特許第6209780号(P6209780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209780
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20171002BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/02 103
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-203745(P2012-203745)
(22)【出願日】2012年9月17日
(65)【公開番号】特開2014-59417(P2014-59417A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】高頭 孝毅
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−102496(JP,A)
【文献】 特開2010−181828(JP,A)
【文献】 特開2006−218449(JP,A)
【文献】 特開昭62−229221(JP,A)
【文献】 特開2002−006781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板を筒型又は筒型の一部分の形状とした筒状構造物であり、前記偏光板の内側面の一部に透明延伸フィルムを備え、
観察者から見て前記筒状構造物の向こう側の全面に入った光をもとに
(1)前記偏光板のみの領域を2回通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)
(2)前記偏光板のみの領域と前記透明延伸フィルムを備えた領域との両方を通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)、及び
(3)前記偏光板に前記透明延伸フィルムを備えた領域を2回通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)の3種の全ての光線が生成されるように前記透明延伸フィルムが貼付されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記透明延伸フィルムが2分の1波長板であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
貼付される前記透明延伸フィルムの延伸軸の方向が、前記偏光板の透過軸又は吸収軸に対して43度から47度の角度をなすことを特徴とする請求項1又は2記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及び表示装置に関する。本発明の光学フィルムは、透明容器等における装飾用のラベルとして好ましく用いることができる。
【背景技術】
【0002】
偏光板を用いて実際にはない黒色の壁(すなわち、この黒色の壁は虚像である。)を見せる構造物として、ブラックウォールと呼ばれる玩具が知られている。これは、2枚の偏光板を筒状等にし、当該2枚の偏光板の吸収軸が直交するように組み合わせて端面を接触させ、接触面であたかも黒色の壁が形成されているかのように見せるものである。
このような構造物の一例として、例えば特許文献1には、円筒状構造物の内側に虚像を形成させる技術が開示されている。また、特許文献2には、偏光板を用いた虚像形成に関する技術が開示されている。
特許文献3には、光学フィルムと偏光板とを組み合わせてクレジットカード等の認証素子に応用した例が記載されている。しかし、この例では、光学フィルムが平面状に貼付されたものであり筒状に配置されたものではなく、立体視の要素も含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3085656号公報
【特許文献2】特開2006−37707号公報
【特許文献3】特表2001−525080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように2枚の偏光板を用いその透過軸の方向を直交させてその端部をつき合わせることにより錯視による像を発生させることは可能であった。しかし、2枚の偏光板を隙間なくつき合わせることは困難であり、また発生させ得る像の形状も限られることから、これまでこの種の技術の応用は玩具等に限られていた。
【0005】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、1枚のフィルムで立体的な錯視による像を形成する手段を提供し、装飾の新しい手法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、瓶、コップ等の容器等に錯視現象を応用するため、1枚のフィルムで自由度の大きな形状の錯視を発生させる技術を鋭意研究してきた。その結果、偏光板に2分の1波長板を貼付することで、1枚のフィルムで錯視による立体的な像を発生させることができること、及び2分の1波長板の形状を様々に変えることで様々な形状の像を簡便に発生させることができることを見出した。本発明は、このような検討結果に基づいてなされたものであり、より具体的には以下の通りである。
【0007】
(1)本発明は、偏光板を筒型又は筒型の一部分の形状とした筒状構造物であり、前記偏光板の内側面の一部に透明延伸フィルムを備え、観察者から見て前記筒状構造物の向こう側の全面に入った光をもとに、[1]前記偏光板のみの領域を2回通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)、[2]前記偏光板のみの領域と前記透明延伸フィルムを備えた領域との両方を通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)、及び[3]前記偏光板に前記透明延伸フィルムを備えた領域を2回通過した光線(ただし、これらの通過の間に他の偏光板を通過するものを除く)の3種の全ての光線が生成されるように前記透明延伸フィルムが貼付されたことを特徴とする光学フィルムである。
【0008】
(2)また本発明は、上記透明延伸フィルムが2分の1波長板であることを特徴とする上記(1)項記載の光学フィルムである。
【0009】
(3)また本発明は、貼付される前記透明延伸フィルムの延伸軸の方向が、上記偏光板の透過軸又は吸収軸に対して43度から47度の角度をなすことを特徴とする上記(1)項又は(2)項記載の光学フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、瓶、コップ等といった容器等に1枚の光学フィルムを貼付することにより、錯視現象により像を発生させることが可能となり、工業的に可能な新しい装飾方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1における本発明の光学フィルムの構成を示す平面図である。
図2図2は、図1に示した光学フィルムを円筒状にしたときに、虚像の見え方を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、実施例1における光学フィルムを瓶に貼付したときの写真である。
図4図4は、実施例2における本発明の光学フィルムの構成を示す平面図である。
図5図5は、図4に示した光学フィルムを円筒状にしたときに、虚像の見え方を模式的に示す側面図である。
図6図6は、実施例2における光学フィルムを瓶に貼付したときの写真である。
図7図7は、図6の瓶に内容物(鉛筆)が含まれているときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、後述する実施例1における本発明の光学フィルムの構成を示す平面図である。図2は、図1に示した光学フィルムを円筒状にしたときに、虚像の見え方を模式的に示す斜視図である。
【0014】
本発明の光学フィルムは、瓶、コップ、グラス等といった容器のラベルとして使うことができる。
例えば瓶のラベルとして本発明の光学フィルムを使用する場合を考える。図1に示す光学フィルムは、本発明の一例であり、図1の符号102で示す方向の透過軸をもつ偏光板100の表面に、当該透過軸と略45度の角をなす符号103で示す方向の延伸軸を持つ透明延伸フィルム101を貼付されてなる。透明延伸フィルムとしては、2分の1波長板として機能するものを用いることが好ましい。以下の説明では、この透明延伸フィルムとして2分の1波長板を用いた例を説明する。この様にして得られた光学フィルムを、2分の1波長板が内側になるように瓶の周りに貼付すると、図2に示すように、瓶の内部に略垂直方向に立った黒もしくは濃紺色の構造体があるような不思議な印象を感興させることができる。2分の1波長板の形状を変えることで様々な形状の構造物の錯視を形成することが可能になる。このとき、2分の1波長板の幅を変えることにより錯視により形成される像の外枠からの距離が変わる。このことを用いて様々な形状の像を形成することが可能になる。また本発明の透明延伸フィルムはほぼ左右対称に貼付することが好ましい。
【0015】
本発明の光学フィルムでは、例えば図1に示すように偏光板100の表面に2分の1波長板101が貼付された構造を備えるので、平面視したときに偏光板100のみが存在する領域と、偏光板100の表面に2分の1波長板101が存在する領域とをもつ。別の見方をすれば、符号100で示す領域は偏光板のみの領域であり、符号101で示す領域は偏光板の表面に2分の1波長板が貼付された領域である。したがって、2分の1波長板の貼付された面を内側にしてこれを筒状にした筒状構造物では、観察者から見て筒状構造物の向こう側から来た光が、(1)偏光板のみの領域を2回通過する、(2)偏光板のみの領域と2分の1波長板が貼付された領域との両方を通過する、及び(3)偏光板に2分の1波長板が貼付された領域を2回通過する、という3つのパターンのいずれかで筒状構造物を通過する。これらのパターンのそれぞれについて、光の透過挙動を説明する。
【0016】
(1)偏光板のみの領域を2回通過する、すなわち2分の1波長板を貼っていない偏光板だけの領域だけを通る光は、筒を抜けてくる。すなわち、2分の1波長板等の透明延伸フィルムを貼付した部分を経ず、透過軸方向が共通する偏光板部分のみを2回通って筒状の構造物を通過し観察者側にくる光は筒状の構造物を抜けてくる。ただし、最初に通過する偏光板で入射光の50%が吸収されるので、観察者側に出てくる光は50%以下になる。このため、フィルムを付けない場合より暗く見える。
【0017】
(2)偏光板のみの領域と2分の1波長板が貼付された領域との両方通過する光は、筒を抜けてこない。筒状構造物に対して、内側に2分の1波長板の貼付された偏光板の領域側から光が入射するとき、偏光板を通過した光が2分の1波長板を通過した際に、偏光の振動方向は2分の1波長板の延伸方向に対して対称に回転する。このとき2分の1波長板の延伸方向が、偏光板の透過軸もしくは吸収軸に対して45度の角度になっている場合、2分の1波長板通過した際に偏光は90度回転する。回転した偏光は、次に偏光板のみの領域を通過する際に、偏光板でほぼ吸収され観察者側に抜けてこない。この為この部分は黒色もしくは青色等に着色して見える。上記説明は、2分の1波長板が貼付された偏光板を通過した後に、偏光板のみの領域を光が通過した場合のものだが、逆の順番で光が通過した場合にも同じ現象が起こる。
【0018】
(3)偏光板に2分の1波長板が貼付された部分を2回通過する光は、筒状構造物を抜けてくる。入射側の偏光板を通過した偏光は、その偏光板の内面側に貼付されている2分の1波長板を通過するとき、上記のように、偏光板の透過軸と2分の1波長板の延伸方向が45度であるとき偏光の振動方向は90度回転する。90度回転した偏光は筒の内部を移動し観察者側の偏光板に貼付された2分の1波長板に達する。この2分の1波長板の延伸方向は、入射側のものに対して折り返されているため、入射側の2分の1波長板の延伸方向に対して直交している。このため、入射側の2分の1波長板で90度回転した偏光は、観察者側の偏光板に貼付された2分の1波長板を通過する際に、振動方向が最初の2分の1波長板を通過する前の状態にもどる。このため観察者側の偏光板で吸収されることなく抜けてくる。
【0019】
筒状の偏光板の一部に2分の1波長板が貼付されている場合、2分の1波長板が貼付されている領域と貼付されていない領域は常に隣接することになるが、それぞれの領域のみを通過する光は筒状構造物を抜けてくるので明るく見える一方で、光が2分の1波長板の貼付されている領域と貼付されていない領域とを通過する光は抜けてこないので暗く見える。その結果、2分の1波長板が貼付された領域とそうでない領域との境目に黒色又は有色の壁があるように見える。このとき、観察者からは、筒状構造物の内部にあたかも立体的物体が存在するかのように錯視される。また、その錯視による像は、空間に浮遊しているように見え美的な価値を有する。
【0020】
このような偏光板を筒状にしたときの延伸フィルム、特に2分の1波長板による効果は、当初から予想できたものではなく、本発明者が長年偏光板を用いた錯視現象を研究するなかで筒状の偏光板の内部に延伸フィルムを入れその効果を検討する実験を行う中で予期せず見出したものであり、これまでどこにも見られることのない現象である。
【0021】
上述の特許文献1に記載されたように、透過軸が直交する2枚の偏光板の端面をすきまなく貼り合わせることも行われているが、取り得る形状はごく限られる。本方法によれば貼付する2分の1波長板の形状は自由に設定することができるので、任意の形状の錯視による像を容易に形成することが可能になる。このことで初めて工業的に利用できる方法となった。
【0022】
偏光板の透過軸と2分の1波長板の延伸軸とがなす角が45度でない場合は、観察者側の透過軸と偏光の振動方向が一致しないため無色透明にはならない。この場合、偏光板の透過軸と2分の1波長板の延伸軸とがなす角度に依存する特有の着色が発生する。また、このときは、上記の(2)の部分も黒色もしくは青色とはならず角度に依存した着色が発生する。この様な場合は、色調が変わることによる特有の美的感興がもたらされることもあり得る。偏光板の透過軸と2分の1波長板の延伸軸とがなす角は、43度から47度であることが好ましく、44度から46度であることがより好ましい。
また延伸フィルムが2分の1波長板でない場合も領域(2)(3)はその延伸フィルムのリタデーションに依存した着色が発生し、特有の美的感興をもたらすこともあり得る。
【0023】
本発明は特に透明な液体用の透明な瓶のラベル用途に適している。具体的には日本酒、焼酎、ジン、ウォッカ、ウイスキー等の瓶への用途が特に適している。これらの飲料のラベルとして用いることでその飲み物の中に立体的構造物が入っているかのような錯視を与えることができ消費者に特別な感興を起こさせることが可能である。また、透明なコップ等の容器の装飾用に用いてもよい。
【0024】
また、これらの錯視される仮想な板の表面に文字、記号、模様等を表示させることができる。文字や模様を表示するためには2つの方法を用いることが可能である。1つの方法は偏光板上に貼付した2分の1波長板の1部を文字や模様の形状に切り取る方法である。このようにすることで黒もしくは青色に着色した錯視による構造物に白抜き(透明)で文字や模様を表示することが可能になる。
【0025】
第2の方法は、文字や模様の形状をした第2の延伸フィルムを、2分の1波長板上に貼付する方法である。第2の延伸フィルムのリタデーションもしくは延伸方向を調整することによって色調を付けることが可能になる。すなわち本方法によれば単色の表示のみならずカラー表示も可能になる。
【0026】
偏光板を筒型又は筒型の一部分の形状とし、当該偏光板の内側面の少なくとも一部に、当該偏光板の内側面に沿って湾曲可能な液晶素子が配置された表示装置もまた本発明の一つである。この表示装置は、既に述べた光学フィルムにおける透明延伸フィルムに代えて液晶素子を用いたものである。液晶素子は、上述の透明延伸フィルムと同様に、光の偏光面を回転させることが可能であり、しかも偏光面の回転の程度を電気的に制御することができる。このことから、上述の透明延伸フィルムに代えて液晶素子を用いた表示装置を用いることにより、任意に生じさせた虚像により情報等を表示することが可能となる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
図1は、実施例1における本発明の光学フィルムの構成を示す平面図である。実施例1では、偏光板100における長さ方向の中央部表面に、偏光板100の半分の長さをもつ2分の1波長板101を貼付した光学フィルムを用いる。言い換えると、符号100で表される領域は2分の1波長板を貼付していない領域であり、符号101で表される領域は2分の1波長板が貼付された領域である。偏光板100の表面に2分の1波長板101を貼付するに際し、符号102の矢印で表される偏光板の透過軸と、符号103の矢印で表される2分の1波長板の延伸方向の軸とがなす角が45度になるようにした。図2は、図1に示した光学フィルムを円筒状にしたときに、虚像の見え方を模式的に示す斜視図である。図1で示した光学フィルムを図2のように円筒状とするに際しては、図1で示した光学フィルムを、2分の1波長板101が内面側になるように単に丸めるだけでもよいし、また当該光学フィルムの面のうち2分の1波長板101の貼付された側の面に糊の層を設けて瓶などの筒状の構造物に貼付してもよい。図2において、矢印117は、2分の1波長板が貼付されていない領域を表し、図1における符号100で表された領域に対応する。矢印118は、2分の1波長板が貼付された領域であり、図1における符号101で表された領域に対応する。2分の1波長板は、筒状の構造物の内面側となる。
【0029】
符号110で表される領域では、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、偏光板を通過したときに縦方向に振動する偏光となって構造物の内部を移動する。観察者側の偏光板の透過軸は縦方向でこの偏光の振動方向と平行であるので、構造物の内部を通過してきた偏光は観察者側の偏光板を透過する。このため、観察者には領域110が透明であるように観察される。
【0030】
符号112で表される領域では、符号110で表される領域の場合と同様に、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、観察者とは反対側に位置する偏光板を透過することに伴って、構造物の内部での偏光の振動方向が縦方向になっている。そして、この偏光が観察者側の偏光板の内側(筒状構造物の内面側)に貼付された2分の1波長板を通過するとき、偏光の振動方向と2分の1波長板の延伸方向とは約45度の角度をなすため、2分の1波長板を通過する際に縦方向に振動している偏光が90度回転し横方向に振動する偏光となる。このため、観察者側の偏光板でこの偏光は吸収される。その結果、符号112で表される領域は黒色又は青色に観察される。
【0031】
符号111で表される領域では、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、観察者とは反対側に位置する偏光板を通過して縦方向に振動する偏光となり、さらにその偏光板に貼付された2分の1波長板を通過したときに振動方向が90度回転し横方向に振動する偏光となって、筒状の構造物の内部を移動する。そして、この偏光は、観察者側の偏光板の内面側に貼付された2分の1波長板を通過するとき、90度回転して縦方向に振動する偏光となって観察者側の偏光板に入る。この偏光の振動方向と偏光板の透過軸方向とは互いに平行となるため、その際に偏光は吸収されずに通過する。その結果、符号111で表される領域は、符号110で表される領域と同様に透明に観察される。
【0032】
上記のメカニズムで、観察者には、筒状の構造物の内部のうち符号112で表される領域の部分に板状の物体があるかのような錯覚を生じる。なお、符号113、114、115及び116で表される領域を抜けてくる光は、偏光板を1回だけしか通過しないため透明に観察される。このため符号112で表される領域における板状の物体は一部が欠けたような板として観察されることになる。しかし、実際にはこの上下の部分が欠けて見えるのはほとんど気にならない。
【0033】
このようなメカニズムにより、観察者からは、あたかも円筒の中に黒色又は青色の板が存在しているように見える。この円筒状の光学フィルムを例えば瓶等の透明容器の表面に貼付すると、図3に示すように、観察者からは、容器の中に黒色又は青色の薄い板が存在しているように見える。なお、図3では、ガラス製容器のひずみにより、生成した虚像の一部がゆがんで見える。容器の中に透明な液体が入っている場合には、透明な液体の中に黒色又は青色の板が存在しているように見え不思議な感興を催す。このことは不思議であると同時に新鮮であり観察者に新鮮な驚きを与える。
【0034】
[実施例2]
図4は、実施例2における本発明の光学フィルムの構成を示す平面図である。実施例2では、長方形である偏光板120の表面に、底辺の長さがこの長方形の長さ方向の辺の長さと同じであり、高さがこの長方形の幅方向の辺の長さと同じである三角形の形状をした2分の1波長板122を、三角形の底辺と長方形の長さ方向の一方の辺とが重なるように貼付した光学フィルムを用いる。言い換えると、符号120で表される領域は2分の1波長板を貼付していない領域であり、符号122で表される領域は2分の1波長板が貼付された領域である。偏光板120の表面に2分の1波長板122を貼付するに際し、矢印121で表される偏光板の透過軸と、矢印123で表される2分の1波長板の延伸方向の軸とがなす角が45度になるようにした。図5は、図4に示した光学フィルムを円筒状にしたときに、虚像の見え方を模式的に示す側面図である。図4で示した光学フィルムを円筒状とするに際しては、図4で示した光学フィルムを、2分の1波長板122が内面側になるように単に丸めるだけでもよいし、また当該光学フィルムの面のうち2分の1波長板122の貼付された側の面に糊の層を設けて瓶などの筒状の構造物に貼付してもよい。
【0035】
符号130で表される領域は、入射光が2分の1波長板の貼付されていない領域のみを通過する部分である。すなわち、図4において符号121で表される領域のみを入射光が通過してくる部分である。符号131で表される領域は、入射光が2分の1波長板の貼付されていない領域(符号120で表される領域)から入り、2分の1波長板の貼付された領域(符号122で表される領域)を経て観察者側に届くか、入射光が2分の1波長板の貼付された領域(符号122で表される領域)から入り、2分の1波長板の貼付されていない領域(符号120で表される領域)を経て観察者側に届く部分である。符号132で表される領域は、入射光が2分の1波長板の貼付された領域(符号122で表される領域)から入り、再度2分の1波長板の貼付された領域(符号122で表される領域)を経て観察者側に届く部分である。
【0036】
符号130で表される領域では、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、偏光板(符号121で表される領域)を通過したときに縦方向に振動する偏光となって構造物の内部を移動する。観察者側の偏光板(符号121で表される領域)の透過軸は縦方向でこの偏光の振動方向と平行であるので、構造物の内部を通過してきた偏光は観察者側の偏光板(符号121で表される領域)を透過する。このため、観察者には符号130で表される領域が透明であるように観察される。
【0037】
符号131で表される領域では、符号130で表される領域の場合と同様に、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、観察者とは反対側に位置する偏光板(符号121で表される領域)を透過することに伴って、構造物の内部での偏光の振動方向が縦方向になっている。そして、この偏光が観察者側の偏光板の内側(筒状構造物の内面側)に貼付された2分の1波長板(符号122で表される領域)を通過するとき、偏光の振動方向と2分の1波長板の延伸方向とは約45度の角度をなすため、2分の1波長板を通過する際に縦方向に振動している偏光が90度回転し横方向に振動する偏光となる。このため、観察者側の偏光板(符号122で表される領域)でこの偏光は吸収される。その結果、符号131で表される領域は黒色又は青色に観察される。また角度によっては、入射光が符号122で表される領域から入り符号121で表される領域から出てくる場合もあるが同様に黒色または青色に観察される。
【0038】
符号132で表される領域では、観察者と対向して筒状の構造物に入った光は、観察者とは反対側に位置する偏光板(符号122で表される領域)を通過して縦方向に振動する偏光となり、さらにその偏光板に貼付された2分の1波長板を通過したときに振動方向が90度回転し横方向に振動する偏光となって、筒状の構造物の内部を移動する。そして、この偏光は、観察者側の偏光板の内面側に貼付された2分の1波長板を通過するとき、90度回転して縦方向に振動する偏光となって観察者側の偏光板(符号122で表される領域)に入る。この偏光の振動方向と偏光板の偏光板の透過軸方向とは互いに平行となるため、その際に偏光は吸収されずに透過する。
【0039】
以上の結果、本実施例の錯視で見える像は「木の葉」のように見える。この円筒状のフィルムを透明容器の表面に貼ると、図6に示す写真のように、容器の中に青色の「木の葉」があるように見える。また、この容器の中に内容物が含まれている場合には、図7に示す写真のように、その内容物が容器の中に存在する木の葉の虚像を突き抜けているように見える。さらに、貼付した2分の1波長板の一部を細い帯状に切り取り「木の葉」の筋を表現することもできる。
【0040】
一方、本発明によらずに、本発明と同様に虚像を生じさせるためには、透過軸が直交する2枚の偏光板を正確に張り合わせることが必要で、そのような方法で実現できる形状は限られている。そのため、こうした2枚の偏光板を用いる方法は玩具や科学啓蒙用のオブジェなどごく限られた用途に限られている。特にラベル等をこのような方法で作製する場合は、2枚の偏光方向の異なる偏光板を、隙間を生じないように正確に貼付する必要があるため工業的な方法としては不適当である。さらにこの方法で実現できる形状も極単純な形状に限られる。
【符号の説明】
【0041】
100 偏光板
101 2分の1波長板
102 偏光板の透過軸の方向
103 2分の1波長板の延伸方向
110 観察者と反対方向からの入射光が偏光板を2回透過して観察者側に達する領域
111 入射光が内側に2分の1波長板を貼付した偏光板を2回通過して観察者側に達する領域
112 入射光が偏光板を1回、偏光板に貼付された2分の1波長板を1回、偏光板を1回通過して観察者側に達する領域
113 入射光が偏光板を1回通過して観察者側に達する領域
114 入射光が偏光板を1回、2分の1波長板を1回通過して観察者側に達する領域
115 入射光が2分の1波長板を1回 偏光板を1回通過して観察者側に達する領域
116 入射光が1回偏光板を通過して観察者側に達する領域
117 偏光板のみの領域
118 偏光板の内側に2分の1波長板が貼付されている領域
120 偏光板
121 偏光板の透過軸の方向
122 2分の1波長板
123 2分の1波長板の延伸方向
130 入射光が偏光板のみの領域を2回透過する領域
131 入射光が偏光板を透過したのち2分の1波長板を透過し偏光板を透過する領域
132 入射光が偏光板を透過したのち2分の1波長板を2回透過しさらに偏光板を透過する領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7