(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208945
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】セパレータ及びこれを備えた電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 2/16 20060101AFI20170925BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20170925BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20170925BHJP
C08J 7/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01M2/16 L
H01M2/16 M
H01M2/16 P
B32B5/18
B32B27/30 A
C08J7/04 ECES
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-558065(P2012-558065)
(86)(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公表番号】特表2013-522843(P2013-522843A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2011001393
(87)【国際公開番号】WO2011115376
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2012年10月18日
【審判番号】不服2016-4221(P2016-4221/J1)
【審判請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0023891
(32)【優先日】2010年3月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】510157580
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ジョン‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キー‐ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ビョン‐ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、スン‐ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ‐マ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン‐フン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ビャン‐ジン
【合議体】
【審判長】
池渕 立
【審判官】
河本 充雄
【審判官】
小川 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−287888(JP,A)
【文献】
特開2004−342572(JP,A)
【文献】
特開2006−12561(JP,A)
【文献】
特表2002−529891(JP,A)
【文献】
特許第4569718(JP,B2)
【文献】
特表2008−546135(JP,A)
【文献】
特開2010−15917(JP,A)
【文献】
大木道則 他,「化学大辞典」,株式会社東京化学同人発行,1989年,第一版第一刷,第874頁−第875頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)気孔を有する多孔性基材と、
(B)前記多孔性基材の少なくとも一面上に無機物粒子とバインダー高分子との混合物を含んで形成された多孔性コーティング層とを備えてなり、
前記バインダー高分子が、
(a)側鎖に、アミン基またはアミド基の中で少なくとも1つ以上を含む第1単量体ユニット、及び
(b)炭素数が1ないし14であるアルキル基を持つ(メタ)アクリレートからなった第2単量体ユニットを含む共重合体を含有するものであり、
前記気孔を有する多孔性基材の気孔度は、10〜95%であり、
前記無機物粒子の粒径は、0.001〜10μmであり、
前記多孔性コーティング層のパッキング密度Dが、下記式1で表される範囲内であり、
前記共重合体全体を基準にして、
前記第1単量体ユニットの含量が、10ないし80モル%であり、
前記第2単量体ユニットの含量が、20ないし90モル%であり、
前記バインダー高分子が、粒子状のものではないことを特徴とする、電気化学素子用セパレータ。
0.40×Dinorg≦D≦0.70×Dinorg (式1)
〔上記式1中、
D=(Sg−Fg)/(St−Ft)であり、
Sgは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの単位面積(m2)当たりの重さ(g)であり、
Fgは、多孔性基材の単位面積(m2)当たりの重さ(g)であり、
Stは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの厚さ(μm)であり、
Ftは、多孔性基材の厚さ(μm)であり、
Dinorgは、使われた無機物粒子の密度である。〕
【請求項2】
前記第1単量体ユニットが、2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリロアミド、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド、N‐N´‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N´‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N´‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N‐N´‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN‐ビニルピロリジノンからなる群より選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項3】
前記第2単量体ユニットが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項4】
前記共重合体が、(c)シアノ基を含む第3単量体ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項5】
前記第3単量体ユニットの含量が、共重合体全体を基準にして5ないし50モル%であることを特徴とする、請求項4に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項6】
前記共重合体が、架橋性官能基を持つ単量体ユニットを含み、前記架橋性官能基によって互いに架橋されたことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項7】
前記無機物粒子が、誘電率定数が5以上である無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子、及びこれらの混合物からなる群より選択されたことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項8】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子が、BaTiO3、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1である)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、SiC、及びTiO2からなる群より選択された少なくとも何れか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項9】
前記リチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子が、リチウムフォスフェイト(Li3PO4)、リチウムチタンフォスフェイト(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンフォスフェイト(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xOy系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオフォスフェイト(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系列ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、及びP2S5系列ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群より選択された少なくとも何れか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項10】
前記バインダー高分子の含量が、前記無機物粒子100重量部を基準にして2ないし30重量部であることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項11】
前記多孔性コーティング層の厚さが、0.5ないし10μmであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項12】
前記多孔性基材が、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、及びポリエチレンナフタレンからなる群より選択された少なくとも何れか1つで形成されたことを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項13】
電気化学素子であって、
正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータとを備えてなり、
前記セパレータが、請求項1〜12の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータであることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項14】
前記電気化学素子が、リチウム二次電池であることを特徴とする、請求項13に記載の電気化学素子。
【請求項15】
電気化学素子用セパレータの製造方法であって、
(1)(a)側鎖に、アミン基またはアミド基の中で少なくとも1つ以上を含む第1単量体ユニットと、及び(b)炭素数が1ないし14であるアルキル基を持つ(メタ)アクリレートからなった第2単量体ユニットを含む共重合体とを溶媒に溶解させ、バインダー高分子溶液を得てなり、
(2)前記バインダー高分子溶液に、無機物粒子を分散させ、
(3)前記無機物粒子が分散された前記バインダー高分子溶液を、多孔性基材にコートし、乾燥させることを含んでなり、
前記バインダー高分子が、粒子状のものではない、
請求項1〜12の何れか一項に記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年3月17日出願の韓国特許出願第10−2010−0023891号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池のような電気化学素子のセパレータ及びこれを備えた電気化学素子に関するものであって、より詳しくは、多孔性基材の表面に無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性コーティング層を含むセパレータ及びこれを備えた電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
最近エネルギー貯蔵技術に対する関心がますます高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートPC、ひいては電気自動車のエネルギーまで使用分野が拡大されるに伴い、電気化学素子の研究と開発に対する努力がますます具体化されている。電気化学素子はこのような面で最も注目されている分野であり、その中でも充・放電可能な二次電池の開発は関心の焦点になっている。
【0004】
特に、現在使用されている二次電池の中で1990年代初に開発されたリチウム二次電池は、水溶液の電解液を用いるNi‐MH、Ni‐Cd、硫酸‐鉛電池などの従来の電池に比べて作動電圧が高くエネルギー密度が遥かに高いという長所により脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池のような電気化学素子は多くのメーカで生産されているが、それらの安全性特性はそれぞれ異なる様相を見せる。このような電気化学素子の安全性確保は非常に重要である。最も重要な考慮事項は電気化学素子が誤作動するとき使用者に傷害を負わせてはいけないということであり、このような目的で安全規格は電気化学素子内の発火及び発煙などを厳格に規制している。電気化学素子の安全性特性において、電気化学素子が過熱されて熱暴走が起きるか又はセパレータが貫通される場合には、爆発を起こす恐れが大きい。特に、電気化学素子のセパレータとして通常使われるポリオレフィン系多孔性基材は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性によって100度以上の温度で激しい熱収縮挙動を見せることで、正極と負極間の短絡を起こすという問題点がある。
【0006】
このような電気化学素子の安全性問題を解決するために、特許文献1などには、多数の気孔を有する多孔性基材1の少なくとも一面に、無機物粒子3とバインダー高分子5との混合物をコートして多孔性コーティング層を形成したセパレータ10が提案された(
図1参照)。セパレータにおいて、多孔性基材1にコートされた多孔性コーティング層内の無機物粒子3は、多孔性コーティング層の物理的形態を保持することができる一種のスペーサ(spacer)の役割をすることで、電気化学素子の過熱時、多孔性基材が熱収縮されることを抑制することになる。バインダー高分子5は、無機物粒子3を互いに固定させながら多孔性基材1と接触する無機物粒子3を多孔性基材1に固定させる。
【0007】
このように、セパレータにコートされた多孔性コーティング層が多孔性基材の熱収縮を抑制するためには、無機物粒子が所定含量以上充分に含有されなければならない。しかし、無機物粒子の含量が高くなるにつれてバインダー高分子の含量は相対的に少なくなり、これによって、巻取りなど電気化学素子の組立て工程において発生する応力によって多孔性コーティング層の無機物粒子が脱離することがある。脱離された無機物粒子は電気化学素子の局所的な欠点として作用して電気化学素子の安全性に悪影響を及ぼすようになる。従って、多孔性基材に対する多孔性コーティング層の接着力を強化させることができるバインダー高分子の開発が必要である。
【0008】
一方、多孔性コーティング層のパッキング密度が低ければ、多孔性コーティング層の機能が果たせるように、より厚く多孔性コーティング層を形成しなければならないので、電気化学素子の容量を増大させるためのセパレータの薄膜化が限界にぶつかるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2007−231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上述の問題点を解決して、高いパッキング密度を示すことから安定性の阻害なく電池の薄膜化実現が容易であるだけでなく、多孔性基材との接着力が良好であることから電気化学素子の組立て過程で無機物粒子が脱離する問題点が改善された多孔性コーティング層を備えたセパレータ及びこれを備えた電気化学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するために、本発明のセパレータは、(A)気孔を有する多孔性基材と、(B)前記多孔性基材の少なくとも一面上に無機物粒子とバインダー高分子との混合物を含んで形成された多孔性コーティング層とを備え、
前記バインダー高分子は、(a)側鎖に、アミン基またはアミド基の中で少なくとも1つ以上を含む第1単量体ユニット、及び(b)炭素数が1ないし14であるアルキル基を持つ(メタ)アクリレートからなった第2単量体ユニットを含む共重合体を含有する。
【0012】
本発明のセパレータにおいて、第1単量体ユニットの含量は、共重合体全体を基準にして10ないし80モル%であり、前記第2単量体ユニットの含量は、20ないし90モル%であることが望ましい。
【0013】
上述の第1単量体ユニットとしては、2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート(2(((butoxyamino)carbonyl)oxy)ethyl(meth)acrylate)、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート(2‐(diethylamino)ethyl(meth)acrylate)、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート(2‐(dimethylamino)ethyl(meth)acrylate)、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート(3‐(diethylamino)propyl(meth)acrylate)、3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート(3‐(dimethylamino)propyl(meth)acrylate)、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート(methyl 2‐acetoamido(meth)acrylate)、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸(2‐(meth)acrylamidoglycolic acid)、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸(2‐(meth)acrylamido‐2‐methyl‐1‐propane sulfonic acid)、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド((3‐(meth)acrylamidopropyl)trimethyl ammonium chloride)、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール(N‐(meth)acryloylamido‐ethoxyethanol)、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール(3‐(meth)acryloyl amino‐1‐propanol)、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリロアミド(N‐(butoxymethyl)(meth)acryloamide)、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド(N‐tert‐butyl(meth)acrylamide)、ジアセトン(メタ)アクリルアミド(diacetone(meth)acrylamide)、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド(N,N‐dimethyl(meth)acrylamide)、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド(N‐(isobutoxymethyl)acrylamide)、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド(N‐(isopropyl)(meth)acrylamide)、(メタ)アクリルアミド((meth)acrylamide)、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド(N‐phenyl(meth)acrylamide)、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド(N‐(tris(hydroxymethyl)methyl)(meth)acrylamide)、N‐N´‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド(N‐N’‐(1,3‐phenylene)dimaleimide)、N‐N´‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド(N‐N’-(1,4-phenylene)dimaleimide)、N‐N´‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(N‐N’-(1,2‐dihydroxyethylene)bisacrylamide)、N‐N´‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド(N‐N’‐ethylenebis(meth)acrylamide)、N‐ビニルピロリジノン(N‐vinylpyrrolidone)などをそれぞれ単独で、またはこれらを2種以上用いることができ、第2単量体ユニットとしては、メチル
(メタ
)アクリレート(methyl(meth)acrylate)、エチル(メタ)アクリレート(ethyl(meth)acrylate)、n‐プロピル(メタ)アクリレート(n‐propyl(meth)acrylate)、イソプロピル(メタ)アクリレート(isopropyl(meth)acrylate)、n‐ブチル(メタ)アクリレート(n‐butyl(meth)acrylate)、t‐ブチル(メタ)アクリレート(t‐butyl(meth)acrylate)、sec‐ブチル(メタ)アクリレート(sec‐butyl(meth)acrylate)、ペンチル(メタ)アクリレート(pentyl(meth)acrylate)、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート(2‐ethylbutyl(meth)acrylate)、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2‐ethylhexyl(meth)acrylate)、n‐オクチル(メタ)アクリレート(n‐octyl(meth)acrylate)、イソオクチル(メタ)アクリレート(isooctyl(meth)acrylate)、イソノニル(メタ)アクリレート(isononyl(meth)acrylate)、ラウリル(メタ)アクリレート(lauryl(meth)acrylate)、テトラデシル(メタ)アクリレート(tetradecyl(meth)acrylate)などをそれぞれ単独で、またはこれらを2種以上用いることができる。
【0014】
本発明のセパレータにおいて、前記共重合体は、(c)シアノ基を含む第3単量体ユニットをさらに含むことが望ましく、望ましい第3単量体ユニットの含量は、共重合体全体を基準にして5ないし50モル%である。
【0015】
本発明のセパレータにおいて、前記共重合体は、架橋性官能基を持つ単量体ユニットを含むことで、前記架橋性官能基によって互いに架橋されることが望ましい。
【0016】
本発明のセパレータにおいて、前記バインダー高分子の含量は、前記無機物粒子100重量部を基準にして2ないし30重量部であることが望ましく、セパレータに備えられた多孔性コーティング層のパッキング密度であるDは、0.40×D
inorg≦D≦0.70×D
inorg(式1)の範囲内であることが望ましい。ここで、D=(Sg−Fg)/(St−
Ft)であり、Sgは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの単位面積(m
2)当たりの重さ(g)であり、Fgは、多孔性基材の単位面積(m
2)当たりの重さ(g)であり、Stは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの厚さ(μm)であり、Ftは、多孔性基材の厚さ(μm)である。
【0017】
このような本発明のセパレータは、正極と負極との間に介在され、リチウム二次電池やスーパーキャパシタ素子のような電気化学素子に用いられ得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセパレータは、多孔性コーティング層が高いパッキング密度を示し、多孔性基材に対する良好な接着力を示す。これによって、抵抗が減少し、安定性の阻害なく電気化学素子の薄膜化実現が容易になるので、電気化学素子の容量増大が可能である。また、熱的、機械的衝撃に対する抵抗性が大きいので、多孔性コーティング層内の無機物粒子が脱離する問題点が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
明細書内に統合されており、明細書の一部を構成する添付図面は、発明の現在の望ましい実施例を例示し、以下望ましい実施例の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすであろう。
【
図1】多孔性コーティング層を備えたセパレータを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対して詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはいけず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されなければならない。従って、本明細書に記載された実施例は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0021】
本発明のセパレータは、(A)気孔を有する多孔性基材と、(B)前記多孔性基材の少なくとも一面上に無機物粒子とバインダー高分子との混合物を含んで形成された多孔性コーティング層とを備え、前記バインダー高分子は、(a)側鎖に、アミン基またはアミド基の中で少なくとも1つ以上を含む第1単量体ユニット、及び(b)炭素数が1ないし14であるアルキル基を持つ(メタ)アクリレートからなった第2単量体ユニットを含む共重合体を含有する。このような共重合体は、(第1単量体ユニット)
m−(第2単量体ユニット)
n(0<m<1、0<n<1)で表すことができ、第1単量体ユニット及び第2単量体ユニットを含む共重合体であれば、ランダム共重合体、ブロック共重合体などすべての共重合体の形態が含まれる。
【0022】
共重合体に含まれた第1単量体ユニット及び第2単量体ユニットは、無機物間、または無機物と多孔性基材との間に高い接着力を付与する。また、これを利用して形成された多孔性コーティング層は、欠陥が少なく、高いパッキング密度を示す。これによって、本発明のセパレータを用いれば、電池の薄膜化実現が容易であり、外部の衝撃にも安定性が高く、無機物粒子の脱離現象が改善する。
【0023】
側鎖に、アミン基またはアミド基の中で少なくとも1つ以上を含む第1単量体ユニットとしては、2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリロアミド、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド、N‐N´‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N´‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N´‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N‐N´‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルピロリジノンなどをそれぞれ単独で、またはこれらを2種以上用いることができる。上述の第1単量体ユニットは、アクリル系単量体ユニットであることが望ましい。
【0024】
また、炭素数が1ないし14であるアルキル基を持つ(メタ)アクリレートからなった第2単量体ユニットとしては、メチル
(メタ
)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどをそれぞれ単独で、またはこれらを2種以上用いることができる。第2単量体ユニットのアルキル基に含まれた炭素数が14を超えれば、アルキル基が長すぎるようになって非極性度が大きくなるので、多孔性コーティング層のパッキング密度が低下し得る。
【0025】
本発明のセパレータにおいて、第1単量体ユニットの含量は、共重合体全体を基準にして10ないし80モル%が望ましく、15ないし80モル%であることがさらに望ましい。その含量が10モル%未満であれば、多孔性コーティング層のパッキング密度及び接着力が低下し得、その含量が80モル%を超えれば、多孔性コーティング層のパッキング密度が過度に増加することによって電気抵抗が高すぎるようになり得る。一方、第2単量体ユニットの含量は、共重合体全体を基準にして20ないし90モル%であることが望ましい。その含量が20モル%未満であれば、多孔性基材との接着力が低下し得、その含量が90モル%を超えれば、第1単量体ユニットの含量が低くなることによって多孔性コーティング層のパッキング性が低下し得る。
【0026】
本発明のセパレータにおいて、前記共重合体は、(c)シアノ基を含む第3単量体ユニットをさらに含むことが望ましく、このような第3単量体ユニットとしては、エチルシス‐(ベータ‐シアノ)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2‐(ビニルオキシ)エタンニトリル、2‐(ビニルオキシ)プロパンニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、シアノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。望ましい第3単量体ユニットの含量は、共重合体全体を基準にして5ないし50モル%である。
【0027】
本発明のセパレータにおいて、前記共重合体は、架橋性官能基を持つ単量体ユニットを含むことで、前記架橋性官能基によって互いに架橋されることが望ましい。架橋性官能基としては、ヒドロキシ基、1次アミン基、2次アミン基、酸基、エポキシ基、オキセタン基、イミダゾール基、オキサゾリン基などが挙げられ、このような架橋性官能基を持つ単量体を例えば1ないし20モル%をさらに共重合させた後、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、金属キレート剤のような硬化剤を添加して共重合体を互いに架橋させることができる。
【0028】
この他にも、上述の共重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の単量体ユニットをさらに含み得る。例えば、セパレータのイオン伝導度を向上させるために、炭素数が1ないし8であるアルコキシジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシジプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物などをさらに共重合させてもよい。
【0029】
バインダー高分子としては、本発明の目的を阻害しない範囲内で上述の共重合体以外に他のバインダー高分子を混用して使うことができることは当業者に自明であろう。
【0030】
本発明のセパレータにおいて、多孔性コーティング層の形成に用いられる無機物粒子としては、電気化学的に安定さえしていれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、使用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li
+基準で0〜5V)で酸化及び/または還元反応が発生しないものであれば特に制限されない。特に、イオン伝達能力のある無機物粒子を用いる場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めて性能向上を図ることができる。
【0031】
また、無機物粒子として誘電率が高い無機物粒子を用いる場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0032】
上述した理由により、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、望ましくは10以上である高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子、またはこれらの混合体を含むことが望ましい。誘電率定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例としては、BaTi
O3、Pb1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1
である)、ハフニア(HfO
2)、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、SiC、TiO
2などをそれぞれ単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
特に、上述したBaTi
O3、Pb1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1
である)、ハフニア(HfO
2)のような無機物粒子は、誘電率定数が100以上である高誘電率特性を示すだけでなく、一定の圧力を印加して引張りまたは圧縮する場合電荷が発生して両面間に電位差が発生する圧電性(piezoelectricity)を有することで、外部衝撃による両電極の内部短絡発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ることができる。また、上述した高誘電率無機物粒子とリチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子とを混用する場合これらの上昇効果は倍加され得る。
【0034】
本発明においてリチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子は、リチウム元素を含有するがリチウムを貯蔵せずにリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を称するものであって、リチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子は、粒子構造内部に存在する一種の欠陥(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができるので、電池内リチウムイオン伝導度が向上し、これにより電池性能の向上を図ることができる。前記リチウムイオン伝達能力を持つ無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムフォスフェイト(Li
3PO
4)、リチウムチタンフォスフェイト(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンフォスフェイト(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li
2O‐9Al
2O
3‐38TiO
2‐39P
2O
5などのような(LiAlTiP)
xO
y系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4などのようなリチウムゲルマニウムチオフォスフェイト(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li
3Nなどのようなリチウムナイトライド(Li
xN
y、0<x<4、0<y<2)、Li
3PO
4‐Li
2S‐SiS
2などのようなSiS
2系列ガラス(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI‐Li
2S‐P
2S
5などのようなP
2S
5系列ガラス(Li
xP
yS
z、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらの混合物などがある。
【0035】
本発明のセパレータにおいて、多孔性コーティング層の無機物粒子の平均粒径は制限はないが、均一な厚さのコーティング層形成及び適切な孔隙率のために、なるべく0.001ないし10μm範囲であることが望ましい。0.001μm未満である場合、分散性が低下してセパレータの物性調節が容易ではなく、10μmを超える場合、多孔性コーティング層の厚さが増加して機械的物性が低下し得、また大きすぎる気孔のサイズにより電池の充・放電時に内部短絡が生じる確率が高くなる。
【0036】
本発明によってセパレータにコートされた多孔性コーティング層のバインダー高分子の含量は、無機物粒子100重量部を基準にして2ないし30重量部であることが望ましく、5ないし15重量部であることがさらに望ましい。バインダー高分子の含量が2重量部未満であれば、無機物の脱離のような問題点が発生し得、その含量が30重量部を超えれば、バインダー高分子が多孔性基材の空隙を塞いで抵抗が上昇し、多孔性コーティング層の多孔度も低下し得る。
【0037】
本発明のセパレータにおいて、多孔性コーティング層のパッキング密度Dは、多孔性基材の単位面積(m
2)当たり1μmの高さにロードされる多孔性コーティング層の密度として定義でき、Dは、0.40×D
inorg≦D≦0.70×D
inorg(式1)の範囲内であることが望ましい。
【0038】
ここで、D=(Sg−Fg)/(St−Et)であり、
Sgは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの単位面積(m
2)当たりの重さ(g)であり、
Fgは、多孔性基材の単位面積(m
2)当たりの重さ(g)であり、
Stは、多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの厚さ(μm)であり、
Ftは、多孔性基材の厚さ(μm)であり、
D
inorg は、使われた無機物粒子の
密度である。もし、使われた無機物粒子の種類が2種以上であれば、使われたそれぞれの無機物粒子の密度及び使用分率を反映してD
inorgを算出する。
【0039】
Dが上述の下限値未満であれば、多孔性コーティング層の構造が緩んで多孔性基材の熱収縮率抑制機能が低下し得、機械的衝撃に対する抵抗性も低下する恐れがある。Dが上述の上限値を超えれば、パッキング密度の増加による物性は向上するが、多孔性コーティング層の多孔度が低下してセパレータの電気伝導度が低下し得る。
【0040】
無機物粒子とバインダー高分子とから構成される多孔性コーティング層の厚さは、特に制限はないが、0.5ないし10μm範囲が望ましい。
【0041】
また、本発明のセパレータにおいて、多数の気孔を有する多孔性基材としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンの中で少なくとも何れか1つで形成された多孔性基材のように、通常電気化学素子の多孔性基材として使用可能なものであれば、すべて使用できる。多孔性基材としては、フィルム形態や不織布形態をすべて使用できる。多孔性基材の厚さは特に制限されないが、5ないし50μmが望ましく、多孔性基材に存在する気孔のサイズ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01ないし50μm及び10ないし95%であることが望ましい。
【0042】
本発明によって多孔性コーティング層がコートされたセパレータの望ましい製造方法を以下に例示するが、これに限定されるのではない。
【0043】
まず、上述の第1単量体ユニット及び第2単量体ユニットを含む共重合体を用意し、これを溶媒に溶解させてバインダー高分子溶液を製造する。
【0044】
次いで、バインダー高分子の溶液に無機物粒子を添加して分散させる。溶媒としては、使用しようとするバインダー高分子に溶解度指数が類似し、沸点が低いものが望ましい。これは、均一な混合及びその後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、塩化メチレン(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(N‐methyl‐2‐pyrrolidone、NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水またはこれらの混合体などがある。バインダー高分子溶液に無機物粒子を添加した後、無機物粒子を破砕することが望ましい。このとき、破砕時間は1ないし20時間が適切であり、破砕された無機物粒子の平均粒径は上述したように0.001ないし10μmが望ましい。破砕方法としては通常の方法を使うことができ、特にボールミル法が望ましい。
【0045】
その後、無機物粒子が分散されたバインダー高分子の溶液を10ないし80%の湿度条件下で多孔性基材にコートし乾燥させる。
【0046】
無機物粒子が分散されたバインダー高分子の溶液を多孔性基材上にコートする方法は、当業界に知られた通常のコーティング方法を使うことができ、例えばディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、またはこれらの混合方式など多様な方式を用いることができる。また、多孔性コーティング層は、多孔性基材の両面、または一面のみに選択的に形成し得る。
【0047】
このように製造された本発明のセパレータは、電気化学素子のセパレータとして用いることができる。すなわち、正極と負極との間に介させたセパレータとして、本発明のセパレータが有用に使用可能である。電気化学素子は電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的に例を挙げれば、全ての種類の一次、二次電池、燃料電池、太陽電池、またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどがある。特に、前記二次電池の中で、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0048】
電気化学素子は、当技術分野に知られた通常の方法で製造することができ、この一実施例を挙げれば、正極と負極との間に上述のセパレータを介させてラミネートした後、電解液を注入することで製造することができる。
【0049】
本発明のセパレータと共に使用される電極としては特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質を電極の電流集電体に結着された形態で製造できる。前記電極活物質の中で正極活物質の非制限的な例としては、従来電気化学素子の正極として用いられる通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウム鉄リン酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を用いることが望ましい。負極活物質の非制限的な例としては、従来電気化学素子の負極として用いられる通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク、活性化炭素、グラファイトまたはその他炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。正極電流集全体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集全体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがある。
【0050】
本発明で用いることができる電解液はA
+B
−のような構造の塩であり、A
+はLi
+、Na
+、K
+のようなアルカリ金属陽イオン、またはこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B
−はPF
6−、BF
4−、Cl
−、Br
−、I
−、ClO
4−、AsF
6−、CH
3CO
2−、CF
3SO
3−、N(CF
3SO
2)
2−、C(CF
2SO
2)
3−のような陰イオン、またはこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ‐ブチロラクトン、またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離されたものがあるが、これに限定されるのではない。
【0051】
前記電解液の注入は最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階で行われ得る。すなわち、電池組立ての前または電池組立ての最終段階などに使用することができる。
【0052】
本発明のセパレータを電池に使用する工程としては、一般的な工程である巻取り(winding)以外にもセパレータと電極との積層(lamination、stack)、及び折り畳み(folding)工程が可能である。本発明のセパレータは、耐剥離性に優れていることから、上述の電池組立て工程で無機物粒子が脱離しにくい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはいけない。本発明の実施例は、当業界において通常の知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0054】
共重合体の用意
下記表1に記載された単量体を、記載された含量(モル部)に従って投入し、共重合体を製造した。
【0055】
【表1】
前記表1において、DMAAmは、N‐N‐ジメチルアクリルアミド(N,N‐dimethylacrylamide)であり、DMAEAは、N‐N‐ジメチルアミノエチルアクリレート(N,N‐dimethylaminoethyl acrylate)であり、ANは、アクリロニトリル(acrylonitrile)であり、EAは、エチルアクリレート(ethyl acrylate)であり、BAは、n‐ブチルアクリレート(n‐butyl acrylate)であり、IBAは、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)であり、AAは、アクリル酸(acrylic acid)であり、HBAは、ヒドロキシブチルアクリレート(hydroxybutyl acrlate)である。
【0056】
実施例及び比較例
下記表2に記載された成分に従って以下のようにセパレータを製造した。
【0057】
それぞれの共重合体と硬化剤とをアセトンに溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。製造したバインダー高分子溶液に無機物粒子を、バインダー高分子/硬化剤/無機物粒子=7.15/0.35/92.5の重量比になるように添加し、3時間以上ボールミル法を利用して無機物粒子を破砕及び分散してスラリーを製造した。このように製造されたスラリーの無機物粒子の粒径はボールミルで使われるビーズのサイズ(粒度)及びボールミル時間によって制御することができるが、本実施例1では約400nmに粉砕してスラリーを製造した。このように製造されたスラリーを厚さ12μmのポリエチレン多孔性膜(気孔度45%)の両面または一面にコートした。
【0058】
製造されたセパレータを50mm×50mmで裁断した後、以下の方法に従って通気度、熱収縮率、剥離力(peel strength)、多孔性コーティング層のパッキング密度Dを測定し、下記表2に示した。
【0059】
通気度は、セパレータを空気100mlが完全に通過するのにかかる時間(s)で評価した。
【0060】
熱収縮率は、150度で1時間セパレータを保管した後、延伸方向のセパレータの熱収縮率を測定した。
【0061】
剥離力は、両面テープを利用してセパレータをガラス板上に固定させた後、露出した多孔性コーティング層にテープ(3Mの透明テープ)を堅固に付着させてから、引張り強度測定装備を利用してテープを剥がすのに必要な力(gf/15mm)で評価した。
【0062】
【表2】
【0063】
正極の製造
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物92重量%、導電材としてカーボンブラック4重量%、結合剤としてPVDF 4重量%を、溶剤であるN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを、厚さが20μmである正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布、乾燥して正極を製造した後、ロールプレスを行った。
【0064】
電池の製造
上述の方法で製造された電極及び下記表3のセパレータをスタッキング(stacking)方式を移用して組み立て、組み立てられた電池に、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/2(体積比)、1Mのリチウムヘキサフルオロフォスフェイト(LiPF
6))を注入した。
【0065】
製造した電池に対し、ホットボックス試験、及び60℃におけるサイクル性能をテストし、その結果をそれぞれ下記表3及び表4に示した。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】