特許第6211059号(P6211059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧 ▶ ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポールの特許一覧

特許6211059スルホン化ポリフェニレンスルホンから製造された限外ろ過膜
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211059
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】スルホン化ポリフェニレンスルホンから製造された限外ろ過膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/68 20060101AFI20171002BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20171002BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   B01D71/68
   B01D61/14
   B01D69/10
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-506253(P2015-506253)
(86)(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公表番号】特表2015-520662(P2015-520662A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】EP2013058173
(87)【国際公開番号】WO2013156598
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】12165060.0
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マレツコ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア ウィジョジョ
(72)【発明者】
【氏名】ペイシャン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タイ−シュン チュン
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01080777(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0083541(US,A1)
【文献】 特開2001−070767(JP,A)
【文献】 特表2004−509224(JP,A)
【文献】 特開2005−243495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0163951(US,A1)
【文献】 特表2012−519593(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00576830(EP,A1)
【文献】 米国特許第05401410(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第04219218(DE,A1)
【文献】 特表2012−530166(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02443172(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/146052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジ状で且つマクロボイドのない構造を表し、少なくとも1つの部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)を単一の膜形成ポリマー材料として含む少なくとも1つの膜基材層(S)からなる限外ろ過膜であって、前記ポリマー(P1)が非スルホン化及びスルホン化繰り返し単位を含み、前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)において0.5〜4.5モル%の前記ポリマーのモノマー成分又は繰り返し単位が少なくとも1つのスルホネート基を有し、
前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)がポリアリーレンエーテルスルホンポリマーであり且つその繰り返し単位が一般式
【化1】
(式中、
Arは二価のアリーレン残基を表し、
M1及びM2から選択される少なくとも1つのモノマー単位はスルホン化され且つ
任意に且つ互いに独立してM1及びM2に含まれる芳香環が更に置換され得る)
のモノマー単位から構成され;
且つ前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)が、一般式M1a及びM2a
【化2】
(式中、Arは上で定義された通りであり、且つ
HalはF、Cl、Br又はIである)
のモノマーと、一般式M1b及びM2b
【化3】
(式中、Hal及びArは上で定義された通りであり、且つn及びmは独立して0、1又は2であるが、但し、n及びmは同時に0ではないことを条件とする)
の少なくとも1つのスルホン化モノマーと、を重合させることによって得られ
前記基材層(S)が30〜400μmの範囲の層厚さを有する、前記限外ろ過膜。
【請求項2】
前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)がブロックコポリマー又はランダムコポリマーである、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)が、式(1)
【化4】
の非スルホン化繰り返し単位
及び式(2)
【化5】
のスルホン化繰り返し単位
を含む、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
前記スルホン化繰り返し単位が、繰り返し単位(1)及び(2)の全モル数を基準として1〜3.5モル%のモル比で含有される、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記ポリマーP1が、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるように、50,000〜150,000g/モルの範囲のMwを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の膜。
【請求項6】
前記ポリマーP1が、70,000〜100,000g/モルの範囲のMwを有する、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
記基材層(S)が50〜250μmの範囲の層厚さを有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の膜。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の膜の製造方法であって、請求項1からまでのいずれか1項に規定される少なくとも1つの部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)を含むポリマー溶液を適用することによって少なくとも1つの基材層(S)を製造することを含み、
前記ポリマー溶液の前記ポリマー含有率が10〜24質量%の範囲であり;且つ
前記ポリマー溶液が、N−メチルピロリドン(NMP)、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルホスフェート、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の溶媒を含有し;追加的にエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の更なる添加剤を含有し、その際、前記添加剤が、ポリマー溶液の全質量当たり0〜30質量%の範囲で前記ポリマー溶液中に含有され、且つ前記少なくとも1つの基材層(S)が凝固浴として水を用いた位相反転法を適用することによって製造される、前記方法。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の膜を用いる限外ろ過法。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の膜を、FO又はNFなどの他の用途に適合する膜を製造するための基材として用いる使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーに基づく膜基材層(S)を含む限外ろ過膜、特にスルホン化ポリフェニレンスルホン(sPPSU)ポリマー及びその製造方法に関する。更に、本発明は、前記膜を利用する限外ろ過プロセスに関するものである。
【0002】
発明の背景
限外ろ過(UF)は、精密ろ過(MF)とナノろ過(NF)との間にある膜プロセスである。このような膜の細孔サイズは、通常、約2〜100nmの範囲内である[1]。1〜3バールの駆動力を付与する際に、この膜プロセスにより高分子及びコロイドが保持される。これらのより大きな分子は膜によって保持されるが、より小さな分子は溶媒と一緒に自由に透過する。このように、UFのメカニズムは、サイズ排除に主に依存する。このプロセスは、ジュースや飲料[2,3]、透析[4]、及び水精製などの産業に広く適用されている。
【0003】
理想的なUF膜は、以下の特性を有するべきである:(1)親水性と高い水フラックス;(2)スポンジ状(無マクロボイド)及び相互接続された細孔構造と共に高度の多孔性;(3)良好な長期の膜安定性と共に十分な機械的強度。
【0004】
殆どのUF膜は、ポリスルホン(PSU)[5]、ポリフッ化(ビニリデン)(PVDF)[6]、酢酸セルロース(CA)[7]及びポリイミド(PI)[8]などの材料から非対称膜を形成するために、転相プロセスによって製造される。これらの中で、ポリアリールスルホン類は、それらの化学的及び機械的耐性、熱安定性、並びに温度及び腐食環境の幅広い範囲に耐える能力で知られている[9]。しかしながら、幾つかの上記のポリマー、即ち、PSU及びPVDFの疎水性について、これらのポリマーから作られたUF膜は、水性媒体、マクロボイドの形成並びに汚損傾向によっても不良な濡れ性の影響を受ける。その結果、一般的に、UF用途のかかるポリマー材料に対して、親水性化剤及び細孔形成剤として作用する添加剤、即ち、ポリエチレングリコール(PEG)[10,11]、ポリビニルピロリドン(PVP)を含む必要がある。
【0005】
優れた耐薬品性及び熱安定性を有する膜を利用する高度なUF分離技術が必要である。
【0006】
先行の研究では、0.8〜2.5meq/gの官能価を有するスルホン化PPSU[12]及びCAとスルホン化PPSU[13]とのポリマーブレンドが電気透析に適用されてきた。しかしながら、低い官能価の他のポリマー材料とブレンドすることなく製造され直接スルホン化された材料からなるUF膜が非常に望ましい。
【0007】
発明の要旨
上記の問題は、特に、直接スルホン化経路を介して合成されたスルホン化ポリフェニレンスルホン(sPPSU)を使用する相反転プロセスを介して、完全に多孔性で且つスポンジ様形態を有する完全に非対称の限外ろ過膜(UF)を提供することによって解決される。スルホン化モノマー含有率では、新たに開発された膜は、高い水透過性を示す。負電荷を有するUF膜の親水性は、汚損傾向を低減する可能性がある。本発明に記載される方法は、膜産業における様々な用途のために、上述のポリマー材料から完全にむき出しの非対称の中空糸膜を製造するまで拡張することができる。特に、これらの新たに開発されたUF膜は、血液透析、タンパク質分離/分画、ウイルス除去、発酵ブロスからのワクチン及び抗生物質の回収、廃水処理、ミルク/乳製品の濃縮、果汁の清澄化等のプロセスに適用される可能性を有する。これらのUF非対称膜中の負電荷も、特定のタンパク質の対/混合物の分離性能を高め得る。かかる膜も、ナノろ過及び正浸透膜などの他の膜用途のための幾つかの改質を有する膜基材として適用され得る。膜構成に関しては、本発明に記載された方法は、完全にむき出しのUF非対称中空糸膜を製造するために拡張することができる。
【0008】
更に詳細には、親水性がUF性能に及ぼす効果を調査するために、2つの新規な材料、2.5モル%及び5.0モル%の(5,5’−ジスルホン−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)sDCDPSモノマーにより直接スルホン化されたポリフェニレンスルホン(sPPSU)を利用した。非スルホン化PPSUは、性能を比較するためのベンチマークとして使用した。
【0009】
図面の簡単な説明
図1は、鋳放し膜の形態を示す:(a)PPSU;(b)sPPSU−2,5%;(c)sPPSU−5%
図2は、異なるスルホン化含有率を有するUF膜の確率密度曲線を示す:(a)PPSU;(b)sPPSU−2.5%;(c)sPPSU−5%
【0010】
発明の詳細な説明:
A.一般的な定義:
「水処理用の膜」とは、一般的に、溶解して懸濁した水の粒子の分離を可能にする半透明の膜であり、その際、分離プロセス自体は、圧力駆動又は電気的駆動のいずれかであってよい。
【0011】
膜の適用例は、圧力駆動膜技術、例えば、精密ろ過(MF;非常に小さな、懸濁した粒子、コロイド、細菌の分離のための細孔サイズは約0.08〜2μm)、限外ろ過(UF;1000MWを上回る有機粒子、ウイルス、細菌、コロイドの分離のための細孔サイズは約0.005〜0.2μm)、ナノろ過(NF、300MWを上回る有機粒子、トリハロメタン(THM)前駆体、ウイルス、細菌、コロイド、溶解した固形物の分離のための細孔サイズは0.001〜0.01μm)又は逆浸透(RO、イオン、100MWを上回る有機物質の分離のための細孔サイズは0.0001〜0.001μm)である。
【0012】
ポリマーの分子量は、Mw値として明記されない限り、特に、DMAc(ジメチルアセトアミド)中でGPCによって測定される。特に、GPC測定は、0.5質量%の臭化リチウムを含有するジメチルアセトアミド(DMAc)を用いて実施された。ポリエステルコポリマーはカラム材料として使用された。カラムの較正は、狭い分布のPMMA標準を用いて行った。流量1ミリリットル/分を選択した場合、注入されたポリマー溶液の濃度は4mg/mlであった。
【0013】
「スルホン化」分子は、−SOH型の少なくとも1つのスルホネート(又はスルホとも呼ばれる)残基、又は−SO型のその対応する金属塩の形態、例えば、M=Na、K又はLiのアルカリ金属塩の形態を有する。
【0014】
本発明の文脈において、「部分的にスルホン化された」とは、単に、モノマー成分の特定の割合がスルホン化され且つ少なくとも1つのスルホ基残基を含む、ポリマーを意味する。特に約0.5〜4.5モル%又は約1〜3.5モル%のポリマーのモノマー成分又は繰り返し単位は少なくとも1つのスルホ基を有する。スルホン化モノマー単位は、1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、特に2つのスルホ基を有し得る。スルホ含有率が0.5モル%未満である場合、親水性の改善は見られず、スルホ含有率が5モル%を超える場合、マクロボイドと低い機械的安定性を有する膜が得られる。
【0015】
「アリーレン」は、二価の、単核の又は多核の芳香環基、特に、任意に一置換又は多置換され得る、例えば、同じ又は異なる、特に同じ低級アルキル、例えば、C〜C又はC〜Cアルキル基によって、一置換、二置換又は三置換された、単核、二核又は三核の芳香環基を表し、且つ6〜20個、例えば、6〜12個の環炭素原子を有する。2個以上の環基が縮合され得るか又は、更に好ましくは非縮合環、又は2つの隣接した環がC−C単結合又はエーテル(−O−)又はアルキレン橋、又はハロゲン化アルキレン橋又はスルホノ基(−SO−)から選択される基Rを介して結合され得る。アリーレン基は、例えば、単核、二核及び三核の芳香環基から選択されてよく、その際、二核及び三核基の場合、芳香環は任意に縮合され;前記2個又は3個の芳香環が縮合されない場合、それらはC−C単結合、−O−、又はアルキレン又はハロゲン化アルキレン橋を介して2つずつ結合される。例として、以下に記載されるフェニレン、例えば、ハイドロキノン;ビスフェニレン;ナフチレン;フェナントリレン:
【化1】
(式中、Rは上に規定される連結基、例えば、−O−、アルキレン、又はフッ化又は塩素化アルキレンを表すか又は上で定義された更に置換され得る化学結合を表す)
が挙げられる。
【0016】
「アルキレン」は、1〜10個又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の二価の炭化水素基、例えば、C〜Cアルキレン基、例えば、−CH−、−(CH−、(CH−、−(CH−、−(CH−CH(CH)−、−CH−CH(CH)−CH−、(CH−を表す。
【0017】
「低級アルキル」は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の「アルキル」残基を表す。その例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル又はtert−ブチルから選択されるC〜C−アルキル基、又は上で定義されたC〜C−アルキル基から選択されるC〜C−アルキル基、さらにはペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルである。
【0018】
「非対称膜」(又は異方性膜)は、遙かに厚い多孔質基材によって支持される、薄い多孔性又は非多孔性の選択的な障壁を有する(H. Susanto, M. Ulbricht, Membrane Operations, Innovative Separations and Transformations, ed. E. Driolo, L. Giorno, Wiley-VCH-Verlag GmbH, Weinheim, 2009年, 第21頁も参照のこと)。
【0019】
B.特別な実施態様
本発明は以下の特別な実施態様を提供する:
1.スポンジ状の非対称膜、特に、少なくとも1つの部分的にスルホン化したポリフェニレンスルホンポリマー(P1)を含む少なくとも1つの非対称膜の基材層(S)を含む、UF膜として適用可能な非対称膜。
【0020】
2.実施態様1の膜であって、前記部分的にスルホン化したポリエーテルスルホンポリマー(P1)はポリアリーレンエーテルスルホンポリマーであり且つ一般式
【化2】
(式中、
Arは二価の芳香族残基を表し、
M1及びM2から選択される少なくとも1つのモノマー単位はスルホン化され且つ
ここでM1及び/又はM2の芳香環が更に1つ以上の同じ又は異なる置換基(−SOH型のスルホ残基、又はその対応する−SO型の金属塩の形態とは異なる)、特に前記基材層の特性プロフィール(例えば、機械的強度、又は透過性)を改善するのに適した置換基を有してよい)
のモノマー単位から構成されている、前記膜。適した置換基は、低級アルキル置換基、例えば、メチル又はエチルであり得る。
【0021】
3.先行する実施態様のうちの1つの膜であって、前記部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)において約0.5〜5モル%又は1〜3.5モル%のポリマーのモノマー成分又は繰り返し単位が少なくとも1つのスルホ基を有する、前記膜。
【0022】
4.先行する実施態様のうちの1つの膜であって、前記部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)が、一般式M1a及びM2a
【化3】
(式中、Arは上で定義された通りであり、且つ
HalはF、Cl、Br又はIである)
の非スルホン化モノマーであって、
M1a及び/又はM2aの芳香環が更にM1及びM2について上記された1つ以上の置換基を有し得る、前記非スルホン化モノマー、
例えば、M1aモノマー:
【化4】
及び
例えば、M2aモノマー:
【化5】
と、一般式M1b及びM2b
【化6】
(式中、Ar及びHalは上で定義された通りであり、且つn及びmは独立して0、1又は2であるが、但し、n及びmは同時に0ではないことを条件とする)
の少なくとも1つのスルホン化モノマーであって、
M1b及び/又はM2bの芳香環が更にM1及びM2について上記された1つ以上の置換基を有してよく、特に、スルホン化モノマーM1b及び/又はM2bのモル比が、M1a、M1b、M2a及びM2bの全モル数を基準として0.5〜5モル%の範囲であり、且つ(M1a+M1b):(M2a+M2b)のモル比が約0.95〜1.05、特に0.97〜1.03である、前記スルホン化モノマー、
例えば、M1bモノマー:
【化7】
及び
例えば、M2bモノマー:
【化8】
と、を重合することによって得られる、前記膜。
【0023】
5.先行する実施態様のうちの1つの膜であって、前記部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特に、ポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)が、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーである、前記膜。
【0024】
6.先行する実施態様のうちの1つの膜であって、前記部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)が、式(1)
【化9】
の非スルホン化繰り返し単位と、式(2)
【化10】
のスルホン化繰り返し単位を含む、前記膜。
【0025】
7.実施態様3の膜であって、前記部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)が
式(1a)
【化11】
の非スルホン化繰り返し単位と、式(2a)
【化12】
のスルホン化繰り返し単位を含む、前記膜。
【0026】
8.実施態様6又は7の膜であって、前記スルホン化した繰り返し単位2aが、繰り返し単位(1)及び(2)、又は(1a)及び(2a)、それぞれの全モル数を基準として0.1〜20モル%、0.2〜10モル%、特に0.5〜5モル%又は1〜3.5モル%のモル比で含まれる、前記膜。
【0027】
9.先行する実施態様のうちの1つの膜であって、前記ポリマーP1が、DMAcにおいてGPCによって測定されるように、50,000〜150,000、特に70,000〜100,000g/モルの範囲のMwを有する、前記膜。Mwが150,000を上回る場合、ポリマーの溶液粘度は高すぎる。Mwが50,000を下回る場合、得られた膜は限定された機械的強度を示す。
【0028】
10.先行する実施態様のいずれか1つの膜であって、少なくとも1つの基材層(S)が、完全に、即ち、実質的に断面全体にわたり、スポンジ状で且つマクロボイドのない構造を示す、前記膜。
【0029】
11.先行する実施態様のいずれか1つの膜であって、基材層(S)が、30〜400μm、50〜250μm又は80〜150μmの範囲の層厚さを有する、前記膜。層厚さが400μmを上回る場合、膜の透過性が低く、層厚さが30μmを下回る場合、欠陥が選択性を低下させ得る。
【0030】
12.先行する実施態様のいずれか1つの膜であって、スルホン化したポリマー(P1)が、M1b型の既にスルホン化したモノマーを含むモノマー混合物から製造される、前記膜。
【0031】
13.先行する請求項のいずれか1つに記載の膜の製造方法であって、実施態様1〜7のいずれか1つに規定された少なくとも1つの部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)(P1)を含むポリマー溶液を適用することによる少なくとも1つの基材層(S)の製造を含む、前記方法。
【0032】
14.前記溶液のポリマー含有率が10〜40質量%、12〜30質量%又は16〜24質量%の範囲である、実施態様13に記載の方法。ポリマー含有率が前記範囲を上回る場合、ドープ溶液の溶液粘度は、紡糸プロセスにとって高すぎるが、前記範囲を下回る場合、紡糸にとって遅すぎて膜の形成が生じる。
【0033】
15.ポリマー溶液が、N−メチルピロリドン(NMP)、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリ−エチルホスフェート、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の溶媒を含有し;追加的にエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の更なる添加剤を含有してよく、その際、前記添加剤が、ポリマー溶液の全質量当たり0〜50質量%、1〜40質量%又は1〜25質量%又は5〜15質量%の範囲で前記ポリマー溶液中に含有される、実施態様14に記載の方法。
【0034】
16.少なくとも1つの基材層(S)が凝固浴として水を用いた位相反転法を適用することによって製造される、実施態様13又は14に記載の方法。
【0035】
17.水を、任意に少なくとも1種の低級アルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノールと混合して、任意に実施態様21で定義された少なくとも1種の溶媒と混合して凝固剤として適用する、実施態様16に記載の方法。
【0036】
18.請求項1から11までのいずれか1項に記載の又は実施態様13から17までのいずれか1つによって製造された少なくとも1つの膜を含む、限外ろ過膜。
【0037】
19.平らなシート、中空繊維又は細管の形態の実施態様18に記載の限外ろ過膜。
【0038】
20.実施態様18又は19に記載の膜を用いる限外ろ過法。
【0039】
21.血液透析、タンパク質分離/分画、ウイルス除去、発酵ブロスからのワクチン及び抗生物質の回収、廃水処理、ミルク/乳製品の濃縮、果汁の清澄化等に適用される実施態様20に記載の方法。
【0040】
22.実施態様1〜12のいずれか1つに記載の又は実施態様13〜7のいずれか1つによって製造された膜を、FO又はNFなどの他の用途に採用される膜を製造するための基材として用いる使用。
【0041】
C.本発明の更なる実施態様
UF膜などの膜の製造及びそれらを異なる構造のろ過モジュールに用いる使用は当該技術分野で知られている。例えば、[19] MC Porterらの、Handbook of Industrial Membrane Technology (William Andrew Publishing/Noyes, 1990年)を参照されたい。
【0042】
1.親水性膜基材層(S)の製造
1.1ポリマーP1の製造
特に記載のない限り、ポリマーの製造は概してポリマー技術の標準法を適用して実施される。一般に、本願明細書で使用される試薬及びモノマー成分は、市販されているか又は従来技術でよく知られているか又は先行技術の開示を介して当業者が容易に利用可能であるかのいずれかである。
【0043】
第1の特定の実施態様によれば、部分的にスルホン化したポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)P1は、M1a及びM2a型のモノマー及びM1b型及びM2b型の少なくとも1つのスルホン化した変種のモノマーを含むモノマーの混合物を反応させることによって製造される。
【0044】
一般的に、スルホン化ポリアリーレンスルホンポリマー(特にポリフェニレンスルホンポリマー)P1は、例えば、[20] R.N. JohnsonらのJ. Polym. Sci. A-1, 第5巻, 2375 (1967年)によって教示される通り、例えば、芳香族ジオールのジアルカリ金属塩と、芳香族ジハロゲン化物とを反応させることによって合成できる。
【0045】
好適な芳香族ジハライド(M1a)の例としては、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモフェニル)スルホン、ビス(4−ヨードフェニル)スルホン、ビス(2−クロロフェニル)スルホン、ビス(2−フルオロフェニル)スルホン、ビス(2−メチル−4−クロロフェニル)スルホン、ビス(2−メチル−4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−クロロフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−フルオロフェニル)スルホン、それらの対応する低級アルキル置換された類似体が挙げられる。それらは、個別に使用されるか又は2種以上のそれらのモノマー成分の組み合わせとして使用されてよい。ジハロゲン化物の特定の例は、ビス(4−クロロフェニル)スルホン((4,4’−ジクロロフェニル)スルホン;DCDPSとも呼ばれる)及びビス(4−フルオロフェニル)スルホンである。
【0046】
芳香族ジハロゲン化物と反応するべき好適な二価芳香族アルコール(M2a)の例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ビスフェノール、2,2’−ビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、及び2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンである。それらのうち好ましいのは、ヒドロキノン、レゾルシノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、及びビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテルである。それらは、個別に使用されるか又は2種以上のモノマー成分M2aの組み合わせとして使用され得る。かかる二価芳香族アルコールの特定の例は、4,4’−ビスフェノール及び2,2’−ビスフェノールである。
【0047】
化合物M1b及びM2bは、上記の非スルホン化モノマー成分M1及びM1bのモノ又はポリスルホン化等価物である。このようなスルホン化モノマー成分は、当該技術分野でよく知られているか又は日常的な有機合成法で簡単に利用できる。例えば、スルホン化芳香族ジハロゲン化物、例えば、5,5’−スルホニルビス(2−クロロベンゼンスルホン酸)ナトリウム(DCDPSの5,5’−ビススルホン化類似体)が、例えば、[21] M. Uedaら, J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 第31巻 853 (1993年)によって開示されている。
【0048】
前記二価芳香族フェノールのジアルカリ金属塩は、二価芳香族アルコールとアルカリ金属化合物、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムとの間の反応によって得られる。
【0049】
上で定義された二価芳香族アルコールジアルカリ金属塩及び芳香族ジハロゲン化物及びスルホン化モノマーの間の反応は、当該技術分野(例えば、[22] HarrisonらのPolymer preprints (2000) 41 (2) 1239を参照のこと)に記載される通りに実施される。例えば、極性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びジフェニルスルホン、又はそれらの混合物又はトルエン等の非極性有機溶媒とかかる極性溶媒との混合物が適用され得る。
【0050】
反応温度は、通常、140〜320℃、特に160〜250℃の範囲である。反応時間は、0.5〜100時間、特に2〜15時間の範囲であってよい。
【0051】
二価芳香族アルコールアルカリ金属塩及び芳香族ジハロゲン化物のいずれか1つの過剰な使用の結果、分子量の制御に利用され得る末端基が形成される。そうでなければ、2つの成分が等モル量で使用される場合、一価フェノール、例えば、フェノール、クレゾール、4−フェニルフェノール又は3−フェニルフェノール、及び芳香族ハロゲン化物、例えば、4−クロロフェニルスルホン、1−クロロ−4−ニトロベンゼン、1−クロロ−2−ニトロベンゼン、1−クロロ−3−ニトロベンゼン、4−フルオロベンゾフェノン、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン、1−フルオロ−2−ニトロベンゼン又は1−フルオロ−3−ニトロベンゼンのいずれか1つが連鎖停止のために添加される。
【0052】
こうして得られたポリマーの重合度(1つのモノマー(M1)及び1つのモノマー(M2)から構成された繰り返し単位、例えば、繰り返し単位(1)及び(2)又は(1a)及び(2a)に基づいて計算される)は、40〜120、特に50〜80又は55〜75の範囲であってよい。
【0053】
モノマー成分の反応、特に、芳香族ジハロゲン化物M1a及びM1b並びにM2a及び任意にM2bの二価芳香族アルコールアルカリ金属塩の反応も、[14] Geise, G.M.らのJ. Poly. Sci, Part B: Polym Phys.: 第48巻, (2010年), 1685及びその中で相互参照する文献に記載される通りに実施され得る。
【0054】
1.2基材層(S)の製造
スポンジ状の、マクロボイドのない基材層(S)の製造は、例えば、[15] C.A. SmoldersらのJ. Membr. Sci.: 第73巻, (1992年), 259に記載された通りに、よく知られた膜形成技術を適用することによって実施される。
【0055】
特定の製造方法は、相転換法として知られている。
【0056】
第1工程では、上記で製造された部分的にスルホン化したポリマー(P1)を、例えば、20〜80℃の範囲、例えば、60℃で真空下で乾燥させて、過剰な液体を除去する。
【0057】
第2工程では、適切な溶媒系中のポリマーを含む均質なドープ溶液を調製する。前記溶媒系は、N−メチルピロリドン(NMP)、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルホスフェート、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の溶媒を含有し;さらにはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の更なる添加剤を含有してよく、その際、前記添加剤は、ポリマー溶液の全質量当たり0〜50質量%又は0〜30質量%の範囲で前記ポリマー溶液中に含有される。
【0058】
ポリマー含有率は、溶液の全質量を基準として10〜40質量%、又は16〜24質量%の範囲である。例えば、典型的な組成物は、20:16:64の質量%比でsPPSU2.5%/エチレングリコール/N−メチルピロリドン(NMP>99.5%)を含む。
【0059】
第3工程では、ポリマー溶液は、その後、十分な厚さのポリマー層を適切に塗布するキャスティングナイフを使用して、固体支持体、例えば、ガラス板上にキャストされる。
【0060】
その直後に、第4工程では、前記支持体上に設けられたポリマー層を、水系凝固液を含有する凝固浴、例えば、水道水の凝固浴中に室温で浸漬させる。任意に、水は、凝固浴としての少なくとも1種の低級アルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノールと混合して、任意に上で定義された少なくとも1種の溶媒と混合して適用され得る。鋳放し膜を、一定の水の変化で少なくとも2日間水中に浸漬し、相転換を誘導するために確実に溶媒を完全に除去した。
【0061】
この手順の結果、マクロボイドのないスポンジ状構造を示す膜基材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、非スルホン化材料及びスルホン化材料を用いてキャストされたUF膜のSEM画像を示す。
図2図2は、異なるスルホン化含有率を有するUF膜の確率密度曲線を示す。
【0063】
実験部
実施例1:膜基材ポリマーの製造
a)sPPSU 2.5%
撹拌機、ディーン−スターク−トラップ、窒素導入口及び温度調節器を備えた4I HWS容器において、1.99モルのジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、2.00モルの4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、0.05モルの3,3’−ジ−二硫酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン及び2.12モルの炭酸カリウム(粒径36.2μm)を、2000mlのNMP中で窒素雰囲気下で懸濁させる。撹拌しながら混合物を190℃まで加熱する。30l/時間で窒素を、混合物を通してパージし、この混合物を6時間190℃に維持する。その後、1000mlのNMPを添加して混合物を冷却する。窒素下で混合物を60℃未満に冷却させる。ろ過後、混合物を、100mlの2mのHClを含有する水中に沈殿させる。沈殿した生成物を、熱水で(85℃で20時間)抽出し、減圧下にて120℃で24時間乾燥させる。
【0064】
粘度数:88.7ml/g(25℃の1質量/体積%のN−メチルピロリドン溶液)。
【0065】
sDCDPSモノマーの含有率を、ポリマーの硫黄含有率を取って推定すると2.4モル%であった。
【0066】
b)sPPSU 5%
撹拌機、ディーン−スターク−トラップ、窒素導入口及び温度調節器を備えた4I HWS容器において、1.90モルのジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、2.00モルの4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、0.1モルの3,3’−ジ−二硫酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(sDCDPS)及び2.12モルの炭酸カリウム(粒径36.2μm)を、2000mlのNMP中で窒素雰囲気下で懸濁させる。混合物を撹拌しながら190℃まで加熱する。30リットル/時間の窒素を混合物にパージし、混合物を190℃で6時間維持する。その後、1000mlのNMPを添加して混合物を冷却する。窒素下で混合物を60℃未満に冷却させる。ろ過後、混合物を、100mlの2mのHClを含有する水中に沈殿させる。沈殿した生成物を、熱水で(85℃で20時間)抽出し、減圧下にて120℃で24時間乾燥させる。
【0067】
粘度数:83.2ml/g(25℃の1質量/体積%のN−メチルピロリドン溶液)。
【0068】
sDCDPSモノマーの含有率を、ポリマーの硫黄含有率を取って推定すると4.7モル%であった。
【0069】
実施例2:sPPSU2.5%及びsPPSU5%からの完全にスポンジ様で且つ親水性のUF膜の製造
sPPSU2.5%及びsPPSU5%を、マクグラス(McGrath)らによって開発された合成経路に従って、実施例1に上記される通りに合成した[14]。
【0070】
メルク(Merck)社製のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社製のエチレングリコール(EG)を、UF膜の製造において、それぞれ溶媒及び添加剤として利用した。各ドープ溶液の組成はポリマー/EG/NMP(質量%)=13/16/71であった。
【0071】
キャスティング溶液を、厚さ100μmのキャスティングナイフでガラス板上にキャスティングする前に一晩脱気させた。鋳放膜を、その後すぐに室温で水の凝固浴中に浸漬し、確実に完全に沈殿させるために1日間維持した。
【0072】
沈殿プロセスの間、2.5モル%及び5モル%のDCDPSを有するsPPSU材料からキャストされたUF膜は、非スルホン化PPSU材料と比べて遅い沈降速度を示すことが観察され得る。これは、スルホン化材料が、非スルホン化のものと比較して遅延した脱混合を促進させる傾向があるため、一般的な現象である。しかしながら、非対称膜[16]を形成するために、他のポリマーとブレンドする必要のある後スルホン化法によって合成された公知のスルホン化材料と比較して、本発明の直接スルホン化されたポリマーは、他のポリマーとブレンドすることなく、独立した非対称膜を形成することができる。
【0073】
図1は、非スルホン化材料及びスルホン化材料を用いてキャストされたUF膜のSEM画像を示す。予想されるように、非スルホン化PPSU製の膜(図1a)は、瞬時の脱混合のために多数のマクロボイドを呈する一方で、本発明のスルホン化PPSU製の膜(図1b及び1c)は、完全にスポンジ状で且つマクロボイドが見られない相互結合された細孔構造を示す。
【0074】
また、スルホン化材料製の膜の底面が完全に多孔性であることも観察され得る。図1b及び1cに示す典型的な膜の形態は、UF用途にとって非常に好ましく、潜在的にNF又は順浸透(FO)などの他のタイプの膜プロセス用の膜基材として適用され得る。更に、それらも非スルホン化のものと比較して高い親水性と高い多孔率を示す。表1は、非スルホン化及びスルホン化PPSUの両方から作られたUF膜の上面及び下面の接触角並びに多孔率を示す。
【表1】
【0075】
実施例3:sPPSU−2,5%膜、sPPSU−5%膜及びPPSU膜のUF性能試験
上記の作製された平膜基材を最初に試験し、その純水透過性(PWP)(L/mバール時間)を、5cmの試料直径を有する限外ろ過膜透過細胞を用いて測定した[17,18]。
【数1】
(式中、Qは透水体積流量(L/時間)であり、Αは有効ろ過面積(m)であり、且つΔPは膜貫通圧力(バール)である)。
【0076】
その後、膜を、液体側で25psi(1.72バール)の圧力下で膜の上面を通してそれらを流すことによって中性溶質(ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレンオキシド(PEO))分離試験を行った。中性溶質の濃度を、全有機炭素分析器(TOC ASI−5000A、島津製作所、日本)によって測定した。測定された供給液濃度(C)及び透過液濃度(C)を、有効溶質除去係数R(%)の計算に用いた。
【数2】
【0077】
この研究では、200ppmの異なる分子量のPEG又はPEOを含有する溶液を、膜の細孔サイズ及び細孔サイズ分布の特徴付けのための中性溶質として使用した。これらの中性溶質のストークス半径(r、nm)と分子量(M、gモル−1)との関係は、以下のように表され得る:
PEGの場合 r=16.73×10−12×M0.557 (3)
PEOの場合 r=10.44×10−12×M0.587 (4)
【0078】
等式(3)及び(4)から、所与のMでの仮想溶質の半径(r)を計算することができる。次に、平均有効細孔サイズ及び細孔サイズ分布が、溶質と膜の細孔との間の立体的及び流体力学的相互作用の影響を無視することによって、従来の溶質輸送アプローチに従って得られ、平均有効細孔半径(μρ)及び幾何標準偏差(σ)は、μ(R=50%での溶質の幾何平均半径)及びσ(R=50%を上回るR=84.13%でのrの比として定義された幾何標準偏差)と同じであると仮定され得る。従って、μρ及びσに基づいて、膜の細孔サイズ分布は、以下の確率密度関数として表され得る:
【数3】
【表2】
【0079】
表2は、非スルホン化及び直接スルホン化されたPPSU材料から作られたUF膜のPWP及び細孔サイズ特性を示す。興味深いことは、これらの膜のPWPが以下の順序に従うことに留意することである:非スルホン化PPSU>sPPSU(2.5モル%DCDPS)>sPPSU(5モル%DCDPS)。非スルホン化PPSU膜は高度に疎水性であるが、より高い汚染傾向を有するマクロボイドを多数有している。従って、これは、全ての膜の基材の中でも最も高いPWPを有する理由であり得る。その一方で、5モル%のDCDPSポリマーから作られた膜基材によって、2.5モル%のスルホン化モノマーを含有する膜基材よりも低いPWPが得られる。この現象は、前者が後者よりも水誘起腫脹度が高いという事実によるものである。
【0080】
鋳放膜のMWCOは以下の順序である:sPPSU(2.5モル%のDCDPS)>非スルホン化PPSU>sPPSU(5モル%のDCDPS)。2.5モル%のsPPSU中のMWCOは、そのスルホン酸基が遅延した脱混合を引き起こし、その結果、より大きな孔径がもたらされるため、非スルホン化PPSUよりも高い。しかしながら、5モル%のsPPSUにおけるMWCOは、高度にスルホン化された材料においてより大きな膨潤挙動の効果のために他の膜よりも小さい。これらの結果は、ある程度スルホン化された直接スルホン化材料製の膜が、高い気孔率と相互結合された細孔構造を有する良好なPWPと防汚性を有するため、UF膜について開発される可能性が高いことを示す。
【0081】
実施例4:PPSU、sPPSU2.5%及びsPPSU5%の膜の機械的強度特性
表3は作製されたUF膜の機械的強度をまとめている。ヤング率が低下する一方で、破断点伸びは膜基材のスルホン化度の上昇に伴って上昇する。5モル%のsDCDPSを有するスルホン化PPSUの場合、これはより低い機械的強度を示す。作製されたUF膜を、グリセロール/水の50/50質量%混合物中に2日間浸漬した後、機械的試験を行う前に、空気中で乾燥させた。膜基材の機械的特性を、その後、インストロン5542引張り試験装置によって測定した。平膜を5mmの幅でストライプ状に切断し、両端で25mmの初期ゲージ長さ及び10mm/分の試験速度でクランプした。少なくとも3つのストライプを、膜の引張応力、破断点伸び及びヤング率の平均値を得るために、それぞれのキャスティング条件について試験した。
【表3】
【0082】
参考文献のリスト
【0083】
本願明細書に引用された文献の開示は援用されている。
図1-1】
図1-2】
図2