特許第6212892号(P6212892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6212892
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】ラジカル硬化性組成物及び土木建築材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20171005BHJP
【FI】
   C08F290/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-62045(P2013-62045)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185274(P2014-185274A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】山▲さき▼ 理恵
(72)【発明者】
【氏名】松本 高志
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−080292(JP,A)
【文献】 特開2008−106169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290、299
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)及びフマル酸(a−2)を含む二塩基酸とエーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル構造と、(メタ)アクリロイル基とを有するラジカル硬化性化合物(A)及びラジカル硬化性不飽和単量体(B)を含有するラジカル硬化性組成物であって、前記環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)が、メチルテトラヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上のものであり、その使用量が二塩基酸の全量中50〜90mol%の範囲であることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)に由来するものである請求項1記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項3】
前記フマル酸(a−2)と前記化合物(a−4)とのモル比[(a−2)/(a−4)]が40/60〜80/20の範囲である請求項1記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のラジカル硬化性組成物を用いたことを特徴とする土木建築材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温での乾燥性(以下、「空乾性」と略記する。)に優れるラジカル硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空乾性を有する化合物は、嫌気性を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル硬化性化合物に対し、表面乾燥性を付与する目的で使用されてきた。
【0003】
しかしながら、前記ラジカル硬化性化合物を含有するラジカル硬化性組成物は、メタクリル酸メチル等の重合性不飽和単量体との共重合性が低いことや酸化重合の速度が遅いことから高い強度を得ることができなかった。
【0004】
そこでかかる問題を解決する方法として、ラジカル硬化性化合物への空乾性ユニットの導入(例えば、特許文献1を参照。)や、パラフィンワックス等の各種ワックスや桐油等の乾性油の使用(例えば、特許文献2を参照。)などの方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、空乾性ユニットを導入した場合には、重合性不飽和単量体との共重合性が不良で、特にラジカル硬化性化合物として軟質のものを用いた場合に共重合しない空乾性成分が可塑剤として硬化物中に残存する問題があった。また、各種ワックスを用いた場合には、温度変化によるワックスの分離等が起こり安定した空乾性を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−158805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、空乾性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく研究を進める中で、ラジカル硬化性化合物の組成に着目し、鋭意研究を進めた。
その結果、特定の構造を有するラジカル硬化性化合物とラジカル硬化性不飽和単量体とを含有させることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)及びフマル酸(a−2)を含む二塩基酸と、エーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル構造と、(メタ)アクリロイル基とを有するラジカル硬化性化合物(A)及びラジカル硬化性不飽和単量体(B)を含有することを特徴とするラジカル硬化性組成物及びそれを用いた土木建築材を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラジカル硬化性組成物は、空乾性に優れるものである。また、引張強度や引張伸び率等の引張り物性、塗膜の表面硬度にも優れるものである。
従って、本発明のラジカル硬化性組成物は、土木、建築、鉄道、道路等の分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のラジカル硬化性組成物は、環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)及びフマル酸(a−2)を含む二塩基酸とエーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル構造と、(メタ)アクリロイル基とを有するラジカル硬化性化合物(A)及びラジカル硬化性不飽和単量体(B)を含有するものである。
【0012】
前記ラジカル硬化性化合物(A)としては、空乾性やラジカル硬化性不飽和単量体(B)との共重合性等の観点から、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上のラジカル硬化性化合物を用いることが好ましく、空乾性をより一層向上できる観点から、ポリエステル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を示し、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を示し、「(メタ)アクリル単量体」とは、アクリル単量体及びメタクリル単量体の一方又は両方を示す。
【0013】
前記ラジカル硬化性化合物(A)として、ポリエステル(メタ)アクリレートを用いる場合には、例えば、環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)並びにフマル酸(a−2)を含む二塩基酸と、エーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールとを縮合反応させた後に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)として(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル化合物を反応させることにより得られるものを用いることができる。なお、前記ポリエステル(メタ)アクリレートの製造方法は、公知のものを用いることができる。
【0014】
前記環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、α−テルピネン・無水マレイン酸付加物、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物等を用いることができる。これらの二塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、空乾性をより一層向上できる観点から、メチルテトラヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上のものを用いることがより好ましい。
【0015】
前記環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)の使用量としては、空乾性の観点から、用いる二塩基酸の全量中40mol%以上であることが好ましく、50〜90mol%の範囲がより好ましい。
【0016】
前記フマル酸(a−2)は優れた空乾性を付与する上で必須の成分である。前記フマル酸はトランス体であり、ラジカル種に対して立体障害が少ないことから、ラジカル硬化性化合物(A)の骨格に導入されることにより、空乾性が向上したものと推測される。
【0017】
前記フマル酸(a−2)の使用量としては、空乾性の観点から、用いる二塩基酸の全量中1〜60mol%の範囲であることが好ましく、10〜50mol%の範囲がより好ましい。
【0018】
前記環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)及び前記フマル酸(a−2)以外に用いることができる二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和二塩基酸や、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等の飽和二塩基酸などを用いることができる。
【0019】
前記エーテル基を有するグリコール(a−3)としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等を用いることができる。これらのグリコールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記グリコール(a−3)の使用量としては、用いる多価アルコールの全量中50mol%以上あることが好ましい。
【0021】
前記グリコール(a−3)以外に用いることができる多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を用いることができる。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0023】
前記ラジカル硬化性化合物(A)として、ウレタン(メタ)アクリレートを用いる場合には、例えば、環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)並びにフマル酸(a−2)を含む二塩基酸と、エーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールとを縮合反応させて得られたポリオールとポリイソシアネートとを反応させイソシアネート基を有する
ウレタンプレポリマーを得、次いで(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)として水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を反応させて得られるものを用いることができる。なお、前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、公知のものを用いることができる。
【0024】
この際用いる二塩基酸及び多価アルコールは、前記ポリエステル(メタ)アクリレートで用いるものと同様のものを用いることができる。
【0025】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ラジカル硬化性化合物(A)として、エポキシ(メタ)アクリレートを用いる場合には、例えば、環状脂肪族不飽和二塩基酸(a−1)並びにフマル酸(a−2)を含む二塩基酸と、エーテル基を有するグリコール(a−3)を含む多価アルコールと、エポキシ樹脂とを反応させ、次いで(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)として(メタ)アクリロイル基を有する一塩基酸を反応させて得られるものを用いることができる。なお、前記エポキシ(メタ)アクリレートの製造方法は、公知のものを用いることができる。
【0027】
この際用いる二塩基酸及び多価アルコールは、前記ポリエステル(メタ)アクリレートで用いるものと同様のものを用いることができる。
【0028】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等の多価フェノールのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記(メタ)アクリロイル基を有する一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等を用いることができる。
【0030】
前記ラジカル硬化性化合物(A)中における前記フマル酸(a−2)のモル濃度としては、空乾性をより一層向上できる観点から、0.1〜5mol/kgの範囲であることが好ましく、0.2〜3mol/kgの範囲がより好ましく、0.4〜2.5mol/kgの範囲が更に好ましい。なお、前記フマル酸(a−2)のモル濃度は、フマル酸(a−2)のモル数をラジカル硬化性化合物(A)の理論分子量で除した値を示す。また、前記ラジカル硬化性化合物(A)の理論分子量は、使用する化合物の分子量とモル数から計算される理論分子量を示す。
【0031】
また、前記ラジカル硬化性化合物(A)中における前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)のモル濃度としては、空乾性をより一層向上できる観点から、0.1〜5mol/kgの範囲であることが好ましく、0.2〜3mol/kgの範囲がより好ましく、0.2〜1.5mol/kgの範囲が更に好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)のモル濃度は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)のモル数をラジカル硬化性化合物(A)の理論分子量で除した値を示す。また、前記ラジカル硬化性化合物(A)の理論分子量は、使用する化合物の分子量とモル数から計算される理論分子量を示す。
【0032】
前記フマル酸(a−2)と前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a−4)とのモル比[(a−2)/(a−4)]としては、空乾性をより一層向上できる観点から、40/60〜80/20の範囲であることが好ましく、60/40〜80/20の範囲がより好ましい。
【0033】
前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)としては、例えば、ジシクロペンテニルオキシ
エチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[
5−2−1−02,6]デカニル(メタ)アクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチ
ル)イソシアヌルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(メタ)アクリ
ル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アク
リル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキ
シル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アク
リル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシ
クロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテ
ル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート
、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモ
ノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2ーエチルヘキシル
エーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アク
リレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレン
グリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシ
ルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテ
ル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル
(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ポ
リテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(
メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチル
グリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステ
アレート、等の(メタ)アクリル単量体や、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチ
レン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸
ビニル、ジアリールフタレ-ト、トリアリールシアヌレ-トなどを用いることができる。こ
れらの単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも(メタ)アク
リル単量体を用いることが空乾性をより一層向上できる観点から好ましい。
【0034】
前記ラジカル硬化性化合物(A)と前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との質量比としては、空乾性や引張物性等の観点から、20/80〜80/20の範囲であることが好ましく、30/70〜70/30の範囲がより好ましい。
【0035】
本発明のラジカル硬化性組成物は、前記ラジカル硬化性化合物(A)と前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)とを必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0036】
前記その他の添加剤としては、例えば、石油ワックス、酸化防止剤、老化防止剤、顔料、チキソ性付与剤、溶剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、紫外線防止剤、補強材、骨材、難燃剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤、石油ワックス、重合禁止剤等を用いることができる。これらの中でも、空乾性をより一層向上できる観点から、硬化剤、硬化促進剤、石油ワックスを含有することが好ましい。
【0037】
前記硬化剤としては、空乾性の観点から有機過酸化物を用いることが好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等を用いることができる。これらの硬化剤は、養生条件等により適宜選択される。
【0038】
前記硬化剤の使用量としては、前記ラジカル硬化性化合物(A)と前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との合計100質量部に対して、空乾性の観点から、0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜8質量部の範囲がより好ましい。
【0039】
前記硬化促進剤は、前記硬化剤の有機過酸化物をレドックス反応によって分解し、活性ラジカルの発生を容易にする作用のある物質であり、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルトの有機酸塩;オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸;バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジンのエチレンオキサイド付加物、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類などを用いることができる。
【0040】
前記硬化促進剤の使用量としては、前記ラジカル硬化性化合物(A)と前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との合計100質量部に対し、0.01〜5質量部の範囲が好ましく、0.05〜3質量部の範囲が更に好ましい。
【0041】
前記石油ワックスは、酸素による硬化阻害を防止するものであり、融点が40〜75℃の石油ワックスを用いることが、前記ラジカル硬化性化合物(A)や前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との相溶性の観点から好ましく、融点が46〜66℃のものを用いることが更に好ましい。前記石油ワックスとしては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられ、前記ラジカル硬化性化合物(A)や前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との相溶性の観点から、パラフィンワックスを用いることが特に好ましい。なお、前記石油ワックスの融点は、JIS K2235に基づいて測定される融点を示す。
【0042】
前記石油ワックスの使用量は、空乾性や塗膜の硬度の点から、前記ラジカル硬化性化合物(A)と前記ラジカル硬化性不飽和単量体(B)との合計100質量部に対して、0.01〜1質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量部の範囲がより好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0044】
[合成例1]ラジカル硬化性化合物(A−1)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸を2モル、ジエチレングリコールを3モル仕込み、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5質量%添加し、205℃で11時間反応させた。次いで、フマル酸を2モル投入し、5時間反応させた。その後、140度まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを1モル投入し、更に10時間反応させた。酸価が3以下となった時点でハイドロキノン0.1質量部を加え、ラジカル硬化性化合物(A−1)を得た。
【0045】
[合成例2]ラジカル硬化性化合物(A−2)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸を18モル、ジエチレングリコールを19モル仕込み、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5質量%添加し、205℃で11時間反応させた。次いで、フマル酸を2モル投入し、5時間反応させた。その後、140度まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを1モル投入し、更に10時間反応させた。酸価が3以下となった時点でハイドロキノン0.1質量部を加え、ラジカル硬化性化合物(A−2)を得た。
【0046】
[合成例3]ラジカル硬化性化合物(A’−1)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸を2モル、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を2モル、ジエチレングリコールを3モル仕込み、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5質量%添加し、205℃で11時間反応させた。その後、140度まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを1モル投入し、更に10時間反応させた。酸価が3以下となった時点でハイドロキノン0.1質量部を加え、ラジカル硬化性化合物(A’−1)を得た。
【0047】
[合成例4]ラジカル硬化性化合物(A’−2)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸を20モル、ジエチレングリコールを19モル仕込み、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5質量%添加し、205℃で11時間反応させた。その後、140度まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレートを1モル投入し、更に10時間反応させた。酸価が3以下となった時点でハイドロキノン0.1質量部を加え、ラジカル硬化性化合物(A’−2)を得た。
【0048】
[合成例5]ラジカル硬化性化合物(A’−3)の合成
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸を2モル、ジエチレングリコールを3モル仕込み、エステル化触媒としてジブチルチンオキサイドを0.5質量%添加し、205℃で11時間反応させた。次いで、フマル酸を2質量部投入し、5時間反応させた。その後、140度まで冷却し、次いでネオデカン酸グリシジルエステルを1モル投入し、更に10時間反応させた。酸価が3以下となった時点でハイドロキノン0.1質量部を加え、ラジカル硬化性化合物(A’−3)を得た。
【0049】
[実施例1]ラジカル硬化性組成物の調製
前記ラジカル硬化性樹脂(A−1)50質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート50質量部、融点が46℃のパラフィンワックス0.2質量部、8質量%オクチル酸コバルトを0.5質量部、トルイジン化合物イソプロパノール溶液(「RP−191」DHマテリアル株式会社製)1質量部、過酸化ベンゾイル50質量%溶液(「ナイパーNS」日油株式会社製)2質量部を混合し、JIS K6901 5.10に準じたゲルタイムが15〜20分の範囲となるように重合禁止剤を配合し、ラジカル硬化性組成物を得た。
【0050】
[実施例2、比較例1〜3]
用いるラジカル硬化性組成物を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてラジカル硬化性組成物を得た。
【0051】
[空乾性の評価方法]
空乾性の評価は、下記に示す[タックフリータイム(TF)]及び[ゲルタイム(GT)]より、[TF]/[GT]の値で評価した。
なお、前記[TF]/[GT]の値により以下のように評価した。
3.5以下である場合は、「○」
3.5を超えて4.5以下である場合は、「△」
4.5を超える場合は、「×」
【0052】
[タックフリータイム(TF)]
25℃の環境下で実施例及び比較例で得られた前記ラジカル硬化性組成物をアプリケーターを用いて、ガラス板上に厚さ0.25mmとなるように塗布し、これを試験片とした。塗布後、塗膜表面を脱脂綿で押し付け、該脱脂綿が粘着によって塗膜表面に残らなくなるまでの時間(分)を測定し、タックフリータイム(分)とした。
【0053】
[ゲルタイム(GT)]
実施例及び比較例で得られた前記ラジカル硬化性組成物50質量部を100mlビーカーに採取し、25℃高温水槽に入れ、ゲル化するまでの時間(分)を測定し、ゲルタイム(分)とした。
【0054】
【表1】
【0055】
本発明のラジカル硬化性組成物である実施例1〜2のものは、空乾性に優れることが分かった。
【0056】
一方、比較例1及び2は、ラジカル硬化性化合物の原料としてフマル酸を用いない態様であるが、空乾性が不良であった。
【0057】
比較例23は、ラジカル硬化性化合物として(メタ)アクリロイル基を有しない態様であるが、空乾性が不良であった。