(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
好適な実施形態に係る感光性樹脂組成物について説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、(メタ)アクリロキシ基とはアクリロキシ基又はメタクリロキシ基を意味する。また、「EO変性」とは、ポリオキシエチレン鎖を有する化合物であることを意味する。
【0019】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ樹脂、(D)無機フィラー、及び、(E)アミノ基を有する有機フィラーを含有する。
【0020】
(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有すればどのようなものでもよいが、(a1)エポキシ樹脂と(a2)不飽和モノカルボン酸のエステル化物に、(a3)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を付加した反応物等を用いることができる。
【0021】
上記(a1)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる樹脂が好ましい。
【0022】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール又はアルキルフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック樹脂類を、エピクロルヒドリンと反応させて得られる樹脂が好ましい。
【0023】
その他のエポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド−フェノール型又はクレゾール型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製EPPN502H、FAE2500等)、ダウ・ケミカル社製DER−330,337,361、ダイセル化学工業社製セロキサイド2021、三菱ガス化学社製TETRAD−X,C、日本曹達社製EPB−13,27等も使用することができる。
【0024】
(a2)不飽和モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である半エステル、飽和若しくは不飽和二塩基酸と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である半エステル、又は、飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との反応物等が挙げられる。
【0025】
この半エステル化合物又は反応物としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等とを常法により等モル比で反応させて得られる反応物などが挙げられる。これらの(a2)不飽和モノカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0026】
(a3)飽和又は不飽和多塩基酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0027】
(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1050、TCR−1335H、ZAR−1035、ZAR−2001H、ZFR−1185及びZCR−1569H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、UE−EXP−2810PM、UE−EXP−2827、EXP−3073、EXP−3133(以上、DIC社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0028】
(A)成分としては、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させて得られるポリウレタン化合物を用いても良い。このようなポリウレタン化合物は、例えば、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
【0029】
(A)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。(A)成分の屈折率は、用いる樹脂の構造により様々であるが、上記で述べた構造のものを用いた場合、1.4〜1.7である。これらの中でも多くの樹脂の屈折率は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の屈折率である1.57付近である。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分の屈折率が1.5〜1.6のものを用いた場合に、本発明の効果が最も発揮される。なお、屈折率は以下に示すような市販の装置で測定可能である。例えば、屈折計Abbematシリーズ(Anton paar社製)、又は精密屈折計KPRシリーズ(島津製作所社製)を用いて、屈折率を簡易的に測定することができる。
【0030】
(A)成分の酸価は、20〜180mgKOH/gであることが好ましく、30〜150mgKOH/gであることがより好ましく、40〜120mgKOH/gであることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られるようになる。
【0031】
ここで、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
なお、式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を示し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0032】
(A)成分の重量平均分子量は、塗膜性の観点から、3000〜30000であることが好ましく、5000〜20000であることがより好ましく、7000〜15000であることが特に好ましい。
【0033】
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値から求めることができる。重量平均分子量の測定条件については、本願明細書の実施例と同一の測定条件とする。
【0034】
(B)光重合開始剤(以下、「(B)成分」という場合がある。)としては、活性エネルギー線の照射により、遊離ラジカルを発生させる化合物を用いることができる。(B)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−フェニル,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン系化合物;2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。
【0035】
(B)成分としては、高感度化、高解像性、及び下地材質によらず開口形状を矩形にするという観点から、芳香族ケトン、オキシムエステルを有する化合物、チオキサントン化合物又はアシルホスフィンオキサイド化合物を用いることが好ましく、芳香族ケトン又はチオキサントン化合物を用いることがより好ましい。また、オキシムエステルを有する化合物と芳香族ケトンとを併用することが好ましく、芳香族ケトンとチオキサントン化合物とを併用することがさらに好ましい。
【0036】
上記芳香族ケトンとしては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1が最も好ましい。2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1は、IRGACURE 907(BASF株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0037】
上記オキシムエステルを有する化合物としては、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられ、この中でも、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が最も好ましい。これは、IRGACURE OXE 02(BASF株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0038】
上記チオキサントン化合物としては、2,4−ジエチルチオキサントンが最も好ましい。これは、KAYACURE−DETX−S(日本化薬株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0039】
特に近年、露光方式が、レーザーダイレクト露光方式に移行しつつある。全面一括で露光する従来法に比べ、永久マスクレジスト(ソルダーレジスト)に高感度が要求されており、そのような場合、上記光重合開始剤の組み合わせが効果を発揮する。
【0040】
また、(B)成分には、必要に応じて、増感剤を併用することもできる。増感剤としては、公知のものを用いることができる。
【0041】
(C)エポキシ樹脂(以下、「(C)成分」という場合がある。)としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレ−トなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0042】
これらの化合物としては市販のものを用いることができる。具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしてはエピコート828、エピコート1001、エピコート1002(いずれも三菱化学社製、商品名)等を挙げることができる。ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしてはエピコート807(三菱化学社製、商品名)、YSLV−80(新日鐵化学株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしてはEBPS−200(日本化薬株式会社製、商品名)、エピクロンEXA−1514(DIC社製、商品名)等を挙げることができる。
【0043】
ビフェノールジグリシジルエーテルとしてはYL6121(三菱化学社製、商品名)等を挙げることができる。ビキシレノールジグリシジルエーテルとしてはYX4000H(三菱化学社製、商品名)等を挙げることができる。
【0044】
水添ビスフェノールAグリシジルエーテルとしてはST−2004、ST−2007(いずれも新日鐵化学社製、商品名)等を挙げることができる。上述した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてはST−5100、ST−5080(いずれも新日鐵化学社製、商品名)等を挙げることができる。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、NC−3000、NC−3000H(いずれも日本化薬株式会社製、商品名)等を挙げることができる。トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレ−トとしては、TEPIC−S、TEPIC−VL、TEPIC−PASB26(日産化学工業社製)、アラルダイドPT810(BASF社製、商品名)等を挙げることができる。
【0045】
その他、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂のJER157S(三菱化学社製、商品名)等が挙げられる。テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂のJERYL−931(三菱化学社製、商品名)、アラルダイド163(BASF社製)等が挙げられる。テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂のZX−1063(新日鐵化学社製)等が挙げられる。ナフタレン基含有エポキシ樹脂のESN−190、ESN−360(いずれも新日鐵化学社製、商品名)、HP−4032、EXA−4750、EXA−4700(いずれもDIC社製、商品名)等が挙げられる。ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂のHP−7200、HP−7200H(いずれもDIC社製、商品名)等が挙げられる。グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂のCP−50S、CP−50M(いずれも日本油脂社製、商品名)等が挙げられる。エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体のPB−3600、PB−4700(いずれもダイセル化学工業社製、商品名)等が挙げられる。CTBN変性エポキシ樹脂のYR−102、YR−450(いずれも新日鐵化学社、商品名)等が挙げられる。ただし、(C)成分は、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(D)無機フィラー(以下、「(D)成分」という場合がある。)について説明する。本実施形態においては、(D)無機フィラーは、少なくとも(d−1)第一の無機フィラー及び(d−2)第二の無機フィラーを含有する。すなわち、(d−1)平均粒子径が100nm〜500nm、最大粒子径が2μm以下、屈折率が1.5〜1.8である第一の無機フィラー、(d−2)平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である第二の無機フィラー、の2種類を用いる。いずれの無機フィラーも最大粒子径が2μm以下となるように分散されることが好ましい。
【0047】
(d−1)第一の無機フィラーとしては、屈折率が1.5〜1.8の範囲であり、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、鉱山物由来のフィラー(タルク、マイカ等)等が挙げられる。これらは、粉砕機で粉砕され、場合によっては分級を行い、平均粒子径として100nm〜500nmの範囲となり、最大粒子径2μm以下となるよう調整し、分散されることが望ましい。(d−1)第一の無機フィラーの平均粒子径としては、115nm〜500nmの範囲であることがより望ましく、130nm〜480nmの範囲であることがさらに望ましい。また、(d−1)第一の無機フィラーの最大粒子径としては、1.9μm以下がより望ましく、1.8μm以下であることがさらに望ましい。
【0048】
一方、(d−2)第二の無機フィラーは、平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である無機フィラーである。また、(d−2)第二の無機フィラーは、熱膨張係数が5.0×10
−6/℃以下であることが好ましく、3.0×10
−6/℃以下であることがより好ましく、1.0×10
−6/℃以下であることがさらに好ましい。
【0049】
(d−2)第二の無機フィラーの種類としては、いずれでも使用できるが、粒径の観点から、溶融球状シリカ、溶融粉砕シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカが好ましく、その中では、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカがより好ましい。これらのシリカは、必要に応じて、分級等を行い、粒径を調整したうえで用いることができる。第二の無機フィラーは、平均粒子径が5nm〜200nmの範囲にある所謂ナノシリカを用いることが望ましく、平均粒子径が5nm〜150nmの範囲にあるナノシリカを用いることがより望ましく、平均粒子径が5nm〜100nmの範囲にあるナノシリカを用いることがさらに望ましい。第二の無機フィラーは、最大粒子径が2μm以下で分散されることが望ましく、最大粒子径が1.5μm以下で分散されることがより好ましく、最大粒子径が1.3μm以下で分散されることがさらに好ましい。また、凝集することなく感光性樹脂組成物中に分散させるためには、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては、一般的に入手可能なものを用いることができ、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が使用可能である。
【0051】
具体的な化合物名としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等がある。
【0052】
用いるシランカップリング剤として望ましいものは、感光性樹脂組成物に含まれる(A)成分と反応する種類のものが良く、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシランが望ましい。これらのシランカップリング剤は、シリカと樹脂の結合を強めるため、永久マスクレジストとした際に膜の強度を強め、温度サイクル試験における耐クラック性等の向上に寄与する。
【0053】
また、アクリルシラン、メタクリルシランを用いてもよい。エチレン性不飽和基を有する光重合モノマーのエチレン性不飽和基と反応し、上記シランカップリング剤を用いたときと同様の効果を発揮すると考えられる。
【0054】
其々の無機フィラーの粒径を測定する際には、公知の粒度分布計を用いることが望ましい。例えば、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求めるレーザー回折散乱式粒度分布計、動的光散乱法による周波数解析を用いて粒度分布を求めるナノ粒子の粒度分布計等が挙げられる。また、其々の無機フィラーの屈折率は、以下に示すような市販の装置で測定可能である。例えば、屈折計Abbematシリーズ(Anton paar社製)、又は精密屈折計KPRシリーズ(島津製作所社製)を用いて、屈折率を簡易的に測定することができる。
【0055】
(D)無機フィラーの含有量は、感光性樹脂組成物の全質量基準で25質量%以上70質量%以下であることが望ましく、35質量%以上60質量%以下であることがより望ましく、40質量%以上55質量%以下であることがさらに望ましい。
【0056】
また、(D)無機フィラーの(d−1)の質量と(d−2)の質量との比は、(d−1)の質量:(d−2)の質量=1.0:0.1〜1.0:5.0であることが望ましく、1.0:0.2〜1.0:3.0であることがより望ましく、1.0:0.5〜1.0:1.5であることがさらに望ましい。
【0057】
(E)アミノ基を有する有機フィラー(以下、「(E)成分」という場合がある。)について説明する。(E)成分は、平均粒子径が500nm以下、最大粒子径が2μm以下である。(E)成分の平均粒子径は、400nm以下であることが好ましい。また、(E)成分の最大粒子径は、1.5μm以下であることが好ましい。このような有機フィラーが、組成物中に分散されていることが望ましい。有機フィラーの平均粒子径及び最大粒子径については、(D)無機フィラーについて記したのと同様の方法によって測定することができる。
【0058】
さらには、最近の配線微細化の傾向からライン/スペースで、5/5μmといった微細配線間における絶縁耐性が要求されているが、上記第一の無機フィラーと同様に上記有機フィラーの最大粒子径を2μm以下とすることにより、5/5μmといった微細配線間における絶縁耐性を達成することができる。
【0059】
(E)アミノ基を有する有機フィラーとしては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、ジシアンジアミド、トリアジン化合物、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類、イミダゾール系、チアゾール系及びトリアゾール系、シランカップリング剤等の添加剤類が挙げられる。市販品としては、2MZ−AZINE,2E4MZ−AZINE,C11Z−AZINE、2MA−OK(いずれも四国化成工業社製、商品名)等が入手可能である。
【0060】
(E)成分は、感光性樹脂組成物層と金属との密着性の他、耐プレシャークッカー性(耐PCT性)、クラック耐性、耐熱性、めっき薬耐性及び耐電食性等の特性を向上させることができる。(E)成分も所定の粉砕機、分散機、分級機等を用いて樹脂組成物中に分散させることができる。
【0061】
(E)アミノ基を有する有機フィラーの含有量は、固形分総量100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが望ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがより望ましい。本有機フィラーは下地配線金属の酸化防止効果を示すが、0.1質量部以上とすることで、酸化防止効果を向上させることができ、20質量部以下とすることで、解像性をより充分なものとすることができ、めっき浴の汚染を低減することができる。
【0062】
(F)ポリアミド構造を有するエラストマー(以下、「(F)成分」という場合がある。)は、分子内にゴム成分からなる柔軟性成分と芳香族ポリアミド成分からなる剛直性成分とを有するブロック共重合体からなる。ゴム成分としては、ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロビレンゴム、スルホン化ポリエチエレン、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、水素化ニトリルゴム等が挙げられる。(F)成分としては、フェノール性水酸基含有ポリアミドに、末端にカルボキシル基を有するブタジエン−アクリロニトリルゴム(ポリブタジエン/アクリロニトリル)を反応させたブロック共重合体であることが望ましい。そのような化合物としては、市販品では、例えば、KAYAFLEX BPAM155、BPAM01H(日本化薬株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0063】
(F)成分の含有量は、感光性樹脂組成物全質量中、0.5質量%以上15質量%以下であることが望ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることがより望ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがさらに望ましい。含有量が0.5質量%以上とすることで、密着性、柔軟性、強靭性等をより向上させることができ、15質量%以下とすることで、解像性をより充分なものとすることができる。
【0064】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて他のエラストマー成分を含有してもよい。そのようなエラストマーとしては、公知のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が例示できる。スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマ、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマ等が例示できる。
【0065】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、光重合性モノマーを含有してもよい。感光性樹脂組成物に使用可能な光重合性モノマー成分としては、特に制限がなくエチレン性不飽和基を分子内に2つ以上有する光重合性モノマーを含有することが、感度、解像性の点で好ましい。光重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。特にエチレン性不飽和基を1分子内に3つ以上有する多官能光重合モノマーを1種以上含有することが望ましい。
【0066】
例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーなどが挙げられる。ウレタンモノマーとしては、UX−5120D(日本化薬株式会社、商品名)等が入手可能である。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基を1分子内に6つ以上有する多官能光重合モノマーがリフロー実装時のクラック耐性の向上に有効である。
【0067】
エチレン性不飽和基を1分子内に3つ以上有する多官能光重合モノマーとしては、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート(SR−454、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
エチレン性不飽和基を1分子内に6つ以上有する多官能光重合モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとその類似構造体のものがあり、商業的には、KAYARAD DPHA、KAYARAD D−310、KAYARAD D−330、KAYARAD DPCA−20、30、KAYARAD DPCA−60、120(いずれも日本化薬株式会社製、商品名)等として入手可能である。
【0068】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて顔料成分を用いることができる。例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アゾ系の有機顔料等の着色剤又は染料などを用いることができる。
【0069】
さらに、感光性樹脂組成物は、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン、ニトロソ化合物等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト、エアロジル、アミドワックス等のチキソ性付与剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤などを、感光性樹脂組成物の所望の特性に影響を与えない範囲で含んでいてもよい。
【0070】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて希釈剤を用いることができる。希釈剤としては、従来公知の有機溶剤を使用できる。
【0071】
感光性樹脂組成物を液状のまま使用する場合には、希釈剤の含有量は、感光性樹脂組成物全質量中の5〜40質量%であることが好ましい。
【0072】
次に、好適な実施形態の感光性フィルムについて説明する。
【0073】
本発明に係る感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層(感光層)とを備えるものである。この感光性樹脂組成物層上には、該感光性樹脂組成物層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
【0074】
上記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。上記支持体(重合体フィルム)の厚みは、5〜25μmとすることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、10〜20μmであることがさらに好ましい。この厚みが5μm以上であると、現像前の支持体剥離の際に支持体の破れ等を充分に抑制することができる。この厚みが25μm未満であると支持体を介しての露光であっても充分な解像度を得ることができる。なお、上記重合体フィルムは、一つを支持体として、他の一つを保護フィルムとして感光性樹脂組成物層の両面に積層して使用してもよい。
【0075】
上記保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。上記保護フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。
【0076】
上記感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤(希釈剤)に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液(塗布液)とした後に、かかる溶液(塗布液)を支持体上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。
【0077】
上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等を用いた公知の方法で行うことができる。また、上記乾燥は70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。乾燥後の感光性樹脂組成物中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、感光性樹脂組成物全質量に対して3質量%以下とすることが好ましい。
【0078】
上記感光性樹脂組成物からなる感光層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで10〜100μmであることが好ましく、15〜60μmであることがより好ましく、20〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが10μm以上であると、容易に塗工することが可能であり、100μm以下であると、感光層内部においても充分な感度が得られ、解像度も向上させることができる。
【0079】
上記感光性フィルムは、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層などを更に有していてもよい。また、得られた感光性フィルムはシート状で、又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。なお、この際支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性フィルムロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0080】
次に、本発明の感光性フィルムを用いたレジストパターンの形成方法について説明する。
【0081】
まず、レジストパターンを形成すべき基板上に、上述した感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する。上記感光性フィルムの保護フィルムを感光性樹脂組成物層から剥離させた後、基板上に形成された回路パターンを有する導体層を覆うように、感光性樹脂組成物層の露出した面をラミネート等により密着させる(積層工程)。密着性及び追従性向上の観点から減圧下で積層する方法も好ましい。なお、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の溶液(ワニス)をスクリーン印刷法、ロールコータ等により塗布する方法などの公知の方法により基板上に塗布することもできる。
次いで、必要に応じて上述した感光性フィルムから支持体を除去する除去工程を行い、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射(パターン照射)し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。なお、マスクパターンを介さずにパターン照射する、ダイレクト露光を行ってもよい。
【0082】
さらに、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で感光性樹脂組成物層の光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像すること(現像工程)により、レジストパターンを形成することができる。
【0083】
現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0084】
現像液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液が好ましい。これらの現像液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましい。また、このようなアルカリ性水溶液の温度は、感光層の現像性に合わせて調節され、20〜50℃とすることが好ましい。さらに、上記アルカリ性水溶液中には、現像を促進させるために界面活性剤、消泡剤等を混入させてもよい。
【0085】
本実施形態に係るレジストパターンの形成方法においては、必要に応じて、上述した2種以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等がある。高圧スプレー方式が、解像度向上のためには最も適している。
【0086】
現像後に行われる金属面のエッチングには、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いることができる。
【0087】
次に、本発明の感光性フィルムを用いた本発明の永久マスクレジスト及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。
上記のレジストパターンの形成方法と同様の方法により永久マスクレジストを形成することができる。上記現像工程終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射(紫外線照射工程)又は加熱(加熱工程)を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができる。例えば、0.05〜10J/cm
2程度の照射量で照射を行うことができる。また、レジストパターンを加熱する場合は、130〜200℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。
【0088】
紫外線照射及び加熱は、両方を行ってもよい。この場合、両方を同時に行ってもよく、いずれか一方を実施した後に他方を実施してもよい。紫外線照射と加熱とを同時に行う場合は、はんだ耐熱性及び耐薬品性をより良好に付与する観点から、60〜150℃に加熱することが好ましい。
【0089】
本実施形態に係る永久マスクレジストは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ねる。また、本実施形態に係る永久マスクレジストは、保護膜としての諸特性を有し、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用の永久マスクレジストとして用いることが可能である。
【0090】
上記永久マスクレジストは、例えば、基板に対し、めっき、エッチング等を施す場合に、めっきレジスト、エッチングレジスト等として用いられる。その他、そのまま基板上に残されて、配線等を保護するための保護膜として用いられる。
【0091】
上述の露光工程において、上記基板上に形成された回路パターンを有する導体層の所定部分が未露光となるパターンを有するマスク又は描画データを用いて露光を行った場合、これを現像することにより、未露光部分が除去され、上記導体層の一部が露出した、開口パターンを有するレジストが得られる。その後、上述の永久マスクレジストを形成するのに必要な処理を行うことが好ましい。
【0092】
[半導体パッケージ]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、半導体パッケージ用プリント配線板の永久マスクレジストの形成に好適に用いることができる。すなわち、本発明は、上述の感光性樹脂組成物の硬化物からなる永久マスクレジストを有する半導体パッケージを提供する。
図1は、半導体パッケージ基板を示す模式断面図である。半導体パッケージ10は、半導体チップ搭載用基板50と、半導体チップ搭載用基板50に搭載された半導体チップ120とを備える。半導体チップ搭載用基板50と半導体チップ120とは、ダイボンドフィルム又はダイボンドペーストからなる接着剤117で接着されている。半導体チップ搭載用基板50は、絶縁基板100を備え、絶縁基板100の一方面上には、ワイヤボンディング用配線端子110と、配線端子110の一部が露出する開口部が形成された永久マスクレジスト90が設けられ、反対側の面上には、永久マスクレジスト90とはんだ接続用接続端子111とが設けられている。永久マスクレジスト90は、上記本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物からなる層である。はんだ接続用接続端子111は、プリント配線板との電気的な接続を行うために、はんだボール114を搭載している。半導体チップ120とワイヤボンディング用配線端子110とは、金ワイヤ115を用いて電気的に接続されている。半導体チップ120は、半導体用封止樹脂116によって封止されている。
【0093】
なお、本実施形態の感光性樹脂組成物は、フリップチップ型の半導体パッケージにも適用することができる。
図2は、フリップチップ型の半導体パッケージ基板を示す模式断面図である。フリップチップ型の半導体パッケージ基板20は、半導体チップ搭載用基板50と、半導体チップ搭載用基板50に搭載された半導体チップ120とを備える。半導体チップ搭載用基板50と半導体チップ120とは、アンダーフィル剤118で充填されている。半導体チップ搭載用基板50は、絶縁基板100bと、絶縁基板100aと、永久マスクレジスト90とがこの順で積層された構成を有する。永久マスクレジスト90は、上記本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物からなる層である。絶縁基板100bは、絶縁基板100a側の表面にパターン化された銅配線80を有し、絶縁基板100aは、永久マスクレジスト90側の表面にパターン化された銅配線80を有する。絶縁基板100b上の銅配線80と、絶縁基板100a上の銅配線80の少なくとも一部とは、絶縁基板100a及び絶縁基板100bを貫通するように形成されたはんだ接続用接続端子111により電気的に接続されている。また、永久マスクレジスト90は、絶縁基板100a上の銅配線80を覆うように形成されているが、はんだ接続用接続端子111に対応する銅配線80上には、銅配線80が露出するように開口部112が形成されている。絶縁基板100a上の銅配線80は、半導体チップ120の半導体チップ搭載用基板50に対向する面に形成された銅配線80と、上記開口部112に設けられたはんだボール114を介して電気的に接続されている。
【0094】
本発明は、例えば、上記感光性樹脂組成物の応用に係る発明ということもできる。すなわち、本発明の一側面は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ樹脂、(D)無機フィラー、及び(E)アミノ基を有する有機フィラーを含有する感光性樹脂組成物であって、(D)は、(d−1)平均粒子径が100nm〜500nm、最大粒子径が2μm以下、屈折率が1.5〜1.8である第一の無機フィラーと、(d−2)平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である第二の無機フィラーとを含有し、(E)は、平均粒子径が500nm以下、最大粒子径が2μm以下である有機フィラーを含有する、感光性樹脂組成物の、感光性フィルムの製造のための応用、である。
【0095】
また、本発明の他の側面は、(A)エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ樹脂、(D)無機フィラー、及び(E)アミノ基を有する有機フィラーを含有する感光性樹脂組成物であって、(D)は、(d−1)平均粒子径が100nm〜500nm、最大粒子径が2μm以下、屈折率が1.5〜1.8である第一の無機フィラーと、(d−2)平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である第二の無機フィラーとを含有し、(E)は、平均粒子径が500nm以下、最大粒子径が2μm以下である有機フィラーを含有する、感光性樹脂組成物の、永久マスクレジスト製造用感光性樹脂組成物としての応用、である。
【0096】
本発明の永久マスクレジストを備えた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤボンディング、C4はんだ接続等)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【0097】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
(実施例1〜13及び比較例1〜9)
[感光性樹脂組成物溶液の調製]
まず、実施例1〜13及び比較例1〜9について、それぞれ表1、表2に示す各成分を同表に示す配合量(質量部)で混合し、希釈剤としてメチルエチルケトン(MEK)を加えることにより、感光性樹脂組成物溶液を得た。なお、表中の各成分の詳細は下記のとおりである。
【0100】
(A)成分:エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂
EXP−3133:ビスフェノールFノボラック型酸変性エポキシ樹脂(DIC社製、重量平均分子量7000、酸価63mgKOH/g)
EXP−3073:酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC社製、サンプル名)
UXE−3024:ウレタン変性ビスフェノールA型酸変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、重量平均分子量10000、酸価67mgKOH/g、商品名)
【0101】
[重量平均分子量の測定]
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
GPC条件
ポンプ:日立L−6000型(株式会社日立製作所製、製品名)
カラム:Gelpack GL−R420、Gelpack GL−R430、Gelpack
GL−R440(以上、日立化成株式会社製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立L−3300型RI(株式会社日立製作所製、製品名)
【0102】
(B)成分:光重合開始剤
I907:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製、商品名:IRGACURE 907)
DETX−S:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、商品名:KAYACURE−DETX−S)
OXE−02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製、商品名:IRGACURE OXE 02)
【0103】
(C)成分:エポキシ樹脂
NC−3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名)
YSLV−80:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、商品名)
【0104】
(D)成分:無機フィラー
(d−1)平均粒子径が100nm〜500nm、最大粒子径が2μm以下、屈折率が1.5〜1.8である第一の無機フィラー
ASA:硫酸バリウム(日本ソルベイ社製、商品名)
HK−001:水酸化アルミニウム(昭和電工社製、商品名ハイジライトHK−001)
BMT−3LV:ベーマイト型水酸化アルミニウム粒子(河合石灰工業株式会社製、商品名)
CS−3N−A30:炭酸カルシウム(宇部マテリアルズ社製、商品名)
何れのフィラーも湿式微粉砕機スターミルLMZ(アシザワファインテック社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速12m/sにて粉砕、分散して分散液を調製した。分散後の平均粒子径、及び最大粒子径は、レーザー回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装社製)を用いて測定した。其々、平均184nm、最大0.58μm、平均480nm、最大1.73μm、平均393nm、最大1.15μm、平均135nm、最大0.88μmであり、平均粒子径が100nm〜500nmであり、最大粒子径は2μm以下であることを確認した。屈折率は其々、1.64、1.57、1.65、1.68であり、屈折率が1.5〜1.8であることを確認した。
(d−2)平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である第二の無機フィラー
シリカA:ゾルゲルナノシリカでありシランカップリング剤として、メタクリルシランである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランでカップリング処理したサンプル2−N(アドマテックス社製、サンプル名)
シリカB:煙霧状シリカであるSIRMIBK(CIKナノテック社製、サンプル名)を用いた。
分散状態は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(日機装社製)を用いて測定した。其々、平均粒子径が、50nm、100nmであり、最大粒子径は1μm以下となっていることを確認した。屈折率および熱膨張係数はともに1.45、0.5×10
−6/℃であることを確認した。
【0105】
(E)成分:アミノ基を有する有機フィラー(平均粒子径が500nm以下、最大粒子径が2μm以下である有機フィラー)
メラミン:微粉メラミン(日産化学工業社製、商品名)
ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、商品名)
何れの有機フィラーについても(d−1)無機フィラーと同様の方法で粉砕、分散し、平均粒子径が500nm以下、最大粒子径が2.0μm以下となっていることを確認して用いた。レーザー回折型粒度分布計のMT3000(日機装社製)を用いて測定した。
【0106】
(F)成分:ポリアミド構造を有するエラストマー
KAYAFLEX BPAM155(日本化薬株式会社製、商品名)
(その他)成分
エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーとして、DPHA(日本化薬株式会社製、商品名)、UX−5102D(日本化薬株式会社製、商品名)、ブタジエン系エラストマーであるエポリードPB3600(ダイセル化学工業社製、商品名)、重合禁止剤として、アンテージ500(川口化学工業社製、商品名)、顔料として、HCP−PM−5385(東洋インキ社製、商品名)を用いた。
【0107】
比較例のみに用いた成分について説明する。
(d−1)平均粒子径が100nm〜500nm、最大粒子径が2μm以下、屈折率が1.5〜1.8である第一の無機フィラー
ASA(分散条件1):硫酸バリウムであり、上記実施例と同条件で分散した無機フィラーを用いた(平均粒子径184nm、最大粒子径0.58μm、屈折率1.64)。
ASA(分散条件2):硫酸バリウムであり、分散時間を短くして調製した無機フィラーを用いた(平均粒子径345nm、最大粒子径3.20μm、屈折率1.64)。
SG−95:タルク(平均粒子径1.5μm、最大粒子径20.6μm、屈折率1.57)
平均粒子径、及び最大粒子径は、レーザー回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装社製)を用いて測定した。
(d−2)平均粒子径が5nm〜200nm、屈折率が1.2以上1.5未満である第二の無機フィラー
シリカC:高純度溶融石英フィラーFLB−1「シリカ」(龍森社製)を用いた(平均粒子径520nm、屈折率1.64、熱膨張係数0.5×10
−6/℃、最大粒子径15.2μm)。
平均粒子径、及び最大粒子径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(日機装社製)を用いて測定した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
[感光性フィルムの製造]
次いで、この感光性樹脂組成物溶液を支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
【0111】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持体と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを得た。
【0112】
[感度、解像性の評価]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、上記感光性フィルムの保護フィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0113】
その後、室温で1時間以上放置した後、得られた評価用積層体の支持体上に、41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)を密着させ、超高圧水銀ランプを光源としたダイレクトイメージング露光装置DXP−3512(オーク製作所社製)を用いて露光を行った。
【0114】
露光後から室温で30分間放置した後、支持体のポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部の感光性樹脂組成物を60秒間スプレー現像し、感光性樹脂組成物の硬化膜を得た。現像後、41段ステップタブレットの残存ステップ段数が10.0となる露光エネルギー量を感光性樹脂組成物の感度(単位;mJ/cm
2)とした。この感度で露光したパターンを用いて、感光性樹脂組成物の評価を行った。
【0115】
感度の評価は、残存ステップ段数が10.0となる露光エネルギー量で行った。すなわち、200mJ/cm
2以下を「3」とし、200mJ/cm
2超300mJ/cm
2以下を「2」、300mJ/cm
2超の場合を「1」とした。なお、露光エネルギー量が小さいほど、高感度で露光に要する時間が短くなり、特にダイレクトイメージング露光におけるスループットがよくなる。
【0116】
解像性の評価は、残存ステップ段数が10.0となる露光エネルギー量で露光、スプレー現像し、現像処理後のレジストパターンに対する光学顕微鏡観察において、剥がれ及びよれが観測されないライン幅(単位:μm)のうち最も小さい幅を測定することで行った。ライン・アンド・スペースとして残ったライン幅(μm)の数値が小さいほど良好な値である。この最少幅を解像度(μm)として、結果を表3、表4に示した。
【0117】
[銅密着性の評価]
35μm厚の銅箔に対し、プレス式真空ラミネータ(MVLP−500、名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、上記感光性フィルムの保護フィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。その後、室温で1時間以上放置した後、得られた評価用積層体の支持体上に、41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)を密着させ、残存ステップ段数が10.0となる露光エネルギー量を照射した。その後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部の感光性樹脂組成物を60秒間スプレー現像し感光性樹脂組成物の硬化膜を得た。その後、コンベア式UV照射機で1J/cm
2照射、次いで、熱風循環式乾燥機で160℃/1時間の熱キュアを行い、ポストキュアを行った。このようにして、銅箔上に永久マスクレジストを形成した。
永久マスクレジストが形成された銅箔を、線幅5mmとなるようにカッターで切り出した。上記永久マスクレジスト部分を接着剤で固定し、銅箔引き剥がし試験を行い、銅密着性の評価を行った。試験は90℃方向引張試験で引張速度を50mm/分とし、測定装置として島津製作所製オートグラフAG−100Cを用いて行った。銅密着性は次の基準で評価した。銅箔引き剥がし強さ(単位:kN/m)が1.0以上である場合を「3」、0.7以上1.0未満の場合を「2」、0.7未満である場合を「1」とした。得られた結果を表3、表4に示した。
【0118】
[熱膨張係数(CTE)の評価]
上記「感度、解像性の評価」と同様にして作製した評価用積層体(感光性積層体)の全面を露光して、現像、紫外線照射、加熱処理まで行うことで、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人株式会社製、商品名)上に、永久マスクレジストを形成した。次いで、カッターナイフで、永久マスクレジストが形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを、幅3mm、長さ30mmに切り出した。永久マスクレジスト上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、熱膨張係数評価用永久マスクレジストを得た。
TMA装置SS6000(セイコー・インスツルメンル株式会社製)を用いて、引張りモードでの熱膨張係数の測定を行った。引張り荷重は2g、スパン(チャック間距離)は15mm、昇温速度は10℃/分とした。まず、サンプル(熱膨張係数評価用永久マスクレジスト)を装置に装着し、室温(25℃)から160℃まで加熱し、15分間放置した。その後、−60℃まで冷却し、−60℃から250℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定を行った。CTEは次の基準で評価した。25℃から200℃までの範囲で見られる変曲点をTgとし、その時の温度が、120℃以上のものを「3」、100℃以上120℃未満のものを「2」、100℃未満のものを「1」とした。
CTEはTg以下の温度で得られる曲線の接線の傾きを用いた。実施例1で得られたCTEの値を基準値として、この基準値からの差が30%未満のものを「3」とし、30%以上50%未満のものを「2」、50%以上のものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0119】
[HAST耐性の評価]
コア材に12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(MCL−E−679FG、日立化成株式会社、商品名)、セミアディティブ配線形成用ビルドアップ材(AS−ZII、日立化成株式会社製、商品名)を用いて、ライン/スペースが8μm/8μmのくし型電極を作製し、これを評価基板とした。
【0120】
この評価基板におけるくし型電極上に、上記「感度、解像性の評価」と同様にして永久マスクレジストを形成した(くし型電極部分に永久マスクレジストが残るように露光し現像、紫外線照射、加熱処理を行い形成)。さらに、得られた永久マスクレジストを130℃、85%RH、6V条件下に200時間晒した。その後、抵抗値の測定とマイグレーションの発生の程度を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。
すなわち、抵抗値が1.0×10
10Ω以上が保持されており、永久マスクレジストにマイグレーションが発生しなかったものは「3」とし、抵抗値が1.0×10
10Ω以上が保持されていたが、僅かにマイグレーションが発生したものは「2」、抵抗値が1.0×10
10Ω未満となり、マイグレーションが大きく発生したものは「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0121】
[クラック耐性の評価]
上記「感度、解像性の評価」と同様にして作製した評価用積層体上に、2mm角のパターンを有するフォトデータをダイレクトイメージング露光装置DXP−3512(オーク製作所製)を使用して、41段ステップタブレット(日立化成株式会社製)の現像後の残存ステップ段数が10.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、上記評価用積層体基板上のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の2.0倍の時間でスプレー現像を行い、パターンを有する感光性樹脂組成物の硬化膜を形成した。その後、コンベア式UV照射機で1J/cm
2照射、次いで、熱風循環式乾燥機で160℃/1時間の熱キュアを行い、ポストキュアを行った。こうして得られたパターンを有する永久マスクレジストが形成された評価基板をクラック耐性の評価基板として用いた。
【0122】
評価基板を、−65℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、150℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルを1000回繰り返した。このような環境下に晒した後、評価基板の永久マスクレジストのクラック及び剥離程度を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準でクラック耐性を評価した。
すなわち、2mm角の開口部の10箇所を確認して永久マスクレジスト膜のクラック及び剥離を全く観察できなかったものは「3」とし、クラック及び剥離が観察されたのが10箇所中2箇所以下であるものを「2」、クラック及び剥離が観察されたのが10箇所中3箇所以上であるものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】