特許第6208655号(P6208655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208655エポキシドを重合するためおよびエポキシドと二酸化炭素を共重合するための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208655
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】エポキシドを重合するためおよびエポキシドと二酸化炭素を共重合するための触媒
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/12 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   C08G65/12
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-503112(P2014-503112)
(86)(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公表番号】特表2014-511919(P2014-511919A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012056077
(87)【国際公開番号】WO2012136658
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年4月2日
(31)【優先権主張番号】102011006730.2
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ラルス・ツァンダー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーネ・クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クライン
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト・ペツォルト
(72)【発明者】
【氏名】マリオン・マルクヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】ウド・クラグル
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/002951(WO,A1)
【文献】 特開2005−240002(JP,A)
【文献】 特開2003−165836(JP,A)
【文献】 特開2004−160446(JP,A)
【文献】 特表2010−516796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の複金属シアン化物化合物、
b)エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、モノグリム、ジグリム、1,4−ジオキサン、フラン、およびこれら化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機錯化剤、および
c)少なくとも1種の20個の炭素原子を有する第一級アルコール
を混合することによって得られる、エポキシドの重合を触媒するための触媒。
【請求項2】
複金属シアン化物化合物が、一般式(1a):
【化1】
[式中、MはZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、
Xはアニオンであり、
d’およびg’は、正の整数であって、塩Md’g’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の塩と、一般式(1b):
【化2】
[式中、Mはアルカリ金属イオンであり、
はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、
h’、e’およびf’は、正の整数であって、錯体Mh’[M(CN)e’]f’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の錯体とを混合することによって得られる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
触媒が、一般式(2):
【化3】
[式中、MはZn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり、
はCo、Fe、Cr、Mn、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり、
はZn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり、
Xはアニオンであり、
Lは有機錯化剤であり、
Aは6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールであり、
d、e、fおよびgは、正の整数であって、錯体M[M(CN)]・xM(X)が電気的中性となるような値をとり、
0.1≦x≦5、0.1≦y≦1、0.1≦z≦1および0.01≦a≦5である]
で示される、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
有機錯化剤および第一級アルコールの総重量割合が、触媒の総重量に基づいて15〜50重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の少なくとも1種の触媒の存在下で少なくとも1種のエポキシドを重合する、エポキシドの重合方法。
【請求項6】
少なくとも1種の溶媒の存在下で実施する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のエポキシドおよび二酸化炭素の共重合方法として実施する、請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のエポキシドを重合するための、請求項1〜のいずれかに記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリマーの製造方法において使用される触媒の分野の発明である。本発明は特に、複金属シアン化物化合物に基づく触媒に関し、このタイプの新規な触媒を提案する。
【背景技術】
【0002】
複金属シアン化物錯体化合物(DMC錯体化合物)は、例えばエポキシドを重合するための触媒として基本的に知られている。このタイプの触媒を用いると、例えば、特に狭い分子量分布、高い平均分子量および極めて少ないポリマー鎖末端二重結合数を特徴とするポリエーテルを製造することができる。或いは、DMC触媒は、別のポリマー、例えばポリエステルを製造するために使用することもできる。
【0003】
エポキシドおよび二酸化炭素を、フォーム、接着剤、複合材料、繊維および繊維成分、フィルム、膜または膜成分および樹脂のための出発化合物として使用されるコポリマーに触媒転化する方法への関心が高まりつつある。このタイプの方法は、例えば、DE 197 37 547 A1に記載されている。同文献では触媒系として、少なくとも2種のジカルボン酸および無機亜鉛化合物の混合物が使用されている。
【0004】
WO 2004/087788 A1は、DMC触媒および立体障害連鎖移動剤の存在下で開始剤とアルキレンオキシドとを反応させる工程を含む、ポリオールの製造方法であって、成長するポリオールポリマーを連鎖移動剤がプロトン化できる方法を記載している。
【0005】
US 5,026,676は、非プロトン性溶媒中で酸化亜鉛とグルタル酸またはアジピン酸とを反応させることによって製造される、二酸化炭素とエポキシドを共重合するためのカルボン酸亜鉛触媒を記載している。
【0006】
EP 0 222 453 A2は、エポキシ化合物と二酸化炭素との反応を含み、複金属シアン化物錯体の存在下で実施される、ポリカーボネートの製造方法を記載している。複金属シアン化物錯体は、可能な配位子として、アルコール、エステル、アルデヒド、ケトン、エーテル、アミド、ニトリル、スルフィドまたはそれらの混合物を有する。更に、複金属シアン化物錯体の一般式は、炭化水素を含む。
【0007】
EP 0 700 949 A2は、DMC錯体、有機錯化剤、および触媒の量に基づいて5〜80重量%の、約500超の数平均分子量を有するポリエーテルを含んでなる、複金属シアン化物触媒(DMC触媒)を提供している。
【0008】
CN 1459332 Aは、複金属シアン化物錯体に加えて、可溶性金属塩、有機錯化剤、オルガノポリシロキサン、および場合によりポリエーテルポリオールを含んでなる、DMC触媒を記載している。
【0009】
エポキシドの重合を効率的に触媒し、従ってエポキシ系ポリマーの経済的な製造方法を可能にする触媒に対する継続した要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 197 37 547 A1
【特許文献2】WO 2004/087788 A1
【特許文献3】US 5,026,676
【特許文献4】EP 0 222 453 A2
【特許文献5】EP 0 700 949 A2
【特許文献6】CN 1459332 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、エポキシドおよび場合により他のモノマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーの製造における高いターンオーバー頻度(TOF)および/またはターンオーバー数(TON)を伴った効率的な反応制御を可能にする触媒系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、特別に構成された触媒によって本発明に従って達成される。従って、本発明は、
a)少なくとも1種の複金属シアン化物化合物、
b)少なくとも1種の有機錯化剤、および
c)少なくとも1種の6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコール
を混合することによって得られる、エポキシドの重合を触媒するための触媒を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
有機錯化剤と、6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールとは、別個の化合物である。従って、有機錯化剤は、好ましくは6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールではない。
【0014】
本発明における意味では、用語「エポキシドの重合」は、エポキシドの単独重合および共重合(例えば、様々なエポキシドの相互の共重合、および1種以上のエポキシドと二酸化炭素との共重合)の両方を包含する。本発明の触媒は、エポキシドの重合において優れた触媒活性を示すので、対応するホモポリマーおよび/またはコポリマー、例えば、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリ(エーテル)ポリカーボネートを効率的かつ経済的に製造する方法が可能になる。
【0015】
「エポキシド」とは、少なくとも1つのエポキシ基を有する有機化合物であると理解される。本発明における意味での、即ち本発明の触媒を用いた反応のためのエポキシドは、例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロドリン、1,2−ブチレンオキシド、1,2−ペンチレンオキシド、イソペンチレンオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド、1,2−へプチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、トリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、シクロオクタンエポキシド、シクロドデカンエポキシド、(+)−シス−リモネンオキシド、(+)−シス,トランス−リモネンオキシドおよび(−)−シス,トランス−リモネンオキシドであり、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクタンエポキシド、シクロドデカンエポキシド、(+)−シス−リモネンオキシド、(+)−シス,トランス−リモネンオキシドおよび(−)−シス,トランス−リモネンオキシドが特に好ましい。とりわけ、単純にプロピレンオキシドとも一般に称されている1,2−プロピレンオキシドが好ましい。
【0016】
本発明において用語「混合」は、例えば、同義語として配位化合物と称されることもある錯化合物を形成することによって、供給原料が互いに化学反応できるかまたは互いに物理的相互作用を及ぼせるように、供給原料を接触させることを包含する。
【0017】
複金属シアン化物化合物とは、シアン化物イオンおよび特定数の2種の異なった金属イオンを有する無機化合物であると理解される。これらの金属イオンは、金属自体またはその酸化数が異なり得る。これは、2種の異なった金属の両方のイオンが存在するか、またはそれらが1種の同じ金属のイオンであるが異なった酸化状態で存在することを意味する。
【0018】
複金属シアン化物化合物は、好ましくは、一般式(1a):
【化1】
[式中、MはZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、
Xはアニオンであり、
d’およびg’は、正の整数であって、塩Md’g’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の塩と、一般式(1b):
【化2】
[式中、Mはアルカリ金属イオンであり、
はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、
h’、e’およびf’は、正の整数であって、錯体Mh’[M(CN)e’]f’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の錯体とを混合することによって得られる。
【0019】
は、特に好ましくはZn、FeまたはNiイオンであり、最も好ましくはZnイオンである。Mは、特に好ましくはCoまたはFeイオンであり、最も好ましくはCoイオンである。Mは、特に好ましくはKイオンである。Xは、特に好ましくはハロゲン化物イオンであり、最も好ましくは塩化物イオンである。複金属シアン化物化合物は、特に、ZnClとK(Co(CN))とを混合することによって得られる。
【0020】
有機錯化剤は、電子供与体として作用する官能基を有し、従って金属中心原子または中心イオンにおける配位部位を占めることができる有機化合物であると理解される。本発明における意味では、有機錯化剤として適した化合物は、好ましくは、ある程度の水溶性を示す。本発明の好ましい錯化剤は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ウレア誘導体、ニトリル、スルフィド、およびこれら化合物の2種以上の混合物を包含する。有機錯化剤は、特に好ましくは、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、モノグリム、ジグリム、1,4−ジオキサン、フラン、およびこれら化合物の2種以上の混合物から選択される。有機錯化剤は、最も好ましくは、tert−ブチルアルコールまたはモノグリムである。
【0021】
第一級アルコールは、OH基が-CH-OH基として存在するアルコールであると理解される。6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールは、飽和アルコールまたは不飽和アルコールのいずれであってもよい。用語「不飽和アルコール」は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するアルコールを包含する。このアルコールは、二重結合と三重結合の組み合わせを有することも可能である。第一級アルコールは、好ましくは8〜22個の炭素原子、特に好ましくは8〜20個の炭素原子を有する。第一級アルコールは、最も好ましくは、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、2−オクチルドデカノールおよびウンデセン−1−オールから選択される。
【0022】
本発明の触媒は、好ましくは、一般式(2):
【化3】
[式中、MはZn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、SnまたはPbイオンであり、
はCo、Fe、Cr、Mn、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり、
はZn、Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Sn、Pb、Cr、Ir、Rh、RuまたはVイオンであり、
Xはアニオンであり、
Lは有機錯化剤であり、
Aは6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールであり、
d、e、fおよびgは、正の整数であって、錯体M[M(CN)]・xM(X)が電気的中性となるような値をとり、
0.1≦x≦5、0.1≦y≦1、0.1≦z≦1および0.01≦a≦5である]
で示される。
【0023】
一般式(2)では、x、y、zおよびaは、(単独の)錯体M[M(CN)]に基づく、特定の成分の平均モル比を意味すると理解される。一方、整数d、e、fおよびgは、錯体M[M(CN)]・xM(X)に限定された化学量論的意味を有し、この錯体の完全な荷電平衡を表す。
【0024】
およびMは、互いに独立して、好ましくはZn、FeまたはNiイオンであり、Mは好ましくはMと同じである。Mは、好ましくはCoまたはFeイオンである。特に好ましくは、MはZnイオンであり、MはCoイオンである。とりわけ、錯体M[M(CN)]は、好ましくは亜鉛ヘキサシアノコバルテート(III)である。Xは好ましくはハロゲン化物イオンであり、特に好ましくはClである。有機錯化剤Lおよび第一級アルコールAに関しては、先の記載が好ましい例についてあてはまる。第一級アルコールAは、一般式(2)において脱プロトン化体として、即ちアルコラートとして存在してもよい。この点において、アルコラートは、用語「アルコール」に含まれるものとみなされる。
【0025】
本発明の触媒における有機錯化剤および第一級アルコールの総重量割合は、触媒の総重量に基づいて、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。用語「総重量割合」とは、有機錯化剤と第一級アルコールの重量割合の和であると理解される。
【0026】
本発明の触媒を製造するための成分は、好ましくは水中で混合する。
【0027】
本発明はまた、
・水性分散体において、少なくとも1種の有機錯化剤L、および少なくとも1種の6〜24個の炭素原子を有する第一級アルコールAを伴って、
一般式(1a):
【化4】
[式中、MはZn、Fe、Co、Mn、Cu、Sn、PbまたはNiイオンであり、
Xはアニオンであり、
d’およびg’は、正の整数であって、塩Md’g’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の塩と、一般式(1b):
【化5】
[式中、Mはアルカリ金属イオンであり、
はCo、Cr、Mn、Ir、Rh、Ru、VまたはFeイオンであり、
h’、e’およびf’は、正の整数であって、錯体Mh’[M(CN)e’]f’が電気的中性となるような値をとる]
で示される少なくとも1種の錯体とを混合する工程、
・得られた固体相を分離する工程、
・固体相を、LおよびAの水性分散体と少なくとも1回接触させる工程、および
・得られた反応生成物を分離する工程
を含む、本発明の触媒の製造方法を提供する。
ここで、有機錯化剤Lおよび第一級アルコールA並びにM、MおよびMについては、先に記載した意味および好ましい態様があてはまる。
【0028】
水性分散体から固体相を分離した後、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、LおよびAの水性分散体と接触させる。ここで「接触させる」とは、化学反応または物理的相互作用が生じるように供給原料を一緒にすることを意味する。
【0029】
本発明はまた、少なくとも1種の本発明の触媒の存在下で少なくとも1種のエポキシドを重合させる、エポキシドの重合方法を提供する。本発明において、用語「重合」は、エポキシドの単独重合と共重合の両方を包含する。本発明の方法は、好ましくは、少なくとも1種のエポキシドと二酸化炭素(CO)との共重合方法である。この場合、基本的に固体、液体または気体状で反応混合物に添加することができる二酸化炭素の存在下で、重合を実施する。好ましくは液体または気体として計量供給する。このタイプの方法は、例えばポリカーボネートの製造に使用することができる。
【0030】
本発明において、基質:触媒のモル比は、好ましくは100:1〜10,000,000:1、より好ましくは1,000:1〜5,000,000:1である。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは0〜300℃、より好ましくは25〜200℃、特に好ましくは50〜160℃、とりわけ60〜140℃の温度で実施する。
【0032】
本発明の方法は、好ましくは、少なくとも1種の溶媒の存在下で実施する。この場合、溶媒は、好ましくは、重合されるエポキシドがその中に分散されるような量で少なくとも存在する。溶媒は、好ましくはOH基不含有極性化合物である。適当な溶媒は、例えば、ハロゲン含有溶媒、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン;モノ−およびポリハロゲン化されたアルカンおよびアルケン;芳香族、例えばトルエン;キシレンまたはそのモノ−またはポリハロゲン化誘導体、例えば、ブロモトルエン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、クロロベンゼン;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、環式エーテル、例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ニトリル、例えば、アセトニトリルおよびアクリロニトリル;ケトン、例えば、アセトンおよびブタノン、モノ−およびジアリールケトン;シクロアルカンおよびシクロアルケン;エステル、例えば酢酸エチル、およびこれら溶媒の2種以上の混合物である。溶媒は、好ましくは、ニトリル、エステルおよびハロゲン化炭化水素から、特に、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ブロモトルエン、クロロトルエン、ジクロロトルエン、クロロベンゼン、アセトニトリル、アクリロニトリルおよび酢酸エチルから選択される。溶媒は、特に好ましくは、ジクロロメタン、トリクロロメタン、アセトニトリルおよび酢酸エチルから選択され、溶媒は、最も好ましくはジクロロメタンである。使用される溶媒の含水量は、使用される溶媒の総体積に基づいて、好ましくは0.05体積%未満である。
【0033】
本発明はまた、少なくとも1種のエポキシドを重合するための、本発明の触媒の使用を提供する。ここで、用語「重合」は、単独重合および共重合の両方を包含する。本発明では、少なくとも1種のエポキシドと二酸化炭素とを共重合するための、本発明の触媒の使用が好ましい。
【0034】
本発明では基本的に、好ましいものおよび/または特定のものとして記載された、本明細書の構成において言及した特徴の全て、特に、態様、割合の範囲、成分、および本発明の組成物の他の特徴、並びに本発明の使用の全ては、相互に排他的ではない可能な組み合わせの全てによって実現され、好ましいものおよび/または特定のものとして記載した特徴の組み合わせもまた、好ましいものおよび/または特定のものとみなされる。
【実施例】
【0035】
本発明の触媒の製造
実施例1
(Eutanol G=2−オクチルドデカン−1−オールの使用)
塩化亜鉛6.25gの蒸留水10mL溶液を、ヘキサシアノコバルト酸カリウム(2g)およびAerosil 380(1g)の蒸留水35mL溶液に激しく撹拌しながら(20,000rpm)添加した。この分散体に、t−ブタノール25gの蒸留水25mL中混合物を添加し、激しく(20,000rpm)10分間撹拌した。Eutanol G(0.5g)およびt−ブタノール(0.5g)の蒸留水50mL中混合物を添加し、1000rpmで3分間撹拌した。
得られた固体を分離し、t−ブタノール(35g)およびEutanol G(0.5g)の蒸留水15mL中混合物と一緒に10分間撹拌した(10,000rpm)。次いで濾過し、濾過ケークを、t−ブタノール(50g)およびEutanol G(0.25g)の混合物と一緒に10分間撹拌した(10,000rpm)。再び濾過し、減圧下、ロータリーエバポレーターで残留物を濃縮した。
粉末状白色固体を得た。
【0036】
実施例2
(1−ドデカノールの使用)
塩化亜鉛6.25gの蒸留水10mL溶液を、ヘキサシアノコバルト酸カリウム(2g)の蒸留水35mL溶液に激しく撹拌しながら(20,000rpm)添加した。この懸濁液に、t−ブタノール25gの蒸留水25mL中混合物を添加した。次いで、混合物を激しく(20,000rpm)10分間撹拌した。続いて、1−ドデカノール(0.05g)およびt−ブタノール(0.50g)の蒸留水50mL中混合物を添加し、1000rpmで3分間撹拌した。
固体を濾過によって分離し、t−ブタノール(35g)および1−ドデカノール(0.05g)の蒸留水15mL中混合物と一緒に10分間撹拌した(10,000rpm)。
更に濾過した後、固体を、t−ブタノール(50g)および1−ドデカノール(0.025g)の混合物と一緒に10分間撹拌した(10,000rpm)。
更に濾過した後、標準圧力下、50℃で残留物を乾燥した。
粉末状白色固体を得た。
【0037】
実施例3
(10−ウンデセン−1−オールの使用)
ヘキサシアノコバルト酸カリウム1gの蒸留水18mL溶液を、60℃の温度で、塩化亜鉛3gの蒸留水5mL溶液に激しく撹拌しながら(20,000rpm)添加した。水酸化カリウム0.93gの蒸留水10mL溶液を添加し、5分間撹拌した。
この懸濁液に、t−ブタノール16mLの蒸留水12.5mL中混合物を添加した。60℃で10分間激しく撹拌(20,000rpm)した後、t−ブタノール(0.4mL)および10−ウンデセン−1−オール(0.022g)の蒸留水25mL中混合物を添加し、1000rpmで3分間撹拌した。
固体を濾過によって分離し、t−ブタノール(22.5mL)および10−ウンデセン−1−オール(0.022g)の蒸留水7.5mL中混合物と一緒に60℃で10分間撹拌した(10,000rpm)。次いで濾過し、得られた残留物を、t−ブタノール(32mL)および10−ウンデセン−1−オール(0.011g)の混合物と一緒に60℃で10分間撹拌した(10,000rpm)。固体を分離し、標準圧力下、50℃で乾燥した。
収量:1.36g(粉末状白色固体)
【0038】
実施例4
(Eutanol G=2−オクチルドデカン−1−オールの使用)
塩化亜鉛3gの蒸留水30mL溶液を、ヘキサシアノコバルト酸カリウム(0.5g)およびEutanol G(0.1g)の蒸留水20mL溶液に激しく撹拌しながら(7,000rpm)添加した。添加完了直後、この分散体にt−ブタノール13gの蒸留水13mL溶液を添加し、激しく(7,000rpm)10分間撹拌した。得られた固体を分離し、t−ブタノール(1g)およびEutanol G(0.05g)の蒸留水25mL中混合物と一緒に20分間撹拌した(7,000rpm)。次いで固体を再び分離し、t−ブタノール(20g)およびEutanol G(0.05g)の蒸留水10mL中混合物と一緒に20分間撹拌した(7,000rpm)。固体を再び分離し、Eutanol G(0.05g)のt−ブタノール(25g)中混合物と一緒に20分間撹拌した(7,000rpm)。再び濾過し、減圧下、ロータリーエバポレーターで残留物を濃縮した。
粉末状白色固体を得た。
【0039】
プロピレンオキシドの単独重合
実施例5(1L容のオートクレーブ)
24gのトリプロピレングリコール(192.3g/mol)を1L容の撹拌式オートクレーブに計量添加し、これを3回パージし、撹拌し、70℃において真空(<0.1mbar)で1時間加熱した。冷却後、実施例2のDMC触媒0.1gを添加し(200ppm)、オートクレーブを3回パージし、プロピレンオキシド(PO)20gを計量添加し、撹拌しながら120℃に加熱した。120℃で、著しい温度上昇および加速度的な圧力低下を伴って重合が開始した。残りのPO(456g)を、110〜125℃の温度で計量添加した。全てのPOが消費された後、撹拌を120℃で1時間継続した。
収量:500gのポリエーテルポリオール
【0040】
実施例6(100mL容のオートクレーブ)
27gの加熱したDesmophen 2061BD(約2000g/molの分子量を有するポリプロピレングリコール、Bayer MaterialScience AGから入手可能)および15mgの実施例3のDMC触媒を、100mL容のオートクレーブに添加し、これを3回パージし、撹拌(1000rpm)しながら110℃に加熱した。110℃で、7.2mLのPOを計量添加した。圧力は3.5barに上昇した。30分の導入時間後、加速度的な圧力低下および150℃への急速な温度上昇が観察された。
収量:34gのポリエーテルポリオール
【0041】
実施例7(100mL容のオートクレーブ)
27gの加熱したDesmophen 2061BD(約2000g/molの分子量を有するポリプロピレングリコール、Bayer MaterialScience AGから入手可能)および15mgの実施例4のDMC触媒を、100mL容のオートクレーブに添加し、これを3回パージし、撹拌(1000rpm)しながら110℃に加熱した。110℃で、7.2mLのPOを計量添加した。圧力は3.5barに上昇した。7分の導入時間後、加速度的な圧力低下および170℃への急速な温度上昇が観察された。
収量:34gのポリエーテルポリオール