特許第6210043号(P6210043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210043
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】貼り合わせウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20171002BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20171002BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20171002BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L27/12 B
   H01L21/265 Q
   H01L21/205
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-196627(P2014-196627)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-72267(P2016-72267A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】丹波 佑太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 栄一
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−277477(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/027204(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/024404(WO,A1)
【文献】 特開2007−142326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/205
H01L 21/265
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、
前記ベースウェーハとして、下記の(2)の条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを使用することを特徴とする貼り合わせウェーハの製造方法
2)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の外周形状をハネ形状に調整しておくことによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する
【請求項2】
前記ベースウェーハとして、上記の(2)の条件に加えて、更に下記の(1)及び(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを使用することを特徴とする請求項1に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
(1)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅を0.20mm以下とする。
(3)エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となるように調整することによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
【請求項3】
前記(1)の面取り幅を0.05mm以上とすることを特徴とする請求項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記ボンドウェーハとして、該ボンドウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整されたものを使用することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記貼り合わせウェーハの製造方法で製造される貼り合わせウェーハのテラス幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記ダレ量を、ウェーハの半径に対するウェーハの表面変位量の2階微分で表されるZDDとすることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の貼り合わせウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入剥離法を用いた貼り合わせウェーハの製造方法に関し、特には、水素イオン等を注入したシリコン単結晶ウェーハを支持基板となるベースウェーハと酸化膜を介して貼り合わせた後に剥離してSOIウェーハを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOIウェーハの製造方法、特に先端集積回路の高性能化を可能とする薄膜SOIウェーハの製造方法として、イオン注入したウェーハを接合後に剥離してSOIウェーハを製造する方法(イオン注入剥離法:スマートカット法(登録商標)とも呼ばれる技術)が注目されている。このイオン注入剥離法は、二枚のシリコンウェーハのうち、少なくとも一方に酸化膜を形成すると共に、一方のシリコンウェーハ(ボンドウェーハ)の上面から水素イオン又は希ガスイオン等のガスイオンを注入し、該ウェーハ内部に微小気泡層(封入層)を形成させた後、該イオンを注入した方の面を、酸化膜を介して他方のシリコンウェーハ(ベースウェーハ)と密着させ、その後熱処理(剥離熱処理)を加えて微小気泡層を劈開面として一方のウェーハ(ボンドウェーハ)を薄膜状に剥離し、さらに熱処理(結合熱処理)を加えて強固に結合してSOIウェーハとする技術である(特許文献1参照)。この段階では、劈開面(剥離面)がSOI層の表面となり、SOI膜厚が薄くてかつ均一性も高いSOIウェーハが比較的容易に得られている。
【0003】
この場合、SOIウェーハの外周部には、貼り合わせられない部分が存在し、この部分は一般にテラスと呼ばれる。このテラスの幅が大きいと、SOIウェーハの外周除外領域を通常の鏡面研磨ウェーハ(PW)よりも広く設定する必要がある。一方、テラスの幅が小さいと、外周までデバイス形成に使用でき、ウェーハの実効面積を増加させることができるため、テラスの幅が小さいSOIウェーハが望ましい。テラス幅を決定するのは、主にウェーハのロールオフ形状、即ち外周のダレ形状であり、ダレが大きいと貼り合わせられない部分が広くなる(即ち、テラス幅が大きくなる)。
【0004】
特許文献2では、イオン注入剥離法を用いて、外周除去領域(テラス部)がないか低減したSOI層を有するSOIウェーハを得るために、両ウェーハの貼り合わせ面側の面取り幅を小さくする方法が開示されている。更に、特許文献3では、半導体接合ウェーハの外周の未接合部を小さくし、テラス部を極めて小さくするために、面取り幅を100μm以下にして接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−211128号公報
【特許文献2】特開2001−345435号公報
【特許文献3】特開2005−032882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、SOIウェーハのベースウェーハは支持基板としてSOI層を支持するための基板であったが、近年ではBOX層の下地までトレンチ等で分離しデバイス構造の一部として使用する例が増加してきた。このようなデバイス構造の一部として使用する領域を形成する方法の一つとして、ドーパントをコントロールしてエピタキシャル層を形成したウェーハ(エピタキシャルウェーハ)を作製し、これをベースウェーハとして用いたSOIウェーハの製造が行われるようになっている。しかしながら、エピタキシャル層はデバイスの要求により抵抗率や導電型を制御する必要があり、その制約によってエピタキシャル成長の条件が限定されるため、必ずしもエピタキシャルウェーハのロールオフ形状を優先できない場合がある。従って、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合には、SOIウェーハのテラス幅が大きくなってしまい、SOIウェーハの実効面積が少なくなってしまうという問題があった。このような問題はボンドウェーハとベースウェーハを絶縁膜を介して貼り合わせるSOIウェーハの製造のみならず、絶縁膜を介さず直接貼り合わせる場合も同様に生じる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを製造することができる貼り合わせウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、
前記ベースウェーハとして、下記の(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを使用する貼り合わせウェーハの製造方法を提供する。
(1)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅を0.20mm以下とする。
(2)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の外周形状をハネ形状に調整しておくことによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
(3)エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となるように調整することによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
【0009】
このような貼り合わせウェーハの製造方法であれば、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを製造することができる
【0010】
またこのとき、前記(1)の面取り幅を0.05mm以上とすることが好ましい。
【0011】
これによって、加工時のクラック、カケを防止することができる。
【0012】
またこのとき、前記ボンドウェーハとして、該ボンドウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整されたものを使用することが好ましい。
【0013】
このようなボンドウェーハを使用することで、エピタキシャルウェーハであるベースウェーハの外周形状との整合が取りやすくなるため、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを更に容易に作製することができる。
【0014】
またこのとき、前記貼り合わせウェーハの製造方法で製造される貼り合わせウェーハのテラス幅が、1mm以下であることが好ましい。
【0015】
このような貼り合わせウェーハであれば、実効面積が多く、外周までデバイス形成に使用することができる。
【0016】
またこのとき、前記ダレ量を、ウェーハの半径に対するウェーハの表面変位量の2階微分で表されるZDD(Z−Height Double Differentiation)とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の貼り合わせウェーハの製造方法であれば、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅が小さい(例えば1mm以下の)貼り合わせウェーハを製造することができる。このような貼り合わせウェーハであれば、実効面積が多く、外周までデバイス形成に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の貼り合わせウェーハの製造方法の一例を示すフロー図である。
図2】条件(1)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する例を示す断面図である。
図3】条件(2)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する例を示す断面図である。
図4】条件(3)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する例を示す断面図である。
図5】(a)面取り幅、及び(b)テラス幅を説明するための説明図である。
図6】ZDDを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを製造することができる貼り合わせウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、下記の(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを、ベースウェーハとして使用することで、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、ボンドウェーハの表面から水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成し、前記ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせた後、前記イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、前記ベースウェーハ上に薄膜を有する貼り合わせウェーハを製造する方法において、
前記ベースウェーハとして、下記の(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを使用する貼り合わせウェーハの製造方法である。
(1)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅を0.20mm以下とする。
(2)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の外周形状をハネ形状に調整しておくことによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
(3)エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となるように調整することによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
ここで、図5を参照して面取り幅とテラス幅について説明する。
エピタキシャル成長を行うウェーハ1のエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅は、図5(a)のX1の長さで表される。
また、テラス幅は図5(b)のX3で表される長さであり、ベースウェーハ3上に薄膜(SOI層)6が形成された貼り合わせウェーハ7において、面取り幅X1と、面取り部の端から薄膜(SOI層)6の端までの幅X2との合計で表される。
【0024】
また、本発明では、ダレ量を、一般的に用いられている指標であるZDD(Z−Height Double Differentiation)とすることができる。
ZDDの定義を、図6を参照して説明する。図6中の横軸はウェーハの外周端からの距離を示し、縦軸はウェーハ表面の形状の変位量を示す。一般的に、ZDDとは、ウェーハ半径に対するウェーハの表面変位量の2階微分を意味する。ZDDが正の値の場合はハネ方向に表面が変位していることを示し、反対に負の値の場合はダレ方向に表面が変位していることを指す。
【0025】
以下、本発明の貼り合わせウェーハの製造方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の貼り合わせウェーハの製造方法の一例を示すフロー図である。
図1の貼り合わせウェーハの製造方法では、まずベースウェーハとなるエピタキシャルウェーハを準備するために、エピタキシャル成長を行うウェーハ1を用意し(図1(A1))、用意したエピタキシャル成長を行うウェーハ1にエピタキシャル層2を形成して、エピタキシャルウェーハ3を作製する(図1(A2))。このとき、上記の(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する。このようにして作製したエピタキシャルウェーハ3をベースウェーハとして使用する(以下、ベースウェーハ3と記載する)。
次に、ボンドウェーハ4を用意し(図1(B1))、ボンドウェーハ4に水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入して、ウェーハ内部にイオン注入層5を形成する(図1(B2))。
次に、ボンドウェーハ4のイオン注入した表面とベースウェーハ3の表面とを貼り合わせる(図1(C))。次に、イオン注入層5でボンドウェーハ4を剥離させ、ベースウェーハ3上に薄膜6を形成することで、貼り合わせウェーハ7を製造する(図1(D))。
【0026】
以下、各工程について更に詳しく説明する。
[ベースウェーハの準備(エピタキシャルウェーハの作製)]
本発明では、ベースウェーハとして、下記の(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によって作製されたエピタキシャルウェーハを使用する。
(1)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅を0.20mm以下とする。
(2)エピタキシャル成長を行うウェーハのエピタキシャル成長を行う面側の外周形状をハネ形状に調整しておくことによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
(3)エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となるように調整することによって、前記エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量を−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整する。
【0027】
なお、エピタキシャル成長を行うウェーハとしては、特に限定されないが、例えば鏡面研磨されたシリコン単結晶ウェーハなどを好適に用いることができる。
【0028】
以下、(1)〜(3)の各条件について更に詳しく説明する。
<条件(1)>
図2は、条件(1)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する例を示す断面図である。図2の方法では、まず、エピタキシャル成長を行うウェーハ1として、エピタキシャル成長を行う面側の面取り幅X1が0.15mm(0.20mm以下)のウェーハを用意する(図2(1−A1))。次に、このエピタキシャル成長を行うウェーハ1の表面にエピタキシャル層2を形成してエピタキシャルウェーハ3を作製する(図2(1−A2))。
【0029】
エピタキシャル成長を行うウェーハ1として、エピタキシャル成長を行う面側の面取り幅X1が0.20mm以下のウェーハを用いることで、貼り合わせウェーハを作製した際のテラス幅の低減効果が顕著となる。
【0030】
またこのとき、面取り幅X1を0.05mm以上とすることで、加工時のクラック、カケを防止することができるため好ましい。
【0031】
<条件(2)>
図3は、条件(2)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製する例を示す断面図である。図3の方法では、まず、エピタキシャル成長を行うウェーハ1として、エピタキシャル成長を行う面側の外周形状がハネ形状に調整されたウェーハを用意する(図3(2−A1))。次に、このエピタキシャル成長を行うウェーハ1の表面に、エピタキシャルウェーハ3の貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層2を形成して、エピタキシャルウェーハ3を作製する(図3(2−A2))。
【0032】
なお、エピタキシャル成長を行うウェーハ1のエピタキシャル成長を行う面側の外周形状をハネ形状に調整するためには、例えば、鏡面研磨時の加重や研磨布の回転速度などの研磨条件を適宜調整すればよい。
【0033】
<条件(3)>
図4は、条件(3)を含む方法によってエピタキシャルウェーハを製造する例を示す断面図である。図4の方法では、エピタキシャル成長を行うウェーハ1を用意する(図4(3−A1))。次に、このエピタキシャル成長を行うウェーハ1の表面に、エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となり、かつエピタキシャルウェーハ3の貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層2を形成して、エピタキシャルウェーハ3を作製する(図4(3−A2))。
【0034】
なお、ここで、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となるように調整するとは、エピタキシャル成長前がダレ形状ならエピタキシャル成長後にダレ形状が小さくなるか平坦又はハネ形状となるように調整する、エピタキシャル成長前が平坦ならエピタキシャル成長後にハネ形状となるように調整する、あるいはエピタキシャル成長前がハネ形状ならエピタキシャル成長後にハネ形状が大きくなるように調整することを意味する。
【0035】
また、エピタキシャル成長の際の成長条件(成長速度、成長温度、加熱ランプパワーバランス等)を適宜調整することによって、エピタキシャル層をハネ形状、ダレ形状に作り分けることができる。
【0036】
また、条件(2)又は条件(3)においては、エピタキシャル成長を行うウェーハ1のエピタキシャル成長を行う面側の面取り幅は、特に限定されず、通常の幅(0.30〜0.50mm程度)としてもよい。
【0037】
本発明の貼り合わせウェーハの製造方法において、エピタキシャルウェーハを作製する際には、上述の条件(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法によってエピタキシャルウェーハを作製すればよい。即ち、上述のように条件(1)〜(3)のうち1つを含む方法でエピタキシャルウェーハを作製してもよいし、これらの条件のうち2つ又は3つ全てを含む方法でエピタキシャルウェーハを作製してもよい。
【0038】
2つの条件を含む方法としては、以下の3つの方法が挙げられる。
(条件(1)+(2))
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、エピタキシャル成長を行う面側の面取り幅が0.20mm以下であり、かつエピタキシャル成長を行う面側の外周形状がハネ形状に調整されたウェーハを用意し、このウェーハの表面に、エピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層を形成する方法。
(条件(1)+(3))
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、エピタキシャル成長を行う面側の面取り幅が0.20mm以下であるウェーハを用意し、このウェーハの表面に、エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となり、かつエピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層を形成する方法。
(条件(2)+(3))
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、エピタキシャル成長を行う面側の外周形状がハネ形状に調整されたウェーハを用意し、このウェーハの表面に、エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となり、かつエピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層を形成する方法。
【0039】
3つの条件を全て含む方法としては、以下の方法が挙げられる。
(条件(1)+(2)+(3))
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、エピタキシャル成長を行う面側の面取り幅が0.20mm以下であり、かつエピタキシャル成長を行う面側の外周形状がハネ形状に調整されたウェーハを用意し、このウェーハの表面に、エピタキシャル成長条件を、エピタキシャル成長前後のダレ量の変化量が正の値となり、かつエピタキシャルウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量が−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内になるように調整しながらエピタキシャル層を形成する方法。
【0040】
なお、含まれる条件が多いほど、製造される貼り合わせウェーハのテラス幅を小さくすることができるため、条件(1)〜(3)のうち2つ以上を含むことが好ましく、3つ全てを含むことが更に好ましい。
【0041】
以上のような方法で、ベースウェーハとして使用するエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0042】
[ボンドウェーハの準備]
本発明に使用されるボンドウェーハとしては、特に限定されないが、例えば鏡面研磨されたシリコン単結晶ウェーハなどを好適に用いることができる。なお、ボンドウェーハの貼り合わせ面側の面取り幅は通常の幅(0.30〜0.50mm程度)でよいが、ボンドウェーハの貼り合わせ面側の外周のダレ量は−30nm/mmから+10nm/mmの範囲内に調整されていることが好ましい。このようなボンドウェーハを使用することで、エピタキシャルウェーハであるベースウェーハの外周形状との整合が取りやすくなるため、面取り幅の低減効果が向上し、テラス幅の小さい貼り合わせウェーハを更に容易に作製することができる。
また、ボンドウェーハには、埋め込み酸化膜となる酸化膜を形成してもよい。
【0043】
次に、ボンドウェーハの表面又は酸化膜の上から、イオン注入機により水素イオン、希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してウェーハ内部にイオン注入層を形成する。この際、所望の膜厚の薄膜を得ることができるように、イオン注入加速電圧(加速エネルギー)を選択する。
【0044】
[貼り合わせ]
次に、上述のようにして準備したベースウェーハ(エピタキシャルウェーハ)と、イオン注入層を形成したボンドウェーハを貼り合わせる。このとき、ボンドウェーハのイオン注入した表面とベースウェーハの表面とを、直接あるいは絶縁膜を介して貼り合わせる。
【0045】
[薄膜の形成(ボンドウェーハの剥離)]
次に、貼り合わせたウェーハにおいて、イオン注入層でボンドウェーハを剥離させることにより、ベースウェーハ上に薄膜を形成する。剥離する際には、例えば剥離熱処理など公知の方法で剥離を行えばよい。
【0046】
以上説明したような本発明の貼り合わせウェーハの製造方法によって、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅が小さい(例えば1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の)貼り合わせウェーハを製造することができる。このような貼り合わせウェーハであれば、実効面積が多く、外周までデバイス形成に使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.20mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、−20nm/mm(ダレ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−60nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.20mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.80mmであり、これらの合計(テラス幅)は1.00mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0049】
[実施例2]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.35mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、+20nm/mm(ハネ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−30nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.35mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.65mmであり、これらの合計(テラス幅)は1.00mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0050】
[実施例3]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.35mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、−40nm/mm(ダレ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−30nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.35mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.60mmであり、これらの合計(テラス幅)は0.95mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0051】
[実施例4]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.15mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、+20nm/mm(ハネ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−20nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.15mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.65mmであり、これらの合計(テラス幅)は0.80mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0052】
[実施例5]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.15mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、−20nm/mm(ダレ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−10nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.15mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.60mmであり、これらの合計(テラス幅)は0.75mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0053】
[実施例6]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.35mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、+5nm/mm(ハネ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は+10nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.35mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.25mmであり、これらの合計(テラス幅)は0.60mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0054】
[実施例7]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.15mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、+5nm/mm(ハネ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は+10nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.15mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.25mmであり、これらの合計(テラス幅)は0.40mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0055】
[比較例1]
エピタキシャル成長を行うウェーハとして、面取り幅が0.35mmの面取形状を持つ直径300mmのPWウェーハ(シリコン単結晶からなる鏡面研磨ウェーハ)を準備した。このときのウェーハのダレ量は、中心から148mmの地点(外周端から2mmの地点)での傾斜量として測定される値(ZDD)で、−20nm/mm(ダレ形状)とした。次に、このウェーハに3.5μm厚さのエピタキシャル層を積層した。エピタキシャル成長条件の調整により、エピタキシャル成長後のダレ量は−60nm/mmとした。このようにして作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した。
一方、ボンドウェーハとしては、面取り幅が0.35mmの面取形状で、貼り合わせ面側の外周のダレ量が−20nm/mmである直径300mmのPWウェーハに対し、膜厚200nmのBOX酸化膜を形成し、加速エネルギー50keV、ドーズ量5.0×1016/cmの条件で水素イオン注入を実施したものを、ボンドウェーハとして使用した。
次に、ボンドウェーハとベースウェーハの貼り合わせを行い、500℃30分の剥離熱処理を施した。その結果、ボンドウェーハが剥離されてSOIウェーハを得ることができた。作製したSOIウェーハは、面取り幅が0.35mm、面取り部の端からSOI層の端までの幅が0.80mmであり、これらの合計(テラス幅)は1.15mmであった。
ベースウェーハ、ボンドウェーハの面取り幅とダレ量を表1に示す。また、作製したSOIウェーハの面取り幅、面取り部の端からSOI層の端までの幅、及びテラス幅を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示されるように、条件(1)〜(3)のうち少なくとも1つの条件を含む方法で作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した実施例1〜7では、テラス幅が1mm以下の貼り合わせウェーハを製造することができた。一方、条件(1)〜(3)のうちいずれの条件も含まない方法で作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用した比較例1では、テラス幅が1mm以下の貼り合わせウェーハを製造することができなかった。更に、条件(1)〜(3)のうち、2つ以上の条件を含む方法で作製したエピタキシャルウェーハをベースウェーハとして使用することで、テラス幅をより小さくすることができた。
【0059】
以上のことから、本発明の貼り合わせウェーハの製造方法であれば、エピタキシャルウェーハをベースウェーハに使用した場合においても、テラス幅が小さい(例えば1mm以下の)貼り合わせウェーハを製造することができることが明らかとなった。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0061】
1…エピタキシャル成長を行うウェーハ、 2…エピタキシャル層、
3…エピタキシャルウェーハ(ベースウェーハ)、 4…ボンドウェーハ、
5…イオン注入層、 6…薄膜(SOI層)、 7…貼り合わせウェーハ。

X1…エピタキシャル成長を行うウェーハの面取り幅、
X2…面取り部の端から薄膜(SOI層)の端までの幅、 X3…テラス幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6