特許第6209047号(P6209047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6209047-円形板状物の分割方法 図000002
  • 特許6209047-円形板状物の分割方法 図000003
  • 特許6209047-円形板状物の分割方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209047
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】円形板状物の分割方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170925BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   H01L21/78 Q
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-213283(P2013-213283)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-76561(P2015-76561A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−199448(JP,A)
【文献】 特開2004−146487(JP,A)
【文献】 特開2006−156638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームにテープを介して装着され、第1の方向に伸長する複数の第1の分割予定ラインと該第1の方向に交差する第2の方向に伸長する複数の第2の分割予定ラインとが設定され、該第1の分割予定ラインと該第2の分割予定ラインとで区画されるチップを複数有するチップ領域と、該チップ領域を囲繞した外周余剰領域と、を備えた円形板状物の該第1の分割予定ラインと該第2の分割予定ラインとを切削ブレードで切削して複数のチップを形成する円形板状物の分割方法であって、
該円形板状物を該第1の方向が切削送り方向になるように基準位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを切削送り方向に相対的に移動する切削送りと、該第1の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを切削送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該円形板状物の片側縁から中央までの半面領域について複数の第1の分割予定ラインを切削する第1の切削工程と、
該第1の切削工程を実施した後に、該円形板状物を基準位置から180°回転して該第1の方向が該切削送り方向になるように1/2回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する切削送りと、該第1の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第1の方向の該円形板状物の中央から他側縁までの半面領域について複数の第1の分割予定ラインを切削する第2の切削工程と、
該第2の切削工程を実施した後に、該円形板状物を該第2の方向が該切削送り方向になるように1/4回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する該切削送りと、該第2の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第2の方向の該円形板状物の片側縁から中央までの半面領域について複数の第2の分割予定ラインを切削する第3の切削工程と、
該第3の切削工程を実施した後に、該円形板状物を1/4回転位置から180°回転して該第2の方向が該切削送り方向になるように3/4回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する該切削送りと、該第2の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第2の方向の該円形板状物の中央から他側縁までの半面領域について複数の第2の分割予定ラインを切削する第4の切削工程と、
該切削ブレードを該円形板状物外周縁の外側から切り込ませるとともに切り終わり側では切削ブレードは該円形板状物の外周余剰領域を切削することなく未切削領域を形成すること、を特徴とする円形板状物の分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差する分割予定ラインに沿って円形板状物を切削ブレードで切削して個々のチップに分割する円形板状物の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密部品の製造分野においては、半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ、ガラスや各種セラミック等の円形板状物を、個々の矩形状のチップに分割する場合がある。円形板状物を分割する際には、通常、円形板状物の片面にダイシングテープを貼着し、円形板状物の外周縁よりも外側において切削ブレードでダイシングテープを切り込ませる。そして、切削ブレードでダイシングテープを切り込んだ状態で、円形板状物の分割予定ラインに沿って切削ブレードを相対移動させることで、円形板状物をフルカットして個々の矩形状のチップに分割している。
【0003】
ところで、円形板状物から矩形状のチップを取り出すため、円形板状物の外周縁付近には三角形状又は台形状の矩形にならない端材チップが発生する。この端材チップは矩形状のチップに比べて面積が小さい上、円形板状物の外周縁が面取りされて端材チップのダイシングテープへの接着力が弱いことから、切削中にダイシングテープから端材チップが剥離して、いわゆるチップ飛びが発生するおそれがある。そこで、円形板状物の外周縁に対する接着力を強化した環状の接着強化領域を設けたダイシングテープが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−21109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されたダイシングテープは、特殊な仕様であるためコストが嵩み、さらに円形板状物の外周縁をダイシングテープの環状の接着強化領域に位置合わせする必要があり、工数が増加するという問題がある。また、このようなダイシングテープによっても、三角形状や台形状の端材チップの大きさによってはチップ飛びを防止することができないおそれがある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、コストや工数をかけることなく切削加工時のチップ飛びの発生を防止できる円形板状物の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の円形板状物の分割方法は、フレームにテープを介して装着され、第1の方向に伸長する複数の第1の分割予定ラインと該第1の方向に交差する第2の方向に伸長する複数の第2の分割予定ラインとが設定され、該第1の分割予定ラインと該第2の分割予定ラインとで区画されるチップを複数有するチップ領域と、該チップ領域を囲繞した外周余剰領域と、を備えた円形板状物の該第1の分割予定ラインと該第2の分割予定ラインとを切削ブレードで切削して複数のチップを形成する円形板状物の分割方法であって、該円形板状物を該第1の方向が切削送り方向になるように基準位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを切削送り方向に相対的に移動する切削送りと、該第1の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを切削送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該円形板状物の片側縁から中央までの半面領域について複数の第1の分割予定ラインを切削する第1の切削工程と、該第1の切削工程を実施した後に、該円形板状物を基準位置から180°回転して該第1の方向が該切削送り方向になるように1/2回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する切削送りと、該第1の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第1の方向の該円形板状物の中央から他側縁までの半面領域について複数の第1の分割予定ラインを切削する第2の切削工程と、該第2の切削工程を実施した後に、該円形板状物を該第2の方向が該切削送り方向になるように1/4回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する該切削送りと、該第2の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第2の方向の該円形板状物の片側縁から中央までの半面領域について複数の第2の分割予定ラインを切削する第3の切削工程と、該第3の切削工程を実施した後に、該円形板状物を1/4回転位置から180°回転して該第2の方向が該切削送り方向になるように3/4回転位置に位置付け、該円形板状物と該切削ブレードを該切削送り方向に相対的に移動する該切削送りと、該第2の分割予定ラインの間隔に対応して該円形板状物と該切削ブレードを割り出し送り方向に相対的に移動する割り出し送りとを順次繰り返して、該第2の方向の該円形板状物の中央から他側縁までの半面領域について複数の第2の分割予定ラインを切削する第4の切削工程と、該切削ブレードを該円形板状物外周縁の外側から切り込ませるとともに切り終わり側では切削ブレードは該円形板状物の外周余剰領域を切削することなく未切削領域を形成すること、を特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の切削工程では、円形板状物を第1の方向で二分した片側の半面領域において外周縁の外側から第1の分割予定ラインが切削され、第2の切削工程では、残りの半面領域において第1の切削工程とは逆方向から第1の分割予定ラインが切削される。また、第3の切削工程では、円形板状物の第2の方向で二分した片側の半面領域において外周縁の外側から第2の分割予定ラインが切削され、第4の切削工程では、残りの半面領域において第3の切削工程とは逆方向から第2の分割予定ラインが切削される。また、第1−第4の切削工程において切削送りの終了側では円形板状物の外周余剰領域が切削されずに未切削領域が形成されている。このため、三角形状や台形状の端材チップの形成エリアである外周余剰領域で第1、第2の分割予定ラインに沿った切削溝が交差することがない。よって、円形板状物の外周余剰領域で、三角状又は台形状の端材チップを減らすことができ、コストや工数をかけることなくチップ飛びの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1、第2の分割予定ラインに沿った切削溝が外周余剰領域で交差しないように、円形板状物に対して切削ブレード切削送りすることで、コストや工数をかけることなくチップ飛びの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る円形板状物の上面模式図である。
図3】本実施の形態に係る第1−第4の切削工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る円形板状物の分割方法について説明する。図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。図2は、本実施の形態に係る円形板状物の上面模式図である。なお、本実施の形態に係る円形板状物の分割方法で用いられる切削装置は、図1に示す構成に限定されない。例えば、本発明は、一対の切削ブレードを備えた切削装置にも適用可能である。
【0012】
図1に示すように、切削装置1は、円形板状物Wに対して切削ブレード45を相対移動させることで、円形板状物Wを個々のチップに分割するように構成されている。図2に示すように、円形板状物Wは、第1の方向に伸長する第1の分割予定ライン51と第1の方向に交差する第2の方向に伸長する第2の分割予定ライン52とにより格子状に区画されている。円形板状物Wには、矩形状のチップが形成されるチップ領域54と、チップ領域54を囲繞した外周余剰領域55とが設けられている。チップ領域54には各種デバイスDが形成されている。
【0013】
円形板状物Wの裏面にはダイシングテープ(テープ)Tが貼着されており、このダイシングテープTの外周には環状のフレームFが貼着されている。このように、円形板状物Wは、ダイシングテープTを介してフレームFに支持された状態で切削装置1に搬入される。なお、円形板状物Wは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板にIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の無機材料基板にLED等の光デバイスが形成された光デバイス円形板状物でもよい。
【0014】
図1に戻り、切削装置1の基台11上には、チャックテーブル12をX軸方向に移動するチャックテーブル移動機構13が設けられている。チャックテーブル移動機構13は、基台11上に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル22とを有している。X軸テーブル22の上部には、チャックテーブル12が設けられている。また、X軸テーブル22の背面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ23が螺合されている。そして、ボールネジ23の一端部に連結された駆動モータ24が回転駆動されることで、チャックテーブル12がガイドレール21に沿ってX軸方向に移動される。
【0015】
チャックテーブル12は、円板状に形成されており、θテーブル25を介してX軸テーブル22の上面に回転可能に設けられている。チャックテーブル12の上面には、ポーラスセラミックス材により保持面28が形成されている。保持面28は、チャックテーブル12内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されており、保持面28上に生じる負圧によって円形板状物Wが吸着保持される。チャックテーブル12の周囲には、一対の支持アームを介して4つのクランプ部29が設けられている。各クランプ部29がエアアクチュエータ(不図示)により駆動されることで、円形板状物Wの周囲のフレームFが四方から挟持固定される。
【0016】
切削装置1の基台11上には、ブレードユニット15をチャックテーブル12の上方でY軸方向及びZ軸方向に移動するブレードユニット移動機構14が設けられている。ブレードユニット移動機構14は、基台11上に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸テーブル32とを有している。Y軸テーブル32は上面視矩形状に形成されており、そのX軸方向における一端部には側壁部33が立設している。
【0017】
また、ブレードユニット移動機構14は、側壁部33の壁面に設置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール34(1つのみ図示)と、一対のガイドレール34にスライド可能に設置されたZ軸テーブル35とを有している。Z軸テーブル35には、チャックテーブル12に向ってY軸方向に延在するスピンドルユニット36が片持で支持されている。また、Y軸テーブル32、Z軸テーブル35の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ37、38が螺合されている。そして、ボールネジ37、38の一端部に連結された駆動モータ41、42が回転駆動されることで、ブレードユニット15がガイドレール31、34に沿ってY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0018】
ブレードユニット15の切削ブレード45は、スピンドルユニット36のスピンドル軸(不図示)の先端に設けられている。切削ブレード45は、ダイアモンド砥粒をレジンボンドで固めて円形にしたレジンブレードで構成されている。切削ブレード45はブレードカバー46によって周囲が覆われており、ブレードカバー46には切削部分に向けて切削水を噴射する噴射ノズル47が設けられている。ブレードユニット15は、切削ブレード45を高速回転させ、複数の噴射ノズル47から切削部分に切削水を噴射しつつ円形板状物Wを切削加工する。
【0019】
このように構成された切削装置1には、ダイシングテープT付きの円形板状物Wが搬入されて、円形板状物Wに対して第1−第4の切削工程が実施される。第1の切削工程では、円形板状物Wを第1の方向で二分した半面領域57Aにおいて、第1の分割予定ライン51の半数が切削される(図3A参照)。第2の切削工程では、円形板状物Wを180°を回転した残りの半面領域57Bにおいて第1の分割予定ライン51の残りの半数が切削される(図3B参照)。第1、第2の切削工程の切削送りの終了側では円形板状物Wの外周余剰領域55を残すように切削される。第3、4の切削工程においても、円形板状物Wを第2の方向で二分した半面領域57C、57Dにおいて、それぞれ第1、第2の切削工程と同様に外周余剰領域55を残すように第2の分割予定ライン52が切削される(図3C、D参照)。
【0020】
以下、図3を参照して、円形板状物の分割方法について具体的に説明する。図3は、本実施の形態に係る第1−第4の切削工程の説明図である。なお、図3Aが第1の切削工程、図3Bが第2の切削工程、図3Cが第3の切削工程、図3Dが第4の切削工程の一例をそれぞれ示している。なお、図3において、実線の矢印は現工程の切削送りを示し、破線の矢印は前の工程の切削送りを示している。また、第1−第4の切削工程において、特に切削順序は限定されず、適宜変更が可能である。
【0021】
図3Aに示すように、第1の切削工程では、第1の分割予定ライン51の伸長する第1の方向が切削送り方向(X軸方向)になるように、チャックテーブル12(図1参照)上の円形板状物Wが基準位置(0°位置)に位置付けられる。切削ブレード45が円形板状物Wの外周縁の外側に位置付けられた状態で切削ブレード45が第1の分割予定ライン51に対して位置合わせされる。そして、噴射ノズル47(図1参照)から切削水が噴射されながら、円形板状物Wの外側で切削ブレード45によってダイシングテープTが切り込まれる。切削ブレード45によってダイシングテープTが所定深さまで切り込まれると、切削ブレード45に対してチャックテーブル12(図1参照)がX軸方向に切削送りされる。
【0022】
このとき、切削送りの始め側(一端61側)では、切削ブレード45によって円形板状物Wの外周縁の外側から切り込まれ、切削送りの終わり側(他端62側)では、円形板状物Wの外縁の手前で切削ブレード45が上昇して円形板状物Wから離間する。このようにして、切削ブレード45によって第1の分割予定ライン51が一端61から他端62の手前まで切削される。1本の第1の分割予定ライン51が切削されると、第1の分割予定ライン51の間隔に対応して切削ブレード45が割り出し方向(Y軸方向)に送られ、隣の第1の分割予定ライン51に切削ブレード45が位置合わせされる。
【0023】
この切削送りと割り出し送りとが順次繰り返されて、円形板状物Wの第1の分割予定ライン51が片側縁63側から順に切削される。これにより、円形板状物Wの片側縁63から中央69までの半面領域57A内の複数の第1の分割予定ライン51、すなわち円形板状物Wの第1の分割予定ライン51の半数が切削される。第1の切削工程では、第1の分割予定ライン51の他端62側を残すように切削送りされるため、円形板状物Wにおける切削送りの終わり側(他端62側)には未切削領域59Aが形成される。
【0024】
図3Bに示すように、第1の切削工程が実施された後に、第2の切削工程が実施される。第2の切削工程では、円形板状物Wが基準位置から180°回転されて、第1の方向が切削送り方向(X軸方向)になるように、チャックテーブル12(図1参照)上の円形板状物Wが1/2回転位置(180°位置)に位置付けられる。切削ブレード45が円形板状物Wの外周縁の外側に位置付けられた状態で切削ブレード45が第1の分割予定ライン51に対して位置合わせされる。そして、円形板状物Wの外側で切削ブレード45にダイシングテープTが切り込まれて、切削ブレード45に対してチャックテーブル12(図1参照)がX軸方向に切削送りされる。
【0025】
このとき、第1の切削工程と第2の切削工程では、円形板状物Wの向きが逆転しているため、切削ブレード45によって第1の分割予定ライン51が他端62側から切り込まれる。切削送りの始め側(他端62側)では、切削ブレード45によって円形板状物Wの外周縁の外側から切り込まれ、切削送りの終わり側(一端61側)では、円形板状物Wの外縁で切削ブレード45が上昇して円形板状物Wから離間する。このようにして、切削ブレード45によって第1の分割予定ライン51が他端62から一端61の手前まで切削される。1本の第1の分割予定ライン51が切削されると、切削ブレード45が割り出し方向(Y軸方向)に送られ、隣の第1の分割予定ライン51に切削ブレード45が位置合わせされる。
【0026】
この切削送りと割り出し送りとが順次繰り返されて、円形板状物Wの第1の分割予定ライン51が他側縁64側から順に切削される。これにより、円形板状物Wの中央69から他側縁64までの半面領域57B内の複数の第1の分割予定ライン51、すなわち円形板状物Wの第1の分割予定ライン51の残りの半数が切削される。第2の切削工程では、第1の分割予定ライン51の一端61側を残すように切削送りされるため、円形板状物Wにおける切削送りの終わり側(一端61側)には未切削領域59Bが形成される。
【0027】
図3Cに示すように、第2の切削工程が実施された後に、第3の切削工程が実施される。第3の切削工程では、第2の分割予定ライン52の伸長する第2の方向が切削送り方向(X軸方向)になるように、チャックテーブル12(図1参照)上の円形板状物Wが1/4回転位置(90°位置)に位置付けられる。切削ブレード45が円形板状物Wの外周縁の外側に位置付けられた状態で切削ブレード45が第2の分割予定ライン52に対して位置合わせされる。そして、円形板状物Wの外側で切削ブレード45にダイシングテープTが切り込まれて、切削ブレード45に対してチャックテーブル12(図1参照)がX軸方向に切削送りされる。
【0028】
このとき、切削送りの始め側(一端65側)では、切削ブレード45によって円形板状物Wの外周縁の外側から切り込まれ、切削送りの終わり側(他端66側)では、円形板状物Wの外縁の手前で切削ブレード45が上昇して円形板状物Wから離間する。このようにして、切削ブレード45によって第2の分割予定ライン52が一端65から他端66の手前まで切削される。1本の第2の分割予定ライン52が切削されると、切削ブレード45が割り出し方向(Y軸方向)に送られ、隣の第2の分割予定ライン52に切削ブレード45が位置合わせされる。
【0029】
この切削送りと割り出し送りとが順次繰り返されて、円形板状物Wの第2の分割予定ライン52が片側縁67側から順に切削される。これにより、円形板状物Wの片側縁67から中央69までの半面領域57C内の複数の第2の分割予定ライン52、すなわち円形板状物Wの第2の分割予定ライン52の半数が切削される。第3の切削工程では、第2の分割予定ライン52の他端66側を残すように切削送りされるため、円形板状物Wにおける切削送りの終わり側(他端66側)には未切削領域59Cが形成される。
【0030】
この未切削領域59Cは、第1の切削工程時に第1の分割予定ライン51が既に切削されているが、第3の切削工程では第2の分割予定ライン52が切削されない。また、第3の切削工程では第2の切削工程時の未切削領域59Bの第2の分割予定ライン52が切削されるが、この未切削領域59Bは第2の切削工程時に第1の分割予定ライン51が切削されない。このため、未切削領域59B、59Cにおいて第1、第2の分割予定ライン51、52に沿った切削溝が交差することがない。よって、三角形状又は台形状の端材チップを減らすことができ、チップ飛びの発生を防止することができる。
【0031】
図3Dに示すように、第3の切削工程が実施された後に、第4の切削工程が実施される。第4の切削工程では、円形板状物Wが1/4回転位置から180°回転されて、第2の方向が切削送り方向(X軸方向)になるように、チャックテーブル12(図1参照)上の円形板状物Wが3/4回転位置(270°位置)に位置付けられる。切削ブレード45が円形板状物Wの外周縁の外側に位置付けられた状態で切削ブレード45が第2の分割予定ライン52に対して位置合わせされる。そして、円形板状物Wの外側で切削ブレード45にダイシングテープTが切り込まれて、切削ブレード45に対してチャックテーブル12(図1参照)がX軸方向に切削送りされる。
【0032】
このとき、第3の切削工程と第4の切削工程では、円形板状物Wの向きが逆転しているため、切削ブレード45によって第2の分割予定ライン52が他端66側から切り込まれる。切削送りの始め側(他端66側)では、切削ブレード45によって円形板状物Wの外周縁の外側から切り込まれ、切削送りの終わり側(一端65側)では、円形板状物Wの外縁の手前で切削ブレード45が上昇して円形板状物Wから離間する。このようにして、切削ブレード45によって第2の分割予定ライン52が他端66から一端65の手前まで切削される。1本の第2の分割予定ライン52が切削されると、切削ブレード45が割り出し方向(Y軸方向)に送られ、隣の第2の分割予定ライン52に切削ブレード45が位置合わせされる。
【0033】
この切削送りと割り出し送りとが順次繰り返されて、円形板状物Wの第2の分割予定ライン52が他側縁68側から順に切削される。これにより、円形板状物Wの中央69から他側縁68までの半面領域57D内の複数の第2の分割予定ライン52、すなわち円形板状物Wの第2の分割予定ライン52の残りの半数が切削される。第4の切削工程では、第2の分割予定ライン52の一端65側を残すように切削送りされるため、円形板状物Wにおける切削送りの終わり側(一端65側)には未切削領域59Dが形成される。
【0034】
この未切削領域59Dは、第2の切削工程時に第1の分割予定ライン51が既に切削されているが、第4の切削工程では第2の分割予定ライン52が切削されない。また、第4の切削工程では第1の切削工程時の未切削領域59Aの第2の分割予定ライン52が切削されるが、この未切削領域59Aは第1の切削工程時に第1の分割予定ライン51が切削されない。このため、未切削領域59A、59Dにおいて第1、第2の分割予定ライン51、52に沿った切削溝が交差することがない。よって、三角形状又は台形状の端材チップを減らすことができ、チップ飛びの発生を防止することができる。
【0035】
ところで、外周余剰領域55において三角形状又は台形状の端材チップを減らすだけなら、チョッパーカットによって切削送りの終わり側だけでなく、切削送りの始め側にも未切削領域59を形成する構成が考えられる。しかしながら、チョッパーカットでは、切削送りの開始時に切削ブレード45に円形板状物Wを切り込ませながら、切削ブレード45を降ろしている。このため、切削ブレード45をゆっくりと降ろさなければ、切削ブレード45や円形板状物Wが破損してしまうおそれがあり、加工時間が長くなるという問題がある。一方、本実施の形態では、切削送りの開始時に、円形板状物Wの外周縁の外側において円形板状物Wを切り込むことなく切削ブレード45を降ろしている。このため、切削ブレード45を素早く降ろすことができ、チョッパーカットを行う場合と比較して、加工時間を短縮することが可能になっている。
【0036】
以上のように、本実施の形態に係る円形板状物Wの分割方法によれば、円形板状物Wを第1の方向で二分した片側の半面領域57Aでは第1の分割予定ライン51の一端61から他端62の手前まで切削され、残りの半面領域57Bでは第1の分割予定ライン51の他端62から一端61の手前まで切削される。また、円形板状物Wの第2の方向で二分した片側の半面領域57Cでは第2の分割予定ライン52の一端65から他端66の手前まで切削され、残りの半面領域57Dでは第2の分割予定ライン52の他端66から一端65の手前まで切削される。このように、切削送りの終了側では円形板状物Wの外周余剰領域55が切削されないため、三角形状や台形状の端材チップの形成エリアである外周余剰領域55で第1、第2の分割予定ライン51、52に沿った切削溝が交差することがない。よって、円形板状物Wの外周余剰領域55で、三角状又は台形状の端材チップを減らすことができ、コストや工数をかけることなくチップ飛びの発生を防止することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
例えば、本実施の形態では、円形板状物Wの分割方法を、単一の切削ブレード45を用いて円形板状物Wを分割する構成を適用したが、この構成に限定されない。円形板状物Wの分割方法は、一対の切削ブレード45を用いたステップカットにも適用可能である。この場合、1軸側の切削ブレード45で通常のハーフカットを実施し、2軸側の切削ブレード45で円形板状物Wの分割方法を用いてフルカットを実施する。なお、1軸側の切削ブレード45でも円形板状物Wの分割方法を用いてハーフカットを実施する構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、コストや工数をかけることなく切削加工時のチップ飛びの発生を防止できるという効果を有し、特に、分割予定ラインに沿って円形板状物を格子状に分割する円形板状物の分割方法に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 切削装置
45 切削ブレード
51 第1の分割予定ライン
52 第2の分割予定ライン
54 チップ領域
55 外周余剰領域
57A−57D 半面領域
59A−59D 未切削領域
61 第1の分割予定ラインの一端
62 第1の分割予定ラインの他端
65 第2の分割予定ラインの一端
66 第2の分割予定ラインの他端
63、67 円形板状物の片側縁
64、68 円形板状物の他側縁
69 中央
F フレーム
T ダイシングテープ(テープ)
W 円形板状物
図1
図2
図3