特許第6208646号(P6208646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208646貼り合わせ基板とその製造方法、および貼り合わせ用支持基板
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  • 特許6208646-貼り合わせ基板とその製造方法、および貼り合わせ用支持基板 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208646
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】貼り合わせ基板とその製造方法、および貼り合わせ用支持基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20170925BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20170925BHJP
   B23K 20/16 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
   H01L21/265 Q
   B23K20/00 310L
   B23K20/00 310M
   B23K20/16
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-200770(P2014-200770)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72450(P2016-72450A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】小西 繁
(72)【発明者】
【氏名】川合 信
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064080(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011152(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/094665(WO,A1)
【文献】 特開2010−278160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B23K 20/00
B23K 20/16
H01L 21/265
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の無機焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、少なくとも1層の0.1μmを超えて10μm未満の厚さのアモルファス膜を備える支持基板を得る工程と、
前記アモルファス膜を介して前記支持基板と単結晶半導体基板を貼り合わせる工程とを少なくとも含み、
前記単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項2】
前記アモルファス膜の種類と厚さが、前記アモルファス膜の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数(1/総括伝熱係数)を、前記アモルファス膜を備える前の絶縁性の無機焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%とするように選択される、請求項1に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項3】
前記コーティング処理を施して、少なくとも1層のアモルファス膜を備える支持基板を得る工程の後で、前記貼り合わせる工程の前に、少なくとも前記単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面に、研磨を施す工程を含む、請求項1または2に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項4】
前記焼結体基板が、5.0W/m・K以上の熱伝導率、1.0×10Ω・cm以上の体積抵抗率、および5.0×10−6/℃以下の線膨張係数を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項5】
前記アモルファス膜が、SiO、Si、SiO(式中、xおよびyは、0<x<2.0、0<y<1.3を満たす数である。)、アモルファスシリコンおよびアモルファスポリシリコンから選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項6】
前記アモルファス膜がSiであり、膜厚が0.1μmを超えて1μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項7】
前記焼結体基板が、窒化珪素、窒化アルミニウムまたはサイアロンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項8】
前記単結晶半導体基板が、単結晶シリコンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板の製造方法。
【請求項9】
絶縁性の無機焼結体基板と、前記焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層の0.1μmを超えて10μm未満の厚さのアモルファス膜とを備えた貼り合わせ用支持基板であって、
前記アモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm2未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ用支持基板。
【請求項10】
前記アモルファス膜の種類と厚さが、前記アモルファス膜の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数(1/総括伝熱係数)を、前記アモルファス膜を備える前の絶縁性の無機焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%とするように選択される、請求項9に記載の貼り合わせ用支持基板。
【請求項11】
前記焼結体基板が、5.0W/m・K以上の熱伝導率、1.0×10Ω・cm以上の体積抵抗率、および5.0×10−6/℃以下の線膨張係数を有する、請求項9または10に記載の貼り合わせ用支持基板。
【請求項12】
前記アモルファス膜が、SiO、Si、SiO(式中、xおよびyは、0<x<2.0、0<y<1.3を満たす数である。)、アモルファスシリコンおよびアモルファスポリシリコンから選ばれる、請求項9〜11のいずれか1項に記載の貼り合わせ用支持基板。
【請求項13】
前記アモルファス膜がSiであり、膜厚が0.1μmを超えて1μm以下である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の貼り合わせ用支持基板。
【請求項14】
前記焼結体基板が、窒化珪素、窒化アルミニウムまたはサイアロンである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の貼り合わせ用支持基板。
【請求項15】
絶縁性の無機焼結体基板と、前記焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層の0.1μmを超えて10μm未満の厚さのアモルファス膜と、前記アモルファス膜の上に配置した単結晶半導体層とを備えた貼り合わせ基板であって、
前記単結晶半導体層を配置する前記アモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ基板。
【請求項16】
前記アモルファス膜の種類と厚さが、前記アモルファス膜の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数(1/総括伝熱係数)を、前記アモルファス膜を備える前の絶縁性の無機焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%とするように選択される、請求項15に記載の貼り合わせ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基板上に単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板に関し、より詳しくは、熱伝導性の高い窒化珪素や窒化アルミニウムなどの絶縁性の焼結体基板上に、主に高周波用途に用いられる半導体デバイス層を有する単結晶シリコン層を備えた貼り合わせ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン系半導体デバイスは、デザインルールの微細化に伴い、益々デバイス性能の向上がなされてきている。このデバイスに用いられる基板として、主にSOI(Silicon on Insulator)基板が挙げられる。SOI基板は、半導体素子において接合容量の低減やリーク電流の抑制、高周波特性などの観点からパワーデバイスや高周波デバイスなどの用途に適している。
【0003】
SOI基板の代表的な製造方法として、SIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)法や貼り合わせ法が挙げられる。SIMOX法では、半導体であるシリコン基板に酸素イオンを高濃度で注入した後に高温で熱処理を行い、基板内に絶縁体となる酸化膜を形成することによってSOI基板とする。一方、貼り合わせ法では、半導体であるシリコン基板と絶縁体の支持基板とを貼り合わせた後に、シリコン基板を薄化することによってSOI基板とする。なお、SOI基板の支持基板は、一般的には絶縁体基板のみであるが、用途によって、少なくとも支持基板のシリコン層を備える表面部分に絶縁体層を有した半導体または絶縁体からなる基板も含まれる。この場合、絶縁体層と絶縁体基板の材料は、同じものでも異なるものでもよい。
【0004】
SOI基板は、例えば、裏面照射型CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ(特許文献1)や高周波半導体装置(特許文献2)などの作製に用いられる転写用基板としても応用されている。例えば、裏面照射型CMOSセンサは、SOI基板のシリコン層に半導体デバイス層を形成した後に、半導体デバイス層と別の支持用基板であるシリコン基板を接合し、シリコン基板と接合した半導体デバイス層の裏面側であるSOI基板の絶縁体基板部分若しくは絶縁体基板部分およびシリコン層の一部をバックグラインド等の手段または研磨、エッチングによって除去してシリコン層を表面とし、このシリコン層の上にカラーフィルタ、オンチップレンズを形成することで作製することができる。上述したSOI基板の絶縁体基板部分若しくは絶縁体基板部分およびシリコン層の一部の除去に用いられるバックグラインド等の手段は、裏面照射型固体撮像素子の製造で用いられる手段である。高周波半導体装置においても同様に、SOI基板は、高周波半導体デバイス層を別の支持基板に転写するために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5286820号
【特許文献2】国際公開2013/118618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
転写用基板は、SOI基板以外には一般的に安価であるシリコンやガラスが挙げられる。しかしながら、シリコンは高周波領域での損失が大きいため、高周波デバイス用途ではロスが発生しやすい場合があり、ガラスは熱伝導率が低いため、放熱しにくい場合があった。ガラスより熱伝導率が高いサファイアを支持基板としたSOS(Silicon on Sapphire)基板も挙げられるが、サファイア基板はシリコンとの熱膨張率の差が大きいため、反りが発生しやすく反りが大きいので、転写用基板に不向きである場合があった。このため、貼り合わせ後の反りが小さく、安価で熱伝導性が良好となる、転写用基板として好適な基板が望まれている。
【0007】
また、近年、デバイスの高パワー化や高集積化により、個々のトランジスタ、およびトランジスタ間を接続する金属配線からの発熱量が増加する傾向にあることから、SOI基板の放熱性の改善が求められている。放熱性を改善するために、デバイスを形成したシリコン層を裏面側から百〜数百μm程度まで薄化して、さらに、巨大なファンをデバイス上に取り付けて放熱を促したり、水冷チューブをデバイスの周囲にめぐらせて冷却させたりすることが検討されている。しかしながら、薄化した場合であっても、シリコン層は百〜数百μm程度有しており、デバイスが形成される領域は表面から数μm程度しか有しておらず、残りの領域は、シリコンの誘電特性に基づいて高周波領域での損失が大きいため、熱溜まりとして作用し、放熱性が改善しない場合があった。また、高性能プロセッサーなどに用いられるSOI基板のように、シリコンの半導体デバイス層の直下にSiOからなる絶縁層を介した構造とする場合、SiOの熱伝導率が1.38W/m・Kと低いため、より放熱しにくくなる場合があった。
【0008】
一方、SOS基板は、熱伝導性が良く、且つ高周波領域での損失が小さいという特性を有する。しかしながら、支持基板に用いるサファイア基板は、シリコンとの熱膨張率の差が大きいため、熱処理や成膜時に反りが発生しやすく反りが大きいので、大口径化しにくく、また、コストが高くなる場合があった。さらに、サファイア基板は可視光領域で透明であるため、デバイスの製造プロセスにおいて、支持基板の存在確認やウェハの位置決めに使用される光センサに反応しない場合があった。
【0009】
可視光に不透明で熱伝導性が良く、且つ安価なSOI基板の支持基板の材料として、窒化珪素や窒化アルミニウムなどの無機焼結体(セラミックス)を挙げることができる。無機焼結体基板(以下、焼結体基板という)は、サファイア基板と比べてシリコンとの熱膨張率の差が小さいため、貼り合わせ基板とした際にSOS基板と比べて反りが発生しにくく、反りが生じた場合でも反りが小さいので、大口径化しやすい。
【0010】
しかしながら、焼結体基板は、窒化珪素や窒化アルミニウムの粉体を焼結助剤で固めて作製されるため、サファイアやシリコンなどの単結晶基板、あるいはガラス基板と比べて表面粗さが大きく、そのままの状態ではシリコン基板と貼り合わせることが困難であり、貼り合わせ基板とすることができない場合があった。
【0011】
また、焼結体基板の原料粉体には、鉄、カルシウム等の金属が不純物として含まれる場合があった。これらの金属不純物、または、原料粉体としてアルミニウムを用いたり、焼結助剤としてアルミナ等を用いたりすることで焼結体基板中に含有し得るアルミニウムが、デバイス製造中に、基板の表面から拡散してプロセスラインを汚染する場合があった。
【0012】
以上のことから、本発明は、可視光に不透明で熱伝導性が良く、高周波領域での損失が小さく、反りが小さく、且つ安価となる、焼結体基板上に半導体デバイス層を形成するための単結晶半導体層を備えた、貼り合わせ基板の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、デバイス製造中にプロセスラインを汚染する基板中に含まれる金属および金属不純物の拡散を減少させ、シリコン基板との貼り合わせに好適な平滑な表面を有する貼り合わせ用焼結体基板を提供することを目的とする。さらに、本発明は、転写用基板として好適な、すなわち、半導体デバイス層の裏面側からSOI基板の絶縁体基板部分若しくは絶縁体基板部分およびシリコン層の一部をバックグラインド等によって除去することが容易となる、貼り合わせ基板および貼り合わせ用支持基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記現状を鑑み、本発明者らは、SOI基板の支持基板として焼結体基板を用いる場合に、焼結体基板の全ての表面にアモルファス膜を形成して表面の凹部を埋め、さらに、必要に応じてアモルファス膜の表面を研磨することによって、デバイス製造中にプロセスラインを汚染する基板中に含まれる金属および金属不純物の拡散を減少させ、シリコン基板との貼り合わせに適した表面粗さを有する貼り合わせ用支持基板が得られることを見出した。さらに、得られた貼り合わせ用支持基板に、単結晶半導体基板を貼り合わせることによって、反りが小さく、貼り合わせ界面のボイドを減少させた、貼り合わせ基板が得られることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の一つの形態によれば、焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、少なくとも1層のアモルファス膜を備える支持基板を得る工程と、前記アモルファス膜を介して前記支持基板と単結晶半導体基板を貼り合わせる工程とを少なくとも含み、前記単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ基板の製造方法を提供することができる。
また、本発明の他の形態によれば、焼結体基板と、前記焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層のアモルファス膜とを備えた貼り合わせ用支持基板であって、前記アモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ用支持基板を提供することができる。
さらに、本発明の他の形態によれば、焼結体基板と、前記焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層のアモルファス膜と、前記アモルファス膜の上に配置した単結晶半導体層とを備えた貼り合わせ基板であって、前記単結晶半導体層を配置する前記アモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ基板を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼結体基板の単結晶半導体基板と貼り合わせる面に少なくとも1層のアモルファス膜を形成することによって、支持基板に焼結体基板を用いた場合でも、表面の平滑性が良好となり、単結晶半導体基板との貼り合わせに好適な貼り合わせ用の支持基板が得られる。得られた貼り合わせ用支持基板は、基板の全ての面にアモルファス膜を備えているため、基板中に含まれる金属および金属不純物を基板の外に拡散させることが少なくまたはなく、デバイス製造中にプロセスラインを汚染する可能性が低い。また、貼り合わせ用支持基板に単結晶半導体基板を貼り合わせることによって、反りが小さく、貼り合わせ界面のボイドを減少させた、貼り合わせ基板が得られる。貼り合わせ基板は、焼結体基板の表面に形成されたアモルファス膜が薄いため、熱伝導性が良く、且つ高周波領域での損失が小さくなり、高周波デバイスなどの用途に好適となる。さらに、貼り合わせ基板および貼り合わせ用支持基板は、裏面照射型CMOSセンサや高周波半導体装置などの製造工程で使用される転写用基板として用いることが可能であり、反りが小さいため、転写用基板として用いた場合にバックグラインド等による転写用基板の除去が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る貼り合わせ基板の製造工程の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、一実施の形態によれば、支持基板上に膜を介して単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板の製造方法であって、焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、少なくとも1層のアモルファス膜を備える支持基板を得る工程と、アモルファス膜を介して支持基板と単結晶半導体基板を貼り合わせる工程とを少なくとも含み、単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ基板の製造方法である。
また、本発明の別の実施形態によれば、支持基板の表面にアモルファス膜を備えた貼り合わせ用支持基板に関する。すなわち、本発明の別の一態様は、焼結体基板と、焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層のアモルファス膜とを備えた貼り合わせ用支持基板であって、アモルファス膜の表面が、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満であり、表面粗さRmsが0.2nm以下である、貼り合わせ用支持基板である。
【0018】
単結晶半導体基板としては、好ましくは単結晶シリコン基板が挙げられる。
焼結体基板としては、好ましくは絶縁性の無機焼結体(セラミックス)の基板が挙げられる。焼結体は、無機物の粉体の集合体を、集合体を構成する無機物の融点よりも低い温度で加熱して固めたものである。例えば、平均粒径0.1〜50μmの原料粉体(例えば窒化珪素や窒化アルミニウム等)を、例えば金型成形、冷間静水圧成形、あるいはドクターブレード法等を用いてプレート形状に成形した後に、大気条件下または窒素雰囲気下で、例えば窒化珪素の場合は1400〜2000℃で加熱することで、焼結体基板を作製することができる。金型成形や冷間静水圧成形等の成形時に圧力を要する場合、その圧力は100MPa以上が好ましい。場合によって、焼結の促進および形状の安定化のために、アルミナ、マグネシア、イットリア等の焼結助剤を添加してもよい。焼結体基板の寸法については、特に限定されるものではないが、外径150〜300mm、厚さ500〜1000μmとすることが好ましい。焼結体基板は、可視光に対して不透明であるため、デバイスの製造プロセスにおいて、支持基板の存在確認やウェハの位置決めに使用する光センサで認識することができる。また、焼結体基板は、熱伝導性が良く、サファイアと比べてシリコンとの熱膨張率の差は小さいため、貼り合わせ基板とした際に反りが発生しにくく、反りが生じた場合でも反りが小さいので、大口径化しやすい。絶縁性の焼結体基板としては、窒化珪素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)またはサイアロン(SIALON、シリコン・アルミナ窒化物、Si6−xAl8−x(Xは0を超え、4以下の数である。)等が挙げられる。サイアロンは、窒化珪素(Si)にアルミナ(Al)を固溶させて作製する、Si系のエンジニアリング・セラミックスである。焼結体基板の材料は、デバイス製造プロセス中に使用される薬液への耐性が高く、また、コストが安いという点で、窒化珪素を主材としたものが最も好ましい。
【0019】
焼結体基板の熱伝導率は、例えばSiOの熱伝導率である1.5W/m・Kより高いことが望ましく、好ましくは5.0W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上、さらに好ましくは100W/m・K以上である。熱伝導率が5.0W/m・Kより低いと、放熱性が低く半導体デバイスに適さない場合がある。なお、熱伝導率は、例えばレーザーフラッシュ法、およびASTM5470に準拠した手法等により測定することができる。
【0020】
焼結体基板の体積抵抗率は、好ましくは1.0×10Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1010Ω・cm以上である。体積抵抗率が1.0×10Ω・cmより低いと、貼り合わせ基板とした後にデバイスとして用いた場合に、誘電特性による電力ロスを抑えることが困難となる。なお、体積抵抗率は、例えば4端針法および2端針法により測定することができる。
【0021】
焼結体基板の線膨張係数は、好ましくは5.0×10−6/℃以下、より好ましくは2.0×10−6〜4.0×10−6/℃である。線膨張係数が5.0×10−6/℃より大きいと、貼り合わせ基板とした際に200℃以上の熱がかかる場合、シリコンとの熱膨張係数の差が大きいため、貼り合わせ基板が反ったり破損したりすることがある。なお、線膨張係数は、例えば熱機械分析法等により測定することができる。
【0022】
焼結体基板は、例えば、原料の金属(例えば、珪素、アルミニウム等)または、アルミナ等の焼結助剤もしくはバインダー、または、鉄、カルシウム等の金属不純物を含んでいる。アルミニウムおよび、鉄、カルシウム等の金属不純物は、焼結体基板上に直接単結晶シリコン基板を貼り合わせた場合に、焼結体基板から単結晶シリコン層へ拡散する恐れがある。また、これらの金属および金属不純物は、貼り合わせ基板を作製する工程またはその後の半導体デバイスとしての製造工程における装置にも拡散して汚染する恐れがある。焼結体基板を半導体製造プロセスに用いるためには、基板の表面から金属および金属不純物を拡散させないまたは悪影響を及ぼさない程度となるようにすることが重要である。
焼結体基板表面の金属濃度は、一般的に、基板表面上の評価対象の成分を回収して、ICP−MS法(誘導結合プラズマ質量分析、Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry)を用いて評価する方法が用いられている。評価する金属成分の回収は、例えば、HF水溶液(50質量%)を用いて、溶液中に焼結体基板を浸す、または、例えばミスト法を用いて焼結体基板表面全体に一定量の溶液をかけることで、基板表面の金属成分をHF水溶液に溶解させて回収することができる。許容される金属濃度は,プロセスに依存するが、例えば、半導体デバイスを接合および転写するプロセスでは、5.0×1011atoms/cm未満が好ましく、1.0×1011atoms/cm未満がさらに好ましい。また、貼り合わせ基板とした後にデバイスを形成するプロセスでは、2.0×1010atoms/cm未満が好ましく、1.0×1010atoms/cm未満がさらに好ましい。窒化珪素焼結体基板の場合、使用する窒化珪素粉末種、バインダー種等に依存するが、主たる金属不純物はアルミニウム、鉄およびカルシウムであり、金属不純物の濃度は通常1.0×1013atoms/cm以上である。
【0023】
また、焼結体基板は、上述したように粉体を成形して焼結させたものであるので、基板表面に直径約0.01〜2.0μm、深さ約0.05〜1.0μmの凹部が多数存在し、サファイアやシリコンなどの単結晶基板、あるいはガラス基板と比べて表面粗さが大きい。なお、基板表面の凹部の直径および深さは、例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)、白色光顕微鏡(ZYGO)等によって評価することができる。
【0024】
これらのことから、焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、少なくとも1層のアモルファス膜を備える支持基板を得る。備える膜は、焼結体基板表面の凹部内を隙間なく凹部を埋めることができ、単結晶半導体基板との貼り合わせに好適な表面粗さが得られる点で、アモルファスとすることが望ましい。アモルファス膜は、一般的に半導体製造プロセスで用いられる種、例えば、SiO、Si、SiO(式中、xとyは、0<x<2.0、0<y<1.3を満たす数である。)、アモルファスシリコンおよびアモルファスポリシリコンから選ばれることが好ましい。特に、焼結体基板からの金属および金属不純物の拡散を生じさせにくく、膜自体の熱伝導率がより高い点から、Siを用いることが好ましい。アモルファス膜の形成手段は、特に限定されるものではなく、CVD(chemical vapor deposition)およびPVD(physical vapor deposition)等の蒸着によるものの他に、アモルファス膜を形成する金属を有する有機金属前駆体の溶液中に基板を浸漬させたり、スピンコーティング等によって、基板の全ての面または少なくとも単結晶半導体基板との貼り合わせる面に有機金属前駆体をコーティングした後に、加熱等により有機物を除去してアモルファス膜とする手法等が挙げられる。CVD法を用いる場合、例えば、大気圧下、800〜1000℃で、例えばSiClとNHの混合ガス(体積比で、SiCl:NH=1:0.1〜1:200)を用いることでSi膜を形成することが可能である。また、例えば、温度を600〜1000℃、雰囲気ガスをSiHとOの混合ガス(体積比で、SiH:O=1:0.1〜1:100)を用いることで、SiO膜を形成してもよいし、例えば、温度を500〜1000℃、雰囲気ガスをオルトケイ酸テトラエチル(Tetraethyl orthosilicate;TEOS、Si(OC)とNHとOの混合ガス(体積比で、1:0.1:0.5〜1:10:5)を用いることでSiO膜(0<x<2.0、0<y<1.3)を形成してもよい。所望の表面粗さを得るために、コーティング処理を施して、少なくとも1層のアモルファス膜を備える支持基板を得る工程の後に、少なくとも単結晶半導体基板と貼り合わせるアモルファス膜の表面にCMP(Chemical Mechanical Polishing)などによって研磨を施し、膜表面をより平滑なものとしてもよい。アモルファス膜は、焼結体基板の全ての面に備えられる。アモルファス膜は、焼結体基板の表面を平滑にするだけでなく、焼結体基板に含まれるAlや、金属不純物であるFe、Ca等が、半導体デバイス層または単結晶シリコン層へ拡散することを防止するのに有効である。このため、アモルファス膜を焼結体基板の全ての面に備えることで、単結晶半導体基板と貼り合わせる面だけでなく、側面および裏面側もコートされているので、貼り合わせ基板を作製する工程またはその後の半導体デバイスとしての製造工程における装置へのクロスコンタミネーションを防止することにも有効である。
【0025】
焼結体基板の表面に備えるアモルファス膜は、単層であっても2以上の多層であってもよいが、少なくとも1つの層を備える。アモルファス膜が2以上の多層からなる場合、各層の膜種は上述した材料から選択され、層ごとに膜の種類を変えてもよいが同じとしてもよく、上述の手法により作製することができる。また、各層の厚さは同じとしても異なるものとしてもよい。例えば、焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、SiO膜を備えた後に、さらに、SiO膜の上にコーティング処理を施して、Si膜を備えてもよい。このように、1層目と2層目のアモルファス膜の種類が異なることで、焼結体基板の表面がより緻密に覆われるため、基板中の金属成分の拡散をより妨げることが可能となる。
【0026】
焼結体基板の表面に備えるアモルファス膜は、例えば、以下の手法によって、膜種および膜厚を選択してもよい。
焼結体基板のアモルファス膜を備えた表面に対して垂直方向、つまりアモルファス膜の厚さ方向の熱伝導性は、総括伝熱係数U(W/m・K)を用いて表すことができる。総括伝熱係数Uは、数値が大きいほど熱伝導性が良好となる。例えば、M層からなるアモルファス膜を備えた支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数Uの逆数は、i番目(i=1,…,M)の層の厚さをLi(m)、i番目の層の熱伝導率をλi(W/m・K)とすると、
1/U=ΣLi/λi (i=1,…,M) (I)
と表すことができる。上記の式(I)において、熱伝導は評価する表面に直接伝熱対を接触させて評価しているため、一般的な式に含まれる支持基板自体のL/λ、基板周辺の熱伝達係数および汚れ係数については、アモルファス膜の厚さ方向の伝達係数よりも2桁ほど小さくなることから含めないものとした。総括伝熱係数Uの逆数は、アモルファス膜が厚くなるほど大きくなるので、アモルファス膜の厚さ方向の総括伝達係数の逆数を、例えば、アモルファス膜を備える前の焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%とするような、小さな変動とするためには、アモルファス膜をより薄くすることが望ましい。なお、アモルファス膜の熱伝導率は、例えば、指標とする基板(例えば単結晶SiやSiO等)に、焼結体基板上に形成した膜種および膜厚と同じアモルファス膜を同様に形成し、この指標基板を熱物性顕微鏡(例えば、ベテル社製 TM3)などで、アモルファス膜を備えた表面に対して垂直方向に測定することで評価することが可能である。また、アモルファス膜を備える前の焼結体基板の総括伝達係数は、例えばレーザーフラッシュ法、およびASTM5470に準拠した手法等により測定した熱伝導率と基板の厚みから算出することができる。
【0027】
上述したように、焼結体基板の表面には、粒界による穴などの凹部が多数存在する。このため、焼結体基板の表面を所望の表面粗さとするには、基板上にアモルファス膜をより厚く形成することが考えられる。しかしながら、形成する膜は、アモルファス構造であるため熱伝導率が低く、膜を厚くするに従って、アモルファス膜を含む基板全体の熱伝導率はより低くなる。例えば、単結晶半導体基板と貼り合わせた貼り合わせ基板を高周波デバイスに用いる場合、単結晶半導体基板と貼り合わせる前の支持基板の熱伝導率は、高周波デバイスに一般的に用いられているSOS基板よりも優れた放熱性を得る観点からすれば、SOS基板の支持基板であるサファイア(42W/m・K)よりも高いことが望ましい。
【0028】
本発明者らは、所望の特性となる支持基板を検討した結果、好ましくは、焼結体基板のアモルファス膜を備えた表面に対して垂直方向、つまりアモルファス膜の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数(1/総括伝熱係数)を、アモルファス膜を備える前の焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%とするように、アモルファス膜の種類と厚さを選択することによって、放熱性と表面平滑性を兼ね備えた、アモルファス膜を備えた焼結体基板を得ることが可能であることを見出した。この場合、アモルファス膜の厚さは、好ましくは、0.1μmを超えて10μm未満、より好ましくは0.1μmを超えて1.0μm以下である。アモルファス膜が2以上の多層からなる場合、焼結体基板上に形成された全ての膜層の厚さの合計が、0.1μmを超えて10μm未満となることが好ましい。0.1μm未満では、焼結体基板表面の凹部の穴埋めが不十分となり、基板中の金属および金属不純物が基板の外へ拡散する場合がある。10μmを超えると、放熱性が悪くなるだけでなく、膜にクラックが入りやすくなり、基板表面に露出部分が発生して、基板中の金属および金属不純物の、基板外への拡散が生じる場合がある。特に、アモルファス膜がSiである場合、膜厚さは0.1μmを超えて1μm以下であることが好ましい。アモルファス膜の厚さは、膜形成の際に上記の好ましい範囲となるように予め設計してもよいが、膜形成後に研磨やエッチング等によって上記の好ましい範囲となるように調整してもよい。なお、アモルファス膜の厚さは、例えば、指標とする基板(例えば単結晶SiやSiO等)に、焼結体基板上に形成した膜種および膜厚と同じアモルファス膜を同様の条件で形成し、光干渉法等による膜厚測定計を用いて測定することが可能である。また、アモルファス膜の表面をCMP等によって研磨を行う場合は、焼結体基板上に形成した膜と同じ膜種および膜厚のアモルファス膜を同様の条件で形成した指標基板(例えば単結晶SiやSiO等)を用いて、指標基板上のアモルファス膜を一定の研磨条件で研磨し、研磨の前後で光干渉法等による膜厚測定計を用いて測定することで、研磨レートを算出することが可能であり、これにより、研磨時間を制御することで膜厚を設定し得る。
本発明によれば、例えば、窒化珪素焼結体(熱伝導率 100W/m・K)の表面に、厚さ0.1μmを超えて10μm未満のSiのアモルファス膜を備えた場合、窒化珪素焼結体基板上のSi膜の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数(1/総括伝熱係数)がSi膜を備える前の窒化珪素焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の逆数の50〜98%に抑えられ、サファイア基板よりも高い熱伝導性を得ることが可能となる。
【0029】
少なくとも単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面は、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満である。金属濃度が5.0×1011atoms/cmより高いと、半導体製造プロセスにおいて、基板表面から拡散したこれらの金属成分が、貼り合わせ基板とした後に単結晶シリコン層を汚染したり、貼り合わせ基板を作製する工程またはその後の半導体デバイスとしての製造工程における装置を汚染したりする恐れがある。このため、ICP−MS法において、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm未満となる支持基板を選択する工程をさらに含んでいてもよい。金属濃度が5.0×1011atoms/cmより高い場合には、再度、焼結体基板の全ての面にコーティング処理を施して、さらにアモルファス膜を備えてもよい。つまり、単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面をICP−MS法を用いて評価した後に、Al、Fe、Caの各濃度が5.0×1011atoms/cm以上であった場合に、既に少なくとも1層のアモルファス膜を備えた支持基板の表面に対して、さらにコーティング処理を施して、少なくとも2層のアモルファス膜を備える支持基板を得てもよい。この場合も、全てのアモルファス膜厚の合計が、0.1μmを超えて10μm未満であることが好ましい。なお、アモルファス膜の表面の金属濃度は、アモルファス膜を備える前の焼結体基板の表面の金属濃度を評価する手法と同様にして評価することができる。
【0030】
また、少なくとも単結晶半導体基板と貼り合わせる支持基板上のアモルファス膜の表面粗さRmsは、0.2nm以下であることが好ましい。表面粗さRmsを0.2nm以下とすることにより、所望の表面平滑性が得られ、単結晶半導体基板と貼り合わせる際に貼り合わせ界面においてボイド欠陥等の要因となる空隙を生じにくくすることができる。なお、表面粗さRmsは、例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)、白色光顕微鏡(ZYGO)等で測定することができる。
【0031】
上記の手法によって、焼結体基板と焼結体基板の全ての面に備えられた少なくとも1層のアモルファス膜とを備えた支持基板が得られる。得られた支持基板は、貼り合わせ用支持基板として用いることができる他に、裏面照射型CMOSセンサや高周波半導体装置等の作製時に用いられる転写用基板としても用いることができる。また、貼り合わせ用支持基板および転写用基板として用いる場合、上記の手法により得られたアモルファス膜を備えた焼結体基板の単結晶半導体基板を備える面とは反対側の面に、半導体基板または別の絶縁体基板を貼り合わせたものを用いてもよい。
【0032】
次に、アモルファス膜を介して支持基板と単結晶半導体基板を貼り合わせる。貼り合わせにより単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板を得る手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、貼り合わせ面側から内部に水素イオンを注入した単結晶半導体基板の表面と、支持基板上のアモルファス膜の表面を貼り合わせて貼り合わせ基板を得る工程と、前記貼り合わせ基板に、好ましくは150℃以上、より好ましくは250〜500℃で熱処理を施して、イオン注入層に沿って熱剥離させ、アモルファス膜を介して支持基板上に単結晶半導体層を転写し、アモルファス膜の上に単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板を得る工程を少なくとも含む、SmartCut法を利用する方法が挙げられる。また、支持基板上のアモルファス膜の表面と、貼り合わせようとする表面から水素イオンを注入した単結晶半導体基板の表面との少なくとも一方または両方に、プラズマ処理等により表面活性化処理を施す工程と、少なくとも一方または両方に表面活性化処理を施した、支持基板上のアモルファス膜の表面と単結晶半導体基板の表面とを貼り合わせて貼り合わせ基板を得る工程と、低温(例えば、100〜350℃)で熱処理を施して貼り合わせ界面の接合強度を高めて接合体を得る工程と、加熱や冷却しない常温条件下で前記接合体のイオン注入層に楔などにより機械的衝撃を与えてイオン注入層に沿って剥離させ、アモルファス膜を介して支持基板上に単結晶半導体層を転写し、アモルファス膜の上に単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板を得る工程を少なくとも含む、SiGen法を利用する方法等が挙げられる。上述したSmartCut法とSiGen法のいずれか一方の工程を、他方の工程と組み合わせるまたは置換する等の修正を加えた方法を用いてもよい。貼り合わせの際に、プラズマ処理等の表面活性化処理の代わりに接着剤を用いて、単結晶半導体基板の表面と、支持基板上のアモルファス膜の表面とを貼り合わせてもよい。また、貼り合わせ基板は、単結晶半導体基板をそのまま使用してもよいし、薄化してもよい。貼り合わせ基板を薄化する手法は、上記の手法の他に、研磨やエッチング等によって、所望の厚みの単結晶半導体層としてもよい。
【0033】
図1に、本発明の貼り合わせ基板の製造方法の実施態様の一例を示す。図1(a)に示すように、焼結体基板1の全ての面にアモルファス膜2を形成し、アモルファス膜2を備えた貼り合わせ用支持基板3を得る。一方、単結晶半導体基板4は、図(b)に示すように、貼り合わせ用支持基板3と貼り合わせる面側からイオン注入6を行い、単結晶半導体基板4内にイオン注入層5を形成する。単結晶半導体基板と貼り合わせる貼り合わせ用支持基板3のアモルファス膜の表面と、単結晶半導体基板4のイオン注入した面とに、図1(c)と図1(d)に示すように、プラズマ処理7を行い、表面を活性化する。表面活性化した貼り合わせ用支持基板3のアモルファス膜の表面と単結晶半導体基板4の表面を、図1(e)に示すように、貼り合わせて接合体8を得る。接合体8のイオン注入層5に楔を用いて機械的衝撃を与え、図1(f)に示すように、イオン注入層5に沿って単結晶半導体基板の一部4bを剥離させて、アモルファス膜2を介して焼結体基板1上に単結晶半導体層4aを転写し、単結晶半導体層4aを備えた貼り合わせ基板9を得る。このようにして、焼結体基板と、焼結体基板の全ての面に備えた少なくとも1層のアモルファス膜と、アモルファス膜の上に配置した単結晶半導体層とを備えた貼り合わせ基板を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示する目的であって、本発明を限定するものではない。
<実施例1>
焼結体基板として、外径200mm、厚さ725μmの窒化珪素(Si)焼結体基板を用いた。用いた焼結体基板の体積抵抗率は、2端針法で測定したところ、1.0×1014Ω・cmであった。熱伝導率は、25℃、大気圧下で、レーザーフラッシュ法を用いて測定したところ、100W/m・Kであった。焼結体基板表面の金属濃度は、焼結体基板に50質量%のHF水溶液のミストを基板表面に噴霧し、表面のHF水溶液を回収後、ICP−MS分析装置3300DV(Perkin Elmer社製)で測定したところ、Al、FeおよびCaの金属種が、1.0×1013atoms/cm以上の濃度を呈しており、Al、FeおよびCaの濃度はそれぞれ、5.0×1013、2.0×1014、3.0×1014atoms/cmであった。また、用いた焼結体基板の総括伝熱係数は、式(I)に熱伝導率の測定結果および厚みを導入して算出したところ、1.38×10・K/Wであった。
【0035】
次に、CVD法を用いて、大気圧下、800℃、SiClとNHの混合ガス雰囲気中(体積比で、SiCl:NH=1:20)で、焼結体基板の全ての面、つまり、単結晶半導体基板と貼り合わせる面、その裏面、および側面にSi膜を形成した。Si膜を形成した表面に、研磨機を用いてCMPを行い、Si膜の厚さを0.3μmとした。Si膜の厚さは、モニターとしてSiウェハを用い、焼結体基板上にSi膜を成膜する際に同時に成膜し、このSiウェハ上のアモルファス膜の厚さを干渉式膜厚測定器(ナノメトリクス社製、ナノスペック 6100−KR)を用いて測定した。
このようにして得られた貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面粗さRmsは、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、型番:NanoScope V/Dimension Icon)で測定したところ、0.18nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面の金属濃度は、貼り合わせ用支持基板に50質量%のHF水溶液のミストを基板表面に噴霧し、表面のHF水溶液を回収後、ICP−MS分析装置3300DV(Perkin Elmer社製)で測定したところ、Al、Fe、Caの濃度はそれぞれ、1.0×1010、2.0×1011、1.0×1010atoms/cmであった。いずれの金属濃度も5.0×1011atoms/cm未満であることから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。
Si膜の熱伝導率は、モニターとしてSiウェハを用い、焼結体基板上にSi膜を成膜する際に同時に成膜し、このSiウェハを熱物性顕微鏡(ベテル社製 TM3)で測定したところ、4.0W/m・Kであった。焼結体基板のSi膜を形成した表面に対して垂直方向、つまり、Si膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、Si膜の熱伝導率4.0W/m・Kおよび膜の厚さ0.3μmから算出したところ、1.37×10・K/Wとなった。このことから、貼り合わせ用支持基板のSi膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、Si膜を形成する前の焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の99.0%となった。
【0036】
単結晶半導体基板には、焼結体基板と同サイズの単結晶シリコン基板を用いた。単結晶シリコン基板の表面から、Hイオンをドーズ量7.0×1016 atom/cm、加速電圧70keVの条件でイオン注入した。単結晶シリコン基板と貼り合わせる貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面と、単結晶シリコン基板のイオン注入した面との両方に、プラズマによる表面活性化処理を行った。表面活性化処理した貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面と単結晶シリコン基板の表面とを貼り合わせた。貼り合わせた基板を、10時間、300℃で熱処理して接合体を得た。その後、接合体のイオン注入層に、ブレードを用いて機械的衝撃を与え、接合体の単結晶シリコン基板側をイオン注入層に沿って剥離し、貼り合わせ用支持基板上のSi膜の上に単結晶シリコン層を備えた貼り合わせ基板を得た。得られた貼り合わせ基板の単結晶シリコン層の厚さは、0.4μmであった。
【0037】
表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層の表面を超音波顕微鏡(日立建機ファインテック社製、Fine SAT FS2002)で観察したところ、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率を、ASTM5470に準拠し、Anatech社製TIM Tester(Model 1400)を用いて評価した。具体的には、貼り合わせ基板の単結晶シリコン層側の表面に熱電対を付した加熱プレートを接触させ80℃とし、貼り合わせ用支持基板側の表面の温度を測定することによって、貼り合わせ基板の厚さ方向の熱伝導率を算出した。結果、貼り合わせ基板の熱伝導率は、48.1W/m・Kであった。
【0038】
<実施例2>
Si膜の厚さを3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面粗さRmsは、0.13nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、本手法の検出下限である3.0×10atoms/cm以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSi膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.14×10・K/Wであり、Si膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の82.6%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、39.8W/m・Kであった。
【0039】
<実施例3>
焼結体基板として、体積抵抗率1.0×1014Ω・cm、熱伝導率50W/m・Kの外径200mm、厚さ725μmの窒化珪素(Si)焼結体基板を用いた以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。なお、窒化珪素焼結体基板の体積抵抗率、熱伝導率および金属濃度は、実施例1と同じ方法で測定した。用いた焼結体基板表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、5.0×1014、3.0×1012、1.0×1013atoms/cmであった。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面粗さRmsは、0.15nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、2.0×1011、1.0×1010、3.0×10atoms/cm以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSi膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、0.69×10・K/Wであり、Si膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の99.5%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、20.0W/m・Kであった。
【0040】
<実施例4>
CVD法を用いて、大気圧下、600℃、SiHとOの混合ガス雰囲気中(体積比で、SiH:O=1:3)で、焼結体基板の全ての面、つまり、単結晶半導体基板と貼り合わせる面、その裏面、および側面にSiO膜を形成し、研磨機を用いてCMPを行い、SiO膜の厚さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られたSiO膜を形成した貼り合わせ用支持基板の表面粗さRmsは、0.15nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、1.0×1011、3.0×1011、6.0×1010atoms/cmであったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSiO膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.34×10・K/Wであり、SiO膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の97.3%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSiO膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、32.5W/m・Kであった。
【0041】
<実施例5>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSiO膜を実施例4と同様の手法を用いて3μm形成し、さらに、SiO膜上にSi膜を0.5μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si膜の厚さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面粗さRmsは、0.14nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、本手法の検出下限である3.0×10atoms/cm以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSiO膜およびSi膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、0.88×10・K/Wであり、SiO膜およびSi膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の63.8%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSiO膜およびSi膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、33.6W/m・Kであった。
【0042】
<比較例1>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSi膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si膜の厚さを0.10μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られたSi膜を形成した貼り合わせ用支持基板の表面粗さRmsは、1.20nmであり、表面には凹部の欠陥部分(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.0×1013、2.0×1014、2.0×1014atoms/cmであった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.37×10・K/Wであり、Si膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の99.3%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSi膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、51.3W/m・Kであった。
【0043】
<比較例2>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSiO膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、SiO膜の厚さを0.1μmとした以外は、実施例4と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO膜の表面粗さRmsは、1.10nmであり、表面には凹部の欠陥(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.2×1013、2.1×1014、2.6×1014atoms/cmであった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.35×10・K/Wであり、SiO膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の97.8%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSiO膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、50.5W/m・Kであった。
【0044】
<比較例3>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSi膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si膜の厚さを0.10μmとした以外は、実施例3と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面粗さRmsは、1.20nmであり、表面には凹部の欠陥部分(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.0×1014、3.0×1012、7.5×1012atoms/cmであった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.37×10・K/Wであり、Si膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の逆数の99.7%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSi膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、28.1W/m・Kであった。
【0045】
【表1】
【0046】
本実施例では、単結晶シリコン層を備えた貼り合わせ基板で例示したが、単結晶シリコン基板にデバイス層を形成した基板との貼り合わせに応用したり、転写用基板として適用したりすることができる。本発明の貼り合わせ用支持基板を、デバイス層を形成したウェハとの接合に用いる場合、単結晶半導体基板と直接接合しても接着剤によって接合してもよい。接着剤を介して接合する場合、貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面はピット等の欠陥が少ないので、接着層の厚さを薄くでき、放熱性を高めることが可能である。また、本実施例では、窒化珪素焼結体基板を用いて例示したが、他の窒化アルミニウムやサイアロンなど、熱膨張係数がシリコンと近い基板についても適用することが可能である。支持基板の熱膨張係数を5×10−6/℃以下とすることで、単結晶半導体基板と直接接合する場合や接着剤によって接合する場合でも、貼り合わせた後の基板の反りを小さくすることができ、貼り合わせ基板の大口径化やデバイスウェハ接合後のバックグラインド加工も容易にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1: 焼結体基板
2: アモルファス膜
3: 貼り合わせ用支持基板
4: 単結晶半導体基板
4a: 単結晶半導体層
4b: 剥離した単結晶半導体基板
5: イオン注入層
6: イオン注入
7: プラズマ処理
8: 接合体
9: 単結晶半導体層を備えた貼り合わせ基板
図1