【文献】
竹内 知明 他,地上デジタル放送用ガードインターバル越えマルチパス等化器の等化特性改善,映像情報メディア学会誌 Vol.66, No.7,2012年 4月11日,pp.J196-J206
【文献】
竹内 知明 渋谷 一彦,GI越えマルチパス環境のためのSDM MIMO−OFDM用チャネル等化器 ,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.113 No.301 ,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年11月13日,第113巻,pp.37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時間領域空間フィルタ部は、時間領域において前記等価ベースバンド信号のアレー合成を行う受信系列数分のアレー合成部を備えることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の受信装置。
前記逆フィルタ算出部は、ゼロフォーシング規範又はMMSE規範に基づいて前記チャネル応答行列の逆フィルタを算出することを特徴とする、請求項10に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す受信装置1は、周波数変換部11と、A/D変換部12と、直交復調部13と、周波数領域等化部14と、OFDM復調部15と、等化係数制御部16と、伝送路信頼度算出部17と、尤度比重み付け部18と、誤り訂正復号部19とを備える。
【0028】
周波数変換部11は、受信したOFDM信号をIF信号に周波数変換し、A/D変換部12に出力する。
【0029】
A/D変換部12は、周波数変換部11から入力されるIF信号をA/D変換してデジタルIF信号に変換し、直交復調部13に出力する。
【0030】
直交復調部13は、A/D変換部12から入力されるデジタルIF信号を直交復調して等価ベースバンド信号を生成し、周波数領域等化部14に出力する。
【0031】
周波数領域等化部14は、直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を周波数領域において等化処理して等化信号を生成し、OFDM復調部15に出力する。周波数領域等化部14の詳細については後述する。
【0032】
OFDM復調部15は、周波数領域等化部14から入力される等化信号を周波数領域へ変換した周波数領域等化信号のチャネル応答を推定し、該チャネル応答を用いて、送信信号を推定した推定送信信号を生成する。OFDM復調部15は、例えば、GI除去部151と、FFT部152と、チャネル推定部153と、チャネル等化部154とにより構成される。
【0033】
GI除去部151は、周波数領域等化部14から入力される等化信号からガードインターバルを除去して有効シンボル区間に相当する信号を抽出し、FFT部152に出力する。
【0034】
FFT部152は、GI除去部151から入力される有効シンボル区間に相当する等化信号をOFDM信号のFFTサイズでFFT処理して周波数領域の等化信号(FFT信号)を生成し、チャネル推定部153、チャネル等化部154、及び等化係数制御部16に出力する。
【0035】
チャネル推定部153は、FFT部152から入力されるFFT信号からチャネル応答を推定し、チャネル等化部154、等化係数制御部16、及び伝送路信頼度算出部17に出力する。
【0036】
チャネル等化部154は、FFT部152から入力されるFFT信号をOFDM信号のサブキャリアごとに、チャネル推定部153から入力されるチャネル応答で除算することにより等化処理を行って推定送信信号を生成し、等化係数制御部16、及び尤度比重み付け部18に出力する。
【0037】
等化係数制御部16は、FFT部152から入力されるFFT信号、チャネル推定部153から入力されるチャネル応答、及びチャネル等化部154から入力される推定送信信号から等化係数を算出し、周波数領域等化部14及び伝送路信頼度算出部17に出力する。等化係数制御部16の詳細については後述する。
【0038】
伝送路信頼度算出部17は、チャネル推定部153から入力されるチャネル応答、及び等化係数制御部16から入力される等化係数を乗算してOFDM信号のサブキャリアごとに伝送路の信頼度(伝送路信頼度)を算出し、尤度比重み付け部18に出力する。伝送路信頼度算出部17の詳細については後述する。
【0039】
尤度比重み付け部18は、伝送路信頼度算出部17から入力される伝送路信頼度によって重み付けがされた尤度比を算出する。尤度比重み付け部18は、例えば雑音分散算出部181と、尤度比算出部182と、乗算部183とにより構成される。
【0040】
雑音分散算出部181は、チャネル等化部154から入力される推定送信信号の雑音分散を算出し、尤度比算出部182に出力する。雑音分散算出部181の詳細については後述する。
【0041】
尤度比算出部182は、チャネル等化部154から入力される推定送信信号からキャリア変調方式に従ってビットごとの尤度比を、雑音分散算出部181から入力される雑音分散σ
2を用いて算出し、乗算部183に出力する。尤度比としては、一般的に対数尤度比(LLR:Log-Likelihood Ratio)が用いられる。対数尤度比は、式(1)に示すように、b=0となる尤度関数とb=1となる尤度関数の比の対数で表される。ここでL(k,n)はサブキャリア番号kのn番目のビットに対する対数尤度比を、S
n0及びS
n1はn番目のビットがそれぞれ0,1である理想信号点の集合、σ
k2はサブキャリア番号kの雑音分散を示す。また、(x,y)はチャネル等化部154から入力される推定送信信号を示す。
【0043】
乗算部183は、尤度比算出部182から入力される尤度比に伝送路信頼度算出部17から入力される伝送路信頼度を乗じることにより、尤度比に重み付けを行い、重み付け後の尤度比を誤り訂正復号部19に出力する。
【0044】
誤り訂正復号部19は、乗算部183から入力される重み付け後の尤度比を用いて誤り訂正符号の復号処理を行い、ビット列を外部へ出力する。誤り訂正符号としては、ターボ符号、LDPC(Low Density Parity Check)符号、畳み込み符号などの既知の符号が用いられ、これらの符号は尤度比を用いて復号することができる。
【0045】
[周波数領域等化部]
図2は周波数領域等化部14の構成例を示すブロック図である。
図2に示す周波数領域等化部14は、FFT部141と、等化部142と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部143とを備える。
【0046】
FFT部141は、直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号をFFT処理し、周波数領域の等価ベースバンド信号に変換する。FFT部141のFFTサイズを2のべき乗倍、且つサブキャリア数の2倍以上となる大きな値にする。FFT部152のFFTサイズを2
nとすると、FFT部141のFFTサイズは2
n+m(mは1以上の正の整数)となる。例えば、サブキャリア数が5617本の場合、FFT部152のFFTサイズは8192(2
13)であるのに対し、FFT部141のFFTサイズは16384(2
14)以上の2のべき乗の値(例えば、32768(2
15)など)とする。
【0047】
サブキャリア数Nが2
n−1<N≦2
nである場合に、FFT部141のFFTサイズを2
n+m(mは1以上の正の整数)とすることにより、周波数領域等化部14はOFDMのキャリア間隔の2
(m−1)分の1の分解能を有することとなる。よって、周波数特性歪みを補正することでキャリア間の直交性が復元され、GI越えマルチパスによる歪みを等化することができる。
【0048】
等化部142は、FFT部141の出力する周波数領域の等価ベースバンド信号を等化係数制御部16から入力される等化係数で、キャリア間隔の2のべき乗分の1の周波数間隔で除算することで周波数特性歪みを等化し、周波数領域の等化信号をIFFT部143に出力する。
【0049】
IFFT部143は、等化部142の出力信号をFFT部141と同じサイズでIFFT処理して時間領域信号に戻し、時間領域の等化信号をOFDM復調部15に出力する。
【0050】
[等化係数制御部]
図3は等化係数制御部16の構成例を示すブロック図である。等化係数制御部16は、第1の除算部161と、第2の除算部162と、等化誤差算出部163と、IFFT部164と、乗算部165と、加算部166と、遅延部167と、FFT部168とを備える。
【0051】
第1の除算部161は、FFT部152から入力されるFFT信号をチャネル等化部154から入力される推定送信信号で除算することにより周波数特性を算出し、第2の除算部162に出力する。
【0052】
第2の除算部162は、第1の除算部161から入力される周波数特性をチャネル推定部153から入力されるチャネル応答で除算して第2の周波数特性Fkを算出し、等化誤差算出部163に入力する。
【0053】
等化誤差算出部163は、第2の除算部162から入力される第2の周波数特性Fkから式(2)によりサブキャリアごとの等化誤差E
kを算出し、IFFT部164に出力する。
【0055】
IFFT部164は、等化誤差算出部163から入力される等化誤差をIFFT処理して時間領域に変換し、乗算部165へ出力する。
【0056】
乗算部165は、IFFT部164から入力される時間領域の等化誤差にあらかじめ定められた適応係数を乗じて加算部166に出力する。
【0057】
加算部166は、乗算部165から入力される時間領域の等化誤差と遅延部167から入力される遅延プロファイルを加算して新たな遅延プロファイルを算出し、遅延部167、及びFFT部168へ出力する。
【0058】
遅延部167は、加算部166から入力される遅延プロファイルを単位更新時間遅延させて加算部166に出力する。
【0059】
FFT部168は、加算部166から入力される遅延プロファイルをFFTサイズの2のべき乗倍のサイズでFFTすることにより周波数領域に変換して、等化係数として周波数領域等化部14及び伝送路信頼度算出部17に出力する。
【0060】
[伝送路信頼度算出部]
図4は伝送路信頼度算出部17の構成例を示すブロック図である。
図4に示す伝送路信頼度算出部17は、間引き部171と、第1の除算部172と、振幅算出部173と、加算部174と、乗算部175と、第2の除算部176とを備える。
【0061】
間引き部171は、OFDM信号のサブキャリア間隔を周波数領域等化部14が処理する周波数間隔で除した2のべき乗数(例えば、4)を間引率として、外部から入力される等化係数の間引き処理を行い、第1の除算部172に出力する。
【0062】
第1の除算部172は、OFDM信号のサブキャリアごとに、チャネル推定部153から入力されるチャネル応答を間引き部171から入力される間引き処理後の等化係数で除算して伝送路全体の伝送路応答を算出し、振幅算出部173に出力する。
【0063】
振幅算出部173は、第1の除算部172から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を算出し、加算部174及び第2の除算部176に出力する。
【0064】
加算部174は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を全サブキャリアに渡って加算して、加算結果を乗算部175に出力する。
【0065】
乗算部175は、加算部174から入力される加算結果に定数であるOFDM信号のサブキャリア数の逆数を乗じ、第2の除算部176に出力する。
【0066】
第2の除算部176は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を、振幅の平均値で正規化する。すなわち、第2の除算部176は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を乗算部175から入力される値で除算して伝送路信頼度を算出し、外部に出力する。
【0067】
[雑音分散算出部]
図5は雑音分散算出部181の構成例を示すブロック図である。
図5に示す雑音分散算出部181は、減算部1811と、振幅算出部1812と、同期加算部1813とを備える。
【0068】
減算部1811は、あらかじめ決められた振幅及び位相を持つパイロット信号から、チャネル等化部154から入力される推定送信信号を減じて、誤差を振幅算出部1812に出力する。
【0069】
振幅算出部1812は、減算部1811から入力される誤差の振幅を算出して、同期加算部1813に出力する。
【0070】
同期加算部1813は、振幅算出部1812から入力される誤差の振幅をサブキャリアごとに同期加算することで雑音分散を算出し、外部に出力する。
【0071】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図6に示す第2の実施形態に係る受信装置2は、第1の実施形態の受信装置1(
図1参照)と比較して、尤度比重み付け部18’の構成のみ異なる。つまり、尤度比を伝送路信頼度により重み付けする際の演算方法が異なっている。その他の点については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
受信装置2の尤度比重み付け部18’は、雑音分散算出部181と、除算部184と、尤度比算出部182とを備える。雑音分散算出部181は、第1の実施形態と同様に、チャネル等化部154から入力される推定送信信号の雑音分散を算出し、除算部184に出力する。
【0073】
除算部184は、雑音分散算出部181から入力される雑音分散を伝送路信頼度算出部17から入力される伝送路信頼度で除算し、除算後の雑音分散を尤度比算出部182に出力する。第1の実施形態の受信装置1では、尤度比算出部182により算出した尤度比に、伝送路信頼度算出部17により算出した伝送路信頼度を乗算して重み付けを行う。一方、第2の実施形態の受信装置2では、雑音分散算出部181により算出した雑音分散を伝送路信頼度算出部17により算出した伝送路信頼度で除算し、除算後の雑音分散を用いて尤度比算出部182により尤度比を算出することにより、尤度比に重み付けを行う。尤度比算出部182の計算式は式(1)で示した通りであるが、σ
k2は伝送路信頼度で除算した後の雑音分散である。
【0074】
このように、第1の実施形態に係る受信装置1、及び第2の実施形態に係る受信装置2は、チャネル推定を行う前に、受信信号の等価ベースバンド信号の周波数領域において等化処理を行うため、遅延時間がガードインターバル長を越えるマルチパスによる受信特性の劣化を低減することができる。また、等化係数及びチャネル応答を乗算して伝送路信頼度を算出し、該伝送路信頼度を用いて尤度比を重み付けするため、周波数選択性フェージングによるバーストビット誤りを効率的に訂正することができる。
【0075】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は本発明の第3の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図7に示す受信装置3は、受信系列数分の周波数変換部11(11−1,11−2)と、受信系列数分のA/D変換部12(12−1,12−2)と、受信系列数分の直交復調部13(13−1,13−2)と、時間領域空間フィルタ部20と、受信系列数分の周波数領域等化部14(14−1,14−2)と、周波数領域空間フィルタ部21と、適応制御部22と、尤度比重み付け部18と、多重部23と、誤り訂正復号部19とを備える。本実施形態では、受信系列数(受信アンテナ数)が2の場合について説明する。
【0076】
受信系列数分の周波数変換部11は、受信したOFDM信号をIF信号に周波数変換し、それぞれA/D変換部12に出力する。
【0077】
受信系列数分のA/D変換部12は、周波数変換部11から入力されるIF信号をA/D変換しデジタルIF信号に変換し、それぞれ直交復調部13に出力する。
【0078】
受信系列数分の直交復調部13は、A/D変換部12から入力されるデジタルIF信号を直交復調して等価ベースバンド信号を生成し、時間領域空間フィルタ部20に出力する。
【0079】
時間領域空間フィルタ部20は、直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号を、適応制御部22から入力される重み係数を用いて重み付けてアレー合成処理することで受信系列の分離を行い、受信系列数分の合成信号を生成し、それぞれ周波数領域等化部14に出力する。時間領域空間フィルタ部20により、受信系列間の干渉(ストリーム間干渉)が除去される。時間領域空間フィルタ部20の詳細については後述する。
【0080】
周波数領域等化部14の詳細は
図2を参照して説明した通りである。ただし、周波数領域等化部14のFFT部141に入力される信号は、第1及び第2の実施形態に係る受信装置1及び2においては直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号であるのに対し、第3の実施形態に係る受信装置3においては時間領域空間フィルタ部20から入力される合成信号となる。つまり、周波数領域等化部14は、時間領域空間フィルタ部20から入力される合成信号を周波数領域へ変換した周波数領域合成信号に等化係数を用いて等化処理を行った後、再び時間領域へ変換した等化信号を生成し、周波数領域空間フィルタ部21及び適応制御部22に出力する。
【0081】
周波数領域空間フィルタ部21は、受信系列数分の周波数領域等化部14から入力される等化信号を、周波数領域において空間フィルタ処理し、受信系列の分離及びチャネル等化を行う。周波数領域空間フィルタ部21は、FFT信号、チャネル応答行列(伝送路応答行列)、及び推定送信信号を適応制御部22に出力するとともに、推定送信信号を尤度比重み付け部18に出力する。周波数領域空間フィルタ部21の詳細については後述する。
【0082】
適応制御部22は、時間領域空間フィルタ部20で用いる重み係数、及び周波数領域等化部14で用いる等化係数を算出する。適応制御部22の詳細については後述する。
【0083】
受信系列数分の伝送路信頼度算出部17は、周波数領域空間フィルタ部21から入力されるチャネル応答行列、及び適応制御部22から入力される等化係数を乗算してOFDM信号のサブキャリアごとの伝送路信頼度を算出し、尤度比重み付け部18に出力する。伝送路信頼度算出部17の詳細については後述する。
【0084】
尤度比重み付け部18は、受信系列数分の雑音分散算出部181(181−1,181−2)と、受信系列数分の尤度比算出部182(182−1,182−2)と、受信系列数分の乗算部183(183−1,183−2)とを備える。
【0085】
受信系列数分の雑音分散算出部181は、周波数領域空間フィルタ部21から入力される推定送信信号の雑音分散を算出し、それぞれ尤度比算出部182に出力する。雑音分散算出部181の詳細は
図5を参照して説明した通りである。
【0086】
受信系列数分の尤度比算出部182は、周波数領域空間フィルタ部21から入力される推定送信信号からキャリア変調方式に従ってビットごとの尤度比を、雑音分散算出部181から入力される雑音分散σ
2を用いて算出し、それぞれ乗算部183へ出力する。例えば、尤度比算出部182は、上述した式(1)により尤度比を算出する。
【0087】
受信系列数分の乗算部183は、尤度比算出部182から入力される尤度比に伝送路信頼度算出部17から入力される伝送路信頼度を乗じることにより、尤度比に重み付けを行い、重み付け後の尤度比を多重部23にそれぞれ出力する。
【0088】
多重部23は、受信系列数分の尤度比重み付け部18から入力される重み付け後の尤度比を多重し、誤り訂正復号部19に出力する。
【0089】
誤り訂正復号部19は、多重部23から入力される多重化された尤度を用いて誤り訂正復号処理を行い、ビット列を外部に出力する。
【0090】
[時間領域空間フィルタ部]
図8は時間領域空間フィルタ部20の構成例を示すブロック図である。時間領域空間フィルタ部20は、時間領域においてアレー合成を行う受信系列数分のアレー合成部を備える。具体的には、受信系列数の2乗分の乗算部201(201−1,201−2,201−3,201−4)と、受信系列数分の加算部202(202−1,202−2)とを備える。乗算部201−1,201−2、及び加算部202−1により第1の受信系列のアレー合成部を構成し、乗算部201−3,201−4、及び加算部202−2により第2の受信系列のアレー合成部を構成する。時間領域空間フィルタ部20には直交復調部13から受信系列数分の等価ベースバンド信号が入力され、適応制御部22ら受信系列数分の重み係数が入力される。直交復調部13から入力される受信系列数分の等価ベースバンド信号はそれぞれ2分配され、乗算部201に入力される。
【0091】
乗算部201は、直交復調部13から入力される等価ベースバンド信号に重み係数を乗じて加算部202に出力する。
【0092】
加算部202は、受信系列数分の乗算部201の出力を加算した合成信号を、時間領域空間フィルタ部20の出力信号として出力する。
【0093】
[周波数領域空間フィルタ部]
図9は周波数領域空間フィルタ部21の構成例を示すブロック図である。
図9に示す周波数領域空間フィルタ部21は、受信系列数分のGI除去部211(211−1,211−2)と、受信系列数分のFFT部212(212−1,212−2)と、チャネル推定部213と、逆フィルタ算出部214と、空間フィルタ部215とを備える。
【0094】
GI除去部211は、周波数領域等化部14から入力される等化信号からGIを除去し、有効シンボルに相当する区間の信号を抽出してそれぞれFFT部212に出力する。
【0095】
FFT部212は、有効シンボル区間分の等化信号をFFT処理により周波数領域のFFT信号に変換し、チャネル推定部213、空間フィルタ部215、及び適応制御部22に出力する。
【0096】
チャネル推定部213は、受信系列数分のFFT信号が入力され、チャネル応答行列を推定し、逆フィルタ算出部214、及び適応制御部22に出力する。チャネル推定の方法としては送信信号にパイロット信号を挿入し、それぞれの送信系列の信号を時空間符号化する方法が知られている。例えば式(3)で示されるAlamoutiの符号を用いると、受信信号に対してその逆行列を乗算することにより、式(4)に示すようにチャネル応答行列を推定することができる。
【0099】
ここで、y
i,kはi番目の受信系列信号におけるk番目のサブキャリアの受信信号を示す。また、全サブキャリアにパイロット信号が多重されていない場合にはサブキャリア方向に内挿補間すればよい。
【0100】
逆フィルタ算出部214は、チャネル推定部213からサブキャリアごとのチャネル応答行列が入力され、その逆フィルタを算出して出力する。例えば、ゼロフォーシング規範に基づく逆フィルタは式(5)で示される。ここで上付きのHは複素共役転置を示す。
【0102】
また、雑音の影響も考慮するMMSE規範に基づく逆フィルタは式(4)で示される。ここで、上付きの*は複素共役を、N
t、N
rはそれぞれ送信系列数、受信系列数を、ρ0は総送信電力を1系列で送信した場合の平均S/Nを示す。また、I
Nrは(N
r×N
r)の単位行列である。
【0104】
空間フィルタ部215は、FFT部212から受信系列数分の周波数領域信号が入力され、逆フィルタ算出部214から逆フィルタを示す行列が入力され、逆フィルタの係数からなる列ベクトル及び周波数領域等化信号からなる行ベクトルを乗算する。つまり、サブキャリアごとに、各受信系列の周波数領域信号及び対応する逆フィルタの係数を乗算した後に受信系列数分加算する合成処理を行い、各受信系列の推定送信信号を出力する。
【0105】
[適応制御部]
図10は適応制御部22の構成例を示すブロック図である。
図10に示す適応制御部22は、選択部221と、受信系列数分のQAM(quadrature amplitude modulation)復調部222(222−1,222−2)と、受信系列数分のQAM変調部223(223−1,223−2)と、受信系列数分のパイロット挿入部224(224−1,224−2)と、受信系列数分の重み係数制御部225(225−1,225−2)と、受信系列数分の等化係数制御部16(16−1,16−2)とを備える。
【0106】
選択部221は、周波数領域空間フィルタ部21から入力されるチャネル応答行列、推定送信信号、及びFFT信号を選択して出力する。選択部221の詳細については後述する。
【0107】
QAM復調部222は、選択部221の出力する推定送信信号をQAM復調し、QAM変調部223に出力する。
【0108】
QAM変調部223は、QAM復調部222の出力信号を再変調し、パイロット挿入部224に出力する。
【0109】
パイロット挿入部224は、QAM再変調された信号にパイロット信号を挿入したパイロット挿入再変調信号(図面では「再変調信号」と記す)を生成し、重み係数制御部225及び等化係数制御部16に出力する。
【0110】
重み係数制御部225は、時間領域空間フィルタ部20で用いる重み係数を算出する。重み係数制御部225の詳細については後述する。
【0111】
等化係数制御部16は、周波数領域等化部14で用いる等化係数を算出する。等化係数制御部16の詳細は、
図3を参照して説明した通りである。ただし、適応制御部22の等化係数制御部16に入力される信号は、第1及び第2の実施形態に係る受信装置1及び2においてはチャネル等化部154から入力される推定送信信号であるのに対し、第3の実施形態に係る受信装置3においてはパイロット挿入部224から入力されるパイロット挿入再変調信号となる。
【0112】
[選択部]
図11は、選択部221の構成例を示すブロック図である。
図11に示す選択部221は、絶対値算出部2211と、全キャリア加算部2212と、最大値検出部2213と、第1セレクタ2214と、第2セレクタ2215と、第3セレクタ2216とを備える。周波数領域空間フィルタ部21からチャネル応答行列、受信系列数分の周波数領域信号、及び受信系列数分のFFT信号が入力され、受信系列を並び替えて出力する。入力されるチャネル応答行列は2分配され、一方は絶対値算出部2211へ入力され、他方は第1セレクタ2214へ入力される。
【0113】
絶対値算出部2211は、チャネル応答行列の各成分について絶対値を算出して、全キャリア加算部2212に出力する。サブキャリア番号kにおけるチャネル応答行列を式(7)で定義すると、チャネル応答行列の絶対値は式(8)で示される。
【0116】
全キャリア加算部2212は、絶対値算出部2211から入力されるチャネル応答行列の絶対値を、成分ごと全サブキャリアに渡って加算した加算行列を最大値検出部2213に出力する。各成分は式(9)により加算される。ここで、Kは全サブキャリア数を示す。
【0118】
最大値検出部2213は、全キャリア加算部2212から入力される加算行列の各行について、式(10)で示される、最大値を示す列インデックスを出力する。
【0120】
ここでI
iは、受信系列iを受信するために最も寄与の大きい受信系列を示すものである。最大値検出部2213の出力する列インデックスは3分配され、第1セレクタ2214、第2セレクタ2215、及び第3セレクタ2216に入力される。
【0121】
第1セレクタ2214は、周波数領域空間フィルタ部21からチャネル応答行列が入力され、最大値検出部2213から列インデックスが入力され、各行について列インデックスが示す成分を、式(11)に基づいて出力する。ここで、上付きのTは転置を示す。例えば、2×2MIMOで列インデックスI
1=1、I
2=2の場合、第1セレクタ2214は、h
11及びh
22を出力する。つまり、第1セレクタ2214は、チャネル応答行列について希望波成分をチャネル応答として出力する。
【0123】
第2セレクタ2215は、最大値検出部2213から入力される列インデックスの値によって、周波数領域空間フィルタ部21から入力される受信系列数分の推定送信信号を、そのまま出力するか、入れ替えて出力するかのいずれかを選択する。例えば、2×2MIMOにおいて、列インデックスI
1=1、I
2=2の場合には、第2セレクタ2215は推定送信信号をそのまま出力し、列インデックスI
1=2、I
2=1の場合には、第2セレクタ2215は受信系列数分の推定送信信号を入れ替えて出力する。
【0124】
第3セレクタ2216は、最大値検出部2213から入力される列インデックスの値によって、周波数領域空間フィルタ部21から入力される受信系列数分のFFT信号を、そのまま出力するか、入れ替えて出力するかのいずれかを選択する。例えば、2×2MIMOにおいて、列インデックスI
1=1、I
2=2の場合には、第3セレクタ2216はFFT信号をそのまま出力し、列インデックスI
1=2、I
2=1の場合には、第3セレクタ2216は受信系列数分のFFT信号を入れ替えて出力する。
【0125】
[重み係数制御部]
図12は重み係数制御部225の構成例を示すブロック図である。ここでは、第1の受信系列の重み係数制御部225(225−1)を示している。それぞれの重み係数制御部225は、受信系列数分の遅延部2251(2251−1,2251−2)と、受信系列数分のGI除去部2252(2252−1,2252−2)と、重み係数算出部2253とを備える。なお、受信系列数分の重み係数制御部225のうち、1つの重み係数制御部225−1のみ遅延部2251及びGI除去部2252を備えるようにしてもよく、その場合、重み係数制御部225−1のGI除去部2252の出力信号は他の重み係数制御部225−2の重み係数算出部2253に入力される。
【0126】
遅延部2251は、周波数領域等化部14−1,14−2から入力される等化信号を遅延させてそれぞれGI除去部2252に出力する。
【0127】
GI除去部2252は、遅延部2251から入力される等化信号からGIを除去して有効シンボルに相当する区間の信号を抽出し、それぞれ重み係数算出部2253に出力する。
【0128】
重み係数算出部2253は、受信系列数分のGI除去部2252から有効シンボル区間に相当する等化信号が入力され、選択部221からチャネル応答が入力され、パイロット挿入部224からパイロット挿入再変調信号が入力され、重み係数を算出して出力する。
【0129】
重み係数算出部2253は、第1の乗算部2254と、IFFT部2255と、自己相関算出部2256と、相互相関算出部2257と、逆行列算出部2258と、第2の乗算部2259と、複素共役部2260とを備える。GI除去部2252から入力される等化信号は2分配され、一方は自己相関算出部2256へ、他方は相互相関算出部2257へ入力される。
【0130】
第1の乗算部2254は、適応制御部22から入力されるチャネル応答及びパイロット挿入再変調信号をサブキャリアごとに乗算して周波数領域における参照信号を生成し、IFFT部2255に出力する。
【0131】
IFFT部2255は、第1の乗算部2254により生成された参照信号をIFFTにより時間領域に変換し、時間領域の参照信号を相互相関算出部2257に入力する。サブキャリア番号kについてのチャネル応答をh
k、パイロット挿入再変調信号をd
kとすると、IFFT部2255が出力する時間領域の参照信号r(t)は式(12)で示される。
【0133】
自己相関算出部2256は、受信系列数分の等化信号の自己相関行列を算出し、逆行列算出部2258に出力する。受信系列数分の等化信号からなるベクトルを式(13)で定義すると、自己相関算出部2256の出力は式(14)で示される。ここでE[・]はアンサンブル平均を示す。
【0136】
相互相関算出部2257は、受信系列数分のGI除去部2252から等化信号が入力され、IFFT部2255から時間領域の参照信号が入力され、式(15)により相互相関ベクトルを算出して第2の乗算部2259へ出力する。
【0138】
逆行列算出部2258は、自己相関算出部2256から入力される自己相関行列の逆行列を算出して第2の乗算部2259へ出力する。
【0139】
第2の乗算部2259は、逆行列算出部2258から入力される自己相関行列の逆行列と、相互相関算出部2257から入力される相互相関ベクトルとを乗じ、式(16)で示されるベクトルωを複素共役部2260へ出力する。
【0141】
複素共役部2260は、第2の乗算部2259から入力されるベクトルωの複素共役値を出力する。
【0142】
[伝送路信頼度算出部]
図13は伝送路信頼度算出部17の構成例を示すブロック図である。
図13に示す伝送路信頼度算出部17は、選択部177と、間引き部171と、第1の除算部172と、振幅算出部173と、加算部174と、乗算部175と、第2の除算部176とを備える。
【0143】
選択部177は、周波数領域空間フィルタ部21から入力されるチャネル応答行列からチャネル応答を選択し、第1の除算部172に出力する。選択部177は、
図11を参照して説明した選択部221と同様にチャネル応答を選択する。つまり、チャネル応答行列の各成分の絶対値を全サブキャリアについて加算した値に基づき、希望波成分をチャネル応答として出力する。
【0144】
間引き部171は、OFDM信号のサブキャリア間隔を周波数領域等化部14が処理する周波数間隔で除した2のべき乗数(例えば、4)を間引率として、外部から入力される等化係数の間引き処理を行い、第1の除算部172に出力する。
【0145】
第1の除算部172は、OFDM信号のサブキャリアごとに、選択部177から入力されるチャネル応答を間引き部171から入力される間引き処理後の等化係数で除算して伝送路全体の伝送路応答を算出し、振幅算出部173に出力する。
【0146】
振幅算出部173は、第1の除算部172から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を算出し、加算部174及び第2の除算部176に出力する。
【0147】
加算部174は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を全サブキャリアに渡って加算して、加算結果を乗算部175に出力する。
【0148】
乗算部175は、加算部174から入力される加算結果に定数であるOFDM信号のサブキャリア数の逆数を乗じ、第2の除算部176に出力する。
【0149】
第2の除算部176は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を、振幅の平均値で正規化する。すなわち、第2の除算部176は、振幅算出部173から入力される伝送路全体の伝送路応答の振幅を乗算部175から入力される値で除算して伝送路信頼度を算出し、算出した伝送路信頼度を外部に出力する。
【0150】
[第4の実施形態]
図14は本発明の第4の実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態では、受信系列数(受信アンテナ数)が2の場合について説明する。
図14に示す第4の実施形態に係る受信装置4は、第3の実施形態の受信装置3(
図7参照)と比較して、尤度比重み付け部18’の構成のみ異なる。つまり、尤度比を伝送路信頼度により重み付けする際の演算方法が異なっている。その他の点については第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0151】
受信装置4の尤度比重み付け部18’は、受信系列数分の雑音分散算出部181(181−1,181−2)と、受信系列数分の除算部184(184−1,184−2)と、受信系列数分の尤度比算出部182(182−1,182−2)とを備える。雑音分散算出部181は、第3の実施形態と同様に、周波数領域空間フィルタ部21から入力される推定送信信号の雑音分散を算出し、除算部184に出力する。
【0152】
受信系列数分の除算部184は、雑音分散算出部181から入力される雑音分散を伝送路信頼度算出部17から入力される伝送路信頼度で除算し、それぞれ尤度比算出部182に出力する。
【0153】
第3の実施形態の受信装置3では、尤度比算出部182により算出した尤度比に、伝送路信頼度算出部17により算出した伝送路信頼度を乗算して重み付けを行う。一方、第4の実施形態の受信装置4では、雑音分散算出部181により算出した雑音分散を伝送路信頼度算出部17により算出した伝送路信頼度で除算し、除算後の雑音分散を用いて尤度比算出部182により尤度比を算出することにより、尤度比に重み付けを行う。尤度比算出部182の計算式は式(1)で示した通りであるが、σ
k2は伝送路信頼度で除算した後の雑音分散である。
【0154】
このように、第3の実施形態に係る受信装置3、及び第4の実施形態に係る受信装置4は、チャネル推定を行う前に、受信信号の等価ベースバンド信号の周波数領域において等化処理を行うため、遅延時間がガードインターバル長を越えるマルチパスによる受信特性の劣化を低減することができる。また、等化係数及びチャネル応答行列の希望波成分を乗算して伝送路信頼度を算出し、該伝送路信頼度を用いて尤度比を重み付けするため、周波数選択性フェージングによるバーストビット誤りを効率的に訂正することができる。
【0155】
図15は、受信装置4において、伝搬路の遅延広がりがGI長を越える場合のビット誤り率(BER)特性を示す図である。このシミュレーションでは、変調方式はISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting - Terrestrial)に準拠するものとし、モード3、シンボル長1008μs、GI長126μs、GI比1/8とした。キャリア変調は64QAMとし、MIMO構成をとるため、パイロット信号はSPに直交符号化を施した。また誤り訂正符号は符号長が29952のLDPC符号とした。また、MIMO伝搬路行列は式(17)に示すものを用いた。ここで、D
1=0.01、D
2=10
−0.3、D
3=0.1とした。遅延時間は、T
1=184.6μs、T
2=196.9μsとした。
【0157】
図15より、周波数領域等化部14の等化係数を用いて伝送路信頼度算出部17により伝送路信頼度を求めることにより、誤り率特性の改善が得られることが分かる。
【0158】
なお、上述した受信装置1,2,3,4として機能させるためにコンピュータを用いることができ、そのようなコンピュータは、受信装置1,2,3,4の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。
【0159】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、受信系列数が2の場合について説明したが、受信系列数が2以外の場合についても同様に本発明を適用することができる。また、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。