【0010】
脂環構造含有樹脂の具体例としては、
(1)ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体、並びにこれらの水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加共重合体などのノルボルネン系重合体、
(2)単環の環状オレフィン系重合体及びその水素添加物、
(3)環状共役ジエン系重合体及びその水素添加物、
(4)ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びビニル脂環式炭化水素系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との共重合体、並びにこれらの水素添加物、ビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環の水素添加物及びビニル芳香族単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との共重合体の芳香環の水素添加物などのビニル脂環式炭化水素系重合体、などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、脂環構造含有重合体が特に好ましい。
このような脂環構造含有重合体としては、具体的には特開平5−279554号公報に記載されている開環重合体およびその水素添加物、特開2004−067985号公報に記載のメタクリル基を側鎖にもつノルボルネン誘導体をメタロセン触媒等で開環重合させた後、水素化して得られる重合体、特開2001−26693号公報に記載されるエチレンと環状オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0013】
(3)射出成形
このペレットをホッパーに入れ、ホッパーからシリンダへ移送され、ここで溶融される。溶融樹脂は、シリンダからノズルを通して金型へ供給される。溶融樹脂の温度は、樹脂のガラス転移温度や融点に応じて任意に設定すれば良いが、脂環構造含有樹脂の場合、通常Tg+50℃〜Tg+200℃、好ましくは、Tg+120℃〜Tg+170℃である。また、金型の温度についても樹脂のガラス転移温度や融点に応じて任意に設定すればよく、脂環構造含有樹脂の場合、通常Tg−30℃〜Tg+10℃、好ましくは、Tg−20〜Tgである。
成形時、金型に加える圧力(型締め圧力)は、成形体の大きさや形状などにより任意に設定すればよいが、通常、20t〜150tである。
溶融樹脂が金型に充填された後、保圧工程に入るが、保圧力(射出圧力)も、成形品の大きさや形状などにより任意に設定すればよく、通常200〜2000kg/cm
2である。保圧時間についても成形体の大きさや形状などにより任意に設定すればよいが、通常2〜30秒である。
保圧工程が終了後、冷却工程に入る。冷却時間については格別な制限はないが、生産性の観点から通常1〜500秒である。
本発明において、この冷却工程で型締め圧力を下げることが特徴である。具体的には、0t超過2t以下、好ましくは0.1t超過1t以下の範囲に型締め圧力を下げる。また、このような圧力に下げてから金型を開くまでの時間は、冷却工程に要する時間全体の内、50%以上、好ましくは60%以上であり、冷却開始と同時に型締め圧力を下げても良い。
また、冷却工程での型締め圧力を下げる際は、圧力を一定速度で徐々に低下させても良いし、一気に所望の圧力まで減圧しても良い。但し、徐々に圧力を低下させる場合、型締め圧力が2t以下になった時点から冷却終了までの時間が50%以上でなければならない。
冷却後は、金型を開いて成形体を取り出す。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
・複屈折制御
複屈折制御については、樹脂成形レンズ検査システム「WPA−100」(フォトニックスラティス社製)を用いて評価した。
評価の方法としては成形品の位相差の値について、成形サイクル中に型締めを緩めない従来の手法と比較し、30%以上の位相差低減効果が確認できているものについては○、20%以上30%未満の位相差低減効果が確認できたものについては△、位相差低減効果が20%未満のものについては×で示した。
・配光角制御
配光角制御については、樹脂成形レンズ検査システム「WPA−100」(フォトニックスラティス社製)を用いて評価した。
評価の方法としては成形品の長手方向Lのうち、L/4と3L/4の位置における配光角度の差が、成形サイクル中に型締めを緩めない従来の方法と比較して20%以上配光角差が低減できているものについては○、10%以上20%未満配光角差が低減できているものについては△、配光角差低減が10%未満のものについては×で示した。
・形状
形状については、成形品の形状にヒケ又はバリ等の不良が発生するか否かを目視で評価した。
ヒケ又はバリ等の不良が無く、形状が制御されているものについては○、ヒケ又はバリ等の不良が発生し、形状不良の発生しているものについては×で示した。
【0016】
<実施例1>
樹脂材料としてノルボルネン系開環重合体水素化物(製品名「ZEONEX(登録商標)E48R」、日本ゼオン社製)を用い、射出成形機(製品名「S2000i−100A」、FANUC社製、スクリュー径32mm)で、以下の要領にて射出成形を行った。
100tで型締めした成型用金型にシリンダ温度280℃で溶融させた樹脂を流し込んだ後、1300kg/cm
2で15秒間保圧工程を行った。保圧工程が終了した後、75秒後に型締め圧を0.1tまで下げた。保圧工程終了時から200秒経過後に金型を開き、成型品(
図1参照)を取り出した。
得られた成型品の位相差、配向角、形状を上記に示す方法で評価した。
尚、成形体の最厚部W1は10mm、ランナー部厚W2は1mm、ゲート部厚W3は2mm、曲率半径(設計値)Rは3.01mmである。
【0017】
<実施例2>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を0.1tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例3>
保圧工程が終了した後、50秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例4>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例5>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
【0018】
<実施例6>
樹脂材料としてノルボルネンとエチレンとの付加型共重合体(製品名「TOPAS(登録商標)6013L−17」、
ポリプラスチックス社製)を用い、保圧工程が終了した後、50秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例7>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例8>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
【0019】
<比較例1>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例2>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例3>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例4>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例5>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例6>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を10tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
【0020】
<比較例7>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を0.5tまで下げた以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例8>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を2.5tまで下げた以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
実施例1〜8、および比較例1〜8で得られた結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
この結果から、保圧工程が終了した後の冷却工程において、冷却工程中に型締め圧力を0t以上2t以下に下げ、かつ型締め圧力が0t以上2t以下である時間が冷却時間の50%以上に調整することで、光学的な歪みのない、面形状に優れた寸法変化の少ない光学用途に好適なプラスチック成形体を得ることができることがわかる。