特許第6213044号(P6213044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6213044-セレン含有水の処理方法及び処理装置 図000002
  • 特許6213044-セレン含有水の処理方法及び処理装置 図000003
  • 特許6213044-セレン含有水の処理方法及び処理装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6213044
(24)【登録日】2017年9月29日
(45)【発行日】2017年10月18日
(54)【発明の名称】セレン含有水の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/70 20060101AFI20171005BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20171005BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20171005BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20171005BHJP
【FI】
   C02F1/70 Z
   B01D53/14 210
   B01D53/14 100
   C02F1/58 H
   C02F1/78
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-170455(P2013-170455)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-39652(P2015-39652A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】朝田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】村松 勇一
(72)【発明者】
【氏名】谷津 愛和
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−011915(JP,A)
【文献】 特開平09−299964(JP,A)
【文献】 特開2011−072940(JP,A)
【文献】 特開昭54−012147(JP,A)
【文献】 特開2001−029965(JP,A)
【文献】 特開2002−263662(JP,A)
【文献】 特開2002−210478(JP,A)
【文献】 米国特許第03933635(US,A)
【文献】 特表2004−518521(JP,A)
【文献】 特開平05−171482(JP,A)
【文献】 特開昭58−202021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58− 1/64
C02F 1/70− 1/78
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14−53/18
C01B 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレン含有水を、金属チタンとチタンより卑な金属との混合物又は合金と接触させて、前記卑な金属の単体の一部を溶出させることにより、該セレン含有水中のセレンを還元処理するセレン含有水の処理方法において、
該還元処理に先立ち、前記セレン含有水を酸化処理するセレン含有水の処理方法であって、
前記酸化処理が、オゾンによる酸化処理であり、該オゾン酸化処理水の残留オゾン濃度が0.01〜0.02mg/Lであることを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記卑な金属は、アルミニウム、亜鉛及びスズよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記セレン含有水が亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくとも1種を含有することを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記還元処理後の水を固液分離して不溶化したセレンを回収することを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項5】
請求項において、前記混合物又は合金へのセレン含有水の通水を停止し、該混合物又は合金を水で洗浄する工程を有し、この洗浄排水を固液分離して洗浄排水中の不溶化セレンを回収することを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項6】
請求項又はにおいて、固液分離される水を空気で曝気処理した後、前記固液分離を行うことを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項7】
請求項ないしのいずれか1項において、前記固液分離は濾過であることを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記還元処理で発生する水素を回収することを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項9】
請求項において、前記還元処理で発生したガスを硫化水素吸収材及びアルカリスクラバーの少なくとも一方で処理した後、水素を回収することを特徴とするセレン含有水の処理方法。
【請求項10】
セレン含有水を、金属チタンとチタンより卑な金属の単体との混合物又は合金と接触させて、前記卑な金属の一部を溶出させることにより該セレン含有水中のセレンを還元処理する還元処理手段を有するセレン含有水の処理装置において、
前記セレン含有水の酸化処理手段を有し、該酸化処理手段の処理水が前記還元処理手段に導入されるセレン含有水の処理装置であって、
前記酸化処理手段がオゾン酸化処理手段であり、該オゾン酸化処理水の残留オゾン濃度が0.01〜0.02mg/Lであることを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【請求項11】
請求項10において、前記卑な金属は、アルミニウム、亜鉛及びスズよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、前記還元処理手段からの水中の不溶化セレンを回収する不溶化セレン回収手段を備えたことを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【請求項13】
請求項12において、前記回収手段は前記還元処理手段からの水を曝気する曝気手段と、該曝気手段からの水を固液分離して不溶化セレンを分離する固液分離手段を有することを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項において、前記還元処理で発生する水素の回収手段を備えたことを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【請求項15】
請求項14において、前記水素回収手段は、前記還元処理手段からのガスを処理する硫化水素吸着手段又はアルカリスクラバーを有することを特徴とするセレン含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレン含有水を、金属チタンとチタンより卑な金属との混合物又は合金と接触させて還元処理する方法及び装置に係り、特にセレン含有水が亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオンなどを含んでいるセレン含有水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化排水等のセレン含有水を、金属チタン粒子とそれよりも卑な金属粒子(例えばアルミニウム粒子)との混合物と接触させ、その際にpHを下げるなどしてアルミニウム等を溶出させることにより、局部電池作用で排水中のセレンを還元処理することにより除去するセレンの処理方法が知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−30020号公報
【特許文献2】特開2009−11914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セレン含有水を金属チタンと他の1種類以上の金属との合金または混合物と接触させて処理するセレン含有水の処理方法では、原水に亜硫酸イオンやチオ硫酸イオンが含まれていた場合、これらも同時に還元され、硫化水素が発生する。また、この還元反応で発生する電子がこれら物質の還元に使われるため、セレン処理性能も低下する。また、中間生成物である元素態イオウが還元塔内に蓄積し、処理性能に影響するだけでなく、還元塔の差圧上昇につながる。
【0005】
亜硝酸イオンは、還元されてアンモニウムイオンになることから、亜硫酸イオンやチオ硫酸イオンと同様に、還元反応で発生する電子を浪費してセレン処理性能を低下させるので、予め除去するのが望ましい。
【0006】
本発明は、セレン含有水を金属チタンとそれよりも卑な金属との混合物又は合金と接触させ、該卑な金属の一部を溶出させることによりセレンを還元するセレン含有排水の処理方法及び装置において、セレン含有水が亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオンなどを含んでいてもセレンを効率よく処理することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセレン含有水の処理方法は、セレン含有水を、金属チタンとチタンより卑な金属との混合物又は合金と接触させて、前記卑な金属の単体の一部を溶出させることにより、該セレン含有水中のセレンを還元処理するセレン含有水の処理方法において、該還元処理に先立ち、前記セレン含有水を酸化処理するセレン含有水の処理方法であって、前記酸化処理が、オゾンによる酸化処理であり、該オゾン酸化処理水の残留オゾン濃度が0.01〜0.02mg/Lであることを特徴とする。
【0008】
本発明のセレン含有水の処理装置は、セレン含有水を、金属チタンとチタンより卑な金属の単体との混合物又は合金と接触させて、前記卑な金属の一部を溶出させることにより該セレン含有水中のセレンを還元処理する還元処理手段を有するセレン含有水の処理装置において、前記セレン含有水の酸化処理手段を有し、該酸化処理手段の処理水が前記還元処理手段に導入されるセレン含有水の処理装置であって、前記酸化処理手段がオゾン酸化処理手段であり、該オゾン酸化処理水の残留オゾン濃度が0.01〜0.02mg/Lであることを特徴とする。
【0009】
前記卑な金属としては、アルミニウム、亜鉛及びスズよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0010】
本発明は、前記セレン含有水が亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくとも1種を含有する場合に好適である。
【0012】
本発明では、前記還元処理手段からの水中の不溶化セレンを回収することが好ましく、特に、前記還元処理手段からの水を必要に応じ曝気した後、固液分離して不溶化セレンを分離して回収することが好ましい。
【0013】
本発明では、前記還元処理で発生する水素を回収してもよい。この場合、前記還元処理手段からのガスを硫化水素吸着手段又はアルカリスクラバーで処理して回収することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、セレン含有水を金属チタンとそれよりも卑な金属との混合物又は合金と接触させ、該卑な金属の一部を溶出させることによりセレンを還元するセレン含有排水の処理方法及び装置において、セレン含有水をチタン等の金属と接触させる処理の前処理として酸化処理する。これにより、還元処理を阻害する物質が酸化され、還元処理が効率よく行われる。例えば、亜硫酸イオンとチオ硫酸イオンについては硫酸イオンに、亜硝酸イオンについては硝酸イオンに酸化することにより、硫化水素の発生を抑えると共に、セレン処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のセレン含有水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
図2】本発明のセレン含有水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
図3】本発明のセレン含有水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明のセレン含有水の処理方法及び処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明において処理対象となるセレン含有水は、セレンとしてセレン酸のような6価セレン、亜セレン酸のような4価セレンを含むものであり、例えば、非鉄金属の精錬工程からの精錬排水、石炭燃焼ガスの排煙脱硫工程からの排煙脱硫排水、セレンを原材料、添加材として使用する工場からの各種工場排水などがあげられる。
【0018】
本発明の処理対象とするセレン含有水は、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン及び亜硝酸イオンの少なくとも一種を含む。上記の排水には、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオンなどが含まれており、その含有量は通常1mg/L以下であるが多い場合には合計で10〜100mg/L程度含まれることもある。本発明では、セレン含有水に亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン及び亜硝酸イオンがこのように合計で100mg/L程度含まれていても十分にセレンを還元処理することができる。
【0019】
セレン含有水をチタンと卑金属の混合物又は合金(以下、混合物等ということがある。)と接触させると、水中に卑金属イオンが溶出する。この卑金属が溶出する際に生成する電子は、金属チタンの表面に移動し、金属チタン表面でセレン含有水中のセレン、例えば6価のセレンが以下の反応式に従って還元処理される。
SeO2−+6e+8H → Se+4H
【0020】
この際、セレン含有水中に亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオンなどが存在すると、前述の通り、硫化水素が発生したり、セレン処理性能が低下したりするという問題があった。そこで、本発明は、セレン含有水を前処理として酸化処理し、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオンを硫酸イオンに、また亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化する。
【0021】
酸化処理手段としては、オゾン処理、空気曝気、過酸化水素添加、次亜塩素酸ナトリウム添加、過硫酸塩添加など、さまざまな方法があるが、オゾン処理が好適である。
【0022】
オゾン処理は、処理コストは高いものの、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオン全てに対する酸化力が強く、反応槽出口のオゾン濃度やORP値を測定しながら添加することで、残留オゾン濃度を最小限に抑えることができるため、セレン処理への影響もきわめて小さい。
【0023】
オゾン添加量は亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸イオン濃度によるが、これらの濃度の変動に追随できるよう、オゾン酸化槽出口において残留オゾン濃度またはORPを測定し、これらが所定値になるようにオゾン添加濃度を制御するのが望ましい。なお、残留オゾン濃度の目安は0.01〜0.02mg/Lが好ましい。ORPを目安とする場合は、pHによって異なるが、pH7で300〜400mV、pH9で200〜300mVとなるようにオゾン添加量を制御するのが望ましい。
【0024】
なお、オゾン処理以外の上記の酸化処理方法は、オゾン処理に比べて次のような点で劣る。即ち、空気曝気は、チオ硫酸イオンや亜硝酸イオンに対する酸化力が弱い。過酸化水素添加は、チオ硫酸イオンに対する酸化力が弱い。過酸化水素が残留すると還元処理に悪影響を及ぼす。次亜塩素酸ナトリウム添加は、アンモニウムイオン共存下においてクロラミンを生成する。残留塩素は還元処理に悪影響を及ぼす。過硫酸塩添加は、チオ硫酸イオンに対する酸化力が弱い。過硫酸イオンが残留すると還元処理に悪影響を及ぼす。
【0025】
上記の酸化処理により、セレン含有水中の亜硫酸イオン等を酸化処理した水は、次いで還元処理に供する。
【0026】
この還元処理で用いるチタン/卑金属混合物等の卑金属には、チタンよりも卑の各種の金属を用いることができるが、卑金属イオン溶出後のpH調整により生成する水酸化物からなる汚泥が白色を呈するものが好ましい。即ち、汚泥が白色であると、褐色などに着色している場合に比べて、汚泥の処分が容易である。白色の汚泥を生成する卑金属であって、好ましいものとしては、アルミニウム、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)などがあり、特に、アルミニウムは溶解性の面でも優れており、本発明では好適に使用できる。卑金属としては、1種の金属のみでもよいが、2種以上の複数の金属の混合物又は合金であってもよい。
【0027】
チタン/卑金属混合物等の形状は、表面積が大きいものであることが好ましい。例えば、粒径10μm〜5mm程度の粉状物、粒状物、繊維状物、微細薄膜状(鱗片状)物などを使用することができる。チタン/卑金属混合物は、同形状、同寸法の金属チタンと卑金属単体との混合物であってもよく、形状ないしは寸法の異なる金属チタンと卑金属単体との混合物であってもよい。また、金属チタン、卑金属単体の各々に異なる形状、異なる寸法のものが混在していてもよい。なお、金属チタンとしては、比表面積が大きいことから、スポンジチタンを用いることが好ましい。
【0028】
チタン/卑金属混合物等の金属チタンと卑金属との割合は、金属チタンが多いと卑金属の溶解の際に生じた電子が金属チタン表面に移動する量が増え、金属チタン表面で還元されるセレン量が増加して還元効率が向上するが、卑金属の割合が少な過ぎると卑金属の溶解の際に生じた電子のうち、多くが卑金属表面で放出されてしまい、金属チタン表面に移動してセレンの還元に寄与する電子量が少なくなり非効率的である。従って、金属チタンの容積Tと卑金属単体の容積Mとの比T/Mは、1/4以上、特に1/2以上であることが好ましく、また、4/1以下、特に1/1以下であることが好ましい。卑金属としては特にアルミニウムが好適であり、金属チタンの容積をTとし、アルミニウムの容積をAとした場合、T/Aが1/4〜4/1特に1/2〜2/1であると、きわめて効率よくセレンを還元処理することができる。
【0029】
酸化処理水とチタン/卑金属混合物等との接触方式には特に制限はなく、反応槽に酸化処理水を導入し、チタン/卑金属混合物等を添加して接触させる還元反応槽であってもよく、また、チタン/卑金属混合物等を充填した充填層に酸化処理水を通水する還元反応塔であってもよい。
【0030】
また、この還元処理は、卑金属の溶出速度を高めるために、酸性条件下で行うことが好ましい。ここで、酸性条件とするための酸添加量は、予め求めておいた卑金属(例えばアルミニウム)溶出量とセレン除去率との関係から、必要な卑金属溶出量を算出し、その卑金属溶出量とするために必要な酸(例えば塩酸)添加量に換算して求めることができる。即ち、卑金属溶出量とセレン除去率には相関があるため、目的のセレン除去率が得られるような卑金属溶出量となるように必要な酸添加量を決定することができる。また、簡便にpHを1〜3、特に1.5〜2.5の範囲を好適な範囲としてもよい。
【0031】
このような還元処理により、セレン含有水中のセレン、例えば、6価セレンは大部分が0価のセレンとなり、チタン/卑金属混合物等の表面に析出して除去される。残余のセレンは6価から低価数、例えば4価のセレンに還元され、凝集処理により沈殿しやすい形態となる。
【0032】
本発明においては、上記の還元処理後、還元処理水を凝集分離処理することが好ましい。凝集分離処理は、還元処理水のpHを調整して、溶出した卑金属等を水酸化物などの不溶性化合物として析出させ、析出した金属化合物を固液分離することによって行われる。
【0033】
還元処理水のpH調整は、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰などのアルカリを添加して行う。金属チタンとともに使用した卑金属がアルミニウムである場合、還元処理水にアルカリを添加して、溶解アルミニウムを水酸化アルミニウムとして析出させる。この場合、アルカリの添加により還元処理水のpHを5〜8に調整するのがよく、pH4以下又はpH9以上では水酸化アルミニウムは溶解するので、不適当である。金属チタンとともに使用した卑金属が亜鉛である場合は、還元処理水を9〜10にpH調整することにより、亜鉛を水酸化物として析出させることができる。
【0034】
上記のpH調整によって金属化合物を析出させる際、有機凝集剤、無機凝集剤を添加して、固液分離性を向上させることができる。
【0035】
析出した金属化合物を水中から分離するために、固液分離操作を行う。固液分離は、通常用いられる任意の方法を採用することができ、沈殿、濾過、遠心分離、膜分離などにより、処理水と不溶性金属化合物からなる汚泥とに分離する。
【0036】
還元処理水のpH調整、固液分離により、還元処理時に溶出した卑金属が不溶化され、水中から分離され、金属を含まない処理水として排出される。また、この溶出金属が不溶性化合物、例えば、水酸化アルミニウムとして析出する際、水中に残留する還元された低価のセレンも水酸化アルミニウムのフロックに吸着され、共沈現象により析出する。
【0037】
また、セレン含有排水にフッ素及び又はホウ素が共存している場合、チタン/卑金属混合物等の卑金属としてアルミニウムを採用すると、還元処理後、pH調整により水酸化アルミニウムが析出する際、フッ素及び/又はホウ素も共沈現象により析出させて除去することができる。
【0038】
このような還元処理により、セレン含有水中のセレンは通常0.1mg/L以下の濃度に除去される。
【0039】
<不溶化したセレンを回収する態様>
セレン含有水を金属チタンと金属アルミニウムとの混合物と接触させ、金属アルミニウムの一部を溶出させることによりセレンを還元し、さらに溶解したアルミニウムを凝集処理するセレン含有排水の処理方法においては、排水中セレンの90%以上が、金属混合物等が充填された還元塔において元素態セレン(0価)にまで還元され、不溶化する。
【0040】
不溶化した元素態セレンの通常50%〜70%は還元塔処理水に移行する。処理条件にもよるが、排水中セレン濃度2mg/Lの場合、還元塔処理水には全セレンが1.0〜1.4mg/L、アルミニウムが100〜200mg/L、チタンが2〜4mg/L程度共存する。還元塔処理水のpHは通常3〜4であるため、チタンは大部分が不溶化しているが、アルミニウムはほとんどが溶解している。この状態で還元塔処理水を濾過器で濾過することにより、不溶化セレンを還元塔処理水から選択的に除去することができる。そして濾過処理後の濾過器の濾材を洗浄することにより、セレンが濃縮された濾過器洗浄排水を得ることができる。濾過器洗浄排水中には、セレンの他、不溶化したチタンやアルミニウムも含まれるが、セレン含有量の高い固形物が回収される。排水中のセレン濃度にもよるが、排水中セレン濃度1〜5mg/Lにおいて、セレン含有量5〜10%程度の固形物が回収される。
【0041】
不溶化した元素態セレンの通常30%〜50%は還元塔処理水に移行せず、還元塔内の金属混合物等の充填層内に蓄積する。これを洗浄することにより、セレンが濃縮された還元塔洗浄排水が得られる。処理条件にもよるが、排水中セレン濃度2mg/Lの場合、還元塔洗浄排水には全セレンが30〜50mg/L、アルミニウムが50〜100mg/L、チタンが50〜100mg/L程度共存する。還元塔洗浄排水のpHは通常3〜4であるため、チタンは大部分が不溶化しているが、アルミニウムはほとんどが溶解している。この状態で還元塔洗浄排水を濾過器で濾過することにより、洗浄排水中の不溶化セレンを処理水から選択的に除去することができる。そして濾過処理後の濾過器の濾材を洗浄することにより、セレンが濃縮された濾過器洗浄排水を得ることができる。濾過器洗浄排水中には、セレンの他、不溶化したチタンやアルミニウムも含まれるが、セレン含有量の高い固形物が回収される。排水中のセレン濃度にもよるが、排水中セレン濃度1〜5mg/Lにおいて、セレン含有量2〜10%の固形物が回収される。
【0042】
還元塔処理水および濾過器洗浄排水には不溶化した元素態セレン(0価)の他、還元されなかった6価セレンや4価セレン、さらには還元が過度に進むことにより生成する−2価セレンが微量に共存する場合がある。これらのうち、6価セレンについては後段の凝集沈殿においても除去できないため、結果として、凝集沈殿処理水に残留する。4価セレンは後段の凝集沈殿において除去可能である。−2価セレンは非常に不安定であり、溶存酸素により酸化される。ただし低pH域では0価セレンに酸化されやすい。よって、還元塔処理水を受ける還元塔処理水槽と、還元塔洗浄排水を受ける還元塔洗浄排水槽を曝気することで、セレンの回収率をさらに高めることができ、後段凝集沈殿への−2価由来のセレン負荷量を極力減らすことができる。
【0043】
セレン含有量の高い固形物は、還元塔処理水および還元塔洗浄排水の濾過器による濾過および濾材の洗浄によって得られる。この濾材洗浄水は一旦セレン濃縮槽に受け、底部から引抜いたスラリーを遠心脱水機やフィルタープレス等で脱水することにより、セレン含有量の高い脱水ケーキを得ることができる。脱水機の形式は特に限定されないが、固形物の付着性が高い、元素態セレンが酸やアルカリに不溶であり化学洗浄しにくいなどの制約条件を考慮し、水による洗浄が容易な型式のものが望ましい。
【0044】
濾過手段としては砂濾過、アンスラサイト濾過、膜濾過、長毛繊維濾過等があるが、通水温度が高い、固形物の付着性が高い、元素態セレンが酸やアルカリに不溶であり化学洗浄しにくい等の制約条件を考慮し、砂濾過、アンスラサイト濾過、またはこれらを併用した二層濾過を用いるのが望ましい。濾材の平均径は、濾過砂0.5〜1.0mm、アンスラサイト0.7〜2.0mm程度のものが効果的に固形分を固液分離できる。
【0045】
<水素を回収する態様>
セレン含有水を金属チタンと金属アルミニウムとの混合物と接触させ、金属アルミニウムの一部を溶出させることによりセレンを還元し、さらに溶解したアルミニウムを凝集処理するセレン含有排水の処理方法においては、排水中セレンの90%以上が、金属混合物等が充填された還元塔において元素態セレン(0価)にまで還元され、不溶化する。これを後段の凝集沈殿で除去することで、セレン濃度が低減された処理水を得ることができる。
【0046】
この処理では水素ガスが副生成物として発生する。処理条件により異なるが、排水1mあたり100〜400Lの水素ガスが発生する。これを回収することにより、さまざまな用途に活用できる。例えば燃料や排水処理の還元剤として使用することができる。
【0047】
還元塔からの発生ガスには微量な硫化水素が含まれる。これらは酸化鉄系の硫化水素吸収材を充填したカラムに発生ガスを通気することで除去が可能であり、純度の高い水素ガスが得られる。
【0048】
酸化鉄系の硫化水素吸収材の代わりに、アルカリスクラバーに還元塔からの発生ガスを通気し、微量な硫化水素を除去しても良い。また、両者を組み合わせてもよく、この場合、順番は問わない。
【0049】
従来の処理では、発生する水素を爆発限界以下にまで空気で希釈し、かつ希釈ガス中の微量臭気成分をアルカリスクラバーで除去していた。本発明において、水素ガス回収システムを付加することで、臭気成分を濃縮した状態で除去するため、臭気成分の除去効率を大幅に高めることができ、既設のスクラバーへの臭気物質の負荷を大幅に低減することができる。
【0050】
[処理装置]
以下に、本発明のセレン含有水の処理装置の一実施形態を示す図1を参照して、本発明のセレン含有水の処理装置について説明する。
【0051】
図1に示すセレン含有水の処理装置は、酸化処理手段としてオゾン酸化槽を用いる。
【0052】
原水(亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン又は亜硝酸イオンを含有するセレン含有水)は、オゾン酸化槽1に導入され、散気管1aからオゾン含有ガスが吹き込まれ、オゾン酸化処理される。オゾン酸化槽1内には隔壁1bによって流出室1cが区画形成されており、オゾン酸化処理された水は、隔壁1bの下側を回り込んで流出室1c内に流入する。この流出室1cにオゾン濃度計又はORP計が設けられ、オゾン濃度又はORPが前述の所定範囲となるように散気管1aからのオゾン含有ガスの吹込量が制御される。
【0053】
オゾン酸化槽1からの水は、pH調整槽2に導入され、塩酸などの酸が添加手段2aによって添加され、好ましくはpH3〜5特に3.5〜4.5に調整される。また、この実施の形態では、酸以外にスケール分散剤が添加手段2bから添加される。スケール分散剤としては、アクリル酸系ポリマー、ポリリン酸塩などを用いることができるが、これに限定されない。
【0054】
pH調整槽2からの水は、中継槽3、ポンプ4を経て熱交換器5に送水され、加温された後、配管6を介して還元塔7に送られる。この配管6において蒸気添加手段6aから蒸気が添加されて40〜80℃特に50〜65℃に加温されると共に、酸添加手段6bから塩酸などの酸が添加され、pH1〜3特に1.5〜2.5にpH調整される。この水が還元塔7に通水され、チタン/卑金属混合物等の充填層7Aでセレンが還元除去される。
【0055】
還元塔7から流出した還元処理水は、配管8、中継槽9、配管10、ポンプ11を介して熱交換器5に通水され、熱交換した後、配管12を介してpH調整槽13に導入され、アルカリ添加手段13aからNaOHなどのアルカリが添加され、pH7〜8程度に調整される。
【0056】
pH調整槽13からの水は凝集槽14に導入され、凝集剤添加手段14aからポリマー凝集剤が添加され、凝集処理された後、沈殿槽15に導入され、沈殿処理される。上澄水は処理水として配管17から取り出される。沈降した汚泥の一部は返送配管18によってpH調整槽13に返送され、残部は配管19によって排出される。上記のポリマー凝集剤としてはポリアクリルアミド、アクリルアミド−アクリル酸ソーダ共重合体などが好適である。
【0057】
前記還元塔7では硫化水素を含むガスが発生する。このガスは、塔頂から配管20によって抜き出され、スクラバー21によって硫化水素ガスが吸収処理される。
【0058】
なお、還元塔7の通水条件としては次が好ましい。
通水:上向流
充填層:アルミニウムとチタン(好ましくはスポンジチタン)の混合物
(混合(体積)比:Al/Ti=4〜1/4、好ましくは2〜1/2)
通水温度:30〜90℃、好ましくは40〜80℃特に好ましくは50〜65℃
通水速度(SV):1〜20hr−1、好ましくは5〜10hr−1
酸添加量:添加手段2a,6bからの添加量の合計として、原水中のセレン1mg/Lに対して1〜100×10−3
【0059】
<セレンを回収する機構を備えた態様>
図2を参照してセレンを回収する機構を備えたフローについて説明する。
【0060】
図2では、中継槽9内の水の一部を配管30及びポンプ31によって濾過器33に通水し、不溶化したセレンを濾別する。濾過された処理水は、配管34から中継槽9に返送される。
【0061】
また、この実施の形態では、還元塔7に洗浄水及び空気を供給して洗浄するために、配管6に洗浄水・空気の添加手段6cが接続されている。還元塔7への酸化処理水の通水を停止した状態で添加手段6cによって洗浄水及び空気を供給し、還元塔7内を洗浄水及び空気で洗浄する。このときの洗浄排水を配管35から洗浄排水槽36に導入する。この洗浄により充填層7Aに付着していた不溶化セレンが剥離し、洗浄排水槽36に流入する。この洗浄排水槽36内の洗浄排水をポンプ37、配管38によって濾過器33に通水し、濾過処理水を配管34によって中継槽9に返送する。
【0062】
濾過器33の濾材に捕捉された不溶化セレンについては、濾過器33を間欠的に逆洗することにより回収する。即ち、逆洗水槽40内の水をポンプ41及び配管42によって濾過器33の下部に供給し、濾過器33内の濾材を逆洗する。そして、逆洗排水を濾過器33の上部から配管43を介して沈殿槽44に導入して沈澱処理し、沈降した不溶化セレンを脱水機に送って脱水し、回収する。沈殿槽44の上澄水は、配管45によって逆洗水槽40に返送する。
【0063】
なお、濾過器33に通水される還元塔洗浄排水を曝気してもよい。この曝気手段としては、散気管を用いてもよいが、水槽36内を強撹拌して空気を巻き込ませるものであってもよい。図2のその他の構成は図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0064】
<水素を回収する機構を備えた態様>
図3を参照して、還元塔で発生する水素を回収する機構を備えたフローについて説明する。
【0065】
この実施の形態では、還元塔7で発生した硫化水素を取り出すための配管20は、中継槽9に接続されている。代りに、還元塔7の塔頂に水素回収配管50が接続されている。塔頂ガスは、該配管50からアルカリスクラバー52に上向流にて通気される。このアルカリスクラバー52では、塔底の水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液がポンプ52a、循環配管52bを介して塔上部のスプレーノズルから塔内に散液されており、ガス中の硫化水素やセレン化水素などの不純ガス成分が吸収分離される。スクラバー52の流出ガスは、次いでミストセパレータ51に導入され、ミストが分離される。このようにして不純ガス成分が分離された、水素を主体とするガスが水素タンク53に導入され、貯留される。
【0066】
なお、循環配管52bにアルカリ水溶液の添加ライン52cが接続されている。図3のその他の構成は図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0067】
図3ではアルカリスクラバー52を用いているが、酸化鉄系の硫化水素吸収材充填塔を用いてもよい。この場合、ミストセパレータは充填塔の前段に設置することが好ましい。図3のフローにおいても、図2のように不溶化セレン回収を行ってもよい。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1(図1のフロー)]
図1のフローにおいて、粒径2〜4mm、純度99%以上のスポンジチタン330mLと、粒径2.0mm、純度99.7%の金属アルミニウム330mlとを混合し、内径30mmのカラムに充填して還元塔7を構成し、セレン酸ナトリウム添加排煙脱硫排水を処理した。具体的には、原水として煙脱硫排水にセレン酸Na4.8mg/L(Seとして2mg/L)を添加したものを用いた。この原水中の亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硝酸性窒素及び亜硝酸イオン濃度は次の通りである。
SO2− 10mg/L
2− 10mg/L
NO−N 10mg/L
NO 32.9mg/L
【0070】
pH調整槽2ではpHを4となるようにHClを400mg/L添加した。添加手段6bからは、還元塔7への流入水のpHが2.1となるようにHClを添加した。合計のHCl添加量は、HClとして400mg/Lであった。還元塔流入水温65±1℃となるように添加手段6aから水蒸気を吹き込んだ。その他の条件は次の通りとした。
還元塔7への通水量 10L/h(SV15h−1
オゾン酸化槽出口オゾン濃度管理値0.02mg/L(オゾン添加量を制御)
オゾン平均添加濃度 80mg/L
還元塔洗浄頻度 24hに1回
スクラバー21の風量 10L/min
【0071】
測定結果は次の通りであった。
オゾン酸化槽出口 ORP300mV(pH8.0)
オゾン酸化槽出口
SO2− 0mg/L
2− 0mg/L
NO−N 0mg/L
Se 2mg/L
処理水溶解Se濃度 0.05mg/L
スクラバー入口HS濃度 0.00ppm
【0072】
[比較例1]
オゾン酸化槽1を省略したこと以外は図1の通りのフローにて同一条件にて前記原水を処理した。その結果は、次の通りであった。
処理水溶解Se濃度 0.5mg/L
スクラバー入口HS濃度 10ppm
【0073】
この実施例1及び比較例1より、本発明によると、セレン処理性能を高めつつ硫化水素の発生を抑制できることが認められた。
【0074】
[実施例2(図2のフロー)]
図2に示すように、図1のフローに対してSe回収ラインを付加して通水を実施した。実施例1と異なる条件は以下の通りである。
還元塔洗浄廃液量 5L
汚泥引抜量 12L/d(24hに1回引抜き)
還元塔洗浄廃液の濾過器への送液量 5L/h(1hかけて送液)
濾液の還元塔処理水槽への送液量 0.21L/h(1hかけて得られた濾液を24hかけて送液)
濾過器寸法 φ36mm、H1m
濾過速度 5m/h
逆洗速度 120m/h
逆洗水量 2L
【0075】
その結果は次の通りであった。
Se濃縮液量 100mL
Se濃縮固形物回収量 2.0g−dry/24h(真空脱水で得られたケーキを50℃で風乾)
Se濃縮固形物Se含有量 10%
【0076】
通水開始2日目の測定結果は次の通りであった。
処理水溶解Se濃度 0.07mg/L
汚泥中Se含有量 20mg/L
【0077】
[実施例3(図2のフロー)]
条件を以下の通りとし、実施例2と同様の処理を行った。
還元塔洗浄廃液量 5L
還元塔洗浄廃液のpH調整槽(2)への送液量 0.21L/h(24hかけて送液)
汚泥引抜量 12L/d(24hに1回引抜き)
還元塔洗浄廃液の濾過器への送液量 0.211L/h(1hかけて送液)
還元塔処理水槽水の濾過器への送液量 20L/h
濾液の還元塔処理水槽への送液量 20.2L/h
濾過速度 20m/h
逆洗速度 120m/h
逆洗水量 2L
【0078】
その結果は次の通りであった。
Se濃縮液量 100mL
Se濃縮固形物回収量 4.0g−dry/24h(真空脱水で得られたケーキを50℃で風乾)
Se濃縮固形物Se含有量 9%
【0079】
通水開始2日目の測定結果は次の通りであった。
【0080】
処理水溶解Se濃度 0.06mg/L
汚泥中Se含有量 7mg/L
【0081】
[実施例4(図2のフロー)]
条件を以下の通りとすると共に、洗浄排水槽および還元塔処理水槽(3L)はスターラー攪拌し、空気中の酸素を強制的に取り込ませたこと以外は実施例2と同様の処理を行った。
還元塔洗浄廃液量 5L
還元塔洗浄廃液のpH調整槽(2)への送液量 0.21L/h(24hかけて送液)
汚泥引抜量 12L/d(24hに1回引抜き)
還元塔洗浄廃液の濾過器への送液量 0.211L/h(1hかけて送液)
還元塔処理水槽水の濾過器への送液量 20L/h
濾液の還元塔処理水槽への送液量 20.2L/h
濾過速度 20m/h
逆洗速度 120m/h
逆洗水量 2L
【0082】
その結果は次の通りであった。
Se濃縮液量 100mL
Se濃縮固形物回収量 4.1g−dry/24h(真空脱水で得られたケーキを50℃で風乾)
Se濃縮固形物Se含有量 9%
【0083】
通水開始2日目の測定結果は次の通りであった。
処理水溶解Se濃度 0.05mg/L
汚泥中Se含有量 7mg/L
【0084】
[実施例5(図3のフロー)]
図3に示すように、図1のフローに対して水素回収ラインを付加して通水を実施した。ただし、アルカリスクラバー52の代りに酸化鉄系の硫化水素吸着剤が充填された硫化水素吸着塔を設置した。還元塔の洗浄時以外は、還元塔からのガスの吸引は行わず、還元塔からの発生ガスは酸化鉄系の硫化水素吸着剤が充填された硫化水素吸着塔に通気した後、ミストセパレーターを経て水素貯留タンク53に移送した。実施例1と異なる条件は次の通りである。
スクラバー風量 10L/min
スクラバー運転時間 24h連続
スクラバー吸収液pH 12
【0085】
測定結果は次の通りである。
処理水溶解Se濃度 0.08mg/L
スクラバー入口水素濃度 0.0%(通水時)、max.2%(還元塔洗浄時)
スクラバー入口硫化水素濃度 0.00ppm(通水時)、0.5ppm(還元塔洗浄時)
スクラバー出口硫化水素濃度 0.00ppm(通水時および還元塔洗浄時)
水素貯留タンク内ガス水素濃度 90%
水素貯留タンク内ガス硫化水素濃度 0.0ppm
【0086】
[実施例6(図3のフロー)]
酸化鉄系硫化水素吸着剤による硫化水素吸着塔の代わりにアルカリスクラバーを設置したこと以外は実施例5と同様の処理を行い、還元塔から回収した水素ガスを水素貯留タンクに移送した。結果は実施例5と同じであった。
【符号の説明】
【0087】
1 オゾン酸化槽
5 熱交換器
7 還元塔
21 スクラバー
33 濾過器
36 洗浄排水槽
40 逆洗水槽
51 ミストセパレータ
52 アルカリスクラバー
53 水素タンク
図1
図2
図3