(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つのスクリーンと、前記スクリーンに画像を投影するための画像投影機と、前記スクリーンの光透過状態と光散乱状態を周期的に切り替える制御装置とを備える画像表示装置であって、
前記スクリーンは、少なくとも一方が透明な透明基板と、対向して配置される一対の電極付き基板を有し、前記一対の電極付き基板の間に、誘電率異方性が正であるカイラルネマチック液晶相と高分子樹脂相を含む複合体を含む液晶調光層を有し、
前記スクリーンは、電圧無印加時に光透過状態で、電圧印加することで光散乱状態に切り替えできるスクリーンであり、
前記スクリーンが光散乱状態である時に、前記画像投影機が前記スクリーンの一部または全体に対して画像を投影し、前記スクリーンが光透過状態の時に前記画像投影機による画像の投影を行わないように同期せしめ、
前記制御装置は、前記切り替わりの周波数が40Hz以上100Hz以下であり、かつ周期的切り替わりにおける光散乱状態のデューティー比が0.01以上0.20以下となるように制御する
ことを特徴とする画像表示装置。
前記スクリーンに、周波数が40Hz以上100Hz以下であり、かつデューティー比が0.01以上0.20以下のバースト電圧を印加したとき、スクリーンが光透過状態から光散乱状態へ変化し、さらに光透過状態に戻る過程において、該スクリーンの立ち上がりの応答時間τ1と立ち下がりの応答時間τ2が、いずれも3.0ms以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
前記スクリーンに、周波数が40Hz以上100Hz以下であり、かつデューティー比が0.01以上0.20以下のバースト電圧を印加した時の光散乱状態部分のヘイズが、20%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像表示装置。
前記スクリーンが光散乱状態である時に、前記画像投影機が前記スクリーンの一部または全体に対して画像を投影し、前記スクリーンが光透過状態の時に前記画像投影機による画像の投影を行わないように同期せしめ、前記スクリーンの光透過状態と光散乱状態が周期的に切り替わるように駆動させた際の、画像投影機から投影された画像のスクリーンに対する入射方向から30°以内におけるいずれの角度でも、黒表示に対する白表示の放射輝度の比が30以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の画像表示装置。
前記電極付き基板間の距離をdとし、前記カイラルネマチック液晶のカイラルピッチ長をpとするとき、d/pの値が1以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されない。
本発明の画像表示装置は、スクリーンと、前記スクリーンに画像を投影するための画像投影機から構成され、少なくとも一つのスクリーンが画像投影機に対して配置されたものである。
【0017】
本発明のスクリーンは、光透過状態と光散乱状態とで切り替えができ、該スクリーンが光散乱状態である時又は光透過状態から光散乱状態となる間に、前記画像投影機が前記スクリーンの一部または全体に対して画像を投影し、前記スクリーンが光透過状態の時に前記画像投影機による画像の投影を行わないように、スクリーンと画像投影機の同期を行なう。この同期切り替えを、人間の目では追随できない速度で繰り返すことによって、スクリーンに画像が投影された時に、画像が浮き出て見えるのである。なお、本明細書中で、特に断りが無い場合には、光とは可視光(波長380〜800nm)を指す。
【0018】
本発明に用いるスクリーンは、電圧無印加時に光透過状態で、電圧印加することで光散乱状態に切り替え可能なスクリーンである。本発明のスクリーンは、例えば窓やショーケースのような用途において、通常時(電圧無印加)に透明であり、電圧印加時に光散乱状態で画像を表示させることができるため、省エネルギーの観点からも有用である。
スクリーンは、該スクリーンに含まれる少なくとも一方が透明な透明基板と、対向して配置される一対の電極付き基板を有し、前記一対の電極付き基板の間に、誘電率異方性が正であるカイラルネマチック液晶相と高分子樹脂相を含む複合体を含む液晶調光層を有している。光透過状態と光散乱状態の切り替えは、液晶調光層を電気駆動することで実現できる。液晶調光層としては、光透過状態と光散乱状態を電気駆動により切り替えることのできる透過−散乱型の液晶相と高分子樹脂相の複合体を使用することができる。
【0019】
本発明に用いる液晶調光層は、電圧無印加時に光透過状態であり、閾値以上の実効値を持つ、直流電圧、交流電圧、パルス電圧またはそれらの組み合わせによって光散乱状態に切り替えられることを特徴とする。液晶調光層としては、印加電圧を取り除くと光透過状態に戻る、リバースモードの駆動をするものでもよいし、光透過状態と光散乱状態の切り替え時のみ電圧印加を行うメモリモードの駆動をするものを用いてもよい。
本発明のスクリーンは、光透過状態と光散乱状態のコントラストが高く、そのため、画像投影機の光源を特に強くしなくとも、鮮明な画像を表示させることができるのである。
【0020】
前記スクリーンは、光透過状態と光散乱状態が周期的に切り替わり、周波数が40Hz以上、100Hz以下であるように駆動させることを特徴とする。なお、本発明における光散乱状態とは、平行光線透過率が30%未満の状態を指し、本発明における光透過状態とは、平行光線透過率が80%以上の状態を指す。スクリーンを光透過状態と光散乱状態とで周期的に切り替えて駆動させている状態を、表示モードと表現することがある。
【0021】
なお、光透過状態と光散乱状態を切り替える場合には、通常、中間的な過渡状態を経由するので、表示モードで駆動させている間に平行光線透過率が一時的に30%以上80%未満の状態をとってもよい。また、通常周期駆動とは毎周期まったく同じく駆動をすることを指すが、本発明の趣旨を外れない範囲でなら一部異なった駆動が入っていてもよい。
本発明に用いるスクリーンの光透過状態と光散乱状態の周期的切り替わりは、周波数が40Hz以上、好ましくは45Hz以上であり、100Hz以下、好ましくは70Hz以下、さらに好ましくは60Hz以下である。周波数が40Hzより小さい場合は、表示モードでスクリーン上にちらつきが生じる。
周波数が大きいほどちらつきは小さくなる傾向があるが、スクリーンの応答速度がこの周波数に追随できない場合には、光散乱状態の平行光線透過率が十分には低下しなくなり、映像の視認性が低下することがある。周波数が特定の範囲であることにより、ちらつきがなく、かつ視認性も十分良好な表示を得ることができる。
【0022】
また、本発明に用いるスクリーンの周期的切り替わりのデューティー比は、0.01以上、0.20以下である。前記スクリーンのデューティー比とは、光透過状態と光散乱状態の周期的切り替わりにおける、光散乱状態である時間の割合である。
本発明のスクリーンの周期的切り替わりのデューティー比は0.01以上、好ましくは0.05以上であり、一方上限は、0.20以下、好ましくは0.15以下である。デューティー比は小さいほど表示モードでのスクリーンのヘイズが小さくなり、背景の透過性が向上する。デューティー比が0.20以下であることで、表示モードで画像を表示させた場合に室内等の暗い場所でも背景が良く見える。一方でデューティー比は大きいほど、表示映像が鮮明になる傾向がある。デューティー比が特定の範囲であることで、映像の視認性と背景の透過性を両立することができる。
【0023】
本発明における周期的切り替わりにおいて、スクリーンの平行光線透過率が30%以上の時間をτ
OFF、平行光線透過率が30%未満の時間をτ
ONとするとき、τ
ON/(τ
ON+τ
OFF)が、好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。一方、好ましくは0.20以下であり、さらに好ましくは0.15以下である。τ
ON/(τ
ON+τ
OFF)が特定の範囲であることで、映像の視認性と背景の透過性を両立することができる。
また、平行光線透過率はT=I/I
0によって測定できる。ここでIは試料を透過させた光の放射発散度であり、I
0は入射光の放射発散度である。瞬間的な平行光線透過率は、市販の高速対応分光器や高速対応輝度計等を用いることで測定できる。
本発明の表示モードは、前記液晶調光層に周波数が40Hz以上、100Hz以下であり、かつ液晶調光層の閾値を超える実効値を持つパルス電圧のデューティー比が0.01以上0.20以下であるバースト電圧を印加することで実現できる(以下、パルス電圧又はバースト電圧と表現する場合がある)。
【0024】
通常は、スクリーンの液晶調光層に電圧が印加された場合、光散乱状態に切り替わる際の平行光線透過率が減少しきるためには有限の時間を要し、一方、光透過状態に切り替わる際の平行光線透過率が増加しきるのにもやはり有限の時間を要する。平行光線透過率が時間とともに変動するこれら過渡状態があることで、本来光透過状態であってほしいタイミングで、平行光線透過率が低かったり、本来光散乱状態であってほしいタイミングで平行光線透過率が高いという不都合が生じ、その結果、表示モードの透過性が減少したり、表示画像の視認性が低下することが起きる。
【0025】
本明細書中に記載の応答時間を
図1を参照して説明する。スクリーンが電圧無印加時の平行光線透過率をT
max、電圧印加時の平行光線透過率の最小値をT
minとし、パルス電圧印加開始時刻をt
1、印加終了時刻をt
2としたとき、立ち上がりの応答時間をτ
1、立ち下がりの応答時間をτ
2とすると、τ
1はt
1から初めて平行光線透過率がT
10に到達するまでの時間であり、τ
2はt
2から初めて平行光線透過率がT
90に到達するまでの時間であると定義する。ただし、T
10、T
90はそれぞれ、以下で表される。
T
10=0.1×(T
max−T
min)
T
90=0.9×(T
max−T
min)
【0026】
本発明のスクリーンに周波数が40Hz以上100Hz以下であり、かつデューティー比が0.01以上0.20以下のバースト電圧を印加し、スクリーンが光透過状態から光散乱状態へ変化し、さらに光透過状態に戻る過程において、スクリーンの立ち上がりの応答時間τ
1と立ち下がりの応答時間τ
2が、いずれも3.0ms以下であることが好ましい。さらに好ましくはいずれも2.0ms以下である。
【0027】
τ
1またはτ
2が印加電圧のパルス幅に比べて同程度以上に長くないことで、映像の視認性と背景の透過性の両立ができる傾向にある。
本発明におけるスクリーンの周期駆動と画像投影機との同期では、画像投影機が画像を投影している期間において、好ましくはスクリーンの平行光線透過率が30%未満であり、さらに好ましくは20%未満である。それ以外の期間はスクリーンの平行光線透過率が高いほどよく、好ましくは80%以上である。これに対し、スクリーンの平行光線透過率が30%以上、80%未満である過渡状態は、映像を投影しても十分な視認性が得られず、かといって透明性も低い、過渡状態である。本発明で用いるスクリーンでは、この過渡状態を短くすることができ、したがって映像の視認性と背景の透過性を両立することができる。また、τ
1とτ
2の値は同一又は近似値である方が、同期制御が容易になり好ましい。
【0028】
本発明のスクリーンの光散乱状態部分のヘイズは、JIS K7136(2000年)の測定方法で定義される。なお、本明細書中でヘイズは時間平均として測定されたものをいう。
また、本発明の画像表示装置における表示画像の放射輝度は、JIS Z8724(1997年)で測定される分光放射輝度を可視光波長領域で積分することで算出される。
【0029】
周期的切り替わりのデューティー比を調整することで、背景と映像のどちらを強調するか選択することが可能である。すなわち、周期的切り替わりのデューティー比を小さくすることで、表示モードにおけるスクリーンのヘイズを小さくすることができるが、表示映像の放射輝度も小さくなる。逆に周期的切り替わりのデューティー比を大きくすることで、表示モードにおけるスクリーンのヘイズが大きくなるが、表示映像の放射輝度が大きくなる。
周波数が40Hz以上100Hz以下であり、かつデューティー比が0.01以上0.20以下のバースト電圧を印加したときの表示モードにおけるヘイズは、20%以下であることが好ましく、15%以下であることが更に好ましい。また、1%以上が好ましく、5%以上が更に好ましい。ヘイズが大きすぎないことで、背景の透過性が良好になり傾向にあり、小さすぎないことで、表示映像の輝度が視認可能な程度に確保できる傾向にある。
【0030】
本発明におけるスクリーンと画像投影機の位置関係は、スクリーンを挟んで観察者と画像投影機が対向するリアプロジェクション方式でもよく、スクリーンに対して観察者と画像投影機が同じ側にいるフロントプロジェクション方式でもよい。光散乱状態の液晶調光層において、後方散乱が強い場合には前者を、前方散乱が強い場合には後者を用いればよい。スクリーンに対して画像投影機の光射出口が垂直になるように設置してもよいし、角度をつけて設置してもよい。観察者の視界の妨げにならないように画像投影機をスクリーンに対して見えなくなる程度に角度をつけて設置することもできる。この場合、投影された画像の形状をスクリーンの表示部分に合わせて補正することが好ましい。
【0031】
本発明の画像表示装置における黒表示は、画像投影機から光がスクリーンへ投影されていない(R,G,B)=(0,0,0)の状態である。また白表示は、画像投影機から投影される光の放射輝度が等しく最大である(R,G,B)=(255,255,255)の状態である。表示画像のコントラストは、(白表示の放射輝度)/(黒表示の放射輝度)で計算される。
【0032】
本発明のスクリーンは、画像の特定範囲の入射方向において、輝度の比が特定の値であることが好ましい。具体的には、画像投影装置のスクリーンが光散乱状態である時に、画像投影機が前記スクリーンの一部または全体に対して画像を投影し、前記スクリーンが光透過状態の時に前記画像投影機による画像の投影を行わないように同期せしめる。この時に、前記スクリーンの光透過状態と光散乱状態が周期的に切り替わるように駆動させる。このように駆動させた場合において、スクリーンに対して、画像投影機から投影された画像の入射方向が30°以内において、黒表示に対する白表示の放射輝度の比が30以上であることが好ましい。さらに、60以上であることが好ましい。
このような表示特性を満たすことで、斜め方向からスクリーンを見た時でも画像の視認性が良好となる。また、スクリーンに対し斜め方向からを投影した場合でも、視認性が良好となる。
本発明の画像表示装置において、このような視認性が良好となるのは、以下の理由からである。本発明で用いるスクリーンの液晶調光層は、カイラルネマチック液晶のフォーカルコニック相と網目状のポリマーとの複合構造により光を散乱させる。ランダムな液晶ポリドメイン構造であるフォーカルコニック相とランダムな網目状ポリマー構造により、入射光が広範囲に散乱され、広い視野角が与えられることにより、本発明のスクリーンは上述したようなめ方向からスクリーンを見た時でも画像の視認性が良好となるのである。
【0033】
本発明のスクリーンは、電圧無印加時に光透過状態であり、この時のヘイズが10%以下であることが好ましい。さらに8%以下が好ましく、5%以下が特に好ましい。また、電圧印加時に光散乱状態となり、スクリーンに直流電圧または交流電圧の連続波を印加することで、ヘイズが85%以上に切り替わることが好ましく、90%以上になることが好ましい。また上限は100%であり、高いほど好ましい。これらの範囲であることで表示映像の視認性が良好になる傾向にある。
【0034】
本発明のスクリーンの動作温度上限はカイラルネマチック液晶相の液晶−等方相転移温度(Tni)であるが、低温では応答時間が長くなる傾向がある。従って、動作温度範囲としては、好ましくは−10℃以上、更に好ましくは0℃以上である。また、好ましくは60℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。本発明のスクリーンは、少なくとも一方が透明な透明基板と、対向して配置される一対の電極付き基板を有し、前記一対の電極付き基板の間に、誘電率異方性が正であるカイラルネマチック液晶相と高分子樹脂相を含む複合体を含む液晶調光層を有する。
【0035】
<液晶調光層>
本発明のスクリーンに用いる液晶調光層は、誘電率異方性が正であるカイラルネマチック液晶相と高分子樹脂相を含む複合体を含む。この方式は、PSCTとして知られている。
以下、リバースモードPSCTの駆動モードについて説明する。リバースモードPSCTでは、電圧無印加時には液晶らせん軸がほぼ全て基板に対して垂直方向を向くプレナー相となり、光透過状態を取る。液晶調光層の電極基板間に電圧を印加することで、液晶らせん軸がランダムな方向を向くフォーカルコニック相へと相転移し、光散乱状態となる。この2つの相をスイッチングすることで、スクリーンの平行光線透過率を制御することができる。
ところで、液晶調光層の電極基板間にさらに高電圧を印加すると、液晶分子長軸が基板と垂直な方向を向くホメオトロピック相へと相転移し、光透過状態となる。
【0036】
<カイラルネマチック液晶>
本発明のスクリーンに用いるカイラルネマチック液晶は、誘電率異方性が正である。本発明のカイラルネマチック液晶の該誘電率異方性が正であることで、T
minの低下およびτ
1、τ
2の短縮を両立できる。
カイラルネマチック液晶の誘電率異方性値(Δε)は正であれば特に限定されないが、5以上であることが好ましく、8以上であることが、スクリーンの駆動電圧低減のために好ましい。また、重合開始剤を使用する場合、カイラルネマチック液晶を構成する個々の分子が開始剤の吸収波長に重なる波長の吸収を持たないことが、重合性モノマーの硬化時間を短くする点で好ましい。
【0037】
カイラルネマチック液晶としては、液晶自身がコレステリック相を示す液晶性化合物の集合でもよく、ネマチック液晶にカイラル剤を添加することでカイラルネマチック液晶としたものでもよい。液晶組成物設計の観点では、目的に応じてネマチック液晶にカイラル剤を添加し、カイラルピッチ長(p)および液晶−等方相転移温度(Tni)を制御することが好ましい。
【0038】
立ち上がりの応答時間τ
1を短くするためには、液晶調光層の電極基板間へなるべく高い電圧を印加した方が有利である。ところが印加電圧が高すぎると、ホメオトロピック相へと相転移してしまい、十分な光散乱が得られなくなるというジレンマがある。この課題を解決するためには、電極付き基板間の距離をdとし、カイラルネマチック液晶のカイラルピッチ長をpとするとき、d/pの値が1以上であることが好ましい。d/pはより好ましくは、2以上、更に好ましくは4以上である。また、d/pは20以下であることが好ましく、12以下であることが特に好ましい。
d/pが大きいほど、駆動時の散乱が大きくなり、遮光特性が向上する。またd/pが大きいほど、フォーカルコニック相からホメオトロピック相への閾値電圧が高くなり、高電圧を印加しても光透過状態へ相転移せず、光散乱状態を維持することができる。そのため立ち上がりの応答時間τ
1を短くすることができる。一方でスクリーンの駆動電圧(プレナー相からフォーカルコニック相への閾値電圧)も同時に増加するため、遮光特性と省エネや安全性の両立の観点から、上記の範囲内に収めることが好適である。
【0039】
カイラルネマチック液晶のカイラルピッチ長pは、0.3μm以上が好ましく、0.8μm以上が更に好ましい。一方、カイラルピッチ長pは、3μm以下が好ましく、2μm以下が更に好ましい。
カイラルピッチ長pが小さ過ぎないことで、スクリーンの駆動電圧が低く抑えられる傾向があり、大き過ぎないことで、コントラスが高くなる傾向となる。
一般にpはカイラル剤の濃度に反比例するので、必要なカイラルピッチ長pの値から逆算してカイラル剤の濃度を決定すればよい。なお、p×n(nはカイラルネマチック液晶の屈折率)が可視光波長(380nm〜800nm)の範囲内にある場合、最終的に得られるスクリーンは電圧無印加時に有色となり、可視光範囲外にある場合は電圧無印加時に無色透明になるので、カイラルピッチ長pは、目的に応じてpを選択すればよい。
【0040】
本発明のスクリーンの電極付き基板間の距離dは、使用するカイラルネマチック液晶のカイラルピッチ長p以上である必要があり、通常3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましい。また、距離dは100μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましい。
電圧を印加していない状態でのスクリーンの光透過率は、距離dの増加に対して減少し、また、表示ディスプレイの応答時間も長くなる場合がある。一方で、dが小さすぎることで、駆動時の遮光特性が低減し、また大面積のスクリーンの場合、スクリーンが短絡してしまう場合がある。上記範囲であることで、これらの要求をバランスよく満足することができる。
【0041】
カイラルネマチック液晶のTniは、スクリーンの動作可能な温度上限がカイラルネマチック液晶のTniにより決定されることから50℃以上が好ましく、70℃以上が更に好ましい。一方、Tniが高くなると粘度が高くなる傾向があるので、200℃以下が好ましく、150℃以下が更に好ましい。
ネマチック液晶としては、公知のいずれでもよく、構成分子の分子骨格、置換基、分子量に制限は特になく、合成品でも市販品でもよい。ネマチック液晶の誘電率異方性は正で大きいことが、スクリーンのカイラルネマチック液晶相及び液晶組成物のカイラルネマチック液晶の誘電率異方性を正とするために好ましい。また、重合開始剤を用いる場合、構成分子が構成する個々の分子が開始剤の吸収波長に重なる波長の吸収を持たないことが、重合性モノマーの硬化時間を短くする点で好ましい。
【0042】
公知の液晶性物質を用いる場合、具体的には日本学術振興会第142委員会編;「液晶デバイスハンドブック」日本工業新聞社(1989年)、第152頁〜第192頁および液晶便覧編集委員会編;「液晶便覧」丸善株式会社(2000年)、第260頁〜第330頁に記載されているようなビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系などの各種低分子系の化合物または混合物を使用することができる。また、液晶便覧編集委員会編;「液晶便覧」丸善株式会社(2000年)、第365頁〜第415頁に記載されているような高分子系化合物または混合物を使用することもできる。ネマチック液晶を構成する化合物としては例えば、以下の化合物等が挙げられる。
【0044】
コレステリック液晶およびネマチック液晶としては粘度が低く、誘電率異方性の高いものが、スクリーンの高速応答性や製造性の点で好ましい。
カイラル剤としては、ホスト液晶へ相溶するカイラル化合物であればいずれでもよく、合成品でも市販品でよく、自身が液晶性を示すものでもよいし、重合性の官能基を有していてもよい。また、右旋性でも左旋性でもよく、右旋性のカイラル剤と左旋性のカイラル剤を併用してもよい。また、カイラル剤としては、それ自身の誘電異方性が正に大きく、粘度の低いものがスクリーンの駆動電圧低減および応答速度の観点から好ましく、カイラル剤が液晶をねじる力の指標とされるHelical Twisting Powerが大きいほうが好ましい。重合開始剤を用いる場合には、開始剤の吸収波長に重なる波長の吸収を持たないことが好ましい。
カイラル剤としては、例えばCB15(商品名、メルク社製)、C15(商品名、メルク社製)、S−811(商品名、メルク社製)、R−811(商品名、メルク社製)、S−1011(商品名、メルク社製)、R−1011(商品名メルク社製)などが挙げられる。
【0045】
<高分子樹脂相>
本発明の高分子樹脂相は、特定の高分子前駆体を硬化してなることが好ましい。
本発明の高分子樹脂相は、前記カイラルネマチック液晶相に対し、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。また、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが好ましい。高分子樹脂相の割合が少な過ぎないことで、高分子樹脂相が機械的に強靭となり、繰り返し耐久性に優れる傾向となる。また、液晶分子が十分な界面相互作用を受けられるため、スクリーンのコントラストおよび応答速度が高くなる場合がある。一方で、高分子樹脂相の割合が多過ぎないことで、駆動電圧の上昇が抑えられ、スクリーンの透明性が高くなる傾向にある。
【0046】
本発明の高分子樹脂相に用いられる高分子樹脂は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、下記一般式(1)で表される高分子前駆体を含む混合物を硬化させたものを用いることが、スクリーンの電圧印加時の平行光線透過率の最小値T
minの低減、およびτ
1、τ
2の短縮を両立できる傾向があるため好ましい。
【0048】
[式(1)中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、
Ar
1、Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を表し、
X
1及びX
2はそれぞれ独立に、直接結合、炭素二重結合、炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状オキシアルキレン基を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状オキシアルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖状アルキルエステル基を表し、
m、n、p及びqは、それぞれ独立に、0または1を表す。
ただし、Ar
1、Ar
2及びAr
3のうち、少なくともいずれか1つは、置換基を有してもよい2価の芳香族縮合環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を表す。]
【0049】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、2価の芳香族炭化水素環基としては、単環、あるいはこれが2〜4個縮合してなる縮合環から、水素原子を2個除いて得られる2価の基であり、具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。この中でも、炭素数が6以上であることが好ましく、一方、30以下、さら26以下、特に18以下であることが、重合時の硬化性の点から好ましい。具体的には、以下の構造等が挙げられる。
【0051】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基としては、上記の中でも特に以下の構造であることが、高分子前駆体の硬化性が高く好ましい。
【0053】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の2価の芳香族炭化水素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、高分子前駆体の硬化性の点から、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、メトキシ基である。
【0054】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定はされないが、単環、あるいはこれが2〜4個縮合してなる縮合環から、水素原子を2個除いて得られる2価の基であり、具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。この中でも、炭素数が6以上であることが好ましく、一方、30以下、さら26以下、特に18以下であることが、重合時の硬化性の点から好ましい。具体的には、以下の構造等が挙げられる。
【0056】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基としては、上記の中でも特に以下の構造であることが、高分子前駆体の硬化性が高く好ましい。
【0058】
Ar
1、Ar
2及びAr
3の2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、高分子前駆体の硬化性の点から、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、メトキシ基である。
【0059】
X
1及びX
2はそれぞれ独立に、直接結合、炭素二重結合、炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状オキシアルキレン基を表し、好ましくは直接結合、エーテル結合、エステル結合、メチレン基である。有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、メトキシ基である。
【0060】
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状オキシアルキレン基、又は炭素数2〜6の直鎖状アルキルエステル基を表す。炭素数2〜6の直鎖状アルキルエステル基とは、例えば以下の構造を表す。
【0062】
R
1及びR
2が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられ、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、メトキシ基である。
【0063】
Ar
1、Ar
2及びAr
3のうち、少なくともいずれか1つは、置換基を有してもよい2価の芳香族縮合環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基である。置換基を有してもよい2価の芳香族縮合環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を分子内に持つことで、硬化後の高分子樹脂相の剛性が高くなり、τ
1、τ
2を短縮させる傾向があり、好ましい。
【0064】
前記一般式(1)で表される高分子前駆体が、下記一般式(2)で表される高分子前駆体であることが更に好ましい。
【0066】
[式(2)中、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、
Ar
4は、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素縮合環基または置換基を有してもよい2価の複素縮合環基を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、
p及びqは、それぞれ独立に、0または1を表す。]
Ar
4の置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基及び置換基を有してもよい2価の複素環基としては、具体的には、Ar
1で挙げたものと同義であり、有していてもよい置換基も同義である。この中でも、以下で表される構造が、高分子前駆体の硬化性が高くなるため、好ましい。
【0068】
Ar
4は、上記の中でも、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素縮合環基であることが高分子樹脂相の機械強度が強くなるために好ましく、この中でも炭素数が6以上であることが好ましく、一方、分子サイズが大きくなり過ぎると、高分子前駆体が重合反応するための空間的自由度が小さくなり、十分に重合反応が起きなくなるために30以下、さら26以下、特に18以下であることが好ましい。
Ar
4は、上記の中でも、置換基を有していてもよい2価のベンゼン環又は置換基を有していてもよい2価のナフタレン環であることが好ましく、置換基を有していてもよい2価のナフタレン環が高分子前駆体の硬化性が高くため特に好ましい。
【0069】
式(2)においてAr
4が重合基に対して電子供与性が強いことが好ましい。またAr
4が−O−と結合する位置は特に限定されないが、分子が直線的な構造をとることが好ましい。例えば、ベンゼン環であれば、1,4位、ナフタレン環単環であれば、1,4位又は2,6位と結合することが好ましい。
【0070】
一般式(1)で表される高分子前駆体の具体例を以下に例示する。本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の液晶調光層に用いる高分子前駆体は、上記式(1)で表される高分子前駆体1種類だけを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明のスクリーンに用いる一般式(1)で表される高分子前駆体と他の高分子前駆体の比率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、一般式(1)で表される繰り返し単位が30質量%以上であるのが好ましく、更に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。
【0073】
上記式(1)で表される高分子前駆体の割合が少なすぎると、短時間でのスクリーン製造、高いコントラスト、短い応答時間のいずれか、もしくは複数が十分ではなくなる場合がある。また、上記式(1)で表される高分子前駆体の上限は、100質量%である。
また本発明の高分子樹脂相が有する高分子樹脂が共重合体である場合、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0074】
<その他>
本発明のスクリーンのカイラルネマチック液晶相には、重合開始剤、光安定剤、抗酸化剤、増粘剤、重合禁止剤、光増感剤、接着剤、消泡剤、界面活性剤等を有していてもよい。
又、上記その他の成分の含有量は、本発明のスクリーンの性能を損なわない範囲の任意の割合で配合することができる。
【0075】
高分子前駆体の硬化法は光硬化、熱硬化等いずれでもよいが、光硬化が好ましく、光硬化の中でも、紫外線または近紫外線による硬化が特に好ましい。又、光重合の光源としては、用いるラジカル光重合開始剤の吸収波長にスペクトルを有するものならいずれでもよく、典型的には220nm以上450nm以下の波長の光を照射可能な光源ならばいずれでもよい。例としては高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LED(Light Emitting Diode)、青色LED、白色LED等が挙げられる。そのほか、熱線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ、可視光カットフィルタ等を併用してもよい。光はスクリーンの透明基板上から少なとも一面に照射すればよく、液晶組成物を挟持する基板が両面とも透明である場合には、両面とも光照射してもよい。光照射は一度に行ってもよいし、数回に分割して行ってもよい。光の放射照度をスクリーンの厚み方向に分布を持たせ、高分子樹脂相の密度を連続的に変化させた、いわゆるPSCOF(Phase Separated Composite Organic Film)(V. Vorflusev and S. Kumar, Science 283, 1903 (1999))としてもよい。
【0076】
光硬化の場合に、スクリーンに照射される光の放射照度は、通常0.01mW/cm
2以上、好ましくは1mW/cm
2以上、さらに好ましくは10mW/cm
2以上、特に好ましくは30mW/cm
2以上である。放射照度が小さすぎると重合が十分進行しない傾向となる。又、液晶組成物の光硬化には、通常、2J/cm
2以上、好ましくは3J/cm
2以上の積算照射量を与えればよく、光照射時間は光源の放射強度に応じて決定すればよいが、生産性を高める観点から通常200秒以内、好ましくは60秒以内に光照射を完了するのがよく、一方10秒以上光照射するのが好ましい。光照射時間が短すぎるとスクリーンの繰り返し耐久性が劣る場合がある。プラスチックフィルム基板を用いて大面積のシート状スクリーンを製造する場合は、光源またはシートを移動させながら連続で光照射する方法をとることもでき、光源の放射照度に応じてその移動速度を調節すればよい。
上記のようにして得られた液晶調光層は、薄膜状の透明高分子中にカイラルネマチック液晶が粒子状に分散または連続層を形成しているが、最も良好なコントラストを示すのは連続層を形成している場合である。
【0077】
<スクリーン>
本発明に用いるスクリーンは、少なくとも一方が透明な基板であり、対向配置される一対の電極付き基板と、該基板間にカイラルネマチック液晶と高分子樹脂の複合体を含む液晶調光層を含み、液晶調光層は重合性モノマー及びカイラルネマチック液晶で構成される液晶組成物を硬化させて得られるものである。
本発明に用いるスクリーンは上記のスクリーンであれば特に限定されないが、以下に代表的な構造を説明する。
【0078】
基板は少なくとも一方が透明であり、好ましくは両方とも透明である。基板の材質としては、例えば、ガラスや石英等の無機透明物質、金属、金属酸化物、半導体、セラミック、プラスチック板、プラスチックフィルム等の無色透明或いは着色透明、又は不透明のものが挙げられ、電極は、その基板の上に、例えば、金属酸化物、金属、半導体、有機導電物質等の薄膜を基板全面或いは部分的に既知の塗布法や印刷法やスパッタ等の蒸着法等により形成されたものである。又、導電性の薄膜形成後に部分的にエッチングしたものでもよい。特に大面積のスクリーンを得るためには、生産性及び加工性の面からPETやPEN等の透明高分子フィルム上にITO(酸化インジウムと酸化スズの混合物)電極をスパッタ等の蒸着法や印刷法等を用いて形成した電極基板を用いることが望ましい。尚、基板上に電極間或いは電極と外部を結ぶための配線が設けられていてもよい。例えば、セグメント駆動用電極基板やマトリックス駆動用電極基板、アクティブマトリックス駆動用電極基板等であってもよい。セグメント駆動用電極基板の場合には、一方の基板に帯状電極が帯の短辺方向に並んだものを用い、他方にベタ電極を用いて帯状のセグメントを成すこともできるし、両方の基板に帯状電極を用い、帯が直交するように対向させてマトリクス状のセグメントを成すこともできる。
【0079】
更に、基板上に設けられた電極面上が、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シリコン、シアン化合物等の有機化合物、SiO
2、TiO
2、ZrO
2等の無機化合物、又はこれらの混合物よりなる保護膜や配向膜で全面或いは一部が覆われていてもよい。尚、基板は、液晶を基板面に対して配向させるよう配向処理されていてもよく、配向処理されている場合、接触するカイラルネマチック液晶がプレナー構造をとるならば、いずれの配向処理を用いても構わない。例えば、2枚の基板ともホモジニアス配向であってもよいし、一方がホモジニアス配向で、もう一方がホメオトロピック配向である、いわゆるハイブリッドであっても構わない。これらの配向処理には、電極表面を直接ラビングしてもよく、TN(Twisted Nematic)液晶、STN(Supper Twisted Nematic)液晶等に用いられるポリイミド等の通常の配向膜を使用してもよい。また、配向膜の製造法に、基板上の有機薄膜に直線偏光等の異方性を有する光を照射して膜に異方性を与える、いわゆる光配向法を用いても構わない。
また、液晶調光層に含まれる高分子樹脂相に配向膜機能を持たせてもよい。
【0080】
対向する基板は周辺部に適宜、基板を接着支持する樹脂体を含む接着層を有してもよい。尚、本発明に用いるスクリーンの端面あるいは液晶の注入口を、粘着テープ、熱圧着テープ、熱硬化性テープ等のテープ類、又は/及び、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化型樹脂、室温硬化型接着剤、嫌気性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコ−ン系接着剤、弗素樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩化ビニル系接着剤等の硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類等で封止することで、内部の液晶等の染み出しを防ぐことができる。また、この封止は同時にスクリーンの劣化を防ぎ働きがあってもよい。その際の端面の保護法としては、端面を全体に覆ってもよいし、端面からスクリーン内部に硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類を流し込み固化させることによりなしてもよく、更にこの上をテープ類で覆ってもよい。
【0081】
対向配置される基板間には、球状または筒状のガラス、プラスチック、セラミック、あるいはプラスチックフィルム等のスペーサーを存在させてもよい。スペーサーは、液晶組成物中に分散させてもよく、基板間の液晶調光層中に固定させていてもよく、スクリーン組み立ての際に基板上に散布したり、接着剤と混合して接着層の中に存在させてもよい。
本発明に用いるスクリーンに含まれる液晶調光層は、例えば、スペーサーを介して対向配置される一対の電極付き基板周辺部を光硬化性接着剤等で接着層を形成して封止セルとし、あらかじめ1つ以上設けた接着層の切り欠きに常圧または真空中で液晶組成物に浸して注入するか、或いは、一方の基板上にコーターを使用して液晶組成物を塗布し、その上に他方の基板を重ねる等の公知の方法で挟持させた後、紫外光、可視光、電子線等の放射線によって重合・硬化することで形成される。プラスチックフィルム基板の場合、連続で供給される電極付き基板を2本のロール等で挟み、その間に、スペーサーを含有分散させた液晶組成物を供給し、挟み込み、その後連続で光硬化させることができるので生産性が高い。
スクリーンの少なくとも一方の表面または両面の表面には反射防止膜、防眩膜、紫外線遮断膜、あるいは防汚膜で覆われていてもよい。例えばスクリーンの表裏を反射防止膜で覆うことで、基板表面での外光反射を防ぎ、スクリーンの見栄えが良くなる。
【0082】
<画像投影機>
本発明で用いる画像投影機は、時分割で画像を投影できるものならいずれでもよく、例えば、光源とスクリーンとの間にシャッターを備えた構成が挙げられる。シャッターとしては、一般的な機械的シャッターの他に、液晶ライトバルブ等も使用できる。たとえば、強誘電性液晶や、透過散乱タイプの液晶モードを利用した液晶ライトバルブを用いてもよい。シャッターとして偏光板を用いる場合は、プロジェクターの画像投射装置から出てくる光の偏光を、シャッターの入光側偏光板の透過軸に揃えておけば、光の利用効率が高くなり、好ましい。なお、シャッターを使用せず、画像投射装置からの画像の投射タイミングを、スクリーンの液晶層が光線透過状態と光線散乱状態とをとる駆動タイミングと直接同期させてもよい。液晶プロジェクターやDMD(Digital Micromirror Device)プロジェクターの場合、シャッターの代わりに光源をオンオフしてもよい。この場合の光源としては高速スイッチング可能なLEDを使用してもよい。画像投影機の例としては、市販の液晶プロジェクター、CRT(Cathode Ray Tube)プロジェクター、LEDプロジェクター、レーザープロジェクター等が使用できる。その他にもランプ、LED、OLED、レーザー等の光源を用いて、ライトバルブ、カラーフィルタ、ミラー等で光を変調させてもよい。また、画像投影機が画像を投射するタイミングを制御する制御装置を備えていない場合は、該制御装置を組み合わせて用いることが好ましい。
【0083】
<同期方法>
本発明の画像表示装置は、少なくとも一つのスクリーンが画像投影機に対して配置され、前記スクリーンが光散乱状態である時又は光透過状態から光散乱状態となる間に、前記画像投影機が前記スクリーンの一部または全体に対して画像を投影し、前記スクリーンが光透過状態の時に前記画像投影機による画像の投影を行わないように同期せしめることを特徴とする。
【0084】
図2に、本発明の表示装置の構成例を示す。符号1は表示スクリーンであり、画像投影機2と観察者Oが対向したリアプロジェクション方式になっている。観察者Oは表示スクリーン1越しに、背景B(商品)を見ることができる。表示スクリーン1と画像投影機2は制御装置3から発信される信号により、駆動タイミングを制御される。
【0085】
<制御装置>
本発明の画像表示装置は、制御装置を備えている。制御装置は、スクリーンの光透過状態と光散乱状態を周期的に切りかえる制御を行う。
また、必要に応じて、画像投影機の画像投影タイミングを切りかえる制御を行う制御装置を有していてもよい。
【0086】
画像投影機がスクリーンに対して画像を投影するタイミングの例を、
図3、
図4及び
図5を参照して説明する。
図3、
図4及び
図5には、(a)スクリーンの液晶調光層へ印加する電圧、(b)スクリーンの平行光線透過率、および(c)画像投影機の画像の投影、のそれぞれに対する時間チャートを示している。
図3に、スクリーンが光透過状態から光散乱状態への切り替わり始める瞬間から画像の投影を開始し、スクリーンが光散乱状態から完全に光透過状態へ切り替わり終わる瞬間に画像の投影を終了する例を示す。この場合、スクリーンの平行光線透過率がT
minより小さくなる期間に、画像投影機が画像を投影していることになる。
図4は液晶調光層へ電圧を印加する期間と、画像投影機から画像を投影する期間を一致させた場合である。
図5は、スクリーンの平行光線透過率が最低のT
minである期間に、画像投影機から画像を投影した場合である。
【0087】
画像投影機からの画像の投影期間が長いほど、表示画像の輝度が高くなり、視認性が良くなるため好ましい。しかし、スクリーンの平行光線透過率が十分低くない期間に画像を投影すると、観察者への光抜けや、表示画像のちらつきが生じることがある。したがって、画像を投影する期間は、スクリーンが光散乱状態に完全に切り替わり、平行光線透過率が一定になっている期間と一致させることが好ましい。またT
minは、30%以下であることが好ましい。
【0088】
一つのスクリーンに一つの画像投影機を配置してもよく、一つのスクリーンに二つ以上の画像投影機を配置してもよい。一つのスクリーンに二つ以上の画像投影機を配置する場合には、スクリーンの同じ場所に画像を投影してもよく、異なる場所に画像を投影してもよい。また一つの画像投影機に対して二つ以上のスクリーンを配置してもよい。一つの画像投影機に対して二つ以上のスクリーンを配置する場合、平面的に並べることもできるし、奥行き方向に並べることもできる。
【0089】
スクリーンがセグメントを持ち、個々のセグメントを独立に駆動させることができる場合には、一つのセグメントのみに画像を投影してもよく、二つ以上、あるいは全てのセグメントに画像を投影してもよい。
複数のスクリーンあるいはセグメントを隣接させて一つの映像を表示する場合、全ての表示領域に対して同一のタイミングで同期駆動を行ってもよいし、スクリーンまたはセグメントごとに異なるタイミングで同期駆動を行ってもよい。後者の場合、スクリーンまたはセグメントごとに順次画像投影を切り替えてゆき、いずれかの表示領域で常に画像が投影されているように設定することで、画像の視認性を向上させることができる。例えば、スクリーンがN個のセグメントに分割されている場合、スクリーンを周期駆動させる周波数をF(Hz)とすると、一つのセグメントあたり光散乱状態のデューティー比を1/Nにし、隣接するセグメントで1/(F×N)秒ごとに画像の投影するセグメントをずらしてゆくことで、1周期内でスクリーン内の全てのセグメントを網羅して画像の投影ができる。このような駆動を行う場合、スクリーンが光散乱状態に切り替わる際の応答時間を考慮して、次のセグメントへ画像投影を切り替えるよりτ
1だけ早いタイミングで次のセグメントにパルス電圧を印加するよう調節することが好ましい。
【0090】
光線を走査することで映像を描画する画像投影機を用いる場合、スクリーンのセグメントを帯状にして帯の短辺方向にセグメントを並べ、走査線とセグメントの長辺方向を一致させ、副走査線をセグメントの長辺方向に一致させることができる。これにより、簡便な構成ながら、高速描画が必要となる動画を視認性よく表示できる。光線の走査方式としては、ラスタースキャン方式、ベクタースキャン方式、インターレース方式のいずれを用いてもよい。光線を走査することで映像を描画する画像投影機としては、光源にレーザーを用いたものが、画像の色再現性が高い点や、画像投影機が小型になる点で好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
<スクリーンのヘイズの測定方法>
ヘイズ及び光線透過率は、25℃において、ヘイズコンピューター Hz−2(SUGA社製)及びC光源を用い、ダブルビーム方式により測定した。尚、本発明において、スクリーンのヘイズの測定及び光線透過率の測定は、JIS K7136(2000年)に従って測定される。また、本測定のヘイズは時間平均として測定される。
【0092】
<スクリーンの平行光線透過率、応答時間およびデューティー比の測定方法>
スクリーンの応答時間は、室温25℃において測定を行った。光源にハロゲンランプを用い、所定のバースト電圧を印加しながらスクリーンに光を垂直に入射した。検出器にマルチメディアディスプレイテスタ 3298F(YOKOGAWA社製)を用いて素子透過光の輝度Lを測定した。印加波形および応答波形のモニターはデジタルオシロスコープを用いた。
素子の平行光線透過率T(%)は、ブランクの輝度L
0を基準としてL/L
0×100により算出した。電圧無印加時の平行光線透過率をT
max、電圧印加時の平行光線透過率の最小値をT
minとし、パルス電圧印加開始時刻をt
1、印加終了時刻をt
2としたとき、立ち上がりの応答時間をτ
1、立ち下がりの応答時間をτ
2とすると、τ
1はt
1から初めて平行光線透過率がT
10に到達するまでの時間であり、τ
2はt
2から初めて平行光線透過率がT
90に到達するまでの時間である。ただし、T
10、T
90はそれぞれ、以下で表される。
T
10=0.1×(T
max−T
min)
T
90=0.9×(T
max−T
min)
【0093】
印加波形とスクリーンの応答波形の関係を
図6に示す。印加波形は
図6中のようなバースト波形を用い、周波数Fおよびデューティー比D
Vを所定の値に設定して印加した。パルス振幅Vは、100Vp−pとした。
1周期の切り替わり中、スクリーンの平行光線透過率が30%以下である時間をτ
ONとし、30%未満である時間をτ
OFFとして、スクリーンの光透過状態と光散乱状態の周期的切り替わりのデューティー比DをD=τ
ON/(τ
ON+τ
OFF)により算出した。
【0094】
<カイラルネマチック液晶及び液晶組成物の液晶−等方相転移温度(Tni)の測定方法>
カイラルネマチック液晶(液晶単独、又はこれとカイラル剤の混合物)または液晶組成物を一旦相溶させ、温度上昇による相転移または相分離を、偏光顕微鏡によって観察することにより得た。
【0095】
<液晶の誘電率異方性(Δε)の測定方法>
液晶の誘電異方性(Δε)は、Δε=ε
1−ε
2で求めた。ε
1は、液晶分子の長軸方向の誘電率であり、ε
2は、液晶分子の単軸方向の誘電率である。
誘電率ε(ε
1及びε
2)は、ε=Cd/S(Cは液晶の静電容量を表す。dは液晶層の厚さを表す。Sは2枚の電極基板の電極の重なり部分の面積を表す。)により求めた。
[実施例1]
【0096】
Tni=98℃、Δε=11.8であるシアノ系ネマチック液晶(PDLC−005、Hebei Luquan New Type Electronic Materials Co. Ltd社製)88.0wt%に、下記構造式(I)で表されるカイラル剤(CB−15、商品名、メルクジャパン製)を12.0wt%混合し、カイラルネマチック液晶(a)を調製した。この(a)は、ピッチ長p=1.2±0.1μmであった。
【0097】
カイラルネマチック液晶(a)95.0wt%に下記構造式(II)で表されるモノマー(Ac−N、商品名、川崎化成社製)2.4wt%、下記構造式(III)で表されるモノマー(Mc−N、商品名、川崎化成社製)2.4wt%および、下記構造式(IV)で表される重合開始剤(Lucirin TPO、商品名、BASF JAPAN社製)0.2wt%を混合し、攪拌、ろ過を行い、Tni=94℃の液晶組成物(A)を調製した。
この液晶組成物(A)を電極付き透明ガラス基板から成る空セル(電極付き基板間の距離(d)=10μm)に注入した。このセルを室温で、LED光源で紫外線(波長365nm)を片面1.6Jずつ、両面に照射し、モノマーを硬化させ、スクリーン(A−1)とした。
【0098】
【化13】
【0099】
作製したスクリーン(A−1)は透明な外観をしており、電圧を印加すると不透明な外観へと変化する、リバースモードの駆動を示した。スクリーン(A−1)に100Hz(V(Vp−p))の矩形波を印加してヘイズを測定したところ、表1の結果を得た。
【0100】
[実施例2]
液晶組成物(A)を透明電極付きガラス基板から成る空セル(電極付き基板間の距離(d)=12μm)に注入した。上記ガラス基板は、透明電極上にホモジニアス配向処理がなされた配向膜が付与されたものを用いた。このセルを室温で、LED光源で紫外線(波長365nm)を片面3.0Jずつ、両面に照射し、モノマーを硬化させ、スクリーン(A−2)とした。
【0101】
作製したスクリーン(A−2)は透明な外観をしており、電圧を印加すると不透明な外観へと変化する、リバースモードの駆動を示した。スクリーン(A−2)に100Hzの矩形波電圧V(Vp−p)を印加してヘイズを測定したところ、表1の結果を得た。
【0102】
[実施例3]
カイラルネマチック液晶(a)95.0wt%に下記構造式(V)で表されるモノマー(2,6−ジアクリロイルオキシナフタレン)4.8wt%、前記構造式(IV)で表される重合開始剤(Lucirin TPO、商品名、BASF JAPAN社製)0.2wt%を混合し、攪拌、ろ過を行い、Tni=94℃の液晶組成物(B)を調製した。
液晶組成物(B)を透明電極付きガラス基板から成る空セル(電極付き基板間の距離(d)=10μm)に注入した。上記ガラス基板は、透明電極上にホモジニアス配向処理がなされた配向膜が付与されていたものを用いた。このセルを室温で、LED光源で紫外線(波長365nm)を片面3.0Jずつ、両面に照射し、モノマーを硬化させ、スクリーン(B−1)とした。
【0103】
【化14】
【0104】
作製したスクリーン(B−1)は透明な外観をしており、電圧を印加すると不透明な外観へと変化する、リバースモードの駆動を示した。スクリーン(B−1)に100Hzの矩形波電圧V(Vp−p)を印加してヘイズを測定したところ、表1の結果を得た。
【0105】
[比較例1]
Tni=100.1℃、Δε=−6.0であるエステル系ネマチック液晶(820050、商品名、LCC社製)93.7wt%に、下記構造式(VI)で表されるモノマー(ST03776、商品名、SYNTHON Chemicals GmbH & Co.社製)5.1wt%、下記構造式(VII)で表されるモノマー(A−PTMG−65、商品名、新中村化学社製)0.9wt%および、下記構造式(VIII)で表される重合開始剤ベンゾインイソプロピルエーテル(東京化成社製)0.2wt%を混合し、攪拌、ろ過を行い、Tni=95℃の液晶組成物(C)を調製した。
この液晶組成物(C)を透明電極付きガラス基板から成る空セル(電極付き基板間の距離(d)=12μm)に注入した。上記ガラス基板は、透明電極上にホメオトロピック配向処理がなされた配向膜が付与されているものを用いた。このセルを室温で、LED光源で紫外線(波長365nm)を片面3.0Jずつ、両面に照射し、モノマーを硬化させ、スクリーン(C−1)とした。
【0106】
【化15】
【0107】
作製したスクリーン(C−1)は透明な外観をしており、電圧を印加すると不透明な外観へと変化する、リバースモードの駆動を示した。スクリーン(C−1)に100Hzの矩形波電圧V(Vp−p)を印加してヘイズを測定したところ、表1の結果を得た。
【0108】
【表1】
【0109】
[実施例4]
実施例1のスクリーン(A−1)を用いて、
図7に示す画像表示装置を作製した。
図7において、符号11は光源、符号12は液晶ライトバルブ、符号13はレンズ、符号14はライトチョッパー、符号15は画像投影機、符号16はスクリーン、符号17は画像表示装置、符号18は輝度計である。
この画像表示装置の液晶スクリーン部に振幅V=100Vp−p、周波数F=40Hz、デューティー比D
V=0.10のバースト電圧を印加した。この駆動波形の印加時間に同期させて、画像投影機から白色及び黒色のテスト映像を投影した。これらのテスト映像を投影した時の放射輝度をJETI Technische Instrumente GmbH.社製放射輝度計「specbos 1200」を用いて、画像表示装置のスクリーン部の法線方向から10度の方向(θ=10°)で測定した。得られた放射輝度スペクトルを
図8に示す。
【0110】
表2にスクリーン(A−1)に印加した電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を示す。表2では、ちらつきが見えなかった場合を「○」、ちらついて見える場合を「×」としている。
実施例4においては、D=0.06、τ
1=X、τ
2=Y、T
min=23.2%でスクリーンが駆動した。その結果、表示時ヘイズが10.2%で背景がぼやけず、はっきりと視認できた。放射輝度C/Rは127.9で、画像が明るく見えた。また、スクリーンにちらつきは見られなかった。
【0111】
[実施例5及び6]
電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)を表2に記載したように変更した以外は、実施例4と同じ画像表示装置を用いて電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。
実施例5及び6では、Dはいずれも0.01〜0.20の範囲であった。OFF時ヘイズはいずれも10%以下であった。τ
1およびτ
2はいずれも3.0msec以下であった。T
minはいずれも30%以下であった。
その結果、表示時ヘイズはいずれも20%以下であり、背景がぼやけず、はっきりと視認できた。放射輝度C/Rは60以上であり、画像が明るく見えた。また、スクリーンにちらつきは見られなかった。
【0112】
[実施例7〜11]
スクリーンをスクリーン(A−2)に変更した以外は、実施例4〜6と同様の画像表示装置を用いて駆動を行い、電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)を表2に示す。
実施例7〜11では、Dはいずれも0.01〜0.20の範囲であった。OFF時ヘイズはいずれも10%以下であった。τ
1およびτ
2はいずれも3.0msec以下であった。T
minはいずれも30%以下であった。
その結果、表示時ヘイズはいずれも20%以下であり、背景がぼやけず、はっきりと視認できた。放射輝度C/Rは60以上であり、画像が明るく見えた。また、スクリーンにちらつきは見られなかった。
【0113】
[実施例12〜14]
スクリーンをスクリーン(B−1)に変更した以外は、実施例4〜6と同様の画像表示装置を用いて駆動を行い、電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)を表に2示す。
実施例7〜11では、Dはいずれも0.01〜0.20の範囲であった。OFF時ヘイズはいずれも10%以下であった。τ
1およびτ
2はいずれも3.0msec以下であった。T
minはいずれも30%以下であった。
その結果、表示時ヘイズはいずれも20%以下であり、背景がぼやけず、はっきりと視認できた。放射輝度C/Rは60以上であり、画像が明るく見えた。また、スクリーンにちらつきは見られなかった。
【0114】
[比較例2及び3]
スクリーンをスクリーン(C−1)に変更した以外は、実施例4〜6と同様の画像表示装置を用いて駆動を行い、電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。電圧波形のパラメータ(V、D
V、F)を表2に示す。
比較例2および3では、Dはいずれも0.01〜0.20の範囲であった。OFF時ヘイズはいずれも10%以下であった。τ
1はいずれも3.0msec以下であった。T
minはいずれも30%以下であった。しかし、τ
2はいずれも10msec以上と遅かった。
その結果、表示時ヘイズはいずれも20%以上であり、背景がぼやけ、はっきりと視認できなかった。放射輝度C/Rは60以下であり、画像が明るく見えなかった。また、スクリーンにちらつきが感じられた。
【0115】
[比較例4]
電圧波形のパラメータDVを0.30に変更した以外は、実施例8と同様に電圧波形のパラメータ(V、DV、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。
比較例4では、τ
1およびτ
2はそれぞれ2.0msec,1.8msecといずれも3.0msec以下であった。T
minは12.4%と30%以下であった。しかしDは0.26と0.20より大きかった。その結果、表示時ヘイズは28.9%と20%を超えてしまい、背景がぼやけ、はっきりと視認できなかった。
【0116】
[比較例5]
電圧波形のパラメータFを30Hzに変更した以外は、実施例8と同様に電圧波形のパラメータ(V、DV、F)に対するスクリーンの光学特性(D、OFF時ヘイズ、τ
1、τ
2、T
min)および、シースルー表示特性(表示時ヘイズ、放射輝度コントラスト、ちらつき)を評価した。
比較例5では、Dは0.08と0.01〜0.20の範囲であった。τ
1およびτ
2はそれぞれ1.9msec,1.9msecといずれも3.0msec以下であった。T
minは14.1%と30%以下であった。しかしその結果、表示時ヘイズは10.6%と20%以下であり、背景がぼやけず、はっきりと視認できた。しかしながら、スクリーンにちらつきが感じられた。
【0117】
【表2】
【0118】
実施例4〜14では、いずれもちらつきがなく見えた。T
minはいずれも30%以下であった。表示時ヘイズはいずれも20%以下であり、室内でもスクリーンを通して背景を十分視認できた。
比較例2〜4は、表示時ヘイズが大きく、背景がぼやけて見えた。比較例5では、Fが40Hz未満であったため、ちらついて見えた。
【0119】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2012年9月27日出願の日本特許出願(特願2012−215006)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。