【実施例】
【0034】
以下に本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示する目的であって、本発明を限定するものではない。
<実施例1>
焼結体基板として、外径200mm、厚さ725μmの窒化珪素(Si
3N
4)焼結体基板を用いた。用いた焼結体基板の体積抵抗率は、2端針法で測定したところ、1.0×10
14Ω・cmであった。熱伝導率は、25℃、大気圧下で、レーザーフラッシュ法を用いて測定したところ、100W/m・Kであった。焼結体基板表面の金属濃度は、焼結体基板に50質量%のHF水溶液のミストを基板表面に噴霧し、表面のHF水溶液を回収後、ICP−MS分析装置3300DV(Perkin Elmer社製)で測定したところ、Al、FeおよびCaの金属種が、1.0×10
13atoms/cm
2以上の濃度を呈しており、Al、FeおよびCaの濃度はそれぞれ、5.0×10
13、2.0×10
14、3.0×10
14atoms/cm
2であった。また、用いた焼結体基板の総括伝熱係数は、式(I)に熱伝導率の測定結果および厚みを導入して算出したところ、1.38×10
5m
2・K/Wであった。
【0035】
次に、CVD法を用いて、大気圧下、800℃、SiCl
2H
2とNH
3の混合ガス雰囲気中(体積比で、SiCl
2H
2:NH
3=1:20)で、焼結体基板の全ての面、つまり、単結晶半導体基板と貼り合わせる面、その裏面、および側面にSi
3N
4膜を形成した。Si
3N
4膜を形成した表面に、研磨機を用いてCMPを行い、Si
3N
4膜の厚さを0.3μmとした。Si
3N
4膜の厚さは、モニターとしてSiウェハを用い、焼結体基板上にSi
3N
4膜を成膜する際に同時に成膜し、このSiウェハ上のアモルファス膜の厚さを干渉式膜厚測定器(ナノメトリクス社製、ナノスペック 6100−KR)を用いて測定した。
このようにして得られた貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面粗さRmsは、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、型番:NanoScope V/Dimension Icon)で測定したところ、0.18nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面の金属濃度は、貼り合わせ用支持基板に50質量%のHF水溶液のミストを基板表面に噴霧し、表面のHF水溶液を回収後、ICP−MS分析装置3300DV(Perkin Elmer社製)で測定したところ、Al、Fe、Caの濃度はそれぞれ、1.0×10
10、2.0×10
11、1.0×10
10atoms/cm
2であった。いずれの金属濃度も5.0×10
11atoms/cm
2未満であることから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。
Si
3N
4膜の熱伝導率は、モニターとしてSiウェハを用い、焼結体基板上にSi
3N
4膜を成膜する際に同時に成膜し、このSiウェハを熱物性顕微鏡(ベテル社製 TM3)で測定したところ、4.0W/m・Kであった。焼結体基板のSi
3N
4膜を形成した表面に対して垂直方向、つまり、Si
3N
4膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、Si
3N
4膜の熱伝導率4.0W/m・Kおよび膜の厚さ0.3μmから算出したところ、1.37×10
5m
2・K/Wとなった。このことから、貼り合わせ用支持基板のSi
3N
4膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、Si
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の厚さ方向の総括伝熱係数の99.0%となった。
【0036】
単結晶半導体基板には、焼結体基板と同サイズの単結晶シリコン基板を用いた。単結晶シリコン基板の表面から、H
+イオンをドーズ量7.0×10
16 atom/cm
2、加速電圧70keVの条件でイオン注入した。単結晶シリコン基板と貼り合わせる貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面と、単結晶シリコン基板のイオン注入した面との両方に、プラズマによる表面活性化処理を行った。表面活性化処理した貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面と単結晶シリコン基板の表面とを貼り合わせた。貼り合わせた基板を、10時間、300℃で熱処理して接合体を得た。その後、接合体のイオン注入層に、ブレードを用いて機械的衝撃を与え、接合体の単結晶シリコン基板側をイオン注入層に沿って剥離し、貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の上に単結晶シリコン層を備えた貼り合わせ基板を得た。得られた貼り合わせ基板の単結晶シリコン層の厚さは、0.4μmであった。
【0037】
表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層の表面を超音波顕微鏡(日立建機ファインテック社製、Fine SAT FS2002)で観察したところ、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi
3N
4膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率を、ASTM5470に準拠し、Anatech社製TIM Tester(Model 1400)を用いて評価した。具体的には、貼り合わせ基板の単結晶シリコン層側の表面に熱電対を付した加熱プレートを接触させ80℃とし、貼り合わせ用支持基板側の表面の温度を測定することによって、貼り合わせ基板の厚さ方向の熱伝導率を算出した。結果、貼り合わせ基板の熱伝導率は、48.1W/m・Kであった。
【0038】
<実施例2>
Si
3N
4膜の厚さを3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面粗さRmsは、0.13nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、本手法の検出下限である3.0×10
9atoms/cm
2以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSi
3N
4膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.14×10
5m
2・K/Wであり、Si
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の82.6%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi
3N
4膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、39.8W/m・Kであった。
【0039】
<実施例3>
焼結体基板として、体積抵抗率1.0×10
14Ω・cm、熱伝導率50W/m・Kの外径200mm、厚さ725μmの窒化珪素(Si
3N
4)焼結体基板を用いた以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。なお、窒化珪素焼結体基板の体積抵抗率、熱伝導率および金属濃度は、実施例1と同じ方法で測定した。用いた焼結体基板表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、5.0×10
14、3.0×10
12、1.0×10
13atoms/cm
2であった。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面粗さRmsは、0.15nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、2.0×10
11、1.0×10
10、3.0×10
9atoms/cm
2以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSi
3N
4膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、0.69×10
5m
2・K/Wであり、Si
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の99.5%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSi
3N
4膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、20.0W/m・Kであった。
【0040】
<実施例4>
CVD法を用いて、大気圧下、600℃、SiH
4とO
2の混合ガス雰囲気中(体積比で、SiH
4:O
2=1:3)で、焼結体基板の全ての面、つまり、単結晶半導体基板と貼り合わせる面、その裏面、および側面にSiO
2膜を形成し、研磨機を用いてCMPを行い、SiO
2膜の厚さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られたSiO
2膜を形成した貼り合わせ用支持基板の表面粗さRmsは、0.15nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO
2膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、1.0×10
11、3.0×10
11、6.0×10
10atoms/cm
2であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSiO
2膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.34×10
5m
2・K/Wであり、SiO
2膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の97.3%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSiO
2膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、32.5W/m・Kであった。
【0041】
<実施例5>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSiO
2膜を実施例4と同様の手法を用いて3μm形成し、さらに、SiO
2膜上にSi
3N
4膜を0.5μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si
3N
4膜の厚さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面粗さRmsは、0.14nmであり、また、表面状態は、凹部の穴埋めが不十分である欠陥部分(ピットなど)は見られず、平滑であった。貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、本手法の検出下限である3.0×10
9atoms/cm
2以下であったことから、半導体製造プロセスにおいて好適な基板を作製することができた。貼り合わせ用支持基板のSiO
2膜およびSi
3N
4膜の厚さ方向の総括伝熱係数は、0.88×10
5m
2・K/Wであり、SiO
2膜およびSi
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の63.8%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドは見られず、焼結体基板の表面の凹部がSiO
2膜およびSi
3N
4膜によって埋められ、貼り合わせ界面に空隙が生じていないことが確認できた。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、33.6W/m・Kであった。
【0042】
<比較例1>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSi
3N
4膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si
3N
4膜の厚さを0.10μmとした以外は、実施例1と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られたSi
3N
4膜を形成した貼り合わせ用支持基板の表面粗さRmsは、1.20nmであり、表面には凹部の欠陥部分(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.0×10
13、2.0×10
14、2.0×10
14atoms/cm
2であった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.37×10
5m
2・K/Wであり、Si
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の99.3%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSi
3N
4膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、51.3W/m・Kであった。
【0043】
<比較例2>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSiO
2膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、SiO
2膜の厚さを0.1μmとした以外は、実施例4と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO
2膜の表面粗さRmsは、1.10nmであり、表面には凹部の欠陥(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSiO
2膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.2×10
13、2.1×10
14、2.6×10
14atoms/cm
2であった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.35×10
5m
2・K/Wであり、SiO
2膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の97.8%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSiO
2膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、50.5W/m・Kであった。
【0044】
<比較例3>
CVD法を用いて焼結体基板の全ての面にSi
3N
4膜を0.15μm形成し、研磨機を用いてCMPを行い、Si
3N
4膜の厚さを0.10μmとした以外は、実施例3と同様にして貼り合わせ用支持基板および貼り合わせ基板を作製し、評価した。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面粗さRmsは、1.20nmであり、表面には凹部の欠陥部分(ピットなど)が多数観察された。得られた貼り合わせ用支持基板上のSi
3N
4膜の表面のAl、Fe、Caの濃度はそれぞれ、4.0×10
14、3.0×10
12、7.5×10
12atoms/cm
2であった。貼り合わせ用支持基板の厚さ方向の総括伝熱係数は、1.37×10
5m
2・K/Wであり、Si
3N
4膜を形成する前の焼結体基板の総括伝熱係数の逆数の99.7%となった。表1に貼り合わせ基板の評価結果を示す。貼り合わせ基板の単結晶シリコン層には、ボイドが多数みられ、焼結体基板の表面の凹部がSi
3N
4膜によって十分に埋められておらず、単結晶シリコン層との間に空隙が生じていることを確認した。また、貼り合わせ基板の熱伝導率は、28.1W/m・Kであった。
【0045】
【表1】
【0046】
本実施例では、単結晶シリコン層を備えた貼り合わせ基板で例示したが、単結晶シリコン基板にデバイス層を形成した基板との貼り合わせに応用したり、転写用基板として適用したりすることができる。本発明の貼り合わせ用支持基板を、デバイス層を形成したウェハとの接合に用いる場合、単結晶半導体基板と直接接合しても接着剤によって接合してもよい。接着剤を介して接合する場合、貼り合わせ用支持基板上のアモルファス膜の表面はピット等の欠陥が少ないので、接着層の厚さを薄くでき、放熱性を高めることが可能である。また、本実施例では、窒化珪素焼結体基板を用いて例示したが、他の窒化アルミニウムやサイアロンなど、熱膨張係数がシリコンと近い基板についても適用することが可能である。支持基板の熱膨張係数を5×10
−6/℃以下とすることで、単結晶半導体基板と直接接合する場合や接着剤によって接合する場合でも、貼り合わせた後の基板の反りを小さくすることができ、貼り合わせ基板の大口径化やデバイスウェハ接合後のバックグラインド加工も容易にすることができる。