝撃を受けたとき、たとえば運搬時の不注意による落下時や、検体(血清)の分注におけるノズルとの接触時などに、ウェルドのノッチ先端における応力集中がセルの破壊を誘発する可能性がある。そのため、セル全面にわたってウェルドが存在しないことが望ましい。少なくとも光透過部にウェルドが無いことが望ましい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、光透過部でのウェルド発生を防止し、透過光の散乱を低減し安定した透過性を有する高分析効率の生化学自動分析装置用反応セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記ウェルド発生は、成形における樹脂の合流部分の位置と合流角は樹脂充填パターンにより決まり、その樹脂充填パターンはキャビティ寸法形状によりほぼ決まることが判明した。このため、充填時に樹脂合流が生成されないようなキャビティ寸法形状設計が重要といえる。
【0011】
しかし、実際には樹脂合流が回避困難な場合が多く、この対策として、樹脂合流位置近傍にベント(金型キャビティの排気口)を設けたり、製品性能を損なわない位置にウェルドを生じさせるようにするなどの工夫が考えられるが、連セルの場合はセル間が数mmと近く、セルごとにベントを設けることが難しい。
【0012】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の反応セルは以下の特徴を有する。
一端に開口部を形成した有底の反応セルであって、反応セルの管壁は、向かい合う一組の壁面と、一組の壁面のそれぞれと角部を介して連接する2つの側壁面とを有し、一組の壁面の壁厚は、連接する角部厚よりも厚く、壁面の全体に亘って一様な厚さ、もしくはそれぞれの壁厚の一部に最大値を有する場合は、該最大値を有する位置から角部に亘って該壁厚が単調減少することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光透過部でのウェルド発生を防止し、安定した透過性を得られる生化学自動分析装置用反応セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で示す反応セルの模式図である。
図2】ウェルド生成メカニズムの模式図である。
図3】従来の反応セルの模式図である。
図4】成形シミュレーションによる反応セルの射出成形における樹脂充填過程を示す図である。
図5A】セル肉厚とウェルド発生の計算結果を示す図である。
図5B図5Aの算出に用いた入力値を示す図である。
図6】実施例2で示す反応セルの上面模式図である。
図7】実施例3で示す反応セルの上面および断面模式図である。
図8】本発明の反応セルの角部の肉厚と樹脂充填分布の関係を示す図である。
図9A】血清成分の吸光分析の模式図である。
図9B】生化学自動分析装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の内容を、実施例を用いて以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の反応セルの模式図であり、(a)は俯瞰図を、(b)は反応セル形状の上面模式図を示す。反応セル100は、向かい合う2組の平板110と120、及び130と140、前記平板110と130をつなぐ角部150、前記平板110と140をつなぐ角部160、前記平板120と130をつなぐ角部170、前記平板120と140をつなぐ角部180、底面190とからなる。なお、本図では、平板110、120を短辺側とし、平板130、140を長辺側としている。反応セル100は、底面190の中央裏側にゲート191を有し、一組の平板110、120の肉厚をそれぞれa1、a2とし、平板110、120の両端の角部150〜180のそれぞれの最大肉厚をb1〜b4とした時、次の関係を満たすことを特徴としている。
【0017】
a1>b1、a1>b2、a2>b3、a2>b4
図1(a)に示す反応セル100の俯瞰図の上面開口部より、分析対象となる測定物(例えば、血清成分)を滴下し、反応セル100内に充填する。測定物が充填された反応セル100に光を照射し、図1(b)に示す平板120から110、または110から120へ光を透過させ、透過率を検出することで、測定物の吸光分析を行う。ここで、光が透過する面を光透過部と呼ぶことにする。この光透過部にウェルドが発生していると、透過光の一部に吸収や散乱が生じ、安定した透過性を確保できない。
【0018】
そこで、本発明に係る上記形状とすることにより、光透過部でのウェルド発生を防止し、安定した透過性を得ることができる。その理由を従来形状との比較で以下に説明する。
【0019】
ウェルドの発生メカニズム模式図を図2に示す。図2は、金型中に充填中の樹脂の流れ(図中の流れ1、2)を示す。(a)は樹脂の流れの様子を示す俯瞰図であり、(b)は(a)で示す断面1における樹脂が充填された金型の断面を示す。
【0020】
図2(a)で示すように、成形時の樹脂充填において、流速分布は一様でなく、充填の早い部分と遅い部分があり、充填の遅い部分において樹脂の合流が起こる。この合流部においてキャビティ内にあらかじめ存在する空気等の気体が排出されきらないまま樹脂が固化すると、成形品表面にウェルドとなって残る。ここで、「合流角=空気が排出される樹脂未充填部への開口角」であり、合流角が小さいほど空気の逃げ場が少なくなって、排出されづらくなる。よって、合流角が小さいほど、ウェルドが生じる可能性が大きくなる。
【0021】
図3に従来形状を示す。従来の反応セル300は、向かい合う2組の平板310と320、及び330と340、前記平板310と330をつなぐ角部350、前記平板310と340をつなぐ角部360、前記平板320と330をつなぐ角部370、前記平板320と340をつなぐ角部380、底面390とからなり、底面390の中央裏側にゲート391を有する。光透過部である一組の平板310、320のそれぞれの肉厚a1、a2に比べて、その両端の角部350〜380のそれぞれの最大肉厚b1、b2、b3、b4の方が大きかった。
【0022】
この結果、成形時の樹脂充填においては光透過部よりも角部から先に充填される。その理由は、流動抵抗の小さい部分に優先的に樹脂が流入するためである。流動抵抗は肉厚の3乗に比例し、肉厚が薄いほど大きくなる。このため、角部に比べて肉厚の薄い光透過部の充填速度が遅くなり、光透過部にて樹脂の合流が起きる。
【0023】
これを検証するため、成形シミュレーションソフトウェアを用いて樹脂充填過程を計算した結果を図4に示す。
【0024】
図4(a)は、図3に示す従来の反応セルにおいて、角部の肉厚が光透過部より厚い場合の計算例である。ゲートから流入した樹脂は、肉厚の大きい角部に優先的に流入し、平板部を挟んで2つの角部を進む流れがV字形状を呈しており、合流角は光透過部である短辺側平板部において110度と小さくなっている。また、このため、空気の排出が十分でなかった場合にウェルドとなる可能性が高いことがわかる。長辺側平板部においては、合流角は130度となっている。別途行なった実験との比較により、成形シミュレーションにおける合流角が130度を下回ると、ウェルドが生じることがわかった。
【0025】
これに対し、図1に示す本発明のセル形状は、角部の肉厚を光透過部よりも薄くしている。この形状により光透過部での流速を早め、同部における樹脂合流を回避することが期待できる。これを三次元のセル形状で検証するため、本発明のセル形状の樹脂充填過程を成形シミュレーションにて計算した結果の例を図4(b)に示す。
【0026】
光透過部である短辺側平板部の流速が角部に比べて速くなった結果、短辺側平板部において樹脂合流が見られず、ウェルド発生を防止できる。なお、短辺側角部の肉厚は同じである必要はない。この理由を、反応セルの角部の肉厚と樹脂充填分布の関係を示す図8を用いて説明する。(a)は、角部の肉厚がb1<b2の場合を示し、(b)はb1=b2の場合であり、(c)はb1>b2の場合である。仮に光透過部肉厚に対する2つの角部(例えば、150、160)の肉厚に差があった場合でも、図8(a)または(c)に示すように光透過部内での樹脂合流を回避できる。
【0027】
通常、反応セルは透過光の平行性を鑑みて、短辺側の側面は肉厚が一定な平板を用いるが、金型加工精度の限界等により厳密に肉厚一定な平板とすることは難しい。しかし、光透過部内位置による肉厚ばらつきが10μm以内で、かつ角部の肉厚がばらつきを含めた光透過部肉厚よりも薄ければ、本発明は効果がある。
【0028】
また、透過光の平行性をある程度犠牲にする場合は、必ずしも一定の肉厚にする必要はない。その場合、上述したことから、反応セルの管壁の肉厚の一部に最大値を有し、該最大値を有する位置から短辺側角部に亘って該壁厚が単調減少する形状にすれば、樹脂を金型に流入させるときに合流が生じることはなく、ウェルド発生もない。
【0029】
図4(b)の場合、光透過部ではない長辺側における樹脂合流角は100度と小さくなり、ウェルドが発生する。これは角部の肉厚を光透過部平板部に比べて薄くしすぎたためと考えられる。ただし、長辺側は光透過部ではないので、ウェルド発生しても光の透過性に影響はでない。
【0030】
図4(c)について次段落で説明し、(d)に関しては実施例3で説明する。
【0031】
図4(b)の場合、短辺側と長辺側の肉厚差を適切に設定することで、長辺側でのウェルド発生も防止できると考えられる。そこで、セルの寸法形状と樹脂材料、成形条件を変えて計算を行ない、長辺側の樹脂合流角を調べた。その結果得られたウェルド回避可否範囲を図5Aに示す。また、図5Bには、図5Aに示す結果を計算する際の反応セルの形状およびそれに用いたパラメータ一覧を示す。(a)は、反応セルの平面図であり、(b)は計算に用いた形状に関するパラメータ範囲(最小、最大)を示し、(c)は計算における樹脂物性の特性範囲(最小、最大)を示し、(d)は成形条件の範囲(最小、最大)を示している。なお、樹脂の粘度等の物性は、同一樹脂であっても温度やせん断速度によって変化するが、ここでは計算中に取った値の範囲を示している。また、光透過部は必ずしも短辺側である必要はないが、ここでは短辺側を光透過部として扱っている。
【0032】
図5Aは、横軸に平板310、320の肉厚a1、a2のどちらか大きい値を取り、
縦軸に角部の肉厚b1、b2のどちらか小さい値を取った場合のウェルド発生の有無をプロトした図である。
図5Aより、横軸の値から縦軸の値を減算した値が0.2mm以下、すなわち、max(a1,a2)−min(b1,b2)<0.2の領域において長辺側平板部におけるウェルド発生も防止できることがわかった。ここで、max(a1,a2)は、括弧内の変数の中から最大値を抽出する関数であり、min(b1,b2)は、括弧内の変数の中から最小値を抽出する関数である。図4(c)は同領域での計算結果の例である。
【0033】
よって、本実施例によれば、光透過部でのウェルド発生を防止し、透過光の散乱を低減し安定した透過性を有する高分析効率の生化学自動分析装置用反応セルを提供することができる。
【実施例2】
【0034】
図1に示す反応セルの平板110、120におけるセル肉厚は一定の厚さを保持し、両端部で角ばった形状となっている。
本実施例では、図6のように、セル肉厚がなだらかに変化する形状とすることで、離型抵抗を下げることができ、分析時における気泡の付着・滞留を低減することができる。実験によれば、表面形状に内接する円の半径が0.1mmよりも大きくすることで効果が認められた。
【0035】
分析時、血清の温度調節を目的として、セルは温度管理された液体中に浸されるが、測光面に気泡が付着していると測定エラーを誘発する。しかし、本実施例に示す形状とすることで、気泡の付着・滞留を低減できるので、測定エラーの誘発を防止できる効果がある。
【実施例3】
【0036】
本発明の他の反応セル形状を図7に示す。実施例1との違いは角部の肉厚は従来のままとし、セル底面の光透過部側にスロープを設けた点である。
【0037】
反応セル700は、向かい合う2組の平板710と720、及び730と740、前記平板710と730をつなぐ角部750、前記平板710と740をつなぐ角部760、前記平板720と730をつなぐ角部770、前記平板720と740をつなぐ角部780、底面790とからなり、底面790の中央裏側にゲート791を有する。
【0038】
セル底面からある高さにおける短辺側の肉厚d1およびd2と、同じ高さhにおける長辺側の肉厚e1およびe2が次の関係を満たすセルである。
【0039】
d1>e1、d1>e2、d2>e1、d2>e2
本形状の成形シミュレーションによる樹脂充填過程の計算結果の例を図4(d)に示す。
図4(d)に示すように、短辺側には、合流部は発生していない。
【0040】
従って、本実施例で示す形状でも光透過部である短辺側平板部において樹脂合流が見られず、ウェルド発生を防止できる。本実施例は実施例1と異なり、ゲートのあるセル底から一定の高さに限って、光透過部における樹脂合流回避の効果があるが、分析時に測光に用いる領域は上記効果の及ぶ範囲内とすることができ、実用上での支障はない。
【実施例4】
【0041】
本実施例は、実施例1〜3に示すいずれかの反応セルを用いた吸光分析を自動で行なう生化学自動分析装置に関するものである。
【0042】
生化学自動分析装置は、図9Bのように、回転可能なディスク910の周辺部沿って配列された反応セル904へ光を照射する光源901と、反応セルを通過した光を検出する検出部907と、検出部などを制御する制御部913筐(分析装置の筐体内に内蔵されている)と、制御部913へデータを入力する入力部912と、制御部からの出力を表示する表示部911などで構成される。本発明の反応セルを用いる点以外は、本生化学自動分析装置は通常のものと同様の構成である。
【0043】
上記反応セルに血清に試薬を混合・反応させた検査液を充填し、その反応セルに可視光を含む100nm〜1000nmの帯域の各波長を有する光を照射し、該光を検査液中を透過させる。透過光の各波長における吸光光度を測定することで、血清内に存在する糖質やタンパク質、ミネラル等の各成分の含有量を推定する。
【0044】
上述した各実施例による反応セルは、少なくとも光透過部には、ウェルドの発生がない。
【0045】
従って、測光において光の散乱が起こって分析効率が落ちることはなく、また測定エラーを生じることもないので、分析精度の高い、安定した透過性を有する反応セルを搭載した生化学自動分析装置を提供することができる。
【0046】
また本発明の構成は光透過部のみならず、光透過面の広域にわたって、そして光透過面全域にわたり実現されている。これがより好ましいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
100,300,700…反応セル、
110,120,130,140,310,320,330,340,710,720,730,740…セル平板部、
150,160,170,180,350,360,370,380,750,760,770,780…セル角部、
190,390,790…セル底面
191,391,791…ゲート、
901…光源、902…スリット、903…平行光(測光光線)、904…反応セル、905…回折格子、906…分光スペクトル、907…検出部、
910…ディスク、911…表示部、912…入力部、913…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B