【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項の特徴に従った構成体により得られる。
【0008】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱作動用の構成体において、ミラーは、光学有効面と、ミラーのうち光学有効面に相当しない面から当該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路とを有し、当該構成体は、アクセス通路内を伝播する電磁放射線によるミラーの熱作動用に設計され、当該構成体は、アクセス通路内で伝播する電磁放射線を生成する少なくとも1つの熱放射手段をさらに有し、当該熱放射手段は、アクセス通路に沿って作動可能である。
【0009】
本発明によれば、ミラーにおける(特にミラーの光学有効面の領域の)加熱区域と、それに伴う熱作動により最終的に達成される逆変形(counter-deformation)とを変えて、それに関連してミラーの熱作動に関するさらなる自由度を得るようにすることができる。特に、ミラーの熱作動により達成される逆変形は、上記マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作において光源が放出する放射線の吸収に起因したミラーの熱表面変形を少なくとも部分的に補償することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱作動は、ミラーの光学有効面以外の面からミラー基板まで延びるアクセス通路により実施される。このアクセス通路により、熱作動に役立つ電磁放射線を、ミラーの光学有効面に悪影響を及ぼすことはないが当該光学有効面の直近でミラー基板材料まで通過させることができる。
【0011】
「熱放射手段はアクセス通路に沿って作動可能である」とする表現は、熱放射手段の位置がアクセス通路の一部に沿ってのみ(例えば、アクセス通路の部分長に沿って熱放射手段の進出位置(advance position)を変えることにより)可変である実施形態も含む。
【0012】
一実施形態では、本構成体は、アクセス通路に沿って熱放射手段の進出位置を変えるマニピュレータを有する。
【0013】
一実施形態では、熱放射手段は、好ましくは実質的に針状の幾何学的形状の加熱棒の形態である。これは、関与する比較的小さな構造空間に関して特に有利であり、これは例えば、ファセットミラーの個々のファセットに対する熱作動を実現することを可能にする。
【0014】
一実施形態では、ミラーは複数のアクセス通路を有する。また、本構成体の一実施形態では、本構成体は、配列として配置した複数の熱放射手段を有する。さらに、一実施形態では、熱放射手段は選択的に作動可能である。したがって、位置分解可能な熱作動を行うことが可能であり、これは、複数のミラーファセットからなるファセットミラーの上述の熱作動の実現に特に有利である。かかる実施形態では、上記ミラーファセットのそれぞれが、少なくとも1つのアクセス通路を有することができ、当該アクセス通路に沿って熱放射手段を作動可能である。
【0015】
一実施形態では、本構成体は、異なる幾何学的形状の少なくとも2つのアクセス通路を有する。
【0016】
一実施形態では、少なくとも1つのアクセス通路は、円筒形の幾何学的形状とは異なる幾何学的形状を有する。かかる幾何学的形状は、例えば円錐形の幾何学的形状である。しかしながら、本開示はこれに限定されないので、例えば各アクセス通路の直径の段階的変化等の他の幾何学的形状も可能である。かかる幾何学的形状は、例えば、円筒形の幾何学的形状のアクセス通路を用いる場合よりも円錐形のアクセス通路を用いる場合に、ミラーの、例えばファセットミラーの所与の(縁部)領域において所望の効果をより良好に達成できる場合に有利であり得る。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つの熱放射手段は、アクセス通路の方向に対して横方向にも作動可能である。
【0018】
一実施形態では、少なくとも1つの熱放射手段を、調整可能な加熱デバイスに接続する。熱放射手段の進出位置の代替として又はこれに加えて、ミラー基板を加熱するためにこうした調整可能な加熱デバイスにより設定した温度は、ミラーの熱作動の変化のさらなるパラメータを形成する。
【0019】
一実施形態では、本構成体は、環境へ熱を放散するクーラをさらに有する。
【0020】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱作動の方法であって、ミラーは、光学有効面と、ミラーのうち光学有効面に相当しない面から当該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路とを有し、ミラーの熱作動をアクセス通路内を伝播する電磁放射線により行い、熱放射手段がアクセス通路に沿って作動可能である方法にも関する。
【0021】
一実施形態では、ミラーの熱作動により達成される逆変形は、上記マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作において光源が放出する放射線の吸収に起因したミラーの熱表面変形を少なくとも部分的に補償する。
【0022】
一実施形態では、電磁放射線を、選択的に作動される熱放射手段の構成体により生成する。
【0023】
一実施形態では、ミラーは複数のミラーファセットからなる。
【0024】
本開示のさらに他の態様によれば、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱作動用の構成体において、ミラーは、光学有効面と、ミラーのうち光学有効面に相当しない面から当該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路とを有し、当該構成体は、アクセス通路内を伝播する電磁放射線によるミラーの熱作動用に設計される。したがって、本開示は、ミラーの光学有効面以外の面からミラー基板まで延びるアクセス通路により、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱作動を実施するという概念に基づく。このアクセス通路により、熱作動に役立つ電磁放射線を、ミラーの光学有効面に悪影響を及ぼすことはないが当該光学有効面の直近でミラー基板材料まで通過させることができる。
【0025】
本開示のさらに別の態様によれば、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーのミラー温度測定及び/又は熱作動用の構成体において、ミラーは、光学有効面と、ミラーのうち光学有効面に相当しない面から当該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路とを有し、当該構成体は、アクセス通路に沿って伝播する電磁放射線によるミラーのミラー温度測定及び/又は熱作動用に設計され、電磁放射線をアクセス通路内で複数回反射させる。
【0026】
したがって、本発明は、ミラーの光学有効面以外の面からミラー基板まで延びるアクセス通路により、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーのミラー温度測定及び/又は熱作動を実施するという概念に基づく。このアクセス通路により、ミラー温度測定及び/又は熱作動に役立つ電磁放射線を、ミラーの光学有効面に悪影響を及ぼすことはないが当該光学有効面の直近で「読み取る」か(ミラー温度測定の場合)又はミラー基板材料まで通過させる(熱作動の場合)ことができる。
【0027】
その点で、本開示は、アクセス通路内で十分に浅い反射角で、すなわち「斜入射」と称するものを伴う状況で反射された電磁放射線が、アクセス通路内で反射を引き起こす壁又は面の放射率又は吸収がごく僅かな又は無視できる程度の割合でしかないことによって求められることを特に利用する。正確には、アクセス通路内のこのような斜入射での状況は、アクセス通路自体の各反射壁の放射線寄与が僅か又は無視できる程度でしかないようにアクセス通路に沿った電磁放射線の(前方)輸送を実質的に伴う。
【0028】
結果として、ミラー温度測定の場合、電磁放射線を読み取った場所から又はミラーの光学有効面の直近の領域から、アクセス通路によりミラー基板の外部に配置したセンサまで電磁放射線を輸送することで、ミラー基板の外部で行う測定及び評価によりミラーの光学有効面の温度状態に関する情報を得ると共に、場合によってはミラー温度の効果的な調整を行うようにすることができる。
【0029】
逆に、熱作動の場合、電磁放射線をアクセス通路により光学有効面の直近の領域に特に目標通りに制御下で結合することが可能であり、その場合、この特に目標通りの制御下での電磁放射線の導入は、特に、より詳細に後述するように調整手順に関して有利な方法での適当な冷却により、永久放熱と組み合わせることができる。
【0030】
有利な構成では、アクセス通路内の電磁放射線の反射角は20°以下、好ましくは15°以下であり、これが上記「斜入射」を可能にする。
【0031】
その点で、反射角は、以下で反射面に対する入射反射ビームの角度と解釈される。
【0032】
ミラー温度測定又は熱作動に寄与する全電磁放射線が上記角度条件を満たすことを確実にするために、適当な角度判別光学系を用いることで、例えばミラー温度測定に用いるセンサの場所の角度範囲を適切に制限することが可能である。
【0033】
一実施形態では、当該電磁放射線は、ミラーが少なくとも領域的に不透明である波長を有する。特に、電磁放射線は、例えばいわゆる低温放射手段により最高400℃、特に最高200℃の範囲の温度で実施できるように、少なくとも2.5μmの波長、さらに特に少なくとも5μmの波長を有する。
【0034】
この波長領域は、同時に、極めて低い膨張率又は(ほぼ)ゼロ膨張のガラス材料(「超低膨張」又は「ゼロ膨張」ガラス)等、EUVリソグラフィで用いる通常のミラー材料の主放射成分の関連波長領域に対応する。このようなミラー基板材料は、例えば、商標名Zerodur(登録商標)でSCHOTT Glasにより販売されているガラスセラミックである。使用可能なさらに別の材料は、例えば炭化ケイ素である。
【0035】
少なくとも5μmの上記波長領域では、これは、波長が当該ミラー基板材料の透過窓(4μm未満の波長を通常は含む)の外部にあることを同時に保証する。したがってこれは、外部又は光学系からのバックグラウンド放射線の形態の電磁放射線が、ミラー基板材料を通過してアクセス通路へ入りミラー温度測定又は熱作動に悪影響を及ぼすことを防止する。さらに、約5μmの波長領域では、有利に用いられるのはまさに、本開示によれば特に好都合に用いることができるサーモパイルセンサが応答するか又は最大感度を有する領域である。
【0036】
この状況を
図2に概略的に示し、図中、当該「ゼロ膨張ガラス」の透過窓を「I」で示し、サーモパイルセンサの感度窓を「II」で示し、図示の曲線は、20℃〜200℃の温度(20℃刻み)での黒体放射に関するスペクトル放射密度(ワット/(m・m
2・sr))をそれぞれ与える。
【0037】
一実施形態では、アクセス通路を、厚さが5mm〜20mmの範囲の残りのミラー材料部分により光学有効面から分離する。このようにして、例えばミラー温度測定の場合、良好な調整性能を得るのに十分なほど短い応答時間(入熱とセンサからの対応の反応との間の遅延に相当する)を実施することが可能である。他方では、(小さすぎず好ましくは5mm以上である間隔により)光学有効面における熱負荷の既存の局所変化に関して所望の平均化効果を達成することが可能であり、これにより、対応の望ましくない変動が平均される。
【0038】
一実施形態では、アクセス通路は、ミラーのうち光学有効面の反対側の面から光学有効面の方向に延びる。しかしながら、本開示はそれに限定されず、さらに他の実施形態では、アクセス通路がミラーのうち光学有効面に相当しない別の面からミラーまで延びることもできる(例えば、構造空間上の理由から、光学系におけるミラー位置によりそれが適当である場合)。
【0039】
本開示は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の、特にEUV用に設計したマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系又は投影対物系でも用いることができる。
【0040】
一実施形態では、本構成体は調整デバイスをさらに有し、これを用いて、ミラーをミラー温度測定に応じて一定の温度又は時変設定温度に加熱することができる。
【0041】
この温度は、特に22℃〜45℃の範囲、さらに特に25℃〜40℃の範囲であり得る。さらにこの温度は、ミラー基板材料の熱膨張がないか又は無視できる程度のいわゆるゼロ交差温度に相当し得るので、リソグラフィプロセスで生じ不均一な可能性のあるミラー基板材料への入熱が変形にも光学収差現象にもつながらないか、又は収差現象を既存の補正手段でなおも補正できる。
【0042】
一実施形態では、本構成体は上記種類の複数のアクセス通路を有し、それにより、より詳細に後述するように、位置分解ミラー温度測定及び/又は熱作動を行うことが可能である
【0043】
一実施形態では、本構成体は、アクセス通路内を伝播する(特に複数回反射する)電磁放射線を生成する少なくとも1つの熱放射手段をさらに有する。
【0044】
一実施形態では、本構成体は、アクセス通路に沿って熱放射手段の進出位置を変えるマニピュレータをさらに有し得る。このようにして、ミラーにおける(特にミラーの光学有効面の領域の)加熱区域と、それに伴う本開示による熱作動により最終的に達成される(逆)変形とを変えて、それに関連してミラーの熱作動に関するさらなる自由度を得るようにすることができる。
【0045】
熱放射手段は、好ましくは実質的に針状の幾何学的形状の加熱棒の形態とすることができ、これは関与する比較的小さな構造空間に関して特に有利である。
【0046】
一実施形態では、少なくとも1つのアクセス通路は、円筒形の幾何学的形状とは異なる幾何学的形状、特に円錐形の幾何学的形状を有し得る。さらに、本構成体は、異なる幾何学的形状の少なくとも2つのアクセス通路を有し得る。熱放射手段は、調整可能な加熱デバイスに接続することができる。熱放射手段の進出位置の代替として又はこれに加えて、ミラー基板を加熱するためにこうした調整可能な加熱デバイスにより設定した温度は、ミラーの熱作動の変化のさらなるパラメータを形成する。
【0047】
熱放射手段は、低温放射手段(最高400℃の範囲の温度を伴う)又は高温放射手段(約400℃を超える温度を伴う)を含み得る。さらに、単色光源(例えばレーザ又はLEDの形態)を熱放射手段として用いることも可能である。
【0048】
一実施形態では、本構成体は、配列として配置し選択的に作動可能である複数の上記熱放射手段を有する。
【0049】
一実施形態では、本構成体は、環境へ熱を放散するクーラをさらに有する。このクーラは、特に一定温度であり得る。このようなクーラが引き起こす一定の放熱流と、低温熱放射手段の構成体により選択的に制御可能な入熱とを組み合わせることにより、調整手順に関して特に効率的であると共に、低温熱放射手段が放出した熱放射の特に目標通りの変化によるミラーにおける不均一な入熱への高速反応を特に可能にする構成体を提供することが可能である。
【0050】
本発明はさらに、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーのミラー温度測定及び/又は熱作動の方法に関する。本方法の好ましい構成又は利点については、本開示による構成体に関する上記情報に注目されたい。
【0051】
一実施形態では、電磁放射線を選択的に作動可能な熱放射手段の構成体により生成する。ここでも、熱放射手段は、低温放射手段(最高400℃の範囲の温度を伴う)又は高温放射手段(約400℃を超える温度を伴う)であり得る。単色光源(例えばレーザ又はLEDの形態)を熱放射手段として用いることも可能である。
【0052】
本発明のさらに他の構成は、説明及び添付の特許請求の範囲にある。
【0053】
本発明を、例として添付図面に示す実施形態によって以下でより詳細に説明する。