特許第6211429号(P6211429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211429
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20171002BHJP
【FI】
   H01M4/139
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-18363(P2014-18363)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-146247(P2015-146247A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】大西 和幸
(72)【発明者】
【氏名】坂下 康広
(72)【発明者】
【氏名】折坂 英司
(72)【発明者】
【氏名】谷原 功一
(72)【発明者】
【氏名】森光 孝敏
【審査官】 小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−143304(JP,A)
【文献】 特開2000−096106(JP,A)
【文献】 特開平10−005664(JP,A)
【文献】 特開2006−281772(JP,A)
【文献】 実開平04−033545(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプレス用ロールを用いて電極活物質を含む粉体を基材上に圧密し、リチウムイオン電池用電極を製造するリチウムイオン電池用電極の製造方法において、
前記粉体を前記プレス用ロールまたは前記基材上に均し粉体層を形成する工程と、
前記一対のプレス用ロールのプレス部前部であって前記プレス用ロールに当接または近接して配置されている気流制御板により空気の同伴を抑制しつつ前記粉体層を前記プレス部へ搬送する工程と、
前記粉体層を前記一対のプレス用ロールにより前記基材の表面に圧密する工程と、
を備えたリチウムイオン電池用電極の製造方法。
【請求項2】
前記気流制御板は、プレート形状を有することを特徴とする請求項記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
【請求項3】
前記気流制御板の先端と前記プレス用ロールの表面との距離は、0〜15mmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
【請求項4】
前記気流制御板は、前記基材及び前記粉体層に対して所定の角度を持って配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記所定の角度は、0〜30°であることを特徴とする請求項4記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質等を含む粉体を圧縮成形してリチウムイオン電池用電極を製造するリチウムイオン電池用電極の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、繰り返し充放電が可能なリチウムイオン電池は、環境対応からも今後の需要の拡大が見込まれている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きいことから、携帯電話やノート型パソコン等の分野で利用されているが、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、大容量化等、より一層の性能向上が求められている。
【0003】
リチウムイオン電池用電極は電極シートとして得ることができる。例えば、特許文献1には、一対のプレス用ロールのロール間に供給される粉体を、一対のプレス用ロールにより集電体上に連続的に圧縮成形することにより電極シートを得る粉体圧延装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−212113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の粉体圧延装置を用いて電極シートを製造する場合、移動する基材に同伴する空気や移動するプレス用ロールに同伴する空気がプレス用ロールのプレス部に侵入する。プレス部に侵入した空気は、プレス用ロールにより基材上に粉体をプレスする際に、プレス用ロール間から押し出され空気の流れを形成する。従って、この空気の流れにより基材上に圧縮成形する際に粉体が飛ばされ粉体層の厚みが不足する部分や流れてきた粉体が空気の流れによって移動し、重なることで粉体層が厚くなる部分ができ、透けやしわとなり、リチウムイオン電池用電極の厚みにむらが生じ、リチウムイオン電池の充放電を繰り返すと厚みむらの部分にリチウム金属が析出することに起因するデンドライトショート(樹枝状リチウム金属の発達による正極、負極間短絡)が生じ、結果としてリチウムイオン電池における安全性や放電効率、サイクル寿命などの性能の低下を招いていた。
【0006】
本発明の目的は、表面が平滑な薄膜リチウムイオン電池用電極であって、信頼性、安全性、放電効率、及びサイクル寿命を向上させたリチウムイオン電池用電極を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、プレス用ロールのプレス部前部に同伴流抑制部を設け、プレス用ロールにより粉体をプレスする際の空気の同伴を抑制することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、
(1)一対のプレス用ロールを用いて電極活物質を含む粉体を基材上に圧密し、リチウムイオン電池用電極を製造するリチウムイオン電池用電極の製造方法において、前記粉体を前記プレス用ロールまたは前記基材上に均し粉体層を形成する工程と、前記一対のプレス用ロールのプレス部前部に備えられた同伴流抑制部により空気の同伴を抑制しつつ前記粉体層を前記プレス部へ搬送する工程と、前記粉体層を前記一対のプレス用ロールにより前記基材の表面に圧密する工程と、を備えたリチウムイオン電池用電極の製造方法、
(2)前記同伴流抑制部は、前記一対のプレス用ロールにより前記粉体層を圧密する際の空気の同伴を抑制する気流制御部材を備えることを特徴とする(1)に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法、
(3)前記気流制御部材は、プレート形状を有する気流制御板を備えることを特徴とする(2)に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法、
(4)前記同伴流抑制部は、前記一対のプレス用ロールにより前記粉体層を圧密する際の空気の同伴を抑制する真空チャンバーを備えることを特徴とする(1)に記載のリチウムイオン電池用電極の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面が平滑な薄膜リチウムイオン電池用電極であって、かつ性能を向上させたリチウムイオン電池用電極を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る粉体成形装置の概略を示す図である。
図2】第2の実施の形態に係る粉体成形装置の概略を示す図である。
図3】第3の実施の形態に係る粉体成形装置の概略を示す図である。
図4】第4の実施の形態に係る粉体成形装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造に用いる粉体成形装置2の概略を示す図である。図1に示すように、粉体成形装置2は、粉体4を収容するホッパー6と、ホッパー6から基材8に対して供給された粉体4を均し粉体層10を形成するスキージ用板12と、粉体層10を圧密するプレス用ロール14を備えている。ここで、プレス用ロール14は、一対のプレス用ロール14A,14Bを有しており、それぞれのプレス用ロール14A,14Bは、プレス部における接線が水平であり、プレス用ロール14Bの上部にプレス用ロール14Aが位置するように配置されている。
【0012】
一対のプレス用ロール14A,14Bのプレス部前部、即ち、粉体層10の進行方向の上流側には、粉体層10を圧密する際の空気の同伴を抑制する気流制御板16が配置されている。ここで、気流制御板16は基材8及び粉体層10に対して所定の角度を持って配置され、その先端はプレス用ロール14Aに当接または近接している。例えば、ロール径350mmの一対のプレス用ロール14A,14Bの場合、厚さ5mmの気流制御板16は、基材8及び粉体層10に対して0〜30°の角度で配置されている。また、気流制御板16の先端とプレス用ロール14A表面との最も近づく距離は0〜15mm、気流制御板16の先端と粉体層10の表面との最も近づく距離は1〜20mmに設定されている。なお、気流制御板16の先端には、プレス用ロール14Aとの摩擦を減少させるためふっ素樹脂粘着テープが貼付けられている。
【0013】
この粉体成形装置2を用いて、リチウムイオン電池用電極としての圧延シート18を製造する場合には、ホッパー6から粉体4を基材8に供給し、基材8に供給された粉体4をスキージ用板12により均し基材8上に粉体層10を形成する。基材8上に形成された粉体層10を、気流制御板16を備えた一対のプレス用ロール14A,14Bにより圧密する。これにより、基材8上にシート状成形物20が形成された圧延シート18が製造される。
【0014】
この粉体成形装置2によれば、気流制御板16により、プレス用ロール14Aに同伴する空気や基材8に同伴する空気が一対のプレス用ロールのプレス部に侵入することを抑制することができる。そのため、基材8上に形成された粉体層10を一対のプレス用ロール14A,14Bにより圧密する際に、一対のプレス用ロールのプレス部から押し出される空気の量が減少する。その結果、一対のプレス用ロールのプレス部から押し出される空気の流れによるシート状成形物20を形成する粉体4の移動が抑制され、圧延シート18の透けやしわの発生が抑制される。従って、厚みにむらのないリチウムイオン電池用電極を製造することができる。
【0015】
なお、上述の第1の実施の形態においては、厚みが一定な板状の気流制御板16を用いているが、プレス用ロール14Aに近づくにつれて厚みが薄くなり断面が三角形や台形の形状を有する気流制御板を用いても良い。この場合には、気流制御板16の基材8側の面が、基材8に対して0〜30°の角度となるように配置し、その先端はプレス用ロールに当接または近接して配置する。
【0016】
また、この場合においても気流制御板16の先端をプレス用ロール14Aに当接させる場合には、プレス用ロール14Aとの摩擦を軽減するため、気流制御板16の先端にふっ素樹脂粘着テープ等のテープを貼付けることが好ましい。
【0017】
ここで、基材8としては、薄いフィルム状の基材であればよく、通常、厚さ1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜800μmである。基材8としては、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金などの金属箔または炭素、導電性高分子、紙、天然繊維、高分子繊維、布帛、高分子樹脂フィルムなどが挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。高分子樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、アラミドフィルム、PEN、PEEK等を含んで構成されるプラスチックフィルム、シート等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、圧延シート18として、リチウムイオン電池電極用シートを製造する場合には、基材8として、金属箔または炭素フィルム、導電性高分子フィルムを用いることができ、好適には金属が用いられる。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用することが好ましい。
【0019】
また、基材8の表面には塗膜処理、穴あけ加工、バフ加工、サンドブラスト加工及び/又はエッチング加工等の処理が施されていても良い。基材8の表面に接着剤等を塗布すると、基材8上に形成されるシート状成形物20を強固に保持することができるため、特に好ましい。
【0020】
ホッパー6に収容される粉体4としては、電極活物質を含む複合粒子が挙げられる。複合粒子は、電極活物質及び結着材を含み、必要に応じてその他の分散剤、導電材および添加剤を含んでもよい。
【0021】
複合粒子をリチウムイオン電池用電極の材料として用いる場合、正極用活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、燐酸鉄リチウム等を挙げることができる。なお、上記にて例示した正極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0022】
なお、リチウムイオン電池用正極の対極としての負極の活物質としては、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、熱分解炭素などの低結晶性炭素(非晶質炭素)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、錫やケイ素等の合金系材料、ケイ素酸化物、錫酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物、等が挙げられる。なお、上記に例示した電極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0023】
リチウムイオン電池電極用の電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度なリチウムイオン電池用電極が形成できる。
【0024】
リチウムイオン電池電極用の電極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.8〜30μmである。
【0025】
複合粒子に用いられる結着材としては、前記電極活物質を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な結着材は、溶媒に分散する性質のある分散型結着材である。分散型結着材として、例えば、シリコン系重合体、フッ素含有重合体、共役ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等の高分子化合物が挙げられ、好ましくはフッ素系含有重合体、共役系ジエン重合体およびアクリレート系重合体、より好ましくは共役ジエン系重合体およびアクリレート系重合体が挙げられる。
【0026】
分散型結着材の形状は、特に制限はないが、粒子状であることが好ましい。粒子状であることにより、結着性が良く、また、作製したリチウムイオン電池用電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができる。粒子状の結着材としては、例えば、ラテックスのごとき結着材の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粒子状のものが挙げられる。
【0027】
結着材の量は、得られる電極活物質層と基材との密着性が充分に確保でき、かつ、内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100重量部に対して、乾燥重量基準で通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0028】
複合粒子には、前述のように必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
複合粒子には、前述のように必要に応じて導電材を用いてもよい。導電材の具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックが好ましい。これらの導電材は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
複合粒子は、電極活物質、結着材および必要に応じ添加される前記導電材等他の成分を用いて造粒することにより得られ、少なくとも電極活物質、結着材を含んでなるが、前記のそれぞれが個別に独立した粒子として存在するのではなく、構成成分である電極活物質、結着材を含む2成分以上によって一粒子を形成するものである。具体的には、前記2成分以上の個々の粒子の複数個が結合して二次粒子を形成しており、複数個(好ましくは数個〜数十個)の電極活物質が、結着材によって結着されて粒子を形成しているものが好ましい。
【0031】
複合粒子の製造方法は特に制限されず、流動層造粒法、噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法などの公知の造粒法により製造することができる。
【0032】
複合粒子の体積平均粒子径は、所望の厚みの電極活物質層を容易に得る観点から、通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、より好ましくは30〜250μmの範囲である。
【0033】
なお、複合粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
【0034】
次に、図2を参照して本発明の第2の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。図2は、第2の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造に用いる粉体成形装置22の概略を示す図である。図2に示す粉体成形装置22は、図1に示す粉体成形装置2の気流制御板16に代えて真空チャンバー24を設けたものである。従って、上述の粉体成形装置2と同一の構成についての詳細な説明は省略し、上述の粉体成形装置2の構成と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0035】
真空チャンバー24は、プレス用ロール14Aの回転軸方向に延び、プレス用ロール14Aに同伴する空気を吸引する吸気口26を有している。真空チャンバー24は、吸気口26がプレス用ロール14Aに当接または近接し、また、基材側の面が粉体層10に近接するよう配置されている。即ち、真空チャンバー24の吸気口26とプレス用ロール14Aとの距離が0〜15mm、真空チャンバー24の基材側の面と粉体層10の表面との距離が1〜20mmとなるように配置されている。
【0036】
従って、真空チャンバー24を備えることにより、プレス用ロール14Aに同伴する空気が吸気口26から吸引されて、一対のプレス用ロールのプレス部に侵入することを抑制することができる。そのため、基材8上に形成された粉体層10を一対のプレス用ロール14A,14Bにより圧密する際に、一対のプレス用ロールのプレス部から押し出される空気の量が減少する。その結果、一対のプレス用ロール14A,14B間から押し出される空気の流れによるシート状成形物20を形成する粉体の移動が抑制され、圧延シート18の透けやしわの発生が抑制される。従って、厚みにむらのないリチウムイオン電池用電極を製造することができる。
【0037】
次に、図3を参照して本発明の第3の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。図3は、第3の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造に用いる粉体成形装置28の概略を示す図である。図3に示す粉体成形装置28は、図1に示す粉体成形装置2の一対のプレス用ロール14A,14Bをそれぞれのプレス部における接線が水平方向に対して垂直となるよう配置し、基材8上に粉体層10を形成する代わりにプレス用ロール14A,14B上に粉体層10を形成し、下方向に進行する基材8の両面に粉体層10を圧密する構成としたものである。従って、上述の粉体成形装置2と同一の構成についての詳細な説明は省略し、上述の粉体成形装置2の構成と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0038】
粉体成形装置28においては、プレス用ロール14Aに対して、ホッパー6Aとスキージ用板12Aを備えており、さらに、プレス用ロール14Aと基材8との間には、気流制御板16Aを備えている。気流制御板16Aは、基材8のプレス用ロール14Aに対向する面に対して所定の角度を持ち、その先端がプレス用ロール14Aに近接して配置されている。即ち、気流制御板16Aは、基材8に対して0〜30°の角度で配置されている。また、気流制御板16Aの先端とプレス用ロール14A上に形成された粉体層10の表面との最近接点における距離は1〜30mm、気流制御板16と基材8との距離は0.1〜20mmに設定されている。
【0039】
また、粉体成形装置28においては、プレス用ロール14Bに対して、ホッパー6Bとスキージ用板12Bを備えており、さらに、プレス用ロール14Bと基材8との間には、気流制御板16Bを備えている。気流制御板16Bは、基材8のプレス用ロール14Bに対向する面に対して所定の角度を持ち、その先端がプレス用ロール14Bに近接して配置されている。即ち、気流制御板16Bは、基材8に対して0〜30°の角度で配置されている。また、気流制御板16Bの先端とプレス用ロール14B上に形成された粉体層10の表面との最近接点における距離は1〜30mm、気流制御板16と基材8との距離は0.1〜20mmに設定されている。
【0040】
この粉体成形装置28を用いて、リチウムイオン電池用電極としての圧延シート30を製造する場合には、ホッパー6A,6Bから粉体4を一対のプレス用ロール14A,14B上にそれぞれ供給し、一対のプレス用ロール14A,14B上に供給された粉体4をスキージ用板12A,12Bにより均し一対のプレス用ロール14A,14B上に粉体層10を形成する。一対のプレス用ロール14A,14B上に形成された粉体層10を、気流制御板16A,16Bを備えた一対のプレス用ロール14A,14Bにより、一対のプレス用ロール14A,14Bの上方から搬送される基材8に対して圧密する。これにより、基材8のプレス用ロール14A、14Bに対向する面にそれぞれシート状成形物20が形成された圧延シート30が製造される。
【0041】
この粉体成形装置28によれば、気流制御板16A,16Bにより、一対のプレス用ロール14A,14Bに同伴する空気や基材8に同伴する空気が一対のプレス用ロールのプレス部に侵入することを抑制することができる。そのため、プレス用ロール14A,14B上に形成された粉体層10を一対のプレス用ロール14A,14Bで基材8に対して圧密する際に、一対のプレス用ロールのプレス部から押し出される空気の量が減少する。その結果、一対のプレス用ロールのプレス部から押し出される空気の流れによるシート状成形物20を形成する粉体4の移動が抑制され、圧延シート30の透けやしわの発生が抑制される。従って、厚みにむらのないリチウムイオン電池用電極を製造することができる。
【0042】
次に、図4を参照して本発明の第4の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。図4は、第4の実施の形態に係るリチウムイオン電池用電極の製造に用いる粉体成形装置32の概略を示す図である。図4に示す粉体成形装置32は、図3に示す粉体成形装置28の気流制御板16A,16Bに代えて、形状が異なる気流制御板16C,16Dを設けたものである。従って、上述の粉体成形装置28と同一の構成についての詳細な説明は省略し、上述の粉体成形装置28と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0043】
気流制御板16C,16Dは、プレス用ロール14A,14Bによって基材8に粉体層10をプレスするプレス部に近づくにつれ厚みが薄くなる断面が三角形の形状を有している。気流制御板16C,16Dは、その先端がプレス用ロール14A,14B上に形成された粉体層10に近接し、気流制御板16C,16Dの基材8に対向する面が基材8に近接して配置されている。即ち、気流制御板16C,16Dの先端と粉体層10との最近接距離が1〜30mm、気流制御板と基材の距離が0.1〜20mmとなるよう配置されている。
【0044】
この粉体成形装置32によれば、気流制御板16C,16Dにより、一対のプレス用ロール14A,14Bに同伴する空気や基材8に同伴する空気が一対のプレス用ロール14A,14B間に侵入することを抑制することができる。そのため、プレス用ロール14A,14B上に形成された粉体層10を一対のプレス用ロール14A,14Bで基材8に対して圧密する際に、一対のプレス用ロールプレス部から押し出される空気の量が減少する。その結果、一対のプレス用ロールプレス部から押し出される空気の流れによるシート状成形物20を形成する粉体の移動が抑制され、圧延シート30の透けやしわの発生が抑制される。従って、厚みにむらのないリチウムイオン電池用電極を製造することができる。
【符号の説明】
【0045】
2,22,28,32…粉体成形装置、4…粉体、6…ホッパー、8…基材、10…粉体層、12…スキージ用板、14…プレス用ロール、16…気流制御板、18,30…圧延シート、20…シート状成形物、24…真空チャンバー、26…吸気口
図1
図2
図3
図4