(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フォトクロミック化合物として、インデノ[2,1−f]ナフト[2,1−b]ピラン骨格を有するクロメン化合物を含む請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
重合性単量体成分(A)として、重合性基が(メタ)アクリル基以外の基である非(メタ)アクリル系重合性単量体(Y)を、(メタ)アクリル重合性単量体(X)100質量部当たり1〜20質量部含む請求項1に記載のフォトクロミック硬化性組成物。
前記フォトクロミック積層体を100℃の沸騰水に1時間浸漬し、次いで0℃の氷水に10分間浸漬するという操作を4サイクル繰り返された場合において、前記フォトクロミック層とレンズ基材との間に剥離が観察されない請求項7に記載のフォトクロミック積層体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、重合性単量体成分(A)とフォトクロミック化合物(B)とを必須成分として含有しており、必要に応じて、それ自体公知の添加剤を含んでいる。
【0025】
<重合性単量体成分(A)>
本発明において、重合性単量体成分(A)としては、少なくとも(メタ)アクリル重合性単量体(X)が使用され、必要により、 (メタ)アクリル基以外の重合性基を有する非(メタ)アクリル系重合性単量体が使用される。
【0026】
(メタ)アクリル重合性単量体(X);
本発明において、(メタ)アクリル重合性単量体(X)としては、1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能単量体(Xp)と1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する単官能単量体(Xm)とを使用することが極めて重要である。
【0027】
即ち、このような多官能の(メタ)アクリル単量体(Xp)と単官能の(メタ)アクリル単量体(Xm)とを併用することにより、優れたフォトクロミック性を維持しつつ、レンズ基材に対する密着性に優れたフォトクロミック層を形成することが可能となり、例えば、フォトクロミック層を100μm以上の厚みの厚膜とした場合にも、優れたフォトクロミック性を確保することが可能となる。
例えば、多官能単量体(Xp)は、膜強度の高いフォトクロミック層を形成するために必要であるが、多官能単量体(Xp)のみのでは、優れたフォトクロミック性を発現させることができず、またレンズ基材との密着性を確保することもできない。おそらく、膜強度の高いフォトクロミック層中では、フォトクロミック化合物の分子の自由度が極めて低く、その光互変性が低下してしまい、この結果としてフォトクロミック性が損なわれてしまい、さらに、成膜時の硬化収縮が大きく、この結果として、レンズ基材に対する密着性も損なわれてしまうものと考えられる。
しかるに、本発明においては、単官能単量体(Xm)の併用により、フォトクロミック層に適度な柔軟性が付与され、これにより、フォトクロミック層中のフォトクロミック化合物の分子の自由度が高められ、結果として、優れたフォトクロミック性を確保することができ、さらには成膜時の重合収縮も抑制され、レンズ基材に対する密着性も高められるものと信じられる。
【0028】
本発明において、このような単官能単量体(Xm)と多官能単量体(Xp)とは、両者の合計量を100質量部としたとき、多官能単量体(Xp)が80〜97質量部、好ましくは85〜96質量部、さらに好ましくは90〜95質量部の量で使用され、単官能単量体(Xm)は、3〜20質量部、好ましくは4〜15質量部、さらに好ましくは、5〜10質量部の量で使用され、これにより、このフォトクロミック硬化性組成物の硬化体から形成されるフォトクロミック層とレンズ基材との密着性を著しく高め、さらには、フォトクロミック性も向上させることができる。また、フォトクロミック層を100μm以上の厚膜としたした場合にもレンズ基材に対して高い密着性を確保することができるため、フォトクロミック耐久性も向上させることができる。
例えば、多官能単量体(Xp)の使用量が多過ぎたり、単官能単量体(Xm)の使用量が少な過ぎたりすると、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)が優れたフォトクロミック特性を発揮することができない。一方、多官能単量体(Xp)の使用量が少な過ぎたり、単官能単量体(Xm)の使用量が多過ぎたりすると、レンズ基材とフォトクロミック層との密着性が低下し、またフォトクロミック性も低下してしまうこととなる。
【0029】
1.単官能単量体(Xm);
本発明において、(メタ)アクリル重合性単量体(X)中の単官能単量体(Xm)としては、下記式(1)で表されるエポキシ基含有単量体(Xm
1)と下記式(2)で表されるイソシアネート基含有単量体(Xm
2)とが組み合わせで使用される。
【0030】
式(1);エポキシ基含有単量体(Xm
1)
【化5】
式中、
R
1及びR
2は、水素原子又はメチル基であり、
R
3及びR
4は、炭素数1〜4のアルキレン基又は下記式(1a);
【化6】
(1a)
で示される基であり、
a及びbは、それぞれ、平均して、0〜20の数である。
【0031】
上記式(1)から理解されるように、このエポキシ基含有単量体(Xm
1)は、1分子中に1個の(メタ)アクリル基と1個のエポキシ基とを有するものであり、特にエポキシ基の存在により、レンズ基材との密着性が向上するものと思われる。
【0032】
上記式(1)において、R
3及びR
4で示されるアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
また、これらの基R
3及びR
4は置換基を有していてもよく、このような置換基としては、ヒドロキシ基が代表的である。
尚、上記式(1)で示される化合物は、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる場合がある。そのため、R
3の数を示すa及びR
4の数を示すbは平均値で示した。
【0033】
上記式(1)で示される単官能単量体(Xm
1)の具体例としては、以下のものを例示することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
グリシジルメタクリレート
グリシジルオキシメチルメタクリレート
2−グリシジルオキシエチルメタクリレート
3−グリシジルオキシプロピルメタクリレート
4−グリシジルオキシブチルメタクリレート
平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート
平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート
平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレー
ト
平均分子量664のポリプロピレングリコールグリシジルメタクリレー
ト
ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート
3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメ
タクリレート
グリシジルアクリレート
グリシジルオキシメチルアクリレート
2−グリシジルオキシエチルアクリレート
3−グリシジルオキシプロピルアクリレート
4−グリシジルオキシブチルアクリレート
平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート
平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート
平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート
3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシ
プロピルアクリレート
3−(グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒド
ロキシプロピルアクリレート
【0034】
本発明においては、上記で例示した単官能単量体(Xm
1)の中でも、グリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2−グリシジルオキシエチルメタクリレート、3−グリシジルオキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0035】
式(2);イソシアネート含有単量体(Xm
2)
【化7】
式中、
R
5は、水素原子又はメチル基であり、
R
6は、下記式(2a);
−CO−O−R
7−NCO (2a)
式中、R
7は、炭素数1〜10のアルキレン基、
あるいは式:−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−,で示され
る基である、
で示されるイソシアネート含有脂肪族基、又は下記式(2b);
【化8】
式中、
R
8は、炭素数1〜10アルキレン基である、
で示されるイソシアネート含有芳香族基である。
【0036】
エポキシ基含有単量体(Xm
1)と組み合わせて使用されるイソシアネート単量体(Xm
2)は、上記の式(2)から理解されるように、1分子中に1個の(メタ)アクリル基と1個のイソシアネート基を有するものであり、かかる単量体(Xm
2)を組み合わせることにより、成膜時の硬化収縮を適度に抑制し、優れたフォトクロミック性を確保すると同時に、フォトクロミック層とレンズ基材との密着性を大きく向上させ、例えば、フォトクロミック層を100μ以上の厚膜とした場合にも高い密着性を確保することが可能となる。おそらく、この単量体(Xm
2)中のイソシアネート基がレンズ基材表面に存在する水酸基などの活性水素を有する基と反応し、これにより、レンズ基材と強固に結合するとともに、この単量体(Xm
2)中の(メタ)アクリル基が、多官能単量体(Xm
1)中の(メタ)アクリル基と共重合することにより、重合収縮が緩和されるためではないかと考えられる。
【0037】
上記の式(2)において、式(2a)中のR
7が示すアルキレン基及び式(2b)中のR
8が示すアルキレン基の炭素数は1〜10であることが好ましい。このようなアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができる。
また、これらのアルキレン基もヒドロキシ基などの置換基を適宜有していてもよいが、一般的には、置換基を有していないほうが好適である。
【0038】
本発明において、上述した式(2)で表されるイソシアネート単量体(Xm
2)としては、式(2a)のイソシアネート含有脂肪族基を有するものの例として、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルを例示することができ、また、式(2b)のイソシアネート含有芳香族基を有するものの例として、4−(2−イソシアナトイソプロピル)スチレンを挙げることができる。
このようなイソシアネート単量体(Xm
2)も、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0039】
また、本発明においては、上述したイソシアネート基含有単量体(Xm
2)とエポキシ基含有単量体(Xm
1)とは、Xm
2/Xm
1=3〜40、好ましくは4〜30、最も好ましくは5〜20の質量比で使用される。
即ち、イソシアネート基含有単量体(Xm
2)の使用量が少な過ぎる場合には(エポキシ基含有単量体(Xm
1)の使用量が多過ぎる場合)、目的とする密着性を得ることができない。
また、イソシアネート基含有単量体(Xm
2)の使用量が多過ぎる場合には(エポキシ基含有単量体(Xm
1)の使用量が少な過ぎる場合)、密着性を確保することができたとしても、フォトクロミック特性が低下してしまい、フォトクロミック耐久性も不満足なものとなってしまう。おそらく、イソシアネート基によりフォトクロミック化合物の分子の自由度が制限されてしまうためではないかと考えられる。
【0040】
その他の単官能単量体(Xm
3);
本発明においては、1分子中に(メタ)アクリル基を1個有する単官能単量体(Xm)としては、上述したイソシアネート基含有単量体(Xm
2)とエポキシ基含有単量体(Xm
1)との質量比(Xm
2/Xm
1)が上述した範囲内にあることを条件として、イソシアネート基含有単量体(Xm
1)及びエポキシ基含有単量体(Xm
2)以外の(メタ)アクリル基を1個有する単官能単量体(Xm
3)も適宜使用することができる。
【0041】
このような単官能の他のアクリル単量体としては、例えば、下記式(3)で表されるものを例示することができる。
【化9】
前記式(3)中、R
25、R
26、及びR
27は、それぞれ、水素原子又はメチル基である。
また、R
28は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、フェニル基またはナフチル基である。ここで、アルキル基及びシクロアルキル基としては、置換基を有していないものが好適であるが、フェニル基及びナフチル基としては、置換基を有していないもの及び置換基を有するものの何れも好適である。このようなフェニル基及びナフチル基が有する置換基として好適なものとしては、炭素数1〜20のアルキル基を挙げることができる。
【0042】
また、上記式(3)において、kは、平均して0〜25の数であり、lは、平均して0〜25の数であり、そしてk+lが0〜25、特に0〜15の範囲にあることが好ましい。
【0043】
上記式(3)で表される他の単官能(メタ)アクリル単量体(Xm
3)の具体例としては、以下の化合物を挙げることができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
メトキシジエチレングリコールメタクリレート
メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシ基の
平均繰返し数(k+l)が9であり、平均分子量が468のもの)
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシ基の
平均繰返し数(k+l)が23であり、平均分子量が1068のもの)
イソステアリルメタクリレート
イソボルニルメタクリレート
フェノキシエチレングリコールメタクリレート
フェノキシエチルアクリレート
フェノキシジエチレングリコールアクリレート
フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレンオキシ基の
平均繰返し数(k+l)が6であり、平均分子量が412のもの)
ナフトキシエチレングリコールアクリレート
イソステアリルアクリレート
イソボルニルアタリレート
【0044】
本発明において、適宜使用される上記他の単官能単量体(Xm
3)の使用量は、前述した質量比(Xm
2/Xm
1)が前記範囲内にあることを条件として、単官能の(メタ)アクリル単量体(Xm)の全量を100質量%として、51質量%以下、特に40質量%以下である。また、このような他の単官能(メタ)アクリル単量体を用いたとき、前述したエポキシ基含有単官能単量体(Xm
1)は、2〜25質量%の範囲にあり、且つイソシアネート基含有単量体(Xm
2)は、47〜98質量%の範囲にあることが、フォトクロミック層とレンズ基材との密着性やフォトクロミック性の点で好ましい。
【0045】
2.多官能単量体(Xp);
本発明において、(メタ)アクリル重合性単量体(X)中の多官能の(メタ)アクリル単量体(Xp)は、1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する単量体であり、それ自体公知であり、特にプラスチックレンズの成形に使用されるものを使用することができる。また、このような多官能単量体(Xp)は、1分子中にメタクリル基及びアクリル基の両方を有する化合物であってもよい。
【0046】
また、上記の多官能単量体(Xp)は、1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物であれば、一般に、(メタ)アクリル基を2個有する2官能の(メタ)アクリル単量体(Xp−1)と(メタ)アクリル基を3個有する3官能の(メタ)アクリル単量体(Xp−2)とを組み合わせ、さらに必要に応じて、(メタ)アクリル基を4官能以上有する高多官能の(メタ)アクリル単量体(Xp−3)を組み合わせた形態で使用することが好ましい。
【0047】
(Xp−1)2官能単量体;
上記の2官能単量体(Xp−1)としては、例えば、橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート(Xp−1a)、非橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート(Xp−1b)、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−1c)、2官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート(Xp−1d)を挙げることができる。
【0048】
(Xp−1a)橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート
橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレートは、下記式(4)で表される。
【化10】
【0049】
上記の式(4)において、R
9〜R
12は、それぞれ、水素原子又はメチル基である。
また、c及びdは、それぞれ、平均して0〜20の数であり、好ましくは、c+dは0〜20、特に2〜15の範囲にあるのがよい。
【0050】
さらに、式(4)中、Aは、炭素数2〜20の2価の有機基である。
上記式(4)から理解されるように、この橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレートは、分子中の2つのアルキレンオキシド鎖が2価の有機基Aで橋絡した構造を有している。
かかる有機基Aの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレ
ン基、ノニレン基等のアルキレン基;塩素原子、フッ素原子、臭素原子等
のハロゲン原子;炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェニ
レン基;非置換のフェニレン基;下記式:
【化11】
【化12】
【化13】
で表される基で表される基を挙げることができる。
尚、上記式中、R
13及びR
14は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、塩素原子又は臭素原子であり、e及びfは、それぞれ、0〜4の整数であり、上記式中の下記式:
【化14】
で示される環Bは、ベンゼン環又はシクロベキサン環であり、
環Bがベンゼン環であるときには、2価の基Xは、−O−、−S−、
−S(O)
2−、−CO−、−CH
2−、−CH=CH−、
−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(C
6H
5)−、或いは下記式:
【化15】
で示される基であり、
環Bがシクロヘキサン環であるときは、2価の基Xは、−O−、−S−、
−CH
2−、または、−CH=CH−である。
【0051】
上記式(4)で表される橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート(Xp−1a)は、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)の硬度を確保し、さらにフォトクロミック特性、特に発色濃度を改善する上で効果的である。
【0052】
このような橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレートの具体例としては、以下の化合物を例示することができ、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
1,9一ノナンジオールジメタクリレート
1,10−デカンジオールジメタクリレート
ネオペンチルグリコールジメタクリレート
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが2.3のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが2.6のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが4のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが10のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが20のもの)
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
1,9−ノナンジオールジアクリレート
1,10−デカンジオールジアクリレート
ネオペンチルグリコールジアクリレート
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
ジオキサングリコールジアクリレート
エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(c+dが4の
もの)
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが3のもの)
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが4のもの)
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが10のもの)
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが20のもの)
【0053】
本発明においては、上記で挙げた化合物の中で、特に式(4)中のAが、下記式:
【化16】
で表される骨格を有するもの、例えば、下記の化合物が、特に高い発色濃度が得られるという点で好ましい。
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが4のもの)
2,2−ビス[4−アクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン
(c+dが10のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが10のもの)
2,2−ビス[4−メタクリロキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン(c+dが20のもの)
【0054】
(Xp−1b)非橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート
非橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレートは、下記式(5)で表される。
【化17】
【0055】
上記式(5)中、R
15〜R
18は、それぞれ、水素原子又はメチル基である。
また、g及びhは、それぞれ、平均して0〜25の数であり、好ましくは、g+hは、1〜25、特に3〜15の範囲にあるのがよい。
かかるジ(メタ)アクリレートは、分子中のアルキレン鎖の間に他の2価の基(橋絡基)が介在していない点で、前述した橋絡型のものと異なっている。
【0056】
このような式(5)の非橋絡型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレートは、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)のフォトクロミック特性、特に発色濃度を改善する上で効果的であり、その具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
エチレングリコールジメタクリレート
ジエチレングリコールジメタクリレート
トリエチレングリコールジメタクリレート
テトラエチレングリコールジメタクリレート
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰
返し数(g+h)が9であり、平均分子量が536のもの)
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰
返し数(g+h)が14であり、平均分子量が736のもの)
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平均繰
返し数(g+h)が23であり、平均分子量が1136のもの)
トリプロピレングリコールジメタクリレート
テトラプロピレングリコールジメタクリレート
ポリプロピレングリコールジメタクリレート(プロピレンオキシ基の平
均繰返し数(g+h)が9であり、平均分子量が20662のもの)
エチレングリコールジアクリレート
ジエチレングリコールジアクリレート
トリエチレングリコールジアクリレート
テトラエチレングリコールジアクリレート
ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返
し数(g+h)が9であり、平均分子量が508のもの)
ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均繰返
し数(g+h)が14であり、平均分子量が708のもの)
ジプロピレングリコールジアクリレート
トリプロピレングリコールジアクリレート
テトラプロピレングリコールジアクリレート
ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレンオキシ基の平均
繰返し数(g+h)が7であり、平均分子量が536のもの)
ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレンオキシ基の平均
繰返し数(g+h)が12であり、平均分子量が808のもの)
【0057】
(Xp−1c)2官能ウレタン(メタ)アクリレート
2官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)の強度を確保する上で効果的である。
このような2官能ウレタンメタ(アクリレート)には、1分子中にアクリル基とメタクリル基とを有するものと、1分子中に2個のアクリル基またはメタクリル基を有するものとがあるが、本発明では、特に1分子中に2個のアクリル基またはメタクリル基を有するものが好適である。また、分子中に芳香環を有していないものが、フォトクロミック硬化物が耐光性に優れ、黄変等の変色を生じないという点で好適である。
具体的には、以下の2官能ウレタン(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0058】
ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させてウレタンプレ
ポリマーとしたものに、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒ
ドロキシエチル(メタ)アタリレート等をさらに反応させた反応混合物で
あって、ジイソシアネートを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい
2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレートと直接反応させた反応混合物
であって、平均分子量が400以上20,000未満であるもの;
ジイソシアネート化合物を、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい
2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレートと直接反応させた反応混合物
であって、平均分子量が400以上20,000未満であるもの;
【0059】
尚、上記のジイソシアネート化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
ヘキサメチレンジイソシアネート
イソホロンジイソシアネート
リジンイソシアネ一ト
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
ダイマー酸ジイソシアネート
イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
ノルボルネンジイソシアネート
メチルシクロヘキサンジイソシアネート
【0060】
また、上記のジイソシアネート化合物と反応させるジオール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
炭素数2〜4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレ
ンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール
ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール
ポリカーボネートジオール
ポリブタジエンジオール
エチレングリコール
プロピレングリコール
1,3−プロパンジオール
1,4−ブタンジオール
1,5−ペンタンジオール
1,6−ヘキサンジオール
1,8−オクタンジオール
1,9−ノナンジオール
ネオペンチルグリコール
ジエチレングリコール
ジプロピレングリコール
1,4−シクロヘキサンジオール
1,4−シクロヘキサンジメタノール
【0061】
上記のような2官能ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば下記の商品名で市販されている。
新中村化学工業(株)製U−2PPA(分子量482)、UX22P(
分子量1,100)、U−122P(分子量1,100)、U−108A
、U−200PA、UA−511、U−412A、UA−4100、UA
−4200、UA−4400、UA−2235PE、UX60TM、UA
−6100、UA−6200、U−108、UA−4000、UA−51
2;
ダイセルユーシービー社製EB4858(分子量454);
日本化薬(株)製UX−2201、UX3204、UX4101、
6101、7101、8101;
【0062】
(Xp−1d)2官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート
この2官能単量体は、2個の(メタ)アクリル基を有するポリカーボネート(メタ)アクリレートであり、下記式(6)で表される。
【化18】
【0063】
上記の式(6)中、
mは、平均して1〜20の数であり、
A及びA’は、それぞれ、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、1
分子中にAが複数存在する場合には、複数のAは、互いに同一でも異なっ
ていてもよく、
R
29、R
30は、水素原子またはメチル基である。
【0064】
かかるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、フォトクロミック硬化性組成物の成型性、フォトクロミック層のフォトクロミック性(発色濃度や退色性)や表面硬度の調整などのために使用される。
【0065】
上記式(6)において、アルキレン基A及びA’の例としては、これに限定されるものではないが、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、ドデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、1−メチルトリエチレン基、1−エチルトリエチレン基、1−イソプロピルトリエチレン基等が挙げられる。
本発明においては、特に、上記の各種特性調整の観点から、それぞれ、アルキレン基A及びA’の炭素数は2〜15の範囲にあることが望ましく、より好ましくは3〜9、さらに好ましくは4〜7の範囲にあることが好ましい。
また、フォトクロミック性の観点から、上記のR
29、R
30は、水素原子であることが好適である。
【0066】
さらに、上記のような構造を有するポリカーボネート(メタ)アクリレートは、通常、カーボネート単位の繰り返し数mが異なる混合物の形で得られるが、このような混合物において、mの平均値は、前述したように、1〜20の範囲内にあるが、好ましくは2〜8、より好ましくは、2〜5の範囲内にあり、さらに、mの平均値がこのような範囲にあることを条件として、mの最大値は30以下、特に15以下、最も好ましくは10以下の範囲であることが、前述した特性調整の点で好適である。
【0067】
また、上記のような混合物において、繰り返し単位中のAが互いに同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、他の単量体との相溶性の観点から、この混合物は、異なる基Aを含んでいることが好ましい。
例えば、混合物中の基Aの全量を100モル%としたとき、炭素数3〜5のアルキレン基が10〜90モル%、炭素数6〜9のアルキレン基が10〜90モル%の量で含まれていることが好ましく、最も好ましくは、炭素数4〜5のアルキレン基が10〜90モル%、炭素数6〜7のアルキレン基が10〜90モル%の量で含まれているのがよい。このように、異なるAが存在していることにより、他の単量体との相溶性が向上し、分散性の良好なフォトクロミック硬化性組成物を得ることができ、特にフォトクロミック層の白濁を有効に回避することができる。
【0068】
本発明において、2官能の(メタ)アクリル単量体(Xp−1)としては、上述した各種のものを、それぞれ単独或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
例えば、フォトクロミック性、特に退色速度を向上させるという観点から、2官能の(メタ)アクリル単量体(Xp)の全量を100質量%としたとき、架橋型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート(Xp−1a)が0〜90質量%、特に10〜75質量%、非架橋型アルキレンオキシジ(メタ)アクリレート(Xp−1b)が10〜100質量%、特に25〜90質量%、2官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−1c)が0〜30質量%、特に0〜20質量%、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(Xp−1d)が0〜30質量%、特に0〜20質量%となる量比で、これらの成分を用いることが好ましい。
【0069】
(Xp−2)3官能単量体;
3官能の(メタ)アクリル単量体としては、1分子中に(メタ)アクリル基を3個有する化合物であれば、特に制限なく使用することができるが、一般的には、以下に述べる3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート(Xp−2a)及び3官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−2b)が好適に使用される。
【0070】
(Xp−2a)3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート
3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートは、下記式(7)で表される。
【化19】
【0071】
上記の式(7)中、
R
19及びR
20は、それぞれ、水素原子又はメチル基を示し、
R
21は、炭素数1〜10の3価の非ウレタン系の有機基を示し、
iは、平均して0〜3の数である。
かかる3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートは、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)の硬度を確保し、さらにフォトクロミック特性、特に発色濃度と退色速度を改善する上で効果的である。
【0072】
このような3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
トリメチロールプロパントリメタクリレート
トリメチロールプロパントリアクリレート
テトラメチロールメタントリメタクリレート
テトラメチロールメタントリアクリレート(ペンタエリスリトールトリ
アクリレート)
トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート
トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート
上記の化合物の中では、特にトリメチロールプロパントリメタクリレートが特に好適である。
【0073】
(Xp−2b)3官能ウレタン(メタ)アクリレート
3官能ウレタン(メタ)アクリレートも1分子中に3個の(メタ)アクリル基を有するものであり、得られるフォトクロミック硬化体の強度を確保する上で効果的である。
このような3官能ウレタン(メタ)アクリレートは、それ自体公知であり、1分子中にアクリル基とメタクリル基との両方を有するもの及び1分子中にアクリル基或いはメタクリル基の何れか一方を有するものがある。本発明では、何れの3官能ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができるが、特に、アクリル基或いはメタクリル基の何れか一方を有するものを使用することが望ましい。
また、耐光性の観点から、その分子構造中に芳香環を有しないものが好適であり、このような分子構造の3官能ウレタン(メタ)アクリレートの使用により、フォトクロミック層(フォトクロミック硬化体)の黄変を有効に防止することができる。
【0074】
かかる3官能ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、ジイソシアネートと低分子量のポリオール類とを反応させウレタンプレポリマーとしたものを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレートで更に反応させた反応混合物であって、その分子量が400以上20,000未満のものを挙げることができる。
上記のジイソシアネート及び低分子量ポリオールとしては、以下の化合物が代表的である。
ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート
イソホロンジイソシアネート
リジンイソシアネ一ト
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
ダイマー酸ジイソシアネート
イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
ノルボルネンジイソシアネート
メチルシクロヘキサンジイソシアネート
低分子量ポリオール;
グリセリン
トリメチロールプロパン
【0075】
尚、上記のような3官能ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、サートマー社より、CN929(官能基数3)の商品名で市販されている。
【0076】
本発明において、上記の3官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート(Xp−2a)及び3官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−2b)は、それぞれ単独で使用することもできるし、両者を併用することもできるが、フォトクロミック特性、特に退色速度を向上させるという効果をより発揮できるという点で、3官能単量体(Xp−2)の全量を100質量%としたとき、(Xp−2a)が20〜100質量%、特に50〜100質量%、(Xp−2b)が0〜80質量%、特に0〜50質量%となるようで、これらを使用することが好ましい。
【0077】
(Xp−3)高多官能単量体;
高多官能単量体(Xp−3)は、1分子中に(メタ)アクリル基を4個以上有するものであり、高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート(Xp−3a)、高多官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−3b)及び多官能(メタ)アクリレートシルセスキオキサン(Xp−3c)が代表的である。
【0078】
(Xp−3a)高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート
高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートは、下記式(8)で表される。
【化20】
【0079】
上記の式(8)中、
R
22及びR
23は、それぞれ、水素原子又はメチル基を示し、
R
24は、炭素数1〜10である4価以上の非ウレタン系有機基(即
ち、ウレタン結合を有するものを含まない)を示し、
iは、平均して0〜3の数であり、
jは、4以上の整数である。
【0080】
この高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル基を1分子中に4個以上有するものであり、前述した3官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−2a)と同様、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)の硬度を確保し、さらにフォトクロミック特性、特に発色濃度と退色速度を改善する上で効果的である。
【0081】
このような高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
テトラメチロールメタンテトラメタクリレート
テトラメチロールメタンテトラアクリレート
ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
分子量2,500〜3,500の4官能ポリエステルオリゴマー
(ダイセルユーシービー社、EB80等)
分子量6,000〜8,000の4官能ポリエステルオリゴマー
(ダイセルユーシービー社、EB450等)
分子量45,000〜55,000の6官能ポリエステルオリゴマー
(ダイセルユーシービー社、EB1830等)
分子量10,000の4官能ポリエステルオリゴマー
(第一工業製薬社、GX8488B等)
上記の中でも、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレートは、特に高多官能単量体(Xp−3)として好適である。
【0082】
(Xp−3b)高多官能ウレタン(メタ)アクリレート
この高多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリル基を4個以上有するものであり、得られるフォトクロミック硬化体(フォトクロミック層)の強度を確保する上で効果的である。前述した3官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−2b)と同様、1分子中にアクリル基とメタクリル基との両方を有するもの及び1分子中にアクリル基或いはメタクリル基の何れか一方を有するものがあり、本発明では、何れの高多官能ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができるが、特に、アクリル基或いはメタクリル基の何れか一方を有するものを使用することが望ましい。
また、耐光性の観点から、その分子構造中に芳香環を有しないものが好適であり、このような分子構造の高多官能ウレタン(メタ)アクリレートの使用により、フォトクロミック層(フォトクロミック硬化体)の黄変を有効に防止することができる。
【0083】
かかる高多官能ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、以下に挙げるジイソシアンートと低分子量ポリオールとを反応させウレタンプレポリマーとしたものを、アルキレンオキシド鎖を有していてもよい2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレート等で更に反応させた反応混合物であって、その分子量が400以上20,000未満であるウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート
イソホロンジイソシアネート
リジンイソシアネ一ト
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
ダイマー酸ジイソシアネート
イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
ノルボルネンジイソシアネート
メチルシクロヘキサンジイソシアネート
低分子量ポリオール;
グリセリン
トリメチロールプロパン
ペンタエリスリトール
【0084】
上記のような多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、新中村化学工業(株)より、U−4HA(分子量596、官能基数4)、U−6HA(分子量1019、官能基数6)、U−6LPA(分子量818、官能基数6)、U−15HA(分子量2,300、官能基数15)等の商品名で市販されている。
【0085】
(Xp−3c)多官能(メタ)アクリレートシルセスキオキサン
多官能(メタ)アクリレートシルセスキオキサンも1分子中に4個以上の(メタ)アクリル基を有するものであり、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するものが知られているが、例えば、下記式(9)で示されるものが代表的である。
(R
31−SiO
3/2)n (9)
【0086】
上記式(9)において、
nは、重合度を示し、6〜100の整数であり、
1分子中に6個以上存在するR
31は、少なくとも4個のR
31が(メ
タ)アクリル基もしくは(メタ)アクリル基を含む有機基であり、その
他のR
31は、(メタ)アクリル基以外のラジカル重合性基、水素原子
、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基またはフェニル基であ
ってよい。
【0087】
このような多官能(メタ)アクリレートシルセスキオキサンは、優れたフォトクロミック特性を発現しつつ、フォトクロミック層の高強度化に効果的である。
【0088】
また、上記式(9)において、(メタ)アクリル基を含む有機基の例としては、(メタ)アクリロキシプロピル基、(3−(メタ)アクリロキシプロピル)ジメチルシロキシ基等を挙げることができる。
(メタ)アクリル基以外のラジカル重合性基としては、アリル基、アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基、ビニル基、ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基、(4−シクロヘキセニル)エチルジメチルシロキシ基、ノルボルネニルエチル基、ノルボルネニルエチルジメチルシロキシ基、N−マレイミドプロピル基等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜10のもの、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のもの、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜6のもの、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0089】
尚、上記のようなシルセスキオキサン化合物は、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を取ることができるが、本発明においては複数の構造からなる混合物であることが好ましい。
【0090】
本発明において、上述した各種の高多官能単量体(Xp−3a)〜(Xp−3c)は、それぞれ、単独で使用することもできるし、これらを併用することもできる。特に、フォトクロミック特性、特に退色速度を向上させるという効果をより発揮するという観点から、高多官能単量体(Xp−3)の全量を100質量%としたとき、高多官能アルキレンオキシ(メタ)アクリレート(Xp−3a)が20〜100質量%、特に30〜100質量%、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(Xp−3b)が0〜65質量%、特に0〜60質量%、多官能(メタ)アクリレートシルセスキオキサン(Xp−3c)が0〜15質量%、特に0〜10質量%となるように、各成分を使用することが好ましい。
【0091】
このように、多官能の(メタ)アクリル単量体(Xp)としては、上述した2官能単量体(Xp−1)、3官能単量体(Xp−2)及び4官能以上の高多官能単量体(Xp−3)を、それぞれ、単独或いは互いに組み合わせて併用することができるが、特に良好なフォトクロミック性を発現させるためには、多官能単量体(Xp)の全量を100質量%としたとき、2官能単量体(Xp−1)を50〜99質量%、特に60〜80質量%、3官能単量体(Xp−2)を1〜50質量%、特に20〜40質量%、高多官能単量体(Xp−3)を0〜49質量%、特に0〜20質量%とすることが好ましい。
【0092】
非(メタ)アクリル重合性単量体(Y);
本発明においては、上述した(メタ)アクリル重合性単量体(X)以外にも、重合性基が(メタ)アクリル基以外の基である非(メタ)アクリル重合性単量体(Y)を、重合性単量体成分(A)として使用することができる。
この非(メタ)アクリル重合性単量体(Y)は、分子中に(メタ)アクリル基を有していないものであり、必要に応じて使用されるものである。
【0093】
このような非(メタ)アクリル重合性単量体(Y)の代表的なものとして、ビニル化合物やアリル化合物を挙げることができる。
【0094】
ビニル化合物は、フォトクロミック硬化性組成物の成型性を向上させるために好適である。その具体例としては、α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレンダイマーがあげられ、特にα−メチルスチレンとα−メチルスチレンダイマーを組み合わせることが好ましい。
【0095】
アリル化合物は、フォトクロミック硬化性組成物のフォトクロミック特性(発色濃度、退色速度)を向上させるために好適である。その具体例としては、これに限定されるものではないが、以下の化合物を例示することができる。
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が350、550或いは1500のもの)
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が350或いは1500のもの)
ポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が450もの)
メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエ
ーテル
(好ましくは、平均分子量が750のもの)
ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエ
ーテル
(好ましくは、平均分子量が1600のもの)
メタクリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールア
リルエーテル
(好ましくは、平均分子量が560のもの)
フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が600のもの)
メタクリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が430のもの)
アクリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が420のもの)
ビニロキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が560のもの)
スチリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(好ましくは、平均分子量が650のもの)
メトキシポリエチレンチオグリコールアリルチオエーテル
(好ましくは、平均分子量が730のもの)
【0096】
このようなアリル化合物の中では、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、特に平均分子量550のものが最も好適である。
【0097】
上述した非(メタ)アクリル重合性単量体(Y)の使用量は、前述した(メタ)アクリル重合性単量体(X)による特性向上を損なわない程度の量とすべきであり、一般に、(メタ)アクリル重合性単量体(X)100質量部当り、20質量部以下、好ましくは、0.1〜20質量部、より好ましくは、0.5〜12質量部の範囲とするのがよい。
【0098】
<(B)フォトクロミック化合物>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物において、フォトクロミック性を付与するためにフォトクロミック化合物(B)が使用されるが、その配合量は、前述した(メタ)アクリル重合性単量体(X)100質量部当り、0.01〜20質量、好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.05〜5質量部である。
即ち、フォトクロミック化合物の配合量が少なすぎる場合には、十分なフォトクロミック性(特に発色濃度)やフォトクロミック耐久性を得ることができない。また、フォトクロミック化合物の使用量が多過ぎると、フォトクロミック成分の種類にもよるが、重合性単量体成分に対しフォトクロミック組成物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下するばかりか、レンズ基材とフォトクロミック層との密着性も低下することもある。
【0099】
このようなフォトクロミック化合物は、それ自体公知であり、例えば、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物が代表的であり、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号、WO96/14596号等に具体的に示されている。これらのフォトクロミック化合物は、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0100】
本発明では、特に優れたフォトクロミック性を発現できるという点でクロメン化合物が好適であり、特に、発色濃度、初期着色、退色速度などのフォトクロミック特性に加え、耐久性にも優れているという点で、インデノナフト[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン骨格を有するクロメン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましく、特に、分子量が540以上の化合物は、発色濃度及び退色速度に特に優れており、本発明では、最も好適に使用される。
このようなクロメン化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。
【化21】
【化22】
【0101】
<その他の配合剤>
本発明のフォトクロミック硬化性組成物には、前述した重合性単量体成分(A)及びフォトクロミック化合物(B)以外に、それ自体公知の配合剤を配合することができる。
例えば、フォトクロミック硬化性組成物を重合硬化してフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層を形成するために、重合開始剤が配合される。
このような重合開始剤としては、フォトクロミック層形成時の重合硬化方法に応じて、熱重合開始剤或いは光重合開始剤が使用される。
【0102】
熱重合開始剤は、フォトクロミック硬化性組成物を加熱して硬化体を形成するために使用されるものであり、特に厚膜のフォトクロミック層を形成する場合に好適である。
このような重合開始剤としては、以下のものを例示することができる。
ジアシルパーオキサイド、例えばベンゾイルパーオキサイド、p−クロ
ロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパ
ーオキサイド、アセチルパーオキサイド等;
パーオキシエステル、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキ
サネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオ
デカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等;
パーカーボネート、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、
ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート等;
アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等;
【0103】
また、光重合開始剤は、光照射によりフォトクロミック硬化組成物の硬化体を形成する際に使用されるものであり、特に薄膜のフォトクロミック層を形成する場合に有利である。
このような光開始剤としては、以下のものを例示することができる。
アセトフェノン系化合物、例えば、
1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプ
ロパン−1−オン等;
α−ジカルボニル系化合物、例えば、
1,2−ジフェニルエタンジオン
メチルフェニルグリコキシレート等;
アシルフォスフィンオキシド系化合物、例えば、
2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチル
エステル
2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等;
【0104】
上述した各種の重合開始剤は、それぞれ1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
また、熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできるし、光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合促進剤を併用することもできる。
【0105】
本発明において、上記重合開始剤(熱重合開始剤および/または光重合開始剤)の使用量は、一般に、前述した(メタ)アクリル重合性単量体(X)100質量部当り、0.001〜10質量部、特に0.01〜5質量部の範囲である。
【0106】
さらに、上述した重合開始剤以外の配合剤としては、例えば離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種添加剤を挙げることができる。
【0107】
本発明においては、特に、紫外線安定剤を配合することが、フォトクロミック化合物の耐久性をさらに向上させることができるために好適である。
このような紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が代表的であり、その好適例としては、以下のものを挙げることができる。
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケー
ト;
旭電化工業(株)製、アデカスタブLA−52、LA−57、
LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82、
LA−87;
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール;
2,6−エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル
−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート];
チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製IRGANOX 1010、
1035、1075、1098、1135、1141、1222、
1330、1425、1520、259、3114、3790、
5057、565;
【0108】
このような紫外線安定剤の配合量は特に制限されるものではないが、一般に、前述した(メタ)アクリル重合性単量体(X)100質量部当り、0.001〜10質量部、特に0.01〜1質量部の範囲である。
尚、ヒンダードアミン光安定剤を用いる場合には、多すぎると各フォトクロミック化合物に対する耐久性の向上効果が異なるため、各化合物の経時劣化により、発色色調の色ズレを起す場合がある。このため、このような安定剤は、生じるため、前記フォトクロミック化合物1モル当り、0.5〜30モル、特に1〜20モル、さらに好ましくは2〜15モルの量で用いることが好適である。
【0109】
上述した本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、各成分を混合することにより調製されるが、必須成分であるエポキシ基含有単量体(Xm
2)の反応性が高いため、この成分を他の成分と分けて保存し、使用直前に、他の成分と混合することが好ましい。エポキシ基含有単量体(Xm
2)を他の成分と混合して同じパッケージに収容して保存しておくと、保存中にゲル化を生じるおそれがあるからである。
また、この硬化性組成物を調製するに際しては、エポキシ基含有単量体(Xm
2)以外の成分を予め混合し、フォトクロミック化合物(B)を重合性単量体(A)に溶解して保存しておき、使用直前に、室温以下でエポキシ基含有単量体(Xm
2)を混合することが好ましい。
【0110】
<フォトクロミック積層体(フォトクロミックレンズ)の製造>
上述した本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いてのフォトクロミック積層体の製造は、該硬化性組成物をレンズ基材(プラスチックレンズ)の表面に施して該硬化性組成物の層を形成し、この硬化性組成物の層を重合硬化せしめることにより行われる。
【0111】
硬化性組成物の重合硬化は、該組成物に配合されている重合開始剤の種類に応じて、加熱、或いは紫外線、α線、β線、γ線等の照射、もしくは両者の併用によって行うことができる。
【0112】
しかるに、本発明のフォトクロミック硬化性組成物によれば、厚膜のフォトクロミック層、例えば厚みが100〜1500μm、特に150〜800μmのフォトクロミック層を形成した場合にも、優れたフォトクロミック性とレンズ基材に対する密着性を確保することができるため、厚膜のフォトクロミック層の形成に適した手段を用いて硬化性組成物の層を形成し且つ重合硬化を行うことが最適である。
【0113】
かかる手段について説明すると、例えば
図1に示すように、レンズ基材1を注型重合用のモールド2(例えばガラス製モールド)に対面させて、固定する。ここで、モールド2には、プラスチック製のレンズ基材1とモールド2との間に、フォトクロミック層に対応する成形用空間(キャビティ)3が形成されるように、エラストマーガスケットやスペーサーなどの治具4が取り付けられている。
このようにして形成されている成形用空間3に、熱重合開始剤が配合されている前述した本発明のフォトクロミック硬化性組成物を注入し、加熱により重合硬化を行うことにより、レンズ基材1の表面に、該硬化性組成物の硬化体からなる厚膜のフォトクロミック層を形成することができる。
【0114】
加熱による重合硬化は、例えば、空気炉或いは水浴中での加熱により行うことができる。この場合、硬化性組成物中に熱重合開始剤と共に光重合開始剤も配合されている場合には、加熱による重合硬化を行った後、ガラスモールド2側から光照射を行い、仕上げの光重合硬化を行うこともできる。
重合硬化のための加熱条件は、配合されている重合開始剤の種類と量及び重合性単量体成分(A)の組成等によって異なるので、一概に規定することはできないが、一般的には、比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていき、重合終了間際に高温加熱を行う方法(所謂、テーパ型重合と呼ばれている)を採用することが好適である。また、重合時間は、加熱温度と同様に各種の要因によって異なるので、予め、各種の要因に応じた時間に設定されるが、一般的には、2〜24時間で重合硬化が完結するように各種条件を選ぶことが好ましい。
【0115】
尚、薄膜のフォトクロミック層を形成する場合には、光重合開始剤が配合された硬化性組成物を用い、スピンコート等により薄膜の硬化性組成物の層をレンズ基材の表面に形成し、光照射による重合硬化を行ってフォトクロミック層を形成することが好適である。
【0116】
このようにして形成されるフォトクロミック積層体の形成に使用されるプラスチック製のレンズ基材としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂及びチオエポキシ系樹脂等により形成されたものが代表的であり、本発明は、何れのプラスチックレンズ基材にも適用できる。
このようなプラスチック製レンズ基材の中でも、特に、(メタ)アクリル系樹脂やアリル系樹脂(CR39等)により形成されたものが効果的である。
【0117】
尚、前述したようにレンズ基材1をモールド2に固定するに先立って、フォトクロミック層が形成されるレンズ基材1の表面を、アルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、UVオゾン処理、無機あるいは有機物の微粒子による研磨処理、プライマー処理又はプラズマもしくはコロナ放電処理を行うことが、密着性をより向上させる上で効果的である。
特にアルカリ処理は密着性向上の効果が高い。アルカリ処理の条件としては、例えば20%水酸化ナトリウム等を用いることが可能である。なお、本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、プラスチックレンズ基材との密着性を高めることができるため、プライマー処理等を省略することもできる。
【0118】
上記のようにして得られるフォトクロミックレンズ(フォトクロミック積層体)は、そのまま研磨や縁取りなどの加工工程を経て使用に供することができる。ただし、着用時の傷の発生を防止することを目的として、さらにハードコーティング層で被覆して使用することもできる。
【0119】
ハードコーティング層を形成するためのコーティング剤(ハードコート剤)としては、公知のものがなんら制限なく使用できる。具体的には、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤が使用できる。
【0120】
また、ハードコート層を形成する場合、ハードコート組成物の塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法あるいはフロー法等によりコーティング組成物を塗布することができる。
【0121】
塗布後の硬化方法として、乾燥空気あるいは空気中で風乾して、通常フォトクロミック積層体が変形しない程度の温度で加熱処理することによって硬化し、ハードコーティング層が形成される。
【0122】
また、本発明のフォトクロミック積層体の表面には、ハードコーティング層以外にも、さらに必要により、SiO
2、TiO
2、ZrO
2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工や2次処理を施すこともできる。
【実施例】
【0123】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。以下に使用した化合物の略号と名称を示す。
【0124】
(A)重合性単量体成分:
(X)(メタ)アクリル重合性単量体
多官能単量体(Xp)
(Xp−1)2官能単量体
BPE100:
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)
プロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数が2.6であり、平均
分子量が478)
BPE500:
2,2一ビス(4一メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)
25プロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数10であり、平均
分子量が804)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
9G:
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平
均繰返し数が9であり、平均分子量が536)
14G:
ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシ基の平
均繰返し数が14であり、平均分子量が770)
APG400:
ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール
鎖の平均鎖長が7であり、平均分子量が536)
A−BPE:
2,2一ビス(4一アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プ
ロパン(エチレンオキシ基の平均繰返し数が10であり、平均分子
量が776)
A400:
ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシ基の平均
繰返し数が9であり、平均分子量が508)
A200:テトラエチレングリコールジアクリレート
4PG:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
APC:ポリカーボネートモノマー
【0125】
(APCモノマーの製造方法)
ヘキサメチレングリコール(50mol%)とペンタメチレングリコール(50mol%)とのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量500)300g(0.6mol)に、
アクリル酸108g(2.5mol)、
ベンゼン300g、
p−トルエンスルホン酸11g(0.06mol)、
p−メトキシフェノール0.3g
(700ppm(ポリカーボネートジオール対して))
を加え還流下反応させた。
反応により生成する水は、溶媒と共沸させ、水のみ分離器で系外に取り除き、溶媒は反応容器に戻した。反応の転化率は反応系中から取り除いた水分量で確認し、水分量を21.6g反応系中から取り除いたのを確認し、反応を停止させた。その後、ベンゼン600gに溶解し、5%炭酸水素ナトリウムで中和した後、20%食塩水300gで5回洗浄し、透明液体の210gを得た。
【0126】
(Xp−2)3官能単量体
TMPT:
トリメチロールプロパントリメタクリレート(分子量338)
(Xp−3)高多官能単量体
DTMPT:ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート
U6HA:ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート
(平均分子量1019)
PMS1:シルセスキオキサンモノマー
【0127】
<PMS1の合成>
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート248g(1.0mol)にエタノール248mlおよび水54g(3.0mol)を加え、触媒として水酸化ナトリウム0.20g(0.005mol)を添加し、30℃で3時間反応させた。
原料の消失を確認後、希塩酸で中和し、トルエン174ml、ヘプタン174ml、および水174gを添加し、水層を除去した。
その後、水層が中性になるまで有機層を水洗し、溶媒を濃縮することによってシルセスキオキサンモノマー(PMS1)を得た。
なお、1H−NMRより、原料は完全に消費されていることを確認した。また、29Si−NMRより、ケージ状構造、ラダー状構造およびランダム構造の混合物であることを確認した。
シルセスキオキサンモノマー(PMS1)の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定したところ、重量平均分子量が4800であった。
【0128】
(Xm)単官能単量体
(Xm
1)エポキシ基含有単量体
GMA:グリシジルメタクリレート(分子量142)
EOGMA:2−グリシジルオキシエチルメタクリレート
(Xm
2)イソシアネート基含有単量体
MOI:(2−イソシアナトエチルメタクリレート)
AOI:(2−イソシアナトエチルアクリレート)
(Xm
3)他の単官能(メタ)アクリル単量体
MePEGMA:
メチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート
(エチレンオキシ基の平均繰返し数が23であり、平均分子
量が1068)
M90G:
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレング
リコール鎖の平均鎖長9、平均分子量468)
【0129】
(Y)非(メタ)アクリル重合性単量体
αMS:αメチルスチレン
MSD:αメチルスチレンダイマー
【0130】
(B)フォトクロミック化合物
PC1:
【化23】
PC2:
【化24】
PC3:
【化25】
【0131】
熱重合開始剤
ND:
t−ブチルパーオキシネオデカネート
(商品名:パーブチルND、日本油脂(株)製)
O:
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ネート
(商品名:パーオクタO、日本油脂(株)製)。
【0132】
その他の配合剤(添加剤)
安定剤
HALS:
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバ
ケート(分子量508)
【0133】
プラスチックレンズ基材
CR39:アリル系樹脂
【0134】
レンズ基材M1:メタクリル樹脂レンズ基材
(製造方法)
下記処方;
TMPT 10質量部
3PG 43質量部
EB4858 25質量部
(ダイセルユーシービー社製2官能ウレタンメタクリレート)
A400 16質量部
M90G 5質量部
グリシジルメタクリレート 1質量部
αMS 0.5質量部
MSD 1.5質量部
HALS 0.1質量部
重合開始剤
パーブチルND 1質量部
パーオクタO 0.1質量部
により各成分を十分に混合し、得られた混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合により重合性モノマーの実質的全量を重合した。
重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持した。重合終了後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外し、メタクリル樹脂よりなるレンズ基材M1を得た。
【0135】
レンズ基材M2:メタクリル樹脂レンズ基材
(製造方法)
下記処方;
BPE100 29質量部
BPE500 5質量部
TMPT 7質量部
A200 5質量部
テトラエチレングリコールジメタクリレート 45質量部
グリシジルメタクリレート 1質量部
αMS 8質量部
MSD 2質量部
重合開始剤
パーブチルND 1質量部
パーオクタO 0.1質量部
により各成分を十分に混合し、レンズ基材M1の製造方法と同様にして、メタクリル樹脂よりなるレンズ基材M2を得た。
【0136】
レンズ基材M3:メタクリル樹脂レンズ基材
(製造方法)
下記処方;
BPE100 25質量部
TMPT 11質量部
DTMPT 11質量部
A400 10質量部
テトラエチレングリコールジメタクリレート 29質量部
グリシジルメタクリレート 1質量部
αMS 8質量部
MSD 2質量部
重合開始剤
パーブチルND 1質量部
パーオクタO 0.1質量部
BPE500 5質量部
により各成分を十分に混合し、レンズ基材M1の製造方法と同様にして、メタクリル樹脂よりなるレンズ基材M3を得た。
【0137】
<実施例1>
下記処方;
2官能単量体(Xp−1)
BPE500 38質量部
A−BPE 4質量部
14G 5質量部
9GX 8質量部
3官能単量体(Xp−2)
TMPT 29質量部
単官能単量体(Xm)
エポキシ基含有単量体(Xm1)
GMA 1質量部
非(メタ)アクリル重合性単量体(Y)
αMS 1質量部
MSD 1.5質量部
添加剤
HALS(安定剤) 0.1質量部
により各成分を混合し、攪拌した後、得られた混合液に、
フォトクロミック化合物(B)
PC1 0.12質量部
PC2 0.04質量部
PC3 0.12質量部
を加え、十分に攪拌し、溶解させた。
その後、イソシアネート基含有単官能単量体(Xm
2)としてMOI 5質量部、熱重合開始剤として、パーブチルND 1質量部及びパーオクタO 0.1質量部を十分に混合し、フォトクロミック硬化性組成物を得た。
この組成物について、重合性単量体成分(A)の組成を表1に示し、組成物の組成を表3に示した。
【0138】
図1に示したレンズ成形型及び上記のフォトクロミック硬化性組成物を用いて、フォトクロミック積層体(フォトクロミックレンズ)を製造した。
具体的には、ガラスモールド2とプラスチックレンズ基材1のCR39レンズの側面に粘着テープ4を巻きつけたレンズ成形型のキャビティ3内に、上記のフォトクロミック硬化性組成物を注入し、重合を行った。
【0139】
プラスチックレンズ基材のCR39については、アセトンで十分に脱脂した後に、60℃の20%水酸化ナトリウム水溶液で10分間超音波によるアルカリ処理をほどこしたものを用いた。
【0140】
重合は、空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持して行い、重合終了後にガラスモールド2を外すことで、0.5mm厚のフォトクロミック硬化性組成物の硬化体(フォトクロミック層)と2mm厚のプラスチックレンズ基材が密着したフォトクロミック積層体を得た。
得られたフォトクロミック積層体は、最大吸収波長590nm、発色濃度1.00、退色速度54秒、耐久性92%のフォトクロミック特性を有し、密着性が良好であった。
なお、これらの評価は以下のようにして行った。
【0141】
フォトクロミック特性;
得られたフォトクロミック積層体を試料とし、これに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2,245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させ、前記積層体のフォトクロミック特性を測定した。
各フォトクロミック特性、その耐久性及び密着性を以下の方法で評価し、その結果を表5に示した。
【0142】
1)最大吸収波長(λmax):
(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD3000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度{ε(120)−ε(0)}:
前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。
この値が高いほどフォトクロミック特性が優れているといえる。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:
120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。
この時間が短いほど速やかに消色することを意味し、フォトクロミック特性が優れているといえる。
【0143】
4)耐久性:
光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。即ち、得られたフォトクロミックコート層を有すレンズをスガ試験器((株)製キセノンウェザーメーターX25)により300時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)及び試験後の発色濃度(A200)を測定し、{(A200/A0)×100}の値を残存率(%)として求めた。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0144】
5)密着性;
試料のフォトクロミック積層体を100℃の沸騰水に浸漬し、1時間後に取り出し、すぐに0℃の氷水に10分浸漬させ、取り出した後に、フォトクロミック積層体が密着性を保持しているかどうか目視評価した後に、同様の操作を繰り返すことにより実施した。評価基準を以下に示す。
1:5サイクルで剥離なし。
2:4サイクル目まで剥離なし。5サイクル目で一部剥離箇所あり。
3:3サイクル目まで剥離なし。4サイクル目で一部剥離箇所あり。
4:2サイクル目まで剥離なし。3サイクル目で一部剥離箇所あり。
5:1サイクル目で剥離なし。2サイクル目で一部剥離箇所あり。
6:1サイクル目で一部剥離箇所あり。
【0145】
<実施例2〜19>
表1、2に記載した重合性単量体成分(A)、及び表3,4に示した組成及びプラスチックレンズ基材を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調製し且つフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。その評価結果を表5に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
<比較例1〜6>
表6に記載した重合性単量体成分(A)及び表7に示した組成及びレンズ基材を用いた以外は、実施例1と同様にしてフォトクロミック硬化性組成物を調製し且つフォトクロミック積層体を作製し、評価を行った。
評価結果を表8に示す。
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
上記実施例1〜19から明らかなように、本発明に従って、(メタ)アクリル系の多官能単量体(Xp)、及び(メタ)アクリル系の単官能単量体(Xm
1)、(Xm
2)を特定の割合で含んだフォトクロミック硬化性組成物を用いることにより、優れたフォトクロミック特性、密着性を有するフォトクロミック積層体が得られた。
一方、比較例1〜3及び6では、得られたフォトクロミック積層体のフォトクロミック特性が不十分であり、比較例2、4、5、6では得られたフォトクロミック積層体の密着性が不十分であった。